説明

低粘度W/O乳化組成物

【課題】有機変性粘土鉱物板状粒子を用いたW/O乳化組成物において、低粘度でしかも高温での分離のないW/O乳化組成物を提供する。
【解決手段】(A)平均厚さが0.1μm以下、平均長径が0.5〜50μmの板状粒子である有機変性粘土鉱物と、(B)ポリオキシアルキレン・アルキル共変性分岐鎖シリコーンと、を含有し、粘度が10,000mPa・s以下であることを特徴とするW/O乳化組成物。さらに、(C)両末端シリコーン化グリセリンを配合することにより、経時での粘度安定性が改善される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はW/O乳化組成物、特に高温保存による分離のない低粘度W/O乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
W/O乳化組成物は、O/W乳化組成物に比して化粧持ちがよいことから、化粧料、特にファンデーションなどのメークアップ化粧料や日焼け止め化粧料において汎用されている。
最近では、メークアップ化粧料や日焼け止め化粧料において、使用感などの点から粘度が低いものが求められることが多い。しかしながら、乳化組成物において粘度を低くすると乳化安定性が低下する傾向がある。
【0003】
特許文献1には、通常平均厚さ2μm以上の凝集体である市販の有機変性粘土鉱物を、シリコーン油などの油分中、ビーズミルやペイントシェーカーなどにより機械的剪断力及び/又は衝撃力によって剥離処理することにより、平均厚さ0.1μm以下、平均長径が0.5〜50μmという微細な板状粒子が分散した高分散体が得られること、この有機変性粘土鉱物高分散体に、非イオン性界面活性剤を併用すれば油相が著しく増粘し、乳化安定性に優れたW/O乳化組成物が得られること、さらにCOOH基及び/又はOH基を有する油分を併用すれば乳化安定性を損なわずにW/O乳化組成物の粘度を低下させることができることが記載されている。
【0004】
しかしながら、このようなW/O乳化組成物においても、高温で保存した場合に分離を生じることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−40720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記背景技術に鑑みなされたものであり、その目的は、上記のような有機変性粘土鉱物板状粒子を用いたW/O乳化組成物において、低粘度で、しかも高温での分離が抑制されたW/O乳化組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を達成するために本発明者等が鋭意検討を行った結果、有機変性粘土鉱物板状粒子を用いたW/O乳化組成物において、特定のシリコーン系界面活性剤を使用すると、高温での分離が特異的に抑制された低粘度W/O乳化組成物が得られることを見出した。また、このようなW/O乳化組成物に粉末を配合した場合には粉末の分散安定性にも優れていることを見出した。また、両末端シリコーン化グリセリンを併用すると経時的な粘度安定性が向上することをも見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明にかかるW/O乳化組成物は、
(A)平均厚さが0.1μm以下、平均長径が0.5〜50μmの板状粒子である有機変性粘土鉱物と、
(B)ポリオキシアルキレン・アルキル共変性分岐鎖シリコーンと、
を含有し、
粘度が10,000mPa・s以下であることを特徴とする。
また、本発明は、前記W/O乳化組成物において、(B)ポリオキシアルキレン・アルキル共変性分岐鎖シリコーンがW/O乳化組成物中1.5質量%以上であることを特徴とするW/O乳化組成物を提供する。
【0009】
また、本発明は、前記何れかに記載のW/O乳化組成物において、さらに、(C)両末端シリコーン化グリセリンを含有することを特徴とするW/O乳化組成物を提供する。
また、本発明は、前記W/O乳化組成物において、(C)両末端シリコーン化グリセリンが、(B)ポリオキシアルキレン・アルキル共変性分岐鎖シリコーンに対して0.5倍質量以上であることを特徴とするW/O乳化組成物を提供する。
また、本発明は、前記何れかに記載のW/O乳化組成物において、油相中にシリコーン油を含有することを特徴とするW/O乳化組成物を提供する。
また、本発明は、前記何れかに記載のW/O乳化組成物において、さらに粉末を含有することを特徴とするW/O乳化組成物を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、有機変性粘土鉱物板状粒子を用いたW/O乳化組成物において、ポリオキシアルキレン・アルキル共変性分岐鎖シリコーンを用いることにより、高温での乳化安定性に優れた低粘度のW/O乳化組成物を得ることができる。また、W/O乳化組成物に粉末が配合されている場合には、粉末の分散安定性にも優れている。さらに、両末端シリコーン化グリセリンを併用すれば、経時での粘度安定性を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(A)有機変性粘土鉱物板状粒子
有機変性粘土鉱物とは、水膨潤性粘土鉱物(例えば、モンモリロナイト、スメクタイト、ヘクトライト、ベントナイなど)の層間にある交換性カチオンを有機極性化合物や有機カチオン(例えば、第4級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤)でイオン交換したものである。具体的には、ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト(=クオタニウム−18ヘクトライト)、ジメチルジステアリルアンモニウムベントナイト(=クオタニウム−18ベントナイト)、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムヘクトライトや、ジオクタデシルジメチルアンモニウムモンモリロナイト、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムモンモリロナイト、ジヘキサデシルジメチルアンモニウムモンモリロナイト等が挙げられる。
【0012】
有機変性粘土鉱物は、例えば「ベントン38」(=クオタニウム−18ヘクトライト)、「ベントン34」(=クオタニウム−18ベントナイト)、「ベントン27」(=ベンジルジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト)(いずれもレオックス社製)、「クレイトーン40」、「クレイトーンSO」(いずれもサザン・クレイ社製)等として市販されており、商業的に入手可能である。有機変性粘土鉱物は1種または2種以上を用いることができる。
【0013】
本発明において用いる有機変性粘土鉱物は、平均厚さが0.1μm以下、平均長径が0.5〜50μmの板状粒子である有機変性粘土鉱物を用いる。有機変性粘土鉱物板状粒子はW/O乳化組成物の乳化粒子の膜壁を形成して、乳化安定化に寄与する。
【0014】
このような有機変性粘土鉱物板状粒子は、例えば特許文献1に記載の方法により得ることができる。すなわち、市販されている有機変性粘土鉱物は、通常平均厚さが2μm以上の凝集体であるが、油分中、ビーズミルなどにより、機械的剪断力及び/又は衝撃力によって剥離処理することにより、平均厚さが0.1μm以下、平均長径が0.5〜50μmの有機変性粘土鉱物板状粒子が分散した高分散体(有機変性粘土鉱物板状粒子が単一粒子として独立に存在した油性分散物)を得ることができる。例えば、次のような方法により行うことができる。
【0015】
(有機変性粘土鉱物高分散体の調製)
市販の有機変性粘土鉱物(通常は平均厚さ2μm以上である層状構造を有する凝集体である)と油分との混合物に、直径1mm程度のガラスビーズ(またはジルコニアビーズなど)を同体積加え、ペイントシェイカー(浅田鉄工株式会社)、ビーズミル(DISPERMAT, VMA-GETZMANN GMBH Verfahrenstechnik)などを用いて機械的剪断力及び/又は衝撃力を加えることにより剥離処理して薄片化し、平均厚さ0.1μm以下、平均長径0.5〜50μmの有機変性粘土鉱物板状粒子の高分散体を得る。
【0016】
有機変性粘土鉱物高分散体に含まれる有機変性粘土鉱物の平均厚さ、平均長径は例えば、以下の測定方法により求められる。
(測定方法)
・平均厚さ
有機変性粘土鉱物高分散体をシリコーン油で十分希釈し、希釈液を乾燥したサンプルを走査型電子顕微鏡(S−4500、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて測定する。
・平均長径
有機変性粘土鉱物高分散体をシリコーン油で十分希釈し、粒度分布測定機(Microtrac VSR、日機装株式会社製)を用いて測定する。
また前記有機変性粘土鉱物の形状はSEM写真により決定される。
【0017】
一度得られた高分散体は、シリコーン油などの油相中において、再度凝集することなく、良好な分散状態を維持することが可能である。凝集体が十分に剥離されずに厚みが大きいままであるとその効果が十分に発揮されない。
なお、上記のような剥離処理は、後述するポリオキシアルキレン・アルキル共変性分岐鎖シリコーンや両末端シリコーン化グリセリンなどの存在下で行うこともできるが、これらの非存在下で行う方が好ましい。
【0018】
高分散体調製の際の有機変性粘土鉱物濃度は特に制限されないが、0.25〜35質量%とすることが好適である。配合量が多すぎると剥離処理が困難となることがある。
また、本発明のW/O乳化組成物中、板状粒子構造を有する有機変性粘土鉱物は通常0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上配合される。少なすぎるとW/O乳化組成物の安定性が不十分となることがある。一方、過剰に配合してもそれに見合った効果の向上は得られず、また粘度が高くなるので、通常、W/O乳化組成物中3質量%以下、好ましくは1.5質量%以下である。
【0019】
有機変性粘土鉱物の剥離処理に用いる油分は、特に限定されない。化粧料や医薬品等に通常配合される油分を1種または2種以上用いることが可能であるが、全体として常温(20℃)で液状の油分であることが好適である。特にシリコーン油が好ましく用いられる。
【0020】
シリコーン油としては、化粧料に一般的に使用されるものであれば特に限定されない。具体的に示すと、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状ポリシロキサンの他、特に問題のない限り、3次元網目構造を形成しているシリコーン樹脂、シリコーンゴム各種ポリシロキサン(アミノ変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等)等が挙げられる。
本発明において、シリコーン油の1種または2種以上を選択して用いることも可能である。
【0021】
本発明の板状粒子構造を有する有機変性粘土鉱物は、特にシリコーン油を主成分とする油分中で良好に分散することができ、また、シリコーン油を主成分とするW/O乳化組成物においても優れた乳化作用を発揮することができる。また、使用感の点からもシリコーン油の配合が好まれる。シリコーン油の中でも低粘度シリコーン油(例えば、25℃での粘度が20mPa・s以下、さらには10mPa・s)が好ましい。
また、シリコーン油は油相中50質量%以上、さらには80質量%以上、特に90質量%以上配合されていることが好ましい。
【0022】
(B)ポリオキシアルキレン・アルキル共変性分岐鎖シリコーン
本発明において用いられるポリオキシアルキレン・アルキル共変性分岐鎖シリコーンは、オルガノポリシロキサンを主骨格として、側鎖にポリオキシアルキレン基と、炭素数2以上のアルキル基と、オルガノポリシロキサン基を有するものであり、例えば、下記一般式(I)で示されるものが挙げられる。
【0023】
一般式(I):
【化1】

【0024】
一般式(I)において、Rは炭素数1〜3のアルキル基又はフェニル基;R’は水素又は炭素数1〜12のアルキル基;p、p’、p”はそれぞれ1〜50の整数;m及びaはそれぞれ1〜100の整数;n、q、x、zはそれぞれ1〜50の整数;yは0〜50の整数である。
【0025】
Rは、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
R’は、好ましくは水素である。
pは、好ましくは1〜5、さらに好ましくは1〜3である。
p’は、好ましくは7〜17、さらに好ましくは9〜15である。
p”は、好ましくは1〜10、さらに好ましくは2〜5である。
mは、好ましくは20〜60、さらに好ましくは30〜50である。
aは、好ましくは1〜20、さらに好ましくは3〜12である。
nは、好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜4である。
qは、好ましくは1〜20、さらに好ましくは10〜15である。
xは、好ましくは1〜20、さらに好ましくは7〜13である。
zは、好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜3である。
yは、好ましくは0〜5、さらに好ましくは0である。
【0026】
一般式(I)のポリオキシアルキレン・アルキル共変性分岐鎖シリコーンの好適な例の一つとして、KF−6038(ラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、信越化学工業(株)製)が挙げられる。
【0027】
有機変性粘土鉱物板状粒子と非イオン性界面活性剤とを用いれば乳化安定性の高いW/O乳化組成物が得られるが、高温保存によって分離を生じることがある。このような高温における分離はポリオキシアルキレン・アルキル共変性分岐鎖シリコーンにより特異的に抑制される。ポリオキシアルキレン・アルキル共変性分岐鎖シリコーンの代わりに、ポリオキシアルキレン・アルキル共変性直鎖シリコーン、ポリオキシアルキレン変性シリコーンなど他のシリコーン系界面活性剤を用いても、高温保存による液相の分離を抑制することは困難である。
【0028】
このような高温での分離は、低粘度のW/O乳化組成物(例えば、10,000mPa・s以下)で起こりやすい。従って、ポリオキシアルキレン・アルキル共変性分岐鎖シリコーンによる効果は、このような低粘度のW/O乳化組成物、特に粘度が5,000mPa・s以下の場合に有用である。
【0029】
ポリオキシアルキレン・アルキル共変性分岐鎖シリコーンは、W/O乳化組成物中、1.5質量%以上、さらには2質量%以上配合することが好ましい。配合量が少ないと、その効果が十分発揮されないことがある。配合量の上限は特に制限されないが、過剰に配合してもそれに見合った効果の向上は得られないので、好ましくはW/O乳化組成物中5質量%以下、さらに好ましくは4質量%以下である。
【0030】
(C)両末端シリコーン化グリセリン
本発明において用いる両末端シリコーン化グリセリンは、グリセリン又はポリグリセリンの両末端OH基の水素原子がオルガノポリシロキシアルキル基で置換されたものであり、例えば、下記一般式(II)で示されるものが挙げられる。
【0031】
一般式(II):
【化2】

【0032】
一般式(II)中、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜12の直鎖又は分岐アルキル基、もしくはフェニル基であり、Rはそれぞれ独立して炭素数2〜11のアルキレン基であり、mはそれぞれ独立して10〜120、nは1〜11である。
両末端シリコーン化グリセリンの基本構造はBAB型トリブロック共重合体である。
【0033】
は、好ましくはメチル基またはフェニル基、さらに好ましくはメチル基である。
’は、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数3〜6のアルキル基である。
は、好ましくは炭素数2〜6、さらに好ましくは2〜4のアルキレン基である。
mは、好ましくはそれぞれ独立して40〜80、さらに好ましくは50〜70である。
nは、好ましくは1〜5、さらに好ましくは2〜4である。
【0034】
両末端シリコーン化グリセリンをポリオキシアルキレン・アルキル共変性分岐鎖シリコーンと併用すると、経時での粘度安定性が改善される。
両末端シリコーン化グリセリンの効果は、ポリオキシアルキレン・アルキル共変性分岐鎖シリコーンに対して通常0.1倍質量以上、さらには0.5倍質量以上の配合で発揮されるが、好ましくは2倍質量以上である。一方、過剰に配合してもそれに見合った効果の向上は得られないので、両末端シリコーン化グリセリンは、ポリオキシアルキレン・アルキル共変性分岐鎖シリコーンに対して、通常5倍質量以下、好ましくは3倍質量以下である。
【0035】
W/O乳化組成物
本発明にかかるW/O型乳化組成物において、水相としては、水および水溶性成分が配合される。
一方、油相には、前記有機変性粘土鉱物板状粒子(あるいはその高分散体)と、ポリオキシアルキレン・アルキル共変性分岐鎖シリコーンとが配合され、さらには、両末端シリコーン化グリセリンやその他油性成分が配合できる。
【0036】
W/O型乳化組成物において、水相:油相の比率は1:0.5〜1:1.5、さらには1:1〜1:1.3であることが好ましい。水相:油相の比率が上記範囲から外れると、低粘度W/O乳化組成物を調製することが困難となる場合がある。
【0037】
本発明のW/O乳化組成物は、常法により製造できる。例えば、前記有機変性粘土鉱物高分散体及びポリオキシアルキレン・アルキル共変性分岐鎖シリコーン、さらには両末端シリコーン化グリセリンを含む油相に水相を添加して乳化することにより得られる。顔料や球状粉末、無機紫外線防御剤などの粉末成分を配合する場合も常法により配合され、例えば、油相あるいは水相に予め粉末を分散させてから乳化すればよい。有機変性粘土鉱物板状粒子とポリオキシアルキレン・アルキル変性分岐鎖シリコーンとを配合した本発明のW/O乳化組成物は粉末の分散安定性にも優れており、粉末の凝集や沈殿などによる色じまを生じない。粉末の配合量は特に制限されないが、通常、W/O乳化組成物中0.01〜50質量%配合され、好ましくは1〜40質量%、さらに好ましくは5〜30質量%である。
【0038】
本発明にかかるW/O型乳化組成物には、医薬品、医薬部外品、化粧料などに一般的に使用されるその他の成分を本発明の効果が損なわれない範囲で必要に応じて適宜配合することも可能である。
例えば、油分、薬剤、各種界面活性剤、無機粉末、有機粉末、顔料、色素、保湿剤、美白剤、紫外線防止剤、増粘剤、金属封鎖剤、各種水溶性高分子、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤等が挙げられる。粉末成分としては、疎水化処理や親水化処理されたものを用いることもできる。
【0039】
本発明において、油分としてはシリコーン油が好適であるが、その他の油分を配合することも可能である。
その他の油分としては、例えば、炭化水素油、エステル油、植物性油脂、動物性油脂、高級アルコール、高級脂肪酸等が挙げられる。なお、これら油分は、シリコーン油に溶解して全体として常温(20℃)で均一な液状となることが好ましい。
【0040】
炭化水素油としては、流動パラフィン、パラフィン、スクワラン、スクワレン、オゾケライト、プリスタン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。
【0041】
エステル油としては、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12−ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2−エチルヘキサノエート、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリン、2−エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ2−ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、アセトグリセライド、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸2−エチルヘキシル、クエン酸トリエチル等が挙げられる。
【0042】
植物性油脂としては、アボガド油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、落花生油、アーモンド油、大豆油、茶実油、ホホバ油、胚芽油等が挙げられる。
動物性油脂としては、タートル油、卵黄油、ミンク油等が挙げられる。
高級アルコールとしては、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール、ホホバアルコール、セチルアルコール、ミリスチルアルコール等が、高級脂肪酸としては、オレイン酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等が挙げられる。
【0043】
本発明にかかるW/O乳化組成物は、肌や毛髪に適用される皮膚外用剤として好適に用いることができ、例えば、乳液、クリーム、洗浄料、パック、マッサージ用化粧料などのスキンケア化粧料;ファンデーション、口紅、頬紅、アイライナー、アイシャドウなどのメークアップ化粧料;サンスクリーン化粧料;ヘアトリートメントや整髪料などの毛髪化粧料などが挙げられる。特に、本発明のW/O乳化組成物は、粉末の分散安定性にも優れているので、ファンデーションなどのメークアップ化粧料やサンスクリーン化粧料など粉末が配合される化粧料に好適である。
【実施例】
【0044】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。配合量は特に記載のない限り質量%である。試験例で用いた試験方法は次の通り。
【0045】
(粘度)
30℃の恒温槽で1時間静置した後に、単一円筒型回転粘度計(芝浦システム株式会社)を用いて12rpmの条件で測定した(ローターNo.3またはNo.4)。
【0046】
(外観)
試料を各条件で保存し、外観変化を下記の評価基準に従い、目視によって評価した。
○:液相の分離が見られない。
△:液相の分離が若干認められる。
×:液相の分離が認められる。
【0047】
(ローリング試験)
ローリング試験により、粉末の分散安定性を調べた。50mlのスクリュー管(直径3cm)に試料を約30ml入れて閉栓し、20℃で45rpmの回転速度で4時間回転させてローリング試験を行い、肉眼観察により下記の基準で粉体の分散性を評価した。
○:色じま(黄色スジや赤色ムラ)が認められない。
△:色じま(黄色スジや赤色ムラ)がわずかに認められる。
×:色じま(黄色スジや赤色ムラ)が認められる。
【0048】
試験例1 ポリオキシアルキレン・アルキル共変性分岐鎖シリコーンの効果
下記表1の処方で、粘度が約3,000〜7,000mPa・sのW/O乳化組成物を調製した。
表1からわかるように、有機変性粘土鉱物板状粒子とともにポリオキシアルキレン・アルキル共変性分岐鎖シリコーンを用いた場合には、高温保存による分離を生じなかった(試料1)。また、粉末の分散安定性にも優れていた。
これに対して、ポリオキシアルキレン・アルキル共変性分岐鎖シリコーンの代わりに、他のシリコーン系非イオン性界面活性剤を用いた場合には、高温保存で分離を生じてしまった(試料a〜c)。また、粉末の分散安定性に劣る場合もあった。
このことから、ポリオキシアルキレン・アルキル共変性分岐鎖シリコーンは高温での乳化安定性を特異的に改善することが示唆された。
【0049】
【表1】

【0050】
(製法)
市販の有機変性ヘクトライト(ベントン38VCG、エレメンティススペシャリティーズ(英)社製)1質量部及びデカメチルシクロペンタシロキサンシリコーン9質量部を混合し、ジルコニアビーズ(直径1mm)を同体積加え、ビーズミルを用いて15分間処理して有機変性粘土鉱物10%高分散体を得た。これに油性成分を添加してディスパーで均一に混合し、油相を得た。さらに粉末を添加して均一に混合分散した油相に、水相を徐添しながらディスパーで乳化して、W/O乳化組成物を得た。
【0051】
試験例2 ポリオキシアルキレン・アルキル共変性分岐鎖シリコーンの配合量
さらに、下記表2のように、ポリオキシアルキレン・アルキル共変性分岐鎖シリコーンの配合量を変えて同様に試験を行った。
その結果、ポリオキシアルキレン・アルキル共変性分岐鎖シリコーンの配合量が少なすぎると高温保存での分離抑制効果や粉末の分散安定化効果が不十分な場合があった。
従って、ポリオキシアルキレン・アルキル共変性分岐鎖シリコーンは、W/O乳化組成物中1.5質量%以上、さらには2質量%以上配合することが好適である。
【0052】
【表2】

【0053】
試験例3 両末端シリコーン化グリセリンの効果
下記表3の組成で同様にW/O乳化組成物を調製した。
表3からわかるように、ポリオキシアルキレン・アルキル共変性分岐鎖シリコーンのみでは、室温で長期に保存すると粘度が顕著に低下することがあるが、両末端シリコーン化グリセリンを併用することでこのような粘度低下が抑制された。両末端シリコーン化グリセリンの配合による効果は、ポリオキシアルキレン・アルキル共変性分岐鎖シリコーンに対して0.5倍質量以上、さらには1倍質量以上、特に1.5倍質量以上で顕著であった。
【0054】

【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)平均厚さが0.1μm以下、平均長径が0.5〜50μmの板状粒子である有機変性粘土鉱物と、
(B)ポリオキシアルキレン・アルキル共変性分岐鎖シリコーンと、
を含有し、
粘度が10,000mPa・s以下であることを特徴とするW/O乳化組成物。
【請求項2】
請求項1記載のW/O乳化組成物において、(B)ポリオキシアルキレン・アルキル共変性分岐鎖シリコーンがW/O乳化組成物中1.5質量%以上であることを特徴とするW/O乳化組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載のW/O乳化組成物において、さらに、(C)両末端シリコーン化グリセリンを含有することを特徴とするW/O乳化組成物。
【請求項4】
請求項3記載のW/O乳化組成物において、(C)両末端シリコーン化グリセリンが、(B)ポリオキシアルキレン・アルキル共変性分岐鎖シリコーンに対して0.5倍質量以上であることを特徴とするW/O乳化組成物。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載のW/O乳化組成物において、油相中にシリコーン油を含有することを特徴とするW/O乳化組成物。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載のW/O乳化組成物において、さらに粉末を含有することを特徴とするW/O乳化組成物。

【公開番号】特開2012−116757(P2012−116757A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264781(P2010−264781)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】