説明

低融点合金の堆積により少なくとも一つの活性物質を担持する装置を製造するための方法

その表面が、例えば、酸洗いによって既に処理されている(2)と共に、好ましくは、個々の部材への連続切断用に調製された、金属ネットまたは微細穴あきおよび延伸金属シートのリボン(1’)上の液体状態にある低融点合金のストリップの連続堆積に基づく活性物質を担持する装置(21、21’)を製造する方法が記載される。堆積(3)は、一定ジェットでの層流波中への浸漬により、小滴の噴霧により、または液体分配により行なうことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低融点合金の堆積により、特に側縁上に活性物質を担持する装置を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製品内部に製品自体の適正な機能に必要な特定の活性を有する物質が導入されることを必要とする多数の用途が先行技術において公知である。これらの用途のうち特に関連するものはランプの製造に関するものであるので、以下の説明中ではガスランプに用いられる装置について述べるが、本発明による方法は種々の用途のための装置の製造にも有利に用いることができる。
【0003】
ガスランプ分野において、種々の活性物質、例えば、水銀放出用化合物、蛍光灯の場合には水銀の圧力制御用のアマルガム、ランプ内部雰囲気からランプの機能を損なう虞のあるの望ましくないガスを除去するためのゲッタ材料、または酸素などの特定ガスを放出する物質が、ランプ中に導入されなければならないことは公知である。これらの物質およびこれら物質をランプ中へ導入させる装置の使用は、多数の文献で主題となっている。例えば、米国特許第3,764,842号、同第3,794,402号、同第4,056,750号、同第4,182,971号、同第4,278,908号、同第4,282,455号、同第4,542,319号、同第4,754,193号、同第4,823,047号、および特開昭60-193253号公報、特開平06-096728号公報、特開平06-076796号公報はいずれも元素水銀またはこの元素を放出することができる物質をランプ内部に導入するための装置に関連し、米国特許第3,525,009号、同第4,461,981号、同第4,855,643号明細書はランプ中での使用のためのゲッタ装置に関連し、米国特許第5,825,127号、同第6,043,603号、欧州公開公報EP-A-0359724号は水銀放出およびゲッタリング両方の機能を組み合わせ、互いに統合される装置に関連し、米国特許第5,789,855号、同第5,798,618号はランプ内部の水銀圧力制御用のアマルガムに関連し、米国特許第3,519,864号および同第6,169,361号はランプ内部での酸素放出用の装置に関連する。
【0004】
これらの特許において記載されている装置は、一般に、活性物質を容器中に導入するか支持体表面上に塗布した後に、前記容器または支持体をランプ内所定位置に取り付けられた適切な支柱に固定することにより製造される。
【0005】
しかし、これらの装置の製造は、一般に、小型部品(一般に金属製)の機械成形と、種々のやり方で小型部品同士の組み立てとが必要であるため、かなり複雑である。ランプ分野の現在の小型化傾向を考慮すると、この装置にも小型化が要請されため、問題はなおさらに深刻になる。この小型化には、この装置の形状および寸法の両面で更に高度な制御を必要とする。すなわち、これらの装置は全て最終製品ランプ内の同じ領域内(ランプの末端部分、または管型ランプの場合に多くても二つの末端部分)に配置されるが、一方で、これらの装置が電極またはそれらの支持体と接触することは避けなければならない。そのような接触が起きると、実際にランプ機能を変えてしまうであろう。さらに、装置が(機械的にまたは溶接で)予備成形された部品を組み立てることにより製作される製造方法を採用することは、最終製品装置の形状および寸法について再現性の問題が起きる。
【0006】
前記装置の製造において起こる別の問題として、装置の小型化により一段と深刻となるのは、半製品の不具合発生の危険性がある特に繊細な製作工程を含む場合である。例えば、装置が水銀圧力制御用のアマルガムを用いて製造されなければならないケースにおいて、最終製品にアマルガムを導入すること(またはその上に貼ること)は、一般に非平面形状を有する製品を機械的に移動する必要がある複雑な処理であることが分かる。反対に、既に表面にアマルガムを備えた部品を操作すること、例えば、この部品とその支持体との溶接を行うことは、部品表面のアマルガム自体の接着性を損なう虞がある。結局、すべてこれらの構造上の問題は、装置のコストを上昇させることになり、特にランプの低売価が考慮される場合には、経済的な理由で装置の使用が制限されることが多い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記先行技術の問題点が解消した活性物質担持装置を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的は、本発明によれば、金属材料のリボンを用意する工程と、該リボンの側縁に沿って溶融状態の低融点合金の形態にある活性物質の少なくとも一つのストリップを堆積する工程とを含む方法であって、該リボンが不働態表面層を除去するために前処理された金属ネットまたは穴あき金属バンドから形成されることを特徴とする方法によって達成される。
【0009】
次いで、予備パンチ加工工程により平行な横断方向の弱化線を形成して切断用に予め調製した前記リボンを適切な断片に切断することにより、個々の装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明による方法のこれらのおよび他の目的、利点および特徴は、添付図面を参照して非限定的な実施例の目的で与えられる以下の説明からより明確になる。
【0011】
リボンは、単純な金属ネット、または代替的にいわゆる「延伸微細穴あき金属シート」であってよい。後者(以下、単に延伸金属シートと呼ぶ)は、金属バンドに微細穴を、好ましくは規則的なパターンでバンド表面に配列された微細穴を作り、次に、穴の拡大を引き起こすようにバンドを延伸することにより得られる。本発明の方法は、金属ネットリボンまたは延伸金属シートを用いたことにより、活性物質を表面に備えた装置の部分に支持体を固定するための工程も、従来なら必要であったであろう装置中の活性物質の閉じ込め処理の工程も、一切必要としない。実際、対象とする物質は溶融状態の低融点合金の形態で、穴の寸法的な特性と金属リボンの穴間領域の形態とによって、穴あき基材と完全に密着する。その理由は、金属リボンの穴間領域は穴あき工程の結果として非平面で僅かに隣接穴間が延伸された表面を有するので、溶融物質が毛管に類似した現象により上がってくる優先的な通路が形成されることにより、活性生成物を塗布すべき表面全体を濡らすからである。
【0012】
本発明による方法において用いられる金属ネットおよび延伸金属シートバンドはどちらも市販されており、例えば、イタリア、ミラノのフラテッリ・マリアーニ(Fratelli Mariani S.p.A.)により販売されている。製造しようとする装置用の基材を形成するネットまたは延伸金属シートバンドが、リボン自体上の堆積合金の良好な接着を可能とするために、通常金属上に存在する主として酸化物や油性物質の不働態表面層を除去するようなやり方で、既に処理されていることは、本発明の目的のために必須である。この目的のため、機械的表面研磨、または不働態表面層の除去用に適する酸溶液または腐食性成分の工程を利用することができる。この目的のため、金属表面上に存在する酸化物の薄膜を、場合によっては油脂の薄膜も、攻撃することができる酸洗い(deoxidizing)または酸洗(pickling)用の液体または粉末が公知である。
【0013】
基材が一定量の溶融合金を的確な再現性あるやり方でその穴あき構造中に捕捉することは、さらに基本的なことである。穴の寸法は、液体合金の液滴形成や透過を防止するために十分に小さくなければならない。特に穴および通路を合金で満たすために毛管現象を活用するために、好ましい幾何学的特性として、基材厚さ、穴寸法、および穴の横列同士および/または縦列同士の間の中心距離が関連することを見出した。厚さに関連する第1値は0.20〜0.50mmであり;基材を形成する金属シートのリボンの穴に関連する第2寸法値は、その中に刻み込まれる円が0.45mmより小さい径を有するような寸法であり、同時に、上述の中心距離は0.55〜1.10mmであると共に、穴あき面積と全体表面の中実部(無穴部)との比率は12〜25%である。
【0014】
図1は本発明の方法を模式的に示しており、穴あけ済の延伸金属シート1のリボンが、図の面に対して直角の垂直面を前進する矢印Fの向きに回転するコイル10から連続的に解かれている。リボン1は、最初に前述のように機械的作用または化学的酸洗作用により不働態表面層を除去するための表面処理用の装置2に到達し、この除去処理により、リボン1の通路沿いの下流にブロック3で模式的に示す装置での液体合金の堆積が可能となり、ブロック3からリボン1’が、下部側縁の所定幅に亘って、図1に見えるのとは反対側の下端に沿って堆積した活性生成物を伴って出現し、次いで、矢印F’の方向に回転する右側のコイル11上に巻き上げられる。もちろん、コイル11および場合によってはコイル10を回転させるための手段は設けられているが、アイドル状態にしてリボン自体により回転させてもよい。
【0015】
リボンは、図2の正面図においてより良く示される。図1の処理ブロック3により溶融状態で塗布された低融点合金製の活性物質で覆われた端部13と、穴あけされた、場合によっては表面前処理を受けた、基材12とを区別して示した。
【0016】
目的に適する低融点合金は、例えば、いずれのケースにおいても少なくとも80重量%のインジウムを含有するインジウム−銀またはインジウム−スズの2元合金またはインジウム−銀−銅またはインジウム−銀−ニッケルの3元合金などの高含量でインジウム元素を有するインジウム基合金である。適する特性を有する他の物質は、ビスマス基合金、例えば、いずれのケースにおいても少なくとも50重量%のビスマスを含有するビスマス−インジウム合金、ビスマス−スズ合金、またはビスマス−スズ−鉛合金などの3元合金である。
【0017】
更に図2に、リボン1’を長さ方向に直角に連続的に切断して所望の個々の装置21、21’を得る状態を模式的に示す。切断処理を促進するために、リボン1は、表面処理2の前または後で、適切な弱化線またはパンチ加工線を伴って調製することができ、この線に沿って個々の装置の足部22、22’が得られ、簡単に除去できる切れ端は別にして、各足部は活性物質を担持する頭領域13、13’、・・・・よりも狭くしてある。
【0018】
液体状態にある低融点合金の堆積工程は、種々の方法で行なうことができ、例えば以下の方法がある。
a)例えばある種の溶接用途における技術で公知のような、層流定在波中への部分浸漬による方法、
b)一定高さに維持した液体ジェットまたは噴流中への部分浸漬による方法、
c)適切なノズルからの小液滴の噴霧による方法、および
d)適切なディスペンサーからの液体分配による方法。
【0019】
処理プロセスが完了し、リボン1’の端部に沿ってストリップ13の活性生成物が安定した時に、リボン自体は図1に示す新たなプロセスの処理を受けることができる。その際、リボン1’の側縁を逆位置に、すなわち既に堆積したストリップ13を上向きにして(図2のように)、表面処理装置2および液体合金の堆積工程3に通すことにより、ストリップ13の反対側の側縁が表面処理を受けることができて(最初の堆積工程で堆積済でない場合)、図1の処理ブロック3で前述の方法の一つにより活性生成物の対称ストリップを具備することができる。このようにして、その両側縁上に堆積した活性物質のストリップを有するリボンが得られ、これを中心で縦切断したときに21、21’のような個々の装置が対で得られる二つの対称リボンを得ることが可能である。
【0020】
所望の個々の装置を得るために上述のようなリボン切断に進む前に、酸洗い処理で残留物が残った場合、その除去用にさらなる洗浄工程が見込まれる。
【実施例】
【0021】
本発明を、以下の実施例により更に説明する。
〔実施例1〕
厚さ0.35mmのニッケルメッキ鉄の延伸金属シートのリボンであって、内包円直径が0.28mmの正方形のメッシュ穴があいており、穴中心間距離で横列間が0.71mm、縦列間が0.85mmであり、ニッケルめっき層の厚さが約1μmであるリボンに、表面酸洗い処理を施した後、重量%組成In94%−Ag6%を有する液体状態にある合金浴中に浸漬し、110.8±6.0mg/cm2の量の物質を捕捉できた。
【0022】
〔実施例2〕
実施例1の試験を繰り返した。ただし、リボンの側縁を浴中に単純に浸漬する代わりに、垂直にしたリボンを液体合金の層流波に通すことによりリボンを液体合金で濡らした点のみが異なる。得られた合金捕捉量は110.2±3.3mg/cm2であり、変動幅を小さくできた。
【0023】
〔実施例3〕
実施例1の試験を繰り返した。ただし、厚さ0.40mmのニッケルメッキ鉄の延伸金属シートのリボンであって、内包円直径が0.26mmの正方形のメッシュ穴があいており、穴中心間距離で横列間が0.84mm、縦列間が0.95mmであり、ニッケルめっき層の厚さが約1μmであるリボンを用いた。In−Ag合金量の捕捉量は、112.8±5.4mg/cm2であった。
【0024】
〔実施例4〕
実施例3の試験を繰り返した。ただし、実施例2の濡らし方(金属バンドを液体合金の層流波に通す)を採用した。この場合も、110.8±3.5mg/cm2の捕捉量が得られ、高い再現性が得られた。
【0025】
以上の実施例は、本発明の方法が、特に用いられる濡らし方がネットまたはバンドを液体物質の層流波に通すことによる場合に、堆積物質の高度に再現性のある量を特徴とする、液滴または異常物質堆積物のいかなる形成もなしで望ましい物質の堆積物を有する金属ネットまたは微細穴あきバンドを製造することができることを示す。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の方法を行う実施例を示す模式的平面図。
【図2】本発明の方法で用いるリボンの断片の模式図であり、リボンは図1に例示したのと同等の方法の一つによる活性物質層堆積後であり、切断により幾つかの装置が形成されることを示す(図では3片が示されている)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料のリボン(1)を用意する工程と、該リボンの側縁に沿って溶融状態の低融点合金の形態の活性物質の少なくとも一つのストリップ(13)を堆積する工程とを含む、少なくとも一つの活性物質を担持する装置(21、21’、・・・)を大量生産する方法であって、該リボン(1)が、不働態表面層を除去するために前処理された金属ネットまたは穴あき金属バンドから形成されることを特徴とする方法。
【請求項2】
金属材料の前記リボンは0.20〜0.50mmの厚さを有し、穴は内包できる円の直径が0.45mm未満である寸法を有し、かつ、横列または縦列で隣接する穴の中心距離が0.55〜1.10mmであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属リボンの少なくとも前記側縁を、前処理工程(2)で酸洗い浴中に、その後、液体低融点合金の浴(3)中に連続的に通すことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記低融点合金が80重量%以上のインジウムを含む2元または3元のインジウム基合金であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記低融点合金が50重量%以上のビスマスを含む2元または3元のビスマス基合金であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
液体状態にある前記合金の層流波中に、前記リボン(1)を垂直に保持して下端部を部分的に浸漬することにより、前記低融点合金の堆積を行なうことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記リボン(1)の下端部を垂直に保持し、液体状態にある前記合金の噴流またはジェットにより一定のレベルで打たせることにより、前記低融点合金の堆積を行なうことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項8】
堆積工程(3)に続いて、リボン(1’)を長手方向に直角の平行線に沿って切断することにより、活性物質を担持する個々の前記装置(21、21’、・・・)を得ることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
リボン(1)を横断線に沿ってパンチ加工することにより前記切断処理用に用意することを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
堆積工程後かつ前記切断処理前に、前記酸洗い工程の残留物を除去するためにリボン(1’)を洗浄処理することを特徴とする請求項8に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−527163(P2008−527163A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547800(P2007−547800)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【国際出願番号】PCT/IT2005/000744
【国際公開番号】WO2006/070426
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(500275854)サエス ゲッタース ソチエタ ペル アツィオニ (54)
【Fターム(参考)】