説明

低重合フルオロアクリレートから誘導されるポリウレタン類

本発明は、フルオロケミカルポリウレタン化合物、それらの調製方法、付与方法、及びそのフルオロケミカルポリウレタン化合物を含む組成物に関する。前記化合物及びその化合物を含む前記組成物は、耐久性のある撥水性及び撥油性を基材に付与するのに好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許仮出願第60/694,847号及び同第60/694,855号(両方ともに2005年6月29日出願)に対する優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、フルオロアクリレートオリゴマーから誘導されるポリウレタン、及び基材に撥水性及び撥油性を付与するのに有用なイソシアネート類に関する。他の態様において、本発明は更に、上記のポリウレタンの製造方法、及び上記のポリウレタンを基材に、そこに撥水性及び撥油性を付与するために、付与する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
各種フルオロケミカル組成物を、織物、紙及び革などの繊維並びに繊維性基材の上に使用して、撥油性及び撥水性を付与することは公知である。例えば、「有機フッ素化学物質及びそれらの工業的応用(Organofluorine Chemicals and Their Industrial Applications)」(バンクス(Banks)編、エリスホーウッド社(Ellis Horwood Ltd.)(英国、チチェスター)、1979年、226〜234頁)を参照のこと。
【0004】
ウレタン結合を含有するある種のフッ素化物が知られている。ウレタン結合を含有するこのような化合物を形成するための一般的な合成経路は、出発物質としてイソシアネート化合物を使用する。残存未反応イソシアネート部分と反応する封鎖剤の使用もまた公知である。
【0005】
ウレタン結合を含有する各種フッ素化アクリル樹脂は、撥油性及び撥水性を有することが知られている(例えば、米国特許第4,321,404号(ウィリアムス(Williams)ら)、米国特許第4,778,915号(リナ(Lina)ら)、米国特許第4,920,190号(リナ(Lina)ら)、米国特許第5,144,056号(アントン(Anton)ら)、及び米国特許第5,446,118号(シェン(Shen)ら)を参照のこと)。これらの樹脂は、撥水性及び撥油性を付与するために、例えば、織物、カーペット、壁装材、革などの基材へのコーティング材として合成されて、付与されることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
典型的には、これらの樹脂は、長鎖ペンダント過フッ素化基(例えば、8つ又はそれを超える炭素原子)を含むが、これは長鎖が、アクリル系骨格単位に結合した隣接ペンダント基に対して速やかに平行に整列し、これにより撥水性及び撥油性が最大化されるからである。しかし、長鎖過フッ素化基含有化合物、例えばペルフルオロオクチル含有化合物が、生物内で生物濃縮される傾向にあるとの報告がある(例えば、米国特許第5,688,884号(ベーカー(Baker)ら)を参照のこと)。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、フルオロアクリレートオリゴマー及びイソシアネート類から誘導される新規ポリウレタン組成物を提供する。これらの組成物は、撥水性及び撥油性を基材へ付与するのに有用であり、そして優れた耐久性のある動的撥水性を繊維性基材へ提供することが見出された。本発明は更に、上記の組成物を製造する方法と、上記の組成物を基材に付与する方法とを提供する。
【0008】
本発明は更に、要約すれば、(1)本明細書で記載される官能化フルオロアクリレートスペーサーオリゴマーを調製することと、(2)ウレタン誘導体を生み出すために、上記のオリゴマーを単官能性又は多官能性イソシアネートと反応させることとを含む、上記の組成物を製造するための方法を提供する。
【0009】
要約すれば、本発明のフルオロケミカルポリウレタン化合物は、
(a)少なくとも1種の官能化連鎖移動剤の存在下で、フルオロケミカルスペーサーモノマー類のオリゴマー化生成物を、単独で又はフッ素化されていてもフッ素非含有でもよい他の重合性モノマー類と組み合わせて含む、フルオロケミカルスペーサーオリゴマーと、
(b)2価、3価若しくは4価イソシアネート又はこれらの組み合わせと、
(c)任意選択的に、少なくとも1種のイソシアネート反応性基又は封鎖基と、
(d)任意選択的に、少なくとも1種の多官能鎖延長剤と、
を反応させることにより調製させることができる。
【0010】
前記組成物は、通常の硬化条件で付与されるとき、合成繊維基質とセルロース性繊維基質との両方の上に現状技術の動的撥水性を提供する。加えて、前記処理は、多数回の洗濯に対して極めて耐性がある。前記組成物は更に、有機溶媒に極めて可溶性である。
【0011】
本発明の新規ポリウレタンは、長鎖(C8)フルオロケミカルモノマーを用いて先に得られる動的撥水性に加えて、耐久性のある撥水性及び撥油性を提供する。前記官能性スペーサーオリゴマーのイソシアネートとの反応は、動的撥水性及び洗濯可能耐久性の望ましい継続性を有する新規ポリウレタンを提供する。前記官能性スペーサーモノマーの「スペーサー」基は、フルオロケミカル側鎖の整列をするのに有利であり、典型的な短鎖フルオロケミカルモノマーにより提供されるものを越える向上した撥液性能を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
組成物
本発明のフルオロケミカルポリウレタン化合物は、
(a)少なくとも1種の官能化連鎖移動剤の存在下で、フルオロケミカルスペーサーモノマー類のオリゴマー化生成物を、単独で又はフッ素化されていてもフッ素非含有でもよい他の重合性モノマー類と組み合わせて含む、フルオロケミカルスペーサーオリゴマーと、
(b)2価、3価若しくは4価イソシアネート又はこれらの組み合わせと、
(c)任意選択的に、少なくとも1種の封鎖基又はイソシアネート反応性基と、
(d)任意選択的に、少なくとも1種の多官能鎖延長剤と、
を反応させることにより調製されることができる。
【0013】
従って、本発明の第1主題は、式(I)で表されるフルオロケミカルポリウレタン化合物である。
【0014】
【化1】

【0015】
式中、
−Mは、フルオロケミカルスペーサーモノマー、M、から誘導されるm単位と、フッ素化されていてもフッ素非含有でもよい1種または2種以上の他の重合性モノマー、M、から誘導される1単位と、を含むフルオロケミカルスペーサーオリゴマーであり、ここで、当該フルオロケミカルスペーサーモノマー類及び当該重合性モノマー類は、同一であっても異なっていてもよく、
−mは、2〜40の数値であり(2及び40を含む)、
−lは、0〜20の数値であり(0及び20を含む)、
−Tは、水素原子を、連鎖移動剤から除去することによって得られた有機連結基であり、そして当該残基Tは、同一であっても異なっていてもよく、
−Zは、水素原子をイソシアネート反応性基又は封鎖基から除去することによって得られた残基であり、そして当該残基Zは、同一であっても異なっていてもよく、
−A及びA’は、独立して、2つ、3つ、又は4つの−NCO基を対応するイソシアネートから除去することによって得られた2価、3価又は4価の残基であり、そして当該残基A及び当該残基A’は、同一であっても異なっていてもよく、
−Bは、2つのX−H基を、2官能性活性水素化合物・HX−B−XHから除去することによって得られた2価の有機残基であり、式中、Xは、独立して、O、NH、又はSであり、そして当該残基Bは、同一であっても異なっていてもよく、
−aは、1〜3の数値であり(1及び3を含む)、そしてbは、0〜2の数値であり(0及び2を含む)、ただしa+bが、1〜3の値を有し、
−cは、0〜30の数値であり(0及び30を含む)、
−d及びeは、0〜2の数値であり(0及び2を含む)、ただしd+eは、2以下である。
【0016】
式(I)で表わされる本発明の化合物は、ポリウレタン類であり、即ち、それらは、少なくとも1つの重合部分をそれらの分子内に含み、前記重合部分は、イソシアネート基含有化合物の、2つのイソシアネート反応性X−H基を有する鎖延長剤との反応により得られる。鎖延長剤から誘導される部分は、式(I)内で残基−X−B−X−により表わされる。これらのフルオロケミカルポリウレタン化合物は、高い初期撥油性及び撥水性ばかりでなく、繰り返しの洗濯後に消滅しない耐久性のある撥液性も処理された基材に付与する意外な能力を示す。
【0017】
従って、本発明の第2主題は、式(II)で表されるフルオロケミカルポリウレタン化合物である。
【0018】
【化2】

【0019】
(式中、
−Mは、フルオロケミカルスペーサーモノマー(M)から誘導されるm単位と、フッ素化されていてもフッ素非含有でもよい1種または2種以上の他の重合性モノマー(M)から誘導される1単位と、を含むフルオロケミカルスペーサーオリゴマーであり、ここで、当該フルオロケミカルスペーサーモノマー類及び当該重合性モノマー類は、同一であっても異なっていてもよく、
−mは、2〜40の数値であり(2及び40を含む)、
−lは、0〜20の数値であり(0及び20を含む)、
−Tは、水素原子を、連鎖移動剤から除去することによって得られた有機連結基であり、そして当該残基Tは、同一であっても異なっていてもよく、
−Zは、水素原子をイソシアネート反応性基又は封鎖基から除去することによって得られた残基であり、そして当該残基Zは、同一であっても異なっていてもよく、
−Aは、2つ、3つ、若しくは4つの−NCO基を対応するイソシアネートから除去することによって得られた2価、3価又は4価の残基であり、
−aは、1〜4の数値であり(1及び4を含む)、そしてbは、0〜3の数値であり(0及び3を含む)、ただしa+bが、2〜4の値を有する。
【0020】
本発明の別の主題は、式(III)のフルオロケミカルオリゴマーを反応させることを含む、式(I)及び(II)のフルオロケミカルポリウレタン化合物を調製する方法である。
【0021】
−TH (III)
式中、M及びTは、上記のように定義されて、式(IV)のイソシアネートを少なくとも1つ有する。(IV)
A(NCO) (IV)
式中、Aは、上記のように定義されて、そしてxは、2〜4の数値であり(2及び4を含む)、そして式(I)の化合物の場合、任意選択的に、式(V)の少なくとも1つの2官能性活性水素化合物であり、
HX−B−XH (V)
式中、X及びBは、上記のように定義されて、任意選択的に、式(IV)の少なくとも1つの化合物であり、
Z−H (VI)
式中、Zは、上記のように定義される。
【0022】
前記フルオロケミカルポリウレタン化合物は、溶液又は分散体の形態で使用されてもよく、そしてその組成物が更に本発明の主題を構成する、化合物を含む組成物として一般に用いられる。前記処理は、強力な初期撥液性を綿、ポリエステル、ポリアミド若しくはこれらのブレンドなどの繊維材料の繊維、アラミド型繊維又はポリ塩化ビニルから作製された防護服、アパレル、PTFE裏地若しくはポリウレタン裏地のラミネート類などの布地、室内装飾品及びカーペット、不織布、革、紙、木材、金属、ガラス、コンクリート若しくは石を含む基材に提供し、そしてドライクリーニング及び家庭での洗濯に対する高耐久性を示す。
【0023】
本発明のさらなる別の主題は、フルオロケミカルポリウレタン化合物の使用であるか、又は前記化合物を含む組成物の使用であり、これらを用いて処理された基材に耐久性のある撥水性及び撥油性を付与する。前記処理は、(1)基材に撥油性及び撥水性を付与するのに有効な量の本発明のフルオロケミカルポリウレタン化合物か又は前記化合物を含む組成物を基材の表面に付与する工程と、ここで、前記化合物は、当該基材の約0.01重量%〜約5重量%の量で存在し、及び(2)工程1で処理された前記基材を、その処理された基材を硬化させるのに十分な温度で及び十分な時間にわたり、加熱する工程とを含む。
【0024】
フルオロケミカルポリウレタン化合物
本発明のフルオロケミカルポリウレタン化合物は、2段階反応にて調製可能である。第1段階で、官能化フルオロケミカルスペーサーオリゴマーが、調製され、更に第2段階で反応し、ポリウレタンを形成する。
【0025】
第1段階で、フルオロケミカルオリゴマーは、フルオロケミカルスペーサーモノマー類単独での、又は他の重合性モノマー類と組み合わせてのフリーラジカル低重合化により、ヒドロキシ、アミノ、又はメルカプト官能化連鎖移動剤の存在下にて、都合良く調製される。前記フルオロケミカルスペーサーオリゴマーは、好ましくはフルオロケミカルスペーサーモノマー類から誘導される2〜約40個の重合単位と、他のモノマー類から誘導される0〜約20個の重合単位とを含む。
【0026】
フルオロケミカルスペーサーモノマー
本発明の幾つかの実施形態にて使用されるフルオロケミカルスペーサーモノマー類は、その全体を参考として本明細書に組み込まれている米国特許出願公開第2005/0143541号に記載されている通りであり、そして(a)フルオロケミカルアルコール、(b)非分岐鎖対称性ジイソシアネート、及び(c)ヒドロキシル末端アルキル(メタ)アクリレート類の反応生成物を含むことができる。
【0027】
本発明の幾つかの実施形態にて使用されるフルオロケミカルスペーサーモノマー類は、以下の一般式で表わすことができる。
【0028】
2n+1−X’−OC(O)NH−A”−HNC(O)O−(C2p)(O)COC(R’)=CH
式中、nは1〜20、好ましくは1〜6、最も好ましくは4〜6であり、X’は、
【0029】
【化3】

【0030】
又は
【0031】
【化4】

【0032】
であり、
Rは、H又は1〜4つの炭素原子を持つアルキル基であり、mは、2〜8であり、Rは、C2n+1であり、yは、0〜6であり、qは、1〜20であり、
A’’は、非分岐対称性アルキレン基、アリーレン基、又はアラルキレン基であり、pは、2〜30であり、そしてR’は、H、CH、又はFである。
【0033】
好ましくは、nは1〜6であり、より好ましくは、nは4〜6である。好ましくは、qは2である。好ましくは、X’は、
【0034】
【化5】

【0035】
であり、mは2〜4である。
【0036】
好ましくは、A’’は、−C12−、
【0037】
【化6】

【0038】
及び
【0039】
【化7】

【0040】
から成る群から選択され、より好ましくはA’’は、
【0041】
【化8】

【0042】
である。
【0043】
好ましくは、pは2〜12であり、より好ましくは、pは、2、4、6、10、及び12から成る群から選択され、最も好ましくは、pは2である。
【0044】
好ましくは、R’はHである。
【0045】
(a)フルオロケミカルアルコール類
本発明のフルオロケミカルスペーサーモノマーにおいて有用なフルオロケミカルアルコール類は、次の式で表わすことができる。
【0046】
F2n+1−X’−OH
式中、nは1〜20、好ましくは1〜6、最も好ましくは4〜6であり、X’は、
【0047】
【化9】

【0048】
又は
【0049】
【化10】

【0050】
であり、
Rは、水素又は1〜4つの炭素原子を持つアルキル基であり、mは、2〜8であり、Rは、C2n+1であり、yは、0〜6でありそして
qは、1〜8である。
【0051】
好適なアルコール類の代表的実施例としては、CFCHOH、(CFCHOH、(CFCFCHOH、CSONH(CHOH、CSONCH(CHOH、CSONCH(CHOH、CSONC(CHOH、C(CHOH、CCONH(CHOH、CSONCH(CHOH、CSONH(CHOH、CCHOH、CCONH(CHOH、C(CHOH、CSONCH(CHOH、CCONH(CHOH、CSONCH(CHOH、CSONH(CHOH、CSONC(CHOH、CSONC4H9(CH2OH、C5F11SONCH(CHOH、C5F11CONH(CH2)OH、C11(CHOH、C13CH2CHOH、COH、及びCH4SCOHが挙げられる。
【0052】
好ましくは、nは1〜6であり、より好ましくは、nは4〜6である。好ましくは、mは2〜4である。好ましくは、qは2である。
好ましくは、X’は
【0053】
【化11】

【0054】
である。
【0055】
より好ましくは、X’は
【0056】
【化12】

【0057】
である。
【0058】
最も好ましくは、X’は、
【0059】
【化13】

【0060】
及び
【0061】
【化14】

【0062】
から成る群から選択される。
【0063】
最も好ましいフルオロケミカルアルコール類としては、例えば、CSONCH(CHOH、CSONCH(CHOH、C(CHOH、及びC13OHが挙げられる。
【0064】
(b)対称性ジイソシアネート類
対称性ジイソシアネート類は、ホーレーズ大化学辞典(Hawley’s Condensed Chemical Dictionary)1067(1997年)にて定義されているように、3つの対称性の要素を充足するジイソシアネート類である。第1に、それらは対称の中心を有し、その周囲に構成原子が規則正しい配列で位置されている。上記の中心が、分子内に1つのみ存在し、それは原子であっても、またそうでなくてもよい。第2に、それらは対称の面を有し、それは分子を鏡像部分に分割する。第3に、それらは対称の軸を有し、それは対称の中心を通過する線で表すことができる。分子が回転する場合、完全に360度一回を越えて回転すると、空間内で同じ位置を有することになる。
【0065】
本明細書で使用する時、用語「非分岐」とは、対称性ジイソシアネートが、1つまたは2つ以上の炭素原子のいずれの副鎖も含有しないことを意味する。
【0066】
非分岐対称性ジイソシアネート類の代表的実施例としては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,6−ヘキサメチレン−ジイソシアネート(HDI)、1,4−フェニレンジイソシアネート(PDI)、1,4−ブタンジイソシアネート(BDI)、1,8−オクタンジイソシアネート(ODI)、1,12−ドデカンジイソシアネート、及び1,4−キシリレンジイソシアネート(XDI)が挙げられる。
【0067】
好ましい非分岐対称性ジイソシアネート類としては、例えばMDI、HDI、及びPDIが挙げられる。より好ましい非分岐対称性ジイソシアネートは、MDIである。その純粋形態では、MDIはダウケミカル社(ミシガン州ミッドランド)からイソネート(ISONATE)(商標)125Mとして、及びバイエルポリマーズ社(ペンシルベニア州ピッツバーグ)からモンドウール(MONDUR)(商標)として市販されている。
【0068】
(c)ヒドロキシ末端アルキル(メタ)アクリレート類
本発明のフルオロケミカルスペーサーモノマー類において有用な、ヒドロキシ末端アルキル(メタ)クリレート及び2−フルオロアクリレートモノマー類は、2〜約30個の炭素原子(好ましくは、2〜約12個の炭素原子)をそれらのアルキレン部分に有することができる。
【0069】
好ましくは、前記ヒドロキシ末端アルキル(メタ)クリレートモノマーは、ヒドロキシ末端アルキルアクリレートである。好ましいヒドロキシ末端アルキルアクリレート類としては、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシヘキシルアクリレート、ヒドロキシデシルアクリレート、ヒドロキシドデシルアクリレート、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0070】
本発明のフルオロケミカルスペーサーモノマー類は、例えば最初に前記フルオロケミカルアルコールと前記非分岐対称性ジイソシアネートとを溶媒中で混ぜ合わせ、次に前記ヒドロキシ末端アルキル(メタ)クリレートを添加することにより、調製可能である。有用な溶媒としては、エステル類(例えば、酢酸エチル)、ケトン類(例えば、メチルエチルケトン)、エーテル類(例えば、メチル−第3ブチルエーテル)及び芳香族溶媒(例えば、トルエン)が挙げられる。
【0071】
好ましくは、前記反応混合物は攪拌される。反応は、一般に室温〜約120℃(好ましくは、約50℃〜約70℃)の温度で行われる。
【0072】
典型的には、前記反応は触媒の存在下で行われる。有用な触媒としては、塩基類(例えば、3級アミン類、アルコキシド類、及びカルボキシレート類)、金属塩類及びキレート類、有機金属化合物類、酸類及びウレタン類が挙げられる。好ましくは、前記触媒は、有機スズ化合物(例えば、ジブチルスズジラウレート(DBTDL))又は3級アミン(例えば、ジアゾビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO))、又はこれらの組み合わせである。より好ましくは、前記触媒はDBTDLである。
【0073】
2n+1SONCH(CHOHという式で表されるフルオロケミカルアルコール類(nは、2〜5、そしてmは、2〜4)を、MDIと反応させる場合、米国特許出願第10/751142号に記載のプロセス(表題「フルオロケミカルモノイソシアネート類を調整するための方法」)(2003年12月31日出願)を使用することができる。
【0074】
他の重合性部分
前記官能性スペーサーオリゴマーに用いるための他の重合性部分、M、としては、フルオロケミカルモノマー類を挙げてもよく、これは以下の式(VII)で表すことができる。
【0075】
【化15】

【0076】
式中、RはC2n+1であり、ここでnは、3〜18、好ましくは6〜12であり、rは、0又は1であり、sは、1〜8、好ましくは1又は2であり、Dは、ラジカル重合性不飽和残基を含む基であり、
Rは、メチル又はエチルである。
【0077】
前述のフルオロケミカルモノマー類及びその調製方法は、既知であり、そして例えば米国特許第2,803,615号に開示されている。このような化合物の実施例としては、フルオロケミカルアクリレート類、メタクリレート類、ビニルエーテル類、フッ素化スルホンアミド基を含有するアリル化合物の一般的な部類、フルオロケミカルテロマーアルコール類から誘導されるアクリレート類又はメタクリレート類、フルオロケミカルカルボン酸から誘導されるアクリレート類又はメタクリレート類、並びに欧州特許出願第526976号にて開示されているようなペルフルオロアルキルアクリレート類又はメタクリレート類が挙げられる。
【0078】
好ましいフルオロケミカルモノマー類の例としては、
CF(CFCHOCOC(CH)=CH
CF(CF(CH2)2OCOC(CH)=CH
CF(CF(CHOCOC(CH)=CH
(CHOCOC(CH)=CH
CF(CF(CHOCOCH=CH
CF(CFCHOCOC(CH)=CH
CF(CFCHOCOCH=CH
【0079】
【化16】

【0080】
CFCF(CFCF2−8CHCHOCOCH=CH
【0081】
【化17】

【0082】
【化18】

【0083】
が挙げられる(Rは、メチル又はエチルである)。
【0084】
フルオロケミカルスペーサーオリゴマー類の調製において、Mとして用いるのに適した炭化水素モノマー類もまた周知であり、一般的に市販されている。上記の化合物の実施例としては、ラジカル重合が可能なエチレン系化合物の一般的な部類、例えばアリルアセテート及びアリルヘプタノエートなどのアリルエステル類、セチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテル類又はアルキルアリルエーテル類、不飽和酸類例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α−クロロアクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸及びこれらの無水物類並びにこれらのエステル類例えば、ビニル、アリル、メチル、ブチル、イソブチル、ヘキシル、ヘプチル、2−エチル−ヘキシル、シクロヘキシル、ラウリル、ステアリル、イソボルニル又はアルコキシエチルアクリレート類及びメタクリレート類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、2−クロロアクリロニトリル、2−シアノエチルアクリレート、アルキルシアノアクリレート類などのα−β不飽和ニトリル類、α,β−不飽和カルボン酸誘導体類、例えばアリルアルコール、アリルグリコレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、n−ジイソプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N−t−ブチルアミノエチルメタクリレート、スチレン及びその誘導体例えば、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、α−シアノメチルスチレン、ハロゲンを含有することができる低級オレフィン系炭化水素類、例えばエチレン、プロピレン、イソブテン、3−クロロ−1−イソブテン、ブタジエン、イソプレン、クロロ及びジクロロブタジエン並びに2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエン、並びにアリル又はビニルハロゲン化物例えば、ビニル及びビニリデンクロライド、ビニルカプロラクタム、並びに1−ビニル−2−ピロリジノンが挙げられる。上述したフルオロ脂肪族ラジカル含有モノマー類と共重合することができる好ましいコモノマー類としては、オクタデシルメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ポリウレタンジアクリレート類、ポリエチレングリコールジアクリレート類、ポリプロピレングリコールジアクリレート類、ラウリルメタクリレート、ブチルアクリレート、N−メチロールアクリルアミド、イソブチルメタクリレート、エチルヘキシルアクリレート、エチルヘキシルメタクリレート、ビニルクロライド及びビニリデンクロライドから選択されるようなものが挙げられる。
【0085】
官能化連鎖移動剤
前記フルオロケミカルスペーサーオリゴマーの調製において有用なヒドロキシ−、アミノ及び/又はメルカプト官能化連鎖移動剤(T−H)としては、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−2−ブタノール、3−メルカプト−2−プロパノール、3−メルカプト−1−プロパノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、2,3−ジメルカプトプロパノール、2−メルカプト−エチルアミン及び2−メルカプトエチルスルフィドから選択されるものが挙げられる。単一化合物又は異なった連鎖移動剤の混合物を使用してもよい。前記フルオロケミカルオリゴマーの調製に好ましくは使用される前記連鎖移動剤は、当該オリゴマーとの反応後に、1つのイソシアネート反応性基のみが得られたフルオロケミカルオリゴマー上に残存するように、2つの官能基のみを含有する。前記好ましい連鎖移動剤は、2−メルカプトエタノールである。
【0086】
別の実施形態では、前記Mは、前記連鎖移動剤が任意選択的に官能性の場合には、2−ヒドロキシエチルアクリレートなどのイソシアネート−反応性モノマーであることができる。
【0087】
前記官能化フルオロケミカルオリゴマーを調製するために、ラジカル反応開始剤が存在する。このようなラジカル反応開始剤は、当技術分野において既知であり、アゾビスイソブチロニトリル(ABIN)及びアゾ−2−シアノバレリアン酸などのアゾ化合物類、ヒドロ過酸化クメン、ヒドロ過酸化t−ブチル及びヒドロ過酸化t−アミルなどのヒドロ過酸化物類、過酸化ジ−t−ブチル及び過酸化ジクミルなどの過酸化ジアルキル類、t−ブチルペルベンゾエート及びジ−t−ブチルペルオキシフタレートなどのペルオキシエステル類、過酸化ベンゾイル及び過酸化ラウロイルなどの過酸化ジアシル類を含む。
【0088】
フルオロケミカルウレタン
反応の第2段階では、前記フルオロケミカルスペーサーオリゴマーは、イソシアネートと、任意選択的に鎖延長剤と、任意選択的に封鎖剤又は他のイソシアネート反応剤と反応する。式Iのフルオロケミカルポリウレタンの調製に用いるのに好適なイソシアネート類・A(NCO)(Xは、2、3、又は4)としては、芳香族ジイソシアネート類、例えば4,4’−メチレン−ジフェニレンジイソシアネート(MDI)及び2,4−トルエンジイソシアネート(2,4−TDI)、脂環式ジイソシアネート類、例えば3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチル−シクロヘキシルイソシアネート(IPDI)、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート及び4,4’−シクロヘキシルメタンジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート類、例えばメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、及び1,2−エチレンジイソシアネート、脂肪族トリイソシアネート、例えば1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、芳香族トリイソシアネート類、例えば4,4’,4’’−トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリイソシアネート類、例えばポリメチレン−ポリフェニル−イソシアネート(PAPI)、イソシアヌレート類、例えばヘキサメチレンジイソシアネートの3量体及びIPDIの3量体及びこれらの混合物が挙げられる。
【0089】
本発明のフルオロケミカルポリウレタン化合物の調製において、2官能性イソシアネート類、例えばイソシアネート類・A(NCO)が使用されるだけでなく、少なくともいくつかの高官能性、例えば3官能性イソシアネートが用いられることが好ましい。
【0090】
これは、本発明のフルオロケミカルポリウレタン化合物が好ましくは、単にジイソシアネート類から得られた直鎖型化合物類だけでなく、トリ−又はテトライソシアネート類を包含することに起因する少なくともいくつかの分岐箇所をも含有することを意味する。使用されるイソシアネート類の、より好ましくは少なくとも約50%は、最も好ましくは約90%超過は、トリイソシアネート類である。
【0091】
封鎖基又はイソシアネート反応性基
従来の封鎖基及び/又はイソシアネート反応剤としては、アルコール類、例えばメタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、n−アミルアルコール、t−アミルアルコール、2−エチルヘキサノール、グリシドール、(イソ)ステアリルアルコールなど、アリールアルコール類(例えば、フェノール類、クレゾール類、ニトロフェノール類、o−及びp−クロロフェノール、ナフトール類、4−ヒドロキシビフェニルなど)、フルオロケミカルアルコール類、例えば
【0092】
【化19】

【0093】
及びHFPOオリゴマーアルコールなど、C〜Cアルカノンオキシム類(例えば、アセトンオキシム、ブタノンオキシム)、ベンゾフェノンオキシム、アリールチオール類(例えば、チオフェノール)、有機カルバニオン活性水素化合物類(例えば、ジエチルマロネート、アセチルアセトン、エチレン−アセトアセテート、エチルシアノアセテート)、ε−カプロラクタム、1級又は2級アミン類(例えば、ブチルアミン)、ヒドロキシルアミンが挙げられる。単一化合物又は異なったマスキング剤又は封鎖剤を使用してもよい。特に好ましい封鎖剤としては、C〜Cアルカノンオキシム類、例えば、2−ブタノンオキシム、1官能性アルコール類、例えば2−エチルヘキサノール及び(イソ)ステアリルアルコールが挙げられる。
【0094】
延長剤
本発明のフルオロケミカルポリウレタン化合物の形成に好適な2官能性鎖延長剤HX−B−XHとしては、2官能性アルコール類、チオール類及びアミン類が挙げられる。単一化合物又は異なった鎖延長剤の混合物を使用してもよい。実施例としては、ジオール類、例えば1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、4,4’−イソプロピリデンジフェノール(ビスフェノールA)など、ポリエステルジオール類、例えばポリカプロラクトンジオール、脂肪酸2量体ジオール類及びポリ(オキシ)アルキレンジオール類(2〜4つの炭素原子を有するオキシアルキレン基を持つ)例えば、−OCHCH−、−O(CH−、−OCHCHCH−、−OCH(CH)CH−及び−OCH(CH)CH(CH)−(好ましくは、前記ポリ(オキシアルキレン)中の当該オキシアルキレン単位が、ポリプロピレングリコール中と同様に同一であり、又は混合物として存在する)が挙げられる。好ましい実施形態では、基Bはシロキサン基、例えばジメチルシロキサン基を含み、それはフルオロケミカルポリウレタンで処理された基材へ柔らかい手を付与する。更に、化合物の撥油性及び撥水性を高めるために、前記基Bは部分的にフッ素化されてもよい。
【0095】
使用可能な多官能鎖延長剤の更なる実施例としては、ペルフルオロアルキル、ペルフルオロヘテロアルキル、及びペルフルオロアルキレン部分から成る基から選択される少なくとも1種のフッ素含有基を含むポリオール類が挙げられる。これらのペルフルオロ部分を含む全てのペルフルオロカーボン鎖は、好ましくは6個以下の炭素原子である。好ましくは6個以下の炭素原子、最も好ましくは3〜5個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル部分が好ましい。ペルフルオロヘテロアルキル部分は、3〜50個の炭素原子を有してもよい。ペルフルオロヘテロアルキレン基は、約3〜約50個の炭素原子を有してもよい。ペルフルオロヘテロアルキル及びアルキレン部分は、好ましくは、6つを越える炭素原子のペルフルオロカーボン鎖を持たないペルフルオロポリエーテル類である。
【0096】
少なくとも1種のフッ素含有基を含む好適なフッ素化ポリオール類の代表的実施例としては、RSON(CHCHOH)例えば、N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ペルフルオロブチルスルホンアミド、ROCSON(CHCHOH)、RSON(R)CHCH(OH)CHOH例えば、C13SON(C)CHCH(OH)CHOH、RCHCON(CHCHOH)、RCON(CHCHOH)、CFCF(OCFCFOCFCON(CH3)CH2CH(OH)CH2OH、ROCHCH(OH)CHOH例えば、COCHCH(OH)CHOH、RCHCHSCOCHCH(OH)CHOH、RCHCHSCCH(CHOH)、RCHCHSCHCH(OH)CHOH、RCHCHSCH(CHOH)CHCHOH、RCHCHCHSCHCH(OH)CHOH例えば、C11(CHSCHCH(OH)CHOH、RCHCHCHOCHCH(OH)CHOH例えば、C11(CHOCHCH(OH)CHOH、RCHCHCHOCOCHCH(OH)CHOH、RCHCH(CH)OCHCH(OH)CHOH、R(CHSCCH(CHOH)CHOH、R(CHSCHCH(CHOH)、R(CHSCOCHCH(OH)CHOH、RCHCH(C)SCHCH(OH)CHOH、RCHOCHCH(OH)CHOH、RCHCH(OH)CHSCHCHOH、RCHCH(OH)CHSCHCHOH、RCHCH(OH)CHOCHCHOH、RCHCH(OH)CHOH、RR”SCH(R”’OH)CH(R”’OH)SR、(RCHCHSCHCHSCHC(CHOH)、((CFCFO(CF(CHSCHC(CHOH)、(RSCHC(CHOH)、1,4−ビス(1−ヒドロキシ−1,1−ジヒドロペルフルオロエトキシエトキシ)ペルフルオロ−n−ブタン(HOCHCFOCO(CFOCOCFCHOH)、1,4−ビス(1−ヒドロキシ−1,1−ジヒドロペルフルオロプロポキシ)ペルフルオロ−n−ブタン(HOCHCFCFO(CFOCFCFCHOH)、フッ素化オキセタンの開環重合により調製されるフッ素化オキセタンポリオール類例えば、ポリ−3−フォックス(商標)(オムノヴァ・ソリューションズ社(Omnova Solutions, Inc.)(オハイオ州アクロン)から入手可能)、フッ素化有機基置換エポキシドを、米国特許第4,508,916号(ニューウェル(Newell)ら)に記載されているように、少なくとも2つのヒドロキシル基を含有する化合物と開環付加重合させることにより調製されるポリエーテルアルコール類、及びペルフルオロポリエーテルジオール類、例えばフォムブリン(FOMBLIN)(商標)ZDOL・(HOCHCFO(CFO)8−12(CFCFO)8−12CFCHOH(オーシモント(Ausimont))が挙げられる。式中、Rは1〜6個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル基、又は3〜約50個の炭素原子を有するペルフルオロヘテロアルキル基(存在する全てのペルフルオロカーボン鎖が、6個以下の炭素原子を有する)、又はこれらの混合物であり、R’は、1〜4つの炭素原子を有するアルキルであり、R’’は、1〜12つの炭素原子を持つ分岐鎖又は直鎖アルキレン、2〜12つの炭素原子を持つアルキレンチオ−アルキレン、2〜12つの炭素原子を持つアルキレン−オキシアルキレン、又はアルキレンイミノアルキレンであり、ここで、窒素原子が第3置換基として、水素又は1〜6個の炭素原子を持つアルキルを含有し、そしてR’’が、1〜12つの炭素原子を持つ直鎖又は分岐鎖アルキレン又は式C2r(OCS)のアルキレン−ポリオキシアルキレン(式中、rは1〜12であり、sは2〜6であり、そしてtは1〜40)である。
【0097】
第2ステップは、従来のウレタン形成条件下にて実施される。前記反応は、乾燥条件下、好ましくは酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンなどの極性溶媒中で実施される。好ましくは、反応は触媒の存在下で行われる。好ましい触媒類としては、ジブチルスズジラウレート及びオクトエートスズなどのスズ塩類が挙げられる。好適な反応温度は、用いられる特定の試薬、溶媒及び触媒に基づき、当業者により速やかに決定されるであろう。
【0098】
本発明のフルオロケミカルポリウレタン化合物は、従来の付与方法を使用して付与することが可能であり、そして水性分散液として又はそれに代えて溶媒中の処理組成物として使用することが可能である。一般に、分散体は、水、それで処理された基材に撥液性を提供するのに有効な量の化合物、及び当該分散体を安定させるのに有効な量の界面活性剤を含有する。水は、好ましくは本発明の化合物の100重量部を基準にして、約70〜約20,000重量部の量で存在する。前記界面活性剤は、好ましくは本発明の組成物の100重量部を基準にして、約1〜約25重量部、好ましくは約3〜約10重量部の量で存在する。従来のカチオン性、非イオン性、アニオン性、及び双性イオン性界面活性剤が、好適である。
【0099】
付与方法
本発明に従って基材に付与される処理組成物の量は、十分に高い又は望ましい撥水性及び撥油性を前記基材表面に付与するように選択され、当該量は通常、前記基材の重量を基準にして、約0.01重量%〜約5重量%、好ましくは約0.05重量%〜約2重量%のフルオロケミカル処理剤が前記処理された基材上に存在するようなものである。所望の撥液性を付与するのに十分な量は、実験的に決定することが可能であり、必要又は希望に応じて増加させることが可能である。基材を処理するために、当該基材を分散体中に浸漬し、飽和するまで攪拌することができる。次に、前記飽和基材は、過剰な分散体を除去するためにパッダー/ローラーを通過させ、オーブン内で比較的低温(例えば、70℃)にて前記分散媒(例えば、水、エチレングリコール、又はこれらの混合物)を除去するのに十分な時間にわたり乾燥させ、そして硬化済処理基材を提供するのに十分な温度で及び時間にわたり硬化させることができる。本硬化工程は、使用する特定の系又は付与方法に応じて、約170℃〜約190度の間の温度で実施することができる。一般的に、約70℃の温度、約20秒〜3分、好ましくは1〜2分の時間が好適である。前記硬化済処理基材は、所望のように、例えば衣類内に組み込まれるか又は適合されるように、使用されることができる。
【0100】
基材
本発明の組成物の基材への固定を向上させるためには、ある種の添加剤、ポリマー類、熱凝縮性生成物、及び基材との相互作用を促進することができる触媒を分散体中に含むことがしばしば好都合である。これらには、ホルムアルデヒド及びグリオキサール樹脂との尿素若しくはメラミンの縮合体又は前縮合体がある。個々の好適な添加剤及びその量は、当業者により選択されることができる。
【0101】
本発明の撥水性及び撥油性付与組成物により処理された基材としては、特に制限されず、例えば綿、ポリエステル、ポリアミド又はこれらのブレンドなどの繊維材料の繊維、アラミド型繊維又はポリ塩化ビニルから作製された防護服、アパレル、室内装飾品及びカーペットなどの布地、不織布、革、紙、木材、金属、ガラス、コンクリート及び石、プラスチックが挙げられる。好ましいのは、繊維、織物又は不織布、カーペット、革及び紙である。
【0102】
本発明の目的及び利点は、以下の実施例によって更に説明されるが、これらの実施例に記載される特定の材料及びその量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を不当に限定すると解釈されてはならない。
【実施例1】
【0103】
以下の例示的実施例により、本発明を更に説明する。
【0104】
用語解説:
ABS:吸収
BuMA:ブチルメタクリレート(アルドリッチより)
MH:MeFBSE−MDI−HEA付加化合物
デスモデュール(DESMODUR)N3300:HMDI3量体(トリイソシアヌレート)
2EH:2−エチルヘキサノール
エトクァッド(商標)C−12:ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド(HO中75%)(アクゾ・ノベルより)
FC:フルオロケミカル
HC:炭化水素
HFPOオリゴマーアルコール(3Mより)
2ME:2−メルカプトエタノール
ラウリルMA:ラウリルメタクリレート(アルドリッチより)
LPO:ラウリルペルオキシド
MeFBSE(M)A:N−メチルペルフルオロ−ブチルスルホンアミドエチル(メタ)クリレート
MEKO:メチルエチルケトオキシム、2−ブタノンオキシム
MIBK:メチルイソブチルケトン、4−メチル−2−ペンタノン
MPD:3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、9−オクタデセン−1,18−ジオール(コグニスより)
OD(M)A:オクタデシル又はステアリル(メタ)クリレート
OR:撥油性試験
PA:ポリアミド
PAPI:ボラネート(VORANATE)M220:多環芳香族ポリイソシアネート
PAPI27:ボラネートM220に類似しているが、MWDとは異なるPAPI27高分子MDI
PAμ:ポリアミドマイクロファイバー
PES:ポリエステル
PESμ:ポリエステルマイクロファイバー
PES/Co:ポリエステル/綿
SOF:繊維上固形分(solid on fiber)
SPOL:スペーサーオリゴマー
SPOLジオール:スペーサーオリゴマージオール
SR:噴霧評点試験
テルギトール(TERGITOL)(商標)15S30:C12〜C16アルキルポリオキシエチレン(30EO)界面活性剤(ローム&ハースより)
テルギトール(TERGITOL)(商標)TMN−6:トリメチルノナンポリオキシエチレン(6EO)界面活性剤(ローム&ハースより)
V−59:アゾ−反応開始剤(ワコーより)
ボラネート(VORANATE)(商標)M220:多環芳香族ポリイソシアネート(PAPI)(ダウケミカルより)
VCI:ビニリデンクロライド
WR:IPA/水・静的撥液性試験
試験方法
噴霧評点(SR)
処理された基材の噴霧評点は、処理された基材上に衝突する水への処理された基材の動的撥液性を示す値である。撥液性は、繊維化学染色協会(the American Association of Textile Chemists and Colorists)(AATCC)の2001技術マニュアルで公表された試験方法22−1996により測定され、試験した基材の「噴霧評点」という言葉で表現された。噴霧評点は、15cmの高さから基材上に250mLの水を噴霧することにより得た。濡れ模様は、0〜100の尺度を用いて目視で評点され、0が完全濡れを意味し、100が全く濡れなしを意味する。
【0105】
撥油性(OR)
基材の撥油性は、繊維化学染色協会(the American Association of Textile Chemists and Colorists)(AATCC)標準試験法No.118‐1983により測定され、その試験は、異なる表面張力の油による浸透への処理された基材の抵抗に基づいていた。ヌジョール(NUJOL)(商標)鉱油(試験油のうちで最小の浸透性)にのみ耐性のある処理された基材は、1の評点を与えられ、これに対して、ヘプタン(試験液体で最も浸透性が高い)に耐性を示す処理された基材は、8の評点を与えられた。他の中間値は、下表に示すように、他の純粋油又は油の混合物を使用して決定された。
【0106】
【表1】

【0107】
ブンデスマン試験
処理された基材に対する雨滴の浸透性を、ブンデスマン試験法(DIN53888)を使用して測定した。本試験では、処理された基材は模擬降雨にさらされたのに対し、前記基材裏側は擦られた状態であった。上部の露出された表面の外観は、1分、5分及び10分後に目視検査され、1(表面が完全に濡れている)〜5(表面上に水が残っていない)の間の点を与えられた。前記濡れ模様の観測結果に加えて、吸水率(%絶対値)が測定された。十分に処理された試料は、低い吸収結果を与えた。
【0108】
撥水性試験(WR)
基材の撥水性(WR)は、一連の水・イソプロピルアルコール試験液を用いて測定されて、処理された基材の「WR」評点という言葉で表現された。WR評点は、15秒暴露後に基材表面に浸透しないか、又は基材表面を濡らせなかった最も浸透性のある試験液に対応した。100%水(0%イソプロピルアルコール)、最も浸透性が小さい試験液、により浸透された、又はそれに対してのみ耐性のあった基材は、0の評点を与えられたのに対し、100%イソプロピルアルコール(0%水)、最も浸透性の試験液、に対して耐性のある基材は、10の評点を与えた。他の中間の評点は、前記試験液中のプロピルアルコールの百分率を10で割ることにより計算された。例えば70%/30%のイソプロピルアルコール/水の組み合わせに対して、80%/20%ブレンドに対してではないが、耐性のある処理された基材は、7の評点を与えられることになった。
【0109】
洗濯手順
以下の実施例において5HL IR(5家庭洗濯−アイロンがけ)と呼ばれる処理された基材の試料を調製するために、以下に説明される手順を用いた。
【0110】
処理された基材の、ほぼ正方形の400cm〜約900cmのシートの230gの試料が、バラスト試料(ほぼ正方形の縁縫いされた8100cmのシートの形態である1.9kgの0.23kg(8oz)布地)と共に洗濯機内に配置された。業務用洗剤(ヘンケル(ドイツ)より入手可能なサプトン(SAPTON)ブランドの洗剤、46g)が加えられ、洗濯機は、高水位まで温水(40+/−3℃)で満たされた。基材及びバラスト荷重は、12分の通常洗浄サイクルで、続いて5回のすすぎ洗いサイクルを行い、遠心分離機にかけられて、5回洗浄された。反復サイクルの間で試料は、乾燥させなかった。乾燥後に、前記試料は、前記基材の繊維に対して温度が設定されたアイロンを使用して、アイロンがけされた。
【0111】
動的接触角測定
試験液、エマルション、又は懸濁液(通常約3%の固形分で)が、ナイロン66フィルム(デュポンより入手可能)に、当該フィルムのディップコーティングストリップにより付与された。コーティングに先だって、当該フィルムは、メチルアルコールで洗浄された。小型バインダークリップを使用して、ナイロンフィルムの一端を保持し、前記ストリップを処理溶液に浸漬し、次に当該溶液からゆっくりとそして滑らかにに引き上げた。前記コーティングされたストリップは、保護された場所にて最低30分間風乾されて、次に10分間150℃にて硬化された。
【0112】
コーティングされた膜の前進接触角及び後退接触角は、CAHN動的接触角分析器、型式DCA322(ATI(ウィスコンシン州マディソン)より市販されている、制御及びデータ処理用コンピュータを備えたウィルヘルミー(Wilhelmy)バランス装置)を使用して測定した。水及びヘキサデカンを、プローブ液体として使用した。水及びヘキサデカンの両方についての値を報告する。
【0113】
スペーサーオリゴマー1(即ち、SPOL 1)を、4:2:1のモル比のCMH、ODA、及びHSCHCHOHにより調製した。スペーサーオリゴマージオール、即ち、SPOLジオールを、4:2:1のモル比のCMH、ODA、及びHS−CHCHOHCHOHにより調製した。
【0114】
【表2】

【0115】
【表3】

【0116】
【表4】

【0117】
全ての上記生成物は、最初に、有機溶媒(例えば、MIBK、MEK)中で40%にて調製され、続いて水中にて一体化されたカチオン性/非イオン性乳化剤系を使用して後乳化される(実験の項を参照のこと)。
【0118】
付与
本発明の生成物及び参照生成物の水分散液は、PES、PA、PES−CO、及びCO試験布地上に、パッド付与により0.3%SOFで付与されて、次に160℃で1.5硬化される。
【0119】
性能結果
最初の性能結果は、24時間のコンディショニング後に得られる。性能耐久性は、最初に40℃にて処理された布地を標準的洗剤を使用して5回洗濯し、次に120℃にてアイロンがけした後に測定される。
【0120】
性能結果を以下の表及びグラフに示す。
【0121】
PES(0030.1)、0.3%SOF、160℃にて1.5分硬化させた場合、以下の結果が得られた。
【0122】
【表5】

【0123】
PAμ(7819.5)、0.3%SOF、160℃にて1.5分硬化させた場合、以下の結果が得られた。
【0124】
【表6】

【0125】
PES/Co(2681.5)、0.3%SOF、160℃にて1.5分硬化させた場合、以下の結果が得られた。
【0126】
【表7】

【0127】
Co(1511.1)、0.3%SOF、160℃にて1.5分硬化させた場合、以下の結果が得られた。
【0128】
【表8】

【0129】
芳香族SPOLウレタン誘導体類の性能を調査するために追加の試料を調製したが、そこでスペーサーオリゴマー類内の炭化水素コモノマー類の比又は組成は、CMHモノマーを基準として変化させた。ほとんどの場合、これらの組成物は、1個の反応フラスコ内で調製されて、ここで、まず、前記スペーサーオリゴマーを調製し、次に、当該スペーサーオリゴマーを単離させることなく、前記ウレタン誘導体の調製を同一フラスコ内で直接継続した。前記反応は、有機溶媒(例えば、MIBK、MEK)中40%固形分にて実施され、続いて水中にて一体化されたカチオン性/非イオン性乳化剤系を使用して後乳化される(実験の項を参照のこと)。
【0130】
SPOLを単離することなく調製された各種HCコモノマー類を持つ芳香族SPOLウレタン誘導体類
【0131】
【表9】

【0132】
式中、
【0133】
【表10】

【0134】
である。
【0135】
芳香族SPOLウレタン誘導体類上での接触角結果
接触角測定結果を下表に示す。
【0136】
【表11】

【0137】
最初の性能結果は、2+時間のコンディショニング後に得られた。性能耐久性は、41℃(105°F)にて、標準的洗剤を使用して最初に処理した布地を5回洗濯した後、次に約65℃にて混転乾燥させてから測定する。性能結果を以下の表及びグラフに示す。
【0138】
基材:ポリ(アミド)0.6%SOF 硬化:2分、177℃(350°F)
【0139】
【表12】

【0140】
IN ORは、初期撥油性であり、そしてIN SPは、初期噴霧評点である。
【0141】
基材:ポリエステル 0.6%SOF硬化:2分、177℃(350°F)
【0142】
【表13】

【0143】
追加の試料を調製したが、ここで、前記芳香族SPOLウレタン上の置換基は、変化し、HFPOオリゴマーアルコール、尿素結合、C4オリゴマーアルコール類又はステアリルアルコール若しくはジオール類などの他の置換基が挙げられる。これら実施例の2〜3を以下に示す。
【0144】
【表14】

【0145】
ここで、
SPOL4=[4CMH/ODA/BuMA/HSCHCHOH]
基材:ポリ(アミド)0.6%SOF硬化:2分、177℃(350°F)
【0146】
【表15】

【0147】
基材:ポリエステル0.6%SOF硬化:2分、177℃(350°F)
【0148】
【表16】

【0149】
芳香族SPOLウレタン誘導体類の追加の試料を調製したが、ここでコモノマーは、親水性モノマーに類似のビニルピロリジノン又はビニルカプロラクタムである。
【0150】
以下の実施例にて、本発明を更に説明する。
【0151】
SPOL内に親水性コモノマー類を有する芳香族SPOLウレタン誘導体類
【0152】
【表17】

【0153】
【表18】

【0154】
【表19】

【0155】
MHモノマー及びC13CHCHO−MDI−HEAモノマーは、米国特許第2005/0143541A1号に記載されるようにして調製されてもよく、それは、CCHCHOHの代わりに使用されるC13CHCHOH(クラリアント)と併せて、そのまま参照として本明細書に組み込まれる。
【0156】
1.合成スペーサー−オリゴマーアルコールFC−1(実施例 CE−1):
4CMH-2ODA-HSCHCHOH
250mLの重合ボトルが、57.8gのL−18972(CMH;80meq)、12.96gのODA(オサカ社より;40meq)、1.56gの2−メルカプトエタノール(20meq)、108.5gのMIBK及び0.217gのV−59で充填された。前記混合物を、ウオータージェット真空を使用して繰り返し脱気し、続いて窒素雰囲気で当該真空を破壊した。前記重合ボトルを密閉し、20.9rad/s(200rpm)にて、全てのモノマー類が溶解するまで振盪させた。次に、75℃にて予熱した洗濯試験機(Launder-o-meter)内で前記重合を3時間行った。別の0.217gのV−59が添加され、脱気及び密封後に、反応が更に3時間、75℃にて行われた。次に、0.434gのLPOが添加され、脱気及び密封後に、反応が、一晩、75℃にて継続された。濁った40%溶液が得られて、97%のCMHモノマーが転化された。MIBKをビュッヒ社製ロータリーエバポレーターにて、水ジェット真空を使用して取り除いた。更に、固形分を強制空気オーブン内にて75℃で一晩乾燥させた。
【0157】
2.合成スペーサー−オリゴマージオールFC−2(実施例 CE−2)
4CMH-2ODA-HSCHCHOHCHOH
250mLの重合ボトルが、28.9gのL−18972(CMH;40meq)、6.48gのODA(オサカ社より;20meq)、1.08gの3−メルカプト−1,2−プロパンジオール(10meq)、54.7gのMIBK及び0.109gのV−59で充填された。前記混合物を、ウオータージェットによる真空を使用して繰り返し脱気し、続いて窒素雰囲気にて当該真空を破壊した。前記重合ボトルを密閉し、20.9rad/s(200rpm)にて、全てのモノマー類が溶解するまで振盪させた。次に、75℃にて予熱した洗濯試験機(Launder-o-meter)内で前記重合を3時間行った。別の0.109gのV−59を添加し、脱気及び密封後に、更に3時間、75℃にて反応させた。次に、0.219gのLPOを添加し、脱気及び密封後に、一晩、75℃にて反応を継続させた。濁った40%溶液を得た。MIBKをビュッヒ社製ロータリーエバポレーターにて、水ジェット真空を使用して取り除いた。更に、固形分を強制空気オーブン内にて75℃で一晩乾燥させた。
【0158】
2.A.下記実施例12にて使用される合成スペーサー−オリゴマーアルコール(SPOL2)
2.68CMH-1.32ODA-HSCHCHOH
磁性攪拌器、加熱マントル、温度計、冷却管及び窒素導入口を備えた250mLの三つ口反応フラスコに、79.28gのCMH(11meq)、17.53gのODA(オサカ社より、54meq)、及び75gの酢酸エチルを充填した。前記フラスコをウオータージェットによる真空を使用して3回脱気させ、毎回窒素雰囲気にて真空を破壊した。次に、3.20g(41meq)の2−メルカプトエタノールを添加した。前記混合物を75℃まで加熱し、次に0.4グラムのVAZO67を添加した。一晩放置した。追加で0.2gのVAZO67を添加し、次に更に8時間75℃にて反応させた。前記生成物を冷却し、次に結晶皿に移し、空気中で一晩乾燥させた。前記生成物を固体として単離し、乳鉢及び乳棒ですりつぶして粉末にした。
【0159】
3.合成スペーサー−オリゴマーウレタンFC−3(試料10)
(4CMH-2ODA-HSCHCHOH)/1.2ボラネートM220/2.6MEKO
乾燥FC−1アルコール(278.3g;77meq)及び548gのMEKを、機械的撹拌機、加熱マントル、温度計、ディーンスターク(Dean Stark)社製冷却管を備えた2リットルの三つ口フラスコ内に充填した。50gのMIBK/H2O共沸混合物をディーンスターク(Dean Stark)社製冷却管によって留去した。前記ディーンスターク(Dean Stark)を通常の還流凝縮器で置き換えた後、前記混合物を65℃まで冷却し、37.38gのボラネート(Voranate)M−220(277meq)を添加した。前記反応混合物を2時間75℃にて加熱し、65℃まで冷却し、16.06gのMEKO(185meq)を注射器で添加した。30分75℃で反応させた後、1.61gの追加のMEKO(18.5meq)を添加した。前記反応を50℃にて一晩続けた。ほぼ透明の薄い茶色溶液が生じた。FTIR分析によると完全な転化が示された。
【0160】
4.乳化FC−3
前記FC−3反応混合物は、次のようにして乳化した。820gのFC−3ウレタン溶液(328gの固形分)を65℃まで加熱し、エトクァッド(商標)C−12(2%の固形分)、テルギトール(TERGITOL)(商標)15S30(3%の固形分)及びテルギトール(TERGITOL)(商標)TMN−6(5.4%の固形分)の熱溶液(MEKで飽和させた1358gの水に溶解)に攪拌下で徐々に添加した。前記混合物は、2段階研究室用マントン−ゴーリン(Manton-Gaulin)ホモジナイザーにより、250/2MPa(20バール)にて乳化した(2回)。前記溶媒を、ビュッヒ社製ロータリーエバポレーターにて、ウオータージェットによる真空を使用して取り除いた。安定した、乳白色の分散体を得た(20.1%の固形分)。
【0161】
実施例2、3、4、5、6、9、及び10は、MEKの代わりにMIBKを用い、下表の重量(g)を使用した以外は、レシピFC−3と同様の手順に従って調製した。
【0162】
【表20】

【0163】
5.合成スペーサー−オリゴマーウレタンFC−4(実施例7)
(4CMH-2ODA-HSCHCHOH)/デスモデュール(DESMODUR)N3300/2MEKO
乾燥FC−1アルコール(6.0g;1.67meq)及び10.7gのMIBKを、反応容器内で65℃まで加熱した。0.84gのデスモデュール(DESMODUR)N3300(5meq)を添加後、前記反応を2時間75℃にて行った。前記混合物を65℃まで冷却し、0.29gのMEKO(3.3meq)を注射器にて添加した。前記反応を一晩70℃にて継続させて、濁った溶液を生じさせた。FTIR分析によると完全な転化が示された。
【0164】
5A.合成スペーサー−オリゴマーウレタン(実施例12)
(2.68CMH-1.32ODA-HSCHCHOH)/1.0PAPI27/2MEKO
乾燥SPOL2(40.46g;16.5meq)、6.65gのPAPI27(49.6meq)、0.15mLの10%ジブチルスズジラウレート溶液(酢酸エチル中)及び200gの酢酸エチルを、磁性攪拌器、加熱マントル、冷却管、温度計及び窒素導入口を備えた250mLの三つ口フラスコ内に充填した。前記反応混合物を、3時間74℃にて加熱した。次に、2.88gのMEKO(33meq)を添加した。反応は、一晩継続させた。前記溶液は、反応温度においては透明であった。
【0165】
5B.乳化 実施例12
前記反応混合物は、次のようにして乳化した。125gの2−69ウレタン溶液(25gの固形分)を、依然として熱い(〜65℃)、500mL三角フラスコ内に置かれた上記バッチから、攪拌しながらそしてホットプレート上で加熱して取り除いた。界面活性剤溶液の混合物を徐々に熱い撹拌反応混合物へ添加した。界面活性剤溶液は、125gの脱イオン水内にて、エトクァッド(商標)C−12(2%の固形分)、テルギトール(TERGITOL)(商標)15S30(3%の固形分)及びテルギトール(TERGITOL)(商標)TMN−6(5.4%の固形分)から成る。前記混合物は、コール・パーマー(Cole Parmer)社製研究室用超音波破砕機を使用して5分間粉砕した。前記酢酸エチルは、ウオータージェット真空付きのロータリーエバポレーターを使用して取り除いた。不透明な分散体(118グラム)が、19.3%の固形分にて得られた。
【0166】
6.合成スペーサー−オリゴマーウレタンFC−5(実施例6)
(4CMH-2ODA-HSCHCHOH)/デスモデュール(DESMODUR)N3300/2 2EH
乾燥FC−1アルコール(6.0g;1.67meq)及び11.0gのMIBKを、反応容器内で65℃まで加熱した。0.84gのデスモデュール(DESMODUR)(商標)N3300(5meq)を添加後、前記反応を2時間75℃にて行った。前記混合物を65℃まで冷却し、0.43gの2−エチルヘキサノール(3.3meq)を注射器にて添加した。前記反応を一晩70℃にて継続させて、濁った溶液を生じさせた。FTIR分析によると完全な転化が示された。
【0167】
6A.その場(In-Situ)合成スペーサー−オリゴマーウレタン類(実施例13〜17)
実施例13〜17のウレタン類は、官能性オリゴマー:PAPI27:MEKOのモル比が1:1:2のFC−5の手順に従って調製したが、ここで、工程1で調製した前記官能性オリゴマー組成物は、以下に示すモル比を有する。
【0168】
【表21】

【0169】
6B.その場(In-Situ)合成スペーサー−オリゴマーウレタン類(実施例18〜21)
実施例18〜21のウレタン類は、追加の官能性有機基(R’)を前記PAPI27と反応させたこと以外は、FC−5の手順に従って調製したが、ここで、[官能性オリゴマー:PAPI27:MEKO:R’]のモル比は、以下に示す通りであり、いずれの場合にも、前記SPOL4(官能性オリゴマー)は、[4CMH/ODA/BuMA/HSCHCHOH]の組成を有した。
【0170】
【表22】

【0171】
いずれの場合にも、R’構成成分は、手順の工程2の初めにMIBK溶媒とともに、共沸蒸留工程に先だって添加された。
【0172】
6C.その場(In-Situ)スペーサー−オリゴマーウレタン試料
(4C13CHCHOH−MDI−HEA/2ODA/HSCHCHOH)/1.2PAPI27/2.6MEKO
工程1:官能性オリゴマーの合成
4 C13CHCHO−MDI−HEA/2ODA/HSCHCHOH
磁性攪拌器、加熱マントル、温度計、冷却管及び窒素導入口を備えた250mLの三つ口反応フラスコに、16.08g(22meq)のC13CHCHO−MDI−HEAモノマー、3.58g(11meq)のODA(オサカ社より)、及び37gの酢酸エチルを充填した。前記フラスコを脱気させ、ウオータージェット真空を使用して窒素を3回充填した。次に、0.43g(5.5meq)の2−メルカプトエタノールを添加した。前記混合物を75℃まで加熱し、次に0.06グラムのVAZO67を添加した。4〜6時間後、0.05グラムのVAZO67を追加充填した。反応を一晩進行させた。
【0173】
工程2:官能性オリゴマーからのウレタン合成
反応は、翌日、75gの酢酸エチルの添加によって続けられ、その内の65mLは、ディーン・スターク・トラップを用いた共沸蒸留によって除去された。蒸留後、反応混合物を40℃まで冷却し、PAPI27(2.66g、19.8meq)を添加した。前記反応混合物を75℃に戻し、続いて酢酸エチル中の0.1mLの10%ジブチルスズジラウレート溶液を添加した。反応を3時間行った。MEKO(1.25g、14.3meq)を添加し、反応を更に2時間進行させた。FTIR分析は、イソシアネート基が完全に反応したことを示した。反応混合物のごく一部(〜5mL)が、接触角の調査のために除去された。
【0174】
工程3:スペーサー−オリゴマーウレタンの乳化
反応混合物の残りを、96gの脱イオン水中のエトクァッド(商標)C−12(2%の固形分)、テルギトール(TERGITOL)(商標)15S30(3%の固形分)及びテルギトール(TERGITOL)(商標)TMN−6(5.4%の固形分)の75℃溶液を熱酢酸エチルウレタン溶液にゆっくりと添加することにより、乳化した。前記混合物は、コール・パーマー(Cole Parmer)社製研究室用超音波破砕機を使用して5分間粉砕された。前記酢酸エチルは、ウオータージェット真空付きのロータリーエバポレーターを使用して取り除かれた。乳白色の分散体を19.6%固形分で得た。
【0175】
オリゴマー類
CJ−1:ウレタン22にて使用されるオリゴマーは、使用されるモノマー類の比が(CMH)(ODA)1(1−ビニルピリリジノン)1-HSCHCHOHであり、そして反応開始剤がVAZO−69であること以外は、FC−1と同一の方法により作られた。
【0176】
CJ−2:ウレタン23にて使用されるオリゴマーは、使用されるモノマー類の比が(CMH)4(ODA)1(1−ビニルカプロラクタム)1-HSCHCHOHであり、そして反応開始剤がVAZO−69であること以外は、FC−1と同一の方法により作られた。
【0177】
CJ−3:ウレタン24にて使用されるオリゴマーは、使用されるモノマー類の比が(CMH)4(1−ビニルピリリジノン)2-HSCHCHOHであり、そして反応開始剤がVAZO−69であること以外は、FC−1と同一の方法により作られた。
【0178】
CJ−4:ウレタン25にて使用されるオリゴマーは、使用されるモノマー類の比が(CMH)(1−ビニルカプロラクタム)2-HSCHCHOHであり、そして反応開始剤がVAZO−69であること以外は、FC−1と同一の方法により作られた。
【0179】
ウレタン類
合成及び乳化手順は、以下のようなものであった。
【0180】
ウレタン22
合成手順は、ウレタンFC−3と同一であり、ボラネートM220はPAPI27と置き換えられ、FC−1オリゴマーはCJ−1と置き換えられた。
【0181】
ウレタン23
合成手順は、ウレタンFC−3と同一であり、ボラネート(商標)M220はPAPI27と置き換えられ、FC−1オリゴマーはCJ−2と置き換えられた。
【0182】
ウレタン24
合成手順は、ウレタンFC−3と同一であり、ボラネート(商標)M220はPAPI27と置き換えられ、FC−1オリゴマーはCJ−3と置き換えられた。
【0183】
ウレタン25
合成手順は、ウレタンFC−3と同一であり、ボラネート(商標)M220はPAPI27と置き換えられ、FC−1オリゴマーはCJ−4と置き換えられた。
【実施例2】
【0184】
本発明の生成物及び参照生成物の水分散液は、PES、PES−CO、及びナイロン試験布地上に、パッド付与により0.6%SOFで付与されて、次に160℃で1.5分硬化される。
【0185】
最初の性能結果は、24時間のコンディショニング後に得られる。性能耐久性は、最初に40℃にて処理した布地を標準的洗剤を使用して5回以上洗濯した後に測定される。
【0186】
選択された実施例の詳細手順:CMH/PEGDA−700(90/10)の20%の固形分での調製
1リットルボトルに、酢酸エチル(EtOAc)中の246gのCMH溶液(36.6%の固形分、90gの固形分、分子量723、124.5mmol)、10gのポリエチレングリコールジアクリレート(分子量〜700)(PEGDA−700)、244gの追加のEtOAc及び1.0gのVazo−67を充填した。電磁攪拌棒を加えた。前記溶液を窒素にて2分間泡立てた。密閉したボトルを70℃の油浴内に置き、磁気撹拌させながら24時間重合させた。得られた20%固形分のポリマー溶液は、70℃でゲル化することなく透明な溶液であった。室温まで冷却したときに、ポリマーの結晶化が幾分発生した。結晶化されたポリマーは、単に溶液を加熱するか、又はN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)又はN−メチルピロリドン(NMP)などの極性溶媒を添加することにより再度溶解された。溶液のHPLC分析は、Mn〜11,300、Mw〜121,000、及びMw/Mn=1.02であることを示す。前記ポリマーは、評価のために5%ARQUAD(商標)12/50の存在下で乳化された。
【0187】
ウレタン含有ポリアクリレート、C4−MDI−HEA/CN992(90/10、2−12B)の調製のための代表例:
0.24L(8オンス)のボトルに、EtOAc溶液(〜36重量%、9.0g固形分)内の25gのCMDIHEA(MW=723、62.24mmol)の溶液、1.0gのCN922(サルトマー社(Sartomer)より入手可能な芳香族ポリエステル系ウレタンジアクリレートオリゴマー、〜1%)、24gのEtOAc及び0.15gのVazo−67を充填した。電磁攪拌棒を加え、前記溶液を窒素にて2分間泡立てた。密閉したボトルを70℃の油浴内に置き、磁気撹拌させながら24時間重合させた。20%の固形分を有する得られた溶液は、70℃で透明であり、室温では曇り気味に変化した。
【0188】
全てのポリマー類は、接触角測定のために5%DMF及びEtOAcによって5%まで希釈された。前記ポリマーは、繊維評価のために5%ARQUAD(商標)12/50の存在下で乳化された。
【0189】
接触角データ
【0190】
【表23】

【0191】
繊維材料上の性能データ
【0192】
【表24】

【0193】
【表25】

【0194】
【表26】

【0195】
【表27】

【0196】
結論として、ウレタン含有ポリアクリレート類は、ウレタンを含有しないポリアクリレート類と比較して、繊維材料に対して良好な初期性能を示すだけでなく、多数回の洗濯に対して著しく改善された耐久性を示す。
【0197】
本発明への様々な改良及び変更は、本発明の範囲及び趣旨から逸脱せずに、当業者に明らかになるであろう。本発明は、本明細書中で説明される実例となる実施形態及び実施例によって不当に限定されるものではないこと、上記の実施例及び実施形態が、以下に本明細書中で説明される特許請求の範囲によってのみ限定されることを目的とする本発明の範囲のみ例として提示されていることを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1種の官能化連鎖移動剤の存在下で、フルオロケミカルスペーサーモノマー類のオリゴマー化生成物を単独で、又は他の重合性モノマー類と組み合わせて含む、フルオロケミカルスペーサーオリゴマーと、
(b)2価、3価又は4価イソシアネート又はこれらの組み合わせと、
(c)任意選択的に、少なくとも1種のイソシアネート反応性基及び/又は封鎖基と
(d)任意選択的に、少なくとも1種の多官能鎖延長剤と、
を反応させることにより調製されるフルオロケミカルポリウレタン化合物。
【請求項2】
式(I)で表されるフルオロケミカルポリウレタン化合物:
【化1】

式中、
は、フルオロケミカルスペーサーモノマーから誘導されるm単位と、重合性モノマーから誘導される1単位と、を含むフルオロケミカルスペーサーオリゴマーであり、ここで、当該フルオロケミカルモノマー類及び重合性スペーサーモノマー類は、同一であっても異なっていてもよく、
mは、2〜40の数字であり(2及び40を含む)、
lは、0〜20の数字であり(0及び20を含む)、
Tは、水素原子を、連鎖移動剤から除去することにより得られる有機連結基であり、そして当該残基Tは、同一でも異なっていてもよく、
Zは、水素原子を有機マスキング又は封鎖基から除去することにより得られる残基であり、当該残基Zは、同一であっても異なっていてもよく、
Aは、2つ、3つ、又は4つの−NCO基を、対応するイソシアネートから除去することにより得られる2価、3価又は4価の残基であり、当該残基Aは、同一であっても異なっていてもよく、
Bは、2つのX−H基を、2官能性活性水素化合物・HX−B−XHから除去することにより得られる2価の有機残基であり、式中、Xは、O、NH、又はSであり、当該残基Bは、同一であっても異なっていてもよく、
aは、1〜3の数字であり(1及び3を含む)、bは、0〜2の数値であり(0及び2を含む)、ただしa+bは、1〜3の値を有し(1及び3を含む)、
cは、0〜30の数値であり(0及び30を含む)、
d及びeは、0〜2の数値であり(0及び2を含む)、ただしd+eは、2以下である。
【請求項3】
式(III)で表されるフルオロケミカルポリウレタン化合物:
【化2】

式中、
−Mは、フルオロケミカルスペーサーモノマーMから誘導されるm単位と、フッ素化されていてもフッ素非含有でもよい1種または2種以上の他の重合性モノマーMから誘導される1単位と、を含むフルオロケミカルスペーサーオリゴマーであり、ここで、当該フルオロケミカルスペーサーモノマー類及び重合性モノマー類は、同一であっても異なっていてもよく、
mは、2〜40の数字であり(2及び40を含む)、
lは、0〜20の数字であり(0及び20を含む)、
Tは、水素原子を、連鎖移動剤から除去することにより得られる有機連結基であり、当該残基Tは、同一であっても異なっていてもよく、
Zは、水素原子を、イソシアネート反応性基又は封鎖基から除去することにより得られる残基であり、当該残基Zは、同一であっても異なっていてもよく、
Aは、2つ、3つ、又は4つの−NCO基を、対応するイソシアネートから除去することにより得られる2価、3価又は4価の残基であり、
aは、1〜4の数値であり(1及び4を含む)、bは、0〜3の数値であり(0及び3を含む)、ただしa+bは、2〜4の値を有する。

【公表番号】特表2009−500474(P2009−500474A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−519606(P2008−519606)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際出願番号】PCT/US2006/025550
【国際公開番号】WO2007/002894
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】