説明

低騒音舗装の補修工法及びその低騒音舗装体の積層構造

【課題】既設のアスファルト系低騒音舗装(排水性舗装)の表面を切削したり、交換したりすることなく既設のアスファルト系低騒音舗装体そのままの状態を有効に利用して施工することで、騒音低減効果を回復させることが出来、安価で短時間に作業を行うことが出来る低騒音舗装の補修工法及びその低騒音舗装体の積層構造を提供する。
【解決手段】この発明の第1実施形態では、図1に示すように、前記天然系骨材4が露出した低騒音舗装2の表面2aに、硬質骨材4a及び/または弾性骨材4bを樹脂系バインダ6で固結して成る空隙3aを有する吸音被覆層7を所定の厚さHで積層して成る低騒音舗装体2A、即ち、排水性舗装体の積層構造を構成するものである。前記硬質骨材4aとしては、珪砂、自然石、人工石、樹脂系チップ等を例示することが出来、また弾性骨材4bとしては、所謂、ゴム粉やゴムチップ等を例示でき、例えばタイヤ等のゴム製品を破砕して製造したものを用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は低騒音舗装の補修工法及びその低騒音舗装体の積層構造に係わり、更に詳しくはアスファルト系低騒音舗装において、供用後、空隙部の目詰まりや目潰れ、または粒取れが発生し、アスファルト表面が摩滅し、骨材が露出しているような低騒音舗装に対して、低騒音舗装の表面を切削したり、表層を入れ替えたりすることなく、そのままの状態で利用して騒音低減効果を回復させることが出来る低騒音舗装の補修工法及びその低騒音舗装体の積層構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、砕石又は砂利等からなる天然系骨材をアスファルトで固結してなる排水性舗装構造体は、これまで一般道路や高速道路での雨天時の車両の安全走行を確保するための路面構造体として広く採用されてきている。かかる排水性舗装構造体は、内部に多くの空隙を有する構造になっているために吸音機能を有し、これが車両走行時に発生する騒音を吸収することから、低騒音舗装としても確固たる地位を保ってきた。
【0003】
一方、近年はこれら舗装構造体に代わって、更なる騒音低減効果を付与した材料として、ゴム系骨材をウレタン樹脂等のバインダ−で固結させた多孔質弾性舗装材料の開発が進んでいる。
【0004】
しかしながら、かかる多孔質弾性舗装のブロック成形品は、これを支える基盤との接着性を考慮して、あらかじめ基盤として形成された表面が平滑なコンクリ−ト舗装層、またはアスファルトとセメントミルクの混合物からなる所謂,半たわみ性舗装層との組み合わせにより使用されており、これら基盤の上に接着剤を介して設置されてきたため、これが作業性の低下を招き、施工コストの高騰の原因となっていた。
【0005】
そこで、基層上に形成した砕石又は砂利等からなる天然系骨材をアスファルトで固結して形成した排水性舗装層の上面に小粒径の骨材を樹脂で固結して積層する多孔質弾性舗装層や、基層上に形成された既存の排水性舗装層の表面に、ウレタン系またはエポキシ系の樹脂系プライマ−を塗布し、乾燥後、粘着剤を塗布(タックコート)し、しかる後、小粒径の骨材と樹脂固結材の混合物を積層する舗装構造体、または、基層上に天然系骨材をアスファルトで固形してなる排水性舗装層を形成した後、該排水性舗装層の表面に、ウレタン系またはエポキシ系の樹脂系プライマ−を塗布し、乾燥後、粘着剤を塗布し、しかる後、小粒径の骨材と樹脂固結材の混合物を積層する舗装構造体の施工方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
このような舗装構造体の施工方法により、多孔質弾性舗装層の部分における空隙と排水性舗装層の部分における空隙とが合体して、排水性を阻害することなく、広範囲の周波数域の騒音を効率よく吸収することを可能にした。
【0007】
また、既存の排水性舗装構造体を利用して、その上に多孔質弾性舗装材料を現地にて積層して排水性と吸音性に優れた舗装構造体を得ることを基本とし、既存の排水性舗装構造体のない現場では排水性舗装構造体を形成して、その上に多孔質弾性舗装材料を積層することにより、施工コストを低減した舗装構造体の施工を可能にした。
【0008】
このような排水性舗装2(低騒音舗装)は、図4に示すように、基層上に排水性舗装(低騒音舗装)が敷設され、図3に示すように排水性舗装2は、一般の密粒度アスファルト舗装に対して、3〜5dBの騒音低減が期待され、普及されてきているが、初期に比べ、供用(一般に六年前後)と共に騒音低減効果が低下し、逆に一般の密粒度アスファルト舗装より騒音が大きいケースも発生する。
【0009】
その理由としては、図5に示すように排水性舗装2(低騒音舗装)の空隙3の目詰まりQaや目潰れQb、或いは骨材4の粒取れによる表面凹凸の増大が起因していると考えられる。
【0010】
このような場合、従来の対策としては、既存の排水性舗装を掘削して排水性舗装2を施工する方法がとられていた。しかし、この方法は施工工程が増え施工コストがかかり、掘削に伴う粉塵等の沿道環境への影響や、交通規制に伴う経済的影響も大きいと言う問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002−188102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
この発明はかかる従来の課題に着目し、既設のアスファルト系低騒音舗装(排水性舗装)の表面を切削したり、交換したりすることなく既設のアスファルト系低騒音舗装体そのままの状態を有効に利用して施工することで、騒音低減効果を回復させることが出来、安価で短時間に作業を行うことが出来る低騒音舗装の補修工法及びその低騒音舗装体の積層構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は上記目的を達成するため、この発明の低騒音舗装の補修工法は、天然系骨材が露出した既設の低騒音舗装の表面や凹部に付着堆積した粉塵類を除去し、この清掃した低騒音舗装の表面に、硬質骨材及び/または弾性骨材を樹脂系バインダで固結して成る空隙を有する吸音被覆材を所定の厚さで被覆積層して吸音被覆層を形成することを要旨とするものである。
【0014】
ここで、前記清掃した低騒音舗装の表面にプライマーを塗布した後、吸音被覆材を所定の厚さで被覆積層して吸音被覆層を形成し、吸音被覆層の厚さは、硬質骨材の平均粒径の2.5倍以上、30mm以下であり前記樹脂系バインダが、湿気硬化型ウレタン樹脂バインダである。
【0015】
また、この発明の低騒音舗装体の積層構造は、天然系骨材が露出した低騒音舗装の表層に、硬質骨材及び/または弾性骨材を樹脂系バインダで固結して成る空隙を有する吸音被覆層を所定の厚さで積層して成ることを要旨とするものである。
【0016】
ここで、前記樹脂系バインダが、湿気硬化型ウレタン樹脂バインダであり低騒音舗装が、排水性舗装体である。また、前記吸音被覆層の厚さが、硬質骨材の平均粒径の2.5倍以上、30mm以下であり、前記吸音被覆層が、既設低騒音舗装の凹部のみに敷設充填する場合も含む。
【0017】
更に、前記低騒音舗装は、現場透水量試験器による15秒間の現場透水量が600ml未満であり、前記低騒音舗装は、路面反射音測定器による吸音率が15%未満である。
【発明の効果】
【0018】
この発明は上記のように構成したので、以下のような優れた効果を奏するものである。(a).既設の低騒音舗装の表面を切削したり、交換したりすることなくそのままの状態で利用して施工することで、騒音低減効果を回復させることが出来る。
(b).安価な短時間の補修工法とすることが出来る。
(c).透水性があるため、弾性舗装材としての排水性を高めることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の低騒音舗装の第1実施形態を示す弾性舗装道路の一部断面図である。
【図2】この発明の低騒音舗装の第2実施形態を示す弾性舗装道路の一部断面図である。
【図3】騒音レベル(dB)と施工後の経年(年)との関係におけるタイヤ近接騒音測定結果を示すグラフ説明図である。
【図4】従来の低騒音舗装の一部断面図である。
【図5】従来の低騒音舗装の空隙の目詰まりや目潰れ、或いは骨材と共に、アスファルトの表面は摩滅し、骨材が露出している状態を示す弾性舗装道路の一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面に基づき、この発明の実施形態を説明する。 なお、以下の説明において、従来例と同一構成要素は同一符号を付して説明は省略する。
【0021】
図1はこの発明の低騒音舗装体の第1実施形態を示す弾性舗装道路の一部断面図を示し、1は弾性舗装道路の基層、2は基層1上に敷設されたアスファルト系の低騒音舗装(排水性舗装)を示し、この低騒音舗装2は、砕石または砂利から成る天然系骨材4をアスファルト5で固結して積層構造に構成してある。
【0022】
そして、この発明の第1実施形態では、図1に示すように、アスファルトが摩滅し、前記天然系骨材4が露出した低騒音舗装2の摩滅後の表面2aに、硬質骨材4a及び/または弾性骨材4bを樹脂系バインダ6で固結して成る空隙3aを有する吸音被覆層7を所定の厚さHで積層して成る低騒音舗装体2A、即ち、排水性舗装体の積層構造を構成するものである。
【0023】
前記硬質骨材4aとしては、珪砂、自然石、人工石、樹脂系チップ等を例示することが出来、また弾性骨材4bとしては、所謂、ゴム粉やゴムチップ等を例示でき、例えばタイヤ等のゴム製品を破砕して製造したものを用いることができる。
【0024】
また、前記樹脂系バインダ6としては、湿気硬化型1液ポリウレタン樹脂または2液ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂等を例示することができ、湿気硬化型1液ウレタン樹脂を用いると弾性を得やすく、かつ2液を調整して混合する必要がなく施工が迅速、容易に行なうことができ、現場施工する場合には特に好ましい。
【0025】
前記吸音被覆層7の厚さHは、硬質骨材4aの平均粒径の2.5倍以上、30mm以下が好ましく、平均粒径の2.5倍未満であると、層の強度が不足し、30mmを超えると、吸音効果を考慮した場合、無駄にコストが高くなると言うような問題がある。
【0026】
また、前記吸音被覆層7は、図2に示すように既設の低騒音舗装2の凹部2xのみに敷設して充填することも可能である。
【0027】
排水性舗装は、現場透水量試験器による15秒間の現場透水量が600ml未満であったり、路面反射音測定器による吸音率が15%未満であったりした場合、その機能性が低下したと判断して良い。
【0028】
次に、砕石または砂利から成る天然系骨材4をアスファルト5で固結して成る低騒音舗装体2Aの補修工法について説明する。
【0029】
先ず、天然系骨材4が露出した既設の低騒音舗装2の表面や、表面付近の凹部に付着,堆積した粉塵類を高圧洗浄装置等を使用して除去し、この清掃した低騒音舗装2の表面に、硬質骨材4a及び/または弾性骨材4bを樹脂系バインダ6で固結して成る空隙を有する吸音被覆材を所定の厚さで被覆積層して吸音被覆層7を形成する。
【0030】
なお、前記清掃した低騒音舗装2の表面にプライマーを塗布した後、吸音被覆材を所定の厚さで被覆積層して吸音被覆層7を形成することも可能である。
【0031】
前記吸音被覆層7の厚さHは、上述したように、硬質骨材4aの平均粒径の2.5倍以上、30mm以下であるが好ましく、前記樹脂系バインダ6としては、湿気硬化型1液ポリウレタン樹脂または2液ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂等を例示することができ、湿気硬化型1液ウレタン樹脂を用いると弾性を得やすく、かつ2液を調整して混合する必要がなく施工が迅速、容易に行なうことができ、現場施工する場合には特に好ましい。
【0032】
このような低騒音舗装体の補修工法を実施することで、既設の低騒音舗装体の表面を切削したり、交換したりすることなくそのままの状態で利用して施工することで、騒音低減効果を回復させることが出来る。また、既設の低騒音舗装をそのままで利用するので、安価な補修工法とすることが出来、更に透水性があるため、弾性舗装材としての排水性を高めることが出来るものである。
【0033】
〔実施例〕
なお、上記の実施形態における低騒音舗装体のタイヤ近接音の測定結果は、以下の〔表1〕と、図3に示す通りであった。
【0034】
【表1】

【0035】
表1及び図3から明らかなように、排水性舗装,低騒音舗装体,密粒度アスファルト舗装を、初期(0年),供用(15カ月),供用(3年),供用(6年)を比較すると、密粒度アスファルト舗装及び排水性舗装は、経年と共に騒音レベルが高くなるのに対して低騒音舗装は、上記両舗装に比べて騒音レベルが低いことが判った。
【0036】
従って、低騒音舗装体は、一般の密粒度アスファルト舗装に対して、5dB以上の騒音低減効果を得ることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0037】
この発明では、一般道路、高速道路における低騒音弾性舗装道路の構造や、その補修工法として有効に実施することが出来、またこの他に弾性舗装材料を敷設する遊歩道や全天候型の運動場や室内運動場にも利用することが出来る。
【符号の説明】
【0038】
1 基層
2 排水性舗装(低騒音舗装)
2a 低騒音舗装の摩滅後の表面
2A 低騒音舗装体
3,3a 空隙
4 天然系骨材
4a 硬質骨材
4b 弾性骨材
5 アスファルト
6 樹脂系バインダ
7 吸音被覆層
H 吸音被覆層の厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
砕石または砂利から成る天然系骨材をアスファルトで固結して成る低騒音舗装の補修工法において、
前記天然系骨材が露出した既設の低騒音舗装の表面や凹部に付着堆積した粉塵類を除去し、この清掃した低騒音舗装の表面に、硬質骨材及び/または弾性骨材を樹脂系バインダで固結して成る空隙を有する吸音被覆材を所定の厚さで被覆積層して吸音被覆層を形成する低騒音舗装の補修工法。
【請求項2】
前記清掃した低騒音舗装の表面にプライマーを塗布した後、吸音被覆材を所定の厚さで被覆積層して吸音被覆層を形成する請求項1に記載の低騒音舗装の補修工法。
【請求項3】
前記吸音被覆層の厚さは、硬質骨材の平均粒径の2.5倍以上、30mm以下である請求項1または2に記載の低騒音舗装の補修工法。
【請求項4】
前記樹脂系バインダが、湿気硬化型ウレタン樹脂バインダである請求項1,2または3に記載の低騒音舗装体の積層構造。
【請求項5】
砕石または砂利から成る天然系骨材をアスファルトで固結して成る低騒音舗装体の積層構造において、
前記天然系骨材が露出した低騒音舗装の表層に、硬質骨材及び/または弾性骨材を樹脂系バインダで固結して成る空隙を有する吸音被覆層を所定の厚さで積層して成る低騒音舗装体の積層構造。
【請求項6】
前記樹脂系バインダが、湿気硬化型ウレタン樹脂バインダである請求項5に記載の低騒音舗装体の積層構造。
【請求項7】
前記低騒音舗装が、排水性舗装である請求項5または6に記載の低騒音舗装の積層構造。
【請求項8】
前記吸音被覆層の厚さが、硬質骨材の平均粒径の2.5倍以上、30mm以下である請求項5,6または7に記載の低騒音舗装体の積層構造。
【請求項9】
前記吸音被覆層が、既設低騒音舗装の凹部のみに敷設充填した請求項5,6,7または8に記載の低騒音舗装体の積層構造。
【請求項10】
前記低騒音舗装が、現場透水量試験器による15秒間の現場透水量が600ml未満である請求項5,6,7,8または9に記載の低騒音舗装体の積層構造。
【請求項11】
前記低騒音舗装が、路面反射音測定器による吸音率が15%未満である請求項5,6,7,8,9または10に記載の低騒音舗装体の積層構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−80203(P2011−80203A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−231179(P2009−231179)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】