体液の流れ又は組織の運動の画像を増強するための適応式時間フィルタリング
【課題】特性が高められた改良形の適応式時間フィルタリングシステムを提供する。
【解決手段】ドップラー情報信号又は時間シフト情報のエネルギー、パワー又は振幅が、時間持続性のために大きな重み係数又は小さい重み係数を選択するためにしきい値と比較される。“フラッシュ”信号又は強い動脈血の流れの信号の場合、小さい重み係数が選択され、前のフレームの間の平均値のフィードバックによって時間持続性の範囲を減少し、その結果、“フラッシュ”信号又は強い流れの信号の効果がその後のフレームのイメージング中に迅速に消散し、現フレームの間良好な時間解像度が保存される。低エネルギーの流れ信号においては、大きな重み係数が選択され、低エネルギー信号の信号対雑音を改善する。同様な効果は、所定のしきい値を超えないように信号をクリップすることによって達成できる。
【解決手段】ドップラー情報信号又は時間シフト情報のエネルギー、パワー又は振幅が、時間持続性のために大きな重み係数又は小さい重み係数を選択するためにしきい値と比較される。“フラッシュ”信号又は強い動脈血の流れの信号の場合、小さい重み係数が選択され、前のフレームの間の平均値のフィードバックによって時間持続性の範囲を減少し、その結果、“フラッシュ”信号又は強い流れの信号の効果がその後のフレームのイメージング中に迅速に消散し、現フレームの間良好な時間解像度が保存される。低エネルギーの流れ信号においては、大きな重み係数が選択され、低エネルギー信号の信号対雑音を改善する。同様な効果は、所定のしきい値を超えないように信号をクリップすることによって達成できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、超音波診断イメージングシステムに関し、特に、ドップラー又は時間シフトの信号データを増強する適応式時間フィルタリングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のカラードップラーイメージングでは、超音波システム(例えば、アクソン(Acuson) XP)は、受信ドップラー信号から身体内部の移動ターゲットのインデックスを得る。例えば、平均速度、加速度、エネルギー標準偏差(又は速度変動)は、移動血球又は移動心筋層又は他の組織のいずれかから測定できる。これらのインデックスは受信ドップラー信号から推定される。全ての物理的測定と同様に、推定値はランダム変動又はランダム雑音を含んでいる。
【0003】
ランダム雑音を減らすために、複数のドップラーサンプルが取得され、ともに平均化される。これらのサンプルを平均化することによって、ランダム雑音は相殺する傾向があるのに対して、実際の基本的な信号は強められる傾向があり、それによって信号対雑音比(SNR)を改善する。サンプルは時間的に連続的に採取されるので、この平均操作はサンプルされたドップラー信号の時間積分に等しい。一般的に持続性(persistence)とも呼ばれる時間積分はシステムの感度を改善し、それによってユーザは最小のドップラー信号を検出できるため、この時間積分は良好なカラードップラー性能にとって重要である。SNRの増加は従来のカラードップラー速度イメージングモードにとっても重要であるが、この増加は、目的がまさしく最少の血液の流れ及び灌流の信号を検出することにある、より最近のカラードップラーエネルギーイメージングモードにとってとりわけ重要である。
【0004】
典型的には、時間積分は、身体のある場所の血液の流れの情報を含む現在のドップラーサンプルを採取し、それ以前の時点における体の同じ場所の血液の流れを含む特定の数の以前のドップラーサンプルに加算する。時々、これらの以前のドップラーサンプルは、最も古いドップラーサンプルが積分値に最も少なく寄与するように、“重み”を付けることができる。持続性の量はユーザが選択できるパラメータであり、積分に含まれた以前のドップラーサンプルの数又は以前のドップラーサンプルの重み付けのいずれかを変更する。典型的なアプローチでは、現在の持続性機能は、入力データシーケンスx(n)についてのフィードバック回路を使用して実行され、持続データy(n)は下記のように記述される。
y(n)=x(n)+a*y(n−1)
ここで、aは所望の持続性の程度に従ってユーザにより選択された固定定数であり、nはサンプル数である。
【0005】
過去の(従来の)時間積分処理は、例えば、その強度のような他のファクターに関係なく全ての受信ドップラー信号に一様に適用される。したがって、持続性が増加するにつれて、カラードップラー信号の全ての面が持続される。ここで、弱い信号及び強い信号の両方が同様に持続される。下記のことは欠点を示す事例である。
【0006】
まず第一に、医者が移動しトランスジューサを再配置するか、又は患者が病床環境内で呼吸をするかもしくは移動するとき、非常に高い振幅のドップラー信号が、トランスジューサ又は組織の運動から発生する。さらに、心臓血管系統からの脈拍は体の隅から隅まで伝搬し、大部分の組織の運動アーチファクトを生じる。これらの種類の運動は、弱い血液の流れ信号からのエコー振幅よりも数倍大きいエコー振幅を生成する。この結果、大きな帯状のカラーがビデオディスプレイ上に表示されるカラー“フラッシュ”アーチファクトを生じ、関心のある低レベルドップラー信号を不明瞭にする。
【0007】
“フラッシュ”アーチファクトは、時間平均によってさらに強調される。運動する組織の脈拍は短い持続時間の脈拍であることもあるが、積分処理によって時間的に伸長される。過去の時間積分処理は、この“フラッシュ”アーチファクトを区別できず、したがって血液信号と同じぐらい長いか又はそれ以上に長い“フラッシュ”アーチファクトを時間積分(又は持続)する。このカラー“フラッシュ”の長い持続時間は、通常の走査を不明瞭にし、走査処理速度を低下させる。
【0008】
臨床的ユーザが弱い血液灌流と背景ノイズとを区別する必要があるとき、長い時間積分(又は持続性)がしばしば好ましい。しかしながら、また別の流れ状態があり、そこでドップラー信号の時間特性は、例えば、定常の静脈血流量と脈打つ動脈血流量とを区別する際に重要である。これらの流れ状態の両方が同一イメージ中に生じる時間がある。単一の持続性をこれらの持続性の両方に対して最適化することは不可能である。
【0009】
減少された“フラッシュ”アーチファクトとともに優れた感度及び優れた時間解像度が要求される画像状態もある。過去の持続性機能に関しては、臨床医は、より良い感度と、時間解像度及び増加した“フラッシュ”アーチファクトとをトレードオフしなけらばならない。例えば、無差別の持続性処理に関しては、主要な血管から高速の血流は、隣接組織からの弱い灌流信号と同じ量だけ時間積分される。持続性を主要な血管の血液の流れに対して正確に設定すると、弱い灌流信号は雑音の中に埋もれてしまう。その代わりに、持続性を弱い灌流信号に対して正確に設定すると、高速血液の流れは“ゆっくりと”と生じ、そのカラードップラー表示は生理的でない。さらに、あらゆる“フラッシュ”アーチファクトはかなり長く持続し、弱い灌流信号を不明瞭にする。
【0010】
通常、異なる様相のカラードップラー信号が異なって持続されるべき場合もある。
【0011】
従来の方法の上記の問題を考慮して、多数の方式が提案されている。米国特許第5,357,580号では、Forestieri他は、現血流の速度及び以前の血流の速度の重み付け平均値を計算し、血流の速度の関数である重みを使用し、それにより、低速のイメージング情報は十分に平均化されるのに対して、高速運動する血流速度はほとんど又は全く平均化されずに保持されるような時間フィルタリング方式を提案している。システムの出力は速度イメージングモードで表示される。速度は、持続性量を決定するために使用する最良のパラメータではないこともある。さらに、速度イメージングは、特に灌流信号を検出するためには、カラードップラーエネルギーイメージングほど感度が良くない。
【0012】
他のアプローチが、Karpによる米国特許第5,152,292号に開示されている。この特許において、ドップラー信号の速度成分及び大きさ成分は、“フラッシュ”拒否レベルと比較され、“フラッシュ”を含む速度成分を阻止又は無視し、このような成分がカラーのフロー表示回路によって処理されないようにする。この方式は持続性を調整していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前述の方式のいずれも完全に満足なものではない。したがって、特性が高められた改良形の時間フィルタリングシステムを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は下記の一般的なスキームを使用するものである。第1シーケンスのドップラー情報信号は、逐次、身体へ伝送される超音波信号の身体内の体液の流れ又は組織の運動からのエコーを検出することによって取得される。好ましい実施形態では、第1シーケンスの各信号は、対応するフレームにおけるある位置の体液の流れ又は組織の運動からのドップラー情報に関する情報を伝達し、第1シーケンスのその後の信号は、その後の対応するフレームにおける同一位置の同じ情報を伝達する。次に、時間フィルタリングされた信号の第2シーケンスは、第1シーケンスの信号及び/又は第2シーケンスの信号を時間持続することによって第1シーケンスから得られ、第1シーケンスに対応する第2の持続信号のシーケンスとして知られる。第2シーケンスの信号は、平均速度、体液の流れ及び組織の運動の速度の変化及びドップラー情報のエネルギーに関連した情報を含んでいる。本発明は、第1及び/又は第2のシーケンスの信号のエネルギー重み付け平均値として第2のシーケンスの信号を得るために平均化処理を実行するシステムに向けられている。この一般的なスキームは、下記に説明されるような時間シフトの時間フィルタリングにも適用される。
【0015】
第1シーケンスのドップラー情報は、自己相関係数、又は平均速度、速度変化若しくはこれらの係数から得られた推定値の形である。他のドップラー信号の表現法も使用できる。用語“速度”が本出願で使用されているが、ここで処理された量“速度”はドップラー周波数シフトから得られ、平均周波数又は波長の推定値は下記の周知のドップラー式の使用により平均速度推定値に変換されることを理解すべきである。
v = fD*c/2fO*cosθ
ここで、fDはドップラー周波数シフト、cは音の速度、fOは伝送周波数、θはドップラー角度又は超音波ビーム及び流れの方向によって定められる角度である。したがって、“平均速度”が本出願で言及されるときは常に、“平均周波数”又は“平均波長”をその代わりに使用することができる。このような変更は本発明の視野の範囲内である。
【0016】
ドップラー情報又は時間シフト信号を使用して時間平均を実行する代わりに、このような信号のパワー又は振幅を使用して平均化を実行することができる。ここで、パワーは単位時間当たりのこのような信号のエネルギーであり、振幅はパワーの平方根に比例する。簡単にするために、この出願中の用語である信号の“エネルギー関連パラメータ”は、信号の“エネルギー”及び/又は“パワー”及び/又は“振幅”を意味し、引用符の最後の3つの用語は交換可能である。
【0017】
本発明の1つの態様は、身体内部の体液の流れ又は組織の運動の状態をイメージングする超音波診断イメージング方法に向けられ、その方法は、体液の流れ又は組織の運動からのドップラー情報を含む第1の時間シーケンスのドップラー情報信号を提供する工程を含む。この方法は、また、前記第1の時間シーケンスのドップラー情報信号から対応する第2シーケンスの持続信号を生成することを含む。この生成工程は、少なくとも1つの前記持続信号を、2つ以上のドップラー情報信号及び/又は持続信号及び/又はそこから導かれた信号の重み付け平均値として得るために平均化処理を実行することを含む。平均化処理は、1つ以上のドップラー情報信号及び/又は持続信号及び/又はそこから得られた信号のエネルギー関連パラメータの関数である重み係数を採用する。
【0018】
本発明の他の態様は、平均化処理を含む代わりに、生成工程が、結合値がゼロでない所定の値を超えないように、1つ以上の第1シーケンスのドップラー情報信号及び/又は第2シーケンスの持続信号及び/又はそこから導かれた信号の結合値をクリップする工程を含むことを除いて、直前に記載された方法と同じ超音波診断イメージング方法に向けられている。
【0019】
ドップラー情報から前述の第1及び第2の時間シーケンスの信号を生成する代わりに、同様な時間シーケンスを時間シフト情報から得ることができる。したがって、本発明の他の態様は、身体内の体液の流れ又は組織の運動の状態をイメージングする超音波診断イメージング方法に向けられ、その方法は、第1の時間シーケンスの情報信号を提供する工程であって、各々のシーケンスの信号が体液の流れ又は組織の運動から時間シフト情報を含む工程と、前記第1の時間シーケンスの情報信号から対応する第2の時間シーケンスの持続信号を生成する工程とを含む。この生成工程は、少なくとも1つの前記持続信号を、2つ以上の第1のシーケンスの情報信号及び/又は第2のシーケンスの持続信号及び/又はそこから導かれた信号の重み付け平均値として得るために平均化処理を実行することを含む。平均化処理は、1つ以上の第1のシーケンスの情報信号及び/又は第2のシーケンスの持続信号及び/又はそこから得られた信号のエネルギー関連パラメータの関数である重み係数を採用する。
【0020】
本発明の他の態様は、直前に記載され、時間シフト情報を使用する方法と同様な超音波診断イメージング方法に向けられているが、前記生成工程で平均化処理を実行する代わりに、前記生成工程が、結合値がゼロでない所定の値を超えないように、1つ以上の第1のシーケンスの情報信号及び/又は第2のシーケンスの持続信号及び/又はそこから導かれた信号の結合値をクリップする工程を含んでいる。
【0021】
本発明のさらに他の態様は、身体内部の体液の流れ又は組織の運動の状態をイメージングする超音波診断イメージング装置に向けられ、それは、体液の流れ又は組織の運動からのドップラー情報を含む第1の時間シーケンスのドップラー情報を提供する手段と、前記第1のシーケンスのドップラー情報信号から対応する第2の時間シーケンスの持続信号を生成する生成手段とを備える。前記生成手段が、少なくとも1つの前記持続信号を、2つ以上のドップラー情報信号及び/又は持続信号及び/又はそこから導かれた信号の重み付け平均値として得て、1つ以上のドップラー情報信号及び/又は持続信号及び/又はそこから導かれた信号のエネルギー関連パラメータの関数である重み係数を使用する平均化処理を実行する手段を含む。
【0022】
本発明のさらに他の態様は、直前に記載された装置と同様な超音波診断イメージング装置に向けられているが、ここで、平均化処理を実行する手段を含む代わりに、前記生成手段が、結合値がゼロでない所定の値を超えないように、1つ以上の第1のシーケンスのドップラー情報信号及び/又は第2のシーケンスの持続信号及び/又はそこから導かれた信号の結合値をクリップする手段を含む。
【0023】
また一方、本発明の方法態様の場合のように、前述の平均化処理又はクリップは、ドップラーシフト情報の代わりに時間シフト情報に適用することができる。したがって、本発明の他の態様は、身体内部の体液の流れ又は組織の運動の状態をイメージングする超音波診断イメージング装置に向けられ、その装置は、第1の時間シーケンスの情報信号を提供する手段であって、各々のシーケンスの信号が体液の流れ又は組織の運動からの時間シフト情報を含む手段と、前記第1の時間シーケンスの情報信号から対応する第2の時間シーケンスの持続信号を生成する手段とを備えている。この生成手段が、少なくとも1つの前記持続信号を、2つ以上の情報信号及び/又は持続信号及び/又はそこから導かれた信号の重み付け平均値として得て、1つ以上の第1のシーケンスの情報信号及び/又は第2のシーケンスの持続信号及び/又はそこから導かれた信号のエネルギー関連パラメータの関数である重み係数を使用する平均化処理を実行する手段を含む。
【0024】
本発明のさらに他の態様は、直前に記載された装置と同様な超音波診断イメージング装置に向けられているが、ここで、平均化処理を実行する手段を含む代わりに、前記発生する手段が、組み合わせの値がゼロでない所定の値を超えないように、1つ以上の第1のシーケンスの情報信号及び/又は第2のシーケンスの持続信号及び/又はそこから得られた信号の組み合わせの値をクリップする手段を含む。
【0025】
本発明のさらに他の態様は、身体内部の体液の流れ又は組織の運動の状態をイメージングする超音波診断イメージング方法に向けられている。この方法は、体液の流れ又は組織の運動からのドップラー情報又は時間シフト情報を含む第1のシーケンスの情報信号を提供する工程と、前記第1のシーケンスのドップラー情報信号から対応する第2のシーケンスの持続信号を生成する工程とを含む。この生成工程が、1つ以上の情報信号及び/又は持続信号及び/又はそこから導かれる信号を解析し、前記情報信号がその情報信号内に存在する情報の種類を示すか否かを決定し、前記種類は、雑音、低エネルギーの流れ又は組織の運動、高エネルギーの流れ又は組織の運動もしくはフラッシュを含み、存在する種類に従って1つ以上の重み係数を選択することを含む。この生成工程も、少なくとも1つの前記持続信号を2つ以上のドップラー情報信号及び/又は持続信号及び/又はそこから得られた信号の重み付け平均値として得て、1つ以上のドップラー情報信号及び/又は持続信号及び/又はそこから得られた信号のエネルギー関連パラメータの関数である重み係数を使用するために平均化処理を実行することを含む。
【0026】
本発明のさらに他の態様は、身体内部の体液の流れ又は組織の運動の状態をイメージングする超音波診断イメージング装置に向けられている。この装置は、体液の流れ又は組織の運動からのドップラー情報又は時間シフト情報を含む第1のシーケンスの情報信号を提供する手段と、前記第1のシーケンスのドップラー情報信号から対応する第2の時間シーケンスの持続信号を生成する手段とを含む。この生成手段が、1つ以上の情報信号及び/又は持続信号及び/又はそこから導かれる信号を解析し、前記情報信号が情報信号に存在する情報の種類を示すか否かを決定し、前記種類が、雑音、低エネルギー流又は組織の運動、高エネルギーの流れ又は組織の運動もしくはフラッシュを含む手段と、存在する種類に従って1つ以上の重み係数を選択する手段とを含む。この生成工程も、少なくとも1つの前記持続信号を2つ以上のドップラー情報信号及び/又は持続信号及び/又はそこから導かれた信号の重み付け平均値として得て、1つ以上のドップラー情報信号及び/又は持続信号及び/又はそこから得られた信号のエネルギー関連パラメータの関数である重み係数を使用するために平均化処理を実行することを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の1つの態様は、ドップラー信号のエネルギー又は強度の関数として持続性量を変えることによって、弱い信号が強い信号よりも長く持続することができるという観測に基づいている。このスキームは、弱い信号に対するSNRを改良するが、万一強いドップラー信号が生ずるならば、それは、良好な時間解像度が保持される限り持続されない。“フラッシュ”アーチファクトは強い信号であるので、それが生じる場合、それは持続されず、イメージから非常に迅速に取り除かれる。本発明は、体の組織の運動のイメージング及び体内の血液の流れのような体液の流れのイメージングに使用できる。
【0028】
図1は、本発明の好ましい実施形態を示すブロック図である。超音波イメージングシステム10は、超音波バーストを走査プレーン18内の身体(図示せず)に伝搬させるトランスジューサ16を励起するようにコントローラ14によって制御された送信器12を含んでいる。反射エコーは増幅され、受信器/ビーム形成器20によって集束される。トランスジューサ16は、走査プレーン18における異なる走査線に沿って超音波バーストを伝搬し、身体の関心のある領域を走査し、カラーのドップラーイメージングのための信号を提供することができる。その代わりに、トランスジューサ16は、Mモードとして公知であるものにおいて、単一の走査線に沿って超音波バーストを伝搬できる。いずれの場合も、トランスジューサ16は、超音波バーストに応じて身体からのエコーを検出し、エコーを表す信号は増幅され、受信器/ビーム形成器20によって集束され、プロセッサ22によってそのベースバンドまでダウンシフトされ、ベースバンドでフィルタリングされ、次に、変換器24によってディジタル化される。いずれの場合も、変換器24は、トランスジューサ16からの1つ以上の超音波バースト信号を身体に伝搬することによって生じる反射エコーをサンプリングすることによりP個のサンプルを発生でき、したがって変換器24の出力にカラードップラープロセッサ30へ向けて、第n番目の長さPのフレームについての入力シーケンスx(n)(すなわち、x(n)は、Pが0からP−1までの範囲を有するシーケンスx pから成る)を供給する。プロセッサ30は、入力シーケンスx(n)の第0次及び第1次の自己相関を計算する自己相関器32を含んでいる。第0次の自己相関係数R(0)は実数であるのに対して、第1次の自己相関係数R(1)は、実数と虚数部を含む複素数である。長さPの入力シーケンスx(n)に関しては、第0次の自己相関係数及び第1次の自己相関係数が下記の式によって規定される。
【0029】
【数1】
【0030】
第0次の自己相関係数はドップラー情報信号x(n)のエネルギー情報を得るために使用され、第0次の自己相関係数及び第1次の自己相関係数の両方が速度及び変動の推定のために使用される。前述の実施形態では、第0次及び第1次の自己相関及び係数だけがエネルギー、速度及び変動の推定のために使用されるが、高次の相関係数は、このような推定又は他の信号の統計特性の推定のためにも使用することができることが理解される。このような変形は本発明の視野の範囲内にある。
【0031】
本発明は、少なくとも2つの現在使用されているカラードップラーイメージングモード、すなわち、カラードップラー速度・変動イメージングモード及びカラードップラーエネルギーイメージングモードに適用可能である。このような現在使用されるモードの他に、本発明は他のモードにもまた適用可能である。いずれの表示モードにおいても、病床ユーザは下記の異なるカラー信号に遭遇する傾向がある。
【0032】
1.高エネルギーフロー信号(例えば、動脈流による)
2.低エネルギーフロー信号(例えば、組織灌流又は静脈流による)
3.“フラッシュ”アーチファクト(例えば、トランスジューサの動き又は患者の動きによる)
4.低レベルシステム雑音
【0033】
本発明の適応式時間積分又はフィルタリングの1つの態様は、低レベル灌流信号のための長時間持続性を使用し、感度を増加させるが、持続性アキュームレータ又はプロセッサを“フラッシュ”アーチファクト信号又は高速の流れの信号のような高エネルギー信号を再発生すること(すなわち、持続すること)から“保護するか”又は分離する。これは、変換器24から又は自己相関器32若しくは計算器36からのディジタル信号の特性を解析し、それを雑音、低エネルギーフロー信号、高エネルギーフロー信号又は“フラッシュ”のいずれかに分類し、次に、例えば、後述の図2Bのスキームにおけるようにルックアップテーブルによって信号の特徴に従って異なる時間積分係数を割り当てることによって実現できる。適応式時間積分又はフィルタリングは持続性アキュームレータ34によって実行される。ドップラー信号(又は後述のような時間シフト信号)中の異なる種類の情報の分析及び積分係数又は重み係数の割り当ては、プログラマブル読み出し専用メモリに記憶されたルックアップテーブルによって実行することができる。
【0034】
図2Aは、本発明の好ましい実施形態を示すのに役立つ、図1の持続性アキュームレータ34の概略回路図である。図2Aに示されるように、アキュームレータの入力信号x(n)は加算器50に供給され、加算器50はフィードバック値に現在値x(n)を加え、アキュームレータ34の出力に和y(n)を供給する。現在値x(n)が入力シーケンスの第1のディジタルサンプルでない場合、直前フレームの時間間隔の間に加算器50によって供給された第(n−1)番目のフレームに対応する以前の出力y(n−1)がある。遅延器52は、前のフレームの時間間隔の間遅延器50の出力を遅延し、それにより、現在値x(n)が加算器50に印加される時に以前のサンプリング間隔に対応する出力y(n−1)が遅延器52の出力にあるようにする。y(n−1)で示されたエネルギー値は比較器54によってしきい値と比較される。エネルギー値がしきい値よりも高い場合、比較器54は図2AのパスAを使用可能にするので、乗算器62が値y(n−1)と係数ashortとを乗算し、積を加算器50に供給する。y(n−1)で示されたエネルギー値がしきい値を超えない場合、比較器54は、代わりにパスBを使用可能にするので、乗算器64がy(n−1)と係数alongとを乗算し、積をライン66を通して加算器50に供給する。
【0035】
したがって、y(n−1)で示されたエネルギー値がしきい値を超えた場合、高レベルフロー信号又は“フラッシュ”アーチファクトが示されるので、その結果、小さい持続性係数ashortがアキュームレータ34により印加された時間持続性に印加されるようなレベルに、比較器54のしきい値がある。y(n−1)で示されたエネルギー値がしきい値を超えない場合、低エネルギーフロー信号及び/又は低レベルシステム雑音が示され、比較器は、パスBを使用可能にし、ashortよりかなり大きい重み係数alongを選択することによってSNRを改良するために信号を大量に積分するか又は持続する。しきい値比較器54は、簡単な比較器及びスイッチを備えている。比較器54で使用される適当なしきい値は、ドップラー情報信号エネルギーのダイナミックレンジの最大値の約0.5倍〜0.8倍の範囲の値である。比較器54は、y(n−1)をしきい値と比較する代わりに、ashort*y(n−1)及びalong*y(n−1)としきい値と比較するために、点線位置54aに移動することもできる。
【0036】
アキュームレータ34は問題とされる身体の各位置に対する現平均値を記憶するメモリ(図示せず)を含む。次のフレーム時間間隔の間、身体の特定の位置に関して記憶された平均値は、記憶された値及び現入力シーケンスの情報を平均化することによって得られた更新された現在値と置換される。したがって、上記の例では、メモリに記憶された以前の画像フレームに対応する以前の平均値y(n−1)は、現在イメージフレームに対応する現在の平均値y(n)に置換される。したがって、生データx(n)は記憶されない。しかしながら、別々のフレームバッファメモリを使用して入力シーケンスx(n)を記憶することができることは明らかである。
【0037】
入力信号x(n)及び出力信号y(n)、y(n−1)は複素数信号であることが注目される。入力信号x(n)が図1の自己相関器32からとられる場合、アキュームレータ34は、第0次の自己相関係数R(0)及び第1次の自己相関係数R(1)の実数部と虚数部で作動するので、x(n)、y(n)、y(n−1)の各々は、それぞれ3つの成分から成る。第0次の自己相関係数は受信器20によって受信されたエコーのドップラー情報のエネルギーを示すので、比較器54は、y(n−1)の第0次の自己相関係数としきい値とを比較する。
【0038】
他の実施形態では、持続性アキュームレータ34は、自己相関値の代わりに、計算器36によって推定された平均速度、速度の変動及びエネルギーで作動することができる。このような他の実施形態では、持続性アキュームレータ34は、図1で、自己相関器32と計算器36との間の信号パスから取り除かれ、計算器36と、計算器36が自己相関器32からその入力を受信するカラーエンコーダ40との間に置かれる。このような実施形態では、計算器36は、第0次の自己相関係数及び第1次の自己相関係数から、受信器20で受信されたエコーにおけるドップラーシフト情報の平均速度、速度の変動及びエネルギーを推定する。この推定の既知の方法に関しては、1985年発行のIEEEのカサイ他著の「自己相関技術を使用する実時間二次元血流イメージング」を参照されたい。次に、持続性アキュームレータ34は、この推定された平均速度、速度の変動、及びエネルギーを演算し、適応式時間持続性を実行する。この場合、入力信号x(n)、y(n)及びy(n−1)は、それぞれ下記の3つの成分、平均速度、速度の変動、及びエネルギーを有している。この場合、比較器54は、推定されたエネルギーとしきい値とを比較する。図1を参照してここで記載された実施形態の全てにおいて、次に、アキュームレータ34の出力パラメータ信号は、カラーエンコーダ40でカラー符号化され、カラースキャンコンバータ42によって走査変換され、カラーモニタ44上に表示される。
【0039】
身体の特定領域の画像の第n番目のフレームを取得するために、トランスジューサ16は、走査プレーン18にわたって走査線に沿って超音波パルスを連続的に伝送する。ある位置からの一連のパルスの後方散乱の中にある領域の位置での体液の流れ又は組織の運動に関するドップラー情報が処理され、入力シーケンスx(n)としてプロセッサ30に供給される。この処理は、一連のフレームに対して繰り返され、領域の同一位置での体液の流れ又は組織の運動に関するドップラー情報を取得し、nがn番目のフレームに対する時間シーケンスにおける第n番目の信号を示している場合、第1の時間シーケンスのドップラー情報信号x(n)を生じる。次に、アキュームレータ34は、信号x(n)の重み付け平均値x(n)及び身体内部の同一位置の以前のフレームに対する平均値y(n−1)を計算する。次に、アキュームレータ34は、入力値x(n)に対応するn番目のフレームに対する重み付け平均値として出力y(n)を供給する。したがって、アキュームレータは、受け取られた連続フレームに対応するnの異なる整数値に対するx(n)から成る第1の時間シーケンスのドップラー情報信号から、対応する第2のシーケンスの持続(又はパラメータ)信号y(n)を提供する。このシーケンスの各ドップラー情報信号は、身体内部のある位置の体液の流れ又は組織の運動のドップラー情報を含む。第2の時間シーケンスの持続(又はパラメータ)信号における各信号は、第1の時間シーケンスにおける信号に対応し、体液の流れ又は組織の運動の平均速度、体液の流れ又は組織の運動の速度の変動又は第1のシーケンスのドップラー情報信号のエネルギーに関する情報に関連し、この情報を含む。
【0040】
アキュームレータ34が、自己相関器32からの自己相関値で作動する場合、アキュームレータの入力のドップラー情報信号x(n)は第0次及び第1次の自己相関係数であり、アキュームレータy(n)の出力はこれらの係数の持続値である。アキュームレータ34が体液の流れ又は組織の運動の推定された平均速度、体液の流れ又は組織の運動の速度の変動又はドップラー情報信号のエネルギーで作動する場合、アキュームレータの出力の持続(又はパラメータ)信号y(n)はこれらの量の持続値である。
【0041】
いくつかの場合では、アキュームレータ34によって実行される適応式時間平均化処理において図2Aより多い重み係数を供給することが望ましい。このような場合、ボックス80内の回路は図2Bの回路90で置換することができる。図2Bに示すように、ライン53の以前のサンプリング間隔に対する遅延出力y(n−1)は、ルックアップテーブル92及び乗算器94に供給される。次に、ルックアップテーブル92は、重み係数を乗算器94に供給し、乗算器94はその積a*y(n−1)をライン66及び加算器50に供給する。このように、同一位置の最後のフレームの持続信号又はパラメータ信号y(n−1)が対応する値の範囲内である場合、多数の重み係数のうちの1つが選択できる。大きなルックアップテーブルが選択されるならば、ルックアップテーブルは、y(n−1)の連続関数としての重み係数を選択するための良好な近似として使用することができる。
【0042】
図2Aを参照するに、パスAが選択されるならば、下記の式が実行される。
y(n)=x(n)+ashort*y(n−1)
【0043】
パスBが選択されるならば、下記の式が代わりに実行される。
y(n)=x(n)+along*y(n−1)
【0044】
放射線学用途では、好ましくは、ashortは、0.125〜0.25の範囲の値を有し、alongは、0.615〜0.75の範囲の範囲を有するが、ashortに対しては0〜0.5、alongに対しては0.25〜0.8という、より幅広い範囲も使用できる。心臓病学用途に関しては、ashort、 alongの対応する好ましい範囲の値は、それぞれ0〜0.125及び0.125〜0.25であるが、ashortに対しては0〜0.25、alongに対しては0.1〜0.5という、より幅広い範囲も使用できる。
【0045】
図2A、図2Bの持続性アキュームレータ34の2つの実施形態は、無限インパルス応答(IIR)フィルタとして公知の構成のフィードバックループを含む。y(n−2)、y(n−3)、....のような1つ以上の前のフレームの値がフィードバックできることが明らかである。IIRフィルタは、x(n−1)、x(n−2)、....のような1つ以上のフィードフォワード信号も含むことができ、それらはトランスジューサ、受信器、ベースバンドプロセッサ及びn番目のフレームよりも前のフレームのためのアナログ/ディジタル変換器によって供給された時間シーケンスのドップラー情報信号である。このような構成が図2Cに示される。図2Cに示されるように、しきい値比較器54′は、プログラマブル読み出し専用メモリ(PROM)又は他の種類のメモリに記憶されたルックアップテーブルとして実行でき、比較器から下流に乗算器63に乗算係数として印加される乗算係数a1、a2、...、c1、c2、...、を発生する。したがって、比較器54′は図2Aの比較器54と構成上幾分異なる。図2Cの構成は、信号x、x(n−1)、x(n−2)、...、y(n−1)、y(n−2)、...の任意の重み付け結合に到るために使用できる。一方、図2Aに図示された種類の比較器は、図2Cの比較器54′の代わりに使用でき、これも本発明の視野の範囲内である。したがって、一般に、図2Cによれば、前述の一般的IIRフィルタの動作は下記の関係で数学的に表すこともできる。ここで、y(n)は、M+1フレームのフィードフォワード信号及びNフレームのフィードバック累積信号値に対して平均化することによって得ることができる。
【0046】
【数2】
【0047】
ここで、Mは負でない整数であり、Nは正の整数であり、x(n−i)はフィードフォワード信号であり、y(n−j)はフィードバック信号であり、ci、ajは重み係数である。最も簡単な場合、Mは0、Nは1であるか、Mは1、Nは0であるか、もしくはM及びNの両方が1である。フィードフォワード項のみを有する有限インパルス応答(FIR)フィルタも使用可能である。大きな“フラッシュ”信号はFIRフィルタで実行されるフィードフォワード項数に等しいフレーム数の内の画像の中からクリアされることが確実なので、いくつかの場合、FIRフィルタの使用は望ましいこともある。このようなFIRフィルタは図3に示されている。図3において、乗算係数を選択するためにしきい値比較器を使用する代わりにルックアップテーブル54′が使用され、それは、各々が入力信号のエネルギーの異なる範囲に対して、フィードフォワード信号の重み付けを制御するために、望まれるならば2つ以上の重み係数の中の1つを選択する際にシステムにより柔軟性を与えることに留意すべきである。
【0048】
第0次及び第1次の相関係数に加えて高次の自己相関係数が使用される場合、図2Aの比較器54を多次元しきい値比較器で置換する必要があることがある。一方、図2Bのルックアップテーブル92は、低次の自己相関係数と同様に高次の自己相関係数を取り扱うように構成できる。前述の実施形態では、同じ重み係数が、平均速度、速度の変動、及びエネルギーを持続するために使用される。3つの変数の代わりに異なる重み係数を選択することができることは明白である。全てのこのような変形は本発明の視野の範囲内である。適応式時間フィルタリングは、カラードップラー速度及び変動イメージング、カラードップラーエネルギーイメージング、又は他のカラーイメージングモードにおいても適用することができる。
【0049】
図4A〜図4Cは、本出願を使用して達成できる結果を示している。図4Aは、本発明を示すフラッシュ信号及び灌流信号の実際のデータのグラフである。図4Aに示されるように、202は、トランスジューサの移動などによって生じる大振幅の“フラッシュ”信号であり、204は、図1の受信器20によって受信される小振幅の灌流信号(又は組織の運動を示す信号)である。本来は、灌流信号と同じオーダーの大きさであるシステム雑音は図4Aには示されていない。したがって、身体の1つの位置における体液の流れ又は組織の運動の情報を示す灌流信号と、前のフレームの同じ位置の身体の1つの位置の体液の流れ又は組織の運動の情報を示す灌流信号とを加算する時間平均化を実行することは重要である。灌流信号はゆっくり変化し、一般に多数のフレームの間中同一であるのに対してシステム雑音はランダムであるので、このような時間平均化はSNRを大いに高める。
【0050】
しかしながら、“フラッシュ”信号202がある場合の従来の灌流信号の持続性は、SNRを改善せず、いくつかの場合、SNRを悪化させることもある。これが図4Bに例示される。図4Bに示されるように、時間的平均化重み係数がシステム雑音に対する灌流信号のSNRを増加させるために適当に選択され、且つ、このような重み係数が“フラッシュ”信号にも適用される場合、これにより“フラッシュ”信号もまた持続するという結果を有する。“フラッシュ”信号の大振幅のために、“フラッシュ”信号の立ち下がり部分は望ましくない灌流信号の一部と重なり、これを消す。図4Bに示されるように、“フラッシュ”信号の立ち下がりエッジは、実際のデータの“フラッシュ”信号が送られた後、長くこのような“フラッシュ”の効果を持続するIIRフィルタの効果のために遅れる。
【0051】
図4Cは、本発明の適応式時間平均化の効果を示している。このように、“フラッシュ”信号が検出されるとき、比較器54又はルックアップテーブル92はashortに対して非常に小さい値を選択することによって、時間的持続性をわずかのみ又は全く適用しない。“フラッシュ”信号が通過し、灌流信号又はシステム雑音が検出された後、比較器54によって、大きな重み係数alongが図4Cに示されるように適用され、SNRを改善する。図4Cには示されていないが、ここに記載された適応式時間フィルタリングによっても、動脈血流のような強い流れ信号のダイナミック時間情報及び良好な時間解像度が保持されると同時に、灌流式の信号を依然として増強することが当業者に理解される。したがって、強い流れ信号が検出されると、比較器54又はルックアップテーブル92によって、低い重み係数ashortが選択され、動脈血流はゆっくりとは現れない。このような強い流れ信号の通過及び灌流式の信号の出現(灌流又は組織の運動)の際に、大きな重み係数alongが選択され、SNRを増加させる。
【0052】
アキュムレータ34で適応式時間フィルタリングの平均化処理を実行する代わりに、図5〜図7に示すように特別のクリッピング動作を実行することができる。図5は、本発明の他の実施形態を示すアキュムレータ34の概略回路図である。図5に示されるように、現値x(n)によって示されたエネルギーは、x(n)によって示されたエネルギー(例えばR(0))としきい値と比較するクリッパ回路252でしきい値と比較される。このようなエネルギーがしきい値よりも大きいならば、クリッパ回路は、そのエネルギーをしきい値とほぼ等しくさせる出力値(例えばR(0))を加算器50に供給する。x(n)によって示されたエネルギーがしきい値を超えないならば、クリッパ回路252は、単に入力信号x(n)を加算器50に送る。遅延回路52は、前のフレームy(n−1)に対応する出力を再び遅延し、それを乗算器254へ供給し、乗算器254は順にこの信号と定数aとを乗算し、積を加算器50に供給する。次に、加算器50は、クリッパ回路252からのクリップ入力をこの積に加算し、アキュムレータ250の出力y(n)を得る。上述の方法によるクリッパ回路252の出力信号は[x(n)]で示される。クリッパ回路は、プログラマブル読み出し専用メモリ、すなわちPROMのようなプログラマブルメモリとして実行できる。クリッパ回路252で使用される適切なしきい値は、ドップラー情報信号エネルギーのダイナミックレンジの最大値の約0.5〜0.8倍の範囲の値である。
【0053】
図6は、図1のアキュムレータ34の他の実施形態260を示している。クリップ機能が図5に関して前述の機能と同じである場合、図5におけるような入力信号をクリップする代わりに、図6のクリッパ回路252は、出力をクリップするために加算器50の出力に置かれ、このようなクリップされた出力は、次のフレームに対する出力を得る遅延回路52に供給される。図7は、クリッパ回路252が遅延回路52と乗算器254との間に置かれたさらに他の実施形態を示している。信号x(n)、x(n−1)、x(n−2)、...、y(n−1)、y(n−2)、...が図2Cにおける方法と同様に結合される場合、そこから得られるこのような信号はクリッパ回路252で取得及びクリップされ、それにより結合値が所定のしきい値を超えないようにする。
【0054】
図5〜図7のクリッパ回路252の機能は、フラッシュアーチファクトのサイズを制限し、大きな信号が累積又は持続されることを阻止する。“フラッシュ”信号x(n)に出会うと、例えば、図5の回路は、この信号をクリップし、その結果、この信号のエネルギーが、低速度信号に関する持続“フラッシュ”信号のマスキング効果が減少されるようなしきい値にほぼ等しくなる。図5の回路は、大きな“フラッシュ”信号の立ち上がりエッジの効果を直ちに減少させる利点を有する。大きな“フラッシュ”信号の立ち上がりエッジの悪影響を減少させるときほど効果的でないとはいえ、図6及び図7の回路も同様の利点を有する。図7ではクリッパ回路は主信号パスの中になく、フィードバックパスの中にあり、その結果、クリッパ回路は主信号パスのダイナミックレンジをクリッピングしきい値に限定しないのと同時に、累積又は持続の信号に関する“フラッシュ”の効果を減少するので、図7の回路は図5及び図6の回路よりも好ましい。
【0055】
特に有利な構成は図2A及び図7を結合することにある。このように、図2Aを、遅延回路52の出力にクリッパ信号252を含むように変形し、その出力y(n−1)を比較器54に供給される前にクリップすれば、図2A及び図7の両方の利点は有効とすることができる。これは、図2Aの点線のボックス252によって示されている。すなわち、比較器の入力のクリッパ回路252は大きな“フラッシュ”信号の立ち上がりエッジの悪影響をさらに減少するのに対して、図2Aの回路の残りの部分で実行される平均化処理は、“フラッシュ”の効果が画像からかなり迅速にクリアされることをさらに確実にする。信号のダイナミックレンジを制限するにも拘わらず入力信号x(n)をクリップすることが望ましい場合、クリッパ回路は、図2Aの加算器50の入力ラインにも配置することができる。
【0056】
本発明は、ドップラー情報を含むドップラー情報信号による持続性アキュムレータの動作によってこの点を記載している。ドップラー情報の代わりに時間シフト情報を使用する多少異なる方式が平均速度、速度の変動、及びエネルギーを得るために使用されるとしても、本質的に同一の利益を得ることができる。米国特許第4,928,698号は、血液の流れ、及び臓器の運動に関する速度及びエネルギーを得るために時間シフト情報を使用するシステムを記載している。図8は、米国特許第4,928,698号及びBonnefous他著の論文「相互相関によるパルスドップラー超音波及び血液速度概算の時間ドメイン定式化」(超音波画像、第8号、第73ページ〜第85ページ(1986年))に記載されているシステムで時間シフト情報に基づいて適応時間フィルタリングを実行するために本発明の概念を適用する方法を示すブロック図である。図8に示されるように、受信器20によって受信されたエコーは、図1に示されるようにベースバンドまでダウンシフトされず、変換器24によって単にディジタルサンプルに変換され、相互相関器302によって相互相関付けがされる。この相互相関器302は、その入力として、身体の体液の流れ又は組織の運動のエネルギー及び平均速度を供給する。持続性アキュムレータ34は、図2A〜図7に関して前述の種類の本質的に同一の動作を実行し、前述の異なる利益を実現できる。アキュムレータの出力持続(又はパラメータ)信号は、カラーエンコーダ40によってカラー符号化され、カラースキャンコンバータ42によって走査変換され、カラーモニタ44上に表示される。
【0057】
本発明は、異なる実施形態を参照することによって説明された。種々の修正及び変更を、添付の請求の範囲によってのみ画定されるべきである本発明の範囲から逸脱しないで行うことができる。例えば、エネルギーの関数として重み係数を選択することに加えて、重み係数を平均速度の及び/又は速度情報の変動の関数としても選択できる。前述の記載では、1つのフィードフォーワード信号(x(n)、x(n−1)、....)又は1つのフィードバック信号(y(n)、y(n−1)、....)のエネルギー又は第0次の自己相関係数が比較器又はクリッパ回路でしきい値と比較されるが、エネルギー、又はそのような信号、又はそのような信号及び/又はそこから得られた信号の組み合わせのエネルギーの第0次の自己相関係数を比較のために使用できることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明を示すための、身体をイメージングする超音波診断イメージングシステムのブロック図である。
【図2A】本発明の好ましい実施形態を示し、図1のカラードップラープロセッサの持続性アキュムレータの無限インパルス応答(IIR)フィルタのブロック図である。
【図2B】図2Aに示されたIIRフィルタのしきい値処理部及び重み付け部の他の実施形態を示す概略回路図である。
【図2C】本発明の他の実施形態を示し、図1のカラードップラープロセッサの持続性アキュムレータにフィードフォワードパス及びフィードバックパスを有するフィルタのブロック図である。
【図3】本発明の他の別の実施形態を示し、図1の持続性アキュムレータの有限インパルス応答フィルタのブロック図である。
【図4A】本発明を示すのに有効な“フラッシュ”信号及び灌流信号のグラフである。
【図4B】従来の時間持続性が適用された後の“フラッシュ”信号及び灌流信号のグラフである。
【図4C】本発明の効果を示す“フラッシュ”信号及び灌流信号のグラフである。
【図5】本発明の他の実施形態を示し、図1の持続性アキュムレータで使用することができるクリッパ回路の概略回路図である。
【図6】本発明の他の実施形態を示し、図1の持続性アキュムレータで使用することができるクリッパ回路の概略回路図である。
【図7】本発明の好ましい実施形態を示し、図1の持続性アキュムレータで使用することができるクリッパ回路の概略回路図である。
【図8】本発明の他の実施形態を示し、時間シフト情報を取得し、かつ平均化処理又はクリップ処理を実行する超音波診断イメージングシステムのブロック図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、超音波診断イメージングシステムに関し、特に、ドップラー又は時間シフトの信号データを増強する適応式時間フィルタリングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のカラードップラーイメージングでは、超音波システム(例えば、アクソン(Acuson) XP)は、受信ドップラー信号から身体内部の移動ターゲットのインデックスを得る。例えば、平均速度、加速度、エネルギー標準偏差(又は速度変動)は、移動血球又は移動心筋層又は他の組織のいずれかから測定できる。これらのインデックスは受信ドップラー信号から推定される。全ての物理的測定と同様に、推定値はランダム変動又はランダム雑音を含んでいる。
【0003】
ランダム雑音を減らすために、複数のドップラーサンプルが取得され、ともに平均化される。これらのサンプルを平均化することによって、ランダム雑音は相殺する傾向があるのに対して、実際の基本的な信号は強められる傾向があり、それによって信号対雑音比(SNR)を改善する。サンプルは時間的に連続的に採取されるので、この平均操作はサンプルされたドップラー信号の時間積分に等しい。一般的に持続性(persistence)とも呼ばれる時間積分はシステムの感度を改善し、それによってユーザは最小のドップラー信号を検出できるため、この時間積分は良好なカラードップラー性能にとって重要である。SNRの増加は従来のカラードップラー速度イメージングモードにとっても重要であるが、この増加は、目的がまさしく最少の血液の流れ及び灌流の信号を検出することにある、より最近のカラードップラーエネルギーイメージングモードにとってとりわけ重要である。
【0004】
典型的には、時間積分は、身体のある場所の血液の流れの情報を含む現在のドップラーサンプルを採取し、それ以前の時点における体の同じ場所の血液の流れを含む特定の数の以前のドップラーサンプルに加算する。時々、これらの以前のドップラーサンプルは、最も古いドップラーサンプルが積分値に最も少なく寄与するように、“重み”を付けることができる。持続性の量はユーザが選択できるパラメータであり、積分に含まれた以前のドップラーサンプルの数又は以前のドップラーサンプルの重み付けのいずれかを変更する。典型的なアプローチでは、現在の持続性機能は、入力データシーケンスx(n)についてのフィードバック回路を使用して実行され、持続データy(n)は下記のように記述される。
y(n)=x(n)+a*y(n−1)
ここで、aは所望の持続性の程度に従ってユーザにより選択された固定定数であり、nはサンプル数である。
【0005】
過去の(従来の)時間積分処理は、例えば、その強度のような他のファクターに関係なく全ての受信ドップラー信号に一様に適用される。したがって、持続性が増加するにつれて、カラードップラー信号の全ての面が持続される。ここで、弱い信号及び強い信号の両方が同様に持続される。下記のことは欠点を示す事例である。
【0006】
まず第一に、医者が移動しトランスジューサを再配置するか、又は患者が病床環境内で呼吸をするかもしくは移動するとき、非常に高い振幅のドップラー信号が、トランスジューサ又は組織の運動から発生する。さらに、心臓血管系統からの脈拍は体の隅から隅まで伝搬し、大部分の組織の運動アーチファクトを生じる。これらの種類の運動は、弱い血液の流れ信号からのエコー振幅よりも数倍大きいエコー振幅を生成する。この結果、大きな帯状のカラーがビデオディスプレイ上に表示されるカラー“フラッシュ”アーチファクトを生じ、関心のある低レベルドップラー信号を不明瞭にする。
【0007】
“フラッシュ”アーチファクトは、時間平均によってさらに強調される。運動する組織の脈拍は短い持続時間の脈拍であることもあるが、積分処理によって時間的に伸長される。過去の時間積分処理は、この“フラッシュ”アーチファクトを区別できず、したがって血液信号と同じぐらい長いか又はそれ以上に長い“フラッシュ”アーチファクトを時間積分(又は持続)する。このカラー“フラッシュ”の長い持続時間は、通常の走査を不明瞭にし、走査処理速度を低下させる。
【0008】
臨床的ユーザが弱い血液灌流と背景ノイズとを区別する必要があるとき、長い時間積分(又は持続性)がしばしば好ましい。しかしながら、また別の流れ状態があり、そこでドップラー信号の時間特性は、例えば、定常の静脈血流量と脈打つ動脈血流量とを区別する際に重要である。これらの流れ状態の両方が同一イメージ中に生じる時間がある。単一の持続性をこれらの持続性の両方に対して最適化することは不可能である。
【0009】
減少された“フラッシュ”アーチファクトとともに優れた感度及び優れた時間解像度が要求される画像状態もある。過去の持続性機能に関しては、臨床医は、より良い感度と、時間解像度及び増加した“フラッシュ”アーチファクトとをトレードオフしなけらばならない。例えば、無差別の持続性処理に関しては、主要な血管から高速の血流は、隣接組織からの弱い灌流信号と同じ量だけ時間積分される。持続性を主要な血管の血液の流れに対して正確に設定すると、弱い灌流信号は雑音の中に埋もれてしまう。その代わりに、持続性を弱い灌流信号に対して正確に設定すると、高速血液の流れは“ゆっくりと”と生じ、そのカラードップラー表示は生理的でない。さらに、あらゆる“フラッシュ”アーチファクトはかなり長く持続し、弱い灌流信号を不明瞭にする。
【0010】
通常、異なる様相のカラードップラー信号が異なって持続されるべき場合もある。
【0011】
従来の方法の上記の問題を考慮して、多数の方式が提案されている。米国特許第5,357,580号では、Forestieri他は、現血流の速度及び以前の血流の速度の重み付け平均値を計算し、血流の速度の関数である重みを使用し、それにより、低速のイメージング情報は十分に平均化されるのに対して、高速運動する血流速度はほとんど又は全く平均化されずに保持されるような時間フィルタリング方式を提案している。システムの出力は速度イメージングモードで表示される。速度は、持続性量を決定するために使用する最良のパラメータではないこともある。さらに、速度イメージングは、特に灌流信号を検出するためには、カラードップラーエネルギーイメージングほど感度が良くない。
【0012】
他のアプローチが、Karpによる米国特許第5,152,292号に開示されている。この特許において、ドップラー信号の速度成分及び大きさ成分は、“フラッシュ”拒否レベルと比較され、“フラッシュ”を含む速度成分を阻止又は無視し、このような成分がカラーのフロー表示回路によって処理されないようにする。この方式は持続性を調整していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前述の方式のいずれも完全に満足なものではない。したがって、特性が高められた改良形の時間フィルタリングシステムを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は下記の一般的なスキームを使用するものである。第1シーケンスのドップラー情報信号は、逐次、身体へ伝送される超音波信号の身体内の体液の流れ又は組織の運動からのエコーを検出することによって取得される。好ましい実施形態では、第1シーケンスの各信号は、対応するフレームにおけるある位置の体液の流れ又は組織の運動からのドップラー情報に関する情報を伝達し、第1シーケンスのその後の信号は、その後の対応するフレームにおける同一位置の同じ情報を伝達する。次に、時間フィルタリングされた信号の第2シーケンスは、第1シーケンスの信号及び/又は第2シーケンスの信号を時間持続することによって第1シーケンスから得られ、第1シーケンスに対応する第2の持続信号のシーケンスとして知られる。第2シーケンスの信号は、平均速度、体液の流れ及び組織の運動の速度の変化及びドップラー情報のエネルギーに関連した情報を含んでいる。本発明は、第1及び/又は第2のシーケンスの信号のエネルギー重み付け平均値として第2のシーケンスの信号を得るために平均化処理を実行するシステムに向けられている。この一般的なスキームは、下記に説明されるような時間シフトの時間フィルタリングにも適用される。
【0015】
第1シーケンスのドップラー情報は、自己相関係数、又は平均速度、速度変化若しくはこれらの係数から得られた推定値の形である。他のドップラー信号の表現法も使用できる。用語“速度”が本出願で使用されているが、ここで処理された量“速度”はドップラー周波数シフトから得られ、平均周波数又は波長の推定値は下記の周知のドップラー式の使用により平均速度推定値に変換されることを理解すべきである。
v = fD*c/2fO*cosθ
ここで、fDはドップラー周波数シフト、cは音の速度、fOは伝送周波数、θはドップラー角度又は超音波ビーム及び流れの方向によって定められる角度である。したがって、“平均速度”が本出願で言及されるときは常に、“平均周波数”又は“平均波長”をその代わりに使用することができる。このような変更は本発明の視野の範囲内である。
【0016】
ドップラー情報又は時間シフト信号を使用して時間平均を実行する代わりに、このような信号のパワー又は振幅を使用して平均化を実行することができる。ここで、パワーは単位時間当たりのこのような信号のエネルギーであり、振幅はパワーの平方根に比例する。簡単にするために、この出願中の用語である信号の“エネルギー関連パラメータ”は、信号の“エネルギー”及び/又は“パワー”及び/又は“振幅”を意味し、引用符の最後の3つの用語は交換可能である。
【0017】
本発明の1つの態様は、身体内部の体液の流れ又は組織の運動の状態をイメージングする超音波診断イメージング方法に向けられ、その方法は、体液の流れ又は組織の運動からのドップラー情報を含む第1の時間シーケンスのドップラー情報信号を提供する工程を含む。この方法は、また、前記第1の時間シーケンスのドップラー情報信号から対応する第2シーケンスの持続信号を生成することを含む。この生成工程は、少なくとも1つの前記持続信号を、2つ以上のドップラー情報信号及び/又は持続信号及び/又はそこから導かれた信号の重み付け平均値として得るために平均化処理を実行することを含む。平均化処理は、1つ以上のドップラー情報信号及び/又は持続信号及び/又はそこから得られた信号のエネルギー関連パラメータの関数である重み係数を採用する。
【0018】
本発明の他の態様は、平均化処理を含む代わりに、生成工程が、結合値がゼロでない所定の値を超えないように、1つ以上の第1シーケンスのドップラー情報信号及び/又は第2シーケンスの持続信号及び/又はそこから導かれた信号の結合値をクリップする工程を含むことを除いて、直前に記載された方法と同じ超音波診断イメージング方法に向けられている。
【0019】
ドップラー情報から前述の第1及び第2の時間シーケンスの信号を生成する代わりに、同様な時間シーケンスを時間シフト情報から得ることができる。したがって、本発明の他の態様は、身体内の体液の流れ又は組織の運動の状態をイメージングする超音波診断イメージング方法に向けられ、その方法は、第1の時間シーケンスの情報信号を提供する工程であって、各々のシーケンスの信号が体液の流れ又は組織の運動から時間シフト情報を含む工程と、前記第1の時間シーケンスの情報信号から対応する第2の時間シーケンスの持続信号を生成する工程とを含む。この生成工程は、少なくとも1つの前記持続信号を、2つ以上の第1のシーケンスの情報信号及び/又は第2のシーケンスの持続信号及び/又はそこから導かれた信号の重み付け平均値として得るために平均化処理を実行することを含む。平均化処理は、1つ以上の第1のシーケンスの情報信号及び/又は第2のシーケンスの持続信号及び/又はそこから得られた信号のエネルギー関連パラメータの関数である重み係数を採用する。
【0020】
本発明の他の態様は、直前に記載され、時間シフト情報を使用する方法と同様な超音波診断イメージング方法に向けられているが、前記生成工程で平均化処理を実行する代わりに、前記生成工程が、結合値がゼロでない所定の値を超えないように、1つ以上の第1のシーケンスの情報信号及び/又は第2のシーケンスの持続信号及び/又はそこから導かれた信号の結合値をクリップする工程を含んでいる。
【0021】
本発明のさらに他の態様は、身体内部の体液の流れ又は組織の運動の状態をイメージングする超音波診断イメージング装置に向けられ、それは、体液の流れ又は組織の運動からのドップラー情報を含む第1の時間シーケンスのドップラー情報を提供する手段と、前記第1のシーケンスのドップラー情報信号から対応する第2の時間シーケンスの持続信号を生成する生成手段とを備える。前記生成手段が、少なくとも1つの前記持続信号を、2つ以上のドップラー情報信号及び/又は持続信号及び/又はそこから導かれた信号の重み付け平均値として得て、1つ以上のドップラー情報信号及び/又は持続信号及び/又はそこから導かれた信号のエネルギー関連パラメータの関数である重み係数を使用する平均化処理を実行する手段を含む。
【0022】
本発明のさらに他の態様は、直前に記載された装置と同様な超音波診断イメージング装置に向けられているが、ここで、平均化処理を実行する手段を含む代わりに、前記生成手段が、結合値がゼロでない所定の値を超えないように、1つ以上の第1のシーケンスのドップラー情報信号及び/又は第2のシーケンスの持続信号及び/又はそこから導かれた信号の結合値をクリップする手段を含む。
【0023】
また一方、本発明の方法態様の場合のように、前述の平均化処理又はクリップは、ドップラーシフト情報の代わりに時間シフト情報に適用することができる。したがって、本発明の他の態様は、身体内部の体液の流れ又は組織の運動の状態をイメージングする超音波診断イメージング装置に向けられ、その装置は、第1の時間シーケンスの情報信号を提供する手段であって、各々のシーケンスの信号が体液の流れ又は組織の運動からの時間シフト情報を含む手段と、前記第1の時間シーケンスの情報信号から対応する第2の時間シーケンスの持続信号を生成する手段とを備えている。この生成手段が、少なくとも1つの前記持続信号を、2つ以上の情報信号及び/又は持続信号及び/又はそこから導かれた信号の重み付け平均値として得て、1つ以上の第1のシーケンスの情報信号及び/又は第2のシーケンスの持続信号及び/又はそこから導かれた信号のエネルギー関連パラメータの関数である重み係数を使用する平均化処理を実行する手段を含む。
【0024】
本発明のさらに他の態様は、直前に記載された装置と同様な超音波診断イメージング装置に向けられているが、ここで、平均化処理を実行する手段を含む代わりに、前記発生する手段が、組み合わせの値がゼロでない所定の値を超えないように、1つ以上の第1のシーケンスの情報信号及び/又は第2のシーケンスの持続信号及び/又はそこから得られた信号の組み合わせの値をクリップする手段を含む。
【0025】
本発明のさらに他の態様は、身体内部の体液の流れ又は組織の運動の状態をイメージングする超音波診断イメージング方法に向けられている。この方法は、体液の流れ又は組織の運動からのドップラー情報又は時間シフト情報を含む第1のシーケンスの情報信号を提供する工程と、前記第1のシーケンスのドップラー情報信号から対応する第2のシーケンスの持続信号を生成する工程とを含む。この生成工程が、1つ以上の情報信号及び/又は持続信号及び/又はそこから導かれる信号を解析し、前記情報信号がその情報信号内に存在する情報の種類を示すか否かを決定し、前記種類は、雑音、低エネルギーの流れ又は組織の運動、高エネルギーの流れ又は組織の運動もしくはフラッシュを含み、存在する種類に従って1つ以上の重み係数を選択することを含む。この生成工程も、少なくとも1つの前記持続信号を2つ以上のドップラー情報信号及び/又は持続信号及び/又はそこから得られた信号の重み付け平均値として得て、1つ以上のドップラー情報信号及び/又は持続信号及び/又はそこから得られた信号のエネルギー関連パラメータの関数である重み係数を使用するために平均化処理を実行することを含む。
【0026】
本発明のさらに他の態様は、身体内部の体液の流れ又は組織の運動の状態をイメージングする超音波診断イメージング装置に向けられている。この装置は、体液の流れ又は組織の運動からのドップラー情報又は時間シフト情報を含む第1のシーケンスの情報信号を提供する手段と、前記第1のシーケンスのドップラー情報信号から対応する第2の時間シーケンスの持続信号を生成する手段とを含む。この生成手段が、1つ以上の情報信号及び/又は持続信号及び/又はそこから導かれる信号を解析し、前記情報信号が情報信号に存在する情報の種類を示すか否かを決定し、前記種類が、雑音、低エネルギー流又は組織の運動、高エネルギーの流れ又は組織の運動もしくはフラッシュを含む手段と、存在する種類に従って1つ以上の重み係数を選択する手段とを含む。この生成工程も、少なくとも1つの前記持続信号を2つ以上のドップラー情報信号及び/又は持続信号及び/又はそこから導かれた信号の重み付け平均値として得て、1つ以上のドップラー情報信号及び/又は持続信号及び/又はそこから得られた信号のエネルギー関連パラメータの関数である重み係数を使用するために平均化処理を実行することを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の1つの態様は、ドップラー信号のエネルギー又は強度の関数として持続性量を変えることによって、弱い信号が強い信号よりも長く持続することができるという観測に基づいている。このスキームは、弱い信号に対するSNRを改良するが、万一強いドップラー信号が生ずるならば、それは、良好な時間解像度が保持される限り持続されない。“フラッシュ”アーチファクトは強い信号であるので、それが生じる場合、それは持続されず、イメージから非常に迅速に取り除かれる。本発明は、体の組織の運動のイメージング及び体内の血液の流れのような体液の流れのイメージングに使用できる。
【0028】
図1は、本発明の好ましい実施形態を示すブロック図である。超音波イメージングシステム10は、超音波バーストを走査プレーン18内の身体(図示せず)に伝搬させるトランスジューサ16を励起するようにコントローラ14によって制御された送信器12を含んでいる。反射エコーは増幅され、受信器/ビーム形成器20によって集束される。トランスジューサ16は、走査プレーン18における異なる走査線に沿って超音波バーストを伝搬し、身体の関心のある領域を走査し、カラーのドップラーイメージングのための信号を提供することができる。その代わりに、トランスジューサ16は、Mモードとして公知であるものにおいて、単一の走査線に沿って超音波バーストを伝搬できる。いずれの場合も、トランスジューサ16は、超音波バーストに応じて身体からのエコーを検出し、エコーを表す信号は増幅され、受信器/ビーム形成器20によって集束され、プロセッサ22によってそのベースバンドまでダウンシフトされ、ベースバンドでフィルタリングされ、次に、変換器24によってディジタル化される。いずれの場合も、変換器24は、トランスジューサ16からの1つ以上の超音波バースト信号を身体に伝搬することによって生じる反射エコーをサンプリングすることによりP個のサンプルを発生でき、したがって変換器24の出力にカラードップラープロセッサ30へ向けて、第n番目の長さPのフレームについての入力シーケンスx(n)(すなわち、x(n)は、Pが0からP−1までの範囲を有するシーケンスx pから成る)を供給する。プロセッサ30は、入力シーケンスx(n)の第0次及び第1次の自己相関を計算する自己相関器32を含んでいる。第0次の自己相関係数R(0)は実数であるのに対して、第1次の自己相関係数R(1)は、実数と虚数部を含む複素数である。長さPの入力シーケンスx(n)に関しては、第0次の自己相関係数及び第1次の自己相関係数が下記の式によって規定される。
【0029】
【数1】
【0030】
第0次の自己相関係数はドップラー情報信号x(n)のエネルギー情報を得るために使用され、第0次の自己相関係数及び第1次の自己相関係数の両方が速度及び変動の推定のために使用される。前述の実施形態では、第0次及び第1次の自己相関及び係数だけがエネルギー、速度及び変動の推定のために使用されるが、高次の相関係数は、このような推定又は他の信号の統計特性の推定のためにも使用することができることが理解される。このような変形は本発明の視野の範囲内にある。
【0031】
本発明は、少なくとも2つの現在使用されているカラードップラーイメージングモード、すなわち、カラードップラー速度・変動イメージングモード及びカラードップラーエネルギーイメージングモードに適用可能である。このような現在使用されるモードの他に、本発明は他のモードにもまた適用可能である。いずれの表示モードにおいても、病床ユーザは下記の異なるカラー信号に遭遇する傾向がある。
【0032】
1.高エネルギーフロー信号(例えば、動脈流による)
2.低エネルギーフロー信号(例えば、組織灌流又は静脈流による)
3.“フラッシュ”アーチファクト(例えば、トランスジューサの動き又は患者の動きによる)
4.低レベルシステム雑音
【0033】
本発明の適応式時間積分又はフィルタリングの1つの態様は、低レベル灌流信号のための長時間持続性を使用し、感度を増加させるが、持続性アキュームレータ又はプロセッサを“フラッシュ”アーチファクト信号又は高速の流れの信号のような高エネルギー信号を再発生すること(すなわち、持続すること)から“保護するか”又は分離する。これは、変換器24から又は自己相関器32若しくは計算器36からのディジタル信号の特性を解析し、それを雑音、低エネルギーフロー信号、高エネルギーフロー信号又は“フラッシュ”のいずれかに分類し、次に、例えば、後述の図2Bのスキームにおけるようにルックアップテーブルによって信号の特徴に従って異なる時間積分係数を割り当てることによって実現できる。適応式時間積分又はフィルタリングは持続性アキュームレータ34によって実行される。ドップラー信号(又は後述のような時間シフト信号)中の異なる種類の情報の分析及び積分係数又は重み係数の割り当ては、プログラマブル読み出し専用メモリに記憶されたルックアップテーブルによって実行することができる。
【0034】
図2Aは、本発明の好ましい実施形態を示すのに役立つ、図1の持続性アキュームレータ34の概略回路図である。図2Aに示されるように、アキュームレータの入力信号x(n)は加算器50に供給され、加算器50はフィードバック値に現在値x(n)を加え、アキュームレータ34の出力に和y(n)を供給する。現在値x(n)が入力シーケンスの第1のディジタルサンプルでない場合、直前フレームの時間間隔の間に加算器50によって供給された第(n−1)番目のフレームに対応する以前の出力y(n−1)がある。遅延器52は、前のフレームの時間間隔の間遅延器50の出力を遅延し、それにより、現在値x(n)が加算器50に印加される時に以前のサンプリング間隔に対応する出力y(n−1)が遅延器52の出力にあるようにする。y(n−1)で示されたエネルギー値は比較器54によってしきい値と比較される。エネルギー値がしきい値よりも高い場合、比較器54は図2AのパスAを使用可能にするので、乗算器62が値y(n−1)と係数ashortとを乗算し、積を加算器50に供給する。y(n−1)で示されたエネルギー値がしきい値を超えない場合、比較器54は、代わりにパスBを使用可能にするので、乗算器64がy(n−1)と係数alongとを乗算し、積をライン66を通して加算器50に供給する。
【0035】
したがって、y(n−1)で示されたエネルギー値がしきい値を超えた場合、高レベルフロー信号又は“フラッシュ”アーチファクトが示されるので、その結果、小さい持続性係数ashortがアキュームレータ34により印加された時間持続性に印加されるようなレベルに、比較器54のしきい値がある。y(n−1)で示されたエネルギー値がしきい値を超えない場合、低エネルギーフロー信号及び/又は低レベルシステム雑音が示され、比較器は、パスBを使用可能にし、ashortよりかなり大きい重み係数alongを選択することによってSNRを改良するために信号を大量に積分するか又は持続する。しきい値比較器54は、簡単な比較器及びスイッチを備えている。比較器54で使用される適当なしきい値は、ドップラー情報信号エネルギーのダイナミックレンジの最大値の約0.5倍〜0.8倍の範囲の値である。比較器54は、y(n−1)をしきい値と比較する代わりに、ashort*y(n−1)及びalong*y(n−1)としきい値と比較するために、点線位置54aに移動することもできる。
【0036】
アキュームレータ34は問題とされる身体の各位置に対する現平均値を記憶するメモリ(図示せず)を含む。次のフレーム時間間隔の間、身体の特定の位置に関して記憶された平均値は、記憶された値及び現入力シーケンスの情報を平均化することによって得られた更新された現在値と置換される。したがって、上記の例では、メモリに記憶された以前の画像フレームに対応する以前の平均値y(n−1)は、現在イメージフレームに対応する現在の平均値y(n)に置換される。したがって、生データx(n)は記憶されない。しかしながら、別々のフレームバッファメモリを使用して入力シーケンスx(n)を記憶することができることは明らかである。
【0037】
入力信号x(n)及び出力信号y(n)、y(n−1)は複素数信号であることが注目される。入力信号x(n)が図1の自己相関器32からとられる場合、アキュームレータ34は、第0次の自己相関係数R(0)及び第1次の自己相関係数R(1)の実数部と虚数部で作動するので、x(n)、y(n)、y(n−1)の各々は、それぞれ3つの成分から成る。第0次の自己相関係数は受信器20によって受信されたエコーのドップラー情報のエネルギーを示すので、比較器54は、y(n−1)の第0次の自己相関係数としきい値とを比較する。
【0038】
他の実施形態では、持続性アキュームレータ34は、自己相関値の代わりに、計算器36によって推定された平均速度、速度の変動及びエネルギーで作動することができる。このような他の実施形態では、持続性アキュームレータ34は、図1で、自己相関器32と計算器36との間の信号パスから取り除かれ、計算器36と、計算器36が自己相関器32からその入力を受信するカラーエンコーダ40との間に置かれる。このような実施形態では、計算器36は、第0次の自己相関係数及び第1次の自己相関係数から、受信器20で受信されたエコーにおけるドップラーシフト情報の平均速度、速度の変動及びエネルギーを推定する。この推定の既知の方法に関しては、1985年発行のIEEEのカサイ他著の「自己相関技術を使用する実時間二次元血流イメージング」を参照されたい。次に、持続性アキュームレータ34は、この推定された平均速度、速度の変動、及びエネルギーを演算し、適応式時間持続性を実行する。この場合、入力信号x(n)、y(n)及びy(n−1)は、それぞれ下記の3つの成分、平均速度、速度の変動、及びエネルギーを有している。この場合、比較器54は、推定されたエネルギーとしきい値とを比較する。図1を参照してここで記載された実施形態の全てにおいて、次に、アキュームレータ34の出力パラメータ信号は、カラーエンコーダ40でカラー符号化され、カラースキャンコンバータ42によって走査変換され、カラーモニタ44上に表示される。
【0039】
身体の特定領域の画像の第n番目のフレームを取得するために、トランスジューサ16は、走査プレーン18にわたって走査線に沿って超音波パルスを連続的に伝送する。ある位置からの一連のパルスの後方散乱の中にある領域の位置での体液の流れ又は組織の運動に関するドップラー情報が処理され、入力シーケンスx(n)としてプロセッサ30に供給される。この処理は、一連のフレームに対して繰り返され、領域の同一位置での体液の流れ又は組織の運動に関するドップラー情報を取得し、nがn番目のフレームに対する時間シーケンスにおける第n番目の信号を示している場合、第1の時間シーケンスのドップラー情報信号x(n)を生じる。次に、アキュームレータ34は、信号x(n)の重み付け平均値x(n)及び身体内部の同一位置の以前のフレームに対する平均値y(n−1)を計算する。次に、アキュームレータ34は、入力値x(n)に対応するn番目のフレームに対する重み付け平均値として出力y(n)を供給する。したがって、アキュームレータは、受け取られた連続フレームに対応するnの異なる整数値に対するx(n)から成る第1の時間シーケンスのドップラー情報信号から、対応する第2のシーケンスの持続(又はパラメータ)信号y(n)を提供する。このシーケンスの各ドップラー情報信号は、身体内部のある位置の体液の流れ又は組織の運動のドップラー情報を含む。第2の時間シーケンスの持続(又はパラメータ)信号における各信号は、第1の時間シーケンスにおける信号に対応し、体液の流れ又は組織の運動の平均速度、体液の流れ又は組織の運動の速度の変動又は第1のシーケンスのドップラー情報信号のエネルギーに関する情報に関連し、この情報を含む。
【0040】
アキュームレータ34が、自己相関器32からの自己相関値で作動する場合、アキュームレータの入力のドップラー情報信号x(n)は第0次及び第1次の自己相関係数であり、アキュームレータy(n)の出力はこれらの係数の持続値である。アキュームレータ34が体液の流れ又は組織の運動の推定された平均速度、体液の流れ又は組織の運動の速度の変動又はドップラー情報信号のエネルギーで作動する場合、アキュームレータの出力の持続(又はパラメータ)信号y(n)はこれらの量の持続値である。
【0041】
いくつかの場合では、アキュームレータ34によって実行される適応式時間平均化処理において図2Aより多い重み係数を供給することが望ましい。このような場合、ボックス80内の回路は図2Bの回路90で置換することができる。図2Bに示すように、ライン53の以前のサンプリング間隔に対する遅延出力y(n−1)は、ルックアップテーブル92及び乗算器94に供給される。次に、ルックアップテーブル92は、重み係数を乗算器94に供給し、乗算器94はその積a*y(n−1)をライン66及び加算器50に供給する。このように、同一位置の最後のフレームの持続信号又はパラメータ信号y(n−1)が対応する値の範囲内である場合、多数の重み係数のうちの1つが選択できる。大きなルックアップテーブルが選択されるならば、ルックアップテーブルは、y(n−1)の連続関数としての重み係数を選択するための良好な近似として使用することができる。
【0042】
図2Aを参照するに、パスAが選択されるならば、下記の式が実行される。
y(n)=x(n)+ashort*y(n−1)
【0043】
パスBが選択されるならば、下記の式が代わりに実行される。
y(n)=x(n)+along*y(n−1)
【0044】
放射線学用途では、好ましくは、ashortは、0.125〜0.25の範囲の値を有し、alongは、0.615〜0.75の範囲の範囲を有するが、ashortに対しては0〜0.5、alongに対しては0.25〜0.8という、より幅広い範囲も使用できる。心臓病学用途に関しては、ashort、 alongの対応する好ましい範囲の値は、それぞれ0〜0.125及び0.125〜0.25であるが、ashortに対しては0〜0.25、alongに対しては0.1〜0.5という、より幅広い範囲も使用できる。
【0045】
図2A、図2Bの持続性アキュームレータ34の2つの実施形態は、無限インパルス応答(IIR)フィルタとして公知の構成のフィードバックループを含む。y(n−2)、y(n−3)、....のような1つ以上の前のフレームの値がフィードバックできることが明らかである。IIRフィルタは、x(n−1)、x(n−2)、....のような1つ以上のフィードフォワード信号も含むことができ、それらはトランスジューサ、受信器、ベースバンドプロセッサ及びn番目のフレームよりも前のフレームのためのアナログ/ディジタル変換器によって供給された時間シーケンスのドップラー情報信号である。このような構成が図2Cに示される。図2Cに示されるように、しきい値比較器54′は、プログラマブル読み出し専用メモリ(PROM)又は他の種類のメモリに記憶されたルックアップテーブルとして実行でき、比較器から下流に乗算器63に乗算係数として印加される乗算係数a1、a2、...、c1、c2、...、を発生する。したがって、比較器54′は図2Aの比較器54と構成上幾分異なる。図2Cの構成は、信号x、x(n−1)、x(n−2)、...、y(n−1)、y(n−2)、...の任意の重み付け結合に到るために使用できる。一方、図2Aに図示された種類の比較器は、図2Cの比較器54′の代わりに使用でき、これも本発明の視野の範囲内である。したがって、一般に、図2Cによれば、前述の一般的IIRフィルタの動作は下記の関係で数学的に表すこともできる。ここで、y(n)は、M+1フレームのフィードフォワード信号及びNフレームのフィードバック累積信号値に対して平均化することによって得ることができる。
【0046】
【数2】
【0047】
ここで、Mは負でない整数であり、Nは正の整数であり、x(n−i)はフィードフォワード信号であり、y(n−j)はフィードバック信号であり、ci、ajは重み係数である。最も簡単な場合、Mは0、Nは1であるか、Mは1、Nは0であるか、もしくはM及びNの両方が1である。フィードフォワード項のみを有する有限インパルス応答(FIR)フィルタも使用可能である。大きな“フラッシュ”信号はFIRフィルタで実行されるフィードフォワード項数に等しいフレーム数の内の画像の中からクリアされることが確実なので、いくつかの場合、FIRフィルタの使用は望ましいこともある。このようなFIRフィルタは図3に示されている。図3において、乗算係数を選択するためにしきい値比較器を使用する代わりにルックアップテーブル54′が使用され、それは、各々が入力信号のエネルギーの異なる範囲に対して、フィードフォワード信号の重み付けを制御するために、望まれるならば2つ以上の重み係数の中の1つを選択する際にシステムにより柔軟性を与えることに留意すべきである。
【0048】
第0次及び第1次の相関係数に加えて高次の自己相関係数が使用される場合、図2Aの比較器54を多次元しきい値比較器で置換する必要があることがある。一方、図2Bのルックアップテーブル92は、低次の自己相関係数と同様に高次の自己相関係数を取り扱うように構成できる。前述の実施形態では、同じ重み係数が、平均速度、速度の変動、及びエネルギーを持続するために使用される。3つの変数の代わりに異なる重み係数を選択することができることは明白である。全てのこのような変形は本発明の視野の範囲内である。適応式時間フィルタリングは、カラードップラー速度及び変動イメージング、カラードップラーエネルギーイメージング、又は他のカラーイメージングモードにおいても適用することができる。
【0049】
図4A〜図4Cは、本出願を使用して達成できる結果を示している。図4Aは、本発明を示すフラッシュ信号及び灌流信号の実際のデータのグラフである。図4Aに示されるように、202は、トランスジューサの移動などによって生じる大振幅の“フラッシュ”信号であり、204は、図1の受信器20によって受信される小振幅の灌流信号(又は組織の運動を示す信号)である。本来は、灌流信号と同じオーダーの大きさであるシステム雑音は図4Aには示されていない。したがって、身体の1つの位置における体液の流れ又は組織の運動の情報を示す灌流信号と、前のフレームの同じ位置の身体の1つの位置の体液の流れ又は組織の運動の情報を示す灌流信号とを加算する時間平均化を実行することは重要である。灌流信号はゆっくり変化し、一般に多数のフレームの間中同一であるのに対してシステム雑音はランダムであるので、このような時間平均化はSNRを大いに高める。
【0050】
しかしながら、“フラッシュ”信号202がある場合の従来の灌流信号の持続性は、SNRを改善せず、いくつかの場合、SNRを悪化させることもある。これが図4Bに例示される。図4Bに示されるように、時間的平均化重み係数がシステム雑音に対する灌流信号のSNRを増加させるために適当に選択され、且つ、このような重み係数が“フラッシュ”信号にも適用される場合、これにより“フラッシュ”信号もまた持続するという結果を有する。“フラッシュ”信号の大振幅のために、“フラッシュ”信号の立ち下がり部分は望ましくない灌流信号の一部と重なり、これを消す。図4Bに示されるように、“フラッシュ”信号の立ち下がりエッジは、実際のデータの“フラッシュ”信号が送られた後、長くこのような“フラッシュ”の効果を持続するIIRフィルタの効果のために遅れる。
【0051】
図4Cは、本発明の適応式時間平均化の効果を示している。このように、“フラッシュ”信号が検出されるとき、比較器54又はルックアップテーブル92はashortに対して非常に小さい値を選択することによって、時間的持続性をわずかのみ又は全く適用しない。“フラッシュ”信号が通過し、灌流信号又はシステム雑音が検出された後、比較器54によって、大きな重み係数alongが図4Cに示されるように適用され、SNRを改善する。図4Cには示されていないが、ここに記載された適応式時間フィルタリングによっても、動脈血流のような強い流れ信号のダイナミック時間情報及び良好な時間解像度が保持されると同時に、灌流式の信号を依然として増強することが当業者に理解される。したがって、強い流れ信号が検出されると、比較器54又はルックアップテーブル92によって、低い重み係数ashortが選択され、動脈血流はゆっくりとは現れない。このような強い流れ信号の通過及び灌流式の信号の出現(灌流又は組織の運動)の際に、大きな重み係数alongが選択され、SNRを増加させる。
【0052】
アキュムレータ34で適応式時間フィルタリングの平均化処理を実行する代わりに、図5〜図7に示すように特別のクリッピング動作を実行することができる。図5は、本発明の他の実施形態を示すアキュムレータ34の概略回路図である。図5に示されるように、現値x(n)によって示されたエネルギーは、x(n)によって示されたエネルギー(例えばR(0))としきい値と比較するクリッパ回路252でしきい値と比較される。このようなエネルギーがしきい値よりも大きいならば、クリッパ回路は、そのエネルギーをしきい値とほぼ等しくさせる出力値(例えばR(0))を加算器50に供給する。x(n)によって示されたエネルギーがしきい値を超えないならば、クリッパ回路252は、単に入力信号x(n)を加算器50に送る。遅延回路52は、前のフレームy(n−1)に対応する出力を再び遅延し、それを乗算器254へ供給し、乗算器254は順にこの信号と定数aとを乗算し、積を加算器50に供給する。次に、加算器50は、クリッパ回路252からのクリップ入力をこの積に加算し、アキュムレータ250の出力y(n)を得る。上述の方法によるクリッパ回路252の出力信号は[x(n)]で示される。クリッパ回路は、プログラマブル読み出し専用メモリ、すなわちPROMのようなプログラマブルメモリとして実行できる。クリッパ回路252で使用される適切なしきい値は、ドップラー情報信号エネルギーのダイナミックレンジの最大値の約0.5〜0.8倍の範囲の値である。
【0053】
図6は、図1のアキュムレータ34の他の実施形態260を示している。クリップ機能が図5に関して前述の機能と同じである場合、図5におけるような入力信号をクリップする代わりに、図6のクリッパ回路252は、出力をクリップするために加算器50の出力に置かれ、このようなクリップされた出力は、次のフレームに対する出力を得る遅延回路52に供給される。図7は、クリッパ回路252が遅延回路52と乗算器254との間に置かれたさらに他の実施形態を示している。信号x(n)、x(n−1)、x(n−2)、...、y(n−1)、y(n−2)、...が図2Cにおける方法と同様に結合される場合、そこから得られるこのような信号はクリッパ回路252で取得及びクリップされ、それにより結合値が所定のしきい値を超えないようにする。
【0054】
図5〜図7のクリッパ回路252の機能は、フラッシュアーチファクトのサイズを制限し、大きな信号が累積又は持続されることを阻止する。“フラッシュ”信号x(n)に出会うと、例えば、図5の回路は、この信号をクリップし、その結果、この信号のエネルギーが、低速度信号に関する持続“フラッシュ”信号のマスキング効果が減少されるようなしきい値にほぼ等しくなる。図5の回路は、大きな“フラッシュ”信号の立ち上がりエッジの効果を直ちに減少させる利点を有する。大きな“フラッシュ”信号の立ち上がりエッジの悪影響を減少させるときほど効果的でないとはいえ、図6及び図7の回路も同様の利点を有する。図7ではクリッパ回路は主信号パスの中になく、フィードバックパスの中にあり、その結果、クリッパ回路は主信号パスのダイナミックレンジをクリッピングしきい値に限定しないのと同時に、累積又は持続の信号に関する“フラッシュ”の効果を減少するので、図7の回路は図5及び図6の回路よりも好ましい。
【0055】
特に有利な構成は図2A及び図7を結合することにある。このように、図2Aを、遅延回路52の出力にクリッパ信号252を含むように変形し、その出力y(n−1)を比較器54に供給される前にクリップすれば、図2A及び図7の両方の利点は有効とすることができる。これは、図2Aの点線のボックス252によって示されている。すなわち、比較器の入力のクリッパ回路252は大きな“フラッシュ”信号の立ち上がりエッジの悪影響をさらに減少するのに対して、図2Aの回路の残りの部分で実行される平均化処理は、“フラッシュ”の効果が画像からかなり迅速にクリアされることをさらに確実にする。信号のダイナミックレンジを制限するにも拘わらず入力信号x(n)をクリップすることが望ましい場合、クリッパ回路は、図2Aの加算器50の入力ラインにも配置することができる。
【0056】
本発明は、ドップラー情報を含むドップラー情報信号による持続性アキュムレータの動作によってこの点を記載している。ドップラー情報の代わりに時間シフト情報を使用する多少異なる方式が平均速度、速度の変動、及びエネルギーを得るために使用されるとしても、本質的に同一の利益を得ることができる。米国特許第4,928,698号は、血液の流れ、及び臓器の運動に関する速度及びエネルギーを得るために時間シフト情報を使用するシステムを記載している。図8は、米国特許第4,928,698号及びBonnefous他著の論文「相互相関によるパルスドップラー超音波及び血液速度概算の時間ドメイン定式化」(超音波画像、第8号、第73ページ〜第85ページ(1986年))に記載されているシステムで時間シフト情報に基づいて適応時間フィルタリングを実行するために本発明の概念を適用する方法を示すブロック図である。図8に示されるように、受信器20によって受信されたエコーは、図1に示されるようにベースバンドまでダウンシフトされず、変換器24によって単にディジタルサンプルに変換され、相互相関器302によって相互相関付けがされる。この相互相関器302は、その入力として、身体の体液の流れ又は組織の運動のエネルギー及び平均速度を供給する。持続性アキュムレータ34は、図2A〜図7に関して前述の種類の本質的に同一の動作を実行し、前述の異なる利益を実現できる。アキュムレータの出力持続(又はパラメータ)信号は、カラーエンコーダ40によってカラー符号化され、カラースキャンコンバータ42によって走査変換され、カラーモニタ44上に表示される。
【0057】
本発明は、異なる実施形態を参照することによって説明された。種々の修正及び変更を、添付の請求の範囲によってのみ画定されるべきである本発明の範囲から逸脱しないで行うことができる。例えば、エネルギーの関数として重み係数を選択することに加えて、重み係数を平均速度の及び/又は速度情報の変動の関数としても選択できる。前述の記載では、1つのフィードフォーワード信号(x(n)、x(n−1)、....)又は1つのフィードバック信号(y(n)、y(n−1)、....)のエネルギー又は第0次の自己相関係数が比較器又はクリッパ回路でしきい値と比較されるが、エネルギー、又はそのような信号、又はそのような信号及び/又はそこから得られた信号の組み合わせのエネルギーの第0次の自己相関係数を比較のために使用できることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明を示すための、身体をイメージングする超音波診断イメージングシステムのブロック図である。
【図2A】本発明の好ましい実施形態を示し、図1のカラードップラープロセッサの持続性アキュムレータの無限インパルス応答(IIR)フィルタのブロック図である。
【図2B】図2Aに示されたIIRフィルタのしきい値処理部及び重み付け部の他の実施形態を示す概略回路図である。
【図2C】本発明の他の実施形態を示し、図1のカラードップラープロセッサの持続性アキュムレータにフィードフォワードパス及びフィードバックパスを有するフィルタのブロック図である。
【図3】本発明の他の別の実施形態を示し、図1の持続性アキュムレータの有限インパルス応答フィルタのブロック図である。
【図4A】本発明を示すのに有効な“フラッシュ”信号及び灌流信号のグラフである。
【図4B】従来の時間持続性が適用された後の“フラッシュ”信号及び灌流信号のグラフである。
【図4C】本発明の効果を示す“フラッシュ”信号及び灌流信号のグラフである。
【図5】本発明の他の実施形態を示し、図1の持続性アキュムレータで使用することができるクリッパ回路の概略回路図である。
【図6】本発明の他の実施形態を示し、図1の持続性アキュムレータで使用することができるクリッパ回路の概略回路図である。
【図7】本発明の好ましい実施形態を示し、図1の持続性アキュムレータで使用することができるクリッパ回路の概略回路図である。
【図8】本発明の他の実施形態を示し、時間シフト情報を取得し、かつ平均化処理又はクリップ処理を実行する超音波診断イメージングシステムのブロック図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体内の体液の流れ又は組織の運動状態をイメージングする超音波イメージング装置の作動方法において、
ドップラー情報信号の第1シーケンスを提供する工程であって、シーケンス中の各信号が体液の流れ又は組織の運動からのドップラー情報を含む工程と、
前記ドップラー情報信号の第1シーケンスから、持続信号の対応する第2の時間シーケンスを生成する工程と、を有し、
前記生成工程は、零でない所定の値を超えないように、1以上のドップラー情報信号及び/又は持続信号の結合値をクリップする工程を有する方法。
【請求項2】
身体内の体液の流れ又は組織の運動の状態をイメージングする超音波診断イメージング装置において、
ドップラー情報信号の第1シーケンスを提供する手段であって、シーケンス中の各信号は体液の流れ又は組織の運動からのドップラー情報を含む手段と、
前記ドップラー情報信号の第1シーケンスから、持続信号の対応する第2シーケンスを生成する手段と、を有し、
前記生成手段は、1以上のドップラー情報信号及び/又は持続信号及び/又はそれらから導かれる信号の結合値を、零でない所定の値を超えないようにクリップするクリップ手段を有する装置。
【請求項1】
身体内の体液の流れ又は組織の運動状態をイメージングする超音波イメージング装置の作動方法において、
ドップラー情報信号の第1シーケンスを提供する工程であって、シーケンス中の各信号が体液の流れ又は組織の運動からのドップラー情報を含む工程と、
前記ドップラー情報信号の第1シーケンスから、持続信号の対応する第2の時間シーケンスを生成する工程と、を有し、
前記生成工程は、零でない所定の値を超えないように、1以上のドップラー情報信号及び/又は持続信号の結合値をクリップする工程を有する方法。
【請求項2】
身体内の体液の流れ又は組織の運動の状態をイメージングする超音波診断イメージング装置において、
ドップラー情報信号の第1シーケンスを提供する手段であって、シーケンス中の各信号は体液の流れ又は組織の運動からのドップラー情報を含む手段と、
前記ドップラー情報信号の第1シーケンスから、持続信号の対応する第2シーケンスを生成する手段と、を有し、
前記生成手段は、1以上のドップラー情報信号及び/又は持続信号及び/又はそれらから導かれる信号の結合値を、零でない所定の値を超えないようにクリップするクリップ手段を有する装置。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2006−116329(P2006−116329A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−333231(P2005−333231)
【出願日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【分割の表示】特願平8−521025の分割
【原出願日】平成7年12月15日(1995.12.15)
【出願人】(394007001)アキューソン コーポレイション (8)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【分割の表示】特願平8−521025の分割
【原出願日】平成7年12月15日(1995.12.15)
【出願人】(394007001)アキューソン コーポレイション (8)
【Fターム(参考)】
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