説明

体液採取用回路基板、その製造方法、その使用方法、および、その体液採取用回路基板を備えるバイオセンサ

【課題】簡易な構成により、体液の成分を精度よく測定することができ、しかも、1個の体液採取用回路基板で、複数回、簡便に測定することのできる、体液採取用回路基板、その製造方法、その使用方法、および、その体液採取用回路基板を備えるバイオセンサを提供すること。
【解決手段】帯状の金属基板12と、金属基板12を開口することにより、金属基板12の長手方向に沿って、金属基板12から形成される複数の穿刺針7と、穿刺針7の穿刺により採取される血液と接触させるための複数の電極9とを備えている採血用回路基板1を巻回し、周方向から径方向外側に傾斜するように、穿刺針7を突出させる。そして、突出させた穿刺針7で指などを穿刺し、血液を電極9に接触させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体液採取用回路基板、体液採取用回路基板の製造方法、体液採取用回路基板の使用方法、および、体液採取用回路基板を備えるバイオセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病には、インシュリン依存性(I型)とインシュリン非依存性(II型)とがあり、前者は、定期的なインシュリンの投与が必要となる。そのため、前者では、患者が自ら採血し、自ら血糖値を測定し、その血糖値に応じた投与量でインシュリンを自ら投与する処置方法が採用されている。
専ら、そのような患者のために、患者自身が、個人的に採血し、血糖値を測定することのできる血糖値測定装置が知られている。
【0003】
例えば、電極が挿入され、本体中央に設けられる反応区域と、本体中央から外方に突出する穿刺針と、電極と穿刺針とを連通する毛管路とを備える流体収集装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−493号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載される流体収集装置では、穿刺針と反応区域とが本体に一体的に形成されているので、測定準備が簡便である。しかし、この流体収集装置では、反応区域とは別部材である電極を、反応区域へ挿入して、血液成分を測定する。そのため、血液の検知精度が不安定となり、精度よく測定できないという不具合がある。
また、I型の糖尿病においては、症状によっては、患者が、1日に複数回、具体的には、食前毎あるいは食後毎に、血糖値を測定する必要がある。
【0005】
一方、特許文献1に記載される流体収集装置では、1個の装置につき、1本の穿刺針しか備えられていないので、穿刺針の繰り返しの使用を避ける必要上、1回の測定ができるのみである。
そのため、上記した流体収集装置で、上記したように複数回測定する場合には、使用済みの流体収集装置を廃棄し、その後、新たな流体収集装置を準備する必要がある。そのため、かかる流体収集装置では、上記した測定準備が煩雑になり、ランニングコストの上昇が不可避となる。
【0006】
本発明の目的は、簡易な構成により、体液の成分を精度よく測定することができ、しかも、1個の体液採取用回路基板で、複数回、簡便に測定することのできる、体液採取用回路基板、その製造方法、その使用方法、および、その体液採取用回路基板を備えるバイオセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の体液採取用回路基板は、帯状の支持基板と、前記支持基板の長手方向に沿って、前記支持基板に区画される複数の測定ユニットとを備え、前記測定ユニットは、前記支持基板を開口することにより、前記支持基板の長手方向に沿って、前記支持基板から形成される穿刺針と、前記支持基板の上に形成されるベース絶縁層と、前記ベース絶縁層の上に形成され、前記穿刺針の穿刺により採取される体液と接触させるための電極を備える導体層とを備えることを特徴としている。
【0008】
この体液採取用回路基板は、穿刺針と電極とを備える測定ユニットを備えている。そのため、穿刺針の穿刺により体液を流出させて、流出させた体液を、測定ユニットの電極と簡便に接触させることができる。その結果、この体液採取用回路基板によれば、簡易な構成により、体液の成分を簡便に測定することができる。
しかも、この体液採取用回路基板では、1個の体液採取用回路基板に設けられる複数の測定ユニットによって、体液の成分を、複数回測定することができる。
【0009】
さらに、この体液採取用回路基板では、巻回されたときに、複数の測定ユニットが周方向に沿って配置されるので、1個の測定ユニットの使用後には、体液採取用回路基板を周方向に回転させることにより、使用後の測定ユニットとその測定ユニットに対して回転方向上流側に隣接する未使用の測定ユニットとを交換することができる。そのため、測定ユニットを簡便に交換することができる。
【0010】
また、本発明の体液採取用回路基板では、巻回したときに、前記穿刺針が、周方向から径方向外側に傾斜するように突出することが好適である。
この体液採取用回路基板によれば、巻回された体液採取用回路基板の径方向外側に穿刺針が配置されるので、測定ユニットによる確実な穿刺および測定を達成することができる。
【0011】
また、本発明のバイオセンサは、上記した体液採取用回路基板と、前記穿刺針を露出させるための露出口が形成される筐体と、前記体液採取用回路基板が巻回されており、前記体液採取用回路基板を送り出す送出部と、前記送出部から送り出される前記体液採取用回路基板を巻き取る巻取部と、前記送出部から前記巻取部にわたって設けられ、前記体液採取用回路基板の前記穿刺針が径方向外側に突出しないように抑制するガイド部とを備えることを特徴としている。
【0012】
このバイオセンサでは、巻取部が回転して、体液採取用回路基板を巻取るに伴って、送出部から巻取部に向かって測定ユニットが移動する。このとき、送出部から巻取部にわたって設けられるガイド部によって、穿刺針の突出が抑制されている。
そして、測定ユニットが露出口に至ると、穿刺針がガイド部から離間して、径方向外側に突出し、露出口から露出される。そのため、巻回された体液採取用回路基板の径方向外側において、測定ユニットによる確実な穿刺および測定を達成することができる。
【0013】
また、本発明のバイオセンサでは、前記穿刺針は、前記体液採取用回路基板の送出方向の上流側に向かって、配置されることが好適である。
すなわち、上記したバイオセンサにおいて、穿刺針が体液採取用回路基板の送出方向の下流側に向かって配置されている場合には、穿刺針は、ガイド部との摺擦によって、送出方向の上流側に向かって押圧され、穿刺針の向きと、ガイド部が穿刺針を押圧する押圧力の向きとが対向する。そのため、穿刺針が、ガイド部との摺擦によって損傷する場合がある。また、巻取部においては、径方向内側の穿刺針によって、径方向外側の体液採取用回路基板が損傷する場合がある。
【0014】
しかし、穿刺針が、体液採取用回路基板の送出方向の上流側に向かって配置されていれば、穿刺針の向きと、ガイド部が穿刺針を押圧する押圧力の向きとがともに送出方向の上流側に向く。そのため、穿刺針は、ガイド部に沿って、巻回された体液採取用回路基板の径方向内側に向かって退避することにより、ガイド部からの押圧力を受け流すことができる。その結果、体液採取用回路基板や穿刺針を損傷することなく、スムーズに体液採取用回路基板を搬送することができる。
【0015】
また、本発明の体液採取用回路基板の製造方法は、複数の測定ユニットが長手方向において互いに間隔を隔てて区画される帯状の支持基板を用意する工程、各前記測定ユニットの上に、ベース絶縁層を形成する工程、各前記ベース絶縁層の上に、体液と接触させるための電極を備える導体層を形成する工程、および、前記支持基板を開口することにより、前記支持基板の長手方向に沿って、前記支持基板から穿刺針を形成する工程を備えていることを特徴としている。
【0016】
この体液採取用回路基板の製造方法によれば、帯状の支持基板の長手方向に沿って整列して、複数の測定ユニットを形成することができる。そのため、体液採取用回路基板の歩留りを向上させることができ、生産効率の向上によるコストの低減を図ることができる。
また、本発明の体液採取用回路基板の使用方法は、上記した体液採取用回路基板の製造方法により製造される体液採取用回路基板を巻回する工程を備えていることを特徴としている。
【0017】
この体液採取用回路基板の使用方法によれば、体液採取用回路基板を巻回することにより、穿刺針を、周方向から径方向外側に傾斜するように突出させることができる。そのため、簡易な工程によって、穿刺針を突出させることができる。その結果、巻回された体液採取用回路基板の径方向外側において、測定ユニットによる確実な穿刺および測定を達成することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の体液採取用回路基板によれば、簡易な構成により、体液の成分を簡便に測定しながら、1個の体液採取用回路基板で、複数設けられる測定ユニットによって、体液の成分を、複数回測定することができる。さらに、複数回の測定毎に、測定ユニットを簡便に交換することができる。
また、本発明のバイオセンサによれば、体液の成分を簡便に測定することができる。
【0019】
また、本発明の体液採取用回路基板の製造方法によれば、体液採取用回路基板の歩留りを向上させることができ、生産効率の向上によるコストの低減を図ることができる。
また、本発明の体液採取用回路基板の使用方法によれば、簡易な工程によって、穿刺針を、巻回された体液採取用回路基板の径方向外側に突出させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、本発明の体液採取用回路基板の一実施形態である採血用回路基板の平面図、図2は、図1に示す採血用回路基板の測定ユニットの拡大平面図、図3は、図2のA−A線に沿う断面図、図4および図5は、本発明の採血用回路基板の製造方法の一実施形態を説明するための製造工程図を示す。
採血用回路基板1は、図1に示すように、長手方向(図1の左右方向であって、後述する穿刺方向を含む。なお、穿刺方向は、穿刺針7(後述)の先端に向かう方向であって、図1では、左方から右方へ向かう方向に相当する。以下同じ。)に沿って延びる長尺な帯状に形成されており、製造時には、図示しないが、長手方向と直交する方向(以下、幅方向という。)に沿って複数並列配置されている。また、各採血用回路基板1は、図1に示すように、ジョイント部18を介して、長尺な枠部17に分離可能に支持されている。なお、ジョイント部18は、枠部17と、採血用回路基板1との間に架設されている。
【0021】
また、採血用回路基板1は、帯状の支持基板としての金属基板12と、金属基板12の長手方向に沿って、金属基板12に区画される複数の測定ユニット2とを備えている。
また、採血用回路基板1の大きさは、ケーシング22(後述)の大きさや測定ユニット2の数などに応じて適宜選択され、特に限定されないが、例えば、その長手方向長さは、例えば、5〜100cm、好ましくは、15〜40cmである。採血用回路基板1の長手方向長さが上記範囲に満たないと、測定ユニット2の数が過度に少なくなる場合がある。一方、採血用回路基板1の長手方向長さが上記範囲を超過すると、採血用回路基板1を実装した血糖値測定装置21(後述)が大型化し、取り扱い性が低下する場合がある。
【0022】
また、採血用回路基板1の幅方向長さは、2〜30mm、好ましくは、5〜15mmである。採血用回路基板1の幅方向長さが上記範囲に満たないと、電極9(後述)が過度に小さくなり、操作性が低下する場合がある。一方、採血用回路基板1の幅方向長さが上記範囲を超過すると、採血用回路基板1を実装した血糖値測定装置21(後述)が大型化し、取り扱い性が低下する場合がある。
【0023】
測定ユニット2は、採血用回路基板1の長手方向に長い平面視略矩形状に区画されており、採血用回路基板1の長手方向において、互いに隣接配置されている。
測定ユニット2は、図2に示すように、その穿刺方向上流側端部に、端子10を備えている。また、測定ユニット2の穿刺方向下流側端部には、開口部3が形成されている。
端子10は、CPU35(後述)に接続するために、3つの電極9(後述)に対応して3つ設けられている。また、3つの端子10は、幅方向において、互いに間隔を隔てて並列配置されている。各端子10は、長手方向に沿って、平面視略矩形状に形成されており、端子10の一辺の長さは、例えば、0.5〜5mmである。
【0024】
開口部3は、平面視略矩形状に形成されており、開口部3内には、連結部5、電極部4および穿刺針7が一体的に配置されている。
連結部5は、穿刺方向上流側から穿刺方向下流側に向かって幅狭となる平面視略台形状に形成されており、測定ユニット2における開口部3の穿刺方向上流側端部から下流側に向かって突出するように設けられている。
【0025】
電極部4は、平面視略五角形状に形成されており、連結部5から下流側に向けて形成されている。また、電極部4は、電極9およびストッパ部6を備えている。
電極9は、穿刺針7の穿刺により採取される血液と接触させるために設けられ、電極部4において、幅方向および穿刺方向において、隣接するように3つ設けられている。
具体的には、3つの電極9のうち、2つの電極9aは、電極部4において、幅方向において間隔を隔てて互いに対向配置されている。2つの電極9aは、平面視略円形状に形成されている。
【0026】
また、残りの1つの電極9bは、電極部4において、2つの電極9aに対して穿刺方向下流側に間隔を隔てて対向配置されている。電極9bは、幅方向において2つの電極9a間よりも長く延びる平面視略矩形状に形成されている。
また、3つの電極9は、それぞれ、作用極、対極または参照電極のいずれかに対応している。2つの電極9aの各直径は、例えば、100μm〜5mmであり、1つの電極9bの一辺の長さは、例えば、100μm〜2.5mmである。
【0027】
ストッパ部6は、電極部4の穿刺方向下流側端部において、穿刺針7が皮膚に過度に深く穿刺することを防止するために設けられている。具体的には、ストッパ部6は、電極部4において、平面視略正五角形の穿刺方向最下流側頂点が穿刺方向上流側に向かって凹む部分として形成されている。すなわち、ストッパ部6は、電極部4において、穿刺針7を挟んで幅方向両外側から突出するように設けられている。
【0028】
穿刺針7は、金属基板12の長手方向に沿って、穿刺により体液としての血液を採取するために設けられている。穿刺針7は、電極部4の穿刺方向下流側端部の幅方向中央から穿刺方向下流側に向かって突出している。なお、各測定ユニット2の穿刺針7の穿刺方向は、すべて同一方向(図1の右方向)を向いている。また、穿刺針7は、穿刺方向に沿って先端(穿刺方向下流側端部)が鋭角に尖る平面視略三角形状(二等辺三角形状)に形成されている。
【0029】
穿刺針7の先端の角度θは、例えば、10〜30°、好ましくは、15〜25°である。先端の角度θが10°未満であると、強度不足により皮膚に穿刺できない場合がある。一方、角度θが30°を超過すると、穿刺しにくい場合がある。また、穿刺針7の穿刺方向長さは、例えば、0.5〜10mmであり、穿刺針7の幅方向長さ(穿刺方向上流側部分の幅)は、例えば、0.1〜3mmである。穿刺針7の穿刺方向長さおよび幅が、上記範囲に満たない場合には、採血が困難になる場合があり、穿刺針7の穿刺方向長さおよび幅が、上記範囲を超過する場合には、穿刺箇所の損傷が大きくなる場合がある。
【0030】
また、穿刺針7の先端と、ストッパ部6の穿刺方向下流側端縁との離間長さは、例えば、0.3〜2mmである。
また、穿刺針7の先端は、穿刺方向において、3つの電極9から、例えば、0.2〜5mm、好ましくは、0.5〜3mm以内に配置されている。
また、測定ユニット2には、その長手方向途中において、3本の配線11が設けられている。
【0031】
各配線11は、測定ユニット2の穿刺方向上流側端部および穿刺方向下流側端部にわたって、各電極9とこれらに対応する各端子10とをそれぞれ電気的に接続するように、設けられている。具体的には、各配線11は、互いに幅方向に間隔を隔てて配置されている。
幅方向両側の配線11は、平面視において、幅方向両側の端子10から穿刺方向下流側に向かって延び、その後、測定ユニット2の長手方向略中央において、幅方向内方に向かって屈曲し、測定ユニット2の幅方向略中央まで延びた後、穿刺方向下流側に向かって屈曲し、連結部5の幅方向中央を通過して各電極9aに接続される略クランク形状に形成されている。
【0032】
また、中央の配線11は、穿刺方向に沿って平面視一直線状に形成され、中央の端子10と電極9bとを接続している。
各配線11の幅方向長さは、例えば、0.01〜2mmである。また、隣接する各配線11の幅方向間隔は、穿刺方向上流側では、0.05〜10mmであり、穿刺方向下流側では、0.01〜1mmである。
【0033】
各電極9と、各端子10と、それらを接続する各配線11とは、連続して導体パターン8として一体的に設けられている。
そして、この採血用回路基板1は、図3に示すように、支持基板としての金属基板12と、金属基板12の上に積層されるベース絶縁層13と、ベース絶縁層13の上に積層される導体パターン8と、導体パターン8を被覆するように、ベース絶縁層13の上に設けられるカバー絶縁層14とを備えている。
【0034】
金属基板12は、金属箔などからなり、採血用回路基板1においては、その外形形状に対応する帯状に形成されている。
金属基板12を形成する金属材料としては、例えば、ニッケル、クロム、鉄、ステンレス(SUS304、SUS430、SUS316L)などが用いられる。好ましくは、剛性を有する観点から、ステンレスが用いられる。また、金属基板12の厚みは、例えば、10〜300μm、好ましくは、20〜100μmである。厚みが10μm未満であると、強度不足により皮膚に穿刺(後述)できない場合がある。一方、厚みが300μmを超過すると、穿刺時に痛みを感じ、皮膚が過度に損傷する場合がある。
【0035】
ベース絶縁層13は、金属基板12の導体パターン8に対応する部分と電極部4とを被覆し、穿刺針7を露出するように形成されている。また、ベース絶縁層13は、電極部4において、金属基板12よりもやや大きな相似形に形成され、ベース絶縁層13の周端部は、金属基板12の周端部から延出している。
ベース絶縁層13を形成する絶縁材料としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂などの合成樹脂が用いられる。機械耐久性および耐薬品性の観点から、好ましくは、ポリイミド樹脂が用いられる。また、ベース絶縁層13の厚みは、例えば、3〜50μm、好ましくは、5〜25μmである。厚みが3μm未満であると、ピンホールなどの絶縁欠陥が発生する場合がある。一方、厚みが50μmを超過すると、切断や外形加工がしにくくなる場合がある。
【0036】
導体パターン8は、ベース絶縁層13の上に形成され、上記した3つの電極9、3つの端子10および3本の配線11を備える配線回路パターンとして形成されている。
導体パターン8を形成する導体材料としては、例えば、鉄、ニッケル、クロム、銅、金、銀、白金、またはそれらの合金などの金属材料が用いられる。導体材料は、ベース絶縁層13やカバー絶縁層14との密着性や加工容易性の観点から、適宜選択される。また、2種類以上の導体材料を積層することもできる。導体パターン8の厚みは、例えば、5〜50μm、好ましくは、10〜20μmである。
【0037】
カバー絶縁層14は、各配線11を被覆し、各端子10および各電極9を露出するように、ベース絶縁層13の上に設けられている。また、カバー絶縁層14の周端部は、図2および図3に示すように、ベース絶縁層13の周端部と、平面視において同一位置に位置するように配置されている。
また、カバー絶縁層14には、電極9を露出させる電極側開口部15、および、端子10を露出させる端子側開口部16が形成されている。具体的には、電極側開口部15は、図2に示すように、平面視において、各電極9を取り囲むように、各電極9よりやや大きく形成されている。また、端子側開口部16は、平面視において、すべての端子10を含むように、略矩形状に形成されている。また、カバー絶縁層14は、各配線11を被覆する。カバー絶縁層14を形成する絶縁材料としては、上記したベース絶縁層13のそれと同様の絶縁材料が用いられる。カバー絶縁層14の厚みは、例えば、2〜50μmである。
【0038】
そして、図2に示すように、電極部4において、金属基板12から延出するベース絶縁層13およびカバー絶縁層14の穿刺方向端部から、ストッパ部6が形成されている。なお、ストッパ部6を形成する絶縁材料が、金属材料より柔らかいため、穿刺針7の過度の穿刺を防止する際には、ストッパ部6に当接する皮膚の損傷を有効に防止することができる。
【0039】
次に、図4および図5を参照して、採血用回路基板1の製造方法を説明する。なお、図4および図5は、図3に対応する断面図として示される。
この方法では、まず、図4(a)に示すように、複数の測定ユニット2が長手方向において互いに間隔を隔てて区画される帯状の金属基板12を用意する。また、図示しないが、帯状の金属基板12は、長尺なシート状の金属箔に多数区画される。
【0040】
次いで、この方法では、図4(b)に示すように、金属基板12に区画された測定ユニット2の上に、ベース絶縁層13を形成する。ベース絶縁層13の形成は、例えば、金属基板12の表面に、感光性の合成樹脂ワニスを塗布し、フォト加工後に硬化させる方法、例えば、金属基板12の表面に合成樹脂のフィルムを積層し、そのフィルムの表面にベース絶縁層13と同一パターンのエッチングレジストを積層し、その後、エッチングレジストから露出するフィルムをウエットエッチングする方法、例えば、金属基板12の表面に、予め機械打ち抜きした合成樹脂のフィルムを積層する方法、例えば、金属基板12の表面に、合成樹脂のフィルムを積層した後、放電加工またはレーザ加工する方法などが用いられる。加工精度の観点から、好ましくは、金属基板12の表面に、感光性の合成樹脂ワニスを塗布し、フォト加工後に硬化させる方法が用いられる。
【0041】
次いで、この方法では、図4(c)に示すように、ベース絶縁層13の上に、上記したパターンで導体パターン8を形成する。導体パターン8の形成は、アディティブ法やサブトラクティブ法など、プリント配線を形成する公知のパターンニング法が用いられる。微細パターンを形成できる観点から、好ましくは、アディティブ法が用いられる。
アディティブ法では、例えば、ベース絶縁層13の表面に、化学蒸着やスパッタリングにより金属薄膜を形成し、その金属薄膜の表面にめっきレジストを形成した後、めっきレジストから露出する金属薄膜の表面に、金属薄膜を種膜として、電解めっきによりめっき層を形成する。
【0042】
また、導体パターン8は、化学蒸着やスパッタリングにより金属薄膜のみから形成することもできる。
なお、導体パターン8の形成では、図示しないが、電極9の表面および端子10の表面には、さらに電解めっきや無電解めっきより、異種の金属のめっき層を形成することもできる。その金属めっき層の厚みは、好ましくは、0.05〜10μmである。
【0043】
次いで、この方法では、図4(d)に示すように、カバー絶縁層14を形成する。カバー絶縁層14の形成は、ベース絶縁層13を形成する方法と、同様の方法が用いられる。好ましくは、ベース絶縁層13の表面に、導体パターン8を被覆するように、感光性の合成樹脂ワニスを塗布し、フォト加工後に硬化させる方法が用いられる。
なお、電極側開口部15および端子側開口部16を形成するには、カバー絶縁層14を、電極側開口部15および端子側開口部16を有するパターンで形成すればよく、また、電極側開口部15および端子側開口部16は、例えば、放電加工する方法、例えば、レーザ加工する方法などにより、穿孔することもできる。
【0044】
その後、図5(e)に示すように、金属基板12の区画に対応して、金属箔を外形加工し、帯状の採血用回路基板1を形成すると同時に、金属基板12を開口して、開口部3を形成することにより、金属基板12から穿刺針7を形成する。なお、この外形加工によって、枠部17およびジョイント部18を同時に形成する。
金属箔の外形加工は、例えば、放電加工、レーザ加工、機械打ち抜き加工(例えば、パンチ加工など)、エッチング加工などが用いられる。加工後の洗浄が容易である観点から、好ましくは、エッチング加工(ウエットエッチング)が用いられる。
【0045】
これによって、複数の測定ユニット2を備える採血用回路基板1を、複数製造することができる。
得られた採血用回路基板1には、その電極9の表面に、図5(f)に示すように、薬剤19、すなわち、酵素として、例えば、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼなどや、例えば、メディエータとして、例えば、フェリシアン化カリウム、フェロセン、ベンゾキノンなどが、単独または組み合わせて塗布される。なお、薬剤19の塗布には、例えば、浸漬法、スプレー法、インクジェット法など適宜の方法が用いられる。
【0046】
また、薬剤19の種類によっては、電極9の表面に、上記したように、異種の金属のめっき層を形成した後、さらに、予め異種の金属の皮膜を形成しておいて、所定の電位差を付与することもできる。具体的には、金めっき層を形成した後、さらに、銀または塩化銀を、その金めっき層の表面に塗布することが例示される。
図6は、本発明の体液採取用回路基板の使用方法の一実施形態を示し、(a)は、斜視図、(b)は、軸線方向から見た概略側面図を示す。なお、図6では、便宜的に、金属基板12および導体パターン8だけを示す。
【0047】
採血用回路基板1を使用するには、まず、ジョイント部18を切断して、採血用回路基板1を枠部17から分離することにより、1本の採血用回路基板1を用意する。
次いで、この方法では、図6(a)に示すように、端子10および電極9が径方向外側に向くように、採血用回路基板1を巻回する。
これによって、図6(b)に示すように、最外層の穿刺針7が、金属基板12の弾性により、巻回された採血用回路基板1の周方向から径方向外側に傾斜するように突出する。
【0048】
なお、最外層よりも径方向内側に配置される穿刺針7は、その穿刺針7が配置される層と径方向外側において隣接する層によって、周方向から径方向外側に突出することが抑制されている。
巻回された採血用回路基板1の径方向長さは、例えば、1〜10cm、好ましくは、2〜6cmである。また、巻回された採血用回路基板1の穿刺針7の先端は、例えば、径方向外側に向かって、1〜15mm、好ましくは、2〜8mm突出する。
【0049】
巻回された採血用回路基板1は、患者が指などの皮膚を穿刺して採血し、採血した血液中のグルコース量を測定するために、血糖値測定装置21に実装される。
図7は、図6に示す採血用回路基板が実装された、本発明のバイオセンサの一実施形態である血糖値測定装置の概略斜視図、図8は、図7に示す血糖値測定装置の内部を示す概略断面図、図9は、図7に示す血糖値測定装置の使用方法を説明するための側断面図を示す。なお、図9において、紙面右側を「前側」、紙面左側を「後側」、紙面上側を「上側」、紙面下側を「下側」、紙面手前側を「左側」、紙面奥側を「右側」とし、図7および図8の各方向は、図9の方向の例にならうものとする。また、図8において、便宜的に、採血用回路基板1を1層だけ巻回した状態を示し、また、採血用回路基板1の構成要素のうち、金属基板12および導体パターン8だけを示す。
【0050】
次に、図7、図8および図9を参照して、採血用回路基板1の使用方法および採血用回路基板1が実装された血糖値測定装置21の使用方法について説明する。
血糖値測定装置21は、図7に示すように、筐体としてのケーシング22と、送出部23と、巻取部24と、ガイド部25(図8参照)と、表示部26と、測定部27(図9参照)とを備えている。
【0051】
ケーシング22は、血糖値測定装置21における各部材を収容するために用意され、箱型状に形成されている。具体的には、ケーシング22は、送出部23、巻取部24、ガイド部25および測定部27を内蔵するとともに、その上面には、表示部26が設けられている。また、ケーシング22には、露出口としての前側開口部28と、上側開口部29とが形成されている。
【0052】
ケーシング22の上下方向長さは、例えば、0.5〜4cm、好ましくは、1〜2cmであり、その左右方向長さは、例えば、2〜10cm、好ましくは、3〜7cmであり、その前後方向長さは、例えば、2〜20cm、好ましくは、5〜15cmである。
前側開口部28は、ケーシング22の前壁において、左右方向に延びる正面視略矩形状に開口されており、後述するように、巻取部24が送出部23の採血用回路基板1を巻き取るときに、一本の穿刺針7を露出させるように、形成されている。
【0053】
上側開口部29は、ケーシング22の上壁の前側であって、左右方向中央部において、平面視略円形状に形成されており、具体的には、後述する駆動軸32が挿通されるように、形成されている。
送出部23は、送出ホイール30を備え、ケーシング22内において、巻取部24の後側、かつ、表示部26の下側に配置されている。
【0054】
送出ホイール30は、略円盤形状に形成され、ケーシング22において回転自在に支持されている。
送出ホイール30には、穿刺針7が送出方向S(図8参照)の上流側に向かって配置されるように、採血用回路基板1が巻回され、保持されている。
巻取部24は、図7および図9に示すように、巻取ホイール31および駆動軸32と、軸受部33とを備え、ケーシング22内において、送出部23の前側に配置されている。
【0055】
巻取ホイール31は、略円盤形状に形成され、その径方向中央に駆動軸32が一体的に挿通されている。巻取ホイール31の前端縁は、例えば、ケーシング22の前端面よりも0.1〜20mm、好ましくは、2〜10mm後方に配置される。
駆動軸32は、巻取ホイール31と中心軸線を共有し、上下方向に延び、上側開口部29を通って、ケーシング22の上壁から突出するように配置されている。
【0056】
軸受部33は、ケーシング22の上側開口部29における周端に設けられている。軸受部33は、駆動軸32を回転自在に支持している。
ガイド部25は、図8に示すように、送出部23から巻取部24にわたって設けられており、採血用回路基板1の穿刺針7が径方向外側に突出しないように抑制している。具体的には、ガイド部25は、送出部23の外周に沿って設けられ、その後、送出部23の右端部から巻取部24の右端部に向かって前後方向に延び、巻取部24の外周に沿って、前側開口部28の右端縁まで形成されている。
【0057】
また、ガイド部25は、例えば、プラスチックなどから、ケーシング22の下壁と上方との間に架設される平板状に形成されている。
ガイド部25の上下方向長さは、採血用回路基板1の幅方向長さよりも長く形成されており、例えば、5〜35mm、好ましくは、10〜20mmである。また、ガイド部25の厚みは、例えば、0.2〜5mm、好ましくは、0.5〜3mmである。また、ガイド部25は、巻回された採血用回路基板1と、径方向において、例えば、0.1〜3mm、好ましくは、0.3〜1mmの間隔を隔てて配置されている。
【0058】
測定部27は、図8および図9に示すように、接点34と、CPU35と、接点34およびCPU35を電気的に接続する信号配線36とを備えている。
接点34は、ブラシ状に形成され、ケーシング22内において、巻取部24の左側、かつ、巻取部24の径方向外側に配置され、採血用回路基板1の使用時に、使用に供する測定ユニット2の端子10と接触するように、端子10に対して摺動自在に設けられている。すなわち、測定ユニット2の穿刺針7が前側開口部28から露出した状態において、端子10と接触するように、設けられている。また、接点34は、端子10と接触したときには、端子10を介して、電極9に電圧を印加できるとともに、電圧印加時の各電極9間の抵抗値の変化を検知できるように、設けられている。
【0059】
CPU35は、送出部23の上方において、表示部26の下側に設けられ、接点34と、信号配線36を介して電気的に接続されるとともに、表示部26と電気的に接続されている。また、CPU35は、採血用回路基板1による測定時に、接点34において検知される各電極9間の抵抗値の変化に基づいて、グルコース量を血糖値として算出する。
表示部26は、図7に示すように、ケーシング22の上壁の後側に設けられ、例えば、LEDなどからなり、CPU35により測定される血糖値などを表示する。
【0060】
そして、血糖値測定装置21を使用するには、まず、図9(a)に示すように、血糖値測定装置21を用意する。
このとき、図8に示すように、ケーシング22内において、送出ホイール30に巻回されている採血用回路基板1は、ガイド部25に沿って引き出され、巻取ホイール31に掛け渡され、採血用回路基板1の穿刺方向最上流側端部は、巻取ホイール31に保持されている。すなわち、穿刺針7は、採血用回路基板1の送出方向Sの上流側に向かって、配置されている。
【0061】
また、送出部23の外周にはガイド部25が配置されているため、送出ホイール30に巻回されている採血用回路基板1の穿刺針7は、ガイド部25によって径方向内方に押圧され、径方向外側に突出しない。また、同様に、送出ホイール30から引き出され、巻取ホイール31に掛け渡されている採血用回路基板1の穿刺針7も突出しない。
次いで、この方法では、図9(b)に示すように、駆動軸32を巻取方向Rに回転させて、穿刺針7を前側開口部28から露出させる。
【0062】
このとき、図8に示すように、送出ホイール30に巻回されている採血用回路基板1は、送出部23から送り出され、ガイド部25に沿って、送出方向Sに移動し、巻取部24の巻取ホイール31に巻き取られる。そして、前側開口部28から穿刺針7が完全に露出すると、穿刺針7がガイド部25から離間し、穿刺針7が前側開口部28からケーシング22の外側に向かって、金属基板11の弾性によって突出する。そして、患者自身が指などに、突出した穿刺針7を穿刺する。
【0063】
また、このとき、穿刺針7の穿刺は、ストッパ部6が皮膚に当接すると、それ以上の穿刺が規制される。これにより、穿刺針7の穿刺深さは、例えば、0.5〜1.5mmとなる。
次いで、この方法では、図9(c)に示すように、穿刺箇所に電極9を近づけて接触させる。
【0064】
すると、電極9の表面に、穿刺針7の穿刺により採取された血液が接触して、血液と薬剤19とが反応する。このとき、接点34は、端子10と接触するとともに、この接点34から、端子10を介して、電極9に電圧を印加する。そして、接点34により、電圧印加時の各電極9間の抵抗値の変化を検知し、この接点34による抵抗値の変化の検知に基づいて、CPU35が、グルコース量を血糖値として算出する。そして、CPU35により測定された血糖値が、表示部26において、表示される。
【0065】
その後、この方法では、図示しないが、駆動軸32を、さらに巻取方向Rに回転させることにより、巻取ホイール31を回転させて、使用後の測定ユニット2に対して送出方向Sの上流側に隣接配置される未使用の測定ユニット2を、前側開口部28から露出させる。その後、上記した図9(a)〜図9(c)に示した各工程が複数回実施されて、血糖値を複数回測定する。
【0066】
そして、この採血用回路基板1およびそれを備える血糖値測定装置21によれば、穿刺針7の穿刺により血液を出血させて、出血させた血液を、測定ユニット2の電極9と簡便に接触させて、この電極9と電気的に接続されるCPU35によって、血糖値を簡便に測定することができる。
その結果、この採血用回路基板1および血糖値測定装置21は、簡易な構成により、血糖値を簡便に測定することができる。
【0067】
しかも、この採血用回路基板1では、1本の採血用回路基板1に、複数設けられる測定ユニット2によって、血糖値を、複数回測定することができる。
さらに、この採血用回路基板1を巻回することにより、複数の測定ユニット2を周方向に沿って配置すれば、1個の測定ユニット2の使用後には、採血用回路基板1を周方向に回転させることにより、使用後の測定ユニット2とその測定ユニット2に対して回転方向上流側に隣接する未使用の測定ユニット2とを交換することができる。そのため、複数回の測定毎に、測定ユニット2を簡便に交換することができる。
【0068】
また、上記した採血用回路基板1の製造方法によれば、帯状の金属基板12の長手方向に沿って整列して、複数の測定ユニット2を形成することができる。そのため、採血用回路基板1の歩留りを向上させることができ、生産効率の向上によるコストの低減を図ることができる。
また、上記した採血用回路基板1の使用方法によれば、採血用回路基板1を巻回することにより、穿刺針7を、周方向から径方向外側に傾斜するように突出させることができる。そのため、簡易な工程によって、穿刺針7を突出させることができる。その結果、巻回された採血用回路基板1の径方向外側に穿刺針7が配置されるので、測定ユニット2による確実な穿刺および測定を達成することができる。
【0069】
また、上記した血糖値測定装置21では、巻取部24が回転して、採血用回路基板1を巻取るに伴って、送出部23から巻取部24に向かって測定ユニット2が移動する。このとき、送出部23から巻取部24にわたって設けられるガイド部25によって、穿刺針7の突出が抑制されている。
そして、測定ユニット2が前側開口部28に至ると、穿刺針7がガイド部25から離間して、径方向外側に突出し、前側開口部28から露出される。そのため、測定ユニット2による確実な穿刺および測定を達成することができる。
【0070】
また、上記した血糖値測定装置21では、穿刺針7が、採血用回路基板1の送出方向Sの上流側に向かって配置されるので、穿刺針7の向きと、ガイド部25が穿刺針7を押圧する押圧力の向きとが、ともに送出方向Sの上流側に向く。そのため、穿刺針7は、ガイド部25に沿って、巻回された採血用回路基板1の径方向内側に向かって退避することにより、ガイド部25からの押圧力を受け流すことができる。その結果、採血用回路基板1や穿刺針7を損傷することなく、スムーズに、採血用回路基板1を送出部23から巻取部24に搬送することができる。
【0071】
なお、上記した説明では、本発明の体液採取用回路基板およびこの体液採取用回路基板を備えるバイオセンサの一例として、採血用回路基板1およびこの採血用回路基板1を備える血糖値測定装置21を例示して説明している。つまり、体液採取用回路基板の穿刺針の穿刺により採取される体液を、血液として説明している。
しかし、体液としては、生体内にある液体であれば、特に限定されず、例えば、細胞外液や細胞内液が挙げられる。細胞外液としては、上記した血液が除かれ、例えば、血漿、組織間液、リンパ液、あるいは、密な結合組織、骨および軟骨中の水分、細胞透過液などが挙げられる。そして、上記した体液の特定成分を、体液採取用回路基板およびこの体液採取用回路基板を備えるバイオセンサにより、測定することができる。
【0072】
また、上記した説明では、採血用回路基板1を巻回することにより、穿刺針7を、周方向から径方向外側に傾斜するように突出させたが、金属基板12の厚みが薄いなどの理由により、穿刺針7が十分に突出しない場合には、図10に示すように、巻回した採血用回路基板1の径方向内側に押出ガイド37を設け、穿刺針7を、押出ガイド37により、径方向内側から径方向外側に押し出して、突出させることもできる。
【0073】
また、送出ホイール30を前側に、巻取ホイール31を後側に配置し、前側から後側に向かう送出方向Sに沿って採血用回路基板1を移動させることもできる。
なお、図10では、送出ホイール30を前側に、巻取ホイール31を後側に配置することに伴い、図8の巻取部24に対応する部分を送出部23とし、図8の送出部23に対応する部分を巻取部24としている。なお、図10では、採血用回路基板1を1層だけ巻回した形態を示している。また、図8と同様の部材には、図8と同一の符号を付し、その説明を省略している。
【実施例】
【0074】
実施例1
(採血用回路基板の製造)
まず、SUS304からなり、金属基板が区画される、厚み50μmの長尺シート状の金属箔を用意した(図4(a)参照)。
次いで、金属基板の上に、感光性ポリイミド樹脂前駆体(感光性ポリアミック酸樹脂)のワニスを塗布し、加熱乾燥して皮膜を形成後、露光・現像することにより、皮膜をパターンに形成した。その後、窒素雰囲気下、400℃に加熱して、厚み10μmのベース絶縁層を、上記したパターンで形成した(図4(b)参照)。
【0075】
次いで、ベース絶縁層の上に、クロム薄膜および銅薄膜からなる金属薄膜をスパッタリングにより順次形成した。その後、金属薄膜の表面に、ドライフィルムレジストを積層し、露光・現像することにより、めっきレジストをパターンとして形成した。そして、めっきレジストから露出する金属薄膜の表面に、金属薄膜を種膜として、電解銅めっきにより、銅からなるめっき層を形成し、電極、端子および配線を備える導体パターンを形成した(図4(c)参照)。その後、めっきレジストおよびそのめっきレジストが形成されていた部分の金属薄膜をエッチングにより除去した。
【0076】
導体パターンの厚みは12μm、2つの電極(9a)の直径は0.3mmであり、1つの電極(9b)の長辺の長さは1.0mm、短辺の長さは0.6mmであった。また、配線の穿刺方向端部の幅方向長さは100μmであった。また、隣接する各配線の幅方向間隔は、穿刺方向上流側では、3mmであり、穿刺方向下流側では、0.3mmであった。
その後、ベース絶縁層の上に、導体パターンを被覆するように、感光性ポリイミド樹脂前駆体(感光性ポリアミック酸樹脂)のワニスを塗布し、加熱乾燥して皮膜を形成後、露光・現像することにより、皮膜をパターンに形成した。その後、窒素雰囲気下、400℃に加熱して、厚み5μmのカバー絶縁層を形成した(図4(d)参照)。なお、カバー絶縁層は、電極側開口部および端子側開口部が形成されることにより、電極および端子が露出し、かつ、配線が被覆されるように形成した。
【0077】
その後、電極および端子の上に、電解ニッケルめっき層(厚み0.5μm)、電解金めっき層(厚み2.5μm)を順次形成した。
次いで、金属箔の表面(上面および/または下面)にドライフィルムレジストを積層し、露光・現像することにより、エッチングレジストをパターンとして形成した。そして、エッチングレジストから露出する金属箔を、塩化第二鉄をエッチング液とするウエットエッチングによりエッチングして、外形加工し、帯状の採血用回路基板を形成した。また、同時に、金属基板を開口して、開口部を形成することにより、金属基板から穿刺針を形成した(図5(e)参照)。なお、この金属箔の外形加工によって、枠部およびジョイント部を同時に形成した。
【0078】
なお、穿刺針の先端から1つの電極(9b)(先端から最も近い電極)までの長さが1.8mm、穿刺針の先端の角度が20°、ストッパ部の穿刺方向下流側端縁と穿刺針の先端との離間長さは1.4mmであった。
これによって、各測定ユニットの穿刺針の穿刺方向がすべて同一方向である採血用回路基板を得た。この採血用回路基板の幅方向長さは5mmであり、穿刺(長手)方向長さは、20cmであった。
【0079】
その後、得られた採血用回路基板において、各測定ユニットにおける電極に、グルコースオキシダーゼおよびフェリシアン化カリウム溶液を含む薬剤を、インクジェットにより塗布した(図5(f)参照)。
(血糖値測定装置の製造)
得られた採血用回路基板を、ジョイント部を切断することにより、枠部から分離し、その採血用回路基板を送出ホイールに、電極および端子が径方向外側に向くように巻回した(図6(a)参照)。
【0080】
巻回された採血用回路基板の径方向長さは、4cmであった。また、巻回された採血用回路基板の穿刺針の先端は、径方向外側に向かって、5mm突出した。
採血用回路基板が巻回された送出ホイールを、巻取ホイール、駆動軸、ガイド部および表示部が設けられているケーシング内に実装した(図7および図8参照)。
採血用回路基板を実装するには、まず、採血用回路基板が巻回されている送出ホイールを送出部に配置し、次いで、送出ホイールに巻回されている採血用回路基板を、ガイド部に沿って引き出し、巻取ホイールに掛け渡し、採血用回路基板の穿刺方向最上流側端部を、巻取ホイールに保持させた。
【0081】
ケーシングの上下方向長さは、1.5cm、その左右方向長さは、5cm、その前後方向長さは、10cmであった。
また、巻取ホイールの前端縁は、ケーシングの前端面よりも5mm後方に配置された。
また、ガイド部は、プラスチックからなり、その上下方向長さは、10mmであり、その厚みは、0.5mmであった。また、ガイド部は、巻回された採血用回路基板と、径方向において、0.5mmの間隔を隔てて形成された。
【0082】
(血糖値測定装置による血糖値測定)
まず、上記した血糖値測定装置を用意した(図9(a)参照)。
次いで、駆動軸を巻取方向に回転させて、穿刺針を前側開口部から露出させ、患者自身が指に、この穿刺針を穿刺した(図9(b)参照)。
次いで、穿刺箇所に電極を近づけて、電極に血液を接触させた(図9(c)参照)。
【0083】
すると、血液により、グルコースが酸化、フェリシアン化イオンが反応した。同時に、接点から、端子を介して、電極に電圧を印加した。そして、接点により、電圧印加時の各電極間の抵抗値の変化を検知し、それに基づいて、CPUが、グルコース量を血糖値として算出した。そして、CPUにより測定された血糖値を、表示部において、表示させた。
その後、この方法では、駆動軸を、さらに巻取方向に回転させることにより、巻取ホイールを回転させて、使用後の測定ユニットに対して送出方向の上流側に隣接配置される未使用の測定ユニットを、前側開口部から露出させた。その後、上記した各工程を実施して、血糖値を複数回測定した。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の体液採取用回路基板の一実施形態である採血用回路基板の平面図を示す。
【図2】図1に示す採血用回路基板の測定ユニットの拡大平面図を示す。
【図3】図2のA−A線に沿う断面図を示す。
【図4】本発明の採血用回路基板の製造方法の一実施形態を説明するための製造工程図であって、 (a)は、金属基板を用意する工程を示し、 (b)は、ベース絶縁層を形成する工程を示し、 (c)は、導体パターンを形成する工程を示し、 (d)は、カバー絶縁層を形成する工程を示す。
【図5】図4に続く採血用回路基板の製造方法を説明するための製造工程図であって、 (e)は、外形加工する工程を示し、 (f)は、薬剤を塗布する工程を示す。
【図6】本発明の体液採取用回路基板の使用方法の一実施形態を示す図であって、 (a)は、斜視図を示し、 (b)は、軸線方向から見た概略側面図を示す。
【図7】図6に示す採血用回路基板が実装された、本発明のバイオセンサの一実施形態である血糖値測定装置の概略斜視図を示す。
【図8】図7に示す血糖値測定装置の内部を示す概略断面図を。
【図9】図7に示す血糖値測定装置の使用方法を説明するための側断面図を示す。
【図10】本発明のバイオセンサの他の実施形態の概略断面図を示す。
【符号の説明】
【0085】
1 採血用回路基板
2 測定ユニット
7 穿刺針
8 導体パターン
9 電極
12 金属基板
13 ベース絶縁層
21 血糖値測定装置
22 ケーシング
23 送出部
24 巻取部
25 ガイド部
28 前側開口部
S 送出方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の支持基板と、
前記支持基板の長手方向に沿って、前記支持基板に区画される複数の測定ユニットとを備え、
前記測定ユニットは、
前記支持基板を開口することにより、前記支持基板の長手方向に沿って、前記支持基板から形成される穿刺針と、
前記支持基板の上に形成されるベース絶縁層と、
前記ベース絶縁層の上に形成され、前記穿刺針の穿刺により採取される体液と接触させるための電極を備える導体層とを備えていることを特徴とする、体液採取用回路基板。
【請求項2】
巻回したときに、前記穿刺針が、周方向から径方向外側に傾斜するように突出することを特徴とする、請求項1に記載の体液採取用回路基板。
【請求項3】
請求項1または2に記載の体液採取用回路基板と、
前記穿刺針を露出させるための露出口が形成される筐体と、
前記体液採取用回路基板が巻回されており、前記体液採取用回路基板を送り出す送出部と、
前記送出部から送り出される前記体液採取用回路基板を巻き取る巻取部と、
前記送出部から前記巻取部にわたって設けられ、前記体液採取用回路基板の前記穿刺針が径方向外側に突出しないように抑制するガイド部と
を備えていることを特徴とする、バイオセンサ。
【請求項4】
前記穿刺針は、前記体液採取用回路基板の送出方向の上流側に向かって、配置されていることを特徴とする、請求項3に記載のバイオセンサ。
【請求項5】
複数の測定ユニットが長手方向において互いに間隔を隔てて区画される帯状の支持基板を用意する工程、
各前記測定ユニットの上に、ベース絶縁層を形成する工程、
各前記ベース絶縁層の上に、体液と接触させるための電極を備える導体層を形成する工程、および、
前記支持基板を開口することにより、前記支持基板の長手方向に沿って、前記支持基板から穿刺針を形成する工程を備えていることを特徴とする、体液採取用回路基板の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の体液採取用回路基板の製造方法により製造される体液採取用回路基板を巻回する工程を備えていることを特徴とする、体液採取用回路基板の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−273773(P2009−273773A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−129827(P2008−129827)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】