説明

体液試料の生成およびその分析のための機器およびシステム

皮膚穿刺先端部(7)を有する穿刺要素(12)で皮膚を穿刺することによって分析のための体液試料を生成する機器である。該機器(11)は、筐体(13)と、穿刺動作においてこれに接続された穿刺要素(12)を駆動する穿刺駆動部(14)とを有する。圧力リング(1)は、皮膚接触開口部(4)を包囲し、体液の搾り出しを促進する開口部(4)内に皮膚(3)が膨隆するように、皮膚に対して押圧するよう適合される。皮膚接触開口部(4)は、少なくとも3mmで最大8mmの径を有する円と一致した開口領域を有し、機器は、穿刺動作誘発時の圧力リング(1)と皮膚(3)とのあいだの押圧力を少なくとも3Nで最大8Nに制御するための押圧力制御装置(37)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体液試料の分析、すなわち体液中の検体濃度の測定を可能にするための体液試料の採取に関する。特に、本発明は、ここから試料が引き出される小創傷を生成するのに適した皮膚穿刺先端部を有する使い捨て式の穿刺要素を使用して対象(人または動物)の皮膚を穿刺することにより少量の体液試料を生成するための機器およびシステムに関する。使用される皮膚部位および穿刺深さに応じて、体液は血液または間質液あるいはその混合物である。
【背景技術】
【0002】
皮膚穿刺による分析は、さまざまな医学的診断および治療の分野において重要である。特に重要なのは、糖尿病管理の分野である。糖尿病によりもたらされる深刻な長期の損害は、患者が、一定の血糖値を維持するための実際の必要量に近似した必要なインスリン注射を適応するよう一日数回患者自身の血糖値を制御する場合に回避可能であると判断されている。これは、患者自身または医学訓練をしていない他の人による、いわゆる「ホームモニタリング」を必要とする。
【0003】
ホームモニタリングを含む、同様の要求を有する医学的診断および治療の他の重要な分野は、たとえば血中コレステロールの定期的制御および血液凝固パラメータの制御についてである。本発明は特にホームモニタリングでの適用に好ましいが、これに限定されない。また同様の要求は、たとえばいわゆる「ニアペイシェントテスト」にもある。
【0004】
皮膚の穿刺は、一般的に、システムと相互に適合した構成要素として再利用可能な携帯型の機器と穿刺要素とを備えた穿刺システムによって実施される。穿刺に必要な動作(穿刺動作)は、機器のハウジング内に設けられてこれに接続された穿刺要素を駆動するように適合された穿刺駆動部によって駆動される。ランセットは、交換可能なように駆動部に接続可能であり、通常は使い捨て式のアイテムである。
【0005】
穿刺動作の誘発後、ランセットは最大移動点に到達するまで穿刺方向に駆動され、その後、さらに反対方向に駆動される。多くの適当なランセット駆動機構が記載されている。ほとんどの場合において、駆動力は伸張したばねによって供され、ランセット駆動部は、ばねの力をランセットの必要な動作に変換するための適当な機械的手段をさらに含む。
【0006】
穿刺システムの開発において重要な検討事項は、突刺作用によりもたらされる痛みである。この痛みと使用の簡便さとが、患者の順守性、すなわち患者自身の健康を維持するために必要な規則的分析を実施する意欲を決める決定的要因である。最小の痛みをともなう必要な量の液体試料の確実な生成は、穿刺要素の先端部の皮膚への最適な穿刺深さの再現性に左右される(米国特許第5318584号明細書を参照)。
【0007】
以前のランセットシステムにおいて、分析は、通常、使用者によって実施される複数の工程を必要とした。このような以前のシステムでの穿刺後、血液は穿刺された皮膚の創傷部位から迅速に生じなかった。したがって、必要な量の試料液体を絞り出すために、つまみ、絞りおよび揉みなどの手動の「搾乳(milking)」工程が必要であった。最終的に、試料液体は、(穿刺システムとは別でこれとは区別される)分析システムの分析要素に接触させられ、分析が実施された。
【0008】
穿刺部位での試料液体の生成を改善し、手動「搾乳」を回避するために、いくつかの提案がなされ、これらのすべては皮膚接触開口部を包囲する(通常はリング状の)皮膚接触面を有する穿刺機器の遠位端における接触領域の設計に関する。このような穿刺システムは、国際公開第99/26539号パンフレット、国際公開第01/89383号パンフレット、欧州公開第1245187号明細書、欧州公開第1586269号明細書、欧州公開第1586270号明細書に記載されている。
【0009】
これらのアプローチはいくつかの様式において異なるが、これらに共通な特徴は、皮膚接触開口部が比較的大きな径を有しており、これは遠位端にて穿刺機器が(すなわち皮膚接触要素が)皮膚に対して押圧されるとある程度開口部内に貫入し、これによって皮膚が皮膚接触開口部に膨隆して標的部位膨隆を形成する。この膨隆作用(以下「標的部位膨隆」と示す)は、通常、半径方向内向きに作用する機械的圧迫や、機器部品の軸方向の動作をともなうポンプ作用など、試料液体の生成を改善するためのさらなる手段と組み合わされる。
【0010】
理想的には、これらの手段は、高い成功率(好ましくは90%以上)で、手動「搾乳」をせずに充分な量の試料液体の搾り出しを可能にする。これはまた、統合化された穿刺・分析システムの要件であり、これは一つの機器において、穿刺型の試料生成手段と分析のための手段との両方を備える。このような統合化されたシステムは複数の変形型として提案され、次の2つのタイプに定めることができる。
【0011】
A)「2ユニットシステム」であって、単一の機器の筐体において、穿刺用と分析用との2つの別個のユニットを有する。一般的に、ユニットは共通の皮膚接触開口部に順次移動される(たとえば、欧州公開第1699028号明細書および欧州公開第1736100号明細書を参照)。
【0012】
B)「1ユニットシステム」であって、両方の機能(穿刺および分析)を実施するための単一の組み合わされた穿刺・分析ユニットで動作する。このようなシステムのほとんどは、統合化された穿刺・分析要素によって動作する。このような組み合わされた穿刺・分析要素の2つの構成要素は、通常、別々に製造されるが、製造業者によって組み立てられるか、あるいは少なくとも使用前、すなわち穿刺動作が誘発される前に組み立てられる。機器において、このような要素は一体化したアイテムとして処理される。別の1ユニットシステムにおいて、両方の機能(穿刺および分析)は同一のユニットによって実施されるが、穿刺要素および分析要素が設けられ、分析手順の少なくとも一部のあいだに処理される。1ユニットシステムの例は、次の文献に記載されている。国際公開第01/72220号パンフレット、国際公開第03/009759号パンフレット、欧州公開第1342448号明細書、欧州公開第EP1360933号明細書、欧州公開第1362551号明細書。
【0013】
記載のいくつかのシステム、特に統合化された穿刺・分析システムは以前の既知の装置と比較して改善された結果をもたらすが、相当な短所がある。簡便な使用、最小の痛み、および容量、重量および製造コストに関する最小限の要求を含む、いくつかの部分的に相反する要求に対する改善の必要性がある。
【発明の概要】
【0014】
この目的に鑑みて、本発明の第1の特徴は、皮膚の穿刺により体液試料を生成するための機器およびシステムを提案し、該機器は、筐体と、前記筐体内にあって穿刺要素に接続されるように適合され、穿刺動作においてこれに接続された穿刺要素を駆動するように適合され、該穿刺要素が穿刺動作の誘発後に最大移動点に到達するまで穿刺方向に移動し、最大移動点の到達後に反対方向に移動する穿刺駆動部と、皮膚接触開口部を包囲し、開口部内に皮膚が膨隆するように皮膚に対して押圧されるよう適合され、これによって穿刺要素の穿刺先端部が皮膚を穿刺した後に体液の搾り出しが促進される圧力リングとを備え、前記皮膚接触開口部が、少なくとも3mmで最大8mmの径を有する円と一致した開口領域を有し、機器は、穿刺動作誘発時の圧力リングと皮膚とのあいだに作用する力(「押圧力」)を少なくとも3Nで最大8Nに制御するための押圧力制御装置を含む。
【0015】
本発明のこの特徴は、穿刺部位にて穿刺要素が皮膚に対して(またはその逆)押圧される際の標的部位膨隆に関する。この膨隆は充分な量の液体試料の絞り出しに関しては好ましいが、穿刺要素の先端部が皮膚に穿刺する穿刺深さの再現性に関しては問題を生じる。穿刺駆動部の長手の位置(すなわち穿刺動作方向の位置、以下「z位置」と称す)の所定の調節と、その結果のランセットの最大移動点の所定のz位置とによって、穿刺深さは、穿刺移動のあいだの皮膚表面の正確なz位置に決定される。膨隆のため、この皮膚位置は実質的に不明確である。これは、異なる使用者の相違する皮膚の弾性のみならず、温度、事前の皮膚処理(たとえば石鹸での洗浄)および特定の穿刺部位の選択などの影響要因によってもたらされる特定の使用者の皮膚の(弾性および他の)特性の変化も含む複数の要因に依存する。皮膚位置についての不確実性と結果として生じる穿刺深さの不確実性とを解消するための先行技術におけるアプローチは次を含む。
【0016】
−穿刺機器に統合化された皮膚位置検出装置によって皮膚の正確なz位置を検出し、たとえば電気(容量)検出手段または光学検出手段によって作動する(国際公開第03/099935号パンフレット)。
【0017】
−穿刺要素先端部の皮膚への穿刺のあいだに正確なz位置の参照を供するための、(機器の皮膚接触開口部を包囲する皮膚接触面に加えて)皮膚に接触する参照皮膚接触面を有する穿刺深さ参照要素を機器に設ける。このような参照要素は穿刺要素とは別に皮膚の方向に移動可能であり(欧州公開第1699028号明細書)、またはともに移動可能である(国際公開第2006/092309号パンフレット)。
【0018】
これらのアプローチは再現可能な穿刺深さを達成するのに役立つが、機器の設計および製造に相当な支出をともない、システムの簡便性を低くより高価にする。したがって、標的部位の膨隆のためのいくつかの穿刺システムは、穿刺深さの不確実性を端的に無視するものである。しかしながら、このアプローチは、穿刺部位の膨隆に不利な位置であっても充分な量の液体試料が生成されるよう高数値の穿刺深さの設定を必要とするため、必要以上のより大きな痛みをもたらす。
【0019】
本発明の内容において、皮膚接触開口部の寸法と、穿刺動作を誘発する際の圧力リングと皮膚とを互いに対して押圧する力に関して特定の状態が保証される場合に、穿刺部位における皮膚膨隆のz位置の優れた再現性と、よって穿刺深さの優れた再現性とが達成可能であることが見出された。このことは、簡便で安価な設計の穿刺システムと組み合わせて、標的部位の膨隆および(「搾乳」をともなわない)自動試料生成を使用することを可能にする。このシステムは、z位置検出手段と、圧力リング内に膨隆して皮膚に接触するように適合された穿刺深さ参照要素とが無くても作動する。
【0020】
通常、皮膚接触開口部は円形であり、この場合において少なくとも3mm、好ましくは少なくとも4mm、より好ましくは少なくとも5mm、最も好ましくは少なくとも5.5mmの内(自由)径を有すべきである。好ましい範囲の径の上限は8mm、好ましくは7mm、より好ましくは6.5mmおよび最も好ましくは6mmである。非円形の皮膚接触開口部の場合、開口部の領域は前述の径値を有する円の領域に相当する(同一である)べきである。しかしながら、いずれの場合であっても、非円形の皮膚接触開口部の最小の内(自由)幅は、少なくとも3mm、好ましくは少なくとも4mmである。
【0021】
圧力リングと皮膚とのあいだの穿刺動作を誘発する際に作用する押圧力は、少なくとも3N、好ましくは4N、より好ましくは5Nであり、また最大で8N、好ましくは7N、より好ましくは6Nである。これらの制限内にある規定の押圧力は、適当な押圧力制御装置によって保証される。このような装置は、特にばね装置を備えた機械的なものでよく、ばね装置はそのばね力が圧力リングと筐体とのあいだに作用するように配置される。ばね装置は、好ましくは金属ばねとして具現化される。しかしながら、空気ばねまたは弾性材料の弾性要素などの他のばね様装置も既知であり、使用可能である。以下において、「ばね」という用語は、このようなすべてのばね装置の例として使用される。好ましくは、以下でより詳細に説明するように予備伸張される。
【0022】
電気的手段により作動する押圧力制御装置は、コイルおよび磁気コア、特にボイスコイル駆動部を含む電磁駆動部を備え得る。圧力の制御は完全自動化でよく、あるいは使用者の作業を必要としてもよい。後者の場合には、力の測定のために電気的手段を使用することができ、これによって圧力リングが皮膚に対して押圧され、この力は、使用者が所望の値に押圧力を適合できるように適当な視覚的、音響的または触覚的手段によって使用者に表示可能である。
【0023】
好ましくは本発明の第1の特徴と組み合わされるが、独立しての使用も可能である本発明の第2の特徴によると、本発明は、皮膚穿刺先端部を有する穿刺要素を使用して皮膚の穿刺により体液試料を生成し、使い捨て式の分析要素を使用して分析するためのシステムおよび機器を提供し、該機器は、筐体と、前記筐体内にあって穿刺要素に接続されるように適合され、接続された穿刺要素を穿刺動作において駆動するように適合されて、該穿刺要素が穿刺動作の誘発後に最大移動点に到達するまで穿刺方向に移動し、最大移動点の到達後に反対方向に移動する穿刺駆動部と、皮膚接触開口部を包囲し、開口部内に皮膚が膨隆するように、皮膚に対して押圧されるよう適合され、これによって穿刺要素の穿刺先端部が皮膚を穿刺した後に体液の搾り出しが促進される圧力リングと、前記筐体内に分析要素を保持するための保持装置であって、皮膚の穿刺により生成された体液試料が分析のために試料採取装置からここに輸送される保持装置とを備え、穿刺および分析のために充分な量の液体試料を試料採取するために必要な最短相互作用時間が最大で3秒であり、好ましくは、前記最短相互作用時間の継続時間が2秒以下であり、好ましくは1秒以下である。
【0024】
本発明のこの特徴は、特に、前述で特定したAおよびBの両タイプの統合化された穿刺・分析システムに関する。このようなシステムにおいて、使用者は、皮膚と機器の圧力リングとのあいだに押圧力を確立することによりシステムと相互に作用する。これは、指または他の体部に対して携帯型機器を押圧することによって簡便に実施可能である。代替的に、指または他の体部が、たとえばテーブル上の機器に対して押圧される。
【0025】
先行技術によると、これに関連して時間(timing)は、通常、「試験時間」、すなわち分析に必要な合計時間(穿刺から検体濃度の表示まで)についてのみ関連する。発明者は、先の理解から逸脱して、最短相互作用時間(「MITP」)の継続時間が、前述の部分的に相反する要件を達成するためにはきわめて重要であることを見出した。この時間は、穿刺およびシステムの試料採取装置での分析のために充分な量の試料を採取するために必要な(前述に規定された)使用者と機器との相互作用の最短継続期間として規定される。MITPのあいだに実施される作用は、穿刺、組織からの(好ましくは、穿刺要素の毛管への直接的な)液体試料の絞り出しおよび充分な量の試料採取を含む。
【0026】
MITPは、使用者からは独立したシステムに関連した量、すなわち機器の設計によってのみ決定され、システムの別の構成要素によっても決定され得る。これは、各々の場合において使用者の習慣を含む多くの側面に左右される実際の相互作用時間と混同してはならない。実際の相互作用時間は、通常、使用者間で異なり、また特定の使用者であっても分析毎に異なる。本発明は、すべての使用者が機器と少なくとも相互作用する最短の時間が、示されたきわめて小さいしきい値より低くなるようにシステムを設計することを教示する。
【0027】
MITPの開始時点は、システムの「穿刺の準備が整った」時点、すなわち、穿刺駆動部がこれに接続された穿刺要素の穿刺動作を駆動し、皮膚の所望の穿刺部位が機器の皮膚接触開口部に適切に配置された時点である。システムの設計に応じて、「穿刺の準備が整った」状態の確立と穿刺動作の誘発とのあいだに短い時間が必要になることがある。機器は、たとえば皮膚の位置を検出するためにこのような短い(準備)遅延時間を必要とし得る。しかしながら、機器の要求によるこのような準備時間が必要でないこと、すなわちシステムの状態が「穿刺の準備が整った」際には誘発がすぐに実施可能であるように設計されることが好ましい。この場合において、MITPの開始時点は穿刺動作の誘発と同時であり得る。
【0028】
しかしながら、きわめて短く明確な準備遅延時間が、特に皮膚と圧力リングとのあいだの圧力を確立した後に生じる皮膚の粘弾的変形を考慮した非機器的な理由により設けられ得る。
【0029】
MITPの終了は、充分な量の体液が試料採取されたこと、つまり分析機器の試料採取装置に得られたことによってマークされる。ここで使用されている「試料採取装置」は、皮膚の穿刺の結果生じた液体試料が分析のために使用可能である機器内部のシステムの任意の部分である。これは、たとえばチャンバまたは毛管でよく、また空でまたは吸収材料で充填され得る。
【0030】
詳細は、特定のシステムの種類および設計的特徴により決定される。
【0031】
−「2ユニットシステム」である場合、試料採取装置は分析ユニットに属する。これは分析要素または専用の試料採取要素の一部でよく、分析ユニットが皮膚接触開口部に移動した後に試料を採取する。
【0032】
−「1ユニットシステム」である場合、試料採取装置は、穿刺要素の一部であるか、統合化された穿刺・分析要素の一部であるか、または専用の試料採取要素であり得る。
【0033】
−試料採取装置が分析要素の一部または統合化された穿刺・分析要素の一部である場合、試料採取装置は、特に液体試料と反応する試薬を含む反応領域の一部にあってよく、これによって分析に特有なある種の測定可能な物理的変化がもたらされる。
【0034】
−好ましくは、試料採取装置は分析要素の反応領域から分離されており、MITPより長い中期の保存期間にわたり液体試料を保管するのに適した容器を含む。この実施の形態の利点の一つは、分析の必要時間と試料採取の必要時間とを分離することが可能であることである。MITPは、試料採取装置の容器が分析に充分な量の液体試料を含み次第終了する。たとえば反応領域の充填を含むさらなる工程が、使用者の継続的な相互作用なしに独立して実施可能である。
【0035】
−最後の好ましい実施の形態において、試料採取装置の容器から分析要素の反応領域への液体試料の移送は、自発的または制御されたタイミングにより実施可能である。前者の場合、容器と反応領域とのあいだに永久的な流体連通が供される。後者の場合、試料採取装置の容器から分析要素への流体連通は「切り替え可能」であり、すなわち最初、好ましくはMITPのあいだの時間は流体連通がないが、適当な時期において制御下で行われる。このような切り替えに適した手段は、たとえば国際公開第2005/084546号パンフレットから既知である。
【0036】
好ましくは、本発明の第2の特徴による機器は、本発明の第1の特徴に関して説明したものと同様に設計可能な押圧力制御装置を備える。両方の特徴が組み合わされる場合、好ましくは、機器は1つの押圧力制御装置のみを有する。しかしながら、第1の特徴とは異なる場合は、MITP全体のあいだの押圧力の値が重要である。押圧力制御装置によって、好ましくは、MITPのあいだ、これは少なくとも3N、好ましくは少なくとも4N、より好ましくは少なくとも5Nに保持されるべきである。別の好ましい実施の形態において、最大値は、同一期間において、最大10N、好ましくは最大8N、より好ましくは最大7Nに保持されるべきである。
【0037】
押圧力のこれらの制限値は、皮膚からの試料の引き込みの要求に関して好ましい。しかしながら、これは、押圧力がMITPのあいだにこの範囲において変動可能であるべきことを意味するものではない。むしろ、押圧力の最大変動範囲は15%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下に制限すべきであることが見出されている。絶対値で示すと、MITPのあいだの圧力リングと皮膚とのあいだの押圧力の最大変動範囲は、+/−0.5N以下、好ましくは+/−0.3N以下、より好ましくは+/−0.2N以下であるべきである。
【0038】
上述のとおり、MITPはシステムの設計によってのみ決定される使用者から独立した数量である。しかしながら、好ましくは、機器はMITP制御装置を備える。この用語は、使用者と機器とのあいだに必要な相互作用(すなわち、主として皮膚と圧力リングとのあいだに必要な押圧力)が、少なくともMITPのあいだにおいて使用者により保持されることを確保する任意の装置を示すものである。換言すれば、MITP制御装置は、使用者と装置とのあいだの実際の相互作用がMITPと重複(または少なくとも一致)することの確保を支援する。
【0039】
MITP制御装置は、たとえば穿刺動作の手動誘発など使用者の操作が必要でないという意味では、完全に自動的に作動する必要はない。むしろ、装置は、特にMITPの開始および終了を直接的または間接的に使用者に合図することによって、使用者に支援を供し得る。
【0040】
MITP制御装置は、任意の適当な手段(以下でより詳細に説明する)を使用して、圧力リングと皮膚とのあいだに作用する押圧力を検出することによって、MITPの開始時点を検出するための手段を備える。圧力が所定の最小値または範囲に一致すると、適当な視覚信号、音響信号または触覚信号によってこの状態を使用者に示すことができる。代替的に、「穿刺の準備が整った」状態が検出されると、穿刺動作は自動的に誘発され得る。この場合において、「穿刺の準備が整った状態」と誘発とのあいだに遅延はなくてよく、すなわちMITPは自動的に誘発される。あるいは、たとえば、皮膚の粘弾的変形に必要な時間を考慮して機器的に制御された遅延時間を設け得る。このような場合において、「穿刺の準備が整った状態」と誘発とのあいだの準備遅延時間は、好ましくは最大1秒、より好ましくは最大0.7秒、最も好ましくは最大0.5秒である。好ましい下限値は0.2秒であり、少なくとも0.3秒がより好ましく、少なくとも0.4秒が最も好ましい。
【0041】
MITP時間の終了は、通常、適当な視覚信号、音響信号または触覚信号によって使用者に示される。
【0042】
本発明においては、最も一般的な意味において、専用のMITP制御装置は必要でないことに留意すべきである。特定の状況に応じて、MITPの開始および終了の間接的な表示が使用者に供されると充分なこともある。たとえば、「穿刺の準備が整った状態」は、使用者が指でばね支持圧力リング(以下でより詳細に説明する)を押圧すると使用者によって「感じる」ことができ、MITP継続時間はきわめて短いためMITPの終了に関しては使用者の「感覚」に依存することで充分であり得る。
【0043】
機器は、充分な量の液体試料を示すものか、あるいは充分な量の液体試料が採取された場合にのみ分析を可能にする何らかの充填制御部を(MITP制御装置の一部として)有し得る。しかしながら、多くの場合において、このような充填制御部は必要でない。むしろ、MITPの終了は、(システムの構成要素の設計によって決定される)固定のMITP値を使用して機器によって計算される。
【0044】
本発明の内容において、上述の穿刺機器の遠位端にある圧力リングと皮膚とのあいだの押圧力が、穿刺時のみならずその後の短い相互作用時間においても保持される場合に、実質的な利点が統合化された穿刺・分析装置において達成されることが見出された。
【0045】
−AおよびBの両タイプの統合化された穿刺・分析システムにおいて、MITPにおいてのこの押圧力の保持は、充分に多量の液体試料を生成することを支援する。
【0046】
−タイプA(2ユニットシステム)の場合、上述の押圧力をMITPにて保持することは、皮膚に対する機器(すなわちその皮膚接触開口部)の位置が、分析装置が皮膚接触開口部に移動されるまで固定されることを確保するためにより重要である。
【0047】
タイプB(1ユニットシステム)のシステムにおいて、上述の押圧力をMITPにて保持することは、ランセット先端部の正確なz位置を可能にし、短時間での充分な液体試料の吸引を改善するために重要である。
【0048】
さらに、本発明の内容において、統合化された穿刺・分析システムの多くの使用者は、充分な時間のあいだ充分な押圧力を保持することに問題があり、機器使用の推奨規定の準拠性がここに説明される特徴を組み入れたシステムにおいてはるかに優れている。
【0049】
最小の押圧力および(好ましくは)最大限の押圧力、および(最も好ましくは)最大変動範囲の適切な適合は、有利には本発明の第1の特徴に関連して説明した皮膚接触開口部の寸法と組み合わせにおいて、使用者による設定が可能な穿刺深さ調節手段を有しない機器を設計可能であり、また好ましくは設計されることが見出された。驚くべきことに、穿刺駆動部の単一の出荷時設定されたz位置(最大移動点)および圧力リングの単一の出荷時設定されたz位置によって、互いに関連して、きわめて少ない痛みで液体試料の信頼性のある生成が可能である。同時に、穿刺深さ調節手段の省略は、簡単、小型で安価な機器設計を可能にする。
【0050】
使用者による設定可能な穿刺深さ調節装置が設けられた場合であっても、本発明は、該装置の簡単で安価な設計を使用することができる。たとえば、皮膚部位のわずかな残存変化に適合させるために、特定の使用者の要求にシステムを単一的に適合することを可能にする交換可能な距離要素または圧力リングを設けることで充分であり得る。
【0051】
通常、本発明の機器およびシステムは、皮膚の粘弾性を最適化することを考慮している。これにより、充分な液体試料の供給が保証されるのみならず、過多な液体試料による「溢れ(flooding)」も回避される。本発明は、おおよそ300nl未満、好ましくは200nl未満のきわめて少量の試料であっても信頼性のある分析を可能にする。
【0052】
以下において、図示された好ましい実施の形態を参照して本発明をより詳細に説明する。本発明の実施の形態を設計するために、図示された技術的特徴および要素を個別にまたは組み合わせて使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】標的部位膨隆の原理に関する概略図である。
【図2】分析機器の斜視図である。
【図3】図2に示された機器の縦断面図である。
【図4】図3に示された機器にて使用される穿刺要素の斜視図である。
【図5】図3に示された機器の機能的特徴に関する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図1は圧力リング1を示し、これに対して指先2が力Fで押圧される。この押圧力によって、皮膚3は圧力リング1によって画定される皮膚接触開口部4内に膨隆し、標的部位膨隆6を形成する。
【0055】
このような標的部位膨隆の程度、つまり圧力リング1の面と標的部位膨隆6の先端とのあいだの距離dは、皮膚接触開口部4の寸法、力Fおよび皮膚の粘弾性を含む多くの要因によって複雑な様態に影響される。これらはまた次の複数の要因に左右される。
【0056】
−年齢、性別、特定個人が行う手作業の程度によって大きく異なる特定個人の皮膚表面の弾性、
−特に特定個人の健康状態および身体的活動に応じた指または他の体部の内圧、
−特に皮膚の粘弾性に影響する温度および湿度を含む周囲条件、
−石鹸による洗浄、殺菌など穿刺前の皮膚の処置など。
【0057】
図1は、穿刺動作のあいだに穿刺先端部7がその動作経路上にて到達する最大移動点Pを記号で示す。ほとんどの穿刺機器において、圧力リング1の面のz位置および最大移動点P(図1の距離s)は、互いに対して、穿刺深さ設定を可能にするために調節可能である。図1は、所与の値での調節において、実際の穿刺深さxは距離d、すなわち標的部位膨隆の程度によって直接的に決定されることを明示する。
【0058】
前述のとおり、先行技術においては、皮膚の実際のz位置(つまり、標的部位膨隆の先端)についてのこの不確定性は、無視されていたか、あるいは実際の皮膚位置を測定または参照して考慮していた。本発明の内容において、皮膚接触開口部の領域と押圧力との維持に関する前述の特定条件が維持される場合、穿刺中の穿刺深さのきわめて優れた再現性が達成可能であることが見出された。
【0059】
図2〜5は適当な穿刺システム10を示す。これは、再利用可能な携帯型機器11および穿刺要素7を有する使い捨て式の穿刺要素12を含む。機器の筐体13は、穿刺駆動部14と、図3にブロックによってのみ記号的に示された測定・評価電子機器15とを含む。表示器16は、使用者に(システムに関する状態情報、操作に関するアドバイス、分析結果などを含む)情報の視覚的表示を可能にするために設けられる。任意的に、機器はまたMITP制御装置17、音響信号を生成するための装置18(ブザーなど)および/または触覚信号を生成するための装置19(振動発生器など)を含む。
【0060】
好ましい実施の形態(図4に最もよく示される)において、穿刺要素12は分析要素21と組み合わされ、これによって統合化された穿刺・分析要素22を形成する。この統合的要素において、穿刺要素12は双方向の矢印34によって示された長手方向に可動である。分析要素保持部20は、機器11内に分析要素22を保持するために設けられている。図示された実施の形態において、分析要素保持部20は、分析要素21に結合凹所25と機器の対応する結合突起27とを備える。同様に、穿刺要素12は機器の結合突起26と協働する結合凹所24を有する。これらの凹所24、25および突起26、27の対は、それぞれの結合凹所内に貫入し、機器内に挿入された統合化された穿刺・分析要素22の操作を可能にする(図3)。
【0061】
図3に示されたランセット駆動部14は、溝により形成されたカム30を有する駆動ロータ29を備える。カム30および対応するカム移動装置31はカム駆動機構を形成し、駆動ロッド32の回動軸33の周りの回動運動を制御する。
【0062】
(図示しない誘発手段による)穿刺動作の誘発後、駆動ロータ29は軸35の周りで(図示されない駆動ばねによる駆動によって)高速で回転し、この回転運動は、溝30によって形成されたカム湾曲部によって伝達され、カム移動装置31によって駆動ロット32の対応する回動運動に移動され、これはまた、結合凹所24に貫入した結合突起26によって結合された穿刺要素12の対応する上下運動を駆動する。穿刺機器のための同様のロータ駆動部は他に記載されている。よって、さらなる詳細な説明は必要でない。
【0063】
図4に示された好ましい実施の形態において、穿刺要素12は、その穿刺先端部7内に毛管流路28を有し、穿刺要素12の試料採取領域23まで導かれた「直接的試料採取器」である。試料採取領域23において毛管流路28は拡大し、試料貯蔵チャンバ28aを形成する。
【0064】
穿刺のあいだ、穿刺要素12は穿刺動作を実行し、これによって穿刺先端部7が皮膚3内に推進する。この後、好ましくは穿刺動作の後進段階のあいだ、穿刺先端部7が最大移動点に到達した後(しかしながら穿刺先端部がまだ皮膚3の表面下にある状態において)、液体試料は毛管力により推進されて毛管28および貯蔵チャンバ28aに貫入する。したがって、図示された実施の形態において、毛管28および貯蔵チャンバ28aは、液体試料を保管し、後続の分析要素21の分析領域8に移送の準備を整えるのに適した試料採取装置36を共に形成する。
【0065】
液体試料が試料採取領域23に到達すると、適当な流体連通装置によって分析要素21の隣接する分析領域8に移送可能となる。好ましくは、第1の構成においては穿刺要素12の試料採取領域と分析要素21とのあいだの流体連通はないが、第2の構成においては流体連通が行われるように構成される。両方の構成の切り替えは、たとえば穿刺要素12および分析要素21の領域23を共に押圧することなど、任意の適当な手段によって達成可能である。切り替え可能な試料移送を有する、統合化された穿刺・分析要素のこのような好ましい設計の詳細は他に記載されているため、さらなる詳細な説明は必要でない。
【0066】
もちろん、本発明は、互いに固定された穿刺部および分析部を有する統合化された穿刺・分析要素において使用することも可能である。明らかに、このような実施の形態においては、これらの2つの部分のための別個の保持装置は必要でない。むしろ、同時に穿刺要素保持装置および分析要素保持装置となる1つの保持装置のみが設けられる。
【0067】
機器内の穿刺要素と分析要素(または統合化された穿刺・分析装置)とを保持および移動するための好ましい装置について説明したが、多くの変更が可能である。これらには、少なくともシステム動作の一部において、分析要素および/または穿刺要素が固定されてテープにより輸送される設計が含まれる。
【0068】
本発明のシステムの特別な特徴は、機器11に設けられた押圧力制御装置37に関する。図示された実施の形態において、押圧力制御装置37はばね38を備え、該ばねは、その一端が圧力リング1に対して作用し、他端が筐体13に対して作用するように具現化および構成される。この意味において、「作用」とは直接的な接触を必要としない。むしろ、これはばねが圧力リングに力を印加し、対応する対抗力が筐体によって(直接的または間接的に)支えられる。
【0069】
図3に示された機器において、ばね38の一端は筐体13の壁にあり、他端は穿刺駆動部14をもつフレーム要素39を押圧する。ばね38の力は、柱要素40を介してフレーム要素39からさらに圧力リング1に伝達される。圧力リング1は、筐体13の圧力リング軸受部43によって支持された圧力片42の一部として具現化され、これはばね38の力に対して軸方向に可動である。
【0070】
使用者が、自分の指先2を、圧力リング1を有する圧力片42に矢印Fの方向に押圧すると、圧力片はばね38(または他のばね装置)の力に対して下方に移動する。圧力片42と圧力リング軸受43にある筐体13とのあいだの接触が遮断されると、ばね38の力は指の押下力によって均衡する。換言すれば、この状態において皮膚に対して押圧される圧力リング1の力は、ここにおいてはばね38によって具現化された押圧力制御装置37によって制御される。
【0071】
本設計において使用される原理は、ばね38が筐体13と圧力リング1を有する圧力片42とのあいだに作用することを示す図5からより明確になる。駆動部14は、ランセットの動作の最大移動点と圧力リング1とのあいだの距離が、ばね38の圧縮状態および圧力片42の対応する軸方向の動作とは独立するように、規定の空間構成で圧力リング1に接続される。好ましくは、穿刺貫入深さの調節のために、空間構成および最大移動点からの圧力リングの距離は(穿刺動作間にて)可変である。しかしながら、これは使用者と装置との相互作用のあいだ、すなわち圧力リングが最初に押し下げられ、体部がここから移動される時点までは固定されている、
既知のとおり、弾性ばね38の力はその伸張(すなわち、図示された圧縮ばねの場合には圧縮)にともなって線形的に増加する。本発明の内容において、圧力リング1が皮膚に対して押圧される圧力は密に制御され、その変化量は、前述の好ましい制限値を超えるべきではない。この目的を達成するため、好ましくは、ばね38は予備伸張されるように具現化および構成される。このことは、押圧力が圧力リング1に付勢されない場合、すなわち圧力リング1が筐体13の囲壁(軸受43)にある「定」位置にある場合であっても、ばねがすでに圧縮(引張ばねの場合は引張)されていることを意味する。この予備伸張の度合いは、圧力リング1に作用するばね38の力の変化が、圧力リング1のばね負荷の動作範囲の20%以下、好ましくは10%以下である。
【0072】
これに関連して、全動作範囲において、指2(または他の体部)と圧力リング1とのあいに作用する押圧力は、指2の押下力によって均衡を保持されているばね38の力によってのみ制御されていることを確認することが重要である。もし、圧力リング1の動作が、何らかの突当部材または可能な動作範囲内でリング1に作用する障害物によって影響または制限される場合には、この状態は満たされない。この状態を満たすためには、圧力リング動作制限装置44(図5)が設けられ、これによって指2または他の体部によって押圧され得る圧力リング1の最大移動が、圧力リングの全てのばね負荷動作範囲内に制限される。
【0073】
図5に示された好ましい実施の形態において、これは圧力リング1を押圧して圧力リングを移動させる体部が接触面46に当接するように、圧力リング1の近傍(外側)に配置された接触面46によって達成される。この当接によって、圧力リングはさらなる移動が不可能になり、すなわち圧力リングの(これを押圧する体部による)可能な移動が制限される。このような実施の形態において、最大移動量は距離drによって決定され、これによって圧力リングが機器の筐体(接触面46)から突出する。圧力リング1を有する圧力片42が下方に押圧される際、この動作は、指先2が圧力リング1の近傍にある筐体13の表面に接触すると中止される。
【0074】
これに関連して、実際の使用中において圧力リング1の最大移動量が小さくなるように設計される場合に好ましい。好ましくは、これは3mm未満であり、より好ましくは2mm未満であり、さらにより好ましくは1mm未満である。したがって、圧力リング1の面と隣接する筐体面との距離drは過度に大きくすべきでない。好ましい最大値は、前述の移動量に0.5mmを加算することによって算出可能である。他方でdrは過度に小さくすべきでなく、これは、特に隣接する筐体領域に対する圧力リング1の突起により使用者が適当な指の位置を見出すことが容易になる場合、機器の操作性のため好ましいからである。したがって、この突起、すなわち距離drは少なくとも0.2mmであり、好ましくは少なくとも0.5mmである。
【0075】
従来の装置とは対照的に圧力リング1は変形不能であるべきであり、これはシステムの通常の使用において可視的に変形すべきでないことを意味する。圧力リングの適切な厳密な形状および幅は実験的に決定可能である。本発明者の現在の知識によると、好ましくは、リングは最大3.5mmの幅を有し、好ましくは最大2.5mmであり、より好ましくは最大1mmである。好ましい最小の幅は0.5mmであり、好ましくは0.7mmであり、より好ましくは0.8mmである。リングは、使用者による容易な触覚認識を可能にするため、充分な距離をもって任意の隣接する筐体面から突出すべきである。
【0076】
もちろん、圧力リングが設けられる構成部分は多くの異なる形状および設計を有し得る。「圧力リング」という用語はそれぞれの部分のリング状表面を示し、実際の使用、すなわち特定機器の使用において一般的な状態において皮膚表面に接触する。もちろん、このリング状の接触面(すなわち、圧力リング)は、たとえばわずかに丸みのある縁部を含む種々の形状を有し得る。
【0077】
さらに、「圧力リング」という用語は、連続的なリングに限定して理解すべきではない。むしろ、皮膚に接触するリング状の面は、妨害物(たとえば凹所など)を有し得るが、しかしながらこれは、圧力リングの前述の機能を損なわないように充分小さくすべきである。
【0078】
図3に示された好ましい実施の形態において、機器は、圧力リング動作検出装置45をさらに備える。本発明の第2の主要な特徴に関連して、好ましくは、これはMITP制御装置の一部である。動作検出のための手段は既知であり、たとえば図面に記号表示されたライトバリア46などである。このような装置は、指2でその「定」位置から押下げられると、圧力片42の動作、よって圧力リング1の動作を検出する。このような検出は、機器の「穿刺の準備が整った」ことを(表示器16または音響または触覚信号発生器18、19によって)使用者に表示することを含む、いくつかの有利な作用を可能にする。代替的または追加的に、圧力リング動作検出装置の信号は、場合により前述の遅延時間後に、穿刺動作を自動的に誘発するために使用可能である。
【0079】
図3は、機器11の一部としての分析測定装置47をさらに示す。これは、分析要素21の変化に関する測定量の値を測定するのに適した任意の装置でよく、その変化は所望の分析値の測定である。図示された場合において、分析測定装置は、光源48、光検出器49およびレンズ50により記号表示された対応する光導手段を含む分析要素21の分析領域8において、検出領域の光度測定のために具現化されている。他の種類の分析測定装置も使用可能であり、特に電気化学分析要素の評価のための電気的測定装置が一般的である。
【0080】
図2〜5に示されたシステムにおいて、本発明の第2の主要な特徴によるMITP制御装置17は、圧力リング動作検出装置45を使用する。MITP制御装置17がMITPの開始を合図すると、これは、少なくとも1つの信号発生器18、19によって信号を生成し、および/またはランセット駆動部14の穿刺動作を自動的に誘発する。MITP期間の終了は、たとえば指先2から充分な量の液体試料を生成および移送するために必要な所定の時間に基づき、測定・評価電子機器15によって決定される。
【0081】
代替的に、充分な試料移送の状態は、先行技術において既知である、たとえば統合化された穿刺・分析要素22に輸送された試料の光度検出、またはここに輸送された液体が輸送経路の特定箇所に到達したことを検出する電気的接触により、適当な試料移送検出手段によって別に検出可能である。好ましくは、図示された実施の形態において、作動力制御装置は、押圧力がMITP全体において前述の特定された制限値範囲内にあることを確認する。好ましくは、MITPのあいだの押圧力の変化は、さらに小さな前述の可変制限値内にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚穿刺先端部(7)を有する穿刺要素(12)で皮膚を穿刺することによって分析のための体液試料を生成する機器であって、前記機器(11)が、
筐体(13)と、
前記筐体(13)内にあり、穿刺動作において接続された穿刺要素(12)を駆動し、該穿刺要素(12)が穿刺動作の誘発後に最大移動点(P)に到達するまで穿刺方向に移動し、最大移動点(P)に到達した後に反対方向に移動する穿刺駆動部(14)と、
皮膚接触開口部(4)を包囲し、体液の搾り出しを促進する開口部(4)内に皮膚(3)が膨隆するように、皮膚に対して押圧するよう適合された圧力リング(1)とを有し、
前記皮膚接触開口部(4)が、少なくとも3mmで最大8mmの径を有する円と一致した開口領域を有し、
前記機器が、穿刺動作誘発時の圧力リング(1)と皮膚(3)とのあいだの押圧力を少なくとも3Nで最大8Nに制御するための押圧力制御装置(37)を備えた機器。
【請求項2】
前記皮膚接触開口部(4)の開口領域が、少なくとも4mmで最大7mm、好ましくは少なくとも5mmで最大6.5mm、最も好ましくは少なくとも5.5mmで最大6mmの径を有する円と一致する請求項1記載の機器。
【請求項3】
前記押圧力制御装置(37)は、前記圧力リング(1)が穿刺動作誘発時に皮膚に対して押圧される力を制御するように適合され、少なくとも4Nで最大7N、好ましくは少なくとも5Nで最大6Nに制御される請求項1または2記載の機器。
【請求項4】
前記筐体内に分析要素(21)を保持するための保持装置(20)をさらに備え、皮膚の穿刺により生成された体液試料が分析のためにここに輸送可能となる請求項1〜3のいずれか1項に記載の機器。
【請求項5】
皮膚の穿刺により体液試料を生成し、皮膚穿刺先端部(7)と、分析に必要な量の液体試料を採取するための試料採取装置(36)と、使い捨て式の分析要素とを有する穿刺要素(12)によって試料を分析するための機器であって、前記機器(11)が、好ましくは請求項1〜4のいずれか1項に記載の筐体(13)と、前記筐体(13)内にあり、穿刺要素(12)に接続されて接続された穿刺要素(12)を穿刺動作において駆動し、該穿刺要素(12)が穿刺動作の誘発後に最大移動点(P)に到達するまで穿刺方向に移動し、最大移動点(P)に到達した後に反対方向に移動する穿刺駆動部(14)と、皮膚接触開口部(4)を包囲し、体液の搾り出しを促進する開口部(4)内に皮膚(3)が膨隆するように、皮膚に対して押圧されるよう適合された圧力リング(1)と、体液試料が分析のために試料採取装置(36)から輸送される、前記筐体内に分析要素を保持するための保持装置(20)とを備え、穿刺および分析のために充分な量の液体試料を試料採取するために必要な最短相互作用時間が最大で3秒である機器。
【請求項6】
前記最短相互作用時間の継続時間が、2秒以下であり、好ましくは1秒以下である請求項5記載の機器。
【請求項7】
前記最短相互作用時間が機器の使用者によって保持されるように制御するための、最短相互作用時間制御装置(17)を備えた請求項5または6記載の機器。
【請求項8】
前記最短相互作用時間制御装置が、少なくとも最短相互作用時間の開始と最短相互作用時間の終了とのいずれかについて、音響、触覚または可視信号を使用者に対して生成するように適合された信号生成装置(16、18、19)を備えた請求項7記載の機器。
【請求項9】
前記圧力リング(1)と皮膚(3)とのあいだの押圧力を制御するための押圧力制御装置(37)を備えた請求項5〜8のいずれか1項に記載の機器。
【請求項10】
前記押圧力制御装置(37)が、測定相互作用時間のあいだ、圧力リング(1)と皮膚とのあいだに少なくとも3N、好ましくは少なくとも4N、より好ましくは少なくとも5Nの最小押圧力を保持するように適合された請求項9記載の機器。
【請求項11】
前記押圧力制御装置(37)が、測定相互作用時間のあいだ、圧力リング(1)と皮膚とのあいだに最大10N、好ましくは最大8N、より好ましくは最大7Nの最大押圧力を保持するように適合された請求項9または10記載の機器。
【請求項12】
前記押圧力制御装置が、測定相互作用時間のあいだ、圧力リングと皮膚とのあいだに+/−0.5N以下、好ましくは+/−0.3N以下、より好ましくは+/−0.2N以下の最大押圧力変動範囲を保持するように適合された請求項9または10記載の機器。
【請求項13】
前記押圧力制御装置が、測定相互作用時間のあいだ、圧力リングと皮膚とのあいだに+/−15%以下、好ましくは+/−10%以下、より好ましくは+/−5%以下の最大押圧力変動範囲を保持するように適合された請求項9または10記載の機器。
【請求項14】
使用者による設定が可能な穿刺深さ調節手段を有さない請求項1〜13のいずれか1項に記載の機器。
【請求項15】
穿刺動作を自動的に誘発するための装置を備えた請求項1〜4および9〜14のいずれか1項に記載の機器。
【請求項16】
規定の最小押圧力が印加される時点と穿刺動作の誘発とのあいだの遅延時間を制御するための遅延時間装置を備えた請求項1〜4および9〜15のいずれか1項に記載の機器。
【請求項17】
前記押圧力制御装置(37)がばね装置(38)を備え、その一端が圧力リングに対して作用し、他端が筐体(13)に対して作用する請求項1〜4および10〜16のいずれか1項に記載の機器。
【請求項18】
前記ランセット駆動部(14)が規定の空間構成で圧力リング(1)に接続され、ランセットの動作の最大移動点と圧力リング(1)とのあいだ距離が、ばね(38)の圧縮状態および圧力リング(1)の軸方向の動作位置から独立する請求項17記載の機器。
【請求項19】
圧力リング動作制限装置(44)を備え、指(2)または他の体部での押圧による圧力リング(1)の可能な最大移動量が、圧力リングのばね負荷運動範囲に制限される請求項17または18記載の機器。
【請求項20】
前記圧力リング動作制限装置が圧力リング(1)の近傍に接触面(46)を備え、該接触面は、圧力リング(1)に対して押圧されて圧力リングを移動する体部が接触面(46)に対して当接するように配置される請求項19記載の機器。
【請求項21】
圧力リングに作用する力が、圧力リングのばね負荷動作範囲の20%以下であり、好ましくは10%以下で変化するように、前記ばね装置が予備伸張される請求項17〜20のいずれか1項に記載の機器。
【請求項22】
前記圧力リングが、少なくとも0.5mmで最大3.5mm、好ましくは少なくとも0.7mmで最大2.5mm、最も好ましくは少なくとも0.8mmで最大1mmの平均幅を有する請求項1〜21のいずれか1項に記載の機器。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれか1項に記載の再利用可能な携帯型機器(11)と、該機器の駆動部(14)に交換可能に接続するように適合された穿刺要素(12)とを備えた、皮膚の穿刺によって分析のための体液試料を生成するためのシステム。
【請求項24】
前記穿刺要素(12)が統合化された穿刺・分析要素(22)の一部をなす請求項23のシステム。
【請求項25】
前記穿刺要素(12)が、その試料採取領域(23)への毛細管流動によって、皮膚の穿刺により生成された液体試料を輸送するための毛管流路(28)を有する直接的試料採取器である請求項23または24記載のシステム。
【請求項26】
液体試料を穿刺要素(12)の試料採取領域(23)から分析のための分析要素(21)に移送可能にする流体連通装置を備えた請求項24および25記載のシステム。
【請求項27】
前記流体連通装置が、流体連通が供されない第1の構成と流体連通が供される第2の位置とのあいだで切り替え可能である請求項26記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−524609(P2010−524609A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504555(P2010−504555)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【国際出願番号】PCT/EP2008/003355
【国際公開番号】WO2008/131920
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(501205108)エフ ホフマン−ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト (285)
【Fターム(参考)】