説明

体積ホログラム積層体の製造方法

【課題】連続的に体積ホログラム積層体を製造することが可能な、体積ホログラム積層体の製造方法を提供する。
【解決手段】体積ホログラム層の少なくとも一部が切断されるように形成された切れ込み部を有する体積ホログラム層転写箔を用い、被転写体を上記ヒートシール層上に配置し、ホットスタンプによって上記ヒートシール層の一部を加熱することにより、上記ヒートシール層の加熱された領域と上記被転写体とを接着させる加熱接着工程と、上記体積ホログラム層転写箔の基材を剥離する基材剥離工程と、を有することを特徴とする、体積ホログラム積層体の製造方法を提供することにより、上記課題を解決するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体積ホログラム層転写箔を用い、体積ホログラム層を転写することによって体積ホログラム積層体を製造する、体積ホログラム積層体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ホログラムは、波長の等しい二つの光(物体光と参照光)を干渉させることによって、物体光の波面が干渉縞として感光材料に記録されたものであり、干渉縞記録時の参照光と同一波長の光が当てられると干渉縞によって回折現象が生じ、元の物体光と同一の波面が再生できるものである。ホログラムは、外観が美しく、複製が困難である等の利点を有することからセキュリティ用途等に多く使用されている。なかでもクレジットカードや、キャッシュカード等に代表されるプラスチックカードにおいては、主として複製防止および意匠性付与の観点からホログラム付カードが広く用いられるに至っている。
【0003】
このようなホログラムは、干渉縞の記録形態によっていくつかの種類に分類することができるが、代表的には表面レリーフ型ホログラムと体積ホログラムとに分けることができる。ここで、上記表面レリーフ型ホログラムは、ホログラム層の表面に微細な凹凸パターンが賦型されることによりホログラムが記録されたものである。一方、上記体積ホログラムは光の干渉によって生じる干渉縞が、屈折率の異なる縞として厚み方向に三次元的に描画されることによってホログラムが記録されたものである。なかでも、上記体積ホログラムは材料の屈折率差によってホログラム像が記録されたものであるため、上記レリーフ型ホログラムに比べて複製することが困難であるという利点を有することから、有価証券やカード類の偽造防止手段としての用途が期待されている。
【0004】
また、意匠性の付与や偽造防止手段等としてホログラムを用いる場合において、ホログラムを有価証券やカード等に付与する方法としては、ホログラムを付与する対象に応じて種々の方法が知られている。このような方法としては、例えば、スリット状のホログラムをすき込む方法や、ホログラムを外部から視認可能なように媒体中に埋め込む方法が知られているが、一般的にはホログラムを所定の位置に貼付する方法が用いられている。なかでも、より簡便な方法として、任意の基材上にホログラムが形成されたホログラム層転写箔から、ホログラムを転写することによってホログラムを所定の位置に貼付する方法が広く用いられるに至っている。
【0005】
ここで、上記体積ホログラムには屈折率の異なる複数の材料が用いられるのが一般的であり、通常は特定の光を照射することによって重合させることが可能な光重合性材料が用いられている。このため、体積ホログラムが記録されたホログラム層は機械強度が大きくなる傾向があることが知られている。また、体積ホログラムは、屈折率差が三次元的に配列されることによってホログラム像が記録されるものであるという性質上、ホログラムが形成される層の厚みが上記レリーフ型ホログラムと比較して厚くなる傾向にある。このため、体積ホログラムは箔切れ性が乏しく、上述したホログラム層転写箔を用いて体積ホログラムを転写する方法を用いることが困難であることが指摘されていた。
【0006】
このような状況において、特許文献1および2には体積ホログラムが記録されたホログラム層の破断点伸度および破断強度を所定の値に調整することにより、体積ホログラムについても上述したホログラム層転写箔を用いた転写方法を用いることを可能とした例が開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開平3−46687号公報
【特許文献2】特開2005−070064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、ホログラムを用いた意匠性の付与や偽造防止は、その有用性に鑑みさらなる汎用性の向上が求められている。これに伴い、本発明者らは工業的生産過程において連続的に体積ホログラムを所定の位置に付与することを可能にするため、ホログラム層転写箔を用い、体積ホログラムを連続的に転写する方法を考案した。このような方法は連続的に体積ホログラムを転写できる方法として有用である。しかしながら、その一方でこのような方法では、従来、体積ホログラムでは実施することが困難であった、ホログラム層転写箔上に形成された体積ホログラムを部分的に転写させることが必要になる。このため、このような方法においては、従来よりもさらに高い箔切れ性が求められるという課題が明らかとなった。また、このような課題は、特にホットスタンプによる加熱方法を用いて体積ホログラム層を転写する場合に顕著であった。
【0009】
本発明はこのような新たな課題を解決するためになされたものであり、体積ホログラム層転写箔を用い、ホットスタンプによる加熱方法によって被転写体の所定の位置に体積ホログラム層の一部を連続的に転写することにより、連続的に体積ホログラム積層体を製造することが可能な、体積ホログラム積層体の製造方法を提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明は、基材と、上記基材上に形成され、体積ホログラムが記録された体積ホログラム層と、上記体積ホログラム層上に形成され、熱可塑性樹脂を含有するヒートシール層とを有し、かつ上記体積ホログラム層の少なくとも一部が切断されるように形成された切れ込み部を有する体積ホログラム層転写箔を用い、被転写体を上記ヒートシール層上に配置し、ホットスタンプによって上記ヒートシール層の一部を加熱することにより、上記ヒートシール層の加熱された領域と上記被転写体とを接着させる加熱接着工程と、上記体積ホログラム層転写箔の基材を剥離する基材剥離工程と、を有することを特徴とする体積ホログラム積層体の製造方法であって、上記切れ込み部が、上記加熱接着工程において上記ヒートシール層が上記ホットスタンプによって加熱される形状と同一形状の輪郭を有するように形成されており、かつ、上記加熱接着工程が上記ホットスタンプによって加熱される領域の外周と上記切れ込み部とが一致するように、上記ヒートシール層を加熱するものであることを特徴とする、体積ホログラム積層体の製造方法を提供する。
【0011】
本発明によれば、上記体積ホログラム層転写箔として、少なくとも体積ホログラム層の一部を切断するように切れ込み部が形成されており、かつ上記切れ込み部が、上記加熱接着工程において上記ヒートシール層が上記ホットスタンプによって加熱される形状と同一形状の輪郭を有するように形成されており、さらに上記加熱接着工程が上記ホットスタンプによって加熱される領域の外周と上記切れ込み部とが一致するように、上記ヒートシール層を加熱するものであることにより、上記体積ホログラム層の箔切れ性の問題を解決することができる。このため、本発明によれば体積ホログラム層の破断不良による製造不良が生じることなく、連続的に体積ホログラム積層体を製造することができる。
【0012】
本発明においては、上記加熱接着工程が、上記ホットスタンプによって加熱される領域の外周と上記切れ込み部とが一致するように上記ホットスタンプおよび上記体積ホログラム層転写箔の位置を調整する位置調整工程を有することが好ましい。このような位置調整工程を有することにより、加熱接着工程において、上記ホットスタンプによって加熱される領域の外周を上記切れ込み部と確実に一致させることができるため、本発明の体積ホログラム積層体の製造方法において、体積ホログラム層の箔切れ不良が生じることをより確実に防止することができるからである。
【0013】
本発明においては、切れ込み部が複線状、あるいは点線状に形成されていることが好ましい。上記切れ込み部がこのような態様で形成されていることにより、上記加熱接着工程において、上記ホットスタンプによって加熱される領域の外周の位置と、上記切れ込み部の位置とに僅かなずれが生じた場合であっても、体積ホログラム層に破断不良が生じることを防止できるからである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、体積ホログラム層転写箔を用い、ホットスタンプでの加熱方法によって被転写体の所定の位置に体積ホログラム層の一部を連続的に転写することにより、体積ホログラム層の箔切れ不良が生じることを防止し、連続的に体積ホログラム積層体を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の体積ホログラム積層体の製造方法について詳細に説明する。
【0016】
上述したように本発明に用いられる体積ホログラム積層体の製造方法は、基材と、上記基材上に形成され、体積ホログラムが記録された体積ホログラム層と、上記体積ホログラム層上に形成され、熱可塑性樹脂を含有するヒートシール層とを有し、かつ上記体積ホログラム層の少なくとも一部が切断されるように形成された切れ込み部を有する体積ホログラム層転写箔を用い、被転写体を上記ヒートシール層上に配置し、ホットスタンプによって上記ヒートシール層の一部を加熱することにより、上記ヒートシール層の加熱された領域と上記被転写体とを接着させる加熱接着工程と、上記体積ホログラム層転写箔の基材を剥離する基材剥離工程と、を有することを特徴とするものであって、上記切れ込み部が、上記加熱接着工程において上記ヒートシール層が上記ホットスタンプによって加熱される形状と同一形状の輪郭を有するように形成されており、かつ、上記加熱接着工程が上記ホットスタンプによって加熱される領域の外周と上記切れ込み部とが一致するように、上記ヒートシール層を加熱するものであることを特徴とするものである。
【0017】
このような本発明の体積ホログラム積層体の製造方法について図を参照しながら説明する。図1は本発明の体積ホログラム積層体の製造方法の一例を示す概略図である。図1に例示するように、本発明の体積ホログラム積層体の製造方法は、体積ホログラム層転写箔10を用い(図1(a))、被転写体20をヒートシール層3上に配置し(図1(b))、ホットスタンプXによって上記ヒートシール層3の一部を加熱することにより、上記ヒートシール層3の加熱された領域と上記被転写体20とを接着させる加熱接着工程と(図1(c))、上記体積ホログラム層転写箔10の基材1を剥離する基材剥離工程と(図1(d))、を有することを特徴とするものであり、被転写体20上に、体積ホログラム層2が転写された体積ホログラム積層体30を製造するものである(図1(e))。
このような例において、本発明の体積ホログラム積層体の製造方法は、上記体積ホログラム層転写箔10が、基材1と、上記基材1上に形成され、体積ホログラムが記録された体積ホログラム層2と、上記体積ホログラム層2上に形成され、熱可塑性樹脂を含有するヒートシール層3とを有し、上記体積ホログラム層2の少なくとも一部が切断されるように形成された切れ込み部4を有するものである。
ここで、図1に例示するように、本発明に用いられる体積ホログラム層転写箔10は、上記基材1と体積ホログラム層2との間に剥離性保護層5が形成されていることが好ましいものである。
【0018】
図2は、上記図1(c)におけるZ方向から正視図である。図2に例示するように、本発明の体積ホログラム積層体の製造方法は、上記体積ホログラム層転写箔10における上記切れ込み部4が、上記加熱接着工程においてヒートシール層3がホットスタンプXによって加熱される形状Aと同一形状の輪郭を有するように形成されており、かつ、上記加熱接着工程が上記ホットスタンプによって加熱される形状Aの外周と上記切れ込み部4とが一致するように、上記ヒートシール層3を加熱するものであることを特徴とするものである。
【0019】
本発明によれば、上記体積ホログラム層転写箔として、少なくとも体積ホログラム層の一部を切断するように切れ込み部が形成されており、かつ上記切れ込み部が、上記加熱接着工程において上記ヒートシール層が上記ホットスタンプによって加熱される形状と同一形状の輪郭を有するように形成されており、さらに上記加熱接着工程が上記ホットスタンプによって加熱される領域の外周と上記切れ込み部とが一致するように、上記ヒートシール層を加熱するものであることにより、上記体積ホログラム層の箔切れ性の問題を解決することができる。このため、本発明によれば体積ホログラム層の破断不良による製造不良が生じることなく、連続的に体積ホログラム積層体を製造することができる。
【0020】
本発明の体積ホログラム積層体の製造方法は、少なくとも上記加熱接着工程と、上記基材剥離工程とを有するものであり、必要に応じて他の任意の工程を有してもよいものである。
以下、本発明に用いられる各工程について順に説明する。
【0021】
第1 加熱接着工程
最初に、本発明に用いられる加熱接着工程について説明する。本工程は、加熱手段としてホットスタンプを用いて、体積ホログラム層転写箔のヒートシール層の一部をホットスタンプを用いて加熱することにより、ヒートシール層の当該加熱部位と被転写体とを接着する工程である。
ここで、本工程に用いられる体積ホログラム層転写箔は、基材と、上記基材上に形成され、体積ホログラムが記録された体積ホログラム層と、上記体積ホログラム層上に形成され、熱可塑性樹脂を含有するヒートシール層とを有し、上記体積ホログラム層の少なくとも一部が切断されるように形成された切れ込み部を有するものである。これに加えて、本工程に用いられる体積ホログラム層転写箔は、上記切れ込み部が、本工程においてヒートシール層がホットスタンプによって加熱される形状と同一形状の輪郭を有するように形成されているものである。さらに、本工程は、上記ホットスタンプによってヒートシール層が加熱される領域の外周と上記切れ込み部とが一致するように、上記ヒートシール層を加熱するものであることを特徴とするものである。
【0022】
1.体積ホログラム層転写箔
本工程に用いられる体積ホログラム層転写箔について説明する。本工程に用いられる体積ホログラム層転写箔は、基材と、上記基材上に形成され、体積ホログラムが記録された体積ホログラム層と、上記体積ホログラム層上に形成され、熱可塑性樹脂を含有するヒートシール層とを有し、上記体積ホログラム層の少なくとも一部が切断されるように形成された切れ込み部を有するものである。また、本工程に用いられる体積ホログラム層転写箔は、上記切れ込み部が、本工程においてヒートシール層がホットスタンプによって加熱される領域の外周と同一形状の輪郭を有するように形成されているものである。
【0023】
(1)切れ込み部
本工程に用いられる体積ホログラム層転写箔に形成された切れ込み部について説明する。本発明における切れ込み部は、後述する体積ホログラム層の少なくとも一部を切断するように形成され、かつ本工程においてヒートシール層がホットスタンプによって加熱される領域の外周と同一形状の輪郭を有するように形成されたものである。
【0024】
(厚み方向の形成態様)
上記切れ込み部が、体積ホログラム層転写箔の厚み方向に対して形成されている態様について説明する。厚み方向を基準とした場合、本発明における切れ込み部は、少なくとも後述する体積ホログラム層の少なくとも一部が切断されるように形成されるように形成されたものである。このため、本発明における切れ込み部が形成された態様としては、ヒートシール層を貫通し、体積ホログラム層の少なくとも一部が切断されるように形成された態様(第1態様)と、ヒートシール層には形成されず、体積ホログラム層の少なくとも一部が切断されるように形成された態様(第2態様)とを挙げることができる。本発明における切れ込み部はこれらのいずれの態様で形成されたものであってもよい。
【0025】
このような切れ込み部の厚み方向の形成態様について図を参照しながら説明する。図3は本工程に用いられる体積ホログラム層転写箔の厚み方向に切れ込み部が形成された態様の一例を示す概略図である。図3に例示するように、上記切れ込み部4が厚み方向に形成されている態様としては、ヒートシール層3を貫通し、体積ホログラム層2の一部が切断されるように形成された態様と(図3(a))、ヒートシール層3には形成されず、体積ホログラム層2の少なくとも一部が切断されるように形成された態様と(図3(b))、を挙げることができる。
【0026】
ここで、本発明における切れ込み部が上記第1態様で形成されている場合、上記切れ込み部は、上記体積ホログラム層転写箔のヒートシール層側から任意の手段で切り込むことによって形成することができるため、体積ホログラム層転写箔を容易に製造することができるという利点を有する。
【0027】
一方、本発明における切れ込み部が上記第2態様で形成されている場合は、ヒートシール層に切れ込み部が形成されていないことにより、次のような利点を有する。
まず、第1に体積ホログラム層に切れ込み部が形成されていることに伴って体積ホログラム層が剥離してしまうことを防止することができる。すなわち、たとえば、後述するように切れ込み部を複線状に形成した場合等においては、切れ込み部が形成されていることに伴って体積ホログラム層が、上記基材から部分的に剥離してしまうことが問題となり得る。しかしながら、第2態様においては切れ込み部が形成されていないヒートシール層が上記体積ホログラム層上に形成されていることにより、このような問題が生じることを回避することができる。
第2に、本工程に用いられる体積ホログラム層転写箔を長尺状に形成した場合に、これを保管する際にはロール状に巻き取った形状とすることが望ましいものである。しかしながら、上記ヒートシール層に切れ込み部が形成されていると、体積ホログラム層転写箔の最表面に、切れ込み部に起因する凹凸が形成されることになるため、当該切れ込み部の存在によってロール状に巻き取ることが困難になったり、また巻形状が悪化したり、巻きずれ等が生じてしまうことが問題となり得る。この点、第2態様においてはヒートシール層に切れ込み部が形成されていないため、ヒートシール層の表面を平坦にすることができるため、上記のような問題が生じることを回避することができる。
第3に、ヒートシール層に切れ込み加工を行う必要がないため、切れ込み加工の際に用いる加工刃にヒートシール層の熱可塑性樹脂が付着することがない。また、体積ホログラム層を抜き加工する際に、加工刃が汚れることがないため、加工刃の汚れに起因する抜き加工不良が防止できるとともに、加工刃のクリーニング回数を減らすことができる。
【0028】
上記第1態様および第2態様にかかわらず、上記切れ込み部が体積ホログラム層に形成されている態様としては、体積ホログラム層の少なくとも一部が切断されるように形成されている態様であれば特に限定されるものではない。なかでも本発明においては、少なくとも体積ホログラム層の1/3以上を切断するように形成されていることが好ましく、特に1/2以上を切断するように形成されていることが好ましい。切れ込み部がこのように形成されていることにより、本発明によって体積ホログラム積層体を製造する際に、体積ホログラム層の破断不良が生じることをより効果的に防止できるからである。さらに本発明においては切れ込み部が体積ホログラム層を完全に切断するように形成されていることが最も好ましい。これにより体積ホログラム層の切断不良が問題になることが無くなるからである。
【0029】
なお、本発明における切れ込み部が上記第2態様で形成されている場合、体積ホログラム層上に切れ込み部が形成されていないヒートシール層が積層された構成を有することから、上記切れ込み部が体積ホログラム層を完全に切断する態様で形成されている場合であっても、切れ込み部が形成されていることに起因して体積ホログラム層が部分的に剥離してしまうことを防止できるという利点がある。
【0030】
本工程に用いられる体積ホログラム層転写箔において後述する基材と体積ホログラム層との間に任意の構成が用いられている場合、上記切れ込み部は当該任意の構成を切断するように形成されていてもよく、あるいは、切断しないように形成されていてもよい。また、切れ込み部が上記任意の構成を切断するように形成されている場合、その態様としては少なくとも一部のみが切断されるように形成されている態様であってもよく、あるいは、完全に切断されるように形成されている態様であってもよい。
より具体的には、後述するように本工程に用いられる体積ホログラム層転写箔は、基材と体積ホログラム層との間に剥離性保護層が形成されていることが好ましいものであるが、このような場合において、切れ込み部が形成されている態様としては、剥離性保護層の少なくとも一部または全部が切断されている態様であってもよく、あるいは、剥離性保護層は全く切断されていない態様であってもよい。
【0031】
なお、本発明における切れ込み部は後述する基材の一部が切断されるように形成されていてもよいが、基材が切断されないように形成されていることが好ましい。本発明の体積ホログラム積層体の製造方法は、連続的に体積ホログラム層を転写させることによって体積ホログラム積層体を製造するものであるため、上記基材の一部に切れ込み部が形成されていると、体積ホログラム層を転写させる際に基材が破断してしまうおそれがあり、体積ホログラム層の連続的な転写が困難になる可能性があるからである。
【0032】
(面内方向の形成態様)
次に、体積ホログラム層転写箔の面内方向に対して切れ込み部が形成されている態様について説明する。面内方向を基準とした場合、本発明における切れ込み部は、本工程においてヒートシール層がホットスタンプによって加熱される形状と同一形状の輪郭を有するように形成されたものである(図2参照)。
したがって、ホットスタンプによって加熱される形状が円形である場合は、切れ込み部もそれと同一の円形の輪郭を有するように形成され、加熱される形状が矩形である場合は、切れ込み部もそれと同一形状の輪郭を有するように形成されるものである。
なお、本発明においては、ホットスタンプによって加熱される形状は円形、矩形に特に制限されるものではなく、多角形、星型のような鋭角の凹みのある形、文字形、その他不定形も含み、転写箔に同一形状の輪郭を有する切れ込み部を作成することができる形ならば、自由に設定することができる。
【0033】
本発明において切れ込み部が面内方向に形成されている態様としては、たとえば、実線状に形成された態様であってもよく、あるいは、点線状に形成された態様であってもよい。また、上記切れ込み部が実線状あるいは点線状に形成されている場合は、本発明における切れ込み部は複線状に形成されていることが好ましい。これにより、例えば、本工程において上記ホットスタンプによって加熱される領域の外周と上記体積ホログラム層転写箔に形成された切れ込み部とがわずかにずれてしまった場合であっても、体積ホログラム層の転写性が損なわれることを防止できるからである。
【0034】
ここで、本発明において切れ込み部が複線状に形成されていることにより、被転写体へ体積ホログラム層を転写する際に、ホットスタンプと体積ホログラム層転写箔の相互位置にずれが生じたとしても、体積ホログラム層の転写性が損なわれることを防止できる理由について図を参照しながら具体的に説明する。図4(a)に例示するように切れ込み部4が単線状に形成されていると、切れ込み部4とホットスタンプによって加熱される領域Aの外周とを、完全に一致させるには高度の位置制御が要求されることになる。そして、ホットスタンプによって加熱される領域Aの外周する位置が、切れ込み部4が形成された位置とわずかにずれてしまうと、体積ホログラム層を転写する始点がずれてしまうため、体積ホログラム層の転写性が損なわれてしまうおそれがある。
しかしながら、図4(b)に例示するように、切れ込み部4が複線状に形成されていると、ホットスタンプによって加熱される領域Aの外周と切れ込み部4の位置が配置される位置にバラツキが生じたとしても、複線状に形成されたいずれかの切れ込み部4にホットスタンプによって加熱される領域Aの外周が位置されるようにできる。このため、ホットスタンプと体積ホログラム層転写箔の相互位置にずれが生じたとしても、体積ホログラム層の転写性が損なわれることを防止できるのである。
【0035】
本発明において、切れ込み部が複線状に形成されている態様としては、例えば、複数の実線状の切れ込み部が一組となって形成されている態様や、複数の点線状の切れ込み部が一組となって形成されている態様や、実線状の切れ込み部と点線状の切れ込み部と一組となって形成されている態様等を挙げることができる。本発明においてはこれらのいずれの態様であっても好適に用いることができる。
【0036】
ここで、切れ込み部が複線状に形成されている態様が、複数の点線状の切れ込み部が一組となって形成されている態様である場合、被転写体へ体積ホログラム層を転写する際に、ホットスタンプと体積ホログラム層転写箔の相互位置にずれが生じたとしても、体積ホログラム層の転写性が損なわれることをさらに防止できる。その理由について、図を参照しながら説明する。
図5は、上記切れ込み部が複数の点線状の切れ込み部が一組となって形成されている場合の利点を説明する概略図である。図5(a)に例示するように、ホットスタンプによって加熱される領域の外周が、切れ込み部4に対して斜めに配置されてしまった場合、実線状の切れ込み部4の場合は、体積ホログラム層を転写する際に切れ込み部4が形成されていない部位が破断されることになるため、体積ホログラム層の破断不良が生じてしまう可能性がある。
しかしながら、図5(b)に例示するように切れ込み部4が複数の点線状の切れ込み部が一組となって形成されている場合は、ホットスタンプによって加熱される領域の外周が、切れ込み部4に対して斜めに配置されてしまった場合であっても、隣接する切れ込み部4が互いに連結されることにより、体積ホログラム層を転写する際に切れ込み部4が形成されていない部位が破断されることを少なくすることができる。
このため、ホットスタンプと体積ホログラム層転写箔の相互位置にずれが生じたとしても、体積ホログラム層の転写性が損なわれることを防止できるのである。
【0037】
ここで、切れ込み部が複線状に形成されている態様が、複数の点線状の切れ込み部が一組となって形成されている態様である場合、一組として形成されている個々の切れ込み部の点線のピッチはすべて同一であってもよく、あるいは、異なっていてもよい。
【0038】
なお、切れ込み部が複線状に形成されている場合、一組に形成される切れ込み部の数は特に限定されるものではなく、本工程においてヒートシール層がホットスタンプによって加熱される形状等に応じて任意に決定することができる。また、切れ込み部が複線状に形成されている場合、一組に形成された切れ込み部内における複数の切れ込み部の間隔は、0.1mm〜2mmの範囲内であることが好ましい。
【0039】
(2)体積ホログラム層
次に、本工程に用いられる体積ホログラム層転写箔に形成された体積ホログラム層について説明する。本発明における体積ホログラム層は、体積ホログラムが記録されたものであり、本発明によって体積ホログラム積層体を製造する際に被転写体へ転写されるものである。また、本発明における体積ホログラム層は、少なくとも一部を切断するように切れ込み部が形成されているものである。
以下、このような体積ホログラム層について詳細に説明する。
【0040】
a.構成材料
本発明に用いられる体積ホログラム層を構成する材料としては、体積ホログラムを記録することができるものであれば特に限定されるものではなく、一般的に体積ホログラムに用いられる材料を任意に用いることができる。このような材料としては、例えば、銀塩材料、重クロム酸ゼラチン乳剤、光重合性樹脂、光架橋性樹脂等の公知の体積ホログラム記録材料が挙げることできるが、なかでも本発明においては、(i)バインダー樹脂、光重合可能な化合物、光重合開始剤および増感色素を含有する第1の感光材料、または、(ii)カチオン重合性化合物、ラジカル重合性化合物、光ラジカル重合開始剤系および光カチオン重合開始剤系を含有する第2の感光材料を好適に用いることができる。
以下、このような第1の感光材料および第2の感光材料について順に説明する。
【0041】
(第1の感光材料)
まず、上記第1の感光材料について説明する。上述したように第1の感光材料はバインダー樹脂、光重合可能な化合物、光重合開始剤および増感色素を含有するものである。
【0042】
上記バインダー樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、またはその部分加水分解物、ポリ酢酸ビニルまたはその加水分解物、アクリル酸、アクリル酸エステル等の共重合可能なモノマー群の少なくとも1つを重合成分とする共重合体、またはそれらの混合物や、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリビニルアルコールの部分アセタール化物であるポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等、またはそれらの混合物等を挙げることができる。ここで、体積ホログラム層を形成する際には、記録された体積ホログラムを安定化するために、加熱してモノマーを移動させる工程が実施される場合がある。このため、本発明に用いられるバインダー樹脂はガラス転移温度が比較的低く、モノマー移動が容易に移動できるものであることが好ましい。
【0043】
上記光重合可能な化合物としては、後述するような1分子中に少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合、光架橋可能なモノマー、オリゴマー、プレポリマーおよびそれらの混合物を用いることができる。具体例としては、不飽和カルボン酸およびその塩、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド化合物等を挙げることができる。
【0044】
ここで、上記不飽和カルボン酸のモノマーの具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等を挙げることができる。また上記脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、例えば、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート等を挙げることができる。
【0045】
上記メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート等を挙げることができる。また、上記イタコン酸エステルとしてはエチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート等を挙げることができる。また、上記クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラクロトネート等を挙げることができる。さらに上記イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等を挙げることができる。さらにまた、上記マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレエート、トリエチレングリコールジマレエート、ペンタエリスリトールジマレエート、ソルビトールテトラマレエート等を挙げることができる。
【0046】
上記ハロゲン化不飽和カルボン酸としては、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート、1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルアクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート等を挙げることができる。
また、上記不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビスアクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビスメタクリルアミド等を挙げることができる。
【0047】
本発明に用いられる光重合開始剤としては、例えば、1,3−ジ(t−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3´,4,4´−テトラキス(t−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、N−フェニルグリシン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、3−フェニル−5−イソオキサゾロン、2−メルカプトベンズイミダゾール、また、イミダゾール二量体類等を挙げることができる。なかでも本発明に用いられる光重合開始剤は、記録された体積ホログラムの安定化の観点から、ホログラム記録後に分解処理されるものが好ましい。例えば有機過酸化物系にあっては紫外線照射することにより容易に分解されるので好ましい。
【0048】
本発明に用いられる増感色素としては、チオピリリウム塩系色素、メロシアニン系色素、キノリン系色素、スチリルキノリン系色素、ケトクマリン系色素、チオキサンテン系色素、キサンテン系色素、オキソノール系色素、シアニン染料、ローダミン染料、チオピリリウム塩系色素、ピリリウムイオン系色素、ジフェニルヨードニウムイオン系色素等を挙げることができる。
【0049】
b.第2の感光材料
次に、本発明に用いられる第2の感光材料について説明する。上述したように第2の感光材料は、カチオン重合性化合物、ラジカル重合性化合物、光ラジカル重合開始剤系、および、カチオン重合開始剤系を含有するものである。
【0050】
ここで、このような第2感光材料が用いられる場合、体積ホログラム層に体積ホログラムが記録する方法としては、光ラジカル重合開始剤系が感光するレーザー光等の光を照射し、次いで、光カチオン重合開始剤系が感光する上記レーザー光とは別の波長の光を照射する方法が用いられることになる。
【0051】
上記カチオン重合性化合物としては、ラジカル重合性化合物の重合が比較的低粘度の組成物中で行われることが好ましいという点から、室温で液状のものが好適に用いられる。このようなカチオン重合性化合物としては、例えば、ジグリセロールジエーテル、ペンタエリスリトールポリジグリシジルエーテル、1,4−ビス(2,3−エポキシプロポキシパーフルオロイソプロピル)シクロヘキサン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等を挙げることができる。
【0052】
上記ラジカル重合性化合物としては、分子中に少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を有するものが好ましい。また、本発明に用いられるラジカル重合性化合物の平均屈折率は、上記カチオン重合性化合物の平均屈折率より大きいことが好ましく、なかでも0.02以上大きいことが好ましい。これは、ラジカル重合性化合物とカチオン重合性化合物との屈折率の差によって、体積ホログラムが形成されることによるものである。したがって、平均屈折率の差が上記値以下である場合には、屈折率変調が不十分となるからである。本発明に用いられるラジカル重合性化合物としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチレン、2−ブロモスチレン、フェニルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、2,3−ナフタレンジカルボン酸(アクリロキシエチル)モノエステル、メチルフェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシエチルアクリレート、β−アクリロキシエチルハイドロゲンフタレート等を挙げることができる。
【0053】
本発明に用いられる光ラジカル重合開始剤系としては、体積ホログラムを記録する際に、第1露光によって活性ラジカルを生成し、該活性ラジカルがラジカル重合性化合物を重合させることができるものであれば特に限定されるものではない。また、一般に光を吸収する成分である増感剤と活性ラジカル発生化合物や酸発生化合物を組み合わせて用いてもよい。このような光ラジカル重合開始剤系における増感剤は可視レーザー光を吸収するために色素のような有色化合物が用いられる場合が多いが、無色透明ホログラムとする場合には、シアニン系色素の使用が好ましい。シアニン系色素は一般に光によって分解しやすいため、本発明における後露光、または室内光や太陽光の下に数時間から数日放置することでホログラム中の色素が分解されて可視域に吸収を持たなくなり、無色透明な体積ホログラムを得ることができるからである。
【0054】
上記シアニン系色素の具体例としては、アンヒドロ−3,3´−ジカルボキシメチル−9−エチル−2,2´チアカルボシアニンベタイン、アンヒドロ−3−カルボキシメチル−3´,9´−ジエチル−2,2´チアカルボシアニンベタイン、3,3´,9−トリエチル−2,2´−チアカルボシアニン・ヨウ素塩、3,9−ジエチル−3´−カルボキシメチル−2,2´−チアカルボシアニン・ヨウ素塩、3,3´,9−トリエチル−2,2´−(4,5,4´,5´−ジベンゾ)チアカルボシアニン・ヨウ素塩、2−[3−(3−エチル−2−ベンゾチアゾリデン)−1−プロペニル]−6−[2−(3−エチル−2−ベンゾチアゾリデン)エチリデンイミノ]−3−エチル−1,3,5−チアジアゾリウム・ヨウ素塩、2−[[3−アリル−4−オキソ−5−(3−n−プロピル−5,6−ジメチル−2−ベンゾチアゾリリデン)−エチリデン−2−チアゾリニリデン]メチル]3−エチル−4,5−ジフェニルチアゾリニウム・ヨウ素塩、1,1´,3,3,3´,3´−ヘキサメチル−2,2´−インドトリカルボシアニン・ヨウ素塩、3,3´−ジエチル−2,2´−チアトリカルボシアニン・過塩素酸塩、アンヒドロ−1−エチル−4−メトキシ−3´−カルボキシメチル−5´−クロロ−2,2´−キノチアシアニンベタイン、アンヒドロ−5,5´−ジフェニル−9−エチル−3,3´−ジスルホプロピルオキサカルボシアニンヒドロキシド・トリエチルアミン塩等が挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0055】
上記活性ラジカル発生化合物としては、例えば、ジアリールヨードニウム塩類、あるいは2,4,6−置換−1,3,5−トリアジン類が挙げられる。高い感光性が必要なときは、ジアリールヨードニウム塩類の使用が特に好ましい。上記ジアリールヨードニウム塩類の具体例としては、ジフェニルヨードニウム、4,4´−ジクロロジフェニルヨードニウム、4,4´−ジメトキシジフェニルヨードニウム、4,4´−ジターシャリーブチルジフェニルヨードニウム、3,3´−ジニトロジフェニルヨードニウムなどのクロリド、ブロミド、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサフルオロアンチモネート、トリフルオロメタンスルホン酸塩、9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホン酸塩などが例示される。又2,4,6−置換−1,3,5−トリアジン類の具体例としては、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)ー1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(p−メトキシフェニルビニル)−1,3,5−トリアジン、2−(4´−メトキシ−1´−ナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0056】
本発明に用いられる光カチオン重合開始剤系としは、体積ホログラムが記録される際の第1露光に対しては低感光性で、第1露光と異なる波長の光を照射する後露光に感光してブレンステッド酸あるいはルイス酸を発生し、カチオン重合性化合物を重合させるような開始剤系であれば特に限定されるものではない。なかでも本発明においては第1露光の間はカチオン重合性化合物を重合させないものが用いられることが特に好ましい。このような光カチオン重合開始剤系としては、例えばジアリールヨードニウム塩類、トリアリールスルホニウム塩類、鉄アレン錯体類等が挙げられる。ジアリールヨードニウム塩類で好ましいものとしては上述した光ラジカル重合開始剤系で示したヨードニウムのテトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサフルオロアンチモネートなどが挙げられる。トリアリールスルホニウム塩類で好ましいものとしては、トリフェニルスルホニウム、4−ターシャリーブチルトリフェニルスルホニウム等が挙げられる。
【0057】
第2の感光材料には、必要に応じてバインダー樹脂、熱重合防止剤、シランカップリング剤、可塑剤、着色料等を併用してもよい。バインダー樹脂は、ホログラム形成前の組成物の成膜性、膜厚の均一性を改善する場合や、レーザー光等の光の照射による重合で形成された干渉縞を後露光までの間、安定に存在させるために使用される。バインダー樹脂は、カチオン重合性化合物やラジカル重合性化合物と相溶性のよいものであればよく、例えば塩素化ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレートと他の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合体、塩化ビニルとアクリロニトリルの共重合体、ポリ酢酸ビニル等が挙げられる。バインダー樹脂は、その側鎖又は主鎖にカチオン重合性基等の反応性を有していてもよい。
【0058】
c.その他
本発明に用いられる体積ホログラム層の厚みは、所定の体積ホログラム層を形成することができる範囲内であれば特に限定されるものではなく、上述した構成材料の種類に応じて適宜調整することができる。なかでも本発明に用いられる体積ホログラム層の厚みは、1μm〜50μmの範囲内であることが好ましく、特に3μm〜25μmの範囲内であることが好ましい。
なお、本発明においては体積ホログラム層の少なくとも一部を切断するように上記切れ込み部が形成されていることから、厚みに関わらず転写特性の良好な体積ホログラム層を得ることができる。
【0059】
(3)ヒートシール層
次に、本工程に用いられる体積ホログラム層転写箔に形成されたヒートシール層について説明する。本発明におけるヒートシール層は熱可塑性樹脂を含有するものであり、本発明によって体積ホログラム積層体を製造する際に、体積ホログラム層と被転写体とを接着させる機能を有するものである。
【0060】
上記ヒートシール層に用いられる熱可塑性樹脂としては、加熱されることによって可塑化され、体積ホログラム層転写箔から体積ホログラム層が転写される被転写体の種類に応じて、体積ホログラム層と被転写体とを接着できるものであれば特に限定されるものではない。
【0061】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン−イソブチルアクリレート共重合樹脂、ブチラール樹脂、ポリ酢酸ビニルおよびその共重合体樹脂、アイオノマー樹脂、酸変性ポリオレフィン系樹脂、アクリル系・メタクリル系などの(メタ)アクリル系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリメチルメタクリレート系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビニル系樹脂、マレイン酸樹脂、アルキッド樹脂、ポリエチレンオキサイド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、メラミン・アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、ゴム系樹脂、スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(SBS)、スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(SIS)、スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEPS)等を挙げることができる。本発明においてはこれらのいずれの熱可塑性樹脂であっても好適に用いることができる。
【0062】
なお、本発明に用いられる熱可塑性樹脂は1種類のみであってもよく、あるいは、2種類以上であってもよい。
【0063】
本発明に用いられるヒートシール層には、上記熱可塑性樹脂以外に他の添加剤が含まれていてもよい。本発明に用いられる添加剤としては、例えば、分散剤、充填剤、可塑剤、帯電防止剤等を挙げることができる。
【0064】
本発明に用いられるヒートシール層の厚みは特に限定されるものではなく、本発明によって製造される体積ホログラム積層体の種類や、本工程に用いられる被転写体の種類等によって適宜選択されるものであるが、通常、1μm〜50μmの範囲内であることが好ましく、なかでも1μm〜25μmの範囲内であることが好ましい。厚みが上記範囲よりも薄いと被転写体との接着性が不十分になってしまう可能性があるからである。また上記範囲よりも厚いと、体積ホログラム層転写箔から体積ホログラム層を転写する際に、ヒートシール層を加熱する温度が高くなりすぎてしまい、基材等に損傷が生じてしまう可能性があるからである。
【0065】
(4)基材
次に、本工程に用いられる体積ホログラム層転写箔に用いられる基材について説明する。本発明に用いられる基材は、上述した体積ホログラム層およびヒートシール層を支持する機能を有するものである。
【0066】
本発明に用いられる基材としては、上記体積ホログラム層およびヒートシール層を支持できるものであれば特に限定されるものではない。このような基材の具体例としては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリフッ化エチレン系フィルム、ポリフッ化ビニリデンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリアミドフィルム、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム等の樹脂フィルム等を挙げることができる。
【0067】
また、本発明に用いられる基材の厚みは、通常2μm〜200μm、好ましくは10μm〜50μmの範囲内とされる。
【0068】
(5)任意の構成
本工程に用いられる体積ホログラム層転写箔は少なくとも上記基材、体積ホログラム層、およびヒートシール層を有し、少なくとも上記体積ホログラム層に切れ込み部が形成されたものであるが、本工程に用いられる体積ホログラム層転写箔には必要に応じてこれら以外の任意の構成を用いることができる。本発明に用いられる任意の構成は特に限定されるものではなく、本発明によって製造する体積ホログラム積層体の用途等に応じて適宜選択して用いることができる。なかでも本発明に好適に用いられる任意の構成としては、上記基材と上記体積ホログラム層との間に形成される剥離性保護層を挙げることができる。
【0069】
上記体積ホログラム層転写箔に剥離性保護層が用いられる場合について図を参照しながら説明する。図6は本工程に用いられる体積ホログラム層転写箔に剥離性保護層が用いられている場合の一例を示す概略断面図である。図6に例示するように、本工程に用いられる体積ホログラム層転写箔10は、基材1と、体積ホログラム層2との間に剥離性保護層5が形成されていてもよい。
【0070】
上記体積ホログラム層転写箔に剥離性保護層が用いられることにより、次の2つの点において有利な効果が得られる。
まず第1に、上記剥離性保護層が用いられることにより、基材と体積ホログラム層とを接着力を任意の範囲に調整することができるため、上記体積ホログラム層転写箔から体積ホログラム層を転写させる際に、体積ホログラム層の基材からの剥離性を向上させることができる。
第2に、上記剥離性保護層が用いられることにより、上記体積ホログラム層転写箔を用いて被転写体に体積ホログラム層を転写した際に、体積ホログラム層の表面を剥離性保護層によって覆うことができるため、転写された体積ホログラム層を保護することができる。
【0071】
なお、図6においては、切れ込み部が剥離性保護層を切断するように形成されている例を挙げたが、本発明に剥離性保護層が用いられる態様はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、切れ込み部が剥離性保護層を切断しないように形成されていてもよい。
【0072】
本発明に用いられる剥離性保護層に用いられる材料としては、例えばポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系およびメタアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、シリコーン樹脂、塩化ゴム、カゼイン、各種界面活性剤、金属酸化物等の1種または2種以上混合したもの等を挙げることができる。
【0073】
上記剥離性保護層以外に、本発明に用いられる任意の構成としては、例えば、体積ホログラム層とヒートシール層との接着性、あるいは、体積ホログラム層と、上記剥離性保護層との接着性を向上させるために用いられるプライマー層を挙げることができる。このようなプライマー層としては、例えば、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、エチレンと酢酸ビニルあるいはアクリル酸等との共重合体、エポキシ樹脂等が用いられたものを挙げることができる。
【0074】
また本発明においては上記任意の構成として、上記体積ホログラム層とヒートシール層との間にバリア層が形成されてもよい。体積ホログラム層に用いられる感光材料やヒートシール層に用いられる熱可塑樹脂の組み合わせによっては、経時的に体積ホログラム層から他の層への低分子量成分の移行が起こり、これに起因して体積ホログラム層に記録された体積ホログラムの再生波長が青側(短波長側)に移行してしまう場合があるが、バリア層を設けることによって、このような問題を解消することができるからである。
【0075】
バリア層に用いられる材料としては、所望のバリア性を発現できる材料であれば特に限定されるものではないが、通常、透明性有機樹脂材料が用いられる。本発明に用いられる透明性有機樹脂材料としては、例えば、無溶剤系の3官能以上、好ましくは6官能以上の、紫外線や電子線等の電離放射線に反応する電離放射線硬化性エポキシ変性アクリレート樹脂、ウレタン変性アクリレート樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂等を挙げることができる。
【0076】
2.加熱接着方法
次に、本工程において上記体積ホログラム層転写箔と、被転写体とを加熱接着する方法について説明する。上述したように本工程においては、上記体積ホログラム層転写箔を用い、被転写体を上記体積ホログラム層転写箔のヒートシール層上に配置し、ホットスタンプによって上記ヒートシール層の一部を加熱することにより、上記ヒートシール層の加熱された領域と上記被転写体とを接着させるものである。そして、本工程における加熱接着方法は、上記ホットスタンプによって加熱される領域の外周と上記体積ホログラム層転写箔に形成された切れ込み部とが一致するように、上記ヒートシール層を加熱するものである。
【0077】
本工程に用いられるホットスタンプとしては、上記体積ホログラム層転写箔のヒートシール層の一部を所望の形状に加熱することができるものであれば特に限定されるものではない。上記ホットスタンプによって加熱される領域の形状としては、本発明によって製造される体積ホログラム積層体の種類や、上記体積ホログラム層に記録された図柄等に応じて適宜決定することができるものであり、特に限定されるのではない。したがって、例えば、円形、矩形、および星型等のあらゆる形状とすることができる。
なお、ホットスタンプとしては、一般的に公知のものを用いることができるため、ここでの詳しい説明は省略する。
【0078】
本工程に用いられる被転写体としては、上記体積ホログラム層転写箔が備えるヒートシール層を介して上記転写箔と接着させることが可能なものであれば特に限定されるものではなく、本発明によって製造される体積ホログラム積層体の用途等に応じて任意に選択して用いることができる。本工程に用いられる被転写体としては、例えば、冊子や商品券などに使われる紙や各種カード、フィルム、布等を挙げることができる。
【0079】
本工程における加熱接着方法は、上記ホットスタンプによって加熱される領域の外周と上記体積ホログラム層転写箔に形成された切れ込み部とが一致するように上記ヒートシール層を加熱するものであるが、上記ホットスタンプによって加熱される領域の外周と上記体積ホログラム層転写箔に形成された切れ込み部とが一致する程度としては、体積ホログラム層の剥離不良が生じない範囲であれば特に限定されるものではない。中でも本工程においては、上記ホットスタンプによって加熱される領域の境界と上記体積ホログラム層転写箔に形成された切れ込み部との距離が1mm以下であることが好ましく、0.5mm以下であることがより好ましく、0.3mm以下であることが特に好ましい。
【0080】
本工程においては、加熱接着に際して上記ホットスタンプによって加熱される領域の境界と上記体積ホログラム層転写箔に形成された切れ込み部とを所望の程度に一致させるために、上記ホットスタンプおよび上記体積ホログラム層転写箔の位置を調整する位置調整工程を有することが好ましい。このような位置調整工程を有することにより、加熱接着工程において、上記ホットスタンプによって加熱される領域の外周を、上記切れ込み部と確実に一致させることができるため、本発明の体積ホログラム積層体の製造方法において、体積ホログラム層の破断不良が生じることをより確実に防止することができるからである。
【0081】
本工程に用いられる上記位置調整工程としては、ホットスタンプによって加熱される領域の外周の位置と、上記切れ込み部の位置とを所望の程度に一致させることができるものであれば特に限定されるものではない。このような位置調整工程としては、たとえば、上記体積ホログラム層転写箔として位置検知用マークが形成されたものを用い、当該位置検知用マークが形成された位置を基準として、上記ホットスタンプおよび体積ホログラム層転写箔の相互の位置を調整する工程等を挙げることができる。
【0082】
位置検知用マークとしては、光学読み取り可能なマークが挙げられる。このような光学読み取り可能なマークは、転写箔のあらゆる層の間に各種印刷方法で設けることも可能であるし、ホログラム層にホログラフィックな方法で設けることも可能である。光学読み取り可能なマークとは、遮光型と反射型とがある。遮光型としてはマーク以外のところと透過率の異なる、不透明、あるいは半透明マーク、具体的には黒マーク、白マークなどが挙げられる。また、反射型としてはマーク以外のところと反射率の異なる、黒マーク、白マーク、ミラーマーク、ホログラムマークなどが挙げられる。
また、上記黒マーク作製時や、切れ込み作製工程や、ホットスタンプによる転写工程などの各種工程中において、EPC(ELECTRIC POSITION CONTROL)装置を利用することも有効である。EPC装置とは、フイルムの端部位置をセンサーで検知し、フィルムの幅方向の位置を常に一定に制御する装置である。EPC装置を用いることで、フィルム搬送時の幅方向のズレや、フィルムの蛇行を防止することができる。その精度は、通常±0.2mm程度である。
【0083】
第2 基材剥離工程
次に、本発明に用いられる基材剥離工程について説明する。上述したように本工程は、上記体積ホログラム層転写箔の基材を剥離する工程である。より具体的には、上記加熱接着工程において上記ヒートシール層と上記被転写体とが接着された領域の基材を剥離する工程である。
【0084】
本工程において基材を剥離する方法としては、上記被転写体と接着された領域のみの基材を剥離することができる方法であれば特に限定されるものではない。通常は、体積ホログラム層転写箔を被転写体から物理的に引き離すことによって剥離する方法が用いられる。本工程においては、被転写体と接着された領域の端部と切れ込み部が形成された位置とが一致していることから、このような方法で剥離する場合であっても、体積ホログラム層の破断不良が生じることなく、良好な転写を実施することができる。
【0085】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0086】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の実施態様は以下の実施例に限定されるものではない。
【0087】
[実施例1]
(第1積層体)
第1のフィルムとしてPETフィルム(ルミラーT60(50μm):東レ(株)製)を準備し、体積ホログラム層形成材料として、下記組成からなる体積ホログラム記録材料を、乾燥膜厚7μmとなるようにグラビアコートにて塗工し、塗工面に表面離型処理PETフィルム(「SP−PET」50μm、トーセロ(株)製)をラミネートし、第1積層体を作製した。
【0088】
<体積ホログラム記録材料の組成>
・バインダー樹脂(ポリメチルメタクリレート系樹脂(分子量200,000))
50重量部
・3,9−ジエチル−3’−カルボキシルメチル−2,2’−チアカルボシアニン沃素塩 0.5重量部
・ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート 6重量部
・2,2−ビス(4−(アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン
80重量部
・1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル 80重量部
・フッ素系微粒子 8重量部
・溶剤(メチルイソブチルケトン/n−ブタノール=1/1(重量比)
200重量部
【0089】
(基材/保護層の第2積層体)
第2のフィルムとしてPETフィルム(ルミラーT60(50μm):東レ(株)製)を準備し、剥離性保護層として、下記組成からなる材料を、乾燥膜厚1μmとなるようにグラビアコートにて塗工した。
【0090】
<剥離性保護層形成用材料の組成>
・ポリメチルメタクリレート樹脂(分子量;35000) 97重量部
・ポリエチレンワックス(分子量;10000、平均粒径;5μm)
3重量部
・溶剤(メチルエチルケトン/トルエン=1/1(重量比))
400重量部
【0091】
(体積ホログラムの記録)
第1のフィルム/体積ホログラム記録用材料の層/表面離型処理PETフィルムの積層体に波長;532nmのレーザー光を用いてリップマンホログラムを撮影し記録した。記録後、この積層体を100℃の雰囲気中で10分間加熱し、加熱後表面離型処理済PETフィルムを剥離して露出させた体積ホログラム記録用材料の層に、第2のフィルム/保護層の積層体の保護層側が接するようにして重ね、ニップした80℃の熱ローラー対の間を通過させて、第1のフィルム/体積ホログラム層/保護層/第2のフィルムの積層体を得た後、高圧水銀灯を用いて、全面に照射線量;2500mJ/cmの紫外線を照射して、体積ホログラム記録用材料の層の定着を行った。
【0092】
(ヒートシール層の塗工)
上記で作製した第1のフィルム/体積ホログラム層/保護層/第2のフィルムの第1のフィルムを剥離し体積ホログラム層上に下記組成からなる材料を、乾燥膜厚4μmとなるようにグラビアコートにて塗工した。
【0093】
<ヒートシール層形成用材料の組成>
・ポリエステル樹脂(バイロン550 TOYOBO製 Tg:−15℃ 分子量28000) 20重量部
・溶剤(メチルエチルケトン/トルエン=1/1(重量比)) 80重量部
【0094】
(切れ込み部の作製)
上記によって作製したホログラム転写箔のヒートシール面から抜き加工機(OPM−HL300−S 恩田製作所製)を用い、フィルムに切れ込みを入れた。垂直切れ込みの形態として、(1)直径3cmの円形の連続した切れ込み(2)直径3cmの円形の切れ込みであって、1.5mm間隔の破線状のもの(3)直径2.9cm、直径3cm、直径3.1cmの同心円状の連続した切れ込み、を入れたものを作製した。
【0095】
(熱転写)
(1)から(3)の切れ込みを入れた体積ホログラム転写箔について、ナビタス社製ホットスタンピング・マシンV−80Cを用い塩化ビニルカードへ転写評価を行った。直径3cmの円形の押し型を使用し、押し型の外周と転写箔の切れ込み部が一致するように、慎重に目視にて位置あわせを行った。転写温度150℃、圧力0.6MPaでホットスタンプするといずれの場合も、きれいに直径3cmの円状に転写することが出来た。この際の押し型と外周と転写箔の切れ込み部のずれ幅は、最大で0.9mmであった。
【0096】
[実施例2]
実施例1において、(ヒートシール層の塗工)工程と(切れ込み部の作製)工程の順番を入れ替えた以外は、実施例1と同様に転写箔を作製した。実施例1と同様にホットスタンプを行うと、いずれの場合も問題なくきれいに転写することができた。この際の押し型の外周と転写箔の切れ込み部のずれ幅は、最大で0.9mmであった。
【0097】
[実施例3]
実施例1において、転写箔の体積ホログラム層と反対側の基材面上に、自動位置あわせ用の1cm角の黒マークを切れ込み位置に対応した場所に、印刷法にて設けた。それ以外は、実施例1と同様に転写箔を作製した。実施例1と同じホットスタンピング・マシンを用いて転写評価を行った。ホットスタンピング・マシンに、光学センサにより制御された、箔巻きだし・巻取り制御部を装着した。光学センサにより、転写箔の黒マークを読み取ることにより、自動で箔の搬送を制動することができるもので、黒マーク読み取りにより箔の搬送が停止したときに、押し型の直下に切れ込み部が重なるようプログラミングを行った。また、EPC装置も併用して転写箔の幅方向の搬送ずれを防止した。転写温度150℃、圧力0.6MPaでホットスタンプするといずれの場合もきれいに直径3cmの円状に転写することが出来た。また、2秒毎に1回の連続転写が可能であった。この際の押し型と外周と転写箔の切れ込み部のずれ幅は、最大で0.5mmであった。
【0098】
[実施例4]
実施例3において、切れ込み部の形を以下のようなものを用いた。(4)一片の長さが1cm、頂角の角度が25℃の星型で、連続した切れ込み(5)一片の長さが1cm、頂角の角度が25℃の星型で、1.5mm間隔の破線状のものを用意した。また、(切れ込み部の作製)工程の中でEPC装置を用い、切れ込み円の中心が転写箔の中心ラインに正確に位置するように、箔の搬送を制御した。それ以外は、実施例3と同様に黒マーク付きの転写箔を作製した。一片の長さが1cm、頂角の角度が25℃の星型の押し型を用い、EPC装置も併用して転写箔の幅方向の搬送ずれを防止した以外は、実施例3と同様に転写評価を行った。いずれの場合もきれいに星型に転写することが出来た。また、2秒毎に1回の連続運転が可能であった。この際の押し型と外周と転写箔の切れ込み部のずれ幅は、最大で0.3mmであった。
【0099】
[比較例1]
実施例1と同様の転写箔を用い、実施例1と同じホットスタンピング・マシンをもちいて転写評価を行った。この際に、押し型の外周と転写箔の切れ込み部の位置あわせは特段おこなわずに転写を行った。いずれの場合も箔切れ不良が生じ、きれいに転写することができなかった。この際の押し型の外周と転写箔の切れ込み部のずれ幅は、最大で1.5mmであった。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の体積ホログラム積層体の製造方法の一例を示す概略図である。
【図2】本発明における加熱接着工程の一例を示す概略図である。
【図3】本発明に用いられる体積ホログラム層転写箔の一例を示す概略図である。
【図4】切れ込み部が複線状に形成されていることの利点を説明する概略図である。
【図5】切れ込み部が点線状の複線状に形成されていることの利点を説明する概略図である。
【図6】本発明に用いられる体積ホログラム層転写箔の他の例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0101】
1 … 基材
2 … 体積ホログラム層
3 … ヒートシール層
4 … 切れ込み部
5 … 剥離性保護層
10 … 体積ホログラム層転写箔
20 … 被転写体
30 … 体積ホログラム積層体
A … ホットスタンプによって加熱される領域
X … ホットスタンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材上に形成され、体積ホログラムが記録された体積ホログラム層と、前記体積ホログラム層上に形成され、熱可塑性樹脂を含有するヒートシール層とを有し、かつ前記体積ホログラム層の少なくとも一部が切断されるように形成された切れ込み部を有する体積ホログラム層転写箔を用い、被転写体を前記ヒートシール層上に配置し、ホットスタンプによって前記ヒートシール層の一部を加熱することにより、前記ヒートシール層の加熱された領域と前記被転写体とを接着させる加熱接着工程と、
前記体積ホログラム層転写箔の基材を剥離する基材剥離工程と、を有することを特徴とする体積ホログラム積層体の製造方法であって、
前記切れ込み部が、前記加熱接着工程において前記ヒートシール層が前記ホットスタンプによって加熱される形状と同一形状の輪郭を有するように形成されており、かつ、前記加熱接着工程が前記ホットスタンプによって加熱される領域の外周と前記切れ込み部とが一致するように、前記ヒートシール層を加熱するものであることを特徴とする、体積ホログラム積層体の製造方法。
【請求項2】
前記加熱接着工程が、前記ホットスタンプによって加熱される領域の外周と、前記切れ込み部とが一致するように、前記ホットスタンプおよび前記体積ホログラム層転写箔の位置を調整する、位置調整工程を有することを特徴とする、請求項1に記載の体積ホログラム積層体の製造方法。
【請求項3】
前記切れ込み部が、複線状に形成されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の体積ホログラム層転写箔。
【請求項4】
前記切れ込み部が点線状に形成されていることを特徴とする、請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の体積ホログラム層転写箔。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−122601(P2010−122601A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−298053(P2008−298053)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】