説明

体積変化吸収器、X線発生器およびX線撮影装置

【課題】構成が単純で適用範囲が広い体積変化吸収器、そのような体積変化吸収器を有するX線発生器、および、そのようなX線発生器を備えたX線撮影装置を実現する。
【解決手段】体積変化吸収器(300)は、液体が封入される容器の壁を貫通して気密に取り付け可能な剛性のパイプ状部材(310)と、前記パイプ状部材の前記容器の内側となる部分の端部を気密に覆うように一端部が取り付けられ他端部が押し潰し状態で封止された可撓性のチューブ(330)とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体積変化吸収器、X線発生器およびX線撮影装置に関し、特に、容器内の液体の体積変化を吸収する体積変化吸収器、そのような体積変化吸収器を有するX線発生器、および、そのようなX線発生器を備えたX線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線撮影用のX線発生器では、X線管と高電圧回路とが絶縁性の液体とともに密閉容器内に封入されている。封入された液体は、X線管や高電圧回路が発生する熱を容器に伝えて放熱性を行わせる。X線管や高電圧回路の発熱にともなう温度変化によって液体の体積が変化するので、それを吸収するために、体積変化吸収器が容器に設けられる。体積変化吸収器は、例えば、合成ゴム等を材料とする可撓性の筒であり、このような筒の柔軟な変形によって液体の体積変化が吸収される(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】米国特許第6,814,488号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
体積変化吸収器はモールド(mold)部品を主体として構成されるが、適用対象のX線発生器ごとに特化されているので、形状や寸法が様々である。このため、それ相当の製造設備ないし製造技術が要求され、しかも完成までのリードタイム(lead time)が長い。また、複雑な形状を持つ体積変化吸収器は、完成検査のための項目や工数も多く、変形時の複雑なストレス(stress)により信頼性や寿命が損なわれ易い。
【0004】
そこで、本発明の課題は、構成が単純で適用範囲が広い体積変化吸収器、そのような体積変化吸収器を有するX線発生器、および、そのようなX線発生器を備えたX線撮影装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するひとつの観点での発明は、液体が封入される容器の壁を貫通して気密に取り付け可能な剛性のパイプ状部材と、前記パイプ状部材の前記容器の内側となる部分の端部を気密に覆うように一端部が取り付けられ他端部が押し潰し状態で封止された可撓性のチューブと、を具備することを特徴とする体積変化吸収器である。
【0006】
上記の課題を解決する他の観点での発明は、体積変化吸収器を有する容器にX線管と高電圧回路が液体とともに封入されたX線発生器であって、前記体積変化吸収器は、前記容器の壁を貫通して気密に取り付けられた剛性のパイプ状部材と、前記パイプ状部材の前記容器の内側となる部分の端部を気密に覆うように一端部が取り付けられ他端部が押し潰し状態で封止された可撓性のチューブと、を具備することを特徴とするX線発生器である。
【0007】
上記の課題を解決する他の観点での発明は、体積変化吸収器を有する容器にX線管と高電圧回路が液体とともに封入されたX線発生器と、前記X線発生器から照射されたX線を検出するX線検出器とを有するX線撮影装置であって、前記体積変化吸収器は、前記容器の壁を貫通して気密に取り付けられた剛性のパイプ状部材と、前記パイプ状部材の前記容器の内側となる部分の端部を気密に覆うように一端部が取り付けられ他端部が押し潰し状態で封止された可撓性のチューブと、を具備することを特徴とするX線撮影装置である。
【0008】
前記パイプ状部材は、前記容器の壁に内側から当接可能なフランジ部と、前記フランジ部の当接面に設けられたOリングと、前記容器の外側となる部分に外周に沿って形成され
たねじ部と、前記ねじ部に螺合して前記容器の壁に外側から当接可能なナットと、を具備することが、前記容器の壁を貫通して気密に取り付ける点で好ましい。
【0009】
前記パイプ状部材は、前記チューブの一端部がかぶさるテーパー部と、前記テーパー部との間に前記チューブの一端部を挟み込むテーパーワッシャと、前記チューブの一端部がかぶさらない部分に外周に沿って形成されたねじ部と、前記ねじ部に螺合し前記テーパーワッシャを介して前記チューブを前記テーパー部に押圧するロックナットと、を具備することが、前記容器の内側となる部分の端部を気密に覆う点で好ましい。
【発明の効果】
【0010】
上記各観点での発明によれば、体積変化吸収器は、液体が封入される容器の壁を貫通して気密に取り付け可能な剛性のパイプ状部材と、前記パイプ状部材の前記容器の内側となる部分の端部を気密に覆うように一端部が取り付けられ他端部が押し潰し状態で封止された可撓性のチューブとを具備するので、構成が単純で適用範囲が広い体積変化吸収器、そのような体積変化吸収器を有するX線発生器、および、そのようなX線発生器を備えたX線撮影装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、本発明は、発明を実施するための最良の形態に限定されるものではない。図1に、X線撮影装置の模式的構成を示す。本装置は本発明を実施するため最良の形態の一例である。本装置の構成によって、X線撮影装置に関する発明を実施するため最良の形態の一例が示される。
【0012】
図1に示すように、本装置は、X線照射装置200とX線検出装置400を有する。
X線照射装置200は、天井から垂下するコラム(column)210の先端にX線源220を取り付けて構成される。X線源220は、向きを変えてX線の照射方向を変更できるようになっている。X線源220を支持するコラム210は、長手方向に伸縮可能であり、さらに、天井に沿って水平方向に移動可能である。X線源220は、本発明におけるX線発生器の一例である。
X線検出装置400は、フロア(floor)から直立するコラム410にキャリッジ(carriage)420を昇降可能なように取り付け、キャリッジ420にアーム(arm)430を水平に取り付け、アーム430の先端部にX線検出器440を取り付けて構成される。
X線検出器440は、平板状の構造物であり、X線の入射方向に応じて受光面が水平または垂直となるように傾きが変更可能になっている。X線検出器440は、本発明におけるX線検出器の一例である。
【0013】
X線検出器440の検出信号はオペレータコンソール(operator console)600に入力される。オペレータコンソール600は、X線検出器440からの入力信号に基づき撮影対象の透視像を再構成して、ディスプレイ(display)610で表示する。なお、X線検出器440はX線によって感光する感光材料であってよい。その場合は現像処理によって透視像が可視化される。
【0014】
オペレータコンソール600は、オペレータによる操作の下で、X線照射装置200とX線検出装置400を制御する。X線照射装置200については、X線源220の水平・垂直方向の位置とX線照射方向を制御するとともに、X線強度および照射タイミング(timing)を制御する。X線検出装置400については、X線源220に合わせてX線検出器440の高さを制御するとともに、X線入射方向に合わせて受光面の傾きを水平または垂直
になるように制御する。
【0015】
図2に、X線源220の構成を模式的に示す。X線源220の構成によって、X線発生器に関する発明を実施するため最良の形態の一例が示される。図2に示すように、X線源220は、容器100の中にX線管110と高電圧回路120を液体130とともに封入したものとなっている。液体130は電気絶縁性の液体である。
【0016】
容器100は、本発明における容器の一例である。X線管110は、本発明におけるX線管の一例である。高電圧回路120は、本発明における高電圧回路の一例である。液体130は、本発明における液体の一例である。
【0017】
容器100は、X線出射用の窓102を有する。窓102は、X線を通すが液体130は通さない。容器100は、また、体積変化吸収器300を有する。体積変化吸収器300は、温度変化に伴う液体130の体積変化を吸収するものであり、容器100の壁にそれを貫通するように取り付けられている。
図3に、体積変化吸収器300の構成を模式的に示す。体積変化吸収器300の構成によって、体積変化吸収器に関する発明を実施するため最良の形態の一例が示される。
図3に示すように、体積変化吸収器300は、パイプ(pipe)状部材310と、その一端部にかぶせられたチューブ(tube)330とで構成される。パイプ状部材310は、両端が通じた中空体である。チューブ330は、一端が開口し他端が封止された中空体である。他端の封止は、図4に示すように押し潰し状態で行われる。パイプ状部材310は、本発明におけるパイプ状部材の一例である。チューブ330は、本発明におけるチューブの一例である。
パイプ状部材310は、剛性を有する材料で構成される。そのような材料として、例えば、金属、セラミックス(ceramics)、プラスチックス(plastics)等が用いられる。チューブ330は、可撓性を有する材料で構成される。そのような材料として、例えば、ゴムやプラスチックス等が用いられる。ゴムは合成ゴムまたは天然ゴムのいずれでもよい。
【0018】
パイプ状部材310は、中間部分がフランジ(flange)部312となっている。フランジ部312は、容器100の壁に内側から当接する部分であり、容器壁との当接面にOリング(O ring)314を有する。図3では、容器壁を境にして右側が容器内、左側が容器外である。フランジ部312は、本発明におけるフランジ部の一例である。Oリング314は、本発明におけるOリングの一例である。
【0019】
パイプ状部材310は、チューブ330がかぶさる部分がテーパー(taper)部316となっている。テーパー部316には、テーパーワッシャ(taper washer)318がチューブ330を挟み込むように係合する。テーパーワッシャ318は、フランジ部312の外周に沿って形成されたねじ部320に螺合するロックナット(lock nut)322で押されて、チューブ330をテーパー部316に狭圧する。これによって、パイプ状部材310へのチューブ330の取り付けが気密化される。
テーパー部316は、本発明におけるテーパー部の一例である。テーパーワッシャ318は、本発明におけるテーパーワッシャの一例である。ねじ部320は、本発明におけるねじ部の一例である。ロックナット322は、本発明におけるロックナットの一例である。
パイプ状部材310の容器外となる部分には、外周に沿ってねじ部324が形成されている。ねじ部324にはナット(nut)326が螺合する。ナット326は、フランジ部3
12と協働して容器壁を両側から挟み付ける。これによって、容器100へのパイプ状部材310の取り付けが気密化される。ねじ部324は、本発明におけるねじ部の一例である。ナット326は、本発明におけるナットの一例である。
体積変化吸収器300は、チューブ330の外側が液体130で囲まれ内側が容器100の外部に通じているので、液体130の体積変化に応じてチューブ330が柔軟に変形する。このような変形にともなうチューブ330の容積変化によって、液体130の体積変化が吸収される。
体積変化吸収器300は、パイプ状部材310にチューブ330をかぶせた極めて単純な構成によって実現される。このため、製品の信頼性や寿命に優れている。また、製造工程が簡素で低コスト(cost)である。さらに、完成検査のための項目や工数も少ない。
体積変化吸収の主体となるチューブ330は、ホース(hose)状の長尺な素材から適宜の長さで切り取って、一端部を押し潰し状態で封止することによって製作ことができる。チューブの端部の押し潰し封止は、慣用の技法により容易に行うことができる。
切り取る長さは、体積変化吸収に必要なチューブ容積となるようにすればよい。このため、構成が異なる多様なX線発生器に同一の基本構成で容易に適応することができる。このため、部品や素材を何種類も在庫する必要がない。なお、口径の異なるパイプ状部材とチューブを何種類か用意しておけば、体積変化吸収の適応範囲をさらに拡大することができる。
以上、X線発生器用の体積変化吸収器の例について説明したが、本発明の体積変化吸収器は、X線発生器に限らず、容器に封入された液体を有する機器について、液体の体積変化を吸収する用途に広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を実施するため最良の形態の一例のX線撮影装置の構成を示す図である。
【図2】本発明を実施するため最良の形態の一例のX線発生器の構成を示す図である。
【図3】本発明を実施するため最良の形態の一例の体積変化吸収器の構成を示す図である。
【図4】チューブの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0021】
200 : X線照射装置
210 : コラム
220 : X線源
400 : X線検出装置
410 : コラム
420 : キャリッジ
430 : アーム
440 : X線検出器
600 : オペレータコンソール
100 : 容器
102 : 窓
110 : X線管
120 : 高電圧回路
130 : 液体
300 : 体積変化吸収器
310 : パイプ状部材
312 : フランジ部
314 : Oリング
316 : テーパー部
318 : テーパーワッシャ
320 : ねじ部
322 : ロックナット
324 : ねじ部
326 : ナット
330 : チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が封入される容器の壁を貫通して気密に取り付け可能な剛性のパイプ状部材と、
前記パイプ状部材の前記容器の内側となる部分の端部を気密に覆うように一端部が取り付けられ他端部が押し潰し状態で封止された可撓性のチューブと、
を具備することを特徴とする体積変化吸収器。
【請求項2】
前記パイプ状部材は、
前記容器の壁に内側から当接可能なフランジ部と、
前記フランジ部の当接面に設けられたOリングと、
前記容器の外側となる部分に外周に沿って形成されたねじ部と、
前記ねじ部に螺合して前記容器の壁に外側から当接可能なナットと、
を具備することを特徴とする請求項1に記載の体積変化吸収器。
【請求項3】
前記パイプ状部材は、
前記チューブの一端部がかぶさるテーパー部と、
前記テーパー部との間に前記チューブの一端部を挟み込むテーパーワッシャと、
前記チューブの一端部がかぶさらない部分に外周に沿って形成されたねじ部と、
前記ねじ部に螺合し前記テーパーワッシャを介して前記チューブを前記テーパー部に押圧するロックナットと、
を具備することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の体積変化吸収器。
【請求項4】
体積変化吸収器を有する容器にX線管と高電圧回路が液体とともに封入されたX線発生器であって、
前記体積変化吸収器は、
前記容器の壁を貫通して気密に取り付けられた剛性のパイプ状部材と、
前記パイプ状部材の前記容器の内側となる部分の端部を気密に覆うように一端部が取り付けられ他端部が押し潰し状態で封止された可撓性のチューブと、
を具備することを特徴とするX線発生器。
【請求項5】
前記パイプ状部材は、
前記容器の壁に内側から当接するフランジ部と、
前記フランジ部の当接面に設けられたOリングと、
前記容器の外側となる部分に外周に沿って形成されたねじ部と、
前記ねじ部に螺合して前記容器の壁に外側から当接するナットと、
を具備することを特徴とする請求項4に記載のX線発生器。
【請求項6】
前記パイプ状部材は、
前記チューブの一端部がかぶさるテーパー部と、
前記テーパー部との間に前記チューブの一端部を挟み込むテーパーワッシャと、
前記チューブの一端部がかぶさらない部分に外周に沿って形成されたねじ部と、
前記ねじ部に螺合し前記テーパーワッシャを介して前記チューブを前記テーパー部に押圧するロックナットと、
を具備することを特徴とする請求項4または請求項5に記載のX線発生器。
【請求項7】
体積変化吸収器を有する容器にX線管と高電圧回路が液体とともに封入されたX線発生器と、前記X線発生器から照射されたX線を検出するX線検出器とを有するX線撮影装置であって、
前記体積変化吸収器は、
前記容器の壁を貫通して気密に取り付けられた剛性のパイプ状部材と、
前記パイプ状部材の前記容器の内側となる部分の端部を気密に覆うように一端部が取り付けられ他端部が押し潰し状態で封止された可撓性のチューブと、
を具備することを特徴とするX線撮影装置。
【請求項8】
前記パイプ状部材は、
前記容器の壁に内側から当接するフランジ部と、
前記フランジ部の当接面に設けられたOリングと、
前記容器の外側となる部分に外周に沿って形成されたねじ部と、
前記ねじ部に螺合して前記容器の壁に外側から当接するナットと、
を具備することを特徴とする請求項7に記載のX線撮影装置。
【請求項9】
前記パイプ状部材は、
前記チューブの一端部がかぶさるテーパー部と、
前記テーパー部との間に前記チューブの一端部を挟み込むテーパーワッシャと、
前記チューブの一端部がかぶさらない部分に外周に沿って形成されたねじ部と、
前記ねじ部に螺合し前記テーパーワッシャを介して前記チューブを前記テーパー部に押圧するロックナットと、
を具備することを特徴とする請求項7または請求項8に記載のX線撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−16224(P2008−16224A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−183621(P2006−183621)
【出願日】平成18年7月3日(2006.7.3)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】