説明

体脂肪蓄積抑制剤

【課題】 優れた生理活性を有する発酵物を提供すること。
【解決手段】 本発明の人参を発酵処理して得られる発酵物を有効成分とする体脂肪蓄積抑制剤を提供する。本発明の人参を発酵処理して得られる発酵物は、優れた体脂肪吸収抑制ならびに糖質吸収抑制効果を有する。従って、血糖値上昇抑制剤ならびに血中脂質改善剤として利用し得るだけでなく、体脂肪蓄積抑制剤としても利用できるため、有用である。これらの効果によって、発酵前の人参と比べ、優れた体脂肪蓄積抑制効果を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人参に微生物を作用させることにより得られる発酵物に関し、該発酵物を有効成分とする体脂肪の蓄積抑制剤もしくは血糖値上昇抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
微生物を用いた発酵は、動植物由来の原料へ微生物を作用させることにより、原料の嗜好性を向上させたり、特定の物質や新たな有用物質を生産させたりといったことのできる、古くから用いられている加工技術の一つである。
【0003】
近年においては、発酵することによって単に有用物質の産生や嗜好性の改善だけではなく、新たな生理活性を獲得したり、発酵前の原料よりも生理活性を増強する作用を有するなど、発酵物自身について検討されている。(例えば特許文献1〜3)
【特許文献1】特許第3060965号
【特許文献2】特公平06−011216号
【特許文献3】特許第3409038号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、用いる原料、原料の処理方法、用いる微生物等によって、常に発酵物が生理活性を有するようになるとは限らないばかりか、発酵すらしえないこともあるといった問題点がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は植物原料へ微生物を作用させて得られる発酵物について鋭意検討を行ったところ、人参を微生物で発酵しえることを見出し、また、優れた生理活性を有することをも見出し、本発明に至った。
【0006】
本発明は、人参を発酵処理して得られる発酵物を有効成分とする、体脂肪蓄積抑制剤に関する。
【0007】
より好ましい実施形態は、前記体脂肪蓄積抑制剤が、血糖値上昇抑制作用、血中脂質改善作用からなる群より選ばれる、少なくとも1種の作用を有する体脂肪蓄積抑制剤に関する。
【0008】
より好ましい実施形態は、前記体脂肪蓄積抑制剤が、糖質の吸収抑制作用を有する体脂肪蓄積抑制剤に関する。
【0009】
より好ましい実施形態は、前記体脂肪蓄積抑制剤が、脂質の吸収抑制作用を有する体脂肪蓄積抑制剤に関する。
【0010】
より好ましい実施形態は、前記発酵処理が、乳酸菌を用いる体脂肪蓄積抑制剤に関する。
【0011】
さらに好ましい実施形態は、前記人参が、田七人参である体脂肪蓄積抑制剤に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の人参に微生物を作用させることにより得られる発酵物は、優れた生理作用、例えば体脂肪蓄積抑制作用や血糖値上昇抑制作用、血中脂質改善作用を有する。また、本発明の体脂肪蓄積抑制剤は、糖質または脂質の吸収抑制作用等の優れた生理活性を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の人参を発酵処理することによって得られた発酵物(以下、単に本発明の発酵物ということが有る)を有効成分とする体脂肪蓄積抑制剤を詳細に説明する。なお、以下に説明する構成は、本発明を限定するものでなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができることは当業者に明らかである。
【0014】
本発明に用いる人参は、特に限定されるものではなく、西洋人参やサポニン配糖体を多く含む朝鮮人参、高麗人参、田七人参等が適しているが、特に好ましくはサポニン配糖体をさらに多く含む田七人参である。田七人参は、三七人参
とも呼ばれるウコギ科の多年草で、根にサポニン配糖体を含み、中国では止血剤、強心剤として用いられている。
【0015】
本発明に用いられる人参は、通常、洗浄してから、あるいはさらに、カット、摩砕などの当業者が通常行う方法によって破砕してから使用される。なお、破砕物の大きさに特に制限はないが、好ましくは、粒経が5000μm以下、より好ましくは20μm〜5000μm程度の破砕物が用いられる。必要に応じて、水、エタノールなどを適宜加えて破砕してもよい。
【0016】
本発明においては、破砕後、固液分離して得られた溶液(搾汁)も破砕物として用いることもできる。さらに上記人参またはその破砕物を抽出した後、固液分離して用いてもよい。人参由来の成分、すなわち不溶性成分および水溶性成分の全ての成分を発酵することができる点で、人参またはその破砕物を固液分離せずに用いることが好ましい。
【0017】
上記人参およびその破砕物は、雑菌の繁殖を防ぐ目的で、加熱処理を行ってもよく、冷凍保存してもよい。特に、冷凍保存は、人参に含有される成分および風味の保持の観点から好ましく、直ちに次工程を行わない場合に採用される。
【0018】
上記人参またはその破砕物は、発酵を効率的に行うために、必要に応じて、加水され得る。加水量に特に制限はない。通常、人参またはその破砕物1質量部に対して水が1〜50質量部、好ましくは10〜30質量部の割合で加えられる。
【0019】
(酵素処理工程および中和処理工程)
次いで、人参またはその破砕物の発酵を促進する目的で、酵素による細胞壁分解処理および中和処理のうちの少なくとも1種で処理し得る。
【0020】
酵素処理に用いられる酵素としては、アミラーゼ、ペクチナーゼ、エンドアラバナーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、エンドβ−グルカナーゼ、エキソβ−グルカナーゼ、キシラーゼ、β−グルコシダーゼなどが挙げられる。好ましくは、ペクチナーゼである。これらの酵素は混合して用いてもよい。特に好ましくは、ペクチナーゼと、アミラーゼ、エンドアラバナーゼ、エンドβ−グルカナーゼ、エキソβ−グルカナーゼ、キシラナーゼ、およびβ−グルコシダーゼからなる群より選択される少なくとも1種の酵素との混合酵素である。これらの添加量は、酵素の種類によって異なるが、通常、酵素濃度が、0.0001〜0.5質量/容量%、好ましくは0.0005〜0.3質量/容量%となるように添加される。
【0021】
酵素処理の条件は、処理する人参の形状、酵素の種類、酵素濃度に応じて適宜設定すればよい。通常、30〜75℃、好ましくは35〜70℃にて30分間〜72時間、好ましくは1〜48時間程度で処理される。
【0022】
酵素処理は、発酵の阻害要因(例えば、ペクチン等の細胞壁を構成する多糖類)を分解することによって、発酵を短時間で終了させることができる。さらに、例えば、多糖類が分解されると、多糖類の分解物(単糖類、オリゴ糖など)が生成される。これらが、得られる人参発酵物中の新たな成分となる。例えば、オリゴ糖は、整腸作用、発酵物の可溶化を促進するなどの様々な効果を有する。単糖類は、さらに微生物の増殖に必要な栄養素を供給して微生物の有用物質の産生を促進すると考えられる。
【0023】
中和処理は、最適なpHで発酵するために行われ、人参またはその破砕物のpHを4.0〜7.5に調節する。pHの調節は、当業者が用いる通常の方法を用いて行われる。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、重曹、クエン酸ナトリウムなどのpH調整剤;電解水;クエン酸緩衝液や酢酸緩衝液などを添加して調節され得る。
【0024】
(発酵工程)
上記人参またはその破砕物を発酵する、あるいは酵素処理および中和処理のうちの少なくとも1種で処理した後に発酵して本発明の発酵物を得る。
【0025】
発酵処理としては、乳酸発酵、クエン酸発酵、アルコール発酵、酢酸発酵などが挙げられる。これらの中でも、乳酸発酵が好ましく、これらの発酵を組み合わせてもよい。発酵は、例えば、24時間〜72時間で終了することが好ましく、発酵の種類に応じては、乳酸菌、酵母菌、酢酸菌などが用いられる。酵母や酢酸菌は、耐酸性が強いため、特に好ましく用いられる。
【0026】
上述の酵素処理および中和処理はいずれも、発酵を促進させ、比較的短時間で発酵することにより、人参に含有される有効な成分の損失を少なくすることを目的として行われる。したがって、発酵能力が高い微生物(例えば、後述の特定の乳酸菌等)と、酵素処理または中和処理した人参またはその破砕物とを組み合わせることが、比較的短時間(例えば、24時間〜72時間)で発酵できる点から好ましい。
【0027】
乳酸発酵は、上記人参またはその破砕物を乳酸菌と接触させることによって行われる。乳酸発酵は、得られる発酵物中に乳酸が含有されるため、発酵処理中の腐敗も防げる点で好ましい。
【0028】
乳酸菌としては、ロイコノストック・メセントロイデス、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・デルブロイキ、ラクトバチルス・ガッセリ、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ストレプトコッカス・サーモフィラス、ストレプトコッカス・フェカリス、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ラクティス、バチルス・メセンテリカス(Bacillus mesentericus)などが挙げられる。これらの乳酸菌は単独でまたは組み合わせて用いられる。特にこれらの微生物の中でも植物由来の成分を基に発酵を行う観点から、ラクトバチルス・プランタラムが好適に用いられる。
【0029】
乳酸菌は、人参またはその破砕物100質量部に対して、乾燥菌体質量で好ましくは0.005〜10質量部、さらに好ましくは0.01〜5.0質量部添加される。
【0030】
また、乳酸菌の優先的な生育のために、グルタミン酸またはその塩を加えてもよい。添加するグルタミン酸の量は、人参またはその破砕物に対して0.05〜1質量%程度、好ましくは0.2質量%程度である。
【0031】
さらに乳酸菌の発酵を促進するために、乳酸菌代謝性の糖を添加してもよい。この糖の添加は、糖分含量が少ない植物(糖分含量が1質量%未満)を発酵させる場合に有用である。あるいは、発酵の促進および発酵物への甘味の付加という目的で糖を添加してもよい。
【0032】
添加される糖は、乳酸菌が生育および発酵に利用し得る糖であり、例えば、庶糖、ぶどう糖、果糖、麦芽糖などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの糖は、糖分が人参の糖分と合わせて、発酵直前の溶液濃度が約0.1〜6質量%になるように加えることが好ましい。
【0033】
乳酸発酵は、乳酸菌が優先的に増殖できる環境をつくるため、人参またはその破砕物のpHを予め中和処理により調節しておくことが好ましい。例えば、ラクトバチルス・プランタラムを用いる場合は、pHを4.0程度に調節してから発酵を開始すれば、短期間でその発酵を終了させることができる。
【0034】
乳酸発酵は、発酵をより促進させる観点から、嫌気性条件下で行うことが好ましい。嫌気性条件は、例えば、人参またはその破砕物を発酵槽に入れた後、脱気することにより、または発酵槽を密封するか、窒素、二酸化炭素などのガスで満たすか、減圧することにより、あるいはそれらを組み合わせることにより得られる。また、嫌気条件下で発酵を行うことにより、得られる発酵物の風味も良くなる。
【0035】
乳酸発酵の条件に特に制限はない。発酵温度は、通常、4℃〜50℃で行われ得る。発酵時間は、発酵温度に応じて適宜設定すればよく、20℃〜50℃で発酵を行う場合、12時間〜72時間、好ましくは24時間〜72時間である。さらに、風味を高める目的で4℃〜10℃の低温発酵を行う場合は、人参が本来有する成分の損失を考慮すると、5日間〜14日間が好ましい。
【0036】
乳酸発酵は、糖を加えて発酵を停止させることができる。このような糖としては、糖アルコール(例えば、ソルビトール)、オリゴ糖(例えば、マルトオリゴ糖、キトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖)などが挙げられる。このようなオリゴ糖は、整腸作用、う蝕の予防などに効果があり、得られる発酵物に機能性を付与し得る。
【0037】
乳酸発酵は、人参中の成分を資化して有機酸やオリゴ糖などの有用成分を産生するだけでなく、発酵物を低いpHに維持できるため、他の雑菌の繁殖を防ぐことも可能である。また、乳酸菌を添加するため、風味の改善や整腸作用、酵素阻害作用などの生理活性の高い人参発酵物を得ることができる。
【0038】
クエン酸発酵は、一般的には、酵母を、上記果実またはその破砕物と好気的条件下で接触させて培養することによって行われる。クエン酸発酵において、乳酸菌をさらに添加して発酵すると、酵母の増殖が促進されやすく、さらに得られる発酵物の嗜好性も高まるため好ましい。
【0039】
酵母としては、清酒酵母、ワイン酵母、ビール酵母、パン酵母などが用いられる。例えば、サッカロミセス属、シゾサッカロミセス属などに属する酵母が用いられ、好ましくは、サッカロミセス・セレビシエ、サッカロミセス・パストリアヌス、シゾサッカロミセス・ポンベなどが挙げられる。特にアミノ酸やビタミンなどの有用物質を産生する点で、サッカロミセス・セレビシエおよびその単離株が好ましい。
【0040】
酵母は、人参またはその破砕物100質量部に対して、乾燥体質量で0.001〜20質量部、好ましくは0.01〜15質量部添加する。
【0041】
クエン酸発酵は、人参またはその破砕物と酵母とを発酵槽に入れ、通気攪拌しながら、4℃〜40℃、好ましくは10℃〜35℃で24時間〜14日間行う。特に人参の果実は酸性であるため、酵母発酵により香気成分が高くなるため、より嗜好性の高い発酵物を得ることができる。
【0042】
クエン酸発酵は、酵母を用いて行われるため、発酵物中に酵母が産生するアミノ酸、タンパク質、ビタミン類などが含まれ、栄養価が高く嗜好性に優れる点で好ましい。
【0043】
アルコール発酵は、酵母を、人参またはその破砕物と嫌気条件下で接触させて培養することによって行われる。アルコール発酵に用いられる酵母の種類および量は、上記クエン酸発酵の場合と同様である。発酵条件も、嫌気条件にすること以外は、上記クエン酸発酵の場合と同様である。こうしてアルコール発酵で得られた人参発酵物は、さらに以下で述べる酢酸発酵に供することが好ましい。
【0044】
酢酸発酵は、人参またはその破砕物にアルコールを加え、所定のアルコール濃度にした後、酢酸発酵し得る微生物(酢酸菌)を添加することによって行われる。あるいは上記のアルコール発酵によって得られた人参発酵物に酢酸菌を添加して二段発酵させてもよい。
【0045】
アルコール濃度は、酢酸菌が生育できる濃度であれば、特に制限されず、発酵時間などに応じて適宜調整すればよい。好ましくは10質量/容量%以下、より好ましくは1〜6質量/容量%である。
【0046】
酢酸菌としては、アセトバクター属に属する微生物、例えば、アセトバクター・アセチ、アセトバクター・パステウリアヌス、アセトバクター・ハンセニなどが挙げられる。
【0047】
酢酸菌は、適切な培地で15℃〜40℃、好ましくは25℃〜35℃にて6〜48時間予備培養しておくことが好ましい。予備培養した酢酸菌は、例えば、次のようにして得られる。まず、ポテト200g、破砕酵母30g、肝臓エキス25g、肉エキス5g、チオグリコール酸培地10g、グルコース5g、グリセロール15g、および炭酸カルシウム15gを含有する1Lの酢酸菌培地(pH7.0)に酢酸菌を添加して、15℃〜40℃にて24時間予備培養する。次いで、得られた培養物を遠心分離し、回収した菌体を滅菌水で洗浄し、再度遠心分離して上清を除去することによって、予備培養した酢酸菌が得られる。
【0048】
酢酸発酵は、攪拌培養、振盪培養、および静置培養のいずれでも行うことができる。発酵温度は10℃〜40℃、好ましくは20℃〜35℃で行われる。発酵時間は、酢酸菌の添加量に応じて適宜設定され、通常、1日〜1週間が好適である。
【0049】
上記発酵後は、さらに必要に応じて、殺菌または除菌してもよい。例えば、加圧式殺菌、熱交換式殺菌、蒸煮殺菌、限外ろ過などの当業者が通常用いる方法が用いられる。加熱殺菌の場合、例えば、60℃〜120℃にて5秒間〜12時間行われる。
【0050】
(人参発酵物)
このようにして得られた人参発酵物は、そのまま使用してもよいし、必要に応じて、その後当業者が通常用いる処理方法によって種々の態様にして使用することもできる。
【0051】
このような態様としては、例えば、上記のように発酵物を固液分離して上清を回収することにより得られた発酵エキス、該発酵物または該発酵エキスを濃縮処理した発酵ペースト、該発酵物または該発酵エキスを乾燥・粉末化処理した発酵粉末または発酵エキス末などが挙げられる。これらは、すべて本発明発酵物の一態様である。
【0052】
上記、人参発酵物の1つの実施態様である発酵粉末または発酵エキス末は、具体的には、該発酵物または発酵エキスを、乾燥、粉末化することによって得られる。乾燥は、当業者が通常用いる種々の方法が採用されるが、凍結乾燥、噴霧乾燥が好ましく用いられる。
【0053】
噴霧乾燥は、必要に応じて、デキストリン、シクロデキストリン、デンプン、マルトースなどの賦形剤を添加して行われる。発酵物または発酵エキスと賦形剤との混合比は、発酵物を乾燥する場合、好ましくは乾燥質量と賦形剤の質量比で1:2〜10:1、発酵エキスを乾燥する場合、好ましくは発酵エキスと賦形剤の質量比で1:10〜5:1である。上記混合比で乾燥することにより得られる発酵粉末または発酵エキス末の褐変を防ぐことができる。
【0054】
このようにして得られた発酵物は、優れた体脂肪蓄積抑制効果を有する。体脂肪は、摂取した脂質や糖質を脂肪として体内に蓄積したものである。従って、脂質や糖質の吸収を抑制することによって、カロリーの吸収を抑制することができ、ひいては体脂肪蓄積を抑制することができる。また、血糖値の上昇によって引き起こる血中のインスリン濃度の上昇を抑制する、すなわち、低インスリン状態にあると、糖から脂肪への変換を抑制するため、体脂肪蓄積を抑制することができる。よって、本発明の発酵物は、後述する優れた血糖値上昇抑制作用または血中脂質改善作用を有し、これらの効果は、糖質または脂質の吸収抑制効果によって得られるため、体脂肪の蓄積抑制効果を得ることができる。
【0055】
(血糖値上昇抑制作用)
本発明の人参発酵物は、本来の人参ではほとんど効果の得られない血糖値上昇抑制作用を有する。この作用は、少なくとも食事によって経口摂取された糖質の吸収を抑制することでなし得る。血糖値上昇抑制作用を有する。この効果によって、余分なカロリーの吸収を抑制し、さらには低インスリン状態を誘導するため、体脂肪蓄積抑制効果を得ることが可能である。また、本発明の発酵物は、このような血糖値上昇抑制作用を有するため、糖尿病の予防または治療剤としても利用し得る。
【0056】
(血中脂質改善作用)
さらに本発明の発酵物は、発酵することによって、発酵前の人参に比べ優れた血中脂質改善効果を有する。この効果は、少なくとも食事などによって経口摂取された脂質の吸収を抑制する効果によって得ることができる。すなわち、脂質の吸収を抑制することによって、血中の改善、いわゆる脂質の上昇を抑制するだけでなく、余分なカロリーの吸収を抑制する効果も有するため、体脂肪蓄積効果を得ることが可能である。また、本発明の発酵物は、このような血中脂質改善作用を有するため、高脂血症の予防または治療剤としても利用し得る。
【0057】
本発明の組成物は、上述の作用を有するため、該作用を得ることを目的とした種々の形態で利用される。この組成物は、人参本来の不快な風味が改善されているため、特別な処理を必要とすることなく種々の目的に利用される。例えば、食品、医薬品、医薬部外品などとして利用される。
【0058】
本発明中の人参発酵物は、体脂肪蓄積抑制効果ならびに血糖値上昇抑制作用を有する。なお、これらの効果を得るための摂取量、配合量は特に制限はないが、摂取量については、成人一日あたりの摂取量が、例えば本発明の発酵物を発酵エキスとした場合は、1日当たりの摂取量の下限値は、乾燥質量換算で1mg以上、好ましくは10mg以上、最も好ましくは100mg以上であり、上限値は、2000mg以下、好ましくは1000mg以下である。
【0059】
また、食品中への配合量は、その剤形によっても異なるが、例えば、本発明の発酵物を発酵エキスとした場合における配合量の下限値は、乾燥質量換算で0.00001質量%以上、好ましくは0.0001質量%以上、最も好ましくは0.1質量%以上であり、配合量の上限値は、90質量%以下、好ましくは60質量%以下である。
【0060】
本発明の組成物は、上述のように、必要に応じて、種々の成分を含有し得る。種々の成分の含有量は任意である。種々の成分としては、例えば、通常の食品として添加し得る成分(賦形剤、増量剤、結合剤、増粘剤(例えば、寒天)、乳化剤、滑沢剤、湿潤剤、懸濁剤、着色料(色素)、食品添加物、調味料など)または通常、医薬部外品、化粧品、およびトイレタリー用品として添加し得る成分(基材、動植物抽出物など)が挙げられる。上記成分は、単独で含有させてもよく、組み合わせて含有させてもよい。
【0061】
上記種々の成分の具体例としては、例えば、ローヤルゼリー、プロポリス、ビタミン類(A、B群、C、D、E、K、葉酸、パントテン酸、ビオチン、これらの誘導体等)ミネラル(鉄、マグネシウム、カルシウム、亜鉛等)、セレン、キチン・キトサン、レシチン、ポリフェノール(カテキン類、アントシアニン類、プロアントシアニジンなどの縮合型タンニン、ガロタンニン等の加水分解型タンニン、フラボノイド類、イソフラボン、これらの誘導体等)、カロテノイド(リコピン、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、ルテイン等)、サポニン(ジンセサノイド、グリチルリチン酸等)、キサンチン誘導体(カフェイン等)、脂肪酸、アミノ酸、タンパク質(コラーゲン、エラスチン等)、ムコ多糖類(ヒアルロン酸、コンドロイチン、デルマタン、ヘパラン、ヘパリン、ケタラン、これらの塩等)、アミノ糖(グルコサミン、アセチルグルコサミン、ガラクトサミン、アセチルガラクトサミン、ノイラミン酸、アセチルノイラミン酸、ヘキソサミン、それらの塩等)、食物繊維(難消化性デキストリン、アルギン酸、グアガム、ペクチン、グルコマンナン等)、オリゴ糖(イソマルトオリゴ糖、環状オリゴ糖等)リン脂質及びその誘導体(フォスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、セラミド等)、含硫化合物(アリイン、セパエン、タウリン、グルタチオン、メチルスルホニルメタン等)、糖アルコール、キノン類(コエンザイムQ10等)、リグナン類(セサミン等)、これらを含有する動植物抽出物、根菜類(ウコン、ショウガ等)、麦若葉末等のイネ科植物の緑葉、ケール等のアブラナ科植物の緑葉などが挙げられる。さらに上記食品添加物を含む飲料、例えば、植物発酵ジュース、野菜ジュース(例えば、人参ジュース)、植物抽出物、果汁なども利用され得、これらを含有させることにより機能性または栄養価の高い飲料を得ることができる。
【0062】
上記のほかにも調味料として、例えば、グラニュー糖、蜂蜜、ソルビットなどの甘味料、アルコール、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸などの酸味料、および香料が挙げられる。
【0063】
このような中でも、以下に示す脂質吸収抑制成分または脂質代謝促進成分、糖吸収抑制成分または糖代謝促進成分と組み合わせることが好ましい。
【0064】
(脂質吸収抑制成分、脂質代謝促進成分)
本発明における脂質吸収抑制成分および脂質代謝促進成分の少なくともいずれかの成分の添加は、相乗的な脂質の蓄積抑制または体脂肪減少効果を得ることができる。
【0065】
ここでいう脂質吸収抑制成分としては、例えば、キトサンおよびその誘導体、サイリウム、プロアントシアニジンなどの胆汁酸を排泄する作用を有する成分、ガロタンニン、ビワ葉等およびその抽出物などのリパーゼ阻害作用を有する成分が挙げられる。なお、例えば、松樹皮抽出物といったプロアントシアニジンを多く含む植物抽出物を、プロアントシアニジンとして用いることも可能である。
【0066】
脂質代謝促進成分としては、リボフラビン類、茶カテキン類、異性化リノール酸、カフェイン、カプサイシン、カルニチン、コエンザイムQ10、α−リポ酸およびその誘導体、大豆ペプチド、分岐アミノ酸、フォスファチジルコリン、アリルスルフィド化合物、フォルスコリン、ベルゲニン、ケルセチン、アスチルビン、ヒドロキシクエン酸、およびこれらの塩などが挙げられる。もちろん、これら脂質代謝促進成分を含有する植物抽出物、例えば、茶、葛花、コレウスフォコリ、アカショウマ、黄杞、大豆、辛味を有するトウガラシ、ソバ、ニンニク、タマネギ、コーヒーなどの抽出物を、脂質代謝促進成分として用いることも可能である。
【0067】
上記脂質吸収抑制成分および脂質代謝促進成分は、目的に応じて適宜配合される。例えば、脂質吸収抑制成分および脂質代謝促進成分のいずれかの成分のみを添加してもよく、脂質吸収抑制成分および脂質代謝促進成分の両方を添加してもよい。もちろん、2種類以上の脂質吸収抑制成分を添加しても、2種類以上の脂質代謝促進成分を添加してもよい。
【0068】
なお、本発明の発酵物と脂質吸収抑制成分または脂質代謝促進成分との配合比は、特に制限はない。例えば、本発明の発酵物100質量部に対して、脂質吸収抑制成分または脂質代謝促進成分(またはそれら成分を含有する原料)の下限値は、1質量部以上、好ましくは5質量部以上とするのがよい。また、本発明の発酵物100質量部に対して、脂質吸収抑制成分または脂質代謝促進成分(またはそれら成分を含有する原料)の上限値は、5000質量部以下、好ましくは2500質量部以下とし、剤形に合わせて適宜調整すればよい。
【0069】
(糖吸収抑制成分または糖代謝促進成分)
また、本発明において、本発明の発酵物と共に糖吸収抑制成分または糖代謝促進成分を少なくともいずれかの成分の配合は、脂質吸収抑制成分および脂質代謝促進成分の少なくともいずれかの成分の添加と同様に、相乗的な効果が期待できる。糖の代謝促進成分を有する原料としては、例えば、チアミン類(例えばビタミンB1)、ピリドキシン類、アミノ酸(イソロイシン、ロイシン、バリン、セリン、プロリン、グリシン、アラニン、及びスレオニン等)、クエン酸、リンゴ酸、モリブデン、リン、イオウ、クロム、カリウム、マンガン、カプサイシノイド、甘藷茎葉に見られるトリカフェオイルキナ酸、ジカフェオイルキナ酸およびこれらの誘導体などの成分自体や、これら成分を有する原料、さらに、同様の作用を有するレイシ、黒酢、大豆、菊芋、ビール酵母などが挙げられる。これらを配合することにより、体内での糖の蓄積を抑制し、ひいては糖の吸収によって引き起こされる体脂肪が増加することを抑制し得る。
【0070】
糖の消化吸収抑制成分を有する原料としては、例えば、α−アミラーゼ阻害剤、グルコシダーゼ阻害剤などの糖分解酵素の阻害作用を有する成分自身、そのような阻害作用を有する成分を有する原料、水溶性食物繊維などの糖吸収抑制効果がある成分自身、およびそのような糖吸収抑制効果がある成分を有する原料などが挙げられる。糖の代謝促進成分または糖の消化吸収抑制成分を有する原料の具体例としては、α−アミラーゼ阻害活性を有するタンパク質やタンニンが挙げられる。α−アミラーゼ阻害タンパク質は、小麦やライ麦等の中に含まれている。タンニンは、大麦、茶、グァバ、ビワ等に含まれている。
【0071】
また、糖の代謝促進成分または糖の消化吸収抑制成分を有する原料として、α−グルコシダーゼ阻害物質を用いてもよい。ここでいうα−グルコシダーゼ阻害物質としては、例えば、1−デオキシノジリマイシン、サラシノール、1−デオキシノジリマイシン、これらを含有すサラシア・レティキュラタや桑葉が挙げられる。また、α−グルコシダーゼ阻害物質の別の例としては、ボタンピ、カシュウ、ゲットウ、アカメガシワ、ヒラミレモン、クダモノトケイソウおよびストレリチア、阿仙薬、サッサフラス、イエロードック、メドウスィートなどが挙げられる。さらに、別のα−グルコシダーゼ阻害物質としては、例えば、ウンシュウミカン、ダイダイ、ハッサク、ナツミカン、イヨカン、オレンジ、レモン、グレープフルーツ、ユズ、ライムなどの柑橘類に含まれるジヒドロカルコン化合物またはフラバノン配糖体、ウラジロガシ、オオボウシバナ、芍薬、チョウジ、ラフマ、ケイヒ、ユーカリ、エゾイシゲ、カモミール、シソ、ノイチゴ、トウチ、クローブ、ヒドロキシプロリンなどが挙げられる。
【0072】
また、糖の代謝促進成分または糖の消化吸収抑制成分を有する原料として、糖質消化酵素の阻害効果がある物質を用いることもできる。ここでいう糖質消化酵素の阻害効果がある物質としては、例えば、茶、グァバ、テンチャ、イチョウ葉、ブドウ種子や松樹皮抽出物等に含まれるポリフェノールや、マオウ、カリン、インゲン豆、ナンバンカラスウリ、カキ葉、プーアル茶、オトギリソウ、リンゴ、タラ、アカメガシワ、サンシュユ、訶子、トチュウ葉などが挙げられる。
【0073】
また、糖の代謝促進成分または糖の消化吸収抑制成分を有する原料としては、その糖質消化酵素阻害物質を含んでいる物質(植物・動物など)の粉末や抽出物等を用いることもできる。
【0074】
さらに、糖の代謝促進成分または糖の消化吸収抑制成分を有する原料としては、例えば、糖の吸収を阻害する成分、コンズリトールA、グルマリン、及び食物繊維などが挙げられる。特に、ギムネマ・シルベスタ、ギムネマ・イノドラム、タラ、トンブリ等に含まれるギムネマ・シルベスタに含有されるコンズリトールA、グルマリンなどを、糖の代謝促進成分または糖の消化吸収抑制成分を有する原料として用いてもよい。糖の代謝促進成分または糖の消化吸収抑制成分を有する原料としての食物繊維には、難消化性デキストリン、ガラクトマンナン、可溶性アルギン酸ナトリウム、イヌリンなどを、例として挙げることができる。食物繊維は、食餌をゲル化することにより、糖の腸管からの吸収を抑制すると考えられている。
【0075】
なお、本発明の発酵物と糖吸収抑制成分または糖代謝促進成分との配合比は、特に制限はない。例えば、本発明の発酵物100質量部に対して、糖吸収抑制成分または糖代謝促進成分(またはそれら成分を含有する原料)の下限値は、1質量部以上、好ましくは5質量部以上とするのがよい。また、本発明の発酵物100質量部に対して、糖吸収抑制成分または糖代謝促進成分(またはそれら成分を含有する原料)の上限値は、5000質量部以下、好ましくは2500質量部以下とし、剤形に合わせて適宜調整すればよい。
【0076】
本発明の組成物は、目的に応じて、各種の形態に調製することができる。例えば、食品などとして利用する場合は、ハードカプセル、ソフトカプセルなどのカプセル剤、錠剤、丸剤、粉末(散剤)、顆粒、ティーバッグ、液体(飲料)、ペーストなどの当業者が通常用いる形態で利用される。
【0077】
さらに、上記液体などを加工して、ゼリー、シャーベット、フローズンヨーグルトあるいはアイスクリームとすることもできる。これらは、形状または好みに応じて、そのまま摂取してもよく、あるいは水、湯、牛乳などに溶いて、または成分を浸出して飲むことができる。なお、飲料の場合、低pHであれば、120℃、4分の完全殺菌をしなくても、100℃以下の殺菌条件で殺菌できる。例えば、pHが4.0以下の場合では、65℃、10分相当の殺菌条件で十分に殺菌できる。
【実施例】
【0078】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明がこの実施例により制限されないことはいうまでもない。
【0079】
(実施例1:田七人参の発酵エキス末の調整)
田七人参の乾燥物をフードプロセッサで破砕して得られた破砕物1kgにイオン交換水20Lを加えて攪拌した後に、ブドウ糖を0.2kgおよび乳酸菌(ラクトバチルス・プランタラム)を乾燥質量で20g添加して、攪拌した後に、35℃で24時間発酵処理した。発酵終了後に、得られた発酵物から遠心分離を行い、上清を回収して発酵エキスを得た。次いで、この発酵エキスを100℃、2分間の加熱処理を行った後に、減圧濃縮乾固して0.8kgの発酵エキス末を得た。
【0080】
(比較例1:田七人参の非発酵エキス末の調整)
実施例1で用いた田七人参の乾燥物を同様にフードプロセッサで破砕して得られた破砕物1kgにイオン交換水20Lを加えて攪拌した後に、遠心分離を行い、上清を回収して非発酵エキスを得た。次いで、このエキスを100℃、2分間の加熱処理を行った後に、減圧濃縮乾固して0.7kgの非発酵エキス末を得た。
【0081】
(実施例2:血中脂質改善作用の評価)
実施例1の発酵エキス末および比較例1の未発酵エキス末を用いて、下記のように血中脂質改善作用の評価を行った。
【0082】
6週齢のSDラット(株式会社日本チャールズリバー)12匹を基本飼料(MF飼料;オリエンタル酵母工業株式会社)で1週間馴化した。次いで16時間絶食させ、各群の平均体重がほぼ同等となるように3群に分けた。次いで、眼窩より採血し血清を得、中性脂肪測定キット(和光純薬工業株式会社)で血中の中性脂肪量を測定した(投与前中性脂肪値とする)。次いで、1群のラットには綿実油1mLとともに実施例1の発酵エキス末1000mg/kgをゾンデで強制経口投与した(試験群とする)。また、もう一群には、試験群の発酵エキス末の代わりに比較例1の非発酵エキス末を用いたこと以外は、同様にして、強制経口投与した(比較群とする)。残りの1群については、綿実油1mLのみを投与した(対照群とする)。
【0083】
上記投与から2時間に再度眼窩より採血し、同様に血中の中性脂肪量を測定した(投与後中性脂肪値とする)。測定して得られた値から、下記の(I)で示される式を用いて、血中の中性脂肪増加率(%)を算出した。
【0084】
【数1】

【0085】
結果を表1に示す。表1の値は各群の平均値および標準偏差を示す。
【0086】
(実施例3:血糖値上昇抑制作用の評価)
実施例1の発酵エキス末および比較例1の未発酵エキス末を用いて、下記のように血糖値上昇抑制作用の評価を行った。
【0087】
5週齢のSDラット(株式会社日本チャールズリバー)12匹を基本飼料(MF飼料;オリエンタル酵母工業株式会社)で1週間馴化した。次いで16時間絶食させ、尾静脈より採血し血清を得た後に、血糖値を小型血糖測定機(グルテストエースGT−1640、株式会社三和化学研究所)で測定した。次いで、血糖値の平均値がほぼ均一になるように3群に分け、1群のラットにはショ糖1.5g/kgとともに実施例1の発酵エキス末1000mg/kgをゾンデで強制経口投与した(試験群とする)。もう一群には、試験群の発酵エキス末の代わりに比較例1の非発酵エキス末を用いたこと以外は、同様にして、強制経口投与した(比較群とする)。残りの1群については、ショ糖1.5g/kgのみを投与した(対照群とする)。
【0088】
上記投与から30分後に再度尾静脈より採血し、血糖値を上記と同様に測定した。結果を表1に示す。なお、表1の値は、各群の平均値および標準偏差を示す。
【0089】
【表1】

【0090】
表1の結果より、本発明の発酵エキス末は、非発酵エキス末と比べ、綿実油投与に伴う血中の中性脂肪の上昇を抑制し得ることが分かる。すなわち、本発明の発酵物は、少なくとも食事などによって経口摂取された脂質の吸収を抑制し得る。すなわち、脂質の吸収を抑制することによって、血中の改善、いわゆる脂質の上昇を抑制するだけでなく、余分なカロリーの吸収を抑制する効果も有するため、体脂肪蓄積効果を得ることが可能である。また、本発明の発酵物は、このような血中脂質改善作用を有するため、高脂血症の予防または治療剤としても利用し得る。
【0091】
また、本発明の発酵エキス末は、非発酵エキス末と比べ、ショ糖投与に伴う血糖値の上昇を抑制していることが分かる。すなわち、本発明の発酵物は、少なくとも食事によって経口摂取された糖質の吸収を抑制することにより、血糖値上昇抑制作用を有する。この効果によって、余分なカロリーの吸収を抑制し、さらには低インスリン状態を誘導するため、体脂肪蓄積抑制効果を得ることが可能である。また、本発明の発酵物は、このような血糖値上昇抑制作用を有するため、糖尿病の予防または治療剤としても利用し得る。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の人参を発酵処理して得られる発酵物は、優れた体脂肪吸収抑制ならびに糖質吸収抑制効果を有し、血糖値上昇抑制剤ならびに血中脂質改善剤として利用し得るだけでなく、体脂肪蓄積抑制剤としても利用できるため、有用である。これらの効果によって、発酵前の人参と比べ、優れた体脂肪蓄積抑制効果を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人参を発酵処理して得られる発酵物を有効成分とする、体脂肪蓄積抑制剤。
【請求項2】
前記体脂肪蓄積抑制剤が、血糖値上昇抑制作用、血中脂質改善作用からなる群より選ばれる、少なくとも1種の作用を有する事を特徴とする、請求項1に記載の体脂肪蓄積抑制剤。
【請求項3】
前記体脂肪蓄積抑制剤が、糖質の吸収抑制作用を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の体脂肪蓄積抑制剤。
【請求項4】
前記体脂肪蓄積抑制剤が、脂質の吸収抑制作用を有することを特徴とする、請求項1から3に記載の体脂肪蓄積抑制剤。
【請求項5】
前記発酵処理が、乳酸菌を用いることを特徴とする、請求項1から4に記載の体脂肪蓄積抑制剤。
【請求項6】
前記人参が、田七人参であることを特徴とする請求項1から5に記載の体脂肪蓄積抑制剤。

【公開番号】特開2006−193489(P2006−193489A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−8345(P2005−8345)
【出願日】平成17年1月14日(2005.1.14)
【出願人】(398028503)株式会社東洋新薬 (182)
【Fターム(参考)】