説明

体表面用貼付材

【課題】 貼付期間を通じて適度な粘着力を示し、貼付中の皮膚等の被着体への接着性も良好で、剥離時に被着体への糊残りがなく、且つ、経時の粘着力増大による剥離刺激の問題もない体表面用貼付材を提供する。
【解決手段】 基材とその少なくとも一方の面に形成された粘着剤層とからなる体表面用貼付材であって、粘着剤層が付加反応型シリコーンポリマー50〜97重量%及び縮合反応型シリコーンポリマー3〜50重量%からなるシリコーンポリマー粘着剤を含有してなる体表面用貼付材。粘着剤層の粘着剤が、特定の測定条件において、特定の損失弾性率を有することが好ましい。ストーマ装具の体表面固定用である前記体表面用貼付材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体表面用貼付材に関する。更に詳しくは、医療分野において、医療材料の皮膚への固定、皮膚や傷の保護又は治療、美容等に用いる体表面用貼付材に関する。
本発明の体表面用貼付材は、また、家庭用、スポーツ用、美容用等として、皮膚やその他の体表面に貼付して使用するのに好適である。
【背景技術】
【0002】
疾患の治療に用いるチューブ、ガーゼ、包帯等の医療材料の体表面への固定、傷や皮膚等の治療や保護、美容等のために、シート状又はロール状の貼付材が使用されている。
また、人体からの排泄物を収容するためのストーマ装具を腹部等に固定するために、略円形の粘着板や、その粘着板の周囲に貼付する薄いシート状の貼付材が使用されている。
これらの貼付材は、基材とその基材の表面を被覆する粘着剤層とから構成されており、皮膚の凹凸や伸展に追従できる柔軟性及び伸縮性を有することが必要であり、更には、発汗や不感蒸泄等の皮膚生理機能を阻害しないことが要求される。
【0003】
このような要求性能を満足させるべく、これまで、粘着剤及び基材について種々の検討がなされている。
粘着剤の種類としては、アクリル系やゴム系の粘着剤が多く使用されている。しかしながら、これらの粘着剤は、皮膚等の被着体に対する粘着力が高すぎて剥離時に皮膚角層が過度に剥離されたり、毛が引っ張られたりして、痛みや不快感を与える場合があった。
これに対して、粘着剤としてシリコーン系粘着剤を使用する貼付材も知られている(例えば、特許文献1〜3)。シリコーン系粘着剤は、皮膚への高い密着性並びに貼付時の適度な粘着性及び透湿性を示し、剥離時の皮膚に対する刺激や不快感をアクリル系やゴム系の粘着剤よりも少なくすることができる。従って、処置の必要性や清潔性維持のために皮膚の同一部位に複数回貼付することが多い医療用や家庭用の貼付材の粘着剤としては、シリコーン系粘着剤は好適な粘着剤と考えられる。
しかしながら、シリコーン系粘着剤では、初期粘着力(タック)や、皮膚や基材への十分な接着性が得られ難い場合があり、貼付材が使用中に剥がれたり、剥離後皮膚に粘着剤が残留したりすることがあった。
【0004】
このようなシリコーン系粘着剤の初期粘着力不足や、皮膚や基材への接着性の低さを改善するために、シリコーン系粘着剤以外の粘着剤を混合することが検討されている。
例えば、特許文献4には、所定比率のアクリル系粘着剤を含有したオルガノポリシロキサン系感圧粘着剤層をポリウレタン弾性繊維からなる不織布に設けた皮膚貼着用感圧粘着テープが開示されている。しかしながら、この粘着剤は、基材との接着性が低く、それを補うため、無機充填剤を基材表面に含有させる必要がある。
特許文献5には、支持体の片面に、オルガノシロキサン系ポリマー及び(メタ)アクリル酸エステルを主成分とするアクリル系ポリマーを所定の比率で含有し、ミクロ層分離構造を有している粘着剤層が積層されてなる皮膚貼付材が開示されている。
また、特許文献6には、ジエン系ゴム及びポリイソブチレンから選ばれるエラストマーを含有するゴム系粘着剤と、オルガノポリシロキサンを含有するシリコーン系粘着剤とを含有する粘着剤組成物が開示されている。
しかしながら、特許文献5及び6に開示された貼付材は、短時間で使用する際には問題はないが、長時間皮膚に貼付した場合に、剥離刺激を引き起すほど強く皮膚角層や毛にくっついてしまうことがある。これは、粘着剤と被着体との接触時間が長くなるほど、粘着剤の「濡れ」が進行し、剥離時の粘着力が初期の粘着力より増大するためと考えられる。また、これらの貼付材は、異種粘着剤間の相分離により、剥離時にどちらかの粘着剤が被着体に糊残りしてしまう場合がある。
【0005】
【特許文献1】特公平3−36805号公報
【特許文献2】特許第2821475号公報
【特許文献3】特開平6−14932号公報
【特許文献4】特許第3127965号公報
【特許文献5】特開平9−206369号公報
【特許文献6】特許第3580510号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、貼付期間を通じて適度な粘着力を示し、貼付中の皮膚等の被着体への接着性も良好で、剥離時に被着体への糊残りがなく、且つ、経時の粘着力増大による剥離刺激の問題もない体表面用貼付材を提供することにある。
更に、本発明の目的は、皮膚等の体表面に対する密着性及び追従性に優れ、発汗や不感蒸泄等の皮膚生理機能を阻害しない体表面用貼付材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を達成すべく、鋭意研究を進めた結果、粘着剤を特定の2種のシリコーンポリマーを組み合わせて構成すればよいことを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0008】
かくして、本発明によれば、基材とその少なくとも一方の面に形成された粘着剤層とからなる体表面用貼付材であって、粘着剤層が付加反応型シリコーンポリマー50〜97重量%及び縮合反応型シリコーンポリマー3〜50重量%からなるシリコーンポリマー粘着剤を含有してなる体表面用貼付材が提供される。
本発明の体表面用貼付材において、シリコーンポリマー粘着剤が付加反応型シリコーンポリマー80〜97重量%及び縮合反応型シリコーンポリマー3〜20重量%からなるものであることが好ましい。
また、本発明の体表面用貼付材において、粘着剤層の粘着剤が、下記条件(I)において4,000〜16,000Paの損失弾性率及び25〜40度の位相差を有し、且つ、下記条件(II)において300〜850Paの損失弾性率及び5〜25度の位相差を有することが好ましい。
条件(I):応力100Pa、振動数10Hz、測定温度37℃
条件(II):応力100Pa、振動数0.01Hz、測定温度37℃
【0009】
また、本発明の体表面用貼付材において、ステンレス板に対する粘着力が、貼付20分後及び24時間後において、それぞれ、1.0〜2.5N/25mm及び1.0〜3.5N/25mmであり、貼付20分後から貼付24時間後の間の粘着力上昇値が0〜1.0Nであることが好ましく、貼付20分後及び24時間後において、それぞれ、1.0〜2.0N/25mm及び1.0〜2.5N/25mmであり、貼付20分後から貼付24時間後の間の粘着力上昇値が0〜0.7Nであることが更に好ましい。
更に、本発明によれば、基材とその少なくとも一方の面に形成された粘着剤層とからなる体表面用貼付材であって、粘着剤層が付加反応型シリコーンポリマーを50〜97重量%、縮合反応型シリコーンポリマーを3〜50重量%含有してなり、且つ、そのステンレス板に対する粘着力が、貼付20分後及び24時間後において、それぞれ、1.0〜2.5N/25mm及び1.0〜3.5N/25mmであり、貼付20分後から貼付24時間後の間の粘着力上昇値が0〜1.0Nである体表面用貼付材が提供される。
上記本発明の体表面用貼付材は、ストーマ装具の体表面固定用に好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の体表面用貼付材は、貼付期間を通じて適度な粘着力を示し、貼付中の皮膚等の被着体への接着性も良好で、剥離時に被着体への糊残りがなく、且つ、経時の粘着力増大による剥離刺激の問題もないので、体表面用貼付材として非常に好適である。
また、本発明の体表面用貼付材は、所定の透湿性と弾性特性を有することにより、皮膚生理機能を阻害することがなく、皮膚等の体表面に対する密着性及び追従性にも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の体表面用貼付材は、基材とその少なくとも一方の面に形成された粘着剤層とからなる体表面用貼付材であって、粘着剤層が付加反応型シリコーンポリマー50〜97重量%及び縮合反応型シリコーン系ポリマー3〜50重量%からなるシリコーンポリマー粘着剤を含有してなる。
【0012】
付加反応型シリコーンポリマーは、ケイ素原子に結合したアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン(アルケニル基含有オルガノポリシロキサン)とヒドロシリル基(Si−H)を有するオルガノポリシロキサン(ハイドロジェンオルガノポリシロキサン)とを、塩化白金酸等の白金化合物触媒を用いて、付加反応(ヒドロシリル化反応)させたものである。
付加反応型シリコーンポリマーは、その合成に用いるオルガノハイドロジェンポリシロキサンの量や、オルガノハイドロジェンポリシロキサン分子内のヒドロシリル基(Si−H)の量を変化させることによって、架橋密度を調整することができる。これにより、本発明に用いる粘着剤層の硬度や粘弾性を容易に調整することができる。
【0013】
本発明において、付加反応型シリコーンポリマーは、ビニル基置換ポリジメチルシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの付加反応物であることが好ましい。
ビニル基置換ポリジメチルシロキサンのビニル基は1分子当り少なくとも2個有することが好ましい。また、ビニル基は分子の末端位置にあることが好ましい。
【0014】
縮合反応型シリコーンポリマーは、末端にシラノール基(Si−OH)又は加水分解性のアルコキシシリル基(Si−OR)を有するポリオルガノシロキサン間の脱水又は脱アルコール反応により縮合させたものである。
シラノール基(Si−OH)間の脱水縮合反応には、一般的にオクチル酸亜鉛、オクチル酸鉄、若しくはコバルト、スズ等の有機酸塩又はアミン系の触媒が使用され、加熱によって反応が進む。シラノール基と加水分解性のアルコキシシリル基(Si−OR)間の縮合反応は、酸、アルカリ、有機スズ化合物、有機チタン化合物等の触媒により、常温でも反応が進行する。
【0015】
本発明において、縮合反応型シリコーンポリマーとしては、シリコーンゴムとシリコーンレジンとの脱水縮合反応生成物を使用することができる。そのためのシリコーンゴムとしては、末端をOH基で封鎖したポリジメチルシロキサン等を使用できる。また、シリコーンレジンとしては1官能性シロキサン単位と4官能性シロキサン単位からなる三次元構造体のものを用いることができる。
【0016】
本発明の体表面用貼付材の粘着剤層を構成する粘着剤において、付加反応型シリコーンポリマーと縮合反応型シリコーンポリマーとの比率は、付加反応型シリコーンポリマー/縮合反応型シリコーンポリマー重量比で、97/3〜50/50であることが必要であり、95/5〜80/20であることが好ましい。
付加反応型シリコーンポリマーの含有比率が50重量%未満(縮合反応型シリコーン系ポリマーの含有比率が50重量%超)であると、皮膚等への粘着力が強くなりすぎて、剥離時の刺激が増す恐れがある。
また、付加反応型シリコーンポリマーの含有量が97重量%超(縮合反応型シリコーン系ポリマーの含有比率が3重量%未満)であると、皮膚や基材に対する良好な粘着力が得られない恐れがある。
【0017】
本発明の体表面用貼付材において、粘着剤層は、可塑剤、充填剤等を含有していてもよい。特に、低分子量ジメチルポリシロキサン等のシリコーンオイル、シリカ等を含有しているとき、粘着剤層の硬度や粘弾性の調整が容易である。
更に、粘着剤層には、薬剤、界面活性剤、吸水性高分子、粉体、pH調整剤、防腐剤、抗菌剤、着色剤等のその他の調整剤を、本発明の目的を損なわない程度において、適宜配合することができる。
薬剤としては、保湿、老化防止、美白等の目的で皮膚の生理機能を調整する物質や、傷の治癒を促進する物質等を含むものを使用することができる。その具体例としては、ヒアルロン酸ナトリウム、アミノ酸、加水分解ペプチド、尿素、セラミド、ビタミン類、コエンザイムQ10、大豆イソフラボン、ポリフェノール等を挙げることができる。
特に、吸水性高分子を含有する粘着剤層を有する体表面用貼付材は、創傷被覆剤、ストーマ装具を腹部等の体表面に固定するための粘着板(面板)、又はこれらの周囲に貼る貼付材として好適に使用できる。これらの体表面用貼付材は、滲出液や排液が排出される創傷又はストーマの周囲部分においても良好な接着性を発揮し、貼付部位の衛生管理を容易にする。但し、本発明の体表面用貼付材をストーマ装具の粘着板の周囲に貼付するものとして使用する場合は、滲出液等の吸収量はそれほど多くないため吸水性高分子を添加しなくとも、使用上は十分な粘着性、耐久性等を有する。
【0018】
本発明の体表面用貼付材において、粘着剤層は、その厚さが10〜500μmであることが好ましく、10〜200μmであることが更に好ましい。粘着剤層の厚さがこの範囲内にあることにより、貼付時に適度な粘着力を示し、体表面に対する密着性及び追従性にも優れ、良好な透湿度を得ることができる。
【0019】
粘着剤層の表面硬度(A)は、20以下であることが好ましく、1以下であることが更に好ましい。粘着剤層の表面硬度(A)が20以下であることにより、体表面用貼付材が皮膚の伸展によく追従し、皮膚への貼付中に違和感や物理的刺激を与えることがなく、体表面用貼付材の剥離時に痛みや不快感が生じることがない。
【0020】
本発明において、粘着剤層を構成する粘着剤が、下記条件(I)において4,000〜16,000Paの損失弾性率及び25〜40度の位相差を有し、且つ、下記条件(II)において300〜850Paの損失弾性率及び5〜25度の位相差を有することが好ましい。
条件(I):応力100Pa、振動数10Hz、測定温度37℃
条件(II):応力100Pa、振動数0.01Hz、測定温度37℃
損失弾性率は、粘着剤の硬さや柔らかさの指標となり、位相差は、粘着剤の有する粘性と弾性のバランスの指標となる。
上記条件(I)において損失弾性率が4,000Paより小さく、位相差が40度より大きいと、貼付位置からのずれや変形、剥離時の糊残りが起こり易くなり、損失弾性率が16,000Paより大きく、位相差が25度より小さいと、貼付時には良好な初期粘着力(タック)が得られ難く、剥離時には貼付部位に過度なストレスがかかり易くなる恐れがある。
また、上記条件(II)において損失弾性率が300Paより小さく、位相差が25度より大きいと、凝集性が低下しコールドフロー(保管時の変形、ダレ)や粘着剤層の形状保持性が低下し易く、損失弾性率が850Paより大きく、位相差が5度より小さいと、被着体への濡れ性が低下する恐れがある。
本発明において、上記条件(I)における損失弾性率が4,000〜10,000Paであることが好ましく、上記位相差が25〜35であることが好ましい。
また、上記条件(II)における損失弾性率が300〜700Paであることが好ましく、上記位相差が5〜20であることが好ましい。
【0021】
本発明の体表面用粘着剤に使用する基材は、従来、この分野で使用されているものであれば特に限定されない。
その材質は、合成樹脂、紙、繊維等のいずれであってもよい。また、基材の形態は、フィルム、発泡シート、不織布、織布、編布等のいずれでもよいが、塗工厚の制御の観点から、フィルムであることが好ましい。
これらの基材は、一種類を単独で使用してもよいし、同一又は異なる種類の形態の基材をラミネートした積層構造の基材であってもよい。
また、基材は液体不透過性であることが好ましい。液体不透過性の基材を使用することにより、低粘度の粘着剤を塗工する場合でも、基材の粘着剤層を形成すべき面の反対側面にまで粘着剤が浸透してしまうことを防止できる。
【0022】
基材として用いる合成樹脂フィルムの材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル及びポリエステル系熱可塑性エラストマー;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン及びオレフィン系熱可塑性エラストマー;エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン・メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン・メチルメタクリレート共重合体(EMMA)、エチレン・メタクリル酸重合体(EMAA)、エチレン・アクリル酸共重合体(EAA)等のオレフィン系共重合体;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド;ポリスチレン及びスチレン系熱可塑性エラストマー;シリコーン;等を挙げることができる。これらの中でも、ポリエステル系熱可塑性エラストマーが好ましく、ポリエーテル・ポリエステルブロック共重合体及び/又はポリエステル・ポリエステルブロック共重合体を主成分とする共重合体を好適な材料として使用することができる。
これらの材料は、単一で使用してもよく、二種類以上を混合して使用してもよい。
これらの合成樹脂に、本発明の目的を損なわない程度において、酸化防止剤、帯電防止剤、無機充填剤、滑剤、顔料、染料等を添加することができる。
【0023】
基材として用いる布帛としては、ポリエステル系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリウレタン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維等から形成した不織布、編布又は織布が挙げられる。
発泡シートとしては、ポリウレタン、ポリオレフィン、天然又は合成ゴム、アクリル、シリコーン等から形成した独立気泡又は連続気泡の発泡シートが挙げられる。
紙としては、上質紙、クラフト紙、グラシン紙、コート紙等が使用できる。
【0024】
本発明において、基材の厚さは15〜1,000μmであることが好ましい。合成樹脂フィルムを単独で用いる場合は、厚さは15〜150μmが好ましく、20〜100μmが更に好ましい。
【0025】
本発明において、基材の伸び率は40〜1,500%であることが好ましい。基材の伸び率が上記下限未満であると、基材が皮膚の伸展に追従し難くなり貼付中に違和感が生じる恐れがあり、また外部や皮膚からの応力に対する緩衝性も低下する恐れがある。他方、基材の伸び率が前記上限より大きいと、使用中に基材に皺やよれが発生し易くなる恐れがある。
【0026】
本発明において、基材の目付は、10〜150g/mであることが好ましく、10〜100g/mであることが更に好ましい。目付けが10g/mより低いと、基材の強度が十分でなく、使用時に繰り返しの摩擦によって破れる可能性がある。他方、目付けが150g/mより高いと、嵩高になり皮膚に貼付したときに違和感が生じ、曲面部位への追従性が悪くなる可能性がある。
また、基材は、皮膚の生理機能を妨げないように、透湿性及び伸縮性のあるものが好ましい。
【0027】
本発明の体表面用貼付材において、粘着剤層は、基材の少なくとも一面にあればよいが、基材の両面に粘着剤層を形成してもよい。両面に粘着剤層を設けた体表面用貼付材は、例えば、カテーテル等のチューブを皮膚上に固定する場合に利用することができる。この場合、粘着剤層の一方の面を皮膚に貼付し、他方の面にチューブを載せ、このチューブの上から片面に粘着剤層を設けた貼付材を被覆すれば、チューブを強固に固定することができる。
【0028】
体表面用貼付材の製造方法は、付加反応型シリコーンポリマーと縮合反応型シリコーンポリマーとを所定の比率で含有してなる粘着剤を基材に塗工し、次いでこの粘着剤を硬化させて基材上に粘着剤層を形成する方法を利用できる。
また、体表面用貼付材の製造方法として、粘着剤を剥離シートに塗工し、次いで粘着剤を硬化させて、これを基材に転写して基材上に粘着剤層を形成する方法も利用することができる。
このとき、剥離シートとしては、シリコーン系離型剤、フッ素、フッ素化合物等により処理された剥離紙、剥離フィルム等を使用することができる。
【0029】
粘着剤の基材又は剥離シートへの塗工方法は、特に限定されず、コンマダイレクト、ナイフコーター、グラビアダイレクト等の公知の塗工方式を利用して、塗工パターンや厚さを制御することができる。
粘着剤層の塗工パターンとしては、基材の表面を部分的に被覆してもよいし、全面を被覆してもよく、格子状、ネット状、粒状、唐草模様等の任意の形態を選択できる。
本発明の体表面用貼付材においては、基材と粘着剤層との接着性を向上させるために、基材に表面処理又はプライマー処理を施してもよい。基材の表面処理としては、例えば、エンボス加工、サンドマット加工、コロナ放電処理、プラズマ処理、アルカリ処理等が挙げられる。
このようにして、基材とその少なくとも一方の面に形成された粘着剤層とからなる本発明の体表面用貼付材を得ることができる。
【0030】
本発明の体表面用貼付材は、ステンレス板に対する粘着力が、貼付20分後及び24時間後において、それぞれ、1.0〜2.5N/25mm及び1.0〜3.5N/25mmであり、貼付20分後から貼付24時間後の間の粘着力上昇値が0〜1.0Nであることが好ましい。
上記ステンレス板に対する粘着力は、貼付20分後及び24時間後において、それぞれ、1.0〜2.0N/25mm及び1.0〜2.5N/25mmであり、貼付20分後から貼付24時間後の間の粘着力上昇値が0〜0.7Nであることが、より好ましい。
ステンレス板に対する粘着力がこの範囲内にあることにより、貼付材が使用中に剥がれたり、剥離時に角層の過度な剥離や、毛の引張り等を引き起したりすることがない。
【0031】
本発明の体表面用貼付材は、40%変位時の引張荷重が10.0N/25mm以下であることが好ましく、1.0〜10.0N/25mmの範囲にあることが特に好ましい。40%変位時の引張荷重が10.0N/25mm以下であることにより、本発明の体表面用貼付材は、皮膚の伸展によく追従し、皮膚への貼付中に違和感や物理的刺激を与えることがない。1.0N/25mm未満であると、体表面用貼付材は、皺がよりやすくなり、貼付時に取扱いにくくなる場合がある。
【0032】
本発明の体表面用貼付材は、300g/m・24時間以上の透湿度を有することが好ましく、500g/m・24時間以上の透湿度を有することがさらに好ましい。透湿度が300g/m・24時間以上あることにより、皮膚の生理機能が好適に保持される。
【0033】
本発明の体表面用貼付材の形態は、特に限定されず、三角形、四角形、菱形等の多角形や、円形、楕円形、又はこれらの形状を適宜組み合わせたシート状の形態や、特定の方向に連続的に製造したロール状の形態が利用できる。
また、所望により、粘着剤層を保護するために、粘着剤層の表面に剥離可能な保護層を設けてもよい。保護層としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のフィルムや、シリコーン系離型剤、フッ素、フッ素化合物等による剥離処理をしたフィルムや、紙を使用できる。また、これらの保護フィルムにエンボス等の凹凸を設けてもよい。
また、保護層を設けなくとも、連続的に製造した貼付材の粘着剤層を基材背面(基材の粘着剤層が存在する側とは反対側の面)に剥離可能に仮着し、ロール状の形態にすることもできる。
【0034】
本発明の体表面用貼付材は、ストーマ装具の体表面固定用に好適に使用できる。
本発明の体表面用貼付材をストーマ装具の体表面固定用として使用する場合は、貼付材の基材の背面(粘着剤層のない側)に排泄物を収容するためのパウチを溶着等により固定してもよいし、既製品のストーマ装具の粘着板(面板)の周囲に、環状にした本発明の貼付材を設置したりしてもよい。
【実施例】
【0035】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、各例中の部及び%は特に断りのない限り、質量基準である。また、体表面用貼付材の各特性は、以下の方法により測定した。
【0036】
〔透湿度〕
JIS L 1099−1993 A−2「ウォーター法」に準じて測定したときの体表面用貼付材の透湿度を測定する。なお、測定の際は、体表面用貼付材の粘着剤層を透湿カップの水側に向けて設置する。この数値の高い方が透湿度に優れている。
【0037】
〔表面硬度(A)〕
粘着剤層を形成するための粘着剤(組成物)から、厚さ6.0mm以上の試験片を作製し、JIS K 6253−1997「デュロメータ硬さ試験」に準じ、タイプAデュロメーターを使用して測定する。
【0038】
〔40%変位時の引張荷重〕
JIS Z 0237「引張強さ及び伸び」に準じて、体表面用貼付材の40%変位時の荷重(N/25mm)を測定する。この数値は、10.0N/25mm以下であることが好ましい。
【0039】
〔粘着力〕
JIS Z 0237−2000「180度引きはがし粘着力」に準じて測定したときの体表面用貼付材の粘着力(N/25mm)を測定する。被着体としては、ステンレス板を使用する。粘着力の測定は、ステンレス板に実施例及び比較例の試験片を貼付してから20分後及び24時間後に行なう。
【0040】
〔皮膚貼付試験〕
5名の被験者の背面皮膚に、巾25mm、長さ75mmに調整した体表面用貼付材の試験片を貼付し、24時間後の試験片の皮膚からの浮きや剥がれを確認する(○:浮き・剥がれなし、×:浮き・剥がれあり)。また、皮膚への糊残りの有無を確認する。
また、上記24時間後に、1,000mm/分の速さで180度方向に引き剥がしたときに、剥離時の疼痛を5段階(5:痛みを感じない〜3:痛みを感じる〜1:強い痛みを感じる)で評価する。この数字の大きい方が、剥離時に疼痛を感じないことを意味する。
【0041】
〔損失弾性率・位相差〕
基材を貼り合わせる前の粘着剤層から直径20mmの試験片を3枚作製する。回転式レオメーター(HAAKE社製、商品名「レオストレスRS150」)を用いて、測定温度37℃、せん断応力100Paの測定条件で、オシレーションの測定を実施し、周波数10Hz、0.01Hzにおける損失弾性率及び位相差を測定する。
【0042】
〔実施例1〕
ビニル基置換ポリジメチルシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン及び白金触媒を主体とする2成分型の付加反応型シリコーンポリマー(ダウコーニング社製、商品名「DOW CORNING 7−9800」)95重量部と、シリコーンゴムとシリコーンレジンとを脱水縮合反応して得られる縮合反応型シリコーンポリマー(ダウコーニング社製、商品名「DOW CORNING MD7−4502」)8重量部(酢酸エチル溶媒、固形分5重量部)とを混合した。
この混合液を、シリコーン剥離シートに塗工し、110℃で3分間加熱して硬化させ、厚さ70μmの粘着剤層を形成した。次いで、この粘着剤層を、ポリエーテル・ポリエステルブロック共重合体から構成されるポリエステルエラストマーフィルムとポリエーテル・ポリエステルブロック共重合体から構成されるポリエステルエラストマー不織布との積層基材(目付け70g/m)のフィルム側に転写して体表面用貼付材を得た。この体表面用貼付材について、各特性を評価した結果を表1に示す。
【0043】
〔実施例2〜3〕
粘着剤層を構成する付加反応型シリコーンポリマーと縮合反応型シリコーンポリマーとの比率を変えるほかは、実施例1と同様にして体表面用貼付材を得た。この体表面用貼付材について、各特性を評価した結果を表1に示す。
【0044】
〔比較例1〕
粘着剤層を、ビニル基置換ポリジメチルシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン及び白金触媒を主体とする2成分型の付加反応型シリコーンポリマー(ダウコーニング社製、商品名「DOW CORNING 7−9800」)100重量部のみにするほかは、実施例1と同様にして体表面用貼付材を得た。この体表面用貼付材について、各特性を評価した結果を表1に示す。なお、比較例1の粘着剤は基材に接着し難かったため、基材にシリコーン系樹脂によるプライマー処理を施した。
【0045】
〔比較例2〕
粘着剤層を構成する付加反応型シリコーンポリマーと縮合反応型シリコーンポリマーとの比率を変えるほかは、実施例1と同様にして体表面用貼付材を得た。この体表面用貼付材について、各特性を評価した結果を表1に示す。
【0046】
〔比較例3〕
ビニル基置換ポリジメチルシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン及び白金触媒を主体とする2成分型シリコーン(ダウコーニング社製、商品名「DOW CORNING 7−9800」)90重量部に、アクリル酸2−エチルヘキシル20重量部、アクリル酸ブチル70重量部、アクリル酸5重量部、及びN−ジメチルアクリルアミド5重量部からなる単量体混合物を酢酸エチル及びトルエン中で溶液重合して得られたアクリル系共重合体を含む溶液20重量部(固形分換算で10重量部)を添加して混合した。この混合液を粘着剤層を形成する混合液として使用するほかは、実施例1と同様にして体表面用貼付材を得た。この体表面用貼付材について、各特性を評価した結果を表1に示す。
なお、比較例3の粘着剤は基材に接着し難かったため、基材にシリコーン系樹脂によるプライマー処理を施した。
【0047】
【表1】

【0048】
表1の結果から、次のことが分かる。
粘着剤層を付加反応型シリコーンポリマーのみで形成した比較例1では、粘着力が低く、皮膚貼付時に浮き・剥がれの発生が認められた。また、基材への接着性が低く、基材へのプライマー処理を要した。
付加反応型シリコーンポリマーと縮合反応型シリコーンポリマーとの比率が本発明で規定する範囲を外れる比較例2では、経時により粘着力が相当程度上昇した。また、剥離時の疼痛が大きいものとなった。
縮合反応型シリコーンポリマーに代えてアクリル系共重合体を用いて、これを付加反応型シリコーンポリマーと併用した比較例3では、粘着力測定と皮膚貼付試験の際に、シリコーンポリマー中に分散したアクリル系共重合体粘着剤の粒子が、被着体であるステンレス板と皮膚とに点状に糊残りし、十分な粘着力も得られなかった。また、基材への接着性が低く、基材へのプライマー処理を要した。
これに対して、付加反応型シリコーンと縮合反応型シリコーンとを所定比率で使用する本発明の体表面用貼付材は、基材への接着性が良好で、粘着力も向上し、貼付時の浮き・剥がれや糊残りもなく、且つ、剥離時の疼痛もない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材とその少なくとも一方の面に形成された粘着剤層とからなる体表面用貼付材であって、粘着剤層が付加反応型シリコーンポリマー50〜97重量%及び縮合反応型シリコーンポリマー3〜50重量%からなるシリコーンポリマー粘着剤を含有してなる体表面用貼付材。
【請求項2】
シリコーンポリマー粘着剤が付加反応型シリコーンポリマー80〜97重量%及び縮合反応型シリコーンポリマー3〜20重量%からなるものである請求項1に記載の体表面用貼付材。
【請求項3】
粘着剤層の粘着剤が、下記条件(I)において4,000〜16,000Paの損失弾性率及び25〜40度の位相差を有し、且つ、下記条件(II)において300〜850Paの損失弾性率及び5〜25度の位相差を有する請求項1又は2に記載の体表面用貼付材。
条件(I):応力100Pa、振動数10Hz、測定温度37℃
条件(II):応力100Pa、振動数0.01Hz、測定温度37℃
【請求項4】
ステンレス板に対する粘着力が、貼付20分後及び24時間後において、それぞれ、1.0〜2.5N/25mm及び1.0〜3.5N/25mmであり、貼付20分後から貼付24時間後の間の粘着力上昇値が0〜1.0Nである請求項1〜3のいずれかに記載の体表面用貼付材。
【請求項5】
ステンレス板に対する粘着力が、貼付20分後及び24時間後において、それぞれ、1.0〜2.0N/25mm及び1.0〜2.5N/25mmであり、貼付20分後から貼付24時間後の間の粘着力上昇値が0〜0.7Nである請求項4に記載の体表面用貼付材。
【請求項6】
基材とその少なくとも一方の面に形成された粘着剤層とからなる体表面用貼付材であって、粘着剤層が付加反応型シリコーンポリマーを50〜97重量%、縮合反応型シリコーンポリマーを3〜50重量%含有してなり、且つ、そのステンレス板に対する粘着力が、貼付20分後及び24時間後において、それぞれ、1.0〜2.5N/25mm及び1.0〜3.5N/25mmであり、貼付20分後から貼付24時間後の間の粘着力上昇値が0〜1.0Nである体表面用貼付材。
【請求項7】
ストーマ装具の体表面固定用である請求項1〜6のいずれかに記載の体表面用貼付材。

【公開番号】特開2007−284370(P2007−284370A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−112198(P2006−112198)
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【出願人】(000151380)アルケア株式会社 (88)
【Fターム(参考)】