作動中のプロセス環境における動的プロセスシミュレーションの更新と利用
【課題】オンライン・プロセスシミュレーションを行う際に該シミューレーション・システムが使い易く且つ更新し易くなる態様でプロセスプラントのプロセス制御環境に統合する。
【解決手段】開示のシミューレーション・システムによると、シミューレーション・システムにより生成されたプロセスパラメータの現在の予測値だけでなく将来的な予測値を、性能評価に利用し、並びにプラントの動作を誘導するために利用することが可能になる。また、該シミューレーション・システムは、プロセスプラントに関する様々なオンライン計測値を受信できるように作動中のプロセスプラントに接続されており、シミューレーション・システムで使用されるプロセスモデルを自動的に更新してシミューレーション・システムをプロセスプラントの実際の作動状態と協調(coordinate)した状態に保つために、これらの計測を使用する。
【解決手段】開示のシミューレーション・システムによると、シミューレーション・システムにより生成されたプロセスパラメータの現在の予測値だけでなく将来的な予測値を、性能評価に利用し、並びにプラントの動作を誘導するために利用することが可能になる。また、該シミューレーション・システムは、プロセスプラントに関する様々なオンライン計測値を受信できるように作動中のプロセスプラントに接続されており、シミューレーション・システムで使用されるプロセスモデルを自動的に更新してシミューレーション・システムをプロセスプラントの実際の作動状態と協調(coordinate)した状態に保つために、これらの計測を使用する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2002年10月22日付出願の「Smart Process Modules and Objects in Process Plants(プロセスプラントにおけるスマート・プロセスモジュール及びオブジェクト)」と題される米国特許出願第10/278,469号の一部継続出願であるところの、米国特許第7,110,835号として2006年9月19日に特許証が発行された「Integration of Graphic Display elements, Process Modules and Control Modules in Process Plants(プロセスプラントにおけるグラフィック表示要素とプロセスモジュール及び制御モジュールの統合)」と題される2003年7月21日付出願の米国特許出願第10/625,481号の継続出願であり同出願に対して優先権を主張するところの「Smart Process Objects Used in a Process Plant Modeling System(プロセスプラントモデリングシステムにおいて使用されるスマート・プロセスオブジェクト)」と題される2004年12月16日付出願の米国特許出願第11/014,307号の一部継続出願であり、同出願に対して優先権を主張するものである。なお、これら出願の開示全体は、ここに参照することにより本願に援用されるものとする。
【0002】
本発明は、概してプロセスプラントに関し、より具体的には、プロセスプラント制御アーキテクチャのシステムレベルでのシミュレーション作業をオンライン制御システムに統合してそこから更新することを可能にするインテリジェント制御及びシミュレーション環境に関する。
【背景技術】
【0003】
一般に、化学薬品処理工程、石油精製又はその他のプロセスにおいて使用されるような分散型プロセス制御システムは、アナログ、デジタル又はアナログ・デジタル混在バスを介して一つ又は複数のフィールド装置に通信可能に連結される一つ又は複数のプロセスコントローラを含んでいる。例えば、バルブ、バルブポジショナー、スイッチ又はトランスミッタ(例えば、温度、圧力、レベル及び流量センサ)でありうるフィールド装置は、通常プロセス環境内に設置され、バルブの開閉やプロセスパラメータの計測などのプロセスにおける機能を実行する。また、周知のFieldbusプロトコルに準拠するフィールド装置などのスマート・フィールド装置(smart field device)は、一般にコントローラ内で実施される制御計算や警報機能及びその他の制御機能を実行しうる。また、プロセスコントローラは、通常プラント環境内に設置されており、フィールド機器によりなされたプロセス計測且つ又はフィールド機器に関するその他の情報を示す信号を受信し、更に、例えばプロセス制御についての決定を下す様々な制御モジュールなどを作動させるためのコントローラ・アプリケーションを実行して、受信情報に基づき制御信号を生成し、フィールド機器(例えばHART及びFieldbusのフィールド機器など)において実行されている該制御モジュール又はブロックと協調(coordinate)する。コントローラの制御モジュールは、通信線上を通じてフィールド機器に制御信号を送信し、それによってプロセスの動作(オペレーション)を制御する。
【0004】
通常、フィールド機器やコントローラからの情報は、オペレーターワークステーション、パソコン、データ・ヒストリアン、報告書作成プログラム、集中化データベースなどの、通常制御室又はその他の厳しいプラント環境から離れた場所に配置さている一つ又は複数の別のハードウェア装置に接続されるデータハイウェイを通じて利用可能になっている。これらのハードウェア装置は、例えば、プロセス制御ルーチンの設定変更、コントローラ又はフィールド機器内の制御モジュールの動作の修正変更、プロセスの現状の表示、フィールド機器及びコントローラにより生成された警報の表示、従業員の教育を目的とするプロセスの動作のシミュレーション又はプロセス制御ソフトウェアの分析試験、構成データベースの管理及び更新などのプロセスに関連する機能をオペレータが実行できるようにするためのアプリケーションを実行する。
【0005】
一例としてEmerson Process Management社により販売されるDeltaV(登録商標)制御システムは、プロセスプラント内の様々な異なる場所に設置される異なる装置に格納され且つそれによって実行される複数のアプリケーションを含んでいる。一つ又は複数のオペレーターワークステーションに存在する構成用アプリケーションは、ユーザがプロセス制御モジュールを作成又は変更し、専用分散型コントローラへのデータハイウェイを介してこれらのプロセス制御モジュールをダウンロードできるようにする。通常、これらの制御モジュールは、制御機構内においてそれへの入力に基づいた機能を行い、該制御機構内の他の機能ブロックに出力を供給するところの、オブジェクト指向プログラミング・プロトコルのオブジェクトである通信可能に相互接続される機能ブロックにより構成される。また、構成用アプリケーションには、プロセス制御ルーチン内で、データをオペレータに表示してオペレータが設定点などの設定を変更できるように、設計者が表示アプリケーションにより使用されるオペレータ・インタフェースを作成又は変更することを可能にしうる。それぞれの専用コントローラ(また、場合によってはフィールド装置)が、実際のプロセス制御機能性を実施するためにそれに割り当てられダウンロードされた制御モジュールを実行するコントローラ・アプリケーションを格納及び実行する。一つ又は複数のオペレーターワークステーション上で実行しうる表示アプリケーションは、データハイウェイを介してコントローラ・アプリケーションからデータを受信して、このデータをプロセス制御システムの設計者、オペレータ、又はユーザーインタフェースを使用するユーザに表示し、また、オペレータ用画面表示、エンジニア用画面表示、技術員用画面表示などの異なる画面表示をいかなる数でも提供しうる。データ・ヒストリアンのアプリケーションは、通常、データハイウェイを介して供給されるデータのうちのいくつか又は全てを収集し格納するデータ・ヒストリアン装置に記憶され、それにより実行される。一方、構成データベース用アプリケーションは、データハイウェイに接続する更に別のコンピュータにおいて作動し、それに関連する現行プロセス制御ルーチンの構成及びデータを格納しうる。或いは、構成データベースを、構成用アプリケーションと同じワークステーションに設置しても良い。
【0006】
上記のように、通常、オペレータ用表示アプリケーションは、一つ又は複数のワークステーションにおいてシステム全体にわたり実施され、プラント内の制御システム又は装置の作動状態に関して事前に設定される画面表示をオペレータ又は保全要員に提供する。通常、これらの画面表示は、プロセスプラント内のコントローラ又は装置により発せられる警報を受信する警報画面、コントローラ及びプロセスプラント内の他の装置の作動状態を示す制御画面、プロセスプラント内の装置の稼動状態を示す保全管理画面などの形をとる。これらの画面表示は一般に、プロセスプラント内のプロセス制御モジュール又は装置から受信した情報又はデータを周知の態様で表示するように事前に構成され設定される。周知のシステムの中には、物理的要素又は論理要素に関連したグラフィックを備えるオブジェクトを使用して表示画面を形成し、該表示画面が物理的要素又は論理要素に関するデータを受信するため物理的要素又は論理要素に通信可能につながれているものもある。該オブジェクトにより、受信データに基づいて表示画面上でグラフィックを変更し、例えば、タンクの中身が半分になっている状態などを示すことにより、流量センサにより測定された流量を図で表示しうる。表示に必要な情報が、プロセスプラント内の装置又は構成データベースから送信されてくるが、その情報は、その情報を含む表示画面をユーザに提供するためだけに使用される。結果として、警報アラームの生成やプラント内の問題の検出などに使用される情報及びプログラミングの全てが、プロセスプラント制御システムを構成中にコントローラ及びフィールド装置などのプラントと関連した異なる装置により生成されその中に構成されなければならない。また、そうしなければ、この情報がオペレータ用表示画面に送信されないことになり、プロセスの作動中に表示できなくなる。
【0007】
エラー検出及びその他のプログラミングが、異なるコントローラ上で作動する制御ループと関連した条件やエラー又は警告アラームなど、並びに個々の装置における問題を検知する上で役に立つ一方、プロセスプラント内の(可能性として異なる様々な場所に設けられる)別の装置から分析することにより検出されなければならない条件又はエラーをシステムレベルで認識するようにプロセス制御システムをプログラムするのは困難である。更にまた、このようなシステムレベルの条件に関する情報をオペレータ又は保全要員に示す又は提示するためには通常オペレータ用表示画面は使用されない。いかなる場合も、このように画面表示内の異なる要素に関する情報又はデータの供給源が別の場合オペレータ用表示画面内のオブジェクトをアニメーション化するのは困難である。これは、通常画面表示上で二装置間を接続する単純線により示されるようなパイプ内の流体の流れやコンベヤーベルト上における原材料の移動状態などの材料ストリーム(材料の流れ)のアニメーション及びモデル化について特に該当する事実である。また、材料がプラント内を通過する過程において流量条件や物質平衡などプラント内の特定の条件を検出するための組織化された方式は現在存在せず、ましてシステムレベルでこれらの機能を実行でき且つ容易に実施可能なシステムはいうまでもなく存在しない。
【0008】
同様に、作動中のプロセス環境においてプロセスシュのミレーションを使用する方法は従来から使用されているが、それでも、通常、プロセスプラントのオンライン環境で実行される表示及び制御作業とは別にシミュレーション作業を実行しなければならないので、プロセスプラント又はプロセスプラントの一部分のシミュレーションを設定又は作成することが困難でありうる。また、プラントのシミュレーションを形成できたとしても、このシミュレーションをプラント内で使用されているオペレータ用表示画面又は制御モジュールに統合することは(不可能でないとすれば)困難である。例えば、プラントを設計時にHYSYS(ハイファイ・シミュレーションプログラム)を使用してプロセスシュミレーションを実施し、後でプラントの稼動を補助するために当該同一のシミュレーションを使用することは周知のことである。作動中のプラントと連動してプロセスシミュレーションを使用する利点の一つとしては、実際のプラントの性能を設計上の性能と比較しうる、ということが挙げられる。但し、現存する技術は、シミュレーションで計算されたプロセスパラメータの現在値を示すだけのものである。また、プロセスのシミュレーションは、たとえ単純なものでも、それぞれがシミュレーションの結果に影響を及ぼす何百もの構成可能パラメータを含みうる。結果として、シミュレートされたプラントと一致しなかったり、プラントにおける変化やプラント設備の劣化などによりシミュレーション作成後に時間が経つとシミュレートされたプラントと実際のプラントが一致しなくなったりする、などの事態が生じうる。既存の技術では、このような相違は一般に、エンジニアがシミュレーションの構成可能パラメータをマニュアル操作で調整することにより解決される。但し、このようなシミュレーション訂正方法では、非常に多くの時間を要し、オペレータのノウハウへの依存度が高く、多くの誤りが生じやすい。
【発明の概要】
【0009】
シミューレーション・システムが、該シミューレーション・システムを使い易くする態様且つオンライン・プロセスシミュレーションの更新を自動化及び実用的にする態様でプロセス制御環境に統合される。開示のシミューレーション・システムは、プロセスパラメータの現在値並びに将来値を、性能評価に利用できるようにするものであると共にプラントの稼動を誘導する際に使用できるようにするものである。また、該シミューレーション・システムは、様々なオンライン・プロセス又はプラント計測に接続されうるし、シミューレーション・システムで使用されるプロセスモデル(複数可)を自動的に更新することによりシミューレーション・システムをプロセスプラントの実際の作動状態と協調(coordinate)された状態に維持するためにこれらの計測を使用しうる。
【0010】
該 シミューレーション・システムは、プラント又はプラントの一部分の動作を描写しモデル化するために使用されるグラフィックと及びシミュレーション要素を有するスマート・プロセスオブジェクトで実施されうる。一般的に言えば、(バルブ、タンク、パイプなどの)プロセスプラント内の物理的装置又はエンティティを表す各スマート・プロセスオブジェクトは、当該の物理要素及び、モデル化又はシミュレーションの要素を描写するためにグラフィック表示にて使用されうるグラフィック要素を含んでいる。具体的に、スマート・プロセスオブジェクトは、オペレータに表示される表示要素、プラント内の関連するエンティティに関する及び該エンティティから受信したデータを格納するためのデータ記憶素子、他のプロセスオブジェクトと通信するための入・出力、漏れやエラー及び他の状態を含むプラント又は装置の状態を検出するために格納及び受信されたデータ上で実行しうるメソッド、及びシミュレーション・アルゴリズムを含みうる。
【0011】
構成中、プロセスプラントの異なる部分の動作を描写及びシミュレートするシミューレーション・システムを作成するために、且つ、プロセスプラントの一部分の動作をモデル又はシミュレートするプロセスモジュールを作成するために、複数のスマート・プロセスオブジェクトを共に接続しうる。この点に関連して、各プロセスモジュール(及びプロセスモジュールに関連した各画面表示)は、プラントを通って移動する流体、気体又はその他の物質に対応する入力を受け取り、その出力を生成し、プロセスプラントにおけるプロセス要素の動作を、プラントを通って移動する物質に対するそれらの影響についてモデル化又はシミュレートする。このように、スマート・プロセスオブジェクトのグラフィック表示部分は、プラント内の要素の動作(及びプラントにおけるその要素の役割又は効果)を描写するために使用されうる。また、スマート・プロセスオブジェクトのシミュレーション要素は、プラントにおける流体又はその他の材料の移動状態に対する実際の物理要素の影響をシミュレートするために使用されうる。また、実際のプラントからの(例えば、プラント内で計測された)データは、スマート・プロセスオブジェクトを使用して作成されたグラフィック表示に通信されうる、又はそれの中に描写されうる。
【0012】
スマート接続オブジェクトは、より詳細且つ正確なシミュレーションを実行するために、プラント内の物理的なエンティティ間の接続をモデル化するのに役立ちうる。このような接続によって、例えば、パイプ接続、ダクト接続、電気接続又はコンベア接続を指定しうる。しかるべく、該接続は、該接続を通じて流動する複数の異なるタイプの材料の流れのうちの一つに関係しうる。スマート接続オブジェクトは、接続タイプ又は接続状態を示す情報など、接続に関する接続パラメータデータを格納しうる。シミューレーション・システムの一部としてスマート接続オブジェクトを実行することにより、接続のグラフィック表示を表示し該接続を通じて流動する材料の流れをシミュレートすることによりプロセスプラントの動作のモデルを生成することが容易になる。
【0013】
また、プラント内の材料のストリーム(又は材料の流れ)と関連しうるスマート・ストリーム・オブジェクトを介してもシミュレーションが提供される。このようなストリームは、プラントを通って流動する又は移動する流体、固体又は気体を表わしうる。また、各ストリームは、ストリームがプロセスモジュールの異なる要素を通って移動すると共に変化しうるストリームの圧力、容量、密度、流量、組成などの特性又はパラメータを含みうる。ストリームはプロセス制御要素の入・出力によって流れるので、一般に、ストリームの特性は、ストリームが流れるバルブやタンクなどのプロセスの要素によりもたらされる。このため、プロセスモジュール内の個々の要素には、それの入力で提供される当該プロセス要素おストリームへの影響をシミュレートするためのアルゴリズムが含まれる。
【0014】
オペレーターワークステーション又はその他のコンピュータは、スマート・プロセスオブジェクトから作成されたグラフィック表示又はプロセスモジュールの動作をもたらすために、作成されたグラフィック表示又はプロセスモジュールを実行する実行エンジンを実行する。この動作の一部として、プロセスモジュールは、(プロセス条件を検出するために特にシステムレベルを基盤として使用でき、プラントを通って流れるストリームに対するプロセス要素の影響をシミュレートする)フローアルゴリズムと呼ばれるメソッドを実行しうる。結果として、スマート・プロセスオブジェクトから作成されたプロセスモジュール及びグラフィック表示は、オペレータ用表示装置での状態及び誤り検出ルーチンの実施を可能にし、プラントのコントローラ及びフィールド装置と協働しうる、又は該プラントのコントローラ及びフィールド装置の中にこの機能性を備える必要性を解消しうる。また、プロセスモジュールは、使い易く且つ実施し易い状態を維持しながら更に多くのより良い完全な情報を提供するために使用できるようなプロセスプラント内における別のレベルのプログラミング・フレキシビリティを、オペレータ又はシステム構成エンジニアに提供する。更にまた、グラフィック表示は、オペレータに追加情報を提供するためにプロセスフロー・モジュールのフローアルゴリズムにより決定又は計算された情報と共にアニメーション化されうる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】プロセスプラントの稼動をシミュレートするためにプロセスモジュール及びグラフィック表示を作成するためにスマート・プロセスオブジェクトを使用する画面表示ルーチンを実施するところのオペレーターワークステーションを含むプロセスプラント内にある分散型プロセス制御ネットワークのブロック図。
【図2】プロセスプラントにおける拡張機能を実施するために使用されうるところの、図1のオペレーターワークステーションに格納された(スマート・プロセスオブジェクト及びプロセスモジュールを含む)一式のアプリケーション及びその他のエンティティの論理ブロック図。
【図3】オブジェクト・ライブラリに格納されたスマート・プロセスオブジェクトを使用してプロセスグラフィック表示又はプロセスモジュールを作成するためにシステム構成エンジニアにより使用される構成用画面の簡易描写を示す図。
【図4】多数のスマート・プロセスオブジェクトのグラフィック表示要素を相互に接続することにより作成された、プロセスプラント内のストリーム及び接続要素の描写を含む実施例として挙げられるプロセスのグラフィック表示の詳細な描写を示す図。
【図5】プラントのより広大な範囲を含むグラフィック表示に相互接続された、図4のプロセスのグラフィック表示を含む一式の最小化されたプロセスのグラフィック表示の描写を示す図。
【図6】ハイファイ・シミュレーション・ルーチンの相互接続と共に、図4のプロセスのグラフィック表示と関連したプロセスモジュールを示す図。
【図7A】プロセスプラント内に統合されたグラフィック表示、プロセスモジュール及び制御モジュール間の通信相互接続を示す論理ブロック図。
【図7B】プロセスプラント内に統合されたグラフィック表示、プロセスモジュール及び制御モジュール間の通信相互接続を示す論理ブロック図。
【図8】アドバンスト制御及びシミュレーションの能力を提供するために制御モジュール内で機能ブロックと相互接続されたブロックを有するところの実施例として挙げられるプロセスモジュールの簡易描写を示す図。
【図9】将来的に予測されるプロセス値を提供するためにプロセスモデルを使用する複数のシミュレーション・ブロックを有し、プロセス計測又はユーザの入力に基づいてプロセスモデルを更新するところのシミューレーション・システムを示す簡略ブロック図。
【図10】スマート・プロセスオブジェクトを使用するプロセスモジュール及びシミューレーション・システムが制御ネットワークに作成され、且つ既存プロセス制御ネットワーク内で実施されうる態様を示す論理ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ここで図1を参照するに、スマート・プロセスオブジェクトがプロセスのグラフィック表示及びプロセスモジュールを形成するために使用されるところの、実施例として挙げられるプロセスプラント10が詳細に示される。ここにおいて、プロセスのグラフィック表示及びプロセスモジュールは両方とも、プラント環境内に拡張制御及びシミュレーションを提供するために制御モジュールに統合されうる。具体的に、プロセスプラント10は、例えば、Fieldbusインターフェース、Profibusインターフェース、HARTインターフェース、標準4-20 mAインターフェースなどでありうる入・出力(I/O)装置又はカード18を介して一つ又は複数のフィールド装置14及び16に各々接続される一つ又は複数のコントローラ12を有する分散型プロセス制御システムを使用する。また、コントローラ12は、例えばイーサネット(登録商標)・リンクでありうるデータハイウェイ24を介して、一つ又は複数のホスト又はオペレーターワークステーション20及び22に連結される。データベース28は、データハイウェイ24に接続され、プラント10内のコントローラとフィールド装置に関連したパラメータ、状態及びその他のデータを収集し格納するデータ・ヒストリアンとして、且つ又はプラント10内プロセス制御システムの現在の構成を格納する(コントローラ12とフィールド装置14,16にダウンロードして格納する)構成データベースとして作動する。通常、コントローラ12、I/Oカード18、フィールド装置14,16は、場合によっては厳しいプラント環境の下に設置・分散されている。オペレーターワークステーション20及び22、並びにデータベース28は、通常、制御室に、又はコントローラ又は保全要員により簡単にアクセスできるようなそれほど厳しくない環境下に設置される。
【0017】
周知の如く、一例としてEmerson Process Management社により販売されるDeltaV(登録商標)コントローラでありうるコントローラ12の各々は、任意数の異なる、独立して実行される制御モジュール又はブロック29を使用して制御法を実施するコントローラ・アプリケーションを格納及び実行する。各機能ブロックが全体的な制御ルーチンの部品又はサブルーチンであり、プロセスプラント10内のプロセス制御ループを実施するために(リンクと呼ばれる通信を介して)他の機能ブロックと共に機能することを特徴とする一般に機能ブロックと呼ばれるものから各制御モジュール29を構成できる。周知の如く、オブジェクト指向型プログラミング・プロトコルのオブジェクトでありうる機能ブロックは、一般に、プロセスプラント10内で何らかの物理的な機能を実行するために、トランスミッタやセンサ又はその他のプロセスパラメータ計測装置と関連した入力機能や、比例・積分・微分(PID)やファジィ論理などの制御を実行する制御ルーチンと関連した制御機能や、又は、バルブなど何らかの装置の動作を制御する出力機能の一つを実行する。もちろん、モデル予測制御コントローラ(MPC)、最適化プログラムなどのハイブリッド及びその他のタイプの複雑な機能ブロックも存在する。Fieldbusプロトコル及びDeltaVシステム・プロトコルは、オブジェクト指向プログラミング・プロトコルにおいて設計され実施される制御モジュールと機能ブロックを使用する一方、制御モジュールは、機能ブロック又はその他特定のプログラミング技法を使用しての設計・実施に限らず、例えば、逐次機能ブロック、ラダー論理などとはじめとする所望のあらゆる制御プログラミング機構を使用して設計することができる。
【0018】
図1に示されるプラント10において、コントローラ12に接続されたフィールド装置14及び16は、標準4-20mA装置でありうるし、プロセッサとメモリを含むようなHARTやProfibus又はFOUNDATIONTM Fieldbusフィールド装置などのスマート・フィールド装置でもありうるし、或いは、その他所望のタイプの装置でありうる。(図1中、照合番号16として示される)これらのFieldbusフィールド装置などの装置のいくつかは、コントローラ12で実施される制御法と関連する機能ブロックなどのサブモジュール又はモジュールを格納及び実行しうる。Fieldbusフィールド装置16のうち異なる二台に配置されているような図1において図示される機能ブロック30は、周知の如く、プロセス制御を実施するためにコントローラ12内の制御モジュール29の実行と同時に実行されうる。もちろん、フィールド装置14及び16には、センサ、バルブ、トランスミッタ、ポジショナーなどのいかなるタイプの装置を使用しても良く、また、I/O装置18には、例えばHART、Fieldbus、Profibusなど所望のあらゆる通信又はコントローラ・プロトコルに準拠するものであればいかなるタイプのI/O装置を使用しても良い。
【0019】
図1のプロセスプラント10において、ワークステーション20には、プロセスプラント10内で接続される装置やユニットなどに関する機能性を表示及び提供するために、いかなる認定ユーザ(本稿において場合によってはシステム構成エンジニア又はオペレータとしても参照されるが、その他のタイプのユーザも存在しうる)によりアクセスできる一式のパッケージ化されたオペレータ・インタフェース・アプリケーション及びその他のデータ構造32が含まれる。該一式のパッケージ化されたオペレーターインターフェース・アプリケーション32は、ワークステーション20のメモリ34に格納され、該一式のパッケージ化されたアプリケーション32中の各アプリケーション又はエンティティは、ワークステーション20に関係したプロセッサ36で実行できるように適応される。該一式のパッケージ化されたアプリケーション32の全てがワークステーション20に格納される状態で図示されているが、これらのアプリケーション又は他のエンティティのいくつかをプラント10内に又はそれに関連する別のワークステーション又はコンピュータ機器に格納しそこで実行するようにもできる。更にまた、該一式のパッケージ化されたアプリケーションは、ワークステーション20と関連した表示画面37、又はハンドヘルド型装置、ラップトップ、その他のワークステーション、プリンターなどを含むその他所望の表示画面又は表示装置に表示出力を提供できる。同様に、一式のアプリケーション32内のアプリケーションを二つ以上のコンピュータ又は機械に分けて実行してもよく、またお互いに関連して機能するように構成しても良い。
【0020】
一般的に言って、一式のパッケージ化されたアプリケーション32は、プロセスプラント10内の拡張制御やシミュレーション及び表示機能を提供するために動作が統合されうるところの三つの異なるタイプのエンティティの作成及び使用を提供する又は可能にする。より具体的に、一式のパッケージ化されたアプリケーション32は、(一般にプロセスプラントの一部分に関するオペレータ用表示画面を提供する)プロセスのグラフィック表示35、(一般にプロセスプラントの一部分のシミュレーションを提供する)プロセスモジュール39、及び(一般にプロセスのオンライン制御を提供又は実行する)制御モジュール29を作成し実施するために使用されうる。プロセス制御モジュール29は、当業者には一般に周知の技術であり、機能ブロック制御モジュールなどをはじめとするいかなるタイプの制御モジュールを含みえる。一般に、以下より詳しく説明されるプロセスのグラフィック表示要素35は、プロセスプラントの動作や構成又はセットアップ及びその中の要素についての情報をオペレータなどのユーザに提供するためにオペレータ、エンジニア又はその他の表示により使用される要素である。プロセスモジュール39は、通常プロセスグラフィック表示要素35に密接に関連し、プロセスプラントの又はその中でプロセスグラフィック表示35により描写されている態様で接続される異なる要素の稼動状態のシミュレーションを行うために使用しうる。プロセスグラフィック表示35及びプロセスモジュール39は、ワークステーション20及び22に格納され且つそこにおいて実行される状態で図示されているが、プロセスグラフィック表示35及びプロセスモジュール39は、ラップトップ、ハンドヘルド装置など、プロセス制御プラント10に関連したその他のコンピュータにダウンロードしそこで実行することもできる。
【0021】
図2は、いくつかのアプリケーションとデータ構造、又はワークステーション20の一式のアプリケーション32の中に含まれるその他のエンティティを示す図である。具体的に、一式のパッケージ化されたアプリケーション32は、制御モジュール、プロセスモジュール(別称:プロセスフロー・モジュール)及び関連するグラフィック表示を作成するためにシステム構成エンジニアにより使用される制御モジュール、プロセスモジュール及びグラフィック表示構成用アプリケーション38を含んでいる。制御モジュール構成用アプリケーション38がいかなる標準又は周知の制御モジュール構成用アプリケーションでありうる一方、プロセスモジュール及びグラフィック表示構成用アプリケーションは一つ又は複数のスマート・プロセスオブジェクトを使用するプロセスモジュール及びグラフィック表示を作成しうる。なお、これに関する内容は以下より詳しく説明されている。更にまた、図中、プロセスモジュール及びプロセスグラフィック構成用アプリケーション38が別々に示されているが、一つの構成用アプリケーションで、これら両タイプの要素を作成するこも可能である。
【0022】
スマート・プロセスオブジェクト42のライブラリ40は、プロセスモジュール39及びグラフィック表示35を作成するために構成用アプリケーション38によりアクセスされ、コピーされ、そして使用されうるところの見本又は定型スマート・プロセスオブジェクト42を含んでいる。当然のことながら、構成用アプリケーション38は一つ又は複数のプロセスモジュール39を作成するために使用することが可能であり、その各々は、一つ又は複数のスマート・プロセスオブジェクトから構成又は作成され、且つプロセスモジュールメモリ46に格納される一つ又は複数のプロセスフロー又はシミュレーション・アルゴリズム45を含みえる。また、構成用アプリケーション38は、一つ又は複数のグラフィック表示35を作成するために使用することが可能であり、その各々は、一つ又は複数のスマート・プロセスオブジェクト42から構成又は作成され、且つ、相互接続される表示要素をいかなる数でも含みえる。図2には、グラフィック表示35bの一例が、パイプ、導管、電源ケーブル、コンベアなどでありえる接続要素により相互に接続されるバルブ、タンク、センサ及びフロー・トランスミッタなどを含む一組のプロセス要素の描写を含んだ状態で展開形として示さている。
【0023】
実行エンジン48は、グラフィック表示35により定義される一つ又は複数のオペレータ用プロセス表示画面を作成し、かつプロセスモジュール39と関連したシミュレーション機能性を実施するために実行時中にグラフィック表示35及びプロセスモジュール39の各々を作動又は実施する。実行エンジン48は、概して言うとプロセスモジュール39で、具体的には当該モジュール内のスマート・プロセスオブジェクトで実施される論理を定義する規則データベース50を使用しうる。実行エンジン48はまた、プラント10内の(並びにプロセスモジュール39のための機能性を実施するためにプロセスモジュール39内の)プロセス要素間の接続を定義する接続行列52を使用しうる。
【0024】
図2は、スマート・プロセスオブジェクト42eの一つをより詳細に示す図である。スマート・プロセスオブジェクト42eは定型スマート・プロセスオブジェクトの一つとして示されているが、当然のことながら、スマート・プロセスオブジェクト42eについて説明されるようにその他のスマート・プロセスオブジェクトは一般に同じ又は類似した要素、機能特性、パラメータなどを含み、且つ、これらの要素、機能特性及びパラメータの詳細又は数値は、当該スマート・プロセスオブジェクトの性質及び用途によってスマート・プロセスオブジェクト間で変更又は変形しうる。更にまた、スマート・プロセスオブジェクト42eはオブジェクト指向型プログラミング環境内のオブジェクトでありえ、よって、それに関連したデータ記憶機構、入・出力及びメソッドを含みうる間、このスマート・プロセスオブジェクトはその他所望のプログラミング・パラダイム又はプロトコルにより作成され、またそれの中で実施されうる。
【0025】
当然のことながら、インスタンス化される前のスマート・プロセスオブジェクト42eは、図1のプロセスプラント10内の物理的エンティティ又は論理エンティティなどの特定タイプのエンティティと関連したオブジェクトである。しかしながら、コピー後又はインスタンスを作成後、スマート・プロセスオブジェクト42eは、プロセスプラント内の特定のエンティティにつながりえる。いかなる場合も、スマート・プロセスオブジェクト42eは、スマート・プロセスオブジェクト42eが関連する論理エンティティから受け取られた又はそれに関するデータを格納するために使用されるデータ記憶機構53を含んでいる。一般に、データ記憶機構53は、製造メーカ、改訂、名称、タイプなど、スマート・プロセスオブジェクト42eが関係するエンティティについての一般情報又は永続情報を格納するデータ記憶機構53aを含んでいる。データ記憶機構53bには、プロセスプラント10内で過去に存在した又は現存するエンティティに関連したデータを含む、スマート・プロセスオブジェクト42eが関係するところのエンティティについてのパラメータデータ、状態データ、入・出力データ、コスト又は変更の対象となるその他のデータなどの可変データを格納しうる。もちろん、スマート・プロセスオブジェクト42eは、所望のあらゆる通信リンクを介してエンティティ自体から、イーサネット(登録商標)バス24を介してヒストリアン28から、又は他の所望の態様にて、定期的又は非定期的な周期で、このデータ(例えば、コストデータ)を受信するように構成又はプログラムされうる。データ記憶機構53cには、スマート・プロセスオブジェクト42eが関係し、且つ、図1のワークステーション20に関連した画面37などのオペレータ・インタフェースを介してオペレータに表示する実際の表示画面に使用されるエンティティのグラフィック表示(図形表現)を格納しうる。もちろん、該グラフィック表示は、パラメータにより定義される情報、又はデータ記憶機構53bに格納されるエンティティについての他の可変データなどのエンティティに関する情報の(データ記憶機構53c内で下線によりマーキングされている)プレースホルダー(位置保持記号)を含みうる。該グラフィック表示がグラフィック表示35のうちの一つの一部として表示装置37上でオペレータに提示される時に、このパラメータデータをグラフィック・プレースホルダーに表示しうる。グラフィック表示(及びスマート・プロセスオブジェクト42e)は、オペレータ又はシステム構成エンジニアがグラフィック表示により描写されるように上流又は下流の構成部分をプロセス要素に接続できるようにする(データ記憶機構53c内で「X」によりマーキングされる)事前に定義された接続点を含みえる。もちろん、これらの接続点によって、スマート・プロセスオブジェクト42eがそのスマート・オブジェクトに接続された要素をプロセスモジュール内に構成されたものとして認識できるようにすることも可能になる。また、これらの接続点は、パイプやダクトなど及び当該要素と関連したストリームなどの必要とされる接続要素のタイプを指定しうる。
【0026】
スマート・プロセスオブジェクト42eはまた、該スマート・プロセスオブジェクト42が使用されるプロセスモジュール内部又は外部で他のスマート・プロセスオブジェクトとの通信を可能にするために一つ又は複数のは入力54及び出力56をを含みえる。他のスマート・プロセスオブジェクトに対する入力54及び出力56の接続の構成は、システム構成エンジニアがプロセスモジュールの構成中に単に他のスマート・プロセスオブジェクトこれらの入・出力に接続することにより、又は、スマート・プロセスオブジェクト間に生じる特定の通信を指定することにより行いえる。これらの入・出力のいくつかは、上記のスマート・プロセスオブジェクトに関する定義済みの接続点に接続されているスマート・プロセスオブジェクトに接続されている、として定義しうる。これら入力54及び出力56はまた、プラント10内の異なる装置又はエンティティ間の接続を定義した後、規則データベース50及び接続行列52内の一組の規則により決定又は定義されうる。該入力54及び出力56(それに関連するデータ記憶機構又はバッファーを含む)は、一般的に、他のスマート・プロセスオブジェクトからスマート・プロセスオブジェクト42eにデータを通信できるようにするため、又はスマート・プロセスオブジェクト42e内部に格納されている又はそれによって生成されたデータを他のスマート・プロセスオブジェクトに通信できるようにするために使用される。これらの入・出力はまた、例えばフィールド装置14と16、コントローラ12内の制御モジュールなどのプロセス制御システム内の他のオブジェクトとスマート・プロセスオブジェクト42e間で通信が行えるようにするためにも使用されうる。
【0027】
また、図2に示されるように、スマート・プロセスオブジェクト42eは、スマート・プロセスオブジェクト42eが使用されるところのプロセスモジュールの実行中にスマート・プロセスオブジェクト42eにより実施されるアルゴリズムでありうるメソッド60(図2のメソッド60a、60b及び60cとして図示)のゼロ個又は一つ又は複数を格納するために使用されるメソッド記憶機構58を含んでいる。一般的に、メソッド記憶装置58に格納されたメソッド60は、プロセスプラント10又は該プラント10内のエンティティについての情報を決定するために、データ記憶装置部分53a及び53b内に格納されたデータ及び他のスマート・プロセスオブジェクトから得られたデータ 、もしくはその他構成データベース又はヒストリアン28などの情報源から入力54及び出力56を介して取得したデータを使用する。例えば、該メソッド60は、スマート・プロセスオブジェクト42eにより定義されたエンティティと関連した不具合を伴う又は不適当な作動状態や、同じエンティティ又はプロセスプラント10内のその他のエンティティと関連したエラーなどを判断しうる。スマート・プロセスオブジェクトのタイプ又はクラスに基づいて、メソッド60を事前に構成又は提供し、また、該メソッド60は通常、実行時中実行エンジン48内でスマート・プロセスオブジェクト42eが実行される度に実行される。スマート・プロセスオブジェクト42eなどのスマート・プロセスオブジェクト内に提供されうる実施例として挙げられるメソッド60のいくつかは、漏れ検知、不感帯、不感時間、移動状態、変動性、状態監視、コスト計算、又は当該のエンティティと関連したその他の状態を含む。
【0028】
該メソッド60はまた、当該のプロセス・エンティティを通して流れる材料のスマート・プロセスオブジェクトに関連したプロセス・エンティティの動作をシミュレートする際の支援を目的として提供されうる。よって、メソッド60は、質量平衡、エネルギー平衡、流量、温度、組成、気相状態、及びプラント10内の材料と関連したその他のシステムレベル又はストリームレベルのパラメータを計算して要素の動作をシミュレートし、それによって提供された入力などに基づいて予期される出力を計算するために提供されうる。もちろん、これらは、スマート・プロセスオブジェクト42eに格納されそれによって実行しうるメソッドのほんの数例に過ぎず、その他にも使用しうるメソッドが数多く存在する。このようなメソッドは一般に、描写されるエンティティのタイプ、エンティティがプロセスプラントにおいて接続される態様及び使用される態様、並びにその他の因子によって決定される。スマート・プロセスオブジェクト42eがシステムレベルの状態やエラーなどを検出するメソッドを格納し実行しうる一方、これらのメソッドはまた、装置についての、プロセス制御モジュールやループなどの論理要素についての、及びその他システムレベル以外のエンティティについてのその他の情報を決定するために使用されうる、ということをここで注記しておくことが大切である。望ましい場合は、メソッド60は、C、C++、C#などの所望のあらゆるプログラミング言語でプログラム又は提供しえ、また実行中にスマート・プロセスオブジェクト42e対象の規則データベース50内の該当する規則により参照される、又はそれのために実行しうる。
【0029】
望ましい場合、各スマート・プロセスオブジェクトには、プロセスモジュール内に接続した場合にスマート・プロセスオブジェクトのシミュレーションの動きを定義するために使用されうる該当するアルゴリズム又はメソッドのライブラリを含みえる。このようなライブラリは、図2のスマート・プロセスオブジェクト42eのプルダウン・メニュー61に図示されており、類似するメニューは他のスマート・プロセスオブジェクトの各々に関連しうる。システム構成エンジニアは、例えばプルダウン・メニュー61を介してシミュレーション・アルゴリズムのライブラリ(いわゆるメソッド1、メソッド2、等)のうちの一つを選択して、このスマート・プロセスオブジェクトをプロセスモジュール39に配置する場合に、スマート・プロセスオブジェクトのシミュレーション動作を定義しうる。このようにして、システム構成エンジニアは、スマート・プロセスオブジェクトがモデルに使用されるプロセスのタイプ又は性質によって、スマート・プロセスオブジェクトに対する異なるシミュレーションの動作を定義しうる。
【0030】
望ましい場合は、システム構成エンジニアはその代りとして、スマートプロセスブロックにより定義されたプロセス要素のシミュレーション動作を定義するためにプロプライエタリの(独自に開発された)又はユーザにより提供されたその他のアルゴリズムを供給しうる。このようなユーザ定義のアルゴリズム(プルダウン・メニュー61内に「ユーザ定義」という項目名で図示)は、スマート・プロセスオブジェクトがプロセスモジュール39内に配置される又はそれによって使用される時に該スマート・プロセスオブジェクトに提供又はそれの中に格納される。この機能によってユーザはシミュレーション動作をカスタマイズでき、それによって、より良い又はより正確なシミュレーションを提供できる。望ましい場合、及び後述の詳細にわたる説明からも分るように、スマート・プロセスオブジェクト42又は各プロセスモジュール39は、スマート・プロセスオブジェクト内のシミュレーション・アルゴリズムの使用を無効にし、その代わりとしてハイファイ・シミュレーション・パッケージ又は、例えば、HYSYS社により提供されるプログラムによりプロセスモジュールの動作を決定するオペレータ発動可能スイッチ(電子スイッチ又はフラグなど)を含みえる。スマート・プロセスオブジェクト又はプロセスモジュールはこの場合、スマート・プロセスオブジェクト自体に含まれるシミュレーション・アルゴリズムを使用する場合とは対照的に、ハイファイ・シミュレーションからシミュレートされたパラメータを得る。
【0031】
実行エンジン48によるグラフィック表示35又はプロセスモジュール39の実行中に、該エンジン48は、入力54及び出力56により定義されるグラフィック表示35又はプロセスモジュール39内のスマート・プロセスオブジェクトのそれぞれに対する通信を実施し、且つ該オブジェクトのそれぞれに対するメソッド60を実施してメソッド60により提供される機能を実行しうる。上記されるように、メソッド60の機能性は、スマート・プロセスオブジェクト内のプログラミングの中に設けうる、或いは、エンジン48が実行する規則データベース50内の一式の規則により定義される機能性を実施するためにスマート・プロセスオブジェクトのタイプ及びクラス、識別情報、タグ名などに基づいて当該規則により定義されうる。
【0032】
なお、スマート・プロセスオブジェクト42eのインスタンスは、スマート・プロセスオブジェクト42eに関連するプロセスモジュールのコンテキスト(状態、前後関係、等)に対応するタグ又は独自の名称を持っており、このタグ又は独自の名称は、スマート・プロセスオブジェクト42eに又はスマート・プロセスオブジェクト42eから通信を提供するために使用され、実行時中に実行エンジン48により参照されうる。プロセスモジュール・タグは制御システムの構成においてユニークなものでなければならない。このタグ付き仕様によって、別のプロセスのグラフィック表示35及びプロセスモジュール39、更には制御モジュール29の要素によりプロセスモジュール39内の要素を参照できるようになる。更にまた、スマート・プロセスオブジェクト42eのパラメータには、期待される単位及びそれに関連する属性を認識する単純なパラメータ(単純な数値、構造化パラメータ又はスマート・パラメータなど)を使用できる。確実に全信号が同一単位で送信又は適切に変換されるようにするために、スマート・パラメータをプロセスルール・エンジン又は実行エンジン48によって解釈及び使用できる。また、スマート規則を適用して、スマート・プロセスオブジェクト(又はプロセスモジュール)用の一群の警告アラームをON/OFFし、オペレータ用にスマート警報戦略且つ又はインターフェースを作成できる。更にまた、スマート・プロセスオブジェクトのクラスは、プラント10のプロセス制御方式内に備えられる設備とモジュールのクラスに関連し、それが解釈又はアクセスしなければならないスマート・プロセスオブジェクトとプロセス変数間における周知のリンク機構を提供しうる。
【0033】
スマート・プロセスオブジェクトはまた、プロセスグラフィック表示又はプロセスモジュールにおいて使用される場合、これらのスマート・オブジェクトが実行時にOFF、起動、正常モードなどの異なるモードにならないようにするために運転モード、状態及び警報動作を含みえ、それの現下の動作状態に基づいてオブジェクトに関連した状態を提供しえ、且つ、検出された状態(パラメータが範囲・限度から外れている、変動性が高い、等)に基づいて警報アラームを提供しうる。スマート・プロセスオブジェクトはまた、複合構造などに共に収集されうるようにクラスライブラリにおいてそれらを分類できるようにするクラス/サブクラス階層を有しうる。更にまた、スマート・プロセスオブジェクトが、それに関連するエンティティが(例えばプラント10内のバッチ制御工程によって)いつ使用されているか又は得られるかを認識できるようにするために、スマート・プロセスオブジェクトは、制御モジュール及び他のオブジェクトなどのその他の要素からの情報を利用しうる。
【0034】
ポンプ、タンク、バルブなどの物理装置、又はプロセス区域、計測又はアクチュエータ、制御方式などの論理構成体など、いかなる所望のプロセス要素にスマート・プロセスオブジェクトを関連しうる。場合によってスマート・プロセスオブジェクトは、材料、電気、気体などをプロセス内のある地点から別の地点まで移動させる配管、導管、配線、コンベア又はその他の装置やエンティティなどを含む接続子に関連しうる。また、(実際の装置又は接続子自体は、プロセスプラント10内においてタグ付けされない又は通信できないかもしれないが、)接続子に関連するスマート・プロセスオブジェクト(本稿において時には「スマートリンク」又は「接続子要素」と呼ばれる)はタグ付けされ、通常、プロセス内のその他の要素間の材料の流れを表わすために使用される。
【0035】
一般に、スマートリンク又はスマート接続子オブジェクトは、異なる物質又は現象 (電流など)がどのように接続部(例えば、蒸気、電流、水、汚水、等)を流れるかを定義する特性又はパラメータを含む。これらのパラメータは、接続子を通る流れのタイプ及び性質(全体的な速度、摩擦係数、乱流又は非乱流のような流れのタイプ、電磁気、等)、及び接続子を通る流れの方向又は複数の方向を示しうる。スマートリンクは、スマートリンクが接続される接続元と接続先オブジェクトのユニット(単位)が確実に一致するようにし、一致しない場合は単位の返還を行うプログラミング又はメソッドを含みうる。また、スマートリンクのメソッドは、実際の接続子を通る流動の速度又は性質、物理的接続の長さ及びサイズ、流送の遅延などを見積もるために、モデル又はアルゴリズムを使用して接続子を通る流動をモデル化しうる。スマート・プロセスオブジェクトのために格納されたパラメータ(例えば、摩擦パラメータなど)をこれらのメソッドにおいて使用しうる。従って、本質的にスマートリンク又は接続子要素により、スマート・プロセスオブジェクトがその他の上流側・下流側オブジェクト又はエンティティを認識できるようになる。もちろん、スマートリンクは、例えば、いかなる所望の又は便利な態様において、その他のオブジェクト間の接続や、システム内における液体・気体・電流などの流体のタイプや、エンティティの上流側と下流側の設定や、当該スマート・プロセスオブジェクトのエンティティの上流側及び下流側に配置されるその他のエンティティや、材料、流体、電流の流動方向、などを定義しうる。一実施形態においては、行列52をプロセスフロー・モジュール実行前に作成してもよく、またそれによって、プラント内の異なる装置間の相互接続(即ち、異なるスマート・プロセスオブジェクト間の相互接続)をスマートリンクに対して定義しうる。実際に、実行エンジン48は行列52を用いて上流と下流側エンティティを確認し、それによりスマート・プロセスオブジェクトと該スマート・プロセスオブジェクトに関連するメソッド間の通信を定義する。更にまた、一つ又は複数の組の規則を備え、スマート・プロセスオブジェクトがその規則により、(該スマート・プロセスオブジェクト内のメソッドの必要性に応じて)お互いに交流してデータをやり取りし、出力接続に関連したスマート・オブジェクトの影響を解消(解決)するようにしても良い。
【0036】
また、望ましい場合、スマート・プロセスオブジェクト42eにより、オブジェクトのタイプに該当しうる、又はスマート・プロセスオブジェクト42eが関係する装置の状況に向けて(重要性及び用途によって)特別に準備された主な文書類(ドキュメンテーション)にURLなどのホットリンクを含みえる。該文書類は供給メーカ支給ものでも、ユーザ独自のものでもよい。該文書類の数例としては、システム設定・構成、起動時及び停止時の処理手順、操作及び保守保全用文書類が挙げられる。望ましい場合は、オペレータがオペレータ用表示画面に表示されるオブジェクトをクリックして、オブジェクト又は関連する装置の状況に関する詳細(該当する場合)及び汎用書類を表示しうる。オペレータはまた、システム・ソフトウェアから独立して保全依頼、操作問題の履歴などの書類に追加・削除・変更などを加えることができる。更に、オペレータ・インタフェースでオブジェクトに知識リンクを追加できる能力を提供するため、またオブジェクトと関連した適切な情報を迅速にナビゲーションできるようにするため、そして特定のオブジェクト・タイプに(更にはオブジェクトの特定のインスタンスにも)顧客特有の作業指示を追加できる能力を提供するために、これらのホットリンクをユーザ設定可能又はユーザ変更可能なものにしても良い。
【0037】
プロセスモジュール及びプロセスグラフィックは、異なるスマート・プロセスオブジェクトの相互接続により一緒に作成されるとして上記されているが、別々に作成するようにしても良い。例えば、スマート・プロセスオブジェクトを使用してプロセスグラフィックを作成しても良く、また、作成完了時に、グラフィック要素及びグラフィック表示におけるそれらの相互接続に基づいて該グラフィックのためのプロセスモジュールを生成しうる。或いは、まずスマート・プロセスオブジェクトを用いてプロセスモジュールを作成し、作成後、プロセスモジュールを作成するために使用されるスマート・プロセスオブジェクトにおけるグラフィック表示要素を用いて構成用アプリケーション38により当該プロセスモジュールのグラフィック表示を自動的に生成するようにしても良い。更にまた、プロセスモジュールとグラフィック表示を別々に作成し、これらの二つの要素内の個々の要素を(例えば、グラフィック表示とプロセスモジュール内の要素のタグ特性を利用して)互いに参照し合うことによりマニュアル操作でつなぎ合わせるようにしても良い。この機構によって、スマート・プロセスオブジェクトは複数の表示により参照されうる。いかなる場合も一旦作成が完了したら、プロセスのグラフィック表示及び関連するプロセスモジュールは、通常要望又は必要に応じてパラメータと情報を交互に通信するものであるが、独立して又は別々に実行することも可能である。
【0038】
より包括的にするために、プロセスグラフィック表示とプロセスモジュールにおいて(又はそれを作成するために)使用しうるスマート・プロセスオブジェクトの特長及び実施例として考えうる特定のものを、以下より詳しく説明する。その後に、該説明される要素と特長を使用して作成されるプロセスグラフィック表示とプロセスモジュールが、制御モジュールに統合されてアドバンスト制御とシミュレーション機能を提供する態様を説明する。後述からも明らかなように、スマート・プロセスオブジェクトの要素と特長は、当然のことながら、ここにおいて論じられる要素と特長に限定されるものではなく、望ましい場合はその他の特長及び要素をプロセスグラフィック表示とプロセスモジュールのうちの一つ又は両方において(又はそれを作成するために)使用することが可能である。更にまた、後述からも明らかなように、以下に記載される一つ又は複数のシミューレーション・システムにおいて使用されるシミュレーション手順はスマート・オブジェクトを使用して構築されたシミューレーション・システムに関連して説明されているが、スマート・オブジェクトをこれらのシミューレーション・システムにおいて使用する必要はなく、これらのシミューレーション・システムを開発又は実施する際にはその代わりとして、その他のタイプのプログラミング技法も使用できる。
【0039】
一般的に言って、事前に定義された一組のグラフィック要素を構成用アプリケーションに組み込み、プロセスプラントを反映するオペレータ表示又はグラフィック表示をユーザが構築できるようにしても良い。これらのグラフィック要素は、制御システムと接続するオンライン計測やアクチュエータを動的に表示するために設計されている。また、プロセスの動作を反映する未測定パラメータは、プロセスモジュールにおいて提供されるオンライン・プロセスシミュレーションを使用して計算しうるし、また、関連するグラフィック表示の一体部分としても示されうる。
【0040】
更に、技術的設計・実施又はトレーニングを目的としてシミュレーションに使用されるオンライン又はオフライン作業環境において、プロセスモジュールにより提供されるプロセスシミュレーションは、グラフィック要素及び関連する制御モジュールにおいてプロセス計測値の代わりに使用されうる。関連するプロセスモジュールにより計算されるこれらの数値は、プロセスグラフィックで示されるようなマニュアル外乱値だけではなくアクチュエータの位置又は状態に基づくものでありえる。このように、グラフィック表示及び制御モジュールは、オンライン又は制御状況の両方、及びオンラインと及びオフライン・シミュレーション状況の両方において使用しうる。また、多くの場合グラフィック要素の静的部分が周知のグラフィック・ライブラリに含まれる3次元構成素子と同じ様に見えるかもしれないが、これらのグラフィック要素の更なるユニークな特長又は特性、これらの要素により表示される情報、及び制御システム入・出力及びプロセスシュミレーション・モジュールへのリンクについて、グラフィック要素のタイプ及び実施例として考えられるものをいくつか以下に説明する。
【0041】
スマート・プロセスオブジェクトと関連したプロセスモジュールにおけるグラフィック要素及びシミュレーション・アルゴリズムは一般的に言って、ストリーム要素、プロセス接続要素、アクチュエータ要素、処理要素、計測要素及び推定特性要素を含む複数の異なるタイプのプロセス要素の一つに属する。ストリーム要素は、一般的にプロセスプラント内の材料流れを定義し、且つ、成分、密度、流量、温度、圧力、重量、且つ又はその他材料の流れを定義するいかなるパラメータをグラフィック表示で示して画面上に表示しうる。流れ要素は、プロセスモジュール入力時に定義され、プロセスモジュール内の要素に備えうる。またそれによって、材料の流動をプロセスモジュールによりグラフィック表示にてモデル化及び描写することが可能になる。同様に、グラフィック表示で表示されるプロセスプラントの一部分における材料の出力をグラフィック表示上で図示するために、プロセスモジュールの出力又は末端にストリーム要素を図示するようにしても良い。ストリーム要素はまた、異なるグラフィック表示(及び関連するプロセスモジュール)がお互いとどのように接続するかを定義するために使用されうる。例えば、一プロセスモジュール内の出力ストリームは別のプロセスモジュール内の入力ストリームでありえ、別のプロセスモジュールの入力ストリームで使用される値を供給しうる。ストリームには、名称(例えば、pHストリーム)、方向(例えば、流入)、計測(例えば、流量、圧力、温度)及び組成(例えば、窒素、アンモニア、等)の四つの部分を含みうる。但し望ましい場合には、他の部分又はパラメータをストリームに含むことができる。
【0042】
プロセス接続要素は、固形物質・液体・蒸気・気体などプラント内の材料がある装置から別の装置に配送又は搬送される方法を定義する。プロセスを通じての原料流を明白に図示するために、配管、ダクト及びコンベアを含む三つの異なるタイプのプロセス接続子を使用しうる。もちろん、電気化学的プロセスにおける電力潮流を取り扱うための電気ケーブルなどのその他の接続要素も同様に使用しうる。配管は一般的にプラント内の液体及び高圧蒸気又は気体の流れを図示(及びシミュレート)するために使用される。ダクトは一般的にプラント内の低圧気体の流れを図示(及びシミュレート)するために使用される。コンベアは一般的に処理装置間における固形物質の移動状態を図示(及びシミュレート)するために使用される。このため、各プロセス接続要素が、配管接続部、ダクト接続部、又は装置の投入側又は出力側で材料を供給するために使用されるコンベア接続部などの接続部タイプを定義する。
【0043】
望ましい場合は、接続部により搬送される材料の特性を上流側の入力により決定する。この情報は、接続が完了しているかどうかを定義する接続状態変数と共に、グラフィック表示上で接続要素の特性として利用できるようにしても良い。接続要素は、処理要素出力、アクチュエータ要素出力又はストリーム要素出力を始点としうる。同じように、接続要素は、処理要素入力、アクチュエータ要素入力又はストリーム入力で終端しうる。
【0044】
グラフィック表示で接続要素の上にカーソルを置くことにより接続要素の特性が自動的に表示されるようにしても良い。また、接続要素上に計測又は推定特性要素(下記に定義)を置くことにより、該接続要素に関連した特性が永久表示として画面上に表示されるようにしても良い。望ましい場合、ある要素の出力上で(ストリーム出力、処理要素出力又はアクチュエータ要素出力などの上で)マウスの左ボタンを押下し、マウスのボタンを押下しながらある要素の入力上にカーソルを置くことによっても接続要素を作成しうる。正確に接続を確立するためには、上流側要素の入・出力タイプ(パイプ、ダクト又はコンベア)と下流側要素の入・出力タイプが一致していなければならない。該接続は自動的に上流要素のタイプを示すようになる。
【0045】
望ましい場合、配管要素は配管接続としてプロセスグラフィック表示において表示又は描写でき、ダクト要素(例えば、空気又は気体)はダクトの形で表示でき、また、コンベア要素はコンベヤーベルトの形で表示しうる。配管、ダクト及びコンベア要素の接続は処理要素間で自動的に接続(ルーティング)でき、また、これらの要素の描写の外側に矢印で流れの方向を表示しうる。上流側の出力が二つの接続により共有される場合、パイプ、ダクト又はコンベアに「T」要素を含みえる。同様に、「T」要素は複数の出力を連結するためにも使用しうる。コンベア要素の色又は他のグラフィック特性を変更してそれの状態(例えば、稼動中/停止中、流動中/流動停止中、接続状態、等)を示すこともできる。一般的に、コンベアに沿った原料流は、コンベアに接続されるモータ駆動機構により決定される。従って、(以下、より詳しく説明されているアクチュエータである)モータ駆動機構のアクチュエータをコンベアに接続しても良い。また、(後述される)計測要素はパイプ、ダクト及びコンベア要素に接続でき、それによって、例えばコンベアの速度 、パイプ又はダクト内の材料の流れ、コンベア、パイプ又はダクト上の又は内の材料の特性(例えば、水分又は重量)など、パイプ、ダクト又はコンベア要素に関連した計測を表示することが可能になる。また、表示される特性要素は、例えば測定されないパイプ、ダクト又はコンベア上の又はそれの中の材料の特性(例えば、材料の成分)を表示するために追加しうる。
【0046】
望ましい場合、配管、ダクト及びコンベア接続要素の各々は、失われた接続を(例えば、色の変化により)グラフィックで又は動的に反映しても良いし、また、選択された特性(圧力、温度、長さ、等)が設定限界値から外れていることも(例えば、色の変化により)グラフィックで又は動的に反映しても良い。更に、関連するプロセスモジュールにより計算されるパラメータもまた該グラフィック上に表示しうる。例えば、上流の接続から提供される特性(接続状態が良いか悪いか、選択された接続要素の一つ又は複数のパラメータを制限するか、等)は、グラフィック表示に表示され、接続要素、又はその接続要素により流動する流れについての情報をオペレータに提供しうる。
【0047】
一般的に言って、アクチュエータ要素は、流れに関するの何らかの発動機能を行い、異なる接続要素間、又は処理要素と接続要素間に設置しうる要素である。アクチュエータ要素の例としては、(アクチュエータ付き)調整バルブ、(アクチュエータ付き)ON-OFFバルブ、(モータ付き)ポンプ、(モータ付き)押し込み送風機、(モータ付き)吸出し送風機、(ON-OFFバルブ付き)エダクタ、(駆動機構付き)ダンパ、(変速モータ付き)供給装置、(コンベア要素に備え付けうる)コンベヤモータ駆動機構、などが挙げられる。
【0048】
グラフィック式にバルブ要素を描写することにより、そのバルブを制御する関連制御ブロック内の、意図するバルブの位置を(例えば、アニメーションにより)、バルブの不具合(例えば、色の変化により)、バルブ全開放/閉鎖位置(例えば、色の変化により)、そしてAO、DO、DC、設定点、PV、OUT、モードなどを(例えば、数字の列又は他の指標により)動的に反映しうる。(プロセスモジュールにおいて使用される)バルブ要素に関連するシミュレーション要素は、バルブ・アクチュエータに関連するパラメータ(出口圧、質量流量、液体温度、液状組成物、吸込圧力及び出口圧など)を計算するシミュレーション・アルゴリズムを有しうる。また希望に応じて、シミュレート又は計算されたパラメータをプロセスグラフィックに表示しうる。但し、ユーザ又はシステム構成エンジニアは通常、バルブと関連した制御モジュールにおけるAO、DO又はDCブロックへの参照、並びにバルブのタイプ (例えば、線形、急開、等率〈%〉、バルブ寸法、等)や開閉ストローク時間を設定しなければならない。もちろん、バルブを経由して流れる材料についてのバルブの動作をシミュレートする際に使用できるシミュレーション・アルゴリズムは、バルブのタイプ及び寸法設定情報に依存しうる。
【0049】
ポンプ要素のグラフィックによる描写は、モータ状態を(例えば、色の変化により)、関連するDO又はDC機能ブロックモード及び設定点を(例えば、記号列を使用して)、(変速駆動機構を使用の場合は)モータ速度を、(変速駆動機構を使用の場合は)AO設定点、PV、OUTモードを、そしてその他所望のパラメータを、動的に反映しうる。同様に、この要素を対象にした(プロセスモジュールにて使用される)プロセスシュミレーションにより、出口圧、液状組成物、液体の温度及び質量流量などのパラメータを決定又は計算しうる。(なお、該パラメータをグラフィック表示において表示しうる。)この場合、ユーザはポンプのタイプに基づいて、ポンプ曲線を定義する必要がありうる。但し、ユーザは、モータ始動/停止に関連したDO又はDCブロックへの参照と、変速駆動機構(使用されている場合)の関連AO機能ブロックへの参照と、ポンプの動作を定義するためのポンプ曲線(例えば、圧力 対. 流量)とを設定しうる。
【0050】
押し込み送風機又は吸出し送風機のアクチュエータ要素のグラフィックによる描写は、モータの状態や、DO又はDC機能ブロックモードと設定点、モータの速度AO設定点、PV、OUT、DO又はDC機能ブロックモード(変速駆動機構を使用の場合)、及びその他所望のパラメータ(いずれもグラフィック表示において表示しうる)を動的に反映する描写を備えうる。この要素を対象にした(プロセスモジュールにおいて使用される)プロセスシミュレーション要素により、出口圧、気体組成、気体温度及び気体流量などのパラメータを決定又は計算しうる。(また、該パラメータをグラフィック表示において表示しうる。)ユーザは、モータ始動/停止用の関連するDCブロックへの参照や、変速駆動機構(使用されている場合)のAOブロックへの参照や、シミュレートされるファンの動作を定義するためのファン曲線(圧力に対して流量)を設定しうる。
【0051】
場合によって、特定アクチュエータ・タイプは、特定タイプの接続(例えば、パイプ、ダクト又はコンベア)と共にだけ使用されうる。下表は、典型的なアクチュエータ要素用の実施例として挙げられる接続制限のいくつかを定義するものである。
【表1】
【0052】
処理要素は、プラント内の材料又はストリームを処理するプラント設備を何らかの態様で含んでいる。一般的に言えば、処理要素間の入・出力は全て接続要素を介して作成される。標準の処理要素としては、タンク(垂直及び水平)、ヒータ、スタティックミキサ、反応装置、混合機、エアヒータ、及びその他いかなるタイプの単純又は標準処理作業を実行する要素が含まれている。標準処理要素について、ユーザは、物理的設備の特性(例えば、サイズ、容量など)と共に要素への入・出力点数を指定しうる。これらの標準処理要素のシミュレーション・アルゴリズムと静的表示は、構成時ユーザによって上記のように選択できるが修正変更はできないように設定しうる。もちろん、望ましい場合は、その他の、一般により複雑なプラント設備(例えば、蒸留塔、蒸発器、分離器、ボイラ、等)を、カスタム処理要素として実施しうる。該静的表示、入・出力点数、及びこのようなカスタム処理要素のシミュレーション・アルゴリズムは、ユーザーインタフェースの要求条件を満たすように修正変更しうる。一旦カスタム処理要素が定義されると、それは、再使用されうる又は、別の処理要素の作成における始点として使用されうる複合体又は定型(テンプレート)として保存されうる。
【0053】
タンク標準処理要素(垂直又は水平のいずれか)は、タンクへの配管接続に基づいて構成されうる。また、タンク要素は、タンク内の液面レベルを(例えば、動的アニメーションを使用して)動的に反映したり、且つ液面レベルが満タン(100%)又は空になっている状態を(例えば、色の変化を使用して)動的に反映したりもしうる。タンク用のプロセスモジュール・シミュレーションは、グラフィック表示を介して、出口での温度、出口での組成、液体の温度及びシミュレートされたタンク液面レベルなどのパラメータを計算且つ表示しうる。但し、システムにタンクを結び付けるために、ユーザ又はシステム構成エンジニアは、入・出力の接続数、タンクへの完全な接続、タンクの特性、サイズ(例えば、径と高さ)などを構成する必要がありうる。
【0054】
ヒータ処理要素は、グラフィック表示を介して、(例えば、色の変化を使用して)熱伝達係数、出口における生成物の温度、入口における生成物の温度、(一定降下と仮定した)出口圧などを動的に計算且つ反映しうる。ユーザ又はシステム構成エンジニアは、ヒータへの完全な接続、ヒータ表面積及び清浄時の熱伝達係数を構成する必要がありうる。
【0055】
もちろん、スタティックミキサ、反応装置、混合機、エアヒータ、熱交換器などその他の処理要素は、これらのタイプの装置の条件に合うように仕立てられた表示及びシミュレーション能力を備えうる。蒸留塔、蒸発器、分離器、ボイラなどの標準ではない処理要素は、容器槽と関連したシミュレーションが標準選択に含まれていない場合はユーザにより定義しうるカスタム処理要素を使用してグラフィック式に表わされうる。これらの要素における処理は、容器槽の各入力から各出力に関係するステップ応答モデルとして記述又は定義しうる。入力は気体のストリーム且つ又は液体のストリームでありうる。オプションとして、ユーザは状況に応じて処理要素の入・出力間の関係を示す方程式を定義しても良い。また、これらの方程式は、シミュレーションを実行するために当該の要素を使用してプロセスモジュールに格納されうる。望ましい場合は、いくつかの単純な静態図表の表示を提供し、カスタム処理要素と関連した静的なグラフィックをユーザが迅速に作成する際に役立てても良い。これらの単純なグラフィックを使用すれば、ユーザは、所望の入・出力接続数とカスタム処理要素にサポートされる接続のタイプ(例えば、パイプ、ダクト又はコンベア)を指定するだけで済むようになる。また、それに応じて、グラフィック単位体が表示され、オペレータ・グラフィックの作成に直ちに使用できるようになる。望ましい場合、ユーザがシミュレーション・アルゴリズムをステップ応答として指定することにした際には、プロセス要素の各入・出力と関連したゲイン及びいかなる動特性も指定しうる。ユーザがカスタム・アルゴリズムを選択すると、表現式エディタがユーザに提供されるようにし、それを使ってユーザがシミュレーション・アルゴリズムを定義するようにしても良い。カスタム処理要素出力の特性は、選択されたメソッドに基づいて、別々に計算されうる。更に、ユーザは、自ら別の組込ソフトウェアで定義した一つ又は複数のアルゴリズムを参照しうる。
【0056】
加えて、カスタム処理要素を作成するために、事前定義された複合体又は定型をいくつか備えるようにしても良い。これらの定型には、例えば、流出気体O2や流出気体CO、生成された蒸気、ボイラ胴液面レベル及びボイラードラフトなどを計算するカスタム・アルゴリズムを有するボイラ定型が含まれる。このような定型は単一の燃料入力に基づきうる。但し、該定型を修正変更することにより、複数の燃料を伴うボイラをシミュレートすることが可能になる。その他の事前定義されうる定型としては、噴霧乾燥器カスタム処理要素と共に使用され且つ分離器の動作をモデル化するためにステップ応答モデルを含みうるところの特殊容器槽−遠心式分離器定型を含みうる。同様に、カラム定型、噴霧乾燥器及び蒸発器本体は、予期されるプロセス応答を定義するためにステップ応答モデルを利用しうる。蒸発器においては、エネルギー入力及び入力流の濃度に基づいて、蒸気放出及び出口流の濃度を計算できる。複数の蒸発器要素は、多重効用蒸発器を作成するために熱交換器及びエダクタの要素と一緒に接続されうる。同様に、特殊容器槽−排気筒カスタム定型処理要素は、ボイラ処理要素と共に使用されうる。この場合、入口の特性は、そう望む場合は変更せずに、又は排気筒にてなされる放出低減を反映するように、排気筒を通して維持されうる。
【0057】
グラフィック表示及びプロセスモジュールを作成するために使用できるその他のタイプの要素には、計測要素及び特性要素が含まれる。計測要素には、(物理的なトランスミッタに関連した測定値にアクセスするためにグラフィック表示で使用されうる)トランスミッタ要素及びスイッチ要素が含まれる。一般に、トランスミッタ要素は、実際のトランスミッタ(センサ)に関連した不良状態又は不明状態、制御モジュールにおける関連AI機能ブロックのモード、測定値及び測定単位など、又は実際のトランスミッタと関連したその他のデータを動的に反映しうる。オフラインモード(又はシミュレーションモード)においてトランスミッタ要素は、AI又はPCIブロックと関連した値ではなくプロセスモジュールにより提供されるシミュレーション値にアクセスし表示するために使用されうる、或いは、
測定値をシミュレートされた制御ルーチンで使用される計測として制御モジュールにおける関連AIブロックに提供するために使用されうる。トランスミッタ要素は、接続要素又は処理要素に追加でき、また、このようなトランスミッタ要素が表示に追加された時点で、一般にユーザがそれに関連する(計測を提供しているコントローラ方式の)AI、PCI又はDIブロックを識別する必要がある。オンライン・モードにおいて、計測の値はこの計測要素の隣りに示しうる。オフラインモード(又はシミュレーションモード)において、(対応するプロセスモジュールにより開発されたような)計測のシミュレート値が自動的に表示されうる。オンライン動作中、ユーザは、計測ミスが発生した場合に、制御と表示をシミュレート値に切り替える選択を行うことができる。
【0058】
スイッチ要素は不良又は不明状態、関連するDIのモード(例えば、マニュアル又はOS)及びスイッチの離散値(オン、オフ、等)を動的に反映しうる。オフライン・シミュレーションモードにおいて、ユーザは、グラフィック表示及び制御モジュールにおけるスイッチ・パラメータにアクセス且つ変更するために、シミュレーション値又はマニュアル値と状態を選択することにより、且つスイッチの値と状態をマニュアル操作で入力することにより、スイッチ表示要素を使用しうる。但し、ユーザは一般に、制御方式中の関連DIブロックへの参照、スイッチをトリガする要素特性への参照、及びスイッチの状態変化に関連した限界値及び不感帯域を提供することにより、スイッチ要素を構成しなければならない。
【0059】
推定特性要素は、一般にプロセスモジュールにより決定されるようにシステムの推定特性を表示し、当該要素のいかなる特性を表示するために接続又は処理要素に追加されうる。この要素が接続要素又は一台の設備に配置されると、ユーザは、表示されることになっている特性を閲覧して選択できる。よって、物理的計測により提供されないシミュレート特性を、推定特性要素の使用を通じて表示しうる。このような推定特性要素は、正常な又は不良の接続、推定特性値、及び関連する限界値から外れた特性又は変化を動的に反映しうる。一般に、ユーザは、特性が限界値から外れた場合に表示されるべきその要素の特性への参照及び限界値や色の変化を設定しなければならない。
【0060】
当然のことながら、処理要素、アクチュエータ要素及び接続要素にトランスミッタ要素と推定特性要素を付随することにより、これらのプロセス要素の入・出力と関連した特性を、オンライン動作中に、又はオンライン・シミュレーションとオフライン・シミュレーションの両方において参照しうる。これらの特性は、グラフィック表示で見えるように表示しても良い。
【0061】
一般的に言って、オペレータは、一つ又は複数のプロセスモジュール39又はグラフィック表示をプロセス10の稼動中に実施できるように或いはシミュレーション環境において実施できるように一つ又は複数のプロセスモジュール39又はグラフィック表示を作成するために、構成用アプリケーション38を作動又は実行しうる。一実施形態において、構成用アプリケーション38は、図3に示されるような構成用画面をシステム構成エンジニアに提示する。図3に見られるように、構成用画面表示64は、ライブラリ又は定型欄65及び構成欄66を含んでいる。定型欄65は、(図2のスマート・プロセスオブジェクト42を含みえ、上記接続、計測、ストリーム、処理及び推定特性要素のいかなるものでありうる)複数セットの定型スマート・プロセスオブジェクト67の描写を含んでいる。望ましい場合は、グラフィック定義だけを有する非スマート要素68も提供されうる。根本的に、定型67及び68は、プロセスモジュール又はグラフィック表示(又はその両方)の中のスマート・プロセスオブジェクトのインスタンスを作成するために構成欄66上にドラッグして移動しうるジェネリック・オブジェクトである。図中、部分的に完成されているプロセスのグラフィック表示35cが、ストリーム出力を提供するような上記スマートリンク又は接続子要素でありうるところの流路接続子により相互接続された一つのバルブと二つのタンク、二つのポンプ、一つのフロー・トランスミッタ及び二つのセンサを含んだ状態で示されている。なお、グラフィック表示35cは、スマート・プロセスオブジェクト及び非スマート要素の両方で構成されうる。
【0062】
グラフィック表示35cなどのグラフィック表示(又はプロセスモジュール)を作成時、システム構成エンジニアは、定型欄65に示されるスマート・プロセスオブジェクト67及び要素68を選択し、構成欄66の上までドラッグしていかなる所望の位置に移動しうる。一般に、システム構成エンジニアは、装置を描写する一つ又は複数のスマート装置プロセスオブジェクト67a又は非スマート要素68を選択し構成欄66上にドラッグすることになる。それからシステム構成エンジニアは、スマート接続子プロセスオブジェクト67bを使用して構成欄66内のスマート装置プロセスオブジェクトを相互に接続し、画面表示内に入力・出力ストリーム67cを配置しうる。なおまた、非スマート要素を画面表示に追加しうる。この過程において、システム構成エンジニアは、ポップ・アップ特性メニューなどを使用して各スマート・プロセスオブジェクトの特性を変更しうる。具体的には、これらのスマート・プロセスオブジェクトに関連したメソッド、パラメータ、タグ、名称、ホットリンク、モード、クラス、入・出力などを変更しうる。プロセス又はシステム構成エンジニアが、通常プロセスの構成、区域などを表わす各要素の中から所望するものを使用してプロセスモジュールを作成時、該システム構成エンジニアは、該モジュールと関連した規則又はその他の機能性を定義しうる。このような規則は、質量平衡及び流量計算など、システムレベルのメソッドの性能と関連するような実行規則でありうる。また、プロセスエンジニア又はオペレータは、プロセス表示画面がオンラインである時に有用なトレンド及びフェイスプレートを追加することにしても良い。グラフィック表示35cを作成後、システム構成エンジニアは、その画面表示をメモリに保存しうるし、そしてその時に、又はその後に、実行エンジン48がグラフィック表示を提供しうるような態様で当該の画面表示を実行エンジン48にインスタンス化及びダウンロードしうる。もちろん、システム構成エンジニアは、同じ又は類似した方法でプロセスモジュールを作成することも可能である。(但し、プロセスグラフィック表示要素とは対照的にプロセスモジュールの要素には異なるグラフィックを描写しうる。)更に、オペレータは、プラント稼動中に詳細表示レベルを有効にする選択を行いうる。例えば、詳細表示レベルの一つによって各接続での組成を示すようにしうる。
【0063】
上記されるように、プロセスグラフィック又はプロセスモジュールには特定のタグが提供されうる。例えば、グラフィック表示又はプロセスモジュール内のスマート・プロセスオブジェクト要素は、例えば、プロセス制御システム内で選択された一台の設備や経路などその他の因子に基づき実行エンジン48によって実行時中に書込める又は選択できるように別名を含んだタグを備えうる。プロセス制御システムにおける別名及び間接参照の使用については、本発明の特許権者に譲渡され且つ参照することによりここに援用されるところの米国特許第6,385,496号にて詳細にわたり説明されている。これらの技法のいかなるものも、ここに記載されるスマート・プロセスオブジェクト用のタグに含まれる別名を提供且つ解消するために使用されうる。別名及びそれ同等のものを使用することにより、同じプロセスモジュールは、複数台の設備などの異なる表示構成を含みうる、或いは、複数台の設備などの異なる表示構成をサポートするために使用しうる。
【0064】
図3の画面表示64には、プロセスモジュール又はグラフィック表示の異なる表示ビューのタブ(表示ビュー1、表示ビュー2及び表示ビュー3)が示されている。これらのタブは、同じスマート・プロセスオブジェクトをいくつか使用するプロセスに関連した異なるユーザ用が異なる表示にアクセス及びそれを作成するために使用されうる。
【0065】
一般的に言って、システム構成エンジニアがプロセスモジュール又はグラフィック表示を作成すると、スマート・プロセスオブジェクトは、構成用アプリケーション38いよって各オブジェクト間の接続と共にデータベースに自動的に格納される。その後、このデータベースは、例えば、同じスマート・プロセスオブジェクトを一つ又は複数用いて異なる表示ビューを提供しうるその他のプロセスモジュール及びグラフィック表示を作成するために使用できる。よって当然の如く、システム構成エンジニアは、第2の表示ビューを作成する際、単に、データベース内に既に作成され格納されているスマート・プロセスオブジェクト及び、第2の表示ビューにそのスマート・プロセスオブジェクトを配置するためのそれに格納されるいかなるメソッドなどを参照するだけで第2の表示ビューを作成できるようになる。このように、プロセス制御モジュール及びグラフィック表示が作成されるにつれてデータベースにそのデータが投入され、また当該データベースによって、プロセスフロー・データベース内に既に存在するスマート・プロセスオブジェクトを使用することによりいつでも別の表示ビューやモジュール及びグラフィック表示を作成且つ実行できるようになる。また、このようなデータベースの使用により、該データベース内の各スマート・プロセスオブジェクトは、プロセスモジュールをサポートしうる、又は、プロセスモジュールの中で使用され複数のグラフィック表示において参照できるようになる。当然の如く、これらのモジュール用に画面表示を構築してからプロセスモジュールで使用される、又はそのプロセスモジュールと関連したフローアルゴリズムを指定することによりプロセスモジュールを構築しうる。もちろん、個々のプロセスモジュールは、異なるコンピュータに分散され、その異なるコンピュータにより実行されうる。また、プロセスモジュールは、お互い連動して作動するように、同じ又は異なるコンピュータのいずれかにおいてお互い通信可能に接続されうる。このようにすると、プロセスモジュールを一緒に結び付けるために入力及び出力ストリームを外部から参照できるようになる。
【0066】
上記のように、システム構成エンジニアは、プロセスモジュール又はグラフィック表示・作成作業の一環として、プロセスモジュールのシミュレーション・アルゴリズムを添え付けうる、或いは提供しうる。これらのシミュレーション・アルゴリズムは、プロセスモジュールにより描写又はモデル化されたプロセスに関する質量平衡計算、流量計算、能率計算、経済計算など、特定のプロセス又はシステムレベルの特性を計算又は決定するように事前に構成されうる。結果として、プロセスモジュール自体は、モード、状態及びアラームの挙動を含んでいても良く、またワークステーションに割り当てることができ、更には表示ダウンロードの一部としてダウンロードしうる。望ましい場合、シミュレーション・アルゴリズムは、プロセスモジュールのスマート・プロセスオブジェクトに備えられるデータを使用してプロセスシミュレーションに関係する質量平衡計算、熱平衡計算、流動経路指定計算、流動能率計算、流量最適化計算、経済計算、又はその他所望の計算を行うために実行エンジン48により実行されうる。なおまた、これらのシミュレーション・アルゴリズムは、制御法(即ち、コントローラ、フィールド装置などに関連し且つそれにダウンロードされた制御モジュール)からのパラメータにアクセスし、逆に、これらの制御モジュールにデータ又は情報を提供しうる。
【0067】
当然のことながら、実行エンジン48は、プロセス・アルゴリズムが全ての画面表示上に構成された全てのプロセスオブジェクト及びリンクの融合(amalgamation)を全体にわたって実行することを可能にするために必要とされる。よって、一般に、関連するグラフィック表示のいかなるものがロードされているか(即ち、呼び出されてユーザに情報を表示しているか)に関わらず又はそれに関係なく、(プロセスモジュール内の)シミュレーション・アルゴリズムが実行されることになっている。もちろん、シミュレーション・アルゴリズムは、プロセス10全体、又はプロセス10の定義されるサブセット全体にわたり照合確認されうる。更に当然のことながら、いかなる特定のプロセスモジュールの実行中に、実行エンジン48は、プロセスモジュール内の相互に接続されるオブジェクト又はエンティティが該プロセスモジュールに関連したグラフィック表示に基づいて描かれるところの画面表示をオペレータ・インタフェースに表示してオペレータに提示しうる。画面表示のパラメータ、グラフィックなどは、プロセスモジュール内のスマート要素の構成及び相互接続により決定されることになる。更に、この画面表示又はその他の画面表示上に提供される警告アラーム及びその他の情報は、特定のプロセスモジュールに関連したシミュレーション・アルゴリズム及びスマート・プロセスオブジェクト内のメソッドにより定義及び生成されうる。
望ましい場合、実行エンジン48は、プロセスモジュールの画面表示を一つ以上のオペレータ・インタフェースに提供しうる、或いは、実行エンジン48がプロセスフロー・モジュールを実行し続けることによってそれに関連するメソッド、アラーム挙動、フローアルゴリズムなどを実行しても画面表示を提供しないように構成又は設定しうる。
【0068】
望ましい場合は、グラフィック表示からプロセスモジュールを自動的に生成しうるし、またその逆も同様にプロセスモジュールからグラフィック表示を自動的に生成しうる。また、プロセスモジュールに利用可能な機能性はプロセス・グラフィック要素により決定される。ここで明確にしておくべきことは、プロセスモジュールがプロセスのグラフィック表示を影付けできるように構築するのが好ましいということである。結果として、ユーザがプロセスのグラフィック表示を構成時、該ユーザは、質量流又はエネルギーの流れなどのストリームといったプロセスモジュールに関する追加情報を含む能力を得ることができる。これらのストリームは、シミュレーション機能ブロックにより必要とされる開始条件を確立するためにプロセスモジュールにおいて使用される。
【0069】
また、プロセスモジュールはコンピュータで実行される実際のソフトウェア・モジュールであるので、コントローラモジュールと関連したパラメータや制御法や画面表示などを使用するためにコントローラモジュールにより参照されることも、また該コントローラモジュールを参照することもプロセスモジュールにとって可能になる。また、この能力を使用して、プロセスのグラフィック表示から独立してプロセスモジュールを作成することも可能になる。
【0070】
一般的に言えば、プロセスモジュールは、処理要素、ストリーム及びそれらの関連する接続からなる。(プロセスモジュール内の)プロセス・グラフィック要素とシミュレーション要素との間には一対一対応の関係が存在するので、グラフィック表示を構築し、当該の画面表示から対応するプロセスモジュールを自動的に生成することがユーザにとって可能になる。もちろん、望ましい場合、ユーザは、プロセスモジュールを作成し、それからスマート・プロセスオブジェクト内のグラフィックを使用して当該のモジュールからグラフィック表示を自動的に作成するようにしても良い。但し、プロセスモジュールの自動生成を可能にするためには、ユーザが、計測要素及び推定特性要素と関連したアクチュエータ、接続又は処理要素の特性を識別する必要がありうる。また、ユーザは、プロセス・グラフィックを作成する前に(また場合によっては制御モジュールが構築される前に)プロセスシミュレーションを作成する必要がありうる。シミュレーションが構築された後、制御モジュール内のI/Oブロックへの参照を書き込むことが可能になる。また、関連するグラフィック表示が作成されると、特性参照を設定するために既存プロセスモジュールに照合検索することが可能になる。
【0071】
場合によって、プロセス・グラフィックは、プロセスシミュレーションを構築するために必要な全ての詳細を含んでいるとは限らない場合もある。よって、ユーザがプロセス・グラフィックから自動的に作成されたシミュレーション又はプロセスモジュールを編集することを可能にするためにエディタを提供することが望ましい。また、複数のプロセスグラフィックによって同じ設備を表示する必要がありうるので、プロセスグラフィックの作図において各要素が既存プロセスモジュールを参照できることが必要でありうる。
【0072】
一般的に言えば、処理要素に対応するシミュレーションは共通の構造を有することになる。望ましい場合、シミュレーションのパラメータ及びブロック入力接続は、制御モジュールへの参照を必要としないように、プロセスモジュールに格納される。更に、シミュレーションにサポートされる入・出力接続数を拡張可能に定義しうるようにしても良く、シミュレーションの実行により得られた結果は、シミュレーション出力の接続において又はシミュレーションのパラメータとして反映されうる。また、シミュレーション・アルゴリズムは、ステップ応答として定義されうるし、又はユーザにより入力されうる。シミュレーション・アルゴリズムがユーザにより入力される場合、ユーザは各出力の動特性を個々独立して指定しうる。
【0073】
更にまた、パラメータの共通集合が入・出力接続用にサポートされうる。入・出力接続に関連したパラメータは、配列パラメータ又は構造としてブロック間で通信されうるし、且つ、接続状態(例えば、良好、不良、制限付き、等)、流量パラメータ、圧力パラメータ、温度パラメータ、比熱パラメータ、密度パラメータ、又はその他所望のパラメータなどのパラメータを含みうる。場合によって、ストリームの組成などのその他のパラメータが、シミュレーション・アルゴリズムにおいて提供又は使用されうる。この要求条件をサポートするために、標準の及び延長されたストリーム要素を備えうる。延長ストリーム要素構成の一部として、ユーザは、ストリーム要素を定義するために一式の事前定義されたデータ・グループを選択しうる。このような接続の延長は、この情報を利用するブロックに接続する場合のみに可能となる。一般に、拡張パラメータには、グループ名及び複数からなる特定の要素を含みうる。例えば、ボイラ処理要素への燃料流入ストリームには、燃料系や該燃料中のカーボン量、水素量、硫黄量、酸素量、水分量及び窒素量(望ましい場合は全て重量%にて表記可)といった燃料の成分を含みうる。別の実施例においては、ターボジェネレータ処理要素に蒸気ストリームを使用し、関連するシミュレーションへの接続には、蒸気集合、段階に入る蒸気熱関数(実値)、段階を出る蒸気熱関数(実値)、(等エントロピー膨張の場合の)蒸気熱関数などを含む拡張パラメータ集合を使用しうる。
【0074】
プロセスモジュール内のシミュレーション要素が、ハイファイ・シミュレーション・パッケージへのインターフェースとして使用される場合には、拡張グループ集合も使用しうる。この場合、いくつかのストリームの組成はプロセス・グラフィックで見えるように表示しても良い。また、望ましい場合、グラフィック表示に表示される値の作成又は修正変更、並びにグラフィック表示上に提示される制御モジュールの関連フェイスプレート及び詳細画面表示の作成又は修正変更を簡単にするために、対話型編集用プログラムが提供されうる。
【0075】
図4は、上記される要素及び構成用アプリケーションを使用して作成されうるところの、実施例として挙げられるグラフィック表示100を示す図である。具体的に、グラフィック表示100は、水、酸及び基剤から白酢を生成するプロセスプラントの一部分を描写するものである。図4に示されるように、該プロセスのグラフィック表示100は、それに入る入力に「基剤供給」、「酸供給」、「水供給」及び冷却水のストリームを定める四つのストリーム要素102を含んでいる。「基剤供給」ストリーム102は、配管接続要素104を通して、バルブ106として図示されるアクチュエータ要素まで延びる。バルブ106の出力は、配管接続要素104を介して、混合機108の第1の入力に接続される。同じような方法で、「酸供給」102は、まずトランスミッタ要素110に接続され、そこから混合機108に接続される更なるバルブ112に接続される。酸供給102とトランスミッタ110、トランスミッタ110とバルブ112、そしてバルブ112と混合機108は配管接続要素114を介して接続される。
【0076】
図を見れば一目瞭然である如く、混合機108の出力は、配管と二つのトランスミッタ124,126を介して熱交換器122に接続される。冷却水ストリーム102は、バルブ128を介して熱交換器122まで延び、戻り水ストリーム要素131をもたらすためにバルブ130を介して熱交換器を出る。同様に熱交換器122の出力は、出力、即ち酢酸ストリーム要素136を提供するために、トランスミッタ要素132とバルブ134を通じて配送される。必ずしも特定して呼び出されるとは限らないが、あらゆる場合において、グラフィック表示内の要素は配管接続要素を介してお互いに接続される。
【0077】
当然のことながら、グラフィック表示100には、異なる要素と関連したプロセス変数(PV)値など、設定点(SP)値、出力(OUT)値などのパラメータを示す又は表示するために、表示要素自体の特性として生成されうる又は制御モジュール内のブロックを参照する推定特性要素(複数可)やトランスミッタ要素(複数可)として示される別の要素でありうる表示ボックス140が示されている。また、ユーザが何らかの要素の上にカーソルを置くと、画面表示100が被参要素に関連したその他の値を表示するようにもしうる。例えば、ストリーム要素の一つ(酢酸ストリーム出力136など)にカーソルを置くことにより、プロセスのこの地点における酸ストリームの組成、圧力、温度、密度、流量などがグラフィックに表示されるようにしても良い。もちろん、グラフィック表示100に表示される値及びパラメータは、プロセス制御システム内の実際の被参トランスミッタから(例えば、制御システム内のAIブロックからなど)、又は要素の機能性をシミュレートするプロセスモジュール・シミュレーション要素から供給されうる。図4のグラフィック表示100は、白酢を製造するプロセスの稼動中に、或いは、例えば設計又は作業者訓練活動を行うために使用される当該プロセスのシミュレーションを実施する目的で、ユーザに対して提供されうる。
【0078】
図5は、プロセスプラントの更に広い範囲を網羅したものを示す(又はシミュレートした)更にレベルの高い画面表示(又はプロセスモジュール)を形成するために異なるグラフィック表示 (並びに、異なるプロセスモジュール)が共に接続される態様を示す。プロセス・グラフィック100は、図5の画面表示150において、接続点として示されるストリームの入力と出力の一式を備える名称又はラベルの付いたボックスに折り畳み状態で示されている。望ましい場合、ユーザは、図5のプロセス・グラフィック100を、例えばダブルクリックして選択することにより、図4に示される状態に展開しうる。その他の折り畳み状態のグラフィック表示152及び154はまた、入力ストリーム要素156及び158を介して基剤供給、酸供給、水供給並びに冷却水供給に接続された状態で示されている。プロセスのグラフィック表示100のストリーム出力136は、白酢用貯蔵タンク162のストリーム入力160に接続される。同じように、プロセスのグラフィック表示152及び154のストリーム出力は、麦芽酢及びピックリング酢用の貯蔵タンク163及び164のストリーム入力に対してめいめいに接続される。当然のことながら、プロセス・グラフィック152及び154は、めいめいに、麦芽酢とピックリング酢を製造するプロセスプラントの一部分のグラフィック及び、プロセスプラントのこれらの部分に関するデータ及びグラフィックの表示ビューを提供するように構成される。
【0079】
但し、図5には、グラフィックで表示されるプロセスプラントの異なる部分がストリーム要素間の接続を介して共に接続されうることが示されている。具体的に、接続要素と関連した始点特性を定義するために、ストリーム要素を画面表示に含みうる。また、ストリーム要素は、異なる画面表示間の接続点としても使用しうる。このようなページの余白からはみ出した範囲にある画面表示間の接続に関しては、ユーザがストリームをクリックすれば、参照の対象となっている接続を含む関連画面表示を直ちに呼び出すことができるようにしても良い。よって、一般的に言えば、ストリーム要素の質量/組成は、普通、プロセス入力の始点特性(即ち、始点における供給原料の組成など)を定義するため、又は別の画面表示上のストリーム接続へのリンクを定義するために使用されることになる。物質/組成ストリーム要素の入力又は出力にて接続を形成しうる。ストリーム要素について、ユーザは一般的に、ストリームの名称(システム特有であるべき)、ストリームの特性(基準入力又は入力接続が存在しない場合)、ストリームの異なる成分の質量含有率(ストリームが一つ以上の成分から構成される場合)、圧力流量又は流体質量、温度、比熱、密度、必要とされる接続タイプ(パイプ、ダクト、コンベア)、及び被参入力ストリーム(別の画面表示上のストリームにアクセスするために使用される場合)を構成しうる。同様に、エネルギー・ストリーム要素は、プロセス入力と関連した始点エネルギー(例えば、BTU/時間の伝達など)を定義するため、又は別の画面表示のストリーム接続のエネルギー特性へのリンクを定義するために使用されうる。
【0080】
図5には、折り畳み状態の異なるグラフィック表示を相互接続するためにストリームを使用した状態が示されているが、異なるプロセスモジュールを相互接続するために(且つ、該相互接続を図示するために)同手順を利用することもできる。具体的に、プロセスモジュールは、名称及びストリーム要素の入・出力を図示するために折り畳み状態にしうる。また、異なるプロセスモジュールのストリーム出力とストリーム入力間に通信接続又はリンクの描写を使用して、これら折り畳み状態のプロセスモジュールを、その他のプロセスモジュールに通信可能に結び付けられる又は接続できる。
【0081】
図6は、図4のグラフィック表示100に対応するプロセスモジュール100aを示す図である。以下の説明からも明らかになように、プロセスモジュール100aは、図4のグラフィック表示に示される各々の物理的要素のスマート・オブジェクト・シミュレーションを表わすブロックを含んでいる。図を分り易くするために、図4の要素に対応する図6の各シミュレーション・ブロックは、図4と同じ参照番号に「a」を追加して示されている。よって、図6の混合機シミュレーション・ブロック108aは、図4において描写される混合機108に相当するシミュレーションである。同様に、バルブ・シミュレーション・ブロック106a、112a及び118aは、図4に示されるバルブ106、112及び118にめいめい相当し且つ通信可能につながれる。
【0082】
よって図6のプロセスモジュール100aは、グラフィック表示100に示される各要素に対して(スマート・プロセスオブジェクトと関連する又はそれによって指定される機能ブロックとして表わされうる)プロセスシミュレーション要素を含んでいる。また、これらのシミュレーション・ブロックは、接続要素がグラフィック表示100において指定される方法により、且つ グラフィック表示100で指定される接続要素を使用して相互に接続されている。望ましい場合、プロセスモジュール100aは、グラフィック表示100作成後に、又はグラフィック表示100作成中でさえも、自動的に作成されうる。
【0083】
上に示されるように、プロセスモジュール100内のプロセスシミュレーション要素の各々は、入力でこれらのシミュレーション要素に提供される材料ストリーム(複数可)の性質及び、プロセスで使用される機械装置の挙動に基づくシミュレーション機能性(例えば、アルゴリズム、規則、伝達関数、等)を含む。これらのシミュレーションは、処理、アクチュエータ及びトランスミッタ要素の各々の内のSIMブロックにより図6において図示される。装置の動特性及びストリーム(流動)への影響は、よって、プロセスモジュール100a内でモデル化又はシミュレートされうる。アクチュエータ及び処理要素に関連したシミュレーション・ブロックに対して利用可能になるいくつかの考えうる特性の例としては、(吸込温度、流量及び熱容量に基づいた)出口温度、(要素内の入口流体質量及び集積量に基づいた)出口流量、(装置ユニット又は下流側圧力の全体にわたる推定圧力降下に基づいた)出口圧、そして(完全混合及び入口組成に基づいた)出口組成が挙げられる。カスタム計算を実施する場合は、例えば、プロセス入力の変更に対する1次系+不感時間系応答に基づいて、出口特性と関連した組込み式動特性を追加しうる。望ましい場合、ユーザは、計算された各特性に関連した不感時間及び遅延時間を指定しうる。例えば、トランスミッタ及びスイッチなどのプロセス計測要素、及び接続要素については、当然のことながら動特性が被参特性に導入されないと考えられる。但し、トランジション(遷移)及びその他の特性については、望ましい場合にモデル化しても良いことになっている。但し、多くの場合、上流側の接続からの特性は、下流側の接続に直ちに反映されうてる。
【0084】
プロセスモジュール100aを使用して、プロセス・グラフィック100に描写されたプラントの一部分の動作をシミュレートできる。プロセスモジュール100a内のシミュレーション要素からの値はグラフィック表示100のグラフィックに自動的に通信且つ表示され制御モジュールにおいて使用しうることから、このシミュレーション結果が画面表示100に統合される。同様に、トレーニング担当教師は、プロセスモジュール100aにより実行されるシミュレーションにおける特性を作成又は変更するために画面表示を使用しうる。
【0085】
HYSYS、CAPEなどにより提供されるようなハイファイ・シミュレーションについては、望ましい場合、計測及びアクチュエータ要素のI/O参照を定義してからこれらの参照を使用して例えばシミュレーションにおける入出力を行うためのHYSYSにおいて現在使用されているDCSインターフェース表を自動的に作成することにより、該ハイファイ・シミュレーションをシミュレーション機能特性に追加しうる。標準処理要素の定型は、ハイファイ・プロセスシミュレーションを構築するために使用されうるところの、各HYSYSの構成部分(又はその他のハイファイ・シミュレーション構成部分)に対して定義されうる。このようなハイファイ・シミュレーション165は、プロセスモジュール100aに通信可能に接続された状態で図6に示されている。この場合、ユーザは、プロセスモジュール100aの中にあるシミュレーション要素の各々に提供されたシミュレーションを無効にし、その代わりにハイファイ・シミュレーション165により提供されるシミューレーション・パラメータを使用する選択を行いうる。ユーザは、(プロセスモジュール100a内で設定される電子スイッチ、フラグなどでありうる)スイッチ166を有効にすることによりハイファイ・シミュレーション165の使用を指定しうる。
【0086】
一般的に言って、スイッチ166がハイファイ・シミュレーション165を使用するように設定されると、プロセスモジュール100a内の関連するシミュレーション機能ブロックは、シャドーブロックとして機能する、即ち、それらのシミュレーション・アルゴリズム(SIMブロック)は実行されず、その代りにブロック・パラメータがハイファイ・シミュレーション165により読み書きされる。但し、プロセスモジュール100aのブロックは、なおもプロセス・グラフィックと制御モジュールに同じパラメータ及びその他の情報を通信し続け、プロセス・グラフィック100(最終的にハイファイ・シミュレーション165で使用される)及び制御モジュール29から情報を受け取る。
【0087】
当然のことながら、このようにプロセスモジュールを使用することにより、オペレータやエンジニアなどが表示且つ使用できる態様で(即ち、プロセスモジュール100aと関連したプロセスのグラフィック表示100を使用して)プロセスプラント内でハイファイ・シミュレーション・パッケージ(ソフトウェア製品)を簡単且つ便利に接続できる方法を提供できるようになる。具体的に、プロセスモジュールのストリーム・パラメータを、ハイファイ・シミュレーションにてモデル化された流れに至るまで(或いはそれに関連して)接続しうるし、また、プロセスモジュール内の経路指定も自動的に組み立てることができる、或いはハイファイ・シミュレーション内の経路指定と関連できるようになる。実用においてプロセスモジュールは、この場合、プロセスプラントの制御及びシミュレーション環境で使用される制御モジュール及びグラフィック表示にハイファイ・シミュレーション・パッケージ内のデータをマップする便利な方法を提供するところの変数又はデータのプレースホルダーとして使用される。
【0088】
更にまた、プロセスモジュール及び関連するグラフィック表示を使用することにより、(現時点では一般にユーザが高額の費用を支払ってハイファイ・シミュレーション提供者に生成させているような)ハイファイ・シミュレーションのために別の画面表示を提供する必要が少なくなる又は無くなる。むしろ、プロセスモジュールが既にグラフィック表示につながれているので、プロセスモジュールをハイファイ・シミュレーション・パッケージに接続する際にグラフィック表示を使用して、ハイファイ・シミュレーション・パッケージにより計算されるような情報をユーザに提供し、ユーザ又はオペレータがハイファイ・シミュレーション・パッケージへの入力操作を行えるようにもしうる。更にまた、プロセスモジュールが制御モジュールに通信可能に接続されるので、オンライン制御作業を行うために制御モジュールにおいてハイファイ・シミュレーション・パッケージにより生成されたパラメータ又はデータを使用しうる。このようにしてプロセスモジュールを使用することにより、ハイファイ・シミュレーション・パッケージを、制御モジュールに統合できるだけではなく、制御モジュールと並行して実行できるようになる。
【0089】
上記説明からも明らかなように、プロセスモジュール及びグラフィック表示は、グラフィック表示により描写されるプロセスプラントの動作をシミュレートするプロセスモジュールと共にプロセスプラント10の一部分のオペレータ表示ビューを提供するように総合的に作成及び実行しうる。好都合にも、プロセスモジュール及びグラフィック表示は、それに加えて(プロセスプラント内の当該の一区画又は一部分に関する制御作業を行う)一つ又は複数の制御モジュールにも統合されうる(例えば、通信可能に接続されうる)。よって、図1に示される制御モジュール29は、図1に示されるプロセスモジュール39及びグラフィック表示35の一つ又は複数に通信可能に統合されうる。もちろん、制御モジュール29、プロセスモジュール39及びグラフィック表示35は、図1に示されるもの以外にも、いかなる特定の場合における要望又は必要に応じて、プラント10内のその他のいかなるコンピュータ又は装置において実施されうる。
【0090】
図7A及び図7Bは、制御モジュール29、(シミューレーション・システムの一部として使用される)プロセスモジュール39、及びグラフィック表示35の統合をより詳しく示した図である。具体的に、グラフィック表示35は、リサイクル・タンク182の出力と直列接続されたバルブ186と共にリサイクル・タンク182及びポンプ184の入力に接続されたバルブ180を含んでいる。要素180-186は、配管接続要素(参照符号なし)とを介して共に接続されており、そしてストリーム要素はグラフィック表示35の入・出力に備えられており、当該の点で材料のストリームを定義するようになっている。
【0091】
グラフィック表示35の構成の結果、グラフィック表示35と同時に作成されうるプロセスモジュール39は、グラフィック表示35において描写された物理的要素に相当するバルブ要素180a、タンク要素182a、ポンプ要素184a及びバルブ要素186aとして示されるプロセスシミュレーション要素を含んでいる。グラフィック表示35に関連する(それに描かれる)物理的要素の少なくともいくつかを制御する制御モジュール29は、グラフィック表示35及びプロセスモジュール39により描かれる要素内において(又はそれに関連して)制御を提供するところの、相互接続する一式の機能ブロックを含んでいる。この実施例において、制御モジュール29は二つの制御ループ190及び192を含んでいる。第1の制御ループ190は、タンク182への流体の流れについての流入情報を受け取るアナログ入力(AI)機能ブロックと、PID制御を行う比例・積分・微分(PID)制御機能ブロックと、タンク182に送り込まれる材料の所望される流れをもたらすためにバルブ180を操作するアナログ出力(AO)機能ブロックとを有する。同じように、制御ループ192は、タンク182内のレベルセンサにより測定されるタンク・レベル情報を提供するAI機能ブロックと、PID制御ブロックと、タンク182内の液面レベルの制御をもたらすようにバルブ186を操作するためにPID制御ブロックから制御信号を受け取るAO機能ブロックとを含んでいる。制御モジュール29はまた、(例えば、ポンプ184のオン/オフ状態又は作動状態を示すものであり、所望する場合はタンク182に関する制御作業を行うために制御ループ190と192により使用されうる)ディスクリート入力(DI)機能ブロックも含んでいる。
【0092】
当然のことながら、グラフィック表示35、プロセスモジュール39及び制御モジュール29のいかなるものに含まれるいかなる要素は、これらの異なるエンティティ間で情報を交互にやり取りすることにより(以下より詳しく説明されるような)より良い又は更に拡張された制御、シミュレーション及びオペレータ表示画面を提供するために、(関連する通信タグを介して)当該要素の別のものと通信しうる。例えば、図7Bに示されるように、ループ190のPID制御ブロックは、PID制御要素により使用される電流フロー設定点を表示するためにグラフィック表示35に情報を提供するように構成されうる、或いは、これらの要素間の矢印線で示されるようにグラフィック表示35から制御モジュール29で使用される設定点を読み出しうる。同じように、プロセスモジュール39のタンク要素182aは、要素182a内のシミュレーション・アルゴリズムにより決定された通りにシミュレートされたタンク液面レベルを示すシミュレーション出力をプロセス制御モジュール29の制御ループ192のAI機能ブロックに提供しうる。また、このシミュレートされたタンク液面レベルを、オペレータが表示できる追加情報としてグラフィック表示29に示しても良い。
【0093】
望ましい場合、制御ループ192のAOブロックが、グラフィック表示35のバルブ186に情報を提供し、且つグラフィック表示35のバルブ186から情報を受け取るするようにしても良い。それに加えて、ループ192のAO機能ブロックは、それの制御出力をプロセスモジュール39のバルブ要素186aに提供するようにも構成できる。この場合、バルブ要素186aは、物理要素に何らかの機能不良がありうるかどうかを判断するために、バルブ位置の予測値を、制御ループ192で測定される実際のバルブ位置と比較しうる。特定の数値に相違が存在する場合には、可能性として考えられるプロセスプラント内の問題(例えば、不具合センサなど)を示す警報又は警告をグラフィック表示35に生成するソフトウェアをプロセスモジュール39に含みうる。また図7Bにおいて図示されるように、バルブ要素186aは、シミュレートされた計測又はパラメータをオペレータが表示又は利用できるようにグラフィック表示35に提供しうる。このようなシミュレートされた計測又はパラメータは、シミュレートされた又は予測されるバルブ186からの流れ、或いはバルブ186と関連したその他のシミュレートされたパラメータを示しうる。もちろん、より良い又は更に拡張された制御、シミュレーション又は画面表示を提供するために、実測データ又はシミュレーションによるデータ或いはグラフィック表示データを含むその他所望の情報又はデータを、グラフィック表示35、プロセスモジュール39及び制御モジュール29の要素に提供しうる。
【0094】
一般的に言えば、制御モジュールにプロセスモジュールを(望ましい場合、グラフィック表示に加えて)統合することにより結果として生じる多数の利点がある。一実施例においては、上記の如く、システム内で発生する可能性のある問題を検出するために、プロセスモジュールでシミュレーションを実行し、シミュレートされた又は予測される計測、パラメータ又はその他のプロセス値を、制御モジュールにより提供される実測又は計算されたパラメータと比較しうる。例えば、プロセスモジュール39により計算されたバルブからの出力流とプロセス自体で測定されたバルブからの出力流の間に大きな相違が存在するということは、何らかの装置問題が存在することを示すアラームを生成する前提でありうる。逆に、制御モジュール29は、制御モジュール29が不具合センサ又はその他のもはや有効でなく制御モジュールにより利用できない要素を認識しているような状況において制御の拡張を提供するためにシミュレートされたパラメータを使用しうる。この場合、制御モジュール29は、オペレータによる関与を必要とせず、またプロセスを停止せずに、プロセスモジュールにより開発された通りに、(不具合があると分っている、不良状態を伴いうる、等の)測定値又はパラメータを、シミュレートされた出力と自動的に置き換えることができる。また、シミュレートされた制御データと実際の制御データの両方を同じ画面表示上に表示することにより、オペレータ又はユーザがプラント内の問題をより簡単に検出できるようになる、又はシミュレーションモードに役立つ、又はより良い設計作業などを実行する際に役立つ、などの利点を提供できる。
【0095】
図8は、制御モジュール200がプロセスモジュール202(よって、プロセスモジュール202に関連するいかなるグラフィック表示)に通信可能に統合されうる態様をより詳細に示す図である。図8の制御モジュール200は、(例えば、モデル予測制御(MPC)機能ブロックなどの多重入力/多重出力制御ブロックでありうる)制御機能ブロック207に接続された出力を持つ三つのAI機能ブロック204、205及び206を含んでいる。制御ブロック207からの三つの制御出力は、例えば混合用の混合機に異なる流体を提供するプロセス内のバルブを制御しうる三つのAO機能ブロック208、209及び210の制御入力まで延びる。
【0096】
プロセスモジュール202は、制御モジュール200により制御される混合機とバルブを有するプロセスの一部分と関連する。具体的に、プロセスモジュール202は、(プロセスモジュール202の左側に矢印で示される)混合機要素214に入る三つのストリームの流れをシミュレートするバルブ(アクチュエータ要素)211、212及び213を有する。バルブ要素215は、プロセスモジュール202の右側の出力ストリームを定義するために混合機要素214から出る流体の流れをシミュレートし、また、トランスミッタ要素217は、混合機要素214を出る流体の計測された組成を示しうる(又はシミュレートしうる)。なお、図を明確にするために、接続要素はプロセスモジュール202中において単純線として示されている。
【0097】
この場合、AO機能ブロック208-210は、(プロセスモジュール202内の)バルブ211-213で描かれるプロセスプラント内のバルブの動作を制御しうる。一方、AI機能ブロック204-206への制御入力は、(プロセスモジュール202内の)トランスミッタ217で描かれるプロセスプラントの組成センサや流量検出器又はその他のセンサにより提供されうる。
【0098】
後述の説明からも明らかとなるように、プロセスモジュール202及び制御モジュール200内の論理要素は、所望の又は有用な態様において、プロセスモジュール202から制御モジュール200へと、又はその逆に制御モジュール200からプロセスモジュール202へと、情報を提供できるように通信可能に相互接続しうる。一実施例において、(点線218により図示される)通信接続は、(混合機214内の材料組成のシミュレートされた計測を表示する)プロセスモジュール202のトランスミッタ要素217の出力と、プロセス制御モジュール200内のAIブロック206のシミュレートされた入力「SIM_IN」との間に構成されうる。このようにして、混合機214内の流体の液面レベルのシミュレーションによる計測がAIブロック206に提供され、AIブロック206は、例えば、当該ブロックの制御入力(IN)での信号に不良状態が存在する又は何らかの理由で不具合を伴うと分っている場合に、このシミュレートされた入力を使用しうる。このようにして、AIブロック206は、物理的実測が有効でない又は利用可能ではない場合でもAIブロック206と関連した計測の近似値を提供しうる、またそれによって、制御モジュール200が不具合センサの存在下においても機能し制御を提供し続けることを可能にする。また、このような接続を使用すると、(シミュレーション・プロセスモジュール202により提供される)有効なシミュレーションデータがオフラインでのオペレータ教育中に又は制御モジュール200をテストするために使用されるところの模擬モードで制御モジュール200が実行できるようになる。
【0099】
その代わりとして、又はそれに加えて、(点線219により図示される)通信接続が、プロセス制御モジュール200内のAOブロック208の出力と、プロセスプラント内のAOブロック208により制御される実際のバルブをモデル化したバルブ要素211の入力との間に構成されうる。ここで、バルブ要素211は、シミュレートされた模擬データ(即ち、バルブ要素211のSIMブロックにより計算された計測とパラメータ)が正しい(又は実際の制御ルーチン200において使用されるデータと一致する)かどうかを判断するために、実際のバルブから得たデータ又は実際のバルブに送られたデータを使用しうる。大きな相違が存在する時、プロセスモジュール202は、発生する可能性のある問題を示すアラーム又は警告を生成しうるし、或いは、プロセスモジュール202内でより良い又はより正確なシミュレーションを提供するために実数データを使用しうる。例えば、バルブ要素211は、実際のバルブ位置をシミュレーションに反映するために、SIMブロックで実際の制御データをバルブ要素211の位置に使用しうる。もちろん、プロセスモジュール202内の要素と制御モジュール200内の要素間のその他の接続は、拡張された制御且つ又はシミュレーションを行うために、これらの二つのモジュール間でいずれの方向にもデータの流れを提供できるように構成されうる。更にまた、プロセスモジュール202又は制御モジュール200からのいかなるデータは、プロセスモジュール202に関連したグラフィック表示を介して自動的にオペレータが利用できるようにしうる。
【0100】
図9は、プロセスプラントの一部又は一部分に対するシミューレーション・システム250を示す図である。シミューレーション・システム250は、複数のシミュレーション・ブロック252、254及び256及び、望ましい場合は、シミュレーション・ブロック252、254及び256を接続するスマート接続要素260及び262からなる。当然のことながら、特定の実施形態において、シミューレーション・システム250は、実際のプロセスプラント内で作動するプロセス制御ルーチンと並行して(例えば、それと同時に、又はそれと連動して)実行されうる。また、シミューレーション・システム250は、拡張された且つより正確なシミュレーション作業を実行するために、以下更に詳しく説明される態様において、プロセスプラントの構成部分に(又はプロセスプラントの制御システムに)接続されうる。
【0101】
具体的に、図9に示されるように、ポンプ・シミュレーション・ブロック252は、プロセスプラント内の設備の動作など、プロセスプラントの一部分の動作をシミュレートするために一つ又は複数のプロセス(例えば、設備)モデル272を実施又は使用するシミュレーション・ルーチン271を含んでいる。具体的に、シミュレーション・ルーチン271は、シミュレートの対象となるプロセスプラント内の実際のポンプデ装置により又は該実際のポンプデ装置にて展開される流動、圧力且つ又はその他のプロセス変数をシミュレート又は推定するために、例えばその他のシミュレーション・ブロック、制御システム、ユーザなどにより提供されるブロック252への各種入力情報を使用する。これらの流動、圧力且つ又はその他のシミュレートされた模擬変数はその他のポンプ圧送の対象となる物質又は流動に関する特徴(粘度、物質平衡など)と共に、バルブ・シミュレーション・ブロック254にこれらの計測を供給するところの接続オブジェクト260に提供される。望ましい場合、接続オブジェクト260は、シミュレートされた模擬流動や圧力など要素をバルブ・シミュレーション・ブロック254に提供するために、プロセスプラント内の接続構造の模擬操作に基づいてブロック252により開発された模擬出力変数を処理するスマート接続オブジェクトでありうる。もちろん、接続オブジェクト260は、スマート接続オブジェクトである必要はなく、ポンプ・シミュレーション・ブロック252により開発され出力された圧力や流動又はその他のシミュレートされた模擬プロセス変数の指標を提供するためのバルブ・シミュレーション・ブロック254とポンプ・シミュレーション・ブロック252との間に設けられる単純なリンクでもありうる。
【0102】
同様に、バルブ・シミュレーション・ブロック254は、接続オブジェクト260により提供されるバルブ・シミュレーション・ブロック254へのシミュレートされた模擬入力及び(バルブの位置などの)バルブに関連した計測又は状態に基づいてバルブの動作をモデル化するために(設備モデルを含みうる)一つ又は複数のプロセスモデル274を含み且つ使用するシミュレーション・ルーチン273を含んでいる。繰り返して言うが、いかなる周知の態様においてプロセスプラント内の実際のバルブの動作をシミュレートすることによって、一つ又は複数のシミュレートされた模擬出力変数(例えば、バルブからのシミュレートされた模擬流動や、バルブの出力でのシミュレートされた模擬圧力や、バルブの出力内の又はその出力における流体のシミュレートされた模擬温度など)を生成するために、シミュレーション・ルーチン273はプロセスモデル274を使用しうる。これらシミュレートされた模擬プロセス変数の指標は、反応装置シミュレーション・ブロック256に入力を提供するためにこれらの変数を処理しうるところの接続子オブジェクト262に提供されうる。繰り返して言うが、もちろん、接続子オブジェクト262は、バルブ・シミュレーション・ブロック254の出力を反応装置シミュレーション・ブロック256の入力へと提供する単純な通信リンクでありうる。
【0103】
図9に示されるように、反応装置シミュレーション・ブロック256は、接続子オブジェクト262により提供される反応装置シミュレーターブロック256への入力及び反応装置の状態及び変数(設備変数)に基づいて、プロセスプラント内の反応装置の動作をシミュレートするために一つ又は複数のプロセスモデル276を使用するシミュレーション・ルーチン275も含んでいる。プロセスモデル276は、プロセス流体温度、圧力、物質平衡などを含みうる反応装置のシミュレートされた模擬出力を一つ又は複数生成するために使用される。よって、この場合明らかなように、プロセスシミュレーションがプロセス用設備を表わす一つ又は複数のブロックとして実施される際、これらのブロックの出力は、プロセスシミュレーション・ブロックへの入力に基づいて計算される模擬プロセス条件を表わす。
【0104】
プロセスモデル272,274及び276は、パラメトリック及びノンパラメトリックなプロセスモデルを含むいかなる所望のタイプのプロセスモデルでありうる。例えば、プロセスモデル272,274及び276は、1次系+不感時間系プロセスモデルなどの第一原理モデルでありうるし、(一般にモデル予測制御(MPC)技法で使用されるものや、ニューラルネットワーク・モデル及びファジィ論理モデルなどの)プロセス稼動中に生成された実測値に基づいた一連のインパルス応答又はステップ応答の入・出力曲線を反映するプロセスモデルでもありうるし、また、開示全体がここに参照することにより本稿に援用されるところの「State Based Adaptive Feedback Feedforward PID Controller(仮訳:状況起因型適応可能フィードバック・フィードフォワードPIDコントローラ)」と題される米国特許第7,113,834号(2006年9月26日付発行)及び「Adaptive Feedback/Feedforward PID Controller(仮訳:適応可能フィードバック/フィードフォワードPIDコントローラ」と題される米国特許第6,577,908号(2003年6月10日付発行)に開示されるタイプのプロセスモデル又はその他のタイプのプロセスモデルでもありうる。なおまた、シミュレーション・ブロック252、254及び256で使用されるモデルは、特に例えばユーザ又は設計者などによるシミュレーションを目的として、いかなる態様においても作成されうる。但し、これらのモデルは場合によって、制御又は最適化作業を行うためにプロセスモデルを使用するオンライン制御システムの一部分からコピーされうる。例えば、MPCコントローラは、一般にオンライン制御作業中にコントローラにより使用されるためのプロセスモデルを生成し、このプロセスモデルは、MPCコントローラ又はMPCコントローラにより制御されるプラントの一部分のシミュレーション作業実行の際の使用に向けて、一つ又は複数の該当する又は関係するシミュレーション・ブロックにインポートされうる。
【0105】
図9に示されるようなシミューレーション・システムの構成は、オフラインでシミュレーション作業を提供する際に役立つ一方、プロセスプラントに関してオンライン又は並行処理モードでシミューレーション・システム250を実行し、そうすることによって、シミューレーション・システム250作成後に生じうる実際のプロセスプラントの変更を組み入れてより良い且つより正確なシミューレーション・システムを提供するために自動的に又は半自動的にプロセスモデル272,274及び276を更新することも可能であるということが分かる。特に、シミューレーション・システム250のシミュレーション・ブロック(例えばブロック252、254及び256など)に付加的な標準入力(ここにおいて、該標準入力は、例えば、ブロック出力パラメータに対応するシミュレーション・ブロック252、254及び256の出力パラメータと関連した実際のプロセス計測を表す)を追加することにより、シミュレーション・アルゴリズムの一部として、作動中又はオンライン状態のプロセス内で測定されるような模擬パラメータの実測値と、計算された(シミュレートされた)出力との間の相違を補うためにシミュレーション・ブロック252、254及び256により使用されるプロセスモデル272,274及び276を自動的に訂正することが可能である。
【0106】
よって、図9に示されるように、シミュレーション・ブロック252、254及び256の各々は、実際のプロセスからの(且つ又は、望ましい場合にはユーザからの)フィードバックに基づいてプロセスシミュレーション・ブロック252、254及び256において定期的にプロセスモデル272,274及び276を更新又は再生成するために使用されうるところのモデル再生成ブロック280を含んでいる。より具体的に、モデル再生成ブロック280は、(例として、プロセスプラント内で例えば制御システムにより測定されるような)実際のプロセス変数を示す計測を使用し、この測定されたプロセス変数(PV)を、(測定されたプロセス変数と同時間)測定されたプロセス変数に対応するシミュレーション・ブロックの出力と比較しうる。モデル再生成ブロック280は、シミュレートされた模擬出力を開発する際にプロセスシミュレーション・ブロック内で使用されるプロセスモデルを更新又は再生成するためにこのような比較結果を利用しうる。この機能特性に準じて、単一のPV流量測定284は、バルブ・シミュレーション・ブロック254内のモデル再生成ブロック280が使用できるように(例えば、プロセスプラント内で使用される制御システムにより)プロセスプラントからバルブ・シミュレーション・ブロック254にフィードバックされるものとして図示されている。ここで、PV流量測定284は、バルブ・シミュレーション・ブロック254によりシミュレートされているプロセスプラント内バルブの測定流動出力である、又はそれを表す。同様に、PV圧力測定286及びPV温度測定288は、反応装置シミュレーション・ブロック256のモデル再生成ブロック280による使用に向けて反応装置シミュレーション・ブロック256にフィードバックされるものとして図9に示されている。この場合、PV圧力測定286及びPV温度測定288は、反応装置シミュレーション・ブロック256によりシミュレートされている反応装置の出力における圧力及び温度の実測値を表わす。もちろん、その他のタイプ及びその他の数のPV計測値も、シミュレーション・ブロック252、254及び256にフィードバックされうる。(この場合、これらの計測の性質及びアイデンティティは、一般に実行中のシミュレーション又はプロセスモデルの詳細に基づき選択される。)
【0107】
いかなる場合も、プロセスプラントからの測定フィードバック信号を使用して、シミュレーション・ブロック252、254及び256を、プロセスプラントの継続稼動中に、より正確にプロセス作動を反映するように変更又は更新しうる。このような更新には、これらのモデルの出力に適用される補正又は更新因子の計算が含まれうる。このように、シミューレーション・システム250は、より正確なシミュレーションを提供するために、プロセスプラント内の変化する状況及び、モデル化されていない変化及び、プラントに導入された又はそのプラントと関連した非線形性及び、プラントにおけるその他の変化に適応する。
【0108】
より良いシミュレーションを実行し、よってより正確な模擬又は予測プロセス変数を生成する他にも、シミューレーション・システム250により開発され適応又は再生成された該プロセスモデル272,274及び276は、プロセスプラント内でその他の作業(例えば制御作業、ユーザーインタフェース作業、最適化作業など)を実行するために(定期的に、又は再生成時に)エクスポートされうる。例えば、シミュレーション・ブロック252、254及び256内で生成又は更新されたモデルがステップ又はインパルス応答モデルである場合、これらのモデルは、MPC行列及びコントローラの生成に使用できるようにMPCコントローラに提供されうる。シミューレーション・システムにより生成されたこれらの更新モデルがMPCコントローラの生成、最適化ルーチンの生成などに使用されうるようなMPCと最適化ルーチン混在システムの実施例としては、開示全体がここに参照することにより本稿に援用される「Integrated Model Predictive Control and Optimization within a Process Control System(仮訳:プロセス制御システム内における統合モデル予測制御と最適化)」と題される米国特許第7,050,863号(2006年5月23日付発行)に開示されるものが挙げられる。よって、この場合、シミュレーション・ブロックは、複雑な設備、プロセス制御ループ又はプロセス応答をシミュレートするためにステップ応答又は有限インパルス応答モデルを利用するように作成されうる。例えば、DeltaV MPC-SIMブロックは、このようにしてシミュレーションを提供するように設計されている。このようなアプローチをとることによって、プロセスモデル272,274及び276を変更又は訂正する際、MPC制御において実行されるものに類似するオンライン計測の補正を簡単に実施しうる。同様に、プロセスモデル272,274及び276は、米国特許第6,577,908と第7,113,834号に開示されるようなその他のタイプのモデルでもありうるし、また、これらの特許に記載される適応可能PID制御技法にて再利用しうるものである。結果として、シミュレーション・ブロック272,274及び276又はそれの諸部分は実際に制御システムに送り戻してプロセスプラントの制御に使用されうる。なおまた、望ましい場合は、異なるシミュレーション・ブロックからのプロセスモデルの異なる一式又は組合せを組み合わせて送り戻し、制御及び最適化ルーチンの作動などのオンライン・プロセス操作に使用しうる。なおまた、一事例において、プロセスモデルは、オンライン制御作業中に使用される制御又は最適化ルーチン又はその他のルーチン用に開発されうるし、制御システムからシミューレーション・システムにインポートされうるし、上記されるようなシミューレーション・システムにおいて更新されうるし、またその後(更新又は適応済の状態で)制御システムに戻されて(当初、適応前モデルがそのために作成されたところの)コントローラ又は最適化ルーチンにより使用されうる。
【0109】
シミュレーション・ブロック252、254及び256で使用されるプロセスモデル272,274及び276を再生成するためにプロセス計測のフィードバックが自動的に使用されうる一方、状況によっては、シミュレーション・ブロック252、254及び256内で使用されるモデル272,274及び276を再生成するためにユーザがマニュアルでフィードバックを行いうる。例えば、場合によってはセンサの不具合や通信異常などの理由で、或いは計測に関連したモードの状態による異常(例えば、精度不良の可能性)が測定されたプロセス変数に存在すると分っているなど、何らかの理由でプロセス変数計測が利用できない場合もある。別の事例として、プロセス変数計測は、実験室においてなど、オフラインで生成されたものでありうるため、プラントの制御システムから直接に入手できない場合もある。更に別の事例として、モデル再生成ブロック280の一つにより使用される特定のプロセス変数又はその他の変数が、実際に測定されたものでなく、推定値であるか、もしくは単にユーザにより提供されたものでありうる場合もある。これらの場合においては、モデル再生成ブロック280により使用される模擬プロセス変数の実際値の指標をユーザが提供できるようにすることが望ましい。この技法は、シミュレーション・ブロック(254又は256)の出力に対応して「正しい」又は「測定された」変数として使用される(よって、モデル再生成を実行するために使用される)プロセス変数の値をユーザが指定できるようにするユーザーインタフェース又はその他の装置につながれる又は通信状態にあるUIブロック290及び292を用いて図9に示されている。このようにユーザは、シミュレーション・ブロック252、254及び256に、それの中で使用されるモデルを再生成させると共に当該の再生成を行うのに使用される値を指定させうる。図中にはシミュレーション・ブロック254及び256へのフィードバックに関するユーザ制御を可能にするUIブロックが二つだけ設けられた状態で示されているが、当然のことながら、いかなる所望のフィードバック変数についてもいかなる数のUIフィードバック経路又は接続をいかなるシミュレーション・ブロックに備えうること、及び、制御システム内のセンサ又はその他の要素により生成されたプロセス変数計測への接続に加えて又はその代わりとしてこれらのUI接続を備えうることが明らかなはずである。
【0110】
更にまた、測定されたプロセス変数及びユーザにより提供される変数の両方がシミュレーション・ブロックに提供されている場合、シミュレーション・ブロックは、これらの変数のうちの一つを一次入力として使用し、他の変数を一次入力に障害が生じた時に(又は一次入力が利用不可能である、又は明らかに不正確な結果を生成すると分っているような場合に)使用するための予備入力として使用しうる。よって、例えば、シミュレーション・ブロックは、モデルの再生成を行うために、プロセス制御ネットワークからフィードバックされた測定PV信号を自動的に又は主として使用しうるが、該測定PV信号に障害が生じた時、又は該測定PV信号が利用不可能である、或いは明らかに不正確な結果を生成すると分かっているような場合には、モデル再生成ブロック280はその代わりに、ユーザにより提供されたプロセス変数の入力を使用しうる。
【0111】
なおまた、シミュレーション・ブロック252、254又は256のいかなるものにおいて使用されるシミュレーション・アルゴリズムの一部として、ブロックの出力パラメータの(単なる現在値だけではなく)将来値を計算することが可能である。よって、図9に示されるように、バルブ・シミュレーション・ブロック254は、将来的なある時点(期間)にシミュレートされるバルブから流出する流れのシミュレーションに関するグラフ又は傾向表294をユーザに(例えば、ユーザーインタフェース(図示せず)で)提供しうる。このような将来的流量特性は、将来的なある特定の対象期間における出力変数の将来値を推定するためにある期間を通じてシミューレーション・システム250を実行することにより開発しうる。同様に、図9に示されるように、反応装置シミュレーション・ブロック256は、そこに使用されるプロセスモデル又はその他のアルゴリズムに基づいてシミュレートされた模擬出力温度に関するプロット又は傾向表296を提供しうる。もちろん、将来的プロセス変数の推定値は、例えば、将来的予測を行うためにMPC制御で使用されるものに類似する技法を使用して計算されうる。米国特許第7,050,083号に、これらの技法のいくつかがより詳しく開示されている。望ましい場合、その他のアプリケーションにより或いはプロセスプラント内のユーザーインタフェース又はその他関与する装置によりこれらの将来値にアクセス且つ表示できるようにするために、シミュレーション・ブロック252、254及び256によってグラフィック要素又はグラフィックインターフェース要素を提供しうる。
【0112】
なおまた、当然のことながら、一つ又は複数のプロセス変数の将来的予測値又は将来的模擬値又は、シミュレーション・ブロックにフィードバックされた現下測定されたプロセス変数値及び現在の予測プロセス変数値に加えて、又はそれと共に、又はそれを使用する代わりに、その他のシミュレーション出力を、図9のシミュレーション・ブロック内のプロセスモデル再生成又は更新を行うために使用しうる。この場合、特定のプロセス変数又はその他のプロセス要素のために計算された将来値を計算及び格納し、その後、計算された将来値の各々に対応する時点でプロセス変数の実際値を測定しうる。その後、特定の時点における実測プロセス要素値と当該特定の時点における予測将来値との間の相違(複数可)は、将来値を開発するためにシミュレーション・ルーチンで使用されるプロセスモデルを再生成するために使用されうる。プロセスモデルを再生成するために将来値を使用することは、プロセスモデルが(有限インパルス応答モデルなどの)インパルス応答モデル又はステップ応答モデルである場合において特に適している。
【0113】
よって、図9を参照して上記説明されるように、実際のプロセス計測は、同じプロセス要素の計算値及び測定値の比較に基づいたシミュレーション・ブロックで使用されるプロセスモデルの自動補正を可能にするために、シミュレーション・ブロックにおいて使用されうる。なおまた、プロセス計測が、例えば計測能力の不具合などにより利用不可能である又は利用不可能になった場合は、該値をマニュアルで入力することにより、入力値と計算値の比較に基づいてプロセスモデルの訂正を行いうる。更にまた、プロセスシミュレーションが、ステップ又は有限インパルス応答、或いはニューラルネットワークや第一原理モデルなどのその他の技法及びその他一般に使用される技法に基づく場合には、計算値(複数可)と測定値(複数可)間の相違に基づいてプロセスモデルを自動的に訂正しうる。より具体的には、MPCにおいて以前から利用されてきた技法は、例えば、プロセスパラメータの実測値と模擬値間の相違に基づいて補正因子が計算されプロセスモデルに(又はプロセスモデルの出力に)適用されることによって実際のプロセスプラントとプロセスモデルとの間のバイアスを完全に消去するところのバイアス補正を含むプロセスモデル(複数可)の訂正に使用されうる。もちろんその他の補正法も同様に使用しうる。また、このような補正法としては、開示全体がここに参照することにより本稿に援用される2004年12月9日公開の「Multiple-Input/Multiple-Output Control Blocks with Non-Linear Predictive Capabilities(仮訳:非線形予測能力を伴う多重入力/多重出力制御ブロック)」と題される米国特許出願公報第2004/0249483(A1)号(特に本公報の図4に関する記述)及び、2005年9月30日出願の「On-Line Adaptive Model Predictive Control in a Process Control System(仮訳:プロセス制御システムにおけるオンライン適応モデル予測制御)」と題される米国特許出願第11/240,705号(特に、適応可能MPC制御ルーチン内のプロセスモデルを変更する方式を記載する本出願中図2〜4の記述)に記載されるものが挙げられる。
【0114】
また、プロセスシミュレーションがステップ又は有限インパルス応答、或いはニューラルネットワークや第一原理モデルなどのその他の技法及びその他一般に使用される技法に基づく場合には、将来的出力値を計算し画面で表示するために保存できる。繰り返して言うが、ステップ及び有限インパルス応答に基づいたモデルについては、MPCで以前から利用されてきた技法を使用して将来値を計算しうる。またそれに加えて、プロセスシミュレーション環境は、現在の及び将来的なシミュレーション出力値の両方の表示を可能にする表示要素/アプリケーションをサポートしうる。例えば、傾向グラフ、棒グラフ、数値表及びグラフなどのいかなる所望の表示技法を使用して将来的出力値の傾向を示すために、ユーザーインタフェース・ウィンドウを備えうる。
【0115】
望ましい場合、ここに記載されるプロセスモジュールは、プロセス制御ネットワーク又はプロセスプラント内の冗長機能を提供且つシミュレートしうる。具体的に、プロセスモジュールは、プロセスプラント内に設けられている実際の冗長要素(冗長装置や冗長制御ブロックなど)の動作をシミュレートし、そして(例えば、予備冗長要素が引き継ぐ際などに)実際の冗長要素の動作を検知又はシミュレートしうる。それに加えて望ましい場合には、プロセスモジュールとそれのシミュレーション能力を、プロセスプラント内要素の冗長ペアの一つとして使用しうる。この場合、プロセスモジュール(又はそれのいかなる一部分)は、一次的装置(及び実際の物理的装置)が故障した場合又はそれと関連した問題が検出された場合に(信号や計算などの)予備データ又は冗長データを提供する予備装置として作動しうる。この場合、冗長要素として機能しているプロセスモジュールは、冗長能力を提供するためにいかなる周知の態様において(制御又は検出動作を行う)制御モジュールと通信可能に相互接続されうる。このようにプロセスモジュールをプロセスプラント内の冗長要素として使用することは、プロセスモジュールが上記の態様において一つ又は複数のハイファイ・シミュレーション・パッケージに接続されている場合に特に有用である。
【0116】
当然のことながら、ここに記載されるスマート・プロセスオブジェクト、グラフィック表示要素及びプロセスモジュールの機能性は、オペレーターワークステーション20において作動することも可能であり、またプラント10内のコントローラやフィールド装置などにダウンロードしたり、それの中に構成したりする必要はない。このため、この機能性は、実施、表示、変更などをより簡単に行うことができるものであると言える。更に、通常はシステムレベルでの装置に関する情報の全てがプロセスプラント10内の各コントローラ及びフィールド装置にて利用できるようになっていないのに対して、この機能性によると、当該情報の全てが、概してはオペレーターワークステーション20で、具体的には実行エンジン48で利用可能となるので、システムレベルでの決定をプロセス装置やコントローラなどの中で行うよりも簡単にできる。但し、より有利と見なされる場合は、プリミティブなどのプロセスモジュールと関連した論理のいくつかを、プロセスプラント内の装置、設備及びコントローラに埋め込みうる。統合プロセス制御モジュール及びグラフィック表示を作成するためにスマート・プロセスオブジェクトを使用することにより、例えば、自動的に漏れを検出し最小限のユーザの構成作業でスマート・アラームを生成したり、プラント10内の流動及び質量平衡を計算及びトラッキングしたり、プラント10内の損失をトラッキングしたり、レベルの高い診断をプラント10に提供したり、また、技術設計やオペレータ教育中にプラントの動作をシミュレートしたりなどを、実行エンジン48に行わせることが可能になる。
【0117】
図10は、分散型制御法を伴うプロセスプラント内で使用される実行エンジン48とプロセスモジュール及びグラフィック表示を統合するのに適用可能な一態様を描く図である。図10に示されるように、プロセスモジュールにより作成される(又はそれに関連する)画面表示クラス定義220は、実行エンジン48による実行中にオペレータに画面表示を提供し、制御法ドキュメンテーションの際にいかなる所望の態様で前記画面表示クラス定義を使用及び整理しうる制御システム構成データベース及びエンジニアリング・ツール222に提供される。プロセス・アルゴリズム224は、実行時前にこれらの画面表示クラス定義に接続されうる。そしてその後に、それに相互関連(結合)した表示クラス定義とフローアルゴリズムが、(一つ又は複数のワークステーションにおいて一つ又は複数の実行エンジン48として実施されうる)グラフィック表示/プロセスモジュール実行時環境226にインスタンス化及び提供されうる。グラフィック表示/プロセスモジュール実行時環境226は、実行中にコードをパーズ(解析)するために(即ち、ジャストインタイム・オブジェクト・コード変換を行うために)ダウンロードスクリプト・パーサ228を使用し、且つ、表示クラスに提供されている又は相互関連されているフローアルゴリズム又はその他の規則基盤型手順を実行するために規則基盤型実行エンジン230を使用する。このプロセスの間に、グラフィック表示/プロセスモジュール実行時環境226は、制御モジュール実行時環境232にデータ又は情報を提供するため、又は制御モジュール実行時環境232からデータ又はその他の情報にアクセスするために、該プロセスと関連したコントローラ及びフィールド装置において実行されうる制御モジュール実行時環境232と通信しうる。もちろん、グラフィック表示/プロセスモジュール実行時環境226は、図1に示されるイーサネット(登録商標)バス24などのいかなる所望の又は事前に構成された通信ネットワークを使用して制御モジュール実行時環境232と通信しうる。更にまた、ここに記載されるグラフィック表示、プロセスモジュール及び制御モジュールを標準プロセス制御システム又はプロセスプラントに統合するその他の方法も同様に使用しうる。
【0118】
ここに記載されるソフトウェアのいかなるものは、実施時、磁気ディスク、レーザーディスク(登録商標)又はその他の記憶媒体、又はコンピュータやプロセッサのRAM又はROMなどのいかなるコンピュータ可読メモリに格納されうる。更に、いかなる周知又は所望の配送方法(例えば、コンピュータ可読ディスク又はその他の可搬コンピュータ記憶機構に保存して、或いは、電話回線、インターネット、ワールド・ワイド・ウェブ、その他のローカルエリアネットワーク又は広域ネットワークなどの通信チャンネルを通して、など)を使用して、ユーザやプロセスプラント又はオペレーターワークステーションにこのソフトウェアを提供しうる。(なお、このような配送は、可搬型記憶媒体を介して該ソフトウェアを提供するのと同じ又は類似的な意味を持つと見なされる。)更に、このソフトウェアは、変調又は暗号化無しに直接提供されうる、又は、通信チャンネルを通じて伝送される前に、適切な変調搬送波且つ又は暗号化技法のいかなるものを使用して変調且つ又は暗号化されうる。
【0119】
上記において、(本発明を例証する実施形態に過ぎず、本発明を限定するものではない)特定の実施例を参照して本発明を説明したが、通常の技術を有する当業者にとっては、本発明の精神と範囲から逸脱することなく、ここに開示される実施形態に変更、追加又は削除が生じうることが明らかなはずである。
【技術分野】
【0001】
本願は、2002年10月22日付出願の「Smart Process Modules and Objects in Process Plants(プロセスプラントにおけるスマート・プロセスモジュール及びオブジェクト)」と題される米国特許出願第10/278,469号の一部継続出願であるところの、米国特許第7,110,835号として2006年9月19日に特許証が発行された「Integration of Graphic Display elements, Process Modules and Control Modules in Process Plants(プロセスプラントにおけるグラフィック表示要素とプロセスモジュール及び制御モジュールの統合)」と題される2003年7月21日付出願の米国特許出願第10/625,481号の継続出願であり同出願に対して優先権を主張するところの「Smart Process Objects Used in a Process Plant Modeling System(プロセスプラントモデリングシステムにおいて使用されるスマート・プロセスオブジェクト)」と題される2004年12月16日付出願の米国特許出願第11/014,307号の一部継続出願であり、同出願に対して優先権を主張するものである。なお、これら出願の開示全体は、ここに参照することにより本願に援用されるものとする。
【0002】
本発明は、概してプロセスプラントに関し、より具体的には、プロセスプラント制御アーキテクチャのシステムレベルでのシミュレーション作業をオンライン制御システムに統合してそこから更新することを可能にするインテリジェント制御及びシミュレーション環境に関する。
【背景技術】
【0003】
一般に、化学薬品処理工程、石油精製又はその他のプロセスにおいて使用されるような分散型プロセス制御システムは、アナログ、デジタル又はアナログ・デジタル混在バスを介して一つ又は複数のフィールド装置に通信可能に連結される一つ又は複数のプロセスコントローラを含んでいる。例えば、バルブ、バルブポジショナー、スイッチ又はトランスミッタ(例えば、温度、圧力、レベル及び流量センサ)でありうるフィールド装置は、通常プロセス環境内に設置され、バルブの開閉やプロセスパラメータの計測などのプロセスにおける機能を実行する。また、周知のFieldbusプロトコルに準拠するフィールド装置などのスマート・フィールド装置(smart field device)は、一般にコントローラ内で実施される制御計算や警報機能及びその他の制御機能を実行しうる。また、プロセスコントローラは、通常プラント環境内に設置されており、フィールド機器によりなされたプロセス計測且つ又はフィールド機器に関するその他の情報を示す信号を受信し、更に、例えばプロセス制御についての決定を下す様々な制御モジュールなどを作動させるためのコントローラ・アプリケーションを実行して、受信情報に基づき制御信号を生成し、フィールド機器(例えばHART及びFieldbusのフィールド機器など)において実行されている該制御モジュール又はブロックと協調(coordinate)する。コントローラの制御モジュールは、通信線上を通じてフィールド機器に制御信号を送信し、それによってプロセスの動作(オペレーション)を制御する。
【0004】
通常、フィールド機器やコントローラからの情報は、オペレーターワークステーション、パソコン、データ・ヒストリアン、報告書作成プログラム、集中化データベースなどの、通常制御室又はその他の厳しいプラント環境から離れた場所に配置さている一つ又は複数の別のハードウェア装置に接続されるデータハイウェイを通じて利用可能になっている。これらのハードウェア装置は、例えば、プロセス制御ルーチンの設定変更、コントローラ又はフィールド機器内の制御モジュールの動作の修正変更、プロセスの現状の表示、フィールド機器及びコントローラにより生成された警報の表示、従業員の教育を目的とするプロセスの動作のシミュレーション又はプロセス制御ソフトウェアの分析試験、構成データベースの管理及び更新などのプロセスに関連する機能をオペレータが実行できるようにするためのアプリケーションを実行する。
【0005】
一例としてEmerson Process Management社により販売されるDeltaV(登録商標)制御システムは、プロセスプラント内の様々な異なる場所に設置される異なる装置に格納され且つそれによって実行される複数のアプリケーションを含んでいる。一つ又は複数のオペレーターワークステーションに存在する構成用アプリケーションは、ユーザがプロセス制御モジュールを作成又は変更し、専用分散型コントローラへのデータハイウェイを介してこれらのプロセス制御モジュールをダウンロードできるようにする。通常、これらの制御モジュールは、制御機構内においてそれへの入力に基づいた機能を行い、該制御機構内の他の機能ブロックに出力を供給するところの、オブジェクト指向プログラミング・プロトコルのオブジェクトである通信可能に相互接続される機能ブロックにより構成される。また、構成用アプリケーションには、プロセス制御ルーチン内で、データをオペレータに表示してオペレータが設定点などの設定を変更できるように、設計者が表示アプリケーションにより使用されるオペレータ・インタフェースを作成又は変更することを可能にしうる。それぞれの専用コントローラ(また、場合によってはフィールド装置)が、実際のプロセス制御機能性を実施するためにそれに割り当てられダウンロードされた制御モジュールを実行するコントローラ・アプリケーションを格納及び実行する。一つ又は複数のオペレーターワークステーション上で実行しうる表示アプリケーションは、データハイウェイを介してコントローラ・アプリケーションからデータを受信して、このデータをプロセス制御システムの設計者、オペレータ、又はユーザーインタフェースを使用するユーザに表示し、また、オペレータ用画面表示、エンジニア用画面表示、技術員用画面表示などの異なる画面表示をいかなる数でも提供しうる。データ・ヒストリアンのアプリケーションは、通常、データハイウェイを介して供給されるデータのうちのいくつか又は全てを収集し格納するデータ・ヒストリアン装置に記憶され、それにより実行される。一方、構成データベース用アプリケーションは、データハイウェイに接続する更に別のコンピュータにおいて作動し、それに関連する現行プロセス制御ルーチンの構成及びデータを格納しうる。或いは、構成データベースを、構成用アプリケーションと同じワークステーションに設置しても良い。
【0006】
上記のように、通常、オペレータ用表示アプリケーションは、一つ又は複数のワークステーションにおいてシステム全体にわたり実施され、プラント内の制御システム又は装置の作動状態に関して事前に設定される画面表示をオペレータ又は保全要員に提供する。通常、これらの画面表示は、プロセスプラント内のコントローラ又は装置により発せられる警報を受信する警報画面、コントローラ及びプロセスプラント内の他の装置の作動状態を示す制御画面、プロセスプラント内の装置の稼動状態を示す保全管理画面などの形をとる。これらの画面表示は一般に、プロセスプラント内のプロセス制御モジュール又は装置から受信した情報又はデータを周知の態様で表示するように事前に構成され設定される。周知のシステムの中には、物理的要素又は論理要素に関連したグラフィックを備えるオブジェクトを使用して表示画面を形成し、該表示画面が物理的要素又は論理要素に関するデータを受信するため物理的要素又は論理要素に通信可能につながれているものもある。該オブジェクトにより、受信データに基づいて表示画面上でグラフィックを変更し、例えば、タンクの中身が半分になっている状態などを示すことにより、流量センサにより測定された流量を図で表示しうる。表示に必要な情報が、プロセスプラント内の装置又は構成データベースから送信されてくるが、その情報は、その情報を含む表示画面をユーザに提供するためだけに使用される。結果として、警報アラームの生成やプラント内の問題の検出などに使用される情報及びプログラミングの全てが、プロセスプラント制御システムを構成中にコントローラ及びフィールド装置などのプラントと関連した異なる装置により生成されその中に構成されなければならない。また、そうしなければ、この情報がオペレータ用表示画面に送信されないことになり、プロセスの作動中に表示できなくなる。
【0007】
エラー検出及びその他のプログラミングが、異なるコントローラ上で作動する制御ループと関連した条件やエラー又は警告アラームなど、並びに個々の装置における問題を検知する上で役に立つ一方、プロセスプラント内の(可能性として異なる様々な場所に設けられる)別の装置から分析することにより検出されなければならない条件又はエラーをシステムレベルで認識するようにプロセス制御システムをプログラムするのは困難である。更にまた、このようなシステムレベルの条件に関する情報をオペレータ又は保全要員に示す又は提示するためには通常オペレータ用表示画面は使用されない。いかなる場合も、このように画面表示内の異なる要素に関する情報又はデータの供給源が別の場合オペレータ用表示画面内のオブジェクトをアニメーション化するのは困難である。これは、通常画面表示上で二装置間を接続する単純線により示されるようなパイプ内の流体の流れやコンベヤーベルト上における原材料の移動状態などの材料ストリーム(材料の流れ)のアニメーション及びモデル化について特に該当する事実である。また、材料がプラント内を通過する過程において流量条件や物質平衡などプラント内の特定の条件を検出するための組織化された方式は現在存在せず、ましてシステムレベルでこれらの機能を実行でき且つ容易に実施可能なシステムはいうまでもなく存在しない。
【0008】
同様に、作動中のプロセス環境においてプロセスシュのミレーションを使用する方法は従来から使用されているが、それでも、通常、プロセスプラントのオンライン環境で実行される表示及び制御作業とは別にシミュレーション作業を実行しなければならないので、プロセスプラント又はプロセスプラントの一部分のシミュレーションを設定又は作成することが困難でありうる。また、プラントのシミュレーションを形成できたとしても、このシミュレーションをプラント内で使用されているオペレータ用表示画面又は制御モジュールに統合することは(不可能でないとすれば)困難である。例えば、プラントを設計時にHYSYS(ハイファイ・シミュレーションプログラム)を使用してプロセスシュミレーションを実施し、後でプラントの稼動を補助するために当該同一のシミュレーションを使用することは周知のことである。作動中のプラントと連動してプロセスシミュレーションを使用する利点の一つとしては、実際のプラントの性能を設計上の性能と比較しうる、ということが挙げられる。但し、現存する技術は、シミュレーションで計算されたプロセスパラメータの現在値を示すだけのものである。また、プロセスのシミュレーションは、たとえ単純なものでも、それぞれがシミュレーションの結果に影響を及ぼす何百もの構成可能パラメータを含みうる。結果として、シミュレートされたプラントと一致しなかったり、プラントにおける変化やプラント設備の劣化などによりシミュレーション作成後に時間が経つとシミュレートされたプラントと実際のプラントが一致しなくなったりする、などの事態が生じうる。既存の技術では、このような相違は一般に、エンジニアがシミュレーションの構成可能パラメータをマニュアル操作で調整することにより解決される。但し、このようなシミュレーション訂正方法では、非常に多くの時間を要し、オペレータのノウハウへの依存度が高く、多くの誤りが生じやすい。
【発明の概要】
【0009】
シミューレーション・システムが、該シミューレーション・システムを使い易くする態様且つオンライン・プロセスシミュレーションの更新を自動化及び実用的にする態様でプロセス制御環境に統合される。開示のシミューレーション・システムは、プロセスパラメータの現在値並びに将来値を、性能評価に利用できるようにするものであると共にプラントの稼動を誘導する際に使用できるようにするものである。また、該シミューレーション・システムは、様々なオンライン・プロセス又はプラント計測に接続されうるし、シミューレーション・システムで使用されるプロセスモデル(複数可)を自動的に更新することによりシミューレーション・システムをプロセスプラントの実際の作動状態と協調(coordinate)された状態に維持するためにこれらの計測を使用しうる。
【0010】
該 シミューレーション・システムは、プラント又はプラントの一部分の動作を描写しモデル化するために使用されるグラフィックと及びシミュレーション要素を有するスマート・プロセスオブジェクトで実施されうる。一般的に言えば、(バルブ、タンク、パイプなどの)プロセスプラント内の物理的装置又はエンティティを表す各スマート・プロセスオブジェクトは、当該の物理要素及び、モデル化又はシミュレーションの要素を描写するためにグラフィック表示にて使用されうるグラフィック要素を含んでいる。具体的に、スマート・プロセスオブジェクトは、オペレータに表示される表示要素、プラント内の関連するエンティティに関する及び該エンティティから受信したデータを格納するためのデータ記憶素子、他のプロセスオブジェクトと通信するための入・出力、漏れやエラー及び他の状態を含むプラント又は装置の状態を検出するために格納及び受信されたデータ上で実行しうるメソッド、及びシミュレーション・アルゴリズムを含みうる。
【0011】
構成中、プロセスプラントの異なる部分の動作を描写及びシミュレートするシミューレーション・システムを作成するために、且つ、プロセスプラントの一部分の動作をモデル又はシミュレートするプロセスモジュールを作成するために、複数のスマート・プロセスオブジェクトを共に接続しうる。この点に関連して、各プロセスモジュール(及びプロセスモジュールに関連した各画面表示)は、プラントを通って移動する流体、気体又はその他の物質に対応する入力を受け取り、その出力を生成し、プロセスプラントにおけるプロセス要素の動作を、プラントを通って移動する物質に対するそれらの影響についてモデル化又はシミュレートする。このように、スマート・プロセスオブジェクトのグラフィック表示部分は、プラント内の要素の動作(及びプラントにおけるその要素の役割又は効果)を描写するために使用されうる。また、スマート・プロセスオブジェクトのシミュレーション要素は、プラントにおける流体又はその他の材料の移動状態に対する実際の物理要素の影響をシミュレートするために使用されうる。また、実際のプラントからの(例えば、プラント内で計測された)データは、スマート・プロセスオブジェクトを使用して作成されたグラフィック表示に通信されうる、又はそれの中に描写されうる。
【0012】
スマート接続オブジェクトは、より詳細且つ正確なシミュレーションを実行するために、プラント内の物理的なエンティティ間の接続をモデル化するのに役立ちうる。このような接続によって、例えば、パイプ接続、ダクト接続、電気接続又はコンベア接続を指定しうる。しかるべく、該接続は、該接続を通じて流動する複数の異なるタイプの材料の流れのうちの一つに関係しうる。スマート接続オブジェクトは、接続タイプ又は接続状態を示す情報など、接続に関する接続パラメータデータを格納しうる。シミューレーション・システムの一部としてスマート接続オブジェクトを実行することにより、接続のグラフィック表示を表示し該接続を通じて流動する材料の流れをシミュレートすることによりプロセスプラントの動作のモデルを生成することが容易になる。
【0013】
また、プラント内の材料のストリーム(又は材料の流れ)と関連しうるスマート・ストリーム・オブジェクトを介してもシミュレーションが提供される。このようなストリームは、プラントを通って流動する又は移動する流体、固体又は気体を表わしうる。また、各ストリームは、ストリームがプロセスモジュールの異なる要素を通って移動すると共に変化しうるストリームの圧力、容量、密度、流量、組成などの特性又はパラメータを含みうる。ストリームはプロセス制御要素の入・出力によって流れるので、一般に、ストリームの特性は、ストリームが流れるバルブやタンクなどのプロセスの要素によりもたらされる。このため、プロセスモジュール内の個々の要素には、それの入力で提供される当該プロセス要素おストリームへの影響をシミュレートするためのアルゴリズムが含まれる。
【0014】
オペレーターワークステーション又はその他のコンピュータは、スマート・プロセスオブジェクトから作成されたグラフィック表示又はプロセスモジュールの動作をもたらすために、作成されたグラフィック表示又はプロセスモジュールを実行する実行エンジンを実行する。この動作の一部として、プロセスモジュールは、(プロセス条件を検出するために特にシステムレベルを基盤として使用でき、プラントを通って流れるストリームに対するプロセス要素の影響をシミュレートする)フローアルゴリズムと呼ばれるメソッドを実行しうる。結果として、スマート・プロセスオブジェクトから作成されたプロセスモジュール及びグラフィック表示は、オペレータ用表示装置での状態及び誤り検出ルーチンの実施を可能にし、プラントのコントローラ及びフィールド装置と協働しうる、又は該プラントのコントローラ及びフィールド装置の中にこの機能性を備える必要性を解消しうる。また、プロセスモジュールは、使い易く且つ実施し易い状態を維持しながら更に多くのより良い完全な情報を提供するために使用できるようなプロセスプラント内における別のレベルのプログラミング・フレキシビリティを、オペレータ又はシステム構成エンジニアに提供する。更にまた、グラフィック表示は、オペレータに追加情報を提供するためにプロセスフロー・モジュールのフローアルゴリズムにより決定又は計算された情報と共にアニメーション化されうる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】プロセスプラントの稼動をシミュレートするためにプロセスモジュール及びグラフィック表示を作成するためにスマート・プロセスオブジェクトを使用する画面表示ルーチンを実施するところのオペレーターワークステーションを含むプロセスプラント内にある分散型プロセス制御ネットワークのブロック図。
【図2】プロセスプラントにおける拡張機能を実施するために使用されうるところの、図1のオペレーターワークステーションに格納された(スマート・プロセスオブジェクト及びプロセスモジュールを含む)一式のアプリケーション及びその他のエンティティの論理ブロック図。
【図3】オブジェクト・ライブラリに格納されたスマート・プロセスオブジェクトを使用してプロセスグラフィック表示又はプロセスモジュールを作成するためにシステム構成エンジニアにより使用される構成用画面の簡易描写を示す図。
【図4】多数のスマート・プロセスオブジェクトのグラフィック表示要素を相互に接続することにより作成された、プロセスプラント内のストリーム及び接続要素の描写を含む実施例として挙げられるプロセスのグラフィック表示の詳細な描写を示す図。
【図5】プラントのより広大な範囲を含むグラフィック表示に相互接続された、図4のプロセスのグラフィック表示を含む一式の最小化されたプロセスのグラフィック表示の描写を示す図。
【図6】ハイファイ・シミュレーション・ルーチンの相互接続と共に、図4のプロセスのグラフィック表示と関連したプロセスモジュールを示す図。
【図7A】プロセスプラント内に統合されたグラフィック表示、プロセスモジュール及び制御モジュール間の通信相互接続を示す論理ブロック図。
【図7B】プロセスプラント内に統合されたグラフィック表示、プロセスモジュール及び制御モジュール間の通信相互接続を示す論理ブロック図。
【図8】アドバンスト制御及びシミュレーションの能力を提供するために制御モジュール内で機能ブロックと相互接続されたブロックを有するところの実施例として挙げられるプロセスモジュールの簡易描写を示す図。
【図9】将来的に予測されるプロセス値を提供するためにプロセスモデルを使用する複数のシミュレーション・ブロックを有し、プロセス計測又はユーザの入力に基づいてプロセスモデルを更新するところのシミューレーション・システムを示す簡略ブロック図。
【図10】スマート・プロセスオブジェクトを使用するプロセスモジュール及びシミューレーション・システムが制御ネットワークに作成され、且つ既存プロセス制御ネットワーク内で実施されうる態様を示す論理ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ここで図1を参照するに、スマート・プロセスオブジェクトがプロセスのグラフィック表示及びプロセスモジュールを形成するために使用されるところの、実施例として挙げられるプロセスプラント10が詳細に示される。ここにおいて、プロセスのグラフィック表示及びプロセスモジュールは両方とも、プラント環境内に拡張制御及びシミュレーションを提供するために制御モジュールに統合されうる。具体的に、プロセスプラント10は、例えば、Fieldbusインターフェース、Profibusインターフェース、HARTインターフェース、標準4-20 mAインターフェースなどでありうる入・出力(I/O)装置又はカード18を介して一つ又は複数のフィールド装置14及び16に各々接続される一つ又は複数のコントローラ12を有する分散型プロセス制御システムを使用する。また、コントローラ12は、例えばイーサネット(登録商標)・リンクでありうるデータハイウェイ24を介して、一つ又は複数のホスト又はオペレーターワークステーション20及び22に連結される。データベース28は、データハイウェイ24に接続され、プラント10内のコントローラとフィールド装置に関連したパラメータ、状態及びその他のデータを収集し格納するデータ・ヒストリアンとして、且つ又はプラント10内プロセス制御システムの現在の構成を格納する(コントローラ12とフィールド装置14,16にダウンロードして格納する)構成データベースとして作動する。通常、コントローラ12、I/Oカード18、フィールド装置14,16は、場合によっては厳しいプラント環境の下に設置・分散されている。オペレーターワークステーション20及び22、並びにデータベース28は、通常、制御室に、又はコントローラ又は保全要員により簡単にアクセスできるようなそれほど厳しくない環境下に設置される。
【0017】
周知の如く、一例としてEmerson Process Management社により販売されるDeltaV(登録商標)コントローラでありうるコントローラ12の各々は、任意数の異なる、独立して実行される制御モジュール又はブロック29を使用して制御法を実施するコントローラ・アプリケーションを格納及び実行する。各機能ブロックが全体的な制御ルーチンの部品又はサブルーチンであり、プロセスプラント10内のプロセス制御ループを実施するために(リンクと呼ばれる通信を介して)他の機能ブロックと共に機能することを特徴とする一般に機能ブロックと呼ばれるものから各制御モジュール29を構成できる。周知の如く、オブジェクト指向型プログラミング・プロトコルのオブジェクトでありうる機能ブロックは、一般に、プロセスプラント10内で何らかの物理的な機能を実行するために、トランスミッタやセンサ又はその他のプロセスパラメータ計測装置と関連した入力機能や、比例・積分・微分(PID)やファジィ論理などの制御を実行する制御ルーチンと関連した制御機能や、又は、バルブなど何らかの装置の動作を制御する出力機能の一つを実行する。もちろん、モデル予測制御コントローラ(MPC)、最適化プログラムなどのハイブリッド及びその他のタイプの複雑な機能ブロックも存在する。Fieldbusプロトコル及びDeltaVシステム・プロトコルは、オブジェクト指向プログラミング・プロトコルにおいて設計され実施される制御モジュールと機能ブロックを使用する一方、制御モジュールは、機能ブロック又はその他特定のプログラミング技法を使用しての設計・実施に限らず、例えば、逐次機能ブロック、ラダー論理などとはじめとする所望のあらゆる制御プログラミング機構を使用して設計することができる。
【0018】
図1に示されるプラント10において、コントローラ12に接続されたフィールド装置14及び16は、標準4-20mA装置でありうるし、プロセッサとメモリを含むようなHARTやProfibus又はFOUNDATIONTM Fieldbusフィールド装置などのスマート・フィールド装置でもありうるし、或いは、その他所望のタイプの装置でありうる。(図1中、照合番号16として示される)これらのFieldbusフィールド装置などの装置のいくつかは、コントローラ12で実施される制御法と関連する機能ブロックなどのサブモジュール又はモジュールを格納及び実行しうる。Fieldbusフィールド装置16のうち異なる二台に配置されているような図1において図示される機能ブロック30は、周知の如く、プロセス制御を実施するためにコントローラ12内の制御モジュール29の実行と同時に実行されうる。もちろん、フィールド装置14及び16には、センサ、バルブ、トランスミッタ、ポジショナーなどのいかなるタイプの装置を使用しても良く、また、I/O装置18には、例えばHART、Fieldbus、Profibusなど所望のあらゆる通信又はコントローラ・プロトコルに準拠するものであればいかなるタイプのI/O装置を使用しても良い。
【0019】
図1のプロセスプラント10において、ワークステーション20には、プロセスプラント10内で接続される装置やユニットなどに関する機能性を表示及び提供するために、いかなる認定ユーザ(本稿において場合によってはシステム構成エンジニア又はオペレータとしても参照されるが、その他のタイプのユーザも存在しうる)によりアクセスできる一式のパッケージ化されたオペレータ・インタフェース・アプリケーション及びその他のデータ構造32が含まれる。該一式のパッケージ化されたオペレーターインターフェース・アプリケーション32は、ワークステーション20のメモリ34に格納され、該一式のパッケージ化されたアプリケーション32中の各アプリケーション又はエンティティは、ワークステーション20に関係したプロセッサ36で実行できるように適応される。該一式のパッケージ化されたアプリケーション32の全てがワークステーション20に格納される状態で図示されているが、これらのアプリケーション又は他のエンティティのいくつかをプラント10内に又はそれに関連する別のワークステーション又はコンピュータ機器に格納しそこで実行するようにもできる。更にまた、該一式のパッケージ化されたアプリケーションは、ワークステーション20と関連した表示画面37、又はハンドヘルド型装置、ラップトップ、その他のワークステーション、プリンターなどを含むその他所望の表示画面又は表示装置に表示出力を提供できる。同様に、一式のアプリケーション32内のアプリケーションを二つ以上のコンピュータ又は機械に分けて実行してもよく、またお互いに関連して機能するように構成しても良い。
【0020】
一般的に言って、一式のパッケージ化されたアプリケーション32は、プロセスプラント10内の拡張制御やシミュレーション及び表示機能を提供するために動作が統合されうるところの三つの異なるタイプのエンティティの作成及び使用を提供する又は可能にする。より具体的に、一式のパッケージ化されたアプリケーション32は、(一般にプロセスプラントの一部分に関するオペレータ用表示画面を提供する)プロセスのグラフィック表示35、(一般にプロセスプラントの一部分のシミュレーションを提供する)プロセスモジュール39、及び(一般にプロセスのオンライン制御を提供又は実行する)制御モジュール29を作成し実施するために使用されうる。プロセス制御モジュール29は、当業者には一般に周知の技術であり、機能ブロック制御モジュールなどをはじめとするいかなるタイプの制御モジュールを含みえる。一般に、以下より詳しく説明されるプロセスのグラフィック表示要素35は、プロセスプラントの動作や構成又はセットアップ及びその中の要素についての情報をオペレータなどのユーザに提供するためにオペレータ、エンジニア又はその他の表示により使用される要素である。プロセスモジュール39は、通常プロセスグラフィック表示要素35に密接に関連し、プロセスプラントの又はその中でプロセスグラフィック表示35により描写されている態様で接続される異なる要素の稼動状態のシミュレーションを行うために使用しうる。プロセスグラフィック表示35及びプロセスモジュール39は、ワークステーション20及び22に格納され且つそこにおいて実行される状態で図示されているが、プロセスグラフィック表示35及びプロセスモジュール39は、ラップトップ、ハンドヘルド装置など、プロセス制御プラント10に関連したその他のコンピュータにダウンロードしそこで実行することもできる。
【0021】
図2は、いくつかのアプリケーションとデータ構造、又はワークステーション20の一式のアプリケーション32の中に含まれるその他のエンティティを示す図である。具体的に、一式のパッケージ化されたアプリケーション32は、制御モジュール、プロセスモジュール(別称:プロセスフロー・モジュール)及び関連するグラフィック表示を作成するためにシステム構成エンジニアにより使用される制御モジュール、プロセスモジュール及びグラフィック表示構成用アプリケーション38を含んでいる。制御モジュール構成用アプリケーション38がいかなる標準又は周知の制御モジュール構成用アプリケーションでありうる一方、プロセスモジュール及びグラフィック表示構成用アプリケーションは一つ又は複数のスマート・プロセスオブジェクトを使用するプロセスモジュール及びグラフィック表示を作成しうる。なお、これに関する内容は以下より詳しく説明されている。更にまた、図中、プロセスモジュール及びプロセスグラフィック構成用アプリケーション38が別々に示されているが、一つの構成用アプリケーションで、これら両タイプの要素を作成するこも可能である。
【0022】
スマート・プロセスオブジェクト42のライブラリ40は、プロセスモジュール39及びグラフィック表示35を作成するために構成用アプリケーション38によりアクセスされ、コピーされ、そして使用されうるところの見本又は定型スマート・プロセスオブジェクト42を含んでいる。当然のことながら、構成用アプリケーション38は一つ又は複数のプロセスモジュール39を作成するために使用することが可能であり、その各々は、一つ又は複数のスマート・プロセスオブジェクトから構成又は作成され、且つプロセスモジュールメモリ46に格納される一つ又は複数のプロセスフロー又はシミュレーション・アルゴリズム45を含みえる。また、構成用アプリケーション38は、一つ又は複数のグラフィック表示35を作成するために使用することが可能であり、その各々は、一つ又は複数のスマート・プロセスオブジェクト42から構成又は作成され、且つ、相互接続される表示要素をいかなる数でも含みえる。図2には、グラフィック表示35bの一例が、パイプ、導管、電源ケーブル、コンベアなどでありえる接続要素により相互に接続されるバルブ、タンク、センサ及びフロー・トランスミッタなどを含む一組のプロセス要素の描写を含んだ状態で展開形として示さている。
【0023】
実行エンジン48は、グラフィック表示35により定義される一つ又は複数のオペレータ用プロセス表示画面を作成し、かつプロセスモジュール39と関連したシミュレーション機能性を実施するために実行時中にグラフィック表示35及びプロセスモジュール39の各々を作動又は実施する。実行エンジン48は、概して言うとプロセスモジュール39で、具体的には当該モジュール内のスマート・プロセスオブジェクトで実施される論理を定義する規則データベース50を使用しうる。実行エンジン48はまた、プラント10内の(並びにプロセスモジュール39のための機能性を実施するためにプロセスモジュール39内の)プロセス要素間の接続を定義する接続行列52を使用しうる。
【0024】
図2は、スマート・プロセスオブジェクト42eの一つをより詳細に示す図である。スマート・プロセスオブジェクト42eは定型スマート・プロセスオブジェクトの一つとして示されているが、当然のことながら、スマート・プロセスオブジェクト42eについて説明されるようにその他のスマート・プロセスオブジェクトは一般に同じ又は類似した要素、機能特性、パラメータなどを含み、且つ、これらの要素、機能特性及びパラメータの詳細又は数値は、当該スマート・プロセスオブジェクトの性質及び用途によってスマート・プロセスオブジェクト間で変更又は変形しうる。更にまた、スマート・プロセスオブジェクト42eはオブジェクト指向型プログラミング環境内のオブジェクトでありえ、よって、それに関連したデータ記憶機構、入・出力及びメソッドを含みうる間、このスマート・プロセスオブジェクトはその他所望のプログラミング・パラダイム又はプロトコルにより作成され、またそれの中で実施されうる。
【0025】
当然のことながら、インスタンス化される前のスマート・プロセスオブジェクト42eは、図1のプロセスプラント10内の物理的エンティティ又は論理エンティティなどの特定タイプのエンティティと関連したオブジェクトである。しかしながら、コピー後又はインスタンスを作成後、スマート・プロセスオブジェクト42eは、プロセスプラント内の特定のエンティティにつながりえる。いかなる場合も、スマート・プロセスオブジェクト42eは、スマート・プロセスオブジェクト42eが関連する論理エンティティから受け取られた又はそれに関するデータを格納するために使用されるデータ記憶機構53を含んでいる。一般に、データ記憶機構53は、製造メーカ、改訂、名称、タイプなど、スマート・プロセスオブジェクト42eが関係するエンティティについての一般情報又は永続情報を格納するデータ記憶機構53aを含んでいる。データ記憶機構53bには、プロセスプラント10内で過去に存在した又は現存するエンティティに関連したデータを含む、スマート・プロセスオブジェクト42eが関係するところのエンティティについてのパラメータデータ、状態データ、入・出力データ、コスト又は変更の対象となるその他のデータなどの可変データを格納しうる。もちろん、スマート・プロセスオブジェクト42eは、所望のあらゆる通信リンクを介してエンティティ自体から、イーサネット(登録商標)バス24を介してヒストリアン28から、又は他の所望の態様にて、定期的又は非定期的な周期で、このデータ(例えば、コストデータ)を受信するように構成又はプログラムされうる。データ記憶機構53cには、スマート・プロセスオブジェクト42eが関係し、且つ、図1のワークステーション20に関連した画面37などのオペレータ・インタフェースを介してオペレータに表示する実際の表示画面に使用されるエンティティのグラフィック表示(図形表現)を格納しうる。もちろん、該グラフィック表示は、パラメータにより定義される情報、又はデータ記憶機構53bに格納されるエンティティについての他の可変データなどのエンティティに関する情報の(データ記憶機構53c内で下線によりマーキングされている)プレースホルダー(位置保持記号)を含みうる。該グラフィック表示がグラフィック表示35のうちの一つの一部として表示装置37上でオペレータに提示される時に、このパラメータデータをグラフィック・プレースホルダーに表示しうる。グラフィック表示(及びスマート・プロセスオブジェクト42e)は、オペレータ又はシステム構成エンジニアがグラフィック表示により描写されるように上流又は下流の構成部分をプロセス要素に接続できるようにする(データ記憶機構53c内で「X」によりマーキングされる)事前に定義された接続点を含みえる。もちろん、これらの接続点によって、スマート・プロセスオブジェクト42eがそのスマート・オブジェクトに接続された要素をプロセスモジュール内に構成されたものとして認識できるようにすることも可能になる。また、これらの接続点は、パイプやダクトなど及び当該要素と関連したストリームなどの必要とされる接続要素のタイプを指定しうる。
【0026】
スマート・プロセスオブジェクト42eはまた、該スマート・プロセスオブジェクト42が使用されるプロセスモジュール内部又は外部で他のスマート・プロセスオブジェクトとの通信を可能にするために一つ又は複数のは入力54及び出力56をを含みえる。他のスマート・プロセスオブジェクトに対する入力54及び出力56の接続の構成は、システム構成エンジニアがプロセスモジュールの構成中に単に他のスマート・プロセスオブジェクトこれらの入・出力に接続することにより、又は、スマート・プロセスオブジェクト間に生じる特定の通信を指定することにより行いえる。これらの入・出力のいくつかは、上記のスマート・プロセスオブジェクトに関する定義済みの接続点に接続されているスマート・プロセスオブジェクトに接続されている、として定義しうる。これら入力54及び出力56はまた、プラント10内の異なる装置又はエンティティ間の接続を定義した後、規則データベース50及び接続行列52内の一組の規則により決定又は定義されうる。該入力54及び出力56(それに関連するデータ記憶機構又はバッファーを含む)は、一般的に、他のスマート・プロセスオブジェクトからスマート・プロセスオブジェクト42eにデータを通信できるようにするため、又はスマート・プロセスオブジェクト42e内部に格納されている又はそれによって生成されたデータを他のスマート・プロセスオブジェクトに通信できるようにするために使用される。これらの入・出力はまた、例えばフィールド装置14と16、コントローラ12内の制御モジュールなどのプロセス制御システム内の他のオブジェクトとスマート・プロセスオブジェクト42e間で通信が行えるようにするためにも使用されうる。
【0027】
また、図2に示されるように、スマート・プロセスオブジェクト42eは、スマート・プロセスオブジェクト42eが使用されるところのプロセスモジュールの実行中にスマート・プロセスオブジェクト42eにより実施されるアルゴリズムでありうるメソッド60(図2のメソッド60a、60b及び60cとして図示)のゼロ個又は一つ又は複数を格納するために使用されるメソッド記憶機構58を含んでいる。一般的に、メソッド記憶装置58に格納されたメソッド60は、プロセスプラント10又は該プラント10内のエンティティについての情報を決定するために、データ記憶装置部分53a及び53b内に格納されたデータ及び他のスマート・プロセスオブジェクトから得られたデータ 、もしくはその他構成データベース又はヒストリアン28などの情報源から入力54及び出力56を介して取得したデータを使用する。例えば、該メソッド60は、スマート・プロセスオブジェクト42eにより定義されたエンティティと関連した不具合を伴う又は不適当な作動状態や、同じエンティティ又はプロセスプラント10内のその他のエンティティと関連したエラーなどを判断しうる。スマート・プロセスオブジェクトのタイプ又はクラスに基づいて、メソッド60を事前に構成又は提供し、また、該メソッド60は通常、実行時中実行エンジン48内でスマート・プロセスオブジェクト42eが実行される度に実行される。スマート・プロセスオブジェクト42eなどのスマート・プロセスオブジェクト内に提供されうる実施例として挙げられるメソッド60のいくつかは、漏れ検知、不感帯、不感時間、移動状態、変動性、状態監視、コスト計算、又は当該のエンティティと関連したその他の状態を含む。
【0028】
該メソッド60はまた、当該のプロセス・エンティティを通して流れる材料のスマート・プロセスオブジェクトに関連したプロセス・エンティティの動作をシミュレートする際の支援を目的として提供されうる。よって、メソッド60は、質量平衡、エネルギー平衡、流量、温度、組成、気相状態、及びプラント10内の材料と関連したその他のシステムレベル又はストリームレベルのパラメータを計算して要素の動作をシミュレートし、それによって提供された入力などに基づいて予期される出力を計算するために提供されうる。もちろん、これらは、スマート・プロセスオブジェクト42eに格納されそれによって実行しうるメソッドのほんの数例に過ぎず、その他にも使用しうるメソッドが数多く存在する。このようなメソッドは一般に、描写されるエンティティのタイプ、エンティティがプロセスプラントにおいて接続される態様及び使用される態様、並びにその他の因子によって決定される。スマート・プロセスオブジェクト42eがシステムレベルの状態やエラーなどを検出するメソッドを格納し実行しうる一方、これらのメソッドはまた、装置についての、プロセス制御モジュールやループなどの論理要素についての、及びその他システムレベル以外のエンティティについてのその他の情報を決定するために使用されうる、ということをここで注記しておくことが大切である。望ましい場合は、メソッド60は、C、C++、C#などの所望のあらゆるプログラミング言語でプログラム又は提供しえ、また実行中にスマート・プロセスオブジェクト42e対象の規則データベース50内の該当する規則により参照される、又はそれのために実行しうる。
【0029】
望ましい場合、各スマート・プロセスオブジェクトには、プロセスモジュール内に接続した場合にスマート・プロセスオブジェクトのシミュレーションの動きを定義するために使用されうる該当するアルゴリズム又はメソッドのライブラリを含みえる。このようなライブラリは、図2のスマート・プロセスオブジェクト42eのプルダウン・メニュー61に図示されており、類似するメニューは他のスマート・プロセスオブジェクトの各々に関連しうる。システム構成エンジニアは、例えばプルダウン・メニュー61を介してシミュレーション・アルゴリズムのライブラリ(いわゆるメソッド1、メソッド2、等)のうちの一つを選択して、このスマート・プロセスオブジェクトをプロセスモジュール39に配置する場合に、スマート・プロセスオブジェクトのシミュレーション動作を定義しうる。このようにして、システム構成エンジニアは、スマート・プロセスオブジェクトがモデルに使用されるプロセスのタイプ又は性質によって、スマート・プロセスオブジェクトに対する異なるシミュレーションの動作を定義しうる。
【0030】
望ましい場合は、システム構成エンジニアはその代りとして、スマートプロセスブロックにより定義されたプロセス要素のシミュレーション動作を定義するためにプロプライエタリの(独自に開発された)又はユーザにより提供されたその他のアルゴリズムを供給しうる。このようなユーザ定義のアルゴリズム(プルダウン・メニュー61内に「ユーザ定義」という項目名で図示)は、スマート・プロセスオブジェクトがプロセスモジュール39内に配置される又はそれによって使用される時に該スマート・プロセスオブジェクトに提供又はそれの中に格納される。この機能によってユーザはシミュレーション動作をカスタマイズでき、それによって、より良い又はより正確なシミュレーションを提供できる。望ましい場合、及び後述の詳細にわたる説明からも分るように、スマート・プロセスオブジェクト42又は各プロセスモジュール39は、スマート・プロセスオブジェクト内のシミュレーション・アルゴリズムの使用を無効にし、その代わりとしてハイファイ・シミュレーション・パッケージ又は、例えば、HYSYS社により提供されるプログラムによりプロセスモジュールの動作を決定するオペレータ発動可能スイッチ(電子スイッチ又はフラグなど)を含みえる。スマート・プロセスオブジェクト又はプロセスモジュールはこの場合、スマート・プロセスオブジェクト自体に含まれるシミュレーション・アルゴリズムを使用する場合とは対照的に、ハイファイ・シミュレーションからシミュレートされたパラメータを得る。
【0031】
実行エンジン48によるグラフィック表示35又はプロセスモジュール39の実行中に、該エンジン48は、入力54及び出力56により定義されるグラフィック表示35又はプロセスモジュール39内のスマート・プロセスオブジェクトのそれぞれに対する通信を実施し、且つ該オブジェクトのそれぞれに対するメソッド60を実施してメソッド60により提供される機能を実行しうる。上記されるように、メソッド60の機能性は、スマート・プロセスオブジェクト内のプログラミングの中に設けうる、或いは、エンジン48が実行する規則データベース50内の一式の規則により定義される機能性を実施するためにスマート・プロセスオブジェクトのタイプ及びクラス、識別情報、タグ名などに基づいて当該規則により定義されうる。
【0032】
なお、スマート・プロセスオブジェクト42eのインスタンスは、スマート・プロセスオブジェクト42eに関連するプロセスモジュールのコンテキスト(状態、前後関係、等)に対応するタグ又は独自の名称を持っており、このタグ又は独自の名称は、スマート・プロセスオブジェクト42eに又はスマート・プロセスオブジェクト42eから通信を提供するために使用され、実行時中に実行エンジン48により参照されうる。プロセスモジュール・タグは制御システムの構成においてユニークなものでなければならない。このタグ付き仕様によって、別のプロセスのグラフィック表示35及びプロセスモジュール39、更には制御モジュール29の要素によりプロセスモジュール39内の要素を参照できるようになる。更にまた、スマート・プロセスオブジェクト42eのパラメータには、期待される単位及びそれに関連する属性を認識する単純なパラメータ(単純な数値、構造化パラメータ又はスマート・パラメータなど)を使用できる。確実に全信号が同一単位で送信又は適切に変換されるようにするために、スマート・パラメータをプロセスルール・エンジン又は実行エンジン48によって解釈及び使用できる。また、スマート規則を適用して、スマート・プロセスオブジェクト(又はプロセスモジュール)用の一群の警告アラームをON/OFFし、オペレータ用にスマート警報戦略且つ又はインターフェースを作成できる。更にまた、スマート・プロセスオブジェクトのクラスは、プラント10のプロセス制御方式内に備えられる設備とモジュールのクラスに関連し、それが解釈又はアクセスしなければならないスマート・プロセスオブジェクトとプロセス変数間における周知のリンク機構を提供しうる。
【0033】
スマート・プロセスオブジェクトはまた、プロセスグラフィック表示又はプロセスモジュールにおいて使用される場合、これらのスマート・オブジェクトが実行時にOFF、起動、正常モードなどの異なるモードにならないようにするために運転モード、状態及び警報動作を含みえ、それの現下の動作状態に基づいてオブジェクトに関連した状態を提供しえ、且つ、検出された状態(パラメータが範囲・限度から外れている、変動性が高い、等)に基づいて警報アラームを提供しうる。スマート・プロセスオブジェクトはまた、複合構造などに共に収集されうるようにクラスライブラリにおいてそれらを分類できるようにするクラス/サブクラス階層を有しうる。更にまた、スマート・プロセスオブジェクトが、それに関連するエンティティが(例えばプラント10内のバッチ制御工程によって)いつ使用されているか又は得られるかを認識できるようにするために、スマート・プロセスオブジェクトは、制御モジュール及び他のオブジェクトなどのその他の要素からの情報を利用しうる。
【0034】
ポンプ、タンク、バルブなどの物理装置、又はプロセス区域、計測又はアクチュエータ、制御方式などの論理構成体など、いかなる所望のプロセス要素にスマート・プロセスオブジェクトを関連しうる。場合によってスマート・プロセスオブジェクトは、材料、電気、気体などをプロセス内のある地点から別の地点まで移動させる配管、導管、配線、コンベア又はその他の装置やエンティティなどを含む接続子に関連しうる。また、(実際の装置又は接続子自体は、プロセスプラント10内においてタグ付けされない又は通信できないかもしれないが、)接続子に関連するスマート・プロセスオブジェクト(本稿において時には「スマートリンク」又は「接続子要素」と呼ばれる)はタグ付けされ、通常、プロセス内のその他の要素間の材料の流れを表わすために使用される。
【0035】
一般に、スマートリンク又はスマート接続子オブジェクトは、異なる物質又は現象 (電流など)がどのように接続部(例えば、蒸気、電流、水、汚水、等)を流れるかを定義する特性又はパラメータを含む。これらのパラメータは、接続子を通る流れのタイプ及び性質(全体的な速度、摩擦係数、乱流又は非乱流のような流れのタイプ、電磁気、等)、及び接続子を通る流れの方向又は複数の方向を示しうる。スマートリンクは、スマートリンクが接続される接続元と接続先オブジェクトのユニット(単位)が確実に一致するようにし、一致しない場合は単位の返還を行うプログラミング又はメソッドを含みうる。また、スマートリンクのメソッドは、実際の接続子を通る流動の速度又は性質、物理的接続の長さ及びサイズ、流送の遅延などを見積もるために、モデル又はアルゴリズムを使用して接続子を通る流動をモデル化しうる。スマート・プロセスオブジェクトのために格納されたパラメータ(例えば、摩擦パラメータなど)をこれらのメソッドにおいて使用しうる。従って、本質的にスマートリンク又は接続子要素により、スマート・プロセスオブジェクトがその他の上流側・下流側オブジェクト又はエンティティを認識できるようになる。もちろん、スマートリンクは、例えば、いかなる所望の又は便利な態様において、その他のオブジェクト間の接続や、システム内における液体・気体・電流などの流体のタイプや、エンティティの上流側と下流側の設定や、当該スマート・プロセスオブジェクトのエンティティの上流側及び下流側に配置されるその他のエンティティや、材料、流体、電流の流動方向、などを定義しうる。一実施形態においては、行列52をプロセスフロー・モジュール実行前に作成してもよく、またそれによって、プラント内の異なる装置間の相互接続(即ち、異なるスマート・プロセスオブジェクト間の相互接続)をスマートリンクに対して定義しうる。実際に、実行エンジン48は行列52を用いて上流と下流側エンティティを確認し、それによりスマート・プロセスオブジェクトと該スマート・プロセスオブジェクトに関連するメソッド間の通信を定義する。更にまた、一つ又は複数の組の規則を備え、スマート・プロセスオブジェクトがその規則により、(該スマート・プロセスオブジェクト内のメソッドの必要性に応じて)お互いに交流してデータをやり取りし、出力接続に関連したスマート・オブジェクトの影響を解消(解決)するようにしても良い。
【0036】
また、望ましい場合、スマート・プロセスオブジェクト42eにより、オブジェクトのタイプに該当しうる、又はスマート・プロセスオブジェクト42eが関係する装置の状況に向けて(重要性及び用途によって)特別に準備された主な文書類(ドキュメンテーション)にURLなどのホットリンクを含みえる。該文書類は供給メーカ支給ものでも、ユーザ独自のものでもよい。該文書類の数例としては、システム設定・構成、起動時及び停止時の処理手順、操作及び保守保全用文書類が挙げられる。望ましい場合は、オペレータがオペレータ用表示画面に表示されるオブジェクトをクリックして、オブジェクト又は関連する装置の状況に関する詳細(該当する場合)及び汎用書類を表示しうる。オペレータはまた、システム・ソフトウェアから独立して保全依頼、操作問題の履歴などの書類に追加・削除・変更などを加えることができる。更に、オペレータ・インタフェースでオブジェクトに知識リンクを追加できる能力を提供するため、またオブジェクトと関連した適切な情報を迅速にナビゲーションできるようにするため、そして特定のオブジェクト・タイプに(更にはオブジェクトの特定のインスタンスにも)顧客特有の作業指示を追加できる能力を提供するために、これらのホットリンクをユーザ設定可能又はユーザ変更可能なものにしても良い。
【0037】
プロセスモジュール及びプロセスグラフィックは、異なるスマート・プロセスオブジェクトの相互接続により一緒に作成されるとして上記されているが、別々に作成するようにしても良い。例えば、スマート・プロセスオブジェクトを使用してプロセスグラフィックを作成しても良く、また、作成完了時に、グラフィック要素及びグラフィック表示におけるそれらの相互接続に基づいて該グラフィックのためのプロセスモジュールを生成しうる。或いは、まずスマート・プロセスオブジェクトを用いてプロセスモジュールを作成し、作成後、プロセスモジュールを作成するために使用されるスマート・プロセスオブジェクトにおけるグラフィック表示要素を用いて構成用アプリケーション38により当該プロセスモジュールのグラフィック表示を自動的に生成するようにしても良い。更にまた、プロセスモジュールとグラフィック表示を別々に作成し、これらの二つの要素内の個々の要素を(例えば、グラフィック表示とプロセスモジュール内の要素のタグ特性を利用して)互いに参照し合うことによりマニュアル操作でつなぎ合わせるようにしても良い。この機構によって、スマート・プロセスオブジェクトは複数の表示により参照されうる。いかなる場合も一旦作成が完了したら、プロセスのグラフィック表示及び関連するプロセスモジュールは、通常要望又は必要に応じてパラメータと情報を交互に通信するものであるが、独立して又は別々に実行することも可能である。
【0038】
より包括的にするために、プロセスグラフィック表示とプロセスモジュールにおいて(又はそれを作成するために)使用しうるスマート・プロセスオブジェクトの特長及び実施例として考えうる特定のものを、以下より詳しく説明する。その後に、該説明される要素と特長を使用して作成されるプロセスグラフィック表示とプロセスモジュールが、制御モジュールに統合されてアドバンスト制御とシミュレーション機能を提供する態様を説明する。後述からも明らかなように、スマート・プロセスオブジェクトの要素と特長は、当然のことながら、ここにおいて論じられる要素と特長に限定されるものではなく、望ましい場合はその他の特長及び要素をプロセスグラフィック表示とプロセスモジュールのうちの一つ又は両方において(又はそれを作成するために)使用することが可能である。更にまた、後述からも明らかなように、以下に記載される一つ又は複数のシミューレーション・システムにおいて使用されるシミュレーション手順はスマート・オブジェクトを使用して構築されたシミューレーション・システムに関連して説明されているが、スマート・オブジェクトをこれらのシミューレーション・システムにおいて使用する必要はなく、これらのシミューレーション・システムを開発又は実施する際にはその代わりとして、その他のタイプのプログラミング技法も使用できる。
【0039】
一般的に言って、事前に定義された一組のグラフィック要素を構成用アプリケーションに組み込み、プロセスプラントを反映するオペレータ表示又はグラフィック表示をユーザが構築できるようにしても良い。これらのグラフィック要素は、制御システムと接続するオンライン計測やアクチュエータを動的に表示するために設計されている。また、プロセスの動作を反映する未測定パラメータは、プロセスモジュールにおいて提供されるオンライン・プロセスシミュレーションを使用して計算しうるし、また、関連するグラフィック表示の一体部分としても示されうる。
【0040】
更に、技術的設計・実施又はトレーニングを目的としてシミュレーションに使用されるオンライン又はオフライン作業環境において、プロセスモジュールにより提供されるプロセスシミュレーションは、グラフィック要素及び関連する制御モジュールにおいてプロセス計測値の代わりに使用されうる。関連するプロセスモジュールにより計算されるこれらの数値は、プロセスグラフィックで示されるようなマニュアル外乱値だけではなくアクチュエータの位置又は状態に基づくものでありえる。このように、グラフィック表示及び制御モジュールは、オンライン又は制御状況の両方、及びオンラインと及びオフライン・シミュレーション状況の両方において使用しうる。また、多くの場合グラフィック要素の静的部分が周知のグラフィック・ライブラリに含まれる3次元構成素子と同じ様に見えるかもしれないが、これらのグラフィック要素の更なるユニークな特長又は特性、これらの要素により表示される情報、及び制御システム入・出力及びプロセスシュミレーション・モジュールへのリンクについて、グラフィック要素のタイプ及び実施例として考えられるものをいくつか以下に説明する。
【0041】
スマート・プロセスオブジェクトと関連したプロセスモジュールにおけるグラフィック要素及びシミュレーション・アルゴリズムは一般的に言って、ストリーム要素、プロセス接続要素、アクチュエータ要素、処理要素、計測要素及び推定特性要素を含む複数の異なるタイプのプロセス要素の一つに属する。ストリーム要素は、一般的にプロセスプラント内の材料流れを定義し、且つ、成分、密度、流量、温度、圧力、重量、且つ又はその他材料の流れを定義するいかなるパラメータをグラフィック表示で示して画面上に表示しうる。流れ要素は、プロセスモジュール入力時に定義され、プロセスモジュール内の要素に備えうる。またそれによって、材料の流動をプロセスモジュールによりグラフィック表示にてモデル化及び描写することが可能になる。同様に、グラフィック表示で表示されるプロセスプラントの一部分における材料の出力をグラフィック表示上で図示するために、プロセスモジュールの出力又は末端にストリーム要素を図示するようにしても良い。ストリーム要素はまた、異なるグラフィック表示(及び関連するプロセスモジュール)がお互いとどのように接続するかを定義するために使用されうる。例えば、一プロセスモジュール内の出力ストリームは別のプロセスモジュール内の入力ストリームでありえ、別のプロセスモジュールの入力ストリームで使用される値を供給しうる。ストリームには、名称(例えば、pHストリーム)、方向(例えば、流入)、計測(例えば、流量、圧力、温度)及び組成(例えば、窒素、アンモニア、等)の四つの部分を含みうる。但し望ましい場合には、他の部分又はパラメータをストリームに含むことができる。
【0042】
プロセス接続要素は、固形物質・液体・蒸気・気体などプラント内の材料がある装置から別の装置に配送又は搬送される方法を定義する。プロセスを通じての原料流を明白に図示するために、配管、ダクト及びコンベアを含む三つの異なるタイプのプロセス接続子を使用しうる。もちろん、電気化学的プロセスにおける電力潮流を取り扱うための電気ケーブルなどのその他の接続要素も同様に使用しうる。配管は一般的にプラント内の液体及び高圧蒸気又は気体の流れを図示(及びシミュレート)するために使用される。ダクトは一般的にプラント内の低圧気体の流れを図示(及びシミュレート)するために使用される。コンベアは一般的に処理装置間における固形物質の移動状態を図示(及びシミュレート)するために使用される。このため、各プロセス接続要素が、配管接続部、ダクト接続部、又は装置の投入側又は出力側で材料を供給するために使用されるコンベア接続部などの接続部タイプを定義する。
【0043】
望ましい場合は、接続部により搬送される材料の特性を上流側の入力により決定する。この情報は、接続が完了しているかどうかを定義する接続状態変数と共に、グラフィック表示上で接続要素の特性として利用できるようにしても良い。接続要素は、処理要素出力、アクチュエータ要素出力又はストリーム要素出力を始点としうる。同じように、接続要素は、処理要素入力、アクチュエータ要素入力又はストリーム入力で終端しうる。
【0044】
グラフィック表示で接続要素の上にカーソルを置くことにより接続要素の特性が自動的に表示されるようにしても良い。また、接続要素上に計測又は推定特性要素(下記に定義)を置くことにより、該接続要素に関連した特性が永久表示として画面上に表示されるようにしても良い。望ましい場合、ある要素の出力上で(ストリーム出力、処理要素出力又はアクチュエータ要素出力などの上で)マウスの左ボタンを押下し、マウスのボタンを押下しながらある要素の入力上にカーソルを置くことによっても接続要素を作成しうる。正確に接続を確立するためには、上流側要素の入・出力タイプ(パイプ、ダクト又はコンベア)と下流側要素の入・出力タイプが一致していなければならない。該接続は自動的に上流要素のタイプを示すようになる。
【0045】
望ましい場合、配管要素は配管接続としてプロセスグラフィック表示において表示又は描写でき、ダクト要素(例えば、空気又は気体)はダクトの形で表示でき、また、コンベア要素はコンベヤーベルトの形で表示しうる。配管、ダクト及びコンベア要素の接続は処理要素間で自動的に接続(ルーティング)でき、また、これらの要素の描写の外側に矢印で流れの方向を表示しうる。上流側の出力が二つの接続により共有される場合、パイプ、ダクト又はコンベアに「T」要素を含みえる。同様に、「T」要素は複数の出力を連結するためにも使用しうる。コンベア要素の色又は他のグラフィック特性を変更してそれの状態(例えば、稼動中/停止中、流動中/流動停止中、接続状態、等)を示すこともできる。一般的に、コンベアに沿った原料流は、コンベアに接続されるモータ駆動機構により決定される。従って、(以下、より詳しく説明されているアクチュエータである)モータ駆動機構のアクチュエータをコンベアに接続しても良い。また、(後述される)計測要素はパイプ、ダクト及びコンベア要素に接続でき、それによって、例えばコンベアの速度 、パイプ又はダクト内の材料の流れ、コンベア、パイプ又はダクト上の又は内の材料の特性(例えば、水分又は重量)など、パイプ、ダクト又はコンベア要素に関連した計測を表示することが可能になる。また、表示される特性要素は、例えば測定されないパイプ、ダクト又はコンベア上の又はそれの中の材料の特性(例えば、材料の成分)を表示するために追加しうる。
【0046】
望ましい場合、配管、ダクト及びコンベア接続要素の各々は、失われた接続を(例えば、色の変化により)グラフィックで又は動的に反映しても良いし、また、選択された特性(圧力、温度、長さ、等)が設定限界値から外れていることも(例えば、色の変化により)グラフィックで又は動的に反映しても良い。更に、関連するプロセスモジュールにより計算されるパラメータもまた該グラフィック上に表示しうる。例えば、上流の接続から提供される特性(接続状態が良いか悪いか、選択された接続要素の一つ又は複数のパラメータを制限するか、等)は、グラフィック表示に表示され、接続要素、又はその接続要素により流動する流れについての情報をオペレータに提供しうる。
【0047】
一般的に言って、アクチュエータ要素は、流れに関するの何らかの発動機能を行い、異なる接続要素間、又は処理要素と接続要素間に設置しうる要素である。アクチュエータ要素の例としては、(アクチュエータ付き)調整バルブ、(アクチュエータ付き)ON-OFFバルブ、(モータ付き)ポンプ、(モータ付き)押し込み送風機、(モータ付き)吸出し送風機、(ON-OFFバルブ付き)エダクタ、(駆動機構付き)ダンパ、(変速モータ付き)供給装置、(コンベア要素に備え付けうる)コンベヤモータ駆動機構、などが挙げられる。
【0048】
グラフィック式にバルブ要素を描写することにより、そのバルブを制御する関連制御ブロック内の、意図するバルブの位置を(例えば、アニメーションにより)、バルブの不具合(例えば、色の変化により)、バルブ全開放/閉鎖位置(例えば、色の変化により)、そしてAO、DO、DC、設定点、PV、OUT、モードなどを(例えば、数字の列又は他の指標により)動的に反映しうる。(プロセスモジュールにおいて使用される)バルブ要素に関連するシミュレーション要素は、バルブ・アクチュエータに関連するパラメータ(出口圧、質量流量、液体温度、液状組成物、吸込圧力及び出口圧など)を計算するシミュレーション・アルゴリズムを有しうる。また希望に応じて、シミュレート又は計算されたパラメータをプロセスグラフィックに表示しうる。但し、ユーザ又はシステム構成エンジニアは通常、バルブと関連した制御モジュールにおけるAO、DO又はDCブロックへの参照、並びにバルブのタイプ (例えば、線形、急開、等率〈%〉、バルブ寸法、等)や開閉ストローク時間を設定しなければならない。もちろん、バルブを経由して流れる材料についてのバルブの動作をシミュレートする際に使用できるシミュレーション・アルゴリズムは、バルブのタイプ及び寸法設定情報に依存しうる。
【0049】
ポンプ要素のグラフィックによる描写は、モータ状態を(例えば、色の変化により)、関連するDO又はDC機能ブロックモード及び設定点を(例えば、記号列を使用して)、(変速駆動機構を使用の場合は)モータ速度を、(変速駆動機構を使用の場合は)AO設定点、PV、OUTモードを、そしてその他所望のパラメータを、動的に反映しうる。同様に、この要素を対象にした(プロセスモジュールにて使用される)プロセスシュミレーションにより、出口圧、液状組成物、液体の温度及び質量流量などのパラメータを決定又は計算しうる。(なお、該パラメータをグラフィック表示において表示しうる。)この場合、ユーザはポンプのタイプに基づいて、ポンプ曲線を定義する必要がありうる。但し、ユーザは、モータ始動/停止に関連したDO又はDCブロックへの参照と、変速駆動機構(使用されている場合)の関連AO機能ブロックへの参照と、ポンプの動作を定義するためのポンプ曲線(例えば、圧力 対. 流量)とを設定しうる。
【0050】
押し込み送風機又は吸出し送風機のアクチュエータ要素のグラフィックによる描写は、モータの状態や、DO又はDC機能ブロックモードと設定点、モータの速度AO設定点、PV、OUT、DO又はDC機能ブロックモード(変速駆動機構を使用の場合)、及びその他所望のパラメータ(いずれもグラフィック表示において表示しうる)を動的に反映する描写を備えうる。この要素を対象にした(プロセスモジュールにおいて使用される)プロセスシミュレーション要素により、出口圧、気体組成、気体温度及び気体流量などのパラメータを決定又は計算しうる。(また、該パラメータをグラフィック表示において表示しうる。)ユーザは、モータ始動/停止用の関連するDCブロックへの参照や、変速駆動機構(使用されている場合)のAOブロックへの参照や、シミュレートされるファンの動作を定義するためのファン曲線(圧力に対して流量)を設定しうる。
【0051】
場合によって、特定アクチュエータ・タイプは、特定タイプの接続(例えば、パイプ、ダクト又はコンベア)と共にだけ使用されうる。下表は、典型的なアクチュエータ要素用の実施例として挙げられる接続制限のいくつかを定義するものである。
【表1】
【0052】
処理要素は、プラント内の材料又はストリームを処理するプラント設備を何らかの態様で含んでいる。一般的に言えば、処理要素間の入・出力は全て接続要素を介して作成される。標準の処理要素としては、タンク(垂直及び水平)、ヒータ、スタティックミキサ、反応装置、混合機、エアヒータ、及びその他いかなるタイプの単純又は標準処理作業を実行する要素が含まれている。標準処理要素について、ユーザは、物理的設備の特性(例えば、サイズ、容量など)と共に要素への入・出力点数を指定しうる。これらの標準処理要素のシミュレーション・アルゴリズムと静的表示は、構成時ユーザによって上記のように選択できるが修正変更はできないように設定しうる。もちろん、望ましい場合は、その他の、一般により複雑なプラント設備(例えば、蒸留塔、蒸発器、分離器、ボイラ、等)を、カスタム処理要素として実施しうる。該静的表示、入・出力点数、及びこのようなカスタム処理要素のシミュレーション・アルゴリズムは、ユーザーインタフェースの要求条件を満たすように修正変更しうる。一旦カスタム処理要素が定義されると、それは、再使用されうる又は、別の処理要素の作成における始点として使用されうる複合体又は定型(テンプレート)として保存されうる。
【0053】
タンク標準処理要素(垂直又は水平のいずれか)は、タンクへの配管接続に基づいて構成されうる。また、タンク要素は、タンク内の液面レベルを(例えば、動的アニメーションを使用して)動的に反映したり、且つ液面レベルが満タン(100%)又は空になっている状態を(例えば、色の変化を使用して)動的に反映したりもしうる。タンク用のプロセスモジュール・シミュレーションは、グラフィック表示を介して、出口での温度、出口での組成、液体の温度及びシミュレートされたタンク液面レベルなどのパラメータを計算且つ表示しうる。但し、システムにタンクを結び付けるために、ユーザ又はシステム構成エンジニアは、入・出力の接続数、タンクへの完全な接続、タンクの特性、サイズ(例えば、径と高さ)などを構成する必要がありうる。
【0054】
ヒータ処理要素は、グラフィック表示を介して、(例えば、色の変化を使用して)熱伝達係数、出口における生成物の温度、入口における生成物の温度、(一定降下と仮定した)出口圧などを動的に計算且つ反映しうる。ユーザ又はシステム構成エンジニアは、ヒータへの完全な接続、ヒータ表面積及び清浄時の熱伝達係数を構成する必要がありうる。
【0055】
もちろん、スタティックミキサ、反応装置、混合機、エアヒータ、熱交換器などその他の処理要素は、これらのタイプの装置の条件に合うように仕立てられた表示及びシミュレーション能力を備えうる。蒸留塔、蒸発器、分離器、ボイラなどの標準ではない処理要素は、容器槽と関連したシミュレーションが標準選択に含まれていない場合はユーザにより定義しうるカスタム処理要素を使用してグラフィック式に表わされうる。これらの要素における処理は、容器槽の各入力から各出力に関係するステップ応答モデルとして記述又は定義しうる。入力は気体のストリーム且つ又は液体のストリームでありうる。オプションとして、ユーザは状況に応じて処理要素の入・出力間の関係を示す方程式を定義しても良い。また、これらの方程式は、シミュレーションを実行するために当該の要素を使用してプロセスモジュールに格納されうる。望ましい場合は、いくつかの単純な静態図表の表示を提供し、カスタム処理要素と関連した静的なグラフィックをユーザが迅速に作成する際に役立てても良い。これらの単純なグラフィックを使用すれば、ユーザは、所望の入・出力接続数とカスタム処理要素にサポートされる接続のタイプ(例えば、パイプ、ダクト又はコンベア)を指定するだけで済むようになる。また、それに応じて、グラフィック単位体が表示され、オペレータ・グラフィックの作成に直ちに使用できるようになる。望ましい場合、ユーザがシミュレーション・アルゴリズムをステップ応答として指定することにした際には、プロセス要素の各入・出力と関連したゲイン及びいかなる動特性も指定しうる。ユーザがカスタム・アルゴリズムを選択すると、表現式エディタがユーザに提供されるようにし、それを使ってユーザがシミュレーション・アルゴリズムを定義するようにしても良い。カスタム処理要素出力の特性は、選択されたメソッドに基づいて、別々に計算されうる。更に、ユーザは、自ら別の組込ソフトウェアで定義した一つ又は複数のアルゴリズムを参照しうる。
【0056】
加えて、カスタム処理要素を作成するために、事前定義された複合体又は定型をいくつか備えるようにしても良い。これらの定型には、例えば、流出気体O2や流出気体CO、生成された蒸気、ボイラ胴液面レベル及びボイラードラフトなどを計算するカスタム・アルゴリズムを有するボイラ定型が含まれる。このような定型は単一の燃料入力に基づきうる。但し、該定型を修正変更することにより、複数の燃料を伴うボイラをシミュレートすることが可能になる。その他の事前定義されうる定型としては、噴霧乾燥器カスタム処理要素と共に使用され且つ分離器の動作をモデル化するためにステップ応答モデルを含みうるところの特殊容器槽−遠心式分離器定型を含みうる。同様に、カラム定型、噴霧乾燥器及び蒸発器本体は、予期されるプロセス応答を定義するためにステップ応答モデルを利用しうる。蒸発器においては、エネルギー入力及び入力流の濃度に基づいて、蒸気放出及び出口流の濃度を計算できる。複数の蒸発器要素は、多重効用蒸発器を作成するために熱交換器及びエダクタの要素と一緒に接続されうる。同様に、特殊容器槽−排気筒カスタム定型処理要素は、ボイラ処理要素と共に使用されうる。この場合、入口の特性は、そう望む場合は変更せずに、又は排気筒にてなされる放出低減を反映するように、排気筒を通して維持されうる。
【0057】
グラフィック表示及びプロセスモジュールを作成するために使用できるその他のタイプの要素には、計測要素及び特性要素が含まれる。計測要素には、(物理的なトランスミッタに関連した測定値にアクセスするためにグラフィック表示で使用されうる)トランスミッタ要素及びスイッチ要素が含まれる。一般に、トランスミッタ要素は、実際のトランスミッタ(センサ)に関連した不良状態又は不明状態、制御モジュールにおける関連AI機能ブロックのモード、測定値及び測定単位など、又は実際のトランスミッタと関連したその他のデータを動的に反映しうる。オフラインモード(又はシミュレーションモード)においてトランスミッタ要素は、AI又はPCIブロックと関連した値ではなくプロセスモジュールにより提供されるシミュレーション値にアクセスし表示するために使用されうる、或いは、
測定値をシミュレートされた制御ルーチンで使用される計測として制御モジュールにおける関連AIブロックに提供するために使用されうる。トランスミッタ要素は、接続要素又は処理要素に追加でき、また、このようなトランスミッタ要素が表示に追加された時点で、一般にユーザがそれに関連する(計測を提供しているコントローラ方式の)AI、PCI又はDIブロックを識別する必要がある。オンライン・モードにおいて、計測の値はこの計測要素の隣りに示しうる。オフラインモード(又はシミュレーションモード)において、(対応するプロセスモジュールにより開発されたような)計測のシミュレート値が自動的に表示されうる。オンライン動作中、ユーザは、計測ミスが発生した場合に、制御と表示をシミュレート値に切り替える選択を行うことができる。
【0058】
スイッチ要素は不良又は不明状態、関連するDIのモード(例えば、マニュアル又はOS)及びスイッチの離散値(オン、オフ、等)を動的に反映しうる。オフライン・シミュレーションモードにおいて、ユーザは、グラフィック表示及び制御モジュールにおけるスイッチ・パラメータにアクセス且つ変更するために、シミュレーション値又はマニュアル値と状態を選択することにより、且つスイッチの値と状態をマニュアル操作で入力することにより、スイッチ表示要素を使用しうる。但し、ユーザは一般に、制御方式中の関連DIブロックへの参照、スイッチをトリガする要素特性への参照、及びスイッチの状態変化に関連した限界値及び不感帯域を提供することにより、スイッチ要素を構成しなければならない。
【0059】
推定特性要素は、一般にプロセスモジュールにより決定されるようにシステムの推定特性を表示し、当該要素のいかなる特性を表示するために接続又は処理要素に追加されうる。この要素が接続要素又は一台の設備に配置されると、ユーザは、表示されることになっている特性を閲覧して選択できる。よって、物理的計測により提供されないシミュレート特性を、推定特性要素の使用を通じて表示しうる。このような推定特性要素は、正常な又は不良の接続、推定特性値、及び関連する限界値から外れた特性又は変化を動的に反映しうる。一般に、ユーザは、特性が限界値から外れた場合に表示されるべきその要素の特性への参照及び限界値や色の変化を設定しなければならない。
【0060】
当然のことながら、処理要素、アクチュエータ要素及び接続要素にトランスミッタ要素と推定特性要素を付随することにより、これらのプロセス要素の入・出力と関連した特性を、オンライン動作中に、又はオンライン・シミュレーションとオフライン・シミュレーションの両方において参照しうる。これらの特性は、グラフィック表示で見えるように表示しても良い。
【0061】
一般的に言って、オペレータは、一つ又は複数のプロセスモジュール39又はグラフィック表示をプロセス10の稼動中に実施できるように或いはシミュレーション環境において実施できるように一つ又は複数のプロセスモジュール39又はグラフィック表示を作成するために、構成用アプリケーション38を作動又は実行しうる。一実施形態において、構成用アプリケーション38は、図3に示されるような構成用画面をシステム構成エンジニアに提示する。図3に見られるように、構成用画面表示64は、ライブラリ又は定型欄65及び構成欄66を含んでいる。定型欄65は、(図2のスマート・プロセスオブジェクト42を含みえ、上記接続、計測、ストリーム、処理及び推定特性要素のいかなるものでありうる)複数セットの定型スマート・プロセスオブジェクト67の描写を含んでいる。望ましい場合は、グラフィック定義だけを有する非スマート要素68も提供されうる。根本的に、定型67及び68は、プロセスモジュール又はグラフィック表示(又はその両方)の中のスマート・プロセスオブジェクトのインスタンスを作成するために構成欄66上にドラッグして移動しうるジェネリック・オブジェクトである。図中、部分的に完成されているプロセスのグラフィック表示35cが、ストリーム出力を提供するような上記スマートリンク又は接続子要素でありうるところの流路接続子により相互接続された一つのバルブと二つのタンク、二つのポンプ、一つのフロー・トランスミッタ及び二つのセンサを含んだ状態で示されている。なお、グラフィック表示35cは、スマート・プロセスオブジェクト及び非スマート要素の両方で構成されうる。
【0062】
グラフィック表示35cなどのグラフィック表示(又はプロセスモジュール)を作成時、システム構成エンジニアは、定型欄65に示されるスマート・プロセスオブジェクト67及び要素68を選択し、構成欄66の上までドラッグしていかなる所望の位置に移動しうる。一般に、システム構成エンジニアは、装置を描写する一つ又は複数のスマート装置プロセスオブジェクト67a又は非スマート要素68を選択し構成欄66上にドラッグすることになる。それからシステム構成エンジニアは、スマート接続子プロセスオブジェクト67bを使用して構成欄66内のスマート装置プロセスオブジェクトを相互に接続し、画面表示内に入力・出力ストリーム67cを配置しうる。なおまた、非スマート要素を画面表示に追加しうる。この過程において、システム構成エンジニアは、ポップ・アップ特性メニューなどを使用して各スマート・プロセスオブジェクトの特性を変更しうる。具体的には、これらのスマート・プロセスオブジェクトに関連したメソッド、パラメータ、タグ、名称、ホットリンク、モード、クラス、入・出力などを変更しうる。プロセス又はシステム構成エンジニアが、通常プロセスの構成、区域などを表わす各要素の中から所望するものを使用してプロセスモジュールを作成時、該システム構成エンジニアは、該モジュールと関連した規則又はその他の機能性を定義しうる。このような規則は、質量平衡及び流量計算など、システムレベルのメソッドの性能と関連するような実行規則でありうる。また、プロセスエンジニア又はオペレータは、プロセス表示画面がオンラインである時に有用なトレンド及びフェイスプレートを追加することにしても良い。グラフィック表示35cを作成後、システム構成エンジニアは、その画面表示をメモリに保存しうるし、そしてその時に、又はその後に、実行エンジン48がグラフィック表示を提供しうるような態様で当該の画面表示を実行エンジン48にインスタンス化及びダウンロードしうる。もちろん、システム構成エンジニアは、同じ又は類似した方法でプロセスモジュールを作成することも可能である。(但し、プロセスグラフィック表示要素とは対照的にプロセスモジュールの要素には異なるグラフィックを描写しうる。)更に、オペレータは、プラント稼動中に詳細表示レベルを有効にする選択を行いうる。例えば、詳細表示レベルの一つによって各接続での組成を示すようにしうる。
【0063】
上記されるように、プロセスグラフィック又はプロセスモジュールには特定のタグが提供されうる。例えば、グラフィック表示又はプロセスモジュール内のスマート・プロセスオブジェクト要素は、例えば、プロセス制御システム内で選択された一台の設備や経路などその他の因子に基づき実行エンジン48によって実行時中に書込める又は選択できるように別名を含んだタグを備えうる。プロセス制御システムにおける別名及び間接参照の使用については、本発明の特許権者に譲渡され且つ参照することによりここに援用されるところの米国特許第6,385,496号にて詳細にわたり説明されている。これらの技法のいかなるものも、ここに記載されるスマート・プロセスオブジェクト用のタグに含まれる別名を提供且つ解消するために使用されうる。別名及びそれ同等のものを使用することにより、同じプロセスモジュールは、複数台の設備などの異なる表示構成を含みうる、或いは、複数台の設備などの異なる表示構成をサポートするために使用しうる。
【0064】
図3の画面表示64には、プロセスモジュール又はグラフィック表示の異なる表示ビューのタブ(表示ビュー1、表示ビュー2及び表示ビュー3)が示されている。これらのタブは、同じスマート・プロセスオブジェクトをいくつか使用するプロセスに関連した異なるユーザ用が異なる表示にアクセス及びそれを作成するために使用されうる。
【0065】
一般的に言って、システム構成エンジニアがプロセスモジュール又はグラフィック表示を作成すると、スマート・プロセスオブジェクトは、構成用アプリケーション38いよって各オブジェクト間の接続と共にデータベースに自動的に格納される。その後、このデータベースは、例えば、同じスマート・プロセスオブジェクトを一つ又は複数用いて異なる表示ビューを提供しうるその他のプロセスモジュール及びグラフィック表示を作成するために使用できる。よって当然の如く、システム構成エンジニアは、第2の表示ビューを作成する際、単に、データベース内に既に作成され格納されているスマート・プロセスオブジェクト及び、第2の表示ビューにそのスマート・プロセスオブジェクトを配置するためのそれに格納されるいかなるメソッドなどを参照するだけで第2の表示ビューを作成できるようになる。このように、プロセス制御モジュール及びグラフィック表示が作成されるにつれてデータベースにそのデータが投入され、また当該データベースによって、プロセスフロー・データベース内に既に存在するスマート・プロセスオブジェクトを使用することによりいつでも別の表示ビューやモジュール及びグラフィック表示を作成且つ実行できるようになる。また、このようなデータベースの使用により、該データベース内の各スマート・プロセスオブジェクトは、プロセスモジュールをサポートしうる、又は、プロセスモジュールの中で使用され複数のグラフィック表示において参照できるようになる。当然の如く、これらのモジュール用に画面表示を構築してからプロセスモジュールで使用される、又はそのプロセスモジュールと関連したフローアルゴリズムを指定することによりプロセスモジュールを構築しうる。もちろん、個々のプロセスモジュールは、異なるコンピュータに分散され、その異なるコンピュータにより実行されうる。また、プロセスモジュールは、お互い連動して作動するように、同じ又は異なるコンピュータのいずれかにおいてお互い通信可能に接続されうる。このようにすると、プロセスモジュールを一緒に結び付けるために入力及び出力ストリームを外部から参照できるようになる。
【0066】
上記のように、システム構成エンジニアは、プロセスモジュール又はグラフィック表示・作成作業の一環として、プロセスモジュールのシミュレーション・アルゴリズムを添え付けうる、或いは提供しうる。これらのシミュレーション・アルゴリズムは、プロセスモジュールにより描写又はモデル化されたプロセスに関する質量平衡計算、流量計算、能率計算、経済計算など、特定のプロセス又はシステムレベルの特性を計算又は決定するように事前に構成されうる。結果として、プロセスモジュール自体は、モード、状態及びアラームの挙動を含んでいても良く、またワークステーションに割り当てることができ、更には表示ダウンロードの一部としてダウンロードしうる。望ましい場合、シミュレーション・アルゴリズムは、プロセスモジュールのスマート・プロセスオブジェクトに備えられるデータを使用してプロセスシミュレーションに関係する質量平衡計算、熱平衡計算、流動経路指定計算、流動能率計算、流量最適化計算、経済計算、又はその他所望の計算を行うために実行エンジン48により実行されうる。なおまた、これらのシミュレーション・アルゴリズムは、制御法(即ち、コントローラ、フィールド装置などに関連し且つそれにダウンロードされた制御モジュール)からのパラメータにアクセスし、逆に、これらの制御モジュールにデータ又は情報を提供しうる。
【0067】
当然のことながら、実行エンジン48は、プロセス・アルゴリズムが全ての画面表示上に構成された全てのプロセスオブジェクト及びリンクの融合(amalgamation)を全体にわたって実行することを可能にするために必要とされる。よって、一般に、関連するグラフィック表示のいかなるものがロードされているか(即ち、呼び出されてユーザに情報を表示しているか)に関わらず又はそれに関係なく、(プロセスモジュール内の)シミュレーション・アルゴリズムが実行されることになっている。もちろん、シミュレーション・アルゴリズムは、プロセス10全体、又はプロセス10の定義されるサブセット全体にわたり照合確認されうる。更に当然のことながら、いかなる特定のプロセスモジュールの実行中に、実行エンジン48は、プロセスモジュール内の相互に接続されるオブジェクト又はエンティティが該プロセスモジュールに関連したグラフィック表示に基づいて描かれるところの画面表示をオペレータ・インタフェースに表示してオペレータに提示しうる。画面表示のパラメータ、グラフィックなどは、プロセスモジュール内のスマート要素の構成及び相互接続により決定されることになる。更に、この画面表示又はその他の画面表示上に提供される警告アラーム及びその他の情報は、特定のプロセスモジュールに関連したシミュレーション・アルゴリズム及びスマート・プロセスオブジェクト内のメソッドにより定義及び生成されうる。
望ましい場合、実行エンジン48は、プロセスモジュールの画面表示を一つ以上のオペレータ・インタフェースに提供しうる、或いは、実行エンジン48がプロセスフロー・モジュールを実行し続けることによってそれに関連するメソッド、アラーム挙動、フローアルゴリズムなどを実行しても画面表示を提供しないように構成又は設定しうる。
【0068】
望ましい場合は、グラフィック表示からプロセスモジュールを自動的に生成しうるし、またその逆も同様にプロセスモジュールからグラフィック表示を自動的に生成しうる。また、プロセスモジュールに利用可能な機能性はプロセス・グラフィック要素により決定される。ここで明確にしておくべきことは、プロセスモジュールがプロセスのグラフィック表示を影付けできるように構築するのが好ましいということである。結果として、ユーザがプロセスのグラフィック表示を構成時、該ユーザは、質量流又はエネルギーの流れなどのストリームといったプロセスモジュールに関する追加情報を含む能力を得ることができる。これらのストリームは、シミュレーション機能ブロックにより必要とされる開始条件を確立するためにプロセスモジュールにおいて使用される。
【0069】
また、プロセスモジュールはコンピュータで実行される実際のソフトウェア・モジュールであるので、コントローラモジュールと関連したパラメータや制御法や画面表示などを使用するためにコントローラモジュールにより参照されることも、また該コントローラモジュールを参照することもプロセスモジュールにとって可能になる。また、この能力を使用して、プロセスのグラフィック表示から独立してプロセスモジュールを作成することも可能になる。
【0070】
一般的に言えば、プロセスモジュールは、処理要素、ストリーム及びそれらの関連する接続からなる。(プロセスモジュール内の)プロセス・グラフィック要素とシミュレーション要素との間には一対一対応の関係が存在するので、グラフィック表示を構築し、当該の画面表示から対応するプロセスモジュールを自動的に生成することがユーザにとって可能になる。もちろん、望ましい場合、ユーザは、プロセスモジュールを作成し、それからスマート・プロセスオブジェクト内のグラフィックを使用して当該のモジュールからグラフィック表示を自動的に作成するようにしても良い。但し、プロセスモジュールの自動生成を可能にするためには、ユーザが、計測要素及び推定特性要素と関連したアクチュエータ、接続又は処理要素の特性を識別する必要がありうる。また、ユーザは、プロセス・グラフィックを作成する前に(また場合によっては制御モジュールが構築される前に)プロセスシミュレーションを作成する必要がありうる。シミュレーションが構築された後、制御モジュール内のI/Oブロックへの参照を書き込むことが可能になる。また、関連するグラフィック表示が作成されると、特性参照を設定するために既存プロセスモジュールに照合検索することが可能になる。
【0071】
場合によって、プロセス・グラフィックは、プロセスシミュレーションを構築するために必要な全ての詳細を含んでいるとは限らない場合もある。よって、ユーザがプロセス・グラフィックから自動的に作成されたシミュレーション又はプロセスモジュールを編集することを可能にするためにエディタを提供することが望ましい。また、複数のプロセスグラフィックによって同じ設備を表示する必要がありうるので、プロセスグラフィックの作図において各要素が既存プロセスモジュールを参照できることが必要でありうる。
【0072】
一般的に言えば、処理要素に対応するシミュレーションは共通の構造を有することになる。望ましい場合、シミュレーションのパラメータ及びブロック入力接続は、制御モジュールへの参照を必要としないように、プロセスモジュールに格納される。更に、シミュレーションにサポートされる入・出力接続数を拡張可能に定義しうるようにしても良く、シミュレーションの実行により得られた結果は、シミュレーション出力の接続において又はシミュレーションのパラメータとして反映されうる。また、シミュレーション・アルゴリズムは、ステップ応答として定義されうるし、又はユーザにより入力されうる。シミュレーション・アルゴリズムがユーザにより入力される場合、ユーザは各出力の動特性を個々独立して指定しうる。
【0073】
更にまた、パラメータの共通集合が入・出力接続用にサポートされうる。入・出力接続に関連したパラメータは、配列パラメータ又は構造としてブロック間で通信されうるし、且つ、接続状態(例えば、良好、不良、制限付き、等)、流量パラメータ、圧力パラメータ、温度パラメータ、比熱パラメータ、密度パラメータ、又はその他所望のパラメータなどのパラメータを含みうる。場合によって、ストリームの組成などのその他のパラメータが、シミュレーション・アルゴリズムにおいて提供又は使用されうる。この要求条件をサポートするために、標準の及び延長されたストリーム要素を備えうる。延長ストリーム要素構成の一部として、ユーザは、ストリーム要素を定義するために一式の事前定義されたデータ・グループを選択しうる。このような接続の延長は、この情報を利用するブロックに接続する場合のみに可能となる。一般に、拡張パラメータには、グループ名及び複数からなる特定の要素を含みうる。例えば、ボイラ処理要素への燃料流入ストリームには、燃料系や該燃料中のカーボン量、水素量、硫黄量、酸素量、水分量及び窒素量(望ましい場合は全て重量%にて表記可)といった燃料の成分を含みうる。別の実施例においては、ターボジェネレータ処理要素に蒸気ストリームを使用し、関連するシミュレーションへの接続には、蒸気集合、段階に入る蒸気熱関数(実値)、段階を出る蒸気熱関数(実値)、(等エントロピー膨張の場合の)蒸気熱関数などを含む拡張パラメータ集合を使用しうる。
【0074】
プロセスモジュール内のシミュレーション要素が、ハイファイ・シミュレーション・パッケージへのインターフェースとして使用される場合には、拡張グループ集合も使用しうる。この場合、いくつかのストリームの組成はプロセス・グラフィックで見えるように表示しても良い。また、望ましい場合、グラフィック表示に表示される値の作成又は修正変更、並びにグラフィック表示上に提示される制御モジュールの関連フェイスプレート及び詳細画面表示の作成又は修正変更を簡単にするために、対話型編集用プログラムが提供されうる。
【0075】
図4は、上記される要素及び構成用アプリケーションを使用して作成されうるところの、実施例として挙げられるグラフィック表示100を示す図である。具体的に、グラフィック表示100は、水、酸及び基剤から白酢を生成するプロセスプラントの一部分を描写するものである。図4に示されるように、該プロセスのグラフィック表示100は、それに入る入力に「基剤供給」、「酸供給」、「水供給」及び冷却水のストリームを定める四つのストリーム要素102を含んでいる。「基剤供給」ストリーム102は、配管接続要素104を通して、バルブ106として図示されるアクチュエータ要素まで延びる。バルブ106の出力は、配管接続要素104を介して、混合機108の第1の入力に接続される。同じような方法で、「酸供給」102は、まずトランスミッタ要素110に接続され、そこから混合機108に接続される更なるバルブ112に接続される。酸供給102とトランスミッタ110、トランスミッタ110とバルブ112、そしてバルブ112と混合機108は配管接続要素114を介して接続される。
【0076】
図を見れば一目瞭然である如く、混合機108の出力は、配管と二つのトランスミッタ124,126を介して熱交換器122に接続される。冷却水ストリーム102は、バルブ128を介して熱交換器122まで延び、戻り水ストリーム要素131をもたらすためにバルブ130を介して熱交換器を出る。同様に熱交換器122の出力は、出力、即ち酢酸ストリーム要素136を提供するために、トランスミッタ要素132とバルブ134を通じて配送される。必ずしも特定して呼び出されるとは限らないが、あらゆる場合において、グラフィック表示内の要素は配管接続要素を介してお互いに接続される。
【0077】
当然のことながら、グラフィック表示100には、異なる要素と関連したプロセス変数(PV)値など、設定点(SP)値、出力(OUT)値などのパラメータを示す又は表示するために、表示要素自体の特性として生成されうる又は制御モジュール内のブロックを参照する推定特性要素(複数可)やトランスミッタ要素(複数可)として示される別の要素でありうる表示ボックス140が示されている。また、ユーザが何らかの要素の上にカーソルを置くと、画面表示100が被参要素に関連したその他の値を表示するようにもしうる。例えば、ストリーム要素の一つ(酢酸ストリーム出力136など)にカーソルを置くことにより、プロセスのこの地点における酸ストリームの組成、圧力、温度、密度、流量などがグラフィックに表示されるようにしても良い。もちろん、グラフィック表示100に表示される値及びパラメータは、プロセス制御システム内の実際の被参トランスミッタから(例えば、制御システム内のAIブロックからなど)、又は要素の機能性をシミュレートするプロセスモジュール・シミュレーション要素から供給されうる。図4のグラフィック表示100は、白酢を製造するプロセスの稼動中に、或いは、例えば設計又は作業者訓練活動を行うために使用される当該プロセスのシミュレーションを実施する目的で、ユーザに対して提供されうる。
【0078】
図5は、プロセスプラントの更に広い範囲を網羅したものを示す(又はシミュレートした)更にレベルの高い画面表示(又はプロセスモジュール)を形成するために異なるグラフィック表示 (並びに、異なるプロセスモジュール)が共に接続される態様を示す。プロセス・グラフィック100は、図5の画面表示150において、接続点として示されるストリームの入力と出力の一式を備える名称又はラベルの付いたボックスに折り畳み状態で示されている。望ましい場合、ユーザは、図5のプロセス・グラフィック100を、例えばダブルクリックして選択することにより、図4に示される状態に展開しうる。その他の折り畳み状態のグラフィック表示152及び154はまた、入力ストリーム要素156及び158を介して基剤供給、酸供給、水供給並びに冷却水供給に接続された状態で示されている。プロセスのグラフィック表示100のストリーム出力136は、白酢用貯蔵タンク162のストリーム入力160に接続される。同じように、プロセスのグラフィック表示152及び154のストリーム出力は、麦芽酢及びピックリング酢用の貯蔵タンク163及び164のストリーム入力に対してめいめいに接続される。当然のことながら、プロセス・グラフィック152及び154は、めいめいに、麦芽酢とピックリング酢を製造するプロセスプラントの一部分のグラフィック及び、プロセスプラントのこれらの部分に関するデータ及びグラフィックの表示ビューを提供するように構成される。
【0079】
但し、図5には、グラフィックで表示されるプロセスプラントの異なる部分がストリーム要素間の接続を介して共に接続されうることが示されている。具体的に、接続要素と関連した始点特性を定義するために、ストリーム要素を画面表示に含みうる。また、ストリーム要素は、異なる画面表示間の接続点としても使用しうる。このようなページの余白からはみ出した範囲にある画面表示間の接続に関しては、ユーザがストリームをクリックすれば、参照の対象となっている接続を含む関連画面表示を直ちに呼び出すことができるようにしても良い。よって、一般的に言えば、ストリーム要素の質量/組成は、普通、プロセス入力の始点特性(即ち、始点における供給原料の組成など)を定義するため、又は別の画面表示上のストリーム接続へのリンクを定義するために使用されることになる。物質/組成ストリーム要素の入力又は出力にて接続を形成しうる。ストリーム要素について、ユーザは一般的に、ストリームの名称(システム特有であるべき)、ストリームの特性(基準入力又は入力接続が存在しない場合)、ストリームの異なる成分の質量含有率(ストリームが一つ以上の成分から構成される場合)、圧力流量又は流体質量、温度、比熱、密度、必要とされる接続タイプ(パイプ、ダクト、コンベア)、及び被参入力ストリーム(別の画面表示上のストリームにアクセスするために使用される場合)を構成しうる。同様に、エネルギー・ストリーム要素は、プロセス入力と関連した始点エネルギー(例えば、BTU/時間の伝達など)を定義するため、又は別の画面表示のストリーム接続のエネルギー特性へのリンクを定義するために使用されうる。
【0080】
図5には、折り畳み状態の異なるグラフィック表示を相互接続するためにストリームを使用した状態が示されているが、異なるプロセスモジュールを相互接続するために(且つ、該相互接続を図示するために)同手順を利用することもできる。具体的に、プロセスモジュールは、名称及びストリーム要素の入・出力を図示するために折り畳み状態にしうる。また、異なるプロセスモジュールのストリーム出力とストリーム入力間に通信接続又はリンクの描写を使用して、これら折り畳み状態のプロセスモジュールを、その他のプロセスモジュールに通信可能に結び付けられる又は接続できる。
【0081】
図6は、図4のグラフィック表示100に対応するプロセスモジュール100aを示す図である。以下の説明からも明らかになように、プロセスモジュール100aは、図4のグラフィック表示に示される各々の物理的要素のスマート・オブジェクト・シミュレーションを表わすブロックを含んでいる。図を分り易くするために、図4の要素に対応する図6の各シミュレーション・ブロックは、図4と同じ参照番号に「a」を追加して示されている。よって、図6の混合機シミュレーション・ブロック108aは、図4において描写される混合機108に相当するシミュレーションである。同様に、バルブ・シミュレーション・ブロック106a、112a及び118aは、図4に示されるバルブ106、112及び118にめいめい相当し且つ通信可能につながれる。
【0082】
よって図6のプロセスモジュール100aは、グラフィック表示100に示される各要素に対して(スマート・プロセスオブジェクトと関連する又はそれによって指定される機能ブロックとして表わされうる)プロセスシミュレーション要素を含んでいる。また、これらのシミュレーション・ブロックは、接続要素がグラフィック表示100において指定される方法により、且つ グラフィック表示100で指定される接続要素を使用して相互に接続されている。望ましい場合、プロセスモジュール100aは、グラフィック表示100作成後に、又はグラフィック表示100作成中でさえも、自動的に作成されうる。
【0083】
上に示されるように、プロセスモジュール100内のプロセスシミュレーション要素の各々は、入力でこれらのシミュレーション要素に提供される材料ストリーム(複数可)の性質及び、プロセスで使用される機械装置の挙動に基づくシミュレーション機能性(例えば、アルゴリズム、規則、伝達関数、等)を含む。これらのシミュレーションは、処理、アクチュエータ及びトランスミッタ要素の各々の内のSIMブロックにより図6において図示される。装置の動特性及びストリーム(流動)への影響は、よって、プロセスモジュール100a内でモデル化又はシミュレートされうる。アクチュエータ及び処理要素に関連したシミュレーション・ブロックに対して利用可能になるいくつかの考えうる特性の例としては、(吸込温度、流量及び熱容量に基づいた)出口温度、(要素内の入口流体質量及び集積量に基づいた)出口流量、(装置ユニット又は下流側圧力の全体にわたる推定圧力降下に基づいた)出口圧、そして(完全混合及び入口組成に基づいた)出口組成が挙げられる。カスタム計算を実施する場合は、例えば、プロセス入力の変更に対する1次系+不感時間系応答に基づいて、出口特性と関連した組込み式動特性を追加しうる。望ましい場合、ユーザは、計算された各特性に関連した不感時間及び遅延時間を指定しうる。例えば、トランスミッタ及びスイッチなどのプロセス計測要素、及び接続要素については、当然のことながら動特性が被参特性に導入されないと考えられる。但し、トランジション(遷移)及びその他の特性については、望ましい場合にモデル化しても良いことになっている。但し、多くの場合、上流側の接続からの特性は、下流側の接続に直ちに反映されうてる。
【0084】
プロセスモジュール100aを使用して、プロセス・グラフィック100に描写されたプラントの一部分の動作をシミュレートできる。プロセスモジュール100a内のシミュレーション要素からの値はグラフィック表示100のグラフィックに自動的に通信且つ表示され制御モジュールにおいて使用しうることから、このシミュレーション結果が画面表示100に統合される。同様に、トレーニング担当教師は、プロセスモジュール100aにより実行されるシミュレーションにおける特性を作成又は変更するために画面表示を使用しうる。
【0085】
HYSYS、CAPEなどにより提供されるようなハイファイ・シミュレーションについては、望ましい場合、計測及びアクチュエータ要素のI/O参照を定義してからこれらの参照を使用して例えばシミュレーションにおける入出力を行うためのHYSYSにおいて現在使用されているDCSインターフェース表を自動的に作成することにより、該ハイファイ・シミュレーションをシミュレーション機能特性に追加しうる。標準処理要素の定型は、ハイファイ・プロセスシミュレーションを構築するために使用されうるところの、各HYSYSの構成部分(又はその他のハイファイ・シミュレーション構成部分)に対して定義されうる。このようなハイファイ・シミュレーション165は、プロセスモジュール100aに通信可能に接続された状態で図6に示されている。この場合、ユーザは、プロセスモジュール100aの中にあるシミュレーション要素の各々に提供されたシミュレーションを無効にし、その代わりにハイファイ・シミュレーション165により提供されるシミューレーション・パラメータを使用する選択を行いうる。ユーザは、(プロセスモジュール100a内で設定される電子スイッチ、フラグなどでありうる)スイッチ166を有効にすることによりハイファイ・シミュレーション165の使用を指定しうる。
【0086】
一般的に言って、スイッチ166がハイファイ・シミュレーション165を使用するように設定されると、プロセスモジュール100a内の関連するシミュレーション機能ブロックは、シャドーブロックとして機能する、即ち、それらのシミュレーション・アルゴリズム(SIMブロック)は実行されず、その代りにブロック・パラメータがハイファイ・シミュレーション165により読み書きされる。但し、プロセスモジュール100aのブロックは、なおもプロセス・グラフィックと制御モジュールに同じパラメータ及びその他の情報を通信し続け、プロセス・グラフィック100(最終的にハイファイ・シミュレーション165で使用される)及び制御モジュール29から情報を受け取る。
【0087】
当然のことながら、このようにプロセスモジュールを使用することにより、オペレータやエンジニアなどが表示且つ使用できる態様で(即ち、プロセスモジュール100aと関連したプロセスのグラフィック表示100を使用して)プロセスプラント内でハイファイ・シミュレーション・パッケージ(ソフトウェア製品)を簡単且つ便利に接続できる方法を提供できるようになる。具体的に、プロセスモジュールのストリーム・パラメータを、ハイファイ・シミュレーションにてモデル化された流れに至るまで(或いはそれに関連して)接続しうるし、また、プロセスモジュール内の経路指定も自動的に組み立てることができる、或いはハイファイ・シミュレーション内の経路指定と関連できるようになる。実用においてプロセスモジュールは、この場合、プロセスプラントの制御及びシミュレーション環境で使用される制御モジュール及びグラフィック表示にハイファイ・シミュレーション・パッケージ内のデータをマップする便利な方法を提供するところの変数又はデータのプレースホルダーとして使用される。
【0088】
更にまた、プロセスモジュール及び関連するグラフィック表示を使用することにより、(現時点では一般にユーザが高額の費用を支払ってハイファイ・シミュレーション提供者に生成させているような)ハイファイ・シミュレーションのために別の画面表示を提供する必要が少なくなる又は無くなる。むしろ、プロセスモジュールが既にグラフィック表示につながれているので、プロセスモジュールをハイファイ・シミュレーション・パッケージに接続する際にグラフィック表示を使用して、ハイファイ・シミュレーション・パッケージにより計算されるような情報をユーザに提供し、ユーザ又はオペレータがハイファイ・シミュレーション・パッケージへの入力操作を行えるようにもしうる。更にまた、プロセスモジュールが制御モジュールに通信可能に接続されるので、オンライン制御作業を行うために制御モジュールにおいてハイファイ・シミュレーション・パッケージにより生成されたパラメータ又はデータを使用しうる。このようにしてプロセスモジュールを使用することにより、ハイファイ・シミュレーション・パッケージを、制御モジュールに統合できるだけではなく、制御モジュールと並行して実行できるようになる。
【0089】
上記説明からも明らかなように、プロセスモジュール及びグラフィック表示は、グラフィック表示により描写されるプロセスプラントの動作をシミュレートするプロセスモジュールと共にプロセスプラント10の一部分のオペレータ表示ビューを提供するように総合的に作成及び実行しうる。好都合にも、プロセスモジュール及びグラフィック表示は、それに加えて(プロセスプラント内の当該の一区画又は一部分に関する制御作業を行う)一つ又は複数の制御モジュールにも統合されうる(例えば、通信可能に接続されうる)。よって、図1に示される制御モジュール29は、図1に示されるプロセスモジュール39及びグラフィック表示35の一つ又は複数に通信可能に統合されうる。もちろん、制御モジュール29、プロセスモジュール39及びグラフィック表示35は、図1に示されるもの以外にも、いかなる特定の場合における要望又は必要に応じて、プラント10内のその他のいかなるコンピュータ又は装置において実施されうる。
【0090】
図7A及び図7Bは、制御モジュール29、(シミューレーション・システムの一部として使用される)プロセスモジュール39、及びグラフィック表示35の統合をより詳しく示した図である。具体的に、グラフィック表示35は、リサイクル・タンク182の出力と直列接続されたバルブ186と共にリサイクル・タンク182及びポンプ184の入力に接続されたバルブ180を含んでいる。要素180-186は、配管接続要素(参照符号なし)とを介して共に接続されており、そしてストリーム要素はグラフィック表示35の入・出力に備えられており、当該の点で材料のストリームを定義するようになっている。
【0091】
グラフィック表示35の構成の結果、グラフィック表示35と同時に作成されうるプロセスモジュール39は、グラフィック表示35において描写された物理的要素に相当するバルブ要素180a、タンク要素182a、ポンプ要素184a及びバルブ要素186aとして示されるプロセスシミュレーション要素を含んでいる。グラフィック表示35に関連する(それに描かれる)物理的要素の少なくともいくつかを制御する制御モジュール29は、グラフィック表示35及びプロセスモジュール39により描かれる要素内において(又はそれに関連して)制御を提供するところの、相互接続する一式の機能ブロックを含んでいる。この実施例において、制御モジュール29は二つの制御ループ190及び192を含んでいる。第1の制御ループ190は、タンク182への流体の流れについての流入情報を受け取るアナログ入力(AI)機能ブロックと、PID制御を行う比例・積分・微分(PID)制御機能ブロックと、タンク182に送り込まれる材料の所望される流れをもたらすためにバルブ180を操作するアナログ出力(AO)機能ブロックとを有する。同じように、制御ループ192は、タンク182内のレベルセンサにより測定されるタンク・レベル情報を提供するAI機能ブロックと、PID制御ブロックと、タンク182内の液面レベルの制御をもたらすようにバルブ186を操作するためにPID制御ブロックから制御信号を受け取るAO機能ブロックとを含んでいる。制御モジュール29はまた、(例えば、ポンプ184のオン/オフ状態又は作動状態を示すものであり、所望する場合はタンク182に関する制御作業を行うために制御ループ190と192により使用されうる)ディスクリート入力(DI)機能ブロックも含んでいる。
【0092】
当然のことながら、グラフィック表示35、プロセスモジュール39及び制御モジュール29のいかなるものに含まれるいかなる要素は、これらの異なるエンティティ間で情報を交互にやり取りすることにより(以下より詳しく説明されるような)より良い又は更に拡張された制御、シミュレーション及びオペレータ表示画面を提供するために、(関連する通信タグを介して)当該要素の別のものと通信しうる。例えば、図7Bに示されるように、ループ190のPID制御ブロックは、PID制御要素により使用される電流フロー設定点を表示するためにグラフィック表示35に情報を提供するように構成されうる、或いは、これらの要素間の矢印線で示されるようにグラフィック表示35から制御モジュール29で使用される設定点を読み出しうる。同じように、プロセスモジュール39のタンク要素182aは、要素182a内のシミュレーション・アルゴリズムにより決定された通りにシミュレートされたタンク液面レベルを示すシミュレーション出力をプロセス制御モジュール29の制御ループ192のAI機能ブロックに提供しうる。また、このシミュレートされたタンク液面レベルを、オペレータが表示できる追加情報としてグラフィック表示29に示しても良い。
【0093】
望ましい場合、制御ループ192のAOブロックが、グラフィック表示35のバルブ186に情報を提供し、且つグラフィック表示35のバルブ186から情報を受け取るするようにしても良い。それに加えて、ループ192のAO機能ブロックは、それの制御出力をプロセスモジュール39のバルブ要素186aに提供するようにも構成できる。この場合、バルブ要素186aは、物理要素に何らかの機能不良がありうるかどうかを判断するために、バルブ位置の予測値を、制御ループ192で測定される実際のバルブ位置と比較しうる。特定の数値に相違が存在する場合には、可能性として考えられるプロセスプラント内の問題(例えば、不具合センサなど)を示す警報又は警告をグラフィック表示35に生成するソフトウェアをプロセスモジュール39に含みうる。また図7Bにおいて図示されるように、バルブ要素186aは、シミュレートされた計測又はパラメータをオペレータが表示又は利用できるようにグラフィック表示35に提供しうる。このようなシミュレートされた計測又はパラメータは、シミュレートされた又は予測されるバルブ186からの流れ、或いはバルブ186と関連したその他のシミュレートされたパラメータを示しうる。もちろん、より良い又は更に拡張された制御、シミュレーション又は画面表示を提供するために、実測データ又はシミュレーションによるデータ或いはグラフィック表示データを含むその他所望の情報又はデータを、グラフィック表示35、プロセスモジュール39及び制御モジュール29の要素に提供しうる。
【0094】
一般的に言えば、制御モジュールにプロセスモジュールを(望ましい場合、グラフィック表示に加えて)統合することにより結果として生じる多数の利点がある。一実施例においては、上記の如く、システム内で発生する可能性のある問題を検出するために、プロセスモジュールでシミュレーションを実行し、シミュレートされた又は予測される計測、パラメータ又はその他のプロセス値を、制御モジュールにより提供される実測又は計算されたパラメータと比較しうる。例えば、プロセスモジュール39により計算されたバルブからの出力流とプロセス自体で測定されたバルブからの出力流の間に大きな相違が存在するということは、何らかの装置問題が存在することを示すアラームを生成する前提でありうる。逆に、制御モジュール29は、制御モジュール29が不具合センサ又はその他のもはや有効でなく制御モジュールにより利用できない要素を認識しているような状況において制御の拡張を提供するためにシミュレートされたパラメータを使用しうる。この場合、制御モジュール29は、オペレータによる関与を必要とせず、またプロセスを停止せずに、プロセスモジュールにより開発された通りに、(不具合があると分っている、不良状態を伴いうる、等の)測定値又はパラメータを、シミュレートされた出力と自動的に置き換えることができる。また、シミュレートされた制御データと実際の制御データの両方を同じ画面表示上に表示することにより、オペレータ又はユーザがプラント内の問題をより簡単に検出できるようになる、又はシミュレーションモードに役立つ、又はより良い設計作業などを実行する際に役立つ、などの利点を提供できる。
【0095】
図8は、制御モジュール200がプロセスモジュール202(よって、プロセスモジュール202に関連するいかなるグラフィック表示)に通信可能に統合されうる態様をより詳細に示す図である。図8の制御モジュール200は、(例えば、モデル予測制御(MPC)機能ブロックなどの多重入力/多重出力制御ブロックでありうる)制御機能ブロック207に接続された出力を持つ三つのAI機能ブロック204、205及び206を含んでいる。制御ブロック207からの三つの制御出力は、例えば混合用の混合機に異なる流体を提供するプロセス内のバルブを制御しうる三つのAO機能ブロック208、209及び210の制御入力まで延びる。
【0096】
プロセスモジュール202は、制御モジュール200により制御される混合機とバルブを有するプロセスの一部分と関連する。具体的に、プロセスモジュール202は、(プロセスモジュール202の左側に矢印で示される)混合機要素214に入る三つのストリームの流れをシミュレートするバルブ(アクチュエータ要素)211、212及び213を有する。バルブ要素215は、プロセスモジュール202の右側の出力ストリームを定義するために混合機要素214から出る流体の流れをシミュレートし、また、トランスミッタ要素217は、混合機要素214を出る流体の計測された組成を示しうる(又はシミュレートしうる)。なお、図を明確にするために、接続要素はプロセスモジュール202中において単純線として示されている。
【0097】
この場合、AO機能ブロック208-210は、(プロセスモジュール202内の)バルブ211-213で描かれるプロセスプラント内のバルブの動作を制御しうる。一方、AI機能ブロック204-206への制御入力は、(プロセスモジュール202内の)トランスミッタ217で描かれるプロセスプラントの組成センサや流量検出器又はその他のセンサにより提供されうる。
【0098】
後述の説明からも明らかとなるように、プロセスモジュール202及び制御モジュール200内の論理要素は、所望の又は有用な態様において、プロセスモジュール202から制御モジュール200へと、又はその逆に制御モジュール200からプロセスモジュール202へと、情報を提供できるように通信可能に相互接続しうる。一実施例において、(点線218により図示される)通信接続は、(混合機214内の材料組成のシミュレートされた計測を表示する)プロセスモジュール202のトランスミッタ要素217の出力と、プロセス制御モジュール200内のAIブロック206のシミュレートされた入力「SIM_IN」との間に構成されうる。このようにして、混合機214内の流体の液面レベルのシミュレーションによる計測がAIブロック206に提供され、AIブロック206は、例えば、当該ブロックの制御入力(IN)での信号に不良状態が存在する又は何らかの理由で不具合を伴うと分っている場合に、このシミュレートされた入力を使用しうる。このようにして、AIブロック206は、物理的実測が有効でない又は利用可能ではない場合でもAIブロック206と関連した計測の近似値を提供しうる、またそれによって、制御モジュール200が不具合センサの存在下においても機能し制御を提供し続けることを可能にする。また、このような接続を使用すると、(シミュレーション・プロセスモジュール202により提供される)有効なシミュレーションデータがオフラインでのオペレータ教育中に又は制御モジュール200をテストするために使用されるところの模擬モードで制御モジュール200が実行できるようになる。
【0099】
その代わりとして、又はそれに加えて、(点線219により図示される)通信接続が、プロセス制御モジュール200内のAOブロック208の出力と、プロセスプラント内のAOブロック208により制御される実際のバルブをモデル化したバルブ要素211の入力との間に構成されうる。ここで、バルブ要素211は、シミュレートされた模擬データ(即ち、バルブ要素211のSIMブロックにより計算された計測とパラメータ)が正しい(又は実際の制御ルーチン200において使用されるデータと一致する)かどうかを判断するために、実際のバルブから得たデータ又は実際のバルブに送られたデータを使用しうる。大きな相違が存在する時、プロセスモジュール202は、発生する可能性のある問題を示すアラーム又は警告を生成しうるし、或いは、プロセスモジュール202内でより良い又はより正確なシミュレーションを提供するために実数データを使用しうる。例えば、バルブ要素211は、実際のバルブ位置をシミュレーションに反映するために、SIMブロックで実際の制御データをバルブ要素211の位置に使用しうる。もちろん、プロセスモジュール202内の要素と制御モジュール200内の要素間のその他の接続は、拡張された制御且つ又はシミュレーションを行うために、これらの二つのモジュール間でいずれの方向にもデータの流れを提供できるように構成されうる。更にまた、プロセスモジュール202又は制御モジュール200からのいかなるデータは、プロセスモジュール202に関連したグラフィック表示を介して自動的にオペレータが利用できるようにしうる。
【0100】
図9は、プロセスプラントの一部又は一部分に対するシミューレーション・システム250を示す図である。シミューレーション・システム250は、複数のシミュレーション・ブロック252、254及び256及び、望ましい場合は、シミュレーション・ブロック252、254及び256を接続するスマート接続要素260及び262からなる。当然のことながら、特定の実施形態において、シミューレーション・システム250は、実際のプロセスプラント内で作動するプロセス制御ルーチンと並行して(例えば、それと同時に、又はそれと連動して)実行されうる。また、シミューレーション・システム250は、拡張された且つより正確なシミュレーション作業を実行するために、以下更に詳しく説明される態様において、プロセスプラントの構成部分に(又はプロセスプラントの制御システムに)接続されうる。
【0101】
具体的に、図9に示されるように、ポンプ・シミュレーション・ブロック252は、プロセスプラント内の設備の動作など、プロセスプラントの一部分の動作をシミュレートするために一つ又は複数のプロセス(例えば、設備)モデル272を実施又は使用するシミュレーション・ルーチン271を含んでいる。具体的に、シミュレーション・ルーチン271は、シミュレートの対象となるプロセスプラント内の実際のポンプデ装置により又は該実際のポンプデ装置にて展開される流動、圧力且つ又はその他のプロセス変数をシミュレート又は推定するために、例えばその他のシミュレーション・ブロック、制御システム、ユーザなどにより提供されるブロック252への各種入力情報を使用する。これらの流動、圧力且つ又はその他のシミュレートされた模擬変数はその他のポンプ圧送の対象となる物質又は流動に関する特徴(粘度、物質平衡など)と共に、バルブ・シミュレーション・ブロック254にこれらの計測を供給するところの接続オブジェクト260に提供される。望ましい場合、接続オブジェクト260は、シミュレートされた模擬流動や圧力など要素をバルブ・シミュレーション・ブロック254に提供するために、プロセスプラント内の接続構造の模擬操作に基づいてブロック252により開発された模擬出力変数を処理するスマート接続オブジェクトでありうる。もちろん、接続オブジェクト260は、スマート接続オブジェクトである必要はなく、ポンプ・シミュレーション・ブロック252により開発され出力された圧力や流動又はその他のシミュレートされた模擬プロセス変数の指標を提供するためのバルブ・シミュレーション・ブロック254とポンプ・シミュレーション・ブロック252との間に設けられる単純なリンクでもありうる。
【0102】
同様に、バルブ・シミュレーション・ブロック254は、接続オブジェクト260により提供されるバルブ・シミュレーション・ブロック254へのシミュレートされた模擬入力及び(バルブの位置などの)バルブに関連した計測又は状態に基づいてバルブの動作をモデル化するために(設備モデルを含みうる)一つ又は複数のプロセスモデル274を含み且つ使用するシミュレーション・ルーチン273を含んでいる。繰り返して言うが、いかなる周知の態様においてプロセスプラント内の実際のバルブの動作をシミュレートすることによって、一つ又は複数のシミュレートされた模擬出力変数(例えば、バルブからのシミュレートされた模擬流動や、バルブの出力でのシミュレートされた模擬圧力や、バルブの出力内の又はその出力における流体のシミュレートされた模擬温度など)を生成するために、シミュレーション・ルーチン273はプロセスモデル274を使用しうる。これらシミュレートされた模擬プロセス変数の指標は、反応装置シミュレーション・ブロック256に入力を提供するためにこれらの変数を処理しうるところの接続子オブジェクト262に提供されうる。繰り返して言うが、もちろん、接続子オブジェクト262は、バルブ・シミュレーション・ブロック254の出力を反応装置シミュレーション・ブロック256の入力へと提供する単純な通信リンクでありうる。
【0103】
図9に示されるように、反応装置シミュレーション・ブロック256は、接続子オブジェクト262により提供される反応装置シミュレーターブロック256への入力及び反応装置の状態及び変数(設備変数)に基づいて、プロセスプラント内の反応装置の動作をシミュレートするために一つ又は複数のプロセスモデル276を使用するシミュレーション・ルーチン275も含んでいる。プロセスモデル276は、プロセス流体温度、圧力、物質平衡などを含みうる反応装置のシミュレートされた模擬出力を一つ又は複数生成するために使用される。よって、この場合明らかなように、プロセスシミュレーションがプロセス用設備を表わす一つ又は複数のブロックとして実施される際、これらのブロックの出力は、プロセスシミュレーション・ブロックへの入力に基づいて計算される模擬プロセス条件を表わす。
【0104】
プロセスモデル272,274及び276は、パラメトリック及びノンパラメトリックなプロセスモデルを含むいかなる所望のタイプのプロセスモデルでありうる。例えば、プロセスモデル272,274及び276は、1次系+不感時間系プロセスモデルなどの第一原理モデルでありうるし、(一般にモデル予測制御(MPC)技法で使用されるものや、ニューラルネットワーク・モデル及びファジィ論理モデルなどの)プロセス稼動中に生成された実測値に基づいた一連のインパルス応答又はステップ応答の入・出力曲線を反映するプロセスモデルでもありうるし、また、開示全体がここに参照することにより本稿に援用されるところの「State Based Adaptive Feedback Feedforward PID Controller(仮訳:状況起因型適応可能フィードバック・フィードフォワードPIDコントローラ)」と題される米国特許第7,113,834号(2006年9月26日付発行)及び「Adaptive Feedback/Feedforward PID Controller(仮訳:適応可能フィードバック/フィードフォワードPIDコントローラ」と題される米国特許第6,577,908号(2003年6月10日付発行)に開示されるタイプのプロセスモデル又はその他のタイプのプロセスモデルでもありうる。なおまた、シミュレーション・ブロック252、254及び256で使用されるモデルは、特に例えばユーザ又は設計者などによるシミュレーションを目的として、いかなる態様においても作成されうる。但し、これらのモデルは場合によって、制御又は最適化作業を行うためにプロセスモデルを使用するオンライン制御システムの一部分からコピーされうる。例えば、MPCコントローラは、一般にオンライン制御作業中にコントローラにより使用されるためのプロセスモデルを生成し、このプロセスモデルは、MPCコントローラ又はMPCコントローラにより制御されるプラントの一部分のシミュレーション作業実行の際の使用に向けて、一つ又は複数の該当する又は関係するシミュレーション・ブロックにインポートされうる。
【0105】
図9に示されるようなシミューレーション・システムの構成は、オフラインでシミュレーション作業を提供する際に役立つ一方、プロセスプラントに関してオンライン又は並行処理モードでシミューレーション・システム250を実行し、そうすることによって、シミューレーション・システム250作成後に生じうる実際のプロセスプラントの変更を組み入れてより良い且つより正確なシミューレーション・システムを提供するために自動的に又は半自動的にプロセスモデル272,274及び276を更新することも可能であるということが分かる。特に、シミューレーション・システム250のシミュレーション・ブロック(例えばブロック252、254及び256など)に付加的な標準入力(ここにおいて、該標準入力は、例えば、ブロック出力パラメータに対応するシミュレーション・ブロック252、254及び256の出力パラメータと関連した実際のプロセス計測を表す)を追加することにより、シミュレーション・アルゴリズムの一部として、作動中又はオンライン状態のプロセス内で測定されるような模擬パラメータの実測値と、計算された(シミュレートされた)出力との間の相違を補うためにシミュレーション・ブロック252、254及び256により使用されるプロセスモデル272,274及び276を自動的に訂正することが可能である。
【0106】
よって、図9に示されるように、シミュレーション・ブロック252、254及び256の各々は、実際のプロセスからの(且つ又は、望ましい場合にはユーザからの)フィードバックに基づいてプロセスシミュレーション・ブロック252、254及び256において定期的にプロセスモデル272,274及び276を更新又は再生成するために使用されうるところのモデル再生成ブロック280を含んでいる。より具体的に、モデル再生成ブロック280は、(例として、プロセスプラント内で例えば制御システムにより測定されるような)実際のプロセス変数を示す計測を使用し、この測定されたプロセス変数(PV)を、(測定されたプロセス変数と同時間)測定されたプロセス変数に対応するシミュレーション・ブロックの出力と比較しうる。モデル再生成ブロック280は、シミュレートされた模擬出力を開発する際にプロセスシミュレーション・ブロック内で使用されるプロセスモデルを更新又は再生成するためにこのような比較結果を利用しうる。この機能特性に準じて、単一のPV流量測定284は、バルブ・シミュレーション・ブロック254内のモデル再生成ブロック280が使用できるように(例えば、プロセスプラント内で使用される制御システムにより)プロセスプラントからバルブ・シミュレーション・ブロック254にフィードバックされるものとして図示されている。ここで、PV流量測定284は、バルブ・シミュレーション・ブロック254によりシミュレートされているプロセスプラント内バルブの測定流動出力である、又はそれを表す。同様に、PV圧力測定286及びPV温度測定288は、反応装置シミュレーション・ブロック256のモデル再生成ブロック280による使用に向けて反応装置シミュレーション・ブロック256にフィードバックされるものとして図9に示されている。この場合、PV圧力測定286及びPV温度測定288は、反応装置シミュレーション・ブロック256によりシミュレートされている反応装置の出力における圧力及び温度の実測値を表わす。もちろん、その他のタイプ及びその他の数のPV計測値も、シミュレーション・ブロック252、254及び256にフィードバックされうる。(この場合、これらの計測の性質及びアイデンティティは、一般に実行中のシミュレーション又はプロセスモデルの詳細に基づき選択される。)
【0107】
いかなる場合も、プロセスプラントからの測定フィードバック信号を使用して、シミュレーション・ブロック252、254及び256を、プロセスプラントの継続稼動中に、より正確にプロセス作動を反映するように変更又は更新しうる。このような更新には、これらのモデルの出力に適用される補正又は更新因子の計算が含まれうる。このように、シミューレーション・システム250は、より正確なシミュレーションを提供するために、プロセスプラント内の変化する状況及び、モデル化されていない変化及び、プラントに導入された又はそのプラントと関連した非線形性及び、プラントにおけるその他の変化に適応する。
【0108】
より良いシミュレーションを実行し、よってより正確な模擬又は予測プロセス変数を生成する他にも、シミューレーション・システム250により開発され適応又は再生成された該プロセスモデル272,274及び276は、プロセスプラント内でその他の作業(例えば制御作業、ユーザーインタフェース作業、最適化作業など)を実行するために(定期的に、又は再生成時に)エクスポートされうる。例えば、シミュレーション・ブロック252、254及び256内で生成又は更新されたモデルがステップ又はインパルス応答モデルである場合、これらのモデルは、MPC行列及びコントローラの生成に使用できるようにMPCコントローラに提供されうる。シミューレーション・システムにより生成されたこれらの更新モデルがMPCコントローラの生成、最適化ルーチンの生成などに使用されうるようなMPCと最適化ルーチン混在システムの実施例としては、開示全体がここに参照することにより本稿に援用される「Integrated Model Predictive Control and Optimization within a Process Control System(仮訳:プロセス制御システム内における統合モデル予測制御と最適化)」と題される米国特許第7,050,863号(2006年5月23日付発行)に開示されるものが挙げられる。よって、この場合、シミュレーション・ブロックは、複雑な設備、プロセス制御ループ又はプロセス応答をシミュレートするためにステップ応答又は有限インパルス応答モデルを利用するように作成されうる。例えば、DeltaV MPC-SIMブロックは、このようにしてシミュレーションを提供するように設計されている。このようなアプローチをとることによって、プロセスモデル272,274及び276を変更又は訂正する際、MPC制御において実行されるものに類似するオンライン計測の補正を簡単に実施しうる。同様に、プロセスモデル272,274及び276は、米国特許第6,577,908と第7,113,834号に開示されるようなその他のタイプのモデルでもありうるし、また、これらの特許に記載される適応可能PID制御技法にて再利用しうるものである。結果として、シミュレーション・ブロック272,274及び276又はそれの諸部分は実際に制御システムに送り戻してプロセスプラントの制御に使用されうる。なおまた、望ましい場合は、異なるシミュレーション・ブロックからのプロセスモデルの異なる一式又は組合せを組み合わせて送り戻し、制御及び最適化ルーチンの作動などのオンライン・プロセス操作に使用しうる。なおまた、一事例において、プロセスモデルは、オンライン制御作業中に使用される制御又は最適化ルーチン又はその他のルーチン用に開発されうるし、制御システムからシミューレーション・システムにインポートされうるし、上記されるようなシミューレーション・システムにおいて更新されうるし、またその後(更新又は適応済の状態で)制御システムに戻されて(当初、適応前モデルがそのために作成されたところの)コントローラ又は最適化ルーチンにより使用されうる。
【0109】
シミュレーション・ブロック252、254及び256で使用されるプロセスモデル272,274及び276を再生成するためにプロセス計測のフィードバックが自動的に使用されうる一方、状況によっては、シミュレーション・ブロック252、254及び256内で使用されるモデル272,274及び276を再生成するためにユーザがマニュアルでフィードバックを行いうる。例えば、場合によってはセンサの不具合や通信異常などの理由で、或いは計測に関連したモードの状態による異常(例えば、精度不良の可能性)が測定されたプロセス変数に存在すると分っているなど、何らかの理由でプロセス変数計測が利用できない場合もある。別の事例として、プロセス変数計測は、実験室においてなど、オフラインで生成されたものでありうるため、プラントの制御システムから直接に入手できない場合もある。更に別の事例として、モデル再生成ブロック280の一つにより使用される特定のプロセス変数又はその他の変数が、実際に測定されたものでなく、推定値であるか、もしくは単にユーザにより提供されたものでありうる場合もある。これらの場合においては、モデル再生成ブロック280により使用される模擬プロセス変数の実際値の指標をユーザが提供できるようにすることが望ましい。この技法は、シミュレーション・ブロック(254又は256)の出力に対応して「正しい」又は「測定された」変数として使用される(よって、モデル再生成を実行するために使用される)プロセス変数の値をユーザが指定できるようにするユーザーインタフェース又はその他の装置につながれる又は通信状態にあるUIブロック290及び292を用いて図9に示されている。このようにユーザは、シミュレーション・ブロック252、254及び256に、それの中で使用されるモデルを再生成させると共に当該の再生成を行うのに使用される値を指定させうる。図中にはシミュレーション・ブロック254及び256へのフィードバックに関するユーザ制御を可能にするUIブロックが二つだけ設けられた状態で示されているが、当然のことながら、いかなる所望のフィードバック変数についてもいかなる数のUIフィードバック経路又は接続をいかなるシミュレーション・ブロックに備えうること、及び、制御システム内のセンサ又はその他の要素により生成されたプロセス変数計測への接続に加えて又はその代わりとしてこれらのUI接続を備えうることが明らかなはずである。
【0110】
更にまた、測定されたプロセス変数及びユーザにより提供される変数の両方がシミュレーション・ブロックに提供されている場合、シミュレーション・ブロックは、これらの変数のうちの一つを一次入力として使用し、他の変数を一次入力に障害が生じた時に(又は一次入力が利用不可能である、又は明らかに不正確な結果を生成すると分っているような場合に)使用するための予備入力として使用しうる。よって、例えば、シミュレーション・ブロックは、モデルの再生成を行うために、プロセス制御ネットワークからフィードバックされた測定PV信号を自動的に又は主として使用しうるが、該測定PV信号に障害が生じた時、又は該測定PV信号が利用不可能である、或いは明らかに不正確な結果を生成すると分かっているような場合には、モデル再生成ブロック280はその代わりに、ユーザにより提供されたプロセス変数の入力を使用しうる。
【0111】
なおまた、シミュレーション・ブロック252、254又は256のいかなるものにおいて使用されるシミュレーション・アルゴリズムの一部として、ブロックの出力パラメータの(単なる現在値だけではなく)将来値を計算することが可能である。よって、図9に示されるように、バルブ・シミュレーション・ブロック254は、将来的なある時点(期間)にシミュレートされるバルブから流出する流れのシミュレーションに関するグラフ又は傾向表294をユーザに(例えば、ユーザーインタフェース(図示せず)で)提供しうる。このような将来的流量特性は、将来的なある特定の対象期間における出力変数の将来値を推定するためにある期間を通じてシミューレーション・システム250を実行することにより開発しうる。同様に、図9に示されるように、反応装置シミュレーション・ブロック256は、そこに使用されるプロセスモデル又はその他のアルゴリズムに基づいてシミュレートされた模擬出力温度に関するプロット又は傾向表296を提供しうる。もちろん、将来的プロセス変数の推定値は、例えば、将来的予測を行うためにMPC制御で使用されるものに類似する技法を使用して計算されうる。米国特許第7,050,083号に、これらの技法のいくつかがより詳しく開示されている。望ましい場合、その他のアプリケーションにより或いはプロセスプラント内のユーザーインタフェース又はその他関与する装置によりこれらの将来値にアクセス且つ表示できるようにするために、シミュレーション・ブロック252、254及び256によってグラフィック要素又はグラフィックインターフェース要素を提供しうる。
【0112】
なおまた、当然のことながら、一つ又は複数のプロセス変数の将来的予測値又は将来的模擬値又は、シミュレーション・ブロックにフィードバックされた現下測定されたプロセス変数値及び現在の予測プロセス変数値に加えて、又はそれと共に、又はそれを使用する代わりに、その他のシミュレーション出力を、図9のシミュレーション・ブロック内のプロセスモデル再生成又は更新を行うために使用しうる。この場合、特定のプロセス変数又はその他のプロセス要素のために計算された将来値を計算及び格納し、その後、計算された将来値の各々に対応する時点でプロセス変数の実際値を測定しうる。その後、特定の時点における実測プロセス要素値と当該特定の時点における予測将来値との間の相違(複数可)は、将来値を開発するためにシミュレーション・ルーチンで使用されるプロセスモデルを再生成するために使用されうる。プロセスモデルを再生成するために将来値を使用することは、プロセスモデルが(有限インパルス応答モデルなどの)インパルス応答モデル又はステップ応答モデルである場合において特に適している。
【0113】
よって、図9を参照して上記説明されるように、実際のプロセス計測は、同じプロセス要素の計算値及び測定値の比較に基づいたシミュレーション・ブロックで使用されるプロセスモデルの自動補正を可能にするために、シミュレーション・ブロックにおいて使用されうる。なおまた、プロセス計測が、例えば計測能力の不具合などにより利用不可能である又は利用不可能になった場合は、該値をマニュアルで入力することにより、入力値と計算値の比較に基づいてプロセスモデルの訂正を行いうる。更にまた、プロセスシミュレーションが、ステップ又は有限インパルス応答、或いはニューラルネットワークや第一原理モデルなどのその他の技法及びその他一般に使用される技法に基づく場合には、計算値(複数可)と測定値(複数可)間の相違に基づいてプロセスモデルを自動的に訂正しうる。より具体的には、MPCにおいて以前から利用されてきた技法は、例えば、プロセスパラメータの実測値と模擬値間の相違に基づいて補正因子が計算されプロセスモデルに(又はプロセスモデルの出力に)適用されることによって実際のプロセスプラントとプロセスモデルとの間のバイアスを完全に消去するところのバイアス補正を含むプロセスモデル(複数可)の訂正に使用されうる。もちろんその他の補正法も同様に使用しうる。また、このような補正法としては、開示全体がここに参照することにより本稿に援用される2004年12月9日公開の「Multiple-Input/Multiple-Output Control Blocks with Non-Linear Predictive Capabilities(仮訳:非線形予測能力を伴う多重入力/多重出力制御ブロック)」と題される米国特許出願公報第2004/0249483(A1)号(特に本公報の図4に関する記述)及び、2005年9月30日出願の「On-Line Adaptive Model Predictive Control in a Process Control System(仮訳:プロセス制御システムにおけるオンライン適応モデル予測制御)」と題される米国特許出願第11/240,705号(特に、適応可能MPC制御ルーチン内のプロセスモデルを変更する方式を記載する本出願中図2〜4の記述)に記載されるものが挙げられる。
【0114】
また、プロセスシミュレーションがステップ又は有限インパルス応答、或いはニューラルネットワークや第一原理モデルなどのその他の技法及びその他一般に使用される技法に基づく場合には、将来的出力値を計算し画面で表示するために保存できる。繰り返して言うが、ステップ及び有限インパルス応答に基づいたモデルについては、MPCで以前から利用されてきた技法を使用して将来値を計算しうる。またそれに加えて、プロセスシミュレーション環境は、現在の及び将来的なシミュレーション出力値の両方の表示を可能にする表示要素/アプリケーションをサポートしうる。例えば、傾向グラフ、棒グラフ、数値表及びグラフなどのいかなる所望の表示技法を使用して将来的出力値の傾向を示すために、ユーザーインタフェース・ウィンドウを備えうる。
【0115】
望ましい場合、ここに記載されるプロセスモジュールは、プロセス制御ネットワーク又はプロセスプラント内の冗長機能を提供且つシミュレートしうる。具体的に、プロセスモジュールは、プロセスプラント内に設けられている実際の冗長要素(冗長装置や冗長制御ブロックなど)の動作をシミュレートし、そして(例えば、予備冗長要素が引き継ぐ際などに)実際の冗長要素の動作を検知又はシミュレートしうる。それに加えて望ましい場合には、プロセスモジュールとそれのシミュレーション能力を、プロセスプラント内要素の冗長ペアの一つとして使用しうる。この場合、プロセスモジュール(又はそれのいかなる一部分)は、一次的装置(及び実際の物理的装置)が故障した場合又はそれと関連した問題が検出された場合に(信号や計算などの)予備データ又は冗長データを提供する予備装置として作動しうる。この場合、冗長要素として機能しているプロセスモジュールは、冗長能力を提供するためにいかなる周知の態様において(制御又は検出動作を行う)制御モジュールと通信可能に相互接続されうる。このようにプロセスモジュールをプロセスプラント内の冗長要素として使用することは、プロセスモジュールが上記の態様において一つ又は複数のハイファイ・シミュレーション・パッケージに接続されている場合に特に有用である。
【0116】
当然のことながら、ここに記載されるスマート・プロセスオブジェクト、グラフィック表示要素及びプロセスモジュールの機能性は、オペレーターワークステーション20において作動することも可能であり、またプラント10内のコントローラやフィールド装置などにダウンロードしたり、それの中に構成したりする必要はない。このため、この機能性は、実施、表示、変更などをより簡単に行うことができるものであると言える。更に、通常はシステムレベルでの装置に関する情報の全てがプロセスプラント10内の各コントローラ及びフィールド装置にて利用できるようになっていないのに対して、この機能性によると、当該情報の全てが、概してはオペレーターワークステーション20で、具体的には実行エンジン48で利用可能となるので、システムレベルでの決定をプロセス装置やコントローラなどの中で行うよりも簡単にできる。但し、より有利と見なされる場合は、プリミティブなどのプロセスモジュールと関連した論理のいくつかを、プロセスプラント内の装置、設備及びコントローラに埋め込みうる。統合プロセス制御モジュール及びグラフィック表示を作成するためにスマート・プロセスオブジェクトを使用することにより、例えば、自動的に漏れを検出し最小限のユーザの構成作業でスマート・アラームを生成したり、プラント10内の流動及び質量平衡を計算及びトラッキングしたり、プラント10内の損失をトラッキングしたり、レベルの高い診断をプラント10に提供したり、また、技術設計やオペレータ教育中にプラントの動作をシミュレートしたりなどを、実行エンジン48に行わせることが可能になる。
【0117】
図10は、分散型制御法を伴うプロセスプラント内で使用される実行エンジン48とプロセスモジュール及びグラフィック表示を統合するのに適用可能な一態様を描く図である。図10に示されるように、プロセスモジュールにより作成される(又はそれに関連する)画面表示クラス定義220は、実行エンジン48による実行中にオペレータに画面表示を提供し、制御法ドキュメンテーションの際にいかなる所望の態様で前記画面表示クラス定義を使用及び整理しうる制御システム構成データベース及びエンジニアリング・ツール222に提供される。プロセス・アルゴリズム224は、実行時前にこれらの画面表示クラス定義に接続されうる。そしてその後に、それに相互関連(結合)した表示クラス定義とフローアルゴリズムが、(一つ又は複数のワークステーションにおいて一つ又は複数の実行エンジン48として実施されうる)グラフィック表示/プロセスモジュール実行時環境226にインスタンス化及び提供されうる。グラフィック表示/プロセスモジュール実行時環境226は、実行中にコードをパーズ(解析)するために(即ち、ジャストインタイム・オブジェクト・コード変換を行うために)ダウンロードスクリプト・パーサ228を使用し、且つ、表示クラスに提供されている又は相互関連されているフローアルゴリズム又はその他の規則基盤型手順を実行するために規則基盤型実行エンジン230を使用する。このプロセスの間に、グラフィック表示/プロセスモジュール実行時環境226は、制御モジュール実行時環境232にデータ又は情報を提供するため、又は制御モジュール実行時環境232からデータ又はその他の情報にアクセスするために、該プロセスと関連したコントローラ及びフィールド装置において実行されうる制御モジュール実行時環境232と通信しうる。もちろん、グラフィック表示/プロセスモジュール実行時環境226は、図1に示されるイーサネット(登録商標)バス24などのいかなる所望の又は事前に構成された通信ネットワークを使用して制御モジュール実行時環境232と通信しうる。更にまた、ここに記載されるグラフィック表示、プロセスモジュール及び制御モジュールを標準プロセス制御システム又はプロセスプラントに統合するその他の方法も同様に使用しうる。
【0118】
ここに記載されるソフトウェアのいかなるものは、実施時、磁気ディスク、レーザーディスク(登録商標)又はその他の記憶媒体、又はコンピュータやプロセッサのRAM又はROMなどのいかなるコンピュータ可読メモリに格納されうる。更に、いかなる周知又は所望の配送方法(例えば、コンピュータ可読ディスク又はその他の可搬コンピュータ記憶機構に保存して、或いは、電話回線、インターネット、ワールド・ワイド・ウェブ、その他のローカルエリアネットワーク又は広域ネットワークなどの通信チャンネルを通して、など)を使用して、ユーザやプロセスプラント又はオペレーターワークステーションにこのソフトウェアを提供しうる。(なお、このような配送は、可搬型記憶媒体を介して該ソフトウェアを提供するのと同じ又は類似的な意味を持つと見なされる。)更に、このソフトウェアは、変調又は暗号化無しに直接提供されうる、又は、通信チャンネルを通じて伝送される前に、適切な変調搬送波且つ又は暗号化技法のいかなるものを使用して変調且つ又は暗号化されうる。
【0119】
上記において、(本発明を例証する実施形態に過ぎず、本発明を限定するものではない)特定の実施例を参照して本発明を説明したが、通常の技術を有する当業者にとっては、本発明の精神と範囲から逸脱することなく、ここに開示される実施形態に変更、追加又は削除が生じうることが明らかなはずである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセスプラントの一部分の動作をシミュレートする際に使用するためのシミューレーション・システムであり、
プロセスプラント内の一台又は複数台の設備のシミュレーションを行うように構成された一つ又は複数のシミュレーション・ブロックを備え、
各シミュレーション・ブロックが、
プロセスプラントの一部分をモデル化したプロセスモデルと、
プロセスプラントの一部分と関連したプロセス要素用に模擬出力を生成するためにプロセスプラントの一部分の動作をシミュレートするのにプロセスモデルを使用するシミュレーションユニットと、
プロセス要素用の模擬出力に対応するプロセス要素の実際値の指標を受け入れるように適応された入力と、
シミュレーション・ルーチンによる使用に向けて更新済プロセスモデルを開発する(develop)ためにプロセス要素の実際値の指標をプロセス要素の模擬出力と比較するモデル再生成ユニットとを含む、シミューレーション・システム。
【請求項2】
プロセス要素がプロセス変数である、請求項1に記載のシミューレーション・システム
。
【請求項3】
プロセス変数が、プロセスプラント内の流体の流れ、温度又は圧力を示す、請求項2に
記載のシミューレーション・システム。
【請求項4】
該入力が、プロセスプラントのオンライン動作中に生成されたプロセス要素の計測を受け入れるように通信可能に接続される、請求項1に記載のシミューレーション・システム
。
【請求項5】
該入力が、プロセス要素の値のユーザ提供指標を受け入れるようにユーザ入力装置に通信可能に接続される、請求項1に記載のシミューレーション・システム。
【請求項6】
該入力が、プロセスプラントのオンライン動作中に生成されたプロセス要素の実測値を示す計測信号を受け入れるように、及びプロセス要素の値を示すユーザ提供入力を受け入れるように通信可能に接続される、請求項1に記載のシミューレーション・システム。
【請求項7】
モデル再生成ユニットが、計測信号が利用可能かどうかを判断して、計測信号が利用可能な場合には計測信号に基づいてプロセスモデルを再生成し、計測信号が利用可能でない場合にはユーザ提供の入力に基づいてプロセスモデルを再生成する、請求項6に記載のシ
ミューレーション・システム。
【請求項8】
モデル再生成ユニットが、計測信号が有効かどうかを判断して、計測信号が有効な場合には計測信号に基づいてプロセスモデルを再生成し、計測信号が有効でない場合にはユーザ提供の入力に基づいてプロセスモデルを再生成する、請求項6に記載のシミューレーシ
ョン・システム。
【請求項9】
プロセスモデルが第一原理モデルである、請求項1に記載のシミューレーション・シス
テム。
【請求項10】
プロセスモデルがインパルス応答モデルである、請求項1に記載のシミューレーション
・システム。
【請求項11】
モデル再生成ユニットが、プロセス要素の値の指標とプロセス要素の模擬出力の間の相違に基づいてプロセスモデルにバイアス補正を提供する、請求項10に記載のシミューレーション・システム。
【請求項12】
プロセスモデルがステップ応答モデルである、請求項1に記載のシミューレーション・
システム。
【請求項13】
モデル再生成ユニットが、プロセス要素の値の指標とプロセス要素の模擬出力との間の相違に基づいてプロセスモデルにバイアス補正を提供する、請求項12に記載のシミューレーション・システム。
【請求項14】
プロセスモデルがニューラルネットワーク・モデルである、請求項1に記載のシミュー
レーション・システム。
【請求項15】
プロセスプラントの一部分の動作をシミュレートする際に使用されるシステムであり、
プロセスのオンライン制御を行うためにプロセス内の要素に接続された一つ又は複数の制御ブロックを有するプロセス制御システム、及び複数のシミュレーション・ブロック及び一つ又は複数の通信リンクを含むシミューレーション・システムを備え、
該シミューレーション・システムが、プロセスプラント内の一台又は複数台の設備のシミュレーションを行うように構成され、
該シミュレーション・ブロックのそれぞれが、
プロセスプラントの一部分をモデル化するプロセスモデルと、
プロセス要素の模擬出力を生成するためにプロセスプラントの一部分の動作をシミュレートするためにプロセスモデルを使用するシミュレーション・ルーチンと、
プロセス要素の模擬出力に対応するプロセス要素の実際値の指標を受け入れるように適応された入力と、
シミュレーション・ルーチンによる使用に向けて更新済プロセスモデルを開発するためにプロセス要素の実際値の指標をプロセス要素の模擬出力と比較するモデル再生成ルーチンとを含む、システム。
【請求項16】
シミュレーション・ブロックのうちの一つの入力が、プロセス要素の実際値のユーザ提供指標を受け入れるようにユーザ入力装置に通信可能に接続される、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
シミュレーション・ブロックのうちの一つの入力が、プロセス要素の実際値の指標としてオンライン測定プロセス値を受け入れるようにプロセス制御システムの出力に通信可能に接続される、請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
オンライン測定プロセス値が、プロセスプラント内の流体の流れ、温度又は圧力のうちの一つを示す、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
オンライン測定プロセス値が、プロセスプラントのオンライン動作中にプロセス制御システムにより生成されたプロセス変数計測である、請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
シミュレーション・ブロックのうちの一つの入力が、オンライン・プロセス内で生成されたプロセス要素の実測値を示す計測信号を受け入れるように、且つプロセス要素の実際値を示すユーザ提供の入力を受け入れるように、通信可能に接続される、請求項15に記載のシステム。
【請求項21】
シミュレーション・ブロックのうちの一つのモデル再生成ルーチンが、計測信号が利用
可能か又は有効かどうかを判断して、計測信号が利用可能又は有効な場合には計測信号に基づいて該シミュレーション・ブロックのうちの一つのプロセスモデルを再生成し、計測信号が利用可能でない又は有効でない場合にはユーザ提供の入力に基づいて該シミュレーション・ブロックのうちの一つのプロセスモデルを再生成する、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
シミュレーション・ブロックのうちの一つのプロセスモデルが第一原理モデルである、請求項15に記載のシステム。
【請求項23】
シミュレーション・ブロックのうちの一つのプロセスモデルがインパルス応答モデル又はステップ応答モデルである、請求項15に記載のシステム。
【請求項24】
シミュレーション・ブロックのうちの一つのモデル再生成ルーチンが、プロセス要素の値の指標及びプロセス要素の模擬出力との間の相違に基づいてシミュレーション・ブロックのうちの一つのプロセスモデルにバイアス補正を提供する、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
プロセス制御システムにより使用される制御ブロックの一つが、オンライン・プロセス制御作業を行うためにプロセスモデルを含み、且つ、
シミューレーション・システムが、オンライン・プロセス制御作業を行うために制御ブロックの一つによる使用できるように、シミュレーション・ブロックの一つに対してモデル再生成ルーチンにより開発された更新済プロセスモデルを該制御ブロックの一つに提供する、請求項15に記載のシステム。
【請求項26】
該制御ブロックの一つが、プロセスモデルを使用してモデル予測制御を実施するモデル予測制御ブロックである、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
該制御ブロックの一つが、プロセスモデルを使用してPID制御を実施する適応可能比例
・積分・微分(PID)制御ブロックである、請求項25に記載のシステム。
【請求項28】
該制御ブロックの一つが、プロセスモデルを使用してプロセスの最適化を実施する最適化ルーチンを含んでいる、請求項25に記載のシステム。
【請求項29】
シミュレーション・ブロックの複数が、プロセスプラント内のプロセス用設備の動作をシミュレートし、且つ、
一つ又は複数の通信リンクの一つが、プロセスプラント内の第一台目のプロセス用設備から第二台目のプロセス用設備へのプロセス材料の移動状態をモデル化するスマート通信リンクである、請求項15に記載のシステム。
【請求項30】
プロセスプラント内のプロセス要素の模擬出力を生成するためにプロセスプラントの一部分のプロセスモデルを使用してプロセスプラントの一部分の動作をシミュレートすることと、
シミュレーション・ルーチンによる使用に向けて更新済プロセスモデルを開発するためにプロセス要素の模擬出力に対応するプロセス要素の実際値の指標を使用することと、
プロセスプラントの更なる動作をシミュレートするために更新済プロセスモデルを使用することと、を含む、プロセスプラントの一部分の動作をシミュレートする方法。
【請求項31】
ユーザが更新済プロセスモデルを開発するために使用されるプロセス要素の実際値の指標を提供できるようにすることを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
プロセスプラントの一部分の動作をシミュレートすると共にプロセスプラントの一部分の動作を制御するためにプロセス制御システムを実行することと、プロセスプラント内のプロセス要素を測定することと、プロセス要素の実際値の指標としてプロセス要素の測定値を使用することと、を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
プロセスプラント内のプロセス要素の測定には、プロセスプラント内の流体の流れ、温度又は圧力の一つを測定することが含まれる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
プロセス要素の実際値を示すユーザ提供の入力を受け入れることと、プロセス制御システム稼動中に測定されたプロセス要素の実際値の計測を示す計測信号を取得することと、プロセス要素の実際値の指標としてユーザ提供の入力及び計測信号のうちの一つを使用することと、を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
計測信号が利用可能か又は有効かどうかを判断することと、計測信号が利用可能又は有効な場合に計測信号をプロセス要素の実際値の指標として使用することと、計測信号が利用可能でない又は有効でない場合にはユーザ提供の入力をプロセス要素の実際値の指標として使用することと、をさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
プロセス制御システムを稼動することには、プロセスプラント内のオンライン・プロセス制御作業を行うためにプロセスモデルを使用することと、プロセス制御システムに更新済プロセスモデルを提供することを含むことと、オンライン・プロセス制御作業を行うためにプロセス制御システム内の更新済プロセスモデルを使用することとが含まれる、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
オンライン・プロセス制御作業を行うためにプロセスモデルを使用することには、プロセスモデルを使用してモデル予測制御を実施することが含まれる、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
オンライン・プロセス制御作業を行うためにプロセスモデルを使用することには、プロセスモデルを使用して適応可能比例・積分・微分(PID)制御ルーチンを実施することが
含まれる、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
オンライン・プロセス制御作業を行うためにプロセスモデルを使用することには、プロセスモデルを使用してプロセス又は制御の最適化を行うために最適化ルーチンを使用することが含まれる、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
プロセスモデルを使用してプロセスプラントの一部分の動作をシミュレートすることには、第一原理モデルをプロセスモデルとして使用することが含まれる、請求項30に記載の方法。
【請求項41】
プロセスモデルを使用してプロセスプラントの一部分の動作をシミュレートすることには、インパルス応答モデル又はステップ応答モデルをプロセスモデルとして使用することが含まれる、請求項30に記載の方法。
【請求項42】
更新済プロセスモデルを開発するためにプロセス要素の模擬出力に対応するプロセス要素の実際値の指標を使用することには、プロセス要素の値の指標とプロセス要素の模擬出力との間の相違に基づいてプロセスモデルにバイアス補正を提供することが含まれる、請求項30に記載の方法。
【請求項43】
(該複数のシミュレーション・オブジェクトの各々が、プロセスプラン
ト内の異なる物理的なエンティティと関連し、且つ
該シミュレーション・オブジェクトの各々が、
プロセスプラントの一部分をモデルとするプロセスモデルと、
プロセス要素の模擬出力を生成するためにプロセスプラントの一部分の動作をシミュレートするのにプロセスモデルを使用するシミュレーション・ルーチンとを含むことを特徴して、)コンピュータ可読メモリに複数のシミュレーション・オブジェクトを格納することと、
シミューレーション・システムを開発するためにユーザがシミュレーション・オブジェクトを共に通信可能に接続することを可能にすることと、
プロセスのオンライン動作中にプロセス要素の模擬出力を生成するために一つ又は複数のプロセッサ上でシミューレーション・システムを実行することと、
プロセス要素の実際値の指標とプロセス要素の模擬出力間の比較を使用してプロセスのオンライン動作中にシミュレーション・オブジェクトのうち一つのプロセスモデルを再生成すること、を含む、プロセスプラントの動作をシミュレートする方法。
【請求項44】
プロセスモデルの再生成には、プロセス要素の実際値の指標とプロセス要素の模擬出力との間での比較に使用されるプロセス要素の実際値の指標をユーザが提供することを可能にすることが含まれる、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
プロセスモデルの再生成には、プロセス要素の実際値の指標をユーザが提供することを可能にすることと、プロセスのオンライン動作中に測定されたプロセス要素の実際値の計測を示す計測信号を提供することが含まれ、且つ、再生成プロセスモデルを生成するためにプロセス要素の実際値の指標としてユーザ提供の入力及び計測信号のいずれか一つを使用することが含まれる、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
プロセス制御システムの実行にはプロセス内のオンライン・プロセス制御作業を行うために更なるプロセスモデルを使用することが含まれることを特徴としてプロセスのオンライン動作を制御するためにシミューレーション・システムと共にプロセス制御システムを実行することとを更に含み、且つ、オンライン・プロセス制御作業を行うために更なるプロセスモデルとして使用されるようにシミュレーション・オブジェクトのうちの一つの再生成プロセスモデルをプロセス制御システムに提供することを更に含む、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
オンライン・プロセス制御作業を行うために更なるプロセスモデルを使用することには、更なるプロセスモデルを使用してモデル予測制御を実施することが含まれる、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
シミュレーション・オブジェクトのうちの一つのプロセスモデルがインパルス応答モデル又はステップ応答モデルであることを特徴とし、且つ、プロセスのオンライン動作中にシミュレーション・オブジェクトのうちの一つのプロセスモデルを再生成することには、プロセス要素の値の指標とプロセス要素の模擬出力との間の相違に基づいてバイアス補正を行うことが含まれる、請求項43に記載の方法。
【請求項1】
プロセスプラントの一部分の動作をシミュレートする際に使用するためのシミューレーション・システムであり、
プロセスプラント内の一台又は複数台の設備のシミュレーションを行うように構成された一つ又は複数のシミュレーション・ブロックを備え、
各シミュレーション・ブロックが、
プロセスプラントの一部分をモデル化したプロセスモデルと、
プロセスプラントの一部分と関連したプロセス要素用に模擬出力を生成するためにプロセスプラントの一部分の動作をシミュレートするのにプロセスモデルを使用するシミュレーションユニットと、
プロセス要素用の模擬出力に対応するプロセス要素の実際値の指標を受け入れるように適応された入力と、
シミュレーション・ルーチンによる使用に向けて更新済プロセスモデルを開発する(develop)ためにプロセス要素の実際値の指標をプロセス要素の模擬出力と比較するモデル再生成ユニットとを含む、シミューレーション・システム。
【請求項2】
プロセス要素がプロセス変数である、請求項1に記載のシミューレーション・システム
。
【請求項3】
プロセス変数が、プロセスプラント内の流体の流れ、温度又は圧力を示す、請求項2に
記載のシミューレーション・システム。
【請求項4】
該入力が、プロセスプラントのオンライン動作中に生成されたプロセス要素の計測を受け入れるように通信可能に接続される、請求項1に記載のシミューレーション・システム
。
【請求項5】
該入力が、プロセス要素の値のユーザ提供指標を受け入れるようにユーザ入力装置に通信可能に接続される、請求項1に記載のシミューレーション・システム。
【請求項6】
該入力が、プロセスプラントのオンライン動作中に生成されたプロセス要素の実測値を示す計測信号を受け入れるように、及びプロセス要素の値を示すユーザ提供入力を受け入れるように通信可能に接続される、請求項1に記載のシミューレーション・システム。
【請求項7】
モデル再生成ユニットが、計測信号が利用可能かどうかを判断して、計測信号が利用可能な場合には計測信号に基づいてプロセスモデルを再生成し、計測信号が利用可能でない場合にはユーザ提供の入力に基づいてプロセスモデルを再生成する、請求項6に記載のシ
ミューレーション・システム。
【請求項8】
モデル再生成ユニットが、計測信号が有効かどうかを判断して、計測信号が有効な場合には計測信号に基づいてプロセスモデルを再生成し、計測信号が有効でない場合にはユーザ提供の入力に基づいてプロセスモデルを再生成する、請求項6に記載のシミューレーシ
ョン・システム。
【請求項9】
プロセスモデルが第一原理モデルである、請求項1に記載のシミューレーション・シス
テム。
【請求項10】
プロセスモデルがインパルス応答モデルである、請求項1に記載のシミューレーション
・システム。
【請求項11】
モデル再生成ユニットが、プロセス要素の値の指標とプロセス要素の模擬出力の間の相違に基づいてプロセスモデルにバイアス補正を提供する、請求項10に記載のシミューレーション・システム。
【請求項12】
プロセスモデルがステップ応答モデルである、請求項1に記載のシミューレーション・
システム。
【請求項13】
モデル再生成ユニットが、プロセス要素の値の指標とプロセス要素の模擬出力との間の相違に基づいてプロセスモデルにバイアス補正を提供する、請求項12に記載のシミューレーション・システム。
【請求項14】
プロセスモデルがニューラルネットワーク・モデルである、請求項1に記載のシミュー
レーション・システム。
【請求項15】
プロセスプラントの一部分の動作をシミュレートする際に使用されるシステムであり、
プロセスのオンライン制御を行うためにプロセス内の要素に接続された一つ又は複数の制御ブロックを有するプロセス制御システム、及び複数のシミュレーション・ブロック及び一つ又は複数の通信リンクを含むシミューレーション・システムを備え、
該シミューレーション・システムが、プロセスプラント内の一台又は複数台の設備のシミュレーションを行うように構成され、
該シミュレーション・ブロックのそれぞれが、
プロセスプラントの一部分をモデル化するプロセスモデルと、
プロセス要素の模擬出力を生成するためにプロセスプラントの一部分の動作をシミュレートするためにプロセスモデルを使用するシミュレーション・ルーチンと、
プロセス要素の模擬出力に対応するプロセス要素の実際値の指標を受け入れるように適応された入力と、
シミュレーション・ルーチンによる使用に向けて更新済プロセスモデルを開発するためにプロセス要素の実際値の指標をプロセス要素の模擬出力と比較するモデル再生成ルーチンとを含む、システム。
【請求項16】
シミュレーション・ブロックのうちの一つの入力が、プロセス要素の実際値のユーザ提供指標を受け入れるようにユーザ入力装置に通信可能に接続される、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
シミュレーション・ブロックのうちの一つの入力が、プロセス要素の実際値の指標としてオンライン測定プロセス値を受け入れるようにプロセス制御システムの出力に通信可能に接続される、請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
オンライン測定プロセス値が、プロセスプラント内の流体の流れ、温度又は圧力のうちの一つを示す、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
オンライン測定プロセス値が、プロセスプラントのオンライン動作中にプロセス制御システムにより生成されたプロセス変数計測である、請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
シミュレーション・ブロックのうちの一つの入力が、オンライン・プロセス内で生成されたプロセス要素の実測値を示す計測信号を受け入れるように、且つプロセス要素の実際値を示すユーザ提供の入力を受け入れるように、通信可能に接続される、請求項15に記載のシステム。
【請求項21】
シミュレーション・ブロックのうちの一つのモデル再生成ルーチンが、計測信号が利用
可能か又は有効かどうかを判断して、計測信号が利用可能又は有効な場合には計測信号に基づいて該シミュレーション・ブロックのうちの一つのプロセスモデルを再生成し、計測信号が利用可能でない又は有効でない場合にはユーザ提供の入力に基づいて該シミュレーション・ブロックのうちの一つのプロセスモデルを再生成する、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
シミュレーション・ブロックのうちの一つのプロセスモデルが第一原理モデルである、請求項15に記載のシステム。
【請求項23】
シミュレーション・ブロックのうちの一つのプロセスモデルがインパルス応答モデル又はステップ応答モデルである、請求項15に記載のシステム。
【請求項24】
シミュレーション・ブロックのうちの一つのモデル再生成ルーチンが、プロセス要素の値の指標及びプロセス要素の模擬出力との間の相違に基づいてシミュレーション・ブロックのうちの一つのプロセスモデルにバイアス補正を提供する、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
プロセス制御システムにより使用される制御ブロックの一つが、オンライン・プロセス制御作業を行うためにプロセスモデルを含み、且つ、
シミューレーション・システムが、オンライン・プロセス制御作業を行うために制御ブロックの一つによる使用できるように、シミュレーション・ブロックの一つに対してモデル再生成ルーチンにより開発された更新済プロセスモデルを該制御ブロックの一つに提供する、請求項15に記載のシステム。
【請求項26】
該制御ブロックの一つが、プロセスモデルを使用してモデル予測制御を実施するモデル予測制御ブロックである、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
該制御ブロックの一つが、プロセスモデルを使用してPID制御を実施する適応可能比例
・積分・微分(PID)制御ブロックである、請求項25に記載のシステム。
【請求項28】
該制御ブロックの一つが、プロセスモデルを使用してプロセスの最適化を実施する最適化ルーチンを含んでいる、請求項25に記載のシステム。
【請求項29】
シミュレーション・ブロックの複数が、プロセスプラント内のプロセス用設備の動作をシミュレートし、且つ、
一つ又は複数の通信リンクの一つが、プロセスプラント内の第一台目のプロセス用設備から第二台目のプロセス用設備へのプロセス材料の移動状態をモデル化するスマート通信リンクである、請求項15に記載のシステム。
【請求項30】
プロセスプラント内のプロセス要素の模擬出力を生成するためにプロセスプラントの一部分のプロセスモデルを使用してプロセスプラントの一部分の動作をシミュレートすることと、
シミュレーション・ルーチンによる使用に向けて更新済プロセスモデルを開発するためにプロセス要素の模擬出力に対応するプロセス要素の実際値の指標を使用することと、
プロセスプラントの更なる動作をシミュレートするために更新済プロセスモデルを使用することと、を含む、プロセスプラントの一部分の動作をシミュレートする方法。
【請求項31】
ユーザが更新済プロセスモデルを開発するために使用されるプロセス要素の実際値の指標を提供できるようにすることを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
プロセスプラントの一部分の動作をシミュレートすると共にプロセスプラントの一部分の動作を制御するためにプロセス制御システムを実行することと、プロセスプラント内のプロセス要素を測定することと、プロセス要素の実際値の指標としてプロセス要素の測定値を使用することと、を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
プロセスプラント内のプロセス要素の測定には、プロセスプラント内の流体の流れ、温度又は圧力の一つを測定することが含まれる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
プロセス要素の実際値を示すユーザ提供の入力を受け入れることと、プロセス制御システム稼動中に測定されたプロセス要素の実際値の計測を示す計測信号を取得することと、プロセス要素の実際値の指標としてユーザ提供の入力及び計測信号のうちの一つを使用することと、を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
計測信号が利用可能か又は有効かどうかを判断することと、計測信号が利用可能又は有効な場合に計測信号をプロセス要素の実際値の指標として使用することと、計測信号が利用可能でない又は有効でない場合にはユーザ提供の入力をプロセス要素の実際値の指標として使用することと、をさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
プロセス制御システムを稼動することには、プロセスプラント内のオンライン・プロセス制御作業を行うためにプロセスモデルを使用することと、プロセス制御システムに更新済プロセスモデルを提供することを含むことと、オンライン・プロセス制御作業を行うためにプロセス制御システム内の更新済プロセスモデルを使用することとが含まれる、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
オンライン・プロセス制御作業を行うためにプロセスモデルを使用することには、プロセスモデルを使用してモデル予測制御を実施することが含まれる、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
オンライン・プロセス制御作業を行うためにプロセスモデルを使用することには、プロセスモデルを使用して適応可能比例・積分・微分(PID)制御ルーチンを実施することが
含まれる、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
オンライン・プロセス制御作業を行うためにプロセスモデルを使用することには、プロセスモデルを使用してプロセス又は制御の最適化を行うために最適化ルーチンを使用することが含まれる、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
プロセスモデルを使用してプロセスプラントの一部分の動作をシミュレートすることには、第一原理モデルをプロセスモデルとして使用することが含まれる、請求項30に記載の方法。
【請求項41】
プロセスモデルを使用してプロセスプラントの一部分の動作をシミュレートすることには、インパルス応答モデル又はステップ応答モデルをプロセスモデルとして使用することが含まれる、請求項30に記載の方法。
【請求項42】
更新済プロセスモデルを開発するためにプロセス要素の模擬出力に対応するプロセス要素の実際値の指標を使用することには、プロセス要素の値の指標とプロセス要素の模擬出力との間の相違に基づいてプロセスモデルにバイアス補正を提供することが含まれる、請求項30に記載の方法。
【請求項43】
(該複数のシミュレーション・オブジェクトの各々が、プロセスプラン
ト内の異なる物理的なエンティティと関連し、且つ
該シミュレーション・オブジェクトの各々が、
プロセスプラントの一部分をモデルとするプロセスモデルと、
プロセス要素の模擬出力を生成するためにプロセスプラントの一部分の動作をシミュレートするのにプロセスモデルを使用するシミュレーション・ルーチンとを含むことを特徴して、)コンピュータ可読メモリに複数のシミュレーション・オブジェクトを格納することと、
シミューレーション・システムを開発するためにユーザがシミュレーション・オブジェクトを共に通信可能に接続することを可能にすることと、
プロセスのオンライン動作中にプロセス要素の模擬出力を生成するために一つ又は複数のプロセッサ上でシミューレーション・システムを実行することと、
プロセス要素の実際値の指標とプロセス要素の模擬出力間の比較を使用してプロセスのオンライン動作中にシミュレーション・オブジェクトのうち一つのプロセスモデルを再生成すること、を含む、プロセスプラントの動作をシミュレートする方法。
【請求項44】
プロセスモデルの再生成には、プロセス要素の実際値の指標とプロセス要素の模擬出力との間での比較に使用されるプロセス要素の実際値の指標をユーザが提供することを可能にすることが含まれる、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
プロセスモデルの再生成には、プロセス要素の実際値の指標をユーザが提供することを可能にすることと、プロセスのオンライン動作中に測定されたプロセス要素の実際値の計測を示す計測信号を提供することが含まれ、且つ、再生成プロセスモデルを生成するためにプロセス要素の実際値の指標としてユーザ提供の入力及び計測信号のいずれか一つを使用することが含まれる、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
プロセス制御システムの実行にはプロセス内のオンライン・プロセス制御作業を行うために更なるプロセスモデルを使用することが含まれることを特徴としてプロセスのオンライン動作を制御するためにシミューレーション・システムと共にプロセス制御システムを実行することとを更に含み、且つ、オンライン・プロセス制御作業を行うために更なるプロセスモデルとして使用されるようにシミュレーション・オブジェクトのうちの一つの再生成プロセスモデルをプロセス制御システムに提供することを更に含む、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
オンライン・プロセス制御作業を行うために更なるプロセスモデルを使用することには、更なるプロセスモデルを使用してモデル予測制御を実施することが含まれる、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
シミュレーション・オブジェクトのうちの一つのプロセスモデルがインパルス応答モデル又はステップ応答モデルであることを特徴とし、且つ、プロセスのオンライン動作中にシミュレーション・オブジェクトのうちの一つのプロセスモデルを再生成することには、プロセス要素の値の指標とプロセス要素の模擬出力との間の相違に基づいてバイアス補正を行うことが含まれる、請求項43に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2013−12218(P2013−12218A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−183410(P2012−183410)
【出願日】平成24年8月22日(2012.8.22)
【分割の表示】特願2007−258407(P2007−258407)の分割
【原出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【出願人】(512132022)フィッシャー−ローズマウント システムズ,インコーポレイテッド (28)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−183410(P2012−183410)
【出願日】平成24年8月22日(2012.8.22)
【分割の表示】特願2007−258407(P2007−258407)の分割
【原出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【出願人】(512132022)フィッシャー−ローズマウント システムズ,インコーポレイテッド (28)
【Fターム(参考)】
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