説明

作図処理装置

【課題】 作図作業において多数の部品からいずれかを選択するような作業は、部品の入替が煩雑であると作業全体の効率を悪化させるおそれがある。
【解決手段】 作図処理装置10において、部品記憶部36は、モチーフが互いに関連性を有する複数の部品図形を一組とした部品セットのデータを複数保持する。部品選択部34は、ユーザの操作入力に応じて部品記憶部36に保持された複数の部品セットからいずれかを選択する。編集処理部32は、選択された部品セットを作図ファイルに埋め込む。表示処理部26は、作図ファイルに部品セットが埋め込まれている場合、その部品セットに含まれるいずれかの部品図形を切替マークとともに表示させ、切替マークがユーザにより操作されたときに部品図形を他の部品図形に切り替えて表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作図処理装置に関し、特に、部品図形を用いた作図作業において部品図形を編集するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタルコンテンツを制作するためのツールとして、画像や音声などの部品を組み合わせてマルチメディアコンテンツをデザインまたは編集することができるオーサリングツールが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−015333号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載のオーサリングツールにおいては、多数用意された部品の中からユーザがいくつかの部品を選択し、その選択された複数の部品を画面に並べてそれらに親子関係をもたせる機能がある。それら複数の部品の一つに拡大、縮小、回転などの変形を施したときは、親子関係のある部品として同時に表示された他の部品についても同様の変形が同時に施される。
【0004】
しかしながら、上記の技術は複数の部品を同時にまとめて取り扱う技術にすぎないため、たとえば他の部品に入れ替えたような場合には同様の変形が自動的に施されることもなく、また、他の部品への入れ替え自体も多数の部品の中から再度選択する作業が発生し、煩雑である。通常、多数の部品からいずれかを選択するような作業は、いろいろな部品を試用し、全体のバランスを見て試行錯誤しながら選定する場合が多く、部品の入替が煩雑であると作業全体の効率に悪影響を与え、創作活動に対する阻害要因となりかねない。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、多数用意された部品からの選択と編集をともに容易にする技術を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の作図処理装置は、編集対象である図形の形状、配置、および属性の値が指定された作図ファイルを読み込むファイル読込部と、読み込まれた作図ファイルに指定された形状、配置、および属性の値に基づいて形成される図形を画面上のウインドウ内に描画する表示処理部と、モチーフが互いに関連性を有する複数の部品図形を一組とした部品セットのデータを複数保持する部品記憶部と、ユーザの操作入力を受け付ける操作指示部と、ユーザの操作入力に応じて部品記憶部に保持された複数の部品セットからいずれかのセットを選択する部品選択部と、選択された部品セットをユーザの操作入力に応じた配置にて作図ファイルに埋め込む編集処理部と、を備える。表示処理部は、作図ファイルに部品セットが埋め込まれている場合、その部品セットに含まれるいずれかの部品図形を切替マークとともに表示させ、切替マークが画面上に表示されたポインタの移動を介してユーザにより操作されたときに表示させた部品図形を埋め込まれた部品セットに含まれる他の部品図形に切り替えて表示する。
【0007】
ここで「作図処理装置」は、コンピュータにインストールされた、いわゆるドローソフト、CADソフト、ペイントソフトといった作図ソフトウエアおよびそのコンピュータの形で実現されてもよい。「図形の形状、配置」は、直線、曲線、面などのオブジェクトにより形成される図形と各線または各面が通過する位置の座標といった要素であってもよい。図形の形状は、線や面などのオブジェクトが点の座標およびオブジェクトの種類で表現されるベクタ形式で指定されてもよい(し、ビットマップ形式で指定されてもよい)。「属性の値」は、線の種類、線の幅、線の色、面の種類、面の模様、面の色などの属性に関する値であってもよい。一組の部品セットに含まれた複数の部品図形は、そのモチーフないし主題が統一されていてもよいし、単に共通性を有する程度であってもよい。たとえば、様々なポーズをとっている人が描かれた複数の部品図形、様々な動物が描かれた複数の部品図形、様々な果物が描かれた部品図形など、同じ主題のもとで異なる絵が描かれた複数の部品図形によりそれぞれの部品セットが構成されてもよい。
【0008】
この態様によると、作図ファイルへ本来埋め込まれるべき所望の部品図形が一つだけであった場合でも、その部品図形と関連づけられた他の部品図形も不可視の形で同時に埋め込まれる。これにより、後から部品図形を他の図形に入れ替えようとした場合に、関連のある他の部品図形の選択肢を迅速かつ簡単に呼び出して入れ替えることができるので、関連のない部品図形は提示されず、全体として作図作業の効率を向上させることができる。
【0009】
表示処理部は、部品選択部が部品セットの選択開始に関するユーザの指示を受けた場合に、部品記憶部に保持された複数の部品セットからそれぞれ選択された複数の部品図形を一覧表示させ、部品選択部は、一覧表示された複数の部品図形からいずれかがユーザの操作入力により選択指示された場合、指示された部品図形が含まれる部品セットを選択し、編集処理部は、部品選択部により選択された部品セットを作図ファイルに埋め込んでもよい。これにより、多数の部品図形が部品記憶部に登録されている場合であっても、一覧には部品セットごとにそれぞれの代表的な部品図形だけが表示される。したがって、一覧表示に要するスペースを節約でき、また、ユーザにとっても多くの部品セットを一望できるので、多数の部品図形の中から所望の部品図形を選択する作業が容易となる。
【0010】
編集処理部は、読み込まれた作図ファイルに部品セットが埋め込まれている場合、その埋め込まれた部品セットに含まれるいずれかの部品図形に関して属性の値を変更した後、部品セットに含まれる他の部品図形に表示対象を切り替えたときは、切替後の部品図形に関する属性の値にも同じ変更を反映させてもよい。これにより、同じ部品セットの中で表示させる部品図形を入れ替えた場合であっても、一度指示した属性の値が入替後の部品図形にも施され、何度も同じ作業を繰り返す必要がなく、作図作業の効率を向上させることができる。
【0011】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、コンピュータプログラム、コンピュータプログラムを格納する記録媒体などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、作図作業において多数用意された部品からの選択と編集を容易にする技術を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、作図処理装置の内部構成を示す機能ブロック図である。作図処理装置10は、ファイル記憶部12、ファイル処理部20、表示処理部26、編集処理部32、部品選択部34、部品記憶部36、操作指示部38、および制御部40を備える。これらの構成は、ハードウエアコンポーネントでいえば、任意のコンピュータのCPU、メモリ、メモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。たとえば、ファイル記憶部12と部品記憶部36はコンピュータのハードディスクなどの補助記憶媒体で構成され、操作指示部38はキーボードやマウスなどの入力デバイスやその動作を制御するドライバで構成され、他の構成はメモリにロードされた作図ソフトウエアやオペーレーティングソフトウエアが提供するAPIなどのプログラムで構成される。
【0014】
操作指示部38は、マウスなどのポインティングデバイスやキーボードを介したユーザの操作入力を受け付ける。たとえば、操作指示部38は画面に表示されたメニューからのコマンド選択指示、ボタンの押下指示、画像やアイコンのドラグアンドドロップ操作などの操作入力を受け付ける。制御部40は、操作指示部38が取得したユーザからの指示に応じて、作図処理装置10に含まれる各構成による動作を制御する。
【0015】
ファイル記憶部12は、作図処理装置10におけるファイルの保存領域であり、特に編集対象である図形の形状、配置、および属性の値が指定された作図ファイルが保存されている。ファイル記憶部12は、作図処理装置10に内蔵された記録媒体を主に想定するが、作図処理装置10に装填される外部記録媒体により実現してもよい。
【0016】
ファイル処理部20は、ファイル読込部22とファイル書込部24を有する。ファイル読込部22は、ファイル記憶部12に格納された作図ファイルを編集対象としてメモリに読み込む。ファイル書込部24は、編集処理部32によって編集された内容を編集対象である作図ファイルに書き込んでファイル記憶部12に保存する。なお、新規に作図ファイルを作成する場合は、ファイル読込部22はまだ何も図形が指定されていない作図ファイルを生成してメモリに読み込むとともに、その新規に生成した作図ファイルをファイル書込部24がファイル記憶部12に保存する。
【0017】
表示処理部26は、描画処理部28と画面出力部30を有する。描画処理部28は、ファイル読込部22によってメモリに読み込まれた作図ファイルを参照し、その作図ファイルに指定された形状、配置、および属性の値に基づいて描画すべき図形を構築する。構築された図形は画面出力部30によってモニタへ出力され、モニタ画面上の所定のウインドウ内に表示される。
【0018】
部品記憶部36は、モチーフが互いに関連性を有する複数の部品図形を一組とした部品セットのデータを複数保持する。各部品図形は、それぞれ線または面で構成されており、各線または各面がベクタ形式により座標および属性値の形で定義される。属性値は、たとえば線の種類、線の幅、線の色、面の種類、面の模様、面の色などのパラメータである。部品記憶部36に格納された複数の部品セットは、それぞれの識別情報としてセット番号が付与されている。各部品セットに含まれる複数の部品図形はそれぞれ固有の部品名が設定されており、これら部品名とセット番号があらかじめ対応付けられている。また、部品セットが選択されたときにいずれの部品図形を初期的に表示すべきかが部品名で定義されているとともに、表示対象が切り替えられたときにどのような順序で切り替えられるかが部品名の順序の形で定められている。各部品図形を構成する線や面に対しても一意のIDが付与されている。
【0019】
部品選択部34は、ユーザの操作入力に応じて、部品記憶部36に保持された複数の部品セットからいずれかのセットを選択するとともに、部品セットに含まれる複数の部品図形のうちいずれかの部品図形を選択する。ただし、部品セットまたは部品図形の選択方法は、ユーザによる選択指示の取得方法に応じて異なってもよい。たとえば、部品セットの選択肢としてそれぞれに含まれるいずれかの部品図形を一覧表示させ、その中からユーザに選択させるような場合、ユーザはいずれかの部品図形を選択することによって、その部品図形が含まれる部品セットを同時に選択したこととなる。
【0020】
編集処理部32は、部品選択部34により選択された部品セットをユーザの操作入力に応じた配置にて編集対象の作図ファイルに埋め込む。部品セットの配置に関するユーザの操作入力は、たとえばマウスなどのポインティングデバイスを介した位置座標の指示である。編集処理部32は、部品セットに含まれる複数の部品図形のベクタデータと、複数の部品図形のうちいずれがユーザにより選択されたかを示す部品名とを作図ファイルに埋め込む。編集処理部32は、複数の部品図形のベクタデータに含まれる座標を、作図ファイル上の原点を基準とした絶対座標に変換してから埋め込む。ただし、変形例としては、編集処理部32が複数の部品図形のベクタデータに含まれる座標を相対座標の形で作図ファイルに埋め込んでもよい。
【0021】
描画処理部28は、編集対象の作図ファイルに部品セットが埋め込まれている場合、その作図ファイルに指定された配置にて部品図形を描画する。ここで、部品セットには複数の部品図形が含まれており、作図ファイルに指定されたいずれかの部品図形だけが画面上に描画される。このとき、描画処理部28は部品図形の近傍、たとえば右側近傍に切替マークを表示させる。この切替マークは、ユーザが画面上でスライドさせるように操作することができるオブジェクトであり、描画処理部28は切替マークがユーザのドラグ操作によってスライドされたときに、その移動度に応じて、表示中の部品図形を他の部品図形に切り替える。部品図形が切り替えられるときは、表示中の部品図形と同じ部品セットに含まれる他の部品図形に切り替えられる。
【0022】
描画処理部28は、部品選択部34が部品セットの選択開始に関するユーザの指示を受けた場合に、部品記憶部36に保持された複数の部品セットからそれぞれに含まれる複数の部品図形のうち1番目の部品図形を選択し、選択された複数の部品図形を一覧表示させる。一覧表示された複数の部品図形のうちいずれかがユーザの操作によりダブルクリックまたはドラグアンドドロップされたときに、その部品図形を含む部品セットが選択される。これにより、多数の部品図形が部品記憶部36に登録されている場合であっても、一覧には部品セットごとにそれぞれの代表的な部品図形だけが表示される。したがって、一覧表示に要するスペースを節約でき、また、ユーザにとっても多くの部品セットを一望できるので、多数の部品図形の中から所望の部品図形を選択する作業が容易となる。
【0023】
編集処理部32は、編集対象の作図ファイルに部品セットが埋め込まれている場合、その埋め込まれた部品セットに含まれるいずれかの部品図形に関して属性の値を変更したときにその部品セットに含まれる他の部品図形に関しても同じ属性の値に同じ変更を反映させる。たとえば、表示中の部品図形を構成する線の種類、線の幅、線の色、面の種類、面の模様、面の色などの属性の値を変更する指示を操作指示部38がユーザから受け取った場合、描画処理部28はその変更が反映された部品図形を画面上に描画する。次に、切替マークのドラグ操作によって表示中の部品図形が他の部品図形に切り替えられたときに、切替前の部品図形に加えられた属性の値の変更を切替後の部品図形にも加えてから表示させる。これにより、同じ部品セットの中で表示させる部品図形を入れ替えた場合であっても、一度指示した属性の値が入替後の部品図形にも施され、何度も同じ作業を繰り返す必要がなく、作図作業の効率を向上させることができる。なお、一つの部品セットに含まれる各部品図形を構成する線または面は、複数の部品図形の間で対応関係が定義されていてもよい。この対応関係は、たとえば「01」という部品図形の「0101」という線が、同じ部品セット内の「02」という部品図形の「0201」という線とあらかじめ対応付けられるような関係であり、部品記憶部36に保持されているときにあらかじめ定義されている。
【0024】
図2は、モチーフが互いに関連性を有する複数の部品図形の組合せを模式的に示す。各部品セットには、それぞれ最大で5つの部品図形が含まれる。図2(a)に示される図形は、3個の部品図形60、62、64を一組とした部品セットである。これらの部品図形60、62、64は、それぞれにキャラクタである人の顔が描かれている点でモチーフが共通している。部品図形60には笑った表情、部品図形62には怒った表情、部品図形64には泣いた表情がそれぞれ描かれている。ユーザから切替指示があったときは、部品図形60、部品図形62、部品図形64、部品図形60の順で表示対象が切り替えられる。
【0025】
図2(b)に示される図形は、3個の部品図形70、72、74を一組とした部品セットである。これらの部品図形70、72、74は、それぞれに天気を表すマークが描かれている点でモチーフが共通している。部品図形70には晴れを表すマーク、部品図形72には曇りを表すマーク、部品図形74には雨を表すマークがそれぞれ描かれている。ユーザから切替指示があったときは、部品図形70、部品図形72、部品図形74、部品図形70の順で表示対象が切り替えられる。
【0026】
図2(c)に示される図形は、4個の部品図形80、82、84、86を一組とした部品セットである。これらの部品図形80、82、84、86は、それぞれに花火の打ち上がる過程が段階的に描かれている点でモチーフが共通している。部品図形80には花火の打ち上げ直後の段階を表す絵、部品図形82には打ち上がり途中の段階を表す絵、部品図形84には破裂して広がり始めた段階を表す絵、部品図形86には十分に広がった状態を表す絵がそれぞれ描かれている。ユーザから切替指示があったときは、部品図形80、部品図形82、部品図形84、部品図形86、部品図形80の順で表示対象が切り替えられる。
【0027】
図3は、部品図形の選択肢が一覧表示される部品パレットを模式的に示す。ユーザが部品図形の選択開始を指示したとき、描画処理部28は部品パレット50を画面に表示させる。本図においては、選択肢の例として6つの部品セット52、53、54、55、56、57が部品パレット50に一覧表示される。ユーザがマウスポインタによりスクロールバー58を操作すれば、本図に示された選択肢以外の部品セットを部品パレット50に表示させることもできる。各部品セットには、それぞれ複数の部品図形が含まれており、部品パレット50には各部品セットを代表して一つずつ部品図形が表示される。表示される部品図形は、各部品セットにおいて1番目の部品として登録された部品図形である。各部品セットには、それぞれ3個〜5個の部品図形が含まれているので、本図のように部品パレット50には6種類の部品だけが表示されるが、それぞれの内容を考慮すれば実質的に18個〜30個の部品図形が一覧表示されているのと等しい。このように、比較的小さなスペース上に実質的に多数の選択肢を一度に提示することができるので、ユーザの作業効率を向上させることができる。なお、ユーザが作成した図形を部品図形として部品パレット50に登録することもできる。
【0028】
ユーザがマウスポインタでいずれかの部品図形をダブルクリックしたとき、または作図ファイルが表示されるウインドウ44上の作図領域42へドラグアンドドロップしたときに、その部品図形が選択される。その後、部品図形の表示範囲として端点または中心点の位置をユーザが指定すると、指定された表示範囲にて部品図形の座標が変換され、選択された部品図形を含む部品セットのベクタデータが作図ファイルに埋め込まれる。埋め込まれた部品セットの部品図形は、本図の埋込部品図形59のように表示される。なお、本図では便宜上、破線の枠を描いているが、実際にはこのような枠は表示されず、印刷しても枠は印刷されない。
【0029】
部品パレット50において各部品セットの代表として表示された部品図形を、それぞれに含まれる他の部品図形に切り替えて表示させたい場合、その切替指示としていくつかの方法が考えられる。たとえば、部品図形が1回クリックされたときにその部品図形が他の部品図形に切り替えられてもよい。たとえば、部品図形にマウスポインタが近づくと切替マークが表示され、その切替マークが操作されたときにその部品図形が他の部品図形に切り替えられてもよい。
【0030】
図4は、部品図形と切替マークの表示態様を模式的に示す。本実施例においては、切替マークは部品図形の右側近傍に表示される。図4(a)〜(c)に示される各部品図形は、それぞれに様々なポーズをとった人のシルエットが描かれている点でモチーフが共通しており、すべて同じ部品セットに含まれている。この部品セットには3個の部品図形が含まれるので、作図ファイルに埋め込まれた後で部品図形右側近傍には3段階にレベル分けされた切替マークの表示位置が設定され、最も高いレベルに切替マーク94が位置するときは1番目の部品図形である部品図形90が表示される。ユーザがマウスポインタ96を用いて切替マーク94を下方向にドラグし、切替マーク94が真ん中のレベルに位置したときは2番目の部品図形である部品図形91が表示される。さらにユーザがマウスポインタ96を用いて切替マーク94を下方向にドラグし、切替マーク94が最も下のレベルに位置したときは3番目の部品図形である部品図形92が表示される。
【0031】
切替マーク94は、通常の表示態様においては非表示とされており、ユーザがマウスポインタ96を部品図形から所定の距離範囲内まで近づけたときに表示され、再びマウスポインタ96が部品図形から所定の距離範囲外まで遠ざかったときに非表示とされる。ただし、変形例としては、切替マーク94がつねに表示されたままの状態で維持される構成であってもよい。
【0032】
なお、本図においては切替マーク94が表示され得る位置は図4(a)、(b)、(c)に示されるような最も上のレベル、真ん中のレベル、最も下のレベルの3位置だけであり、これらの中間位置に切替マーク94が表示されて固定されることはない。また、部品図形90、部品図形91、部品図形92の各部品図形は切替時において図形が徐々に変化するのではなく、たとえば切替マーク94がドラグされて各レベルの中間位置を通過する瞬間に図形が一度に入れ替わる形で切替前の図形と切替後の図形が描画される。ただし、変形例においては切替マーク94が各レベルの中間に位置するときにその移動にともなって一方の部品図形の透明化と他方の部品図形の非透明化が徐々に進行する形で切り替えられてもよい。
【0033】
図5は、部品図形と切替マークの表示態様を模式的に示す。本実施例においては、切替マークは部品図形の右側近傍に表示される。図5(a)〜(d)に示される各部品図形は、それぞれに様々な果物の絵が描かれている点でモチーフが共通しており、すべて同じ部品セットに含まれている。この部品セットには4個の部品図形が含まれるので、作図ファイルに埋め込まれた後で部品図形右側近傍には4段階にレベル分けされた切替マークの表示位置が設定され、最も高いレベルに切替マーク94が位置するときは1番目の部品図形である部品図形100が表示される。ユーザがマウスポインタ96を用いて切替マーク94を下方向にドラグし、切替マーク94が2番目のレベルに位置したときは2番目の部品図形である部品図形101が表示される。さらにユーザがマウスポインタ96を用いて切替マーク94を下方向にドラグし、切替マーク94が3番目のレベルに位置したときは3番目の部品図形である部品図形102が表示される。さらにユーザがマウスポインタ96を用いて切替マーク94を下方向にドラグし、切替マーク94が最も下のレベルに位置したときは4番目の部品図形である部品図形103が表示される。なお、本図においては切替マーク94が表示され得る位置は図5(a)、(b)、(c)、(d)に示されるような最も上のレベル、最も下のレベル、間にある二つのレベルの4位置だけであり、これらの中間位置に切替マーク94が表示されて固定されることはない。
【0034】
図6は、作図ファイルに埋め込まれた部品セットのデータ構造を模式的に示す。作図ファイルに部品セットが埋め込まれる場合、本図の部品テーブル110の内容が埋め込まれる。本実施例では、埋め込まれる部品セットとして第1部品セット120と第2部品セット122を例示する。部品テーブル110には、第1部品セット120および第2部品セット122などの各部品セットに関して、セットID112、部品図形名114、部品図形座標列115、選択図形名116、属性情報118の各項目に対応する情報が格納される。
【0035】
セットID112としては、作図ファイルに埋め込まれた部品セットの識別情報が格納される。たとえば、第1部品セット120と第2部品セット122のそれぞれに対してあらかじめ付与された「set001」や「set002」といった部品セットの識別情報が格納される。部品図形名114としては、第1部品セット120と第2部品セット122のそれぞれに含まれる部品図形の部品名が格納される。たとえば、第1部品セット120は3個の部品図形で構成され、それぞれの部品名として「00101」「00102」「00103」といった名前が格納される。部品図形座標列115としては、各部品図形を構成する各線または各面のベクタデータとしてそれぞれの座標列が格納される。各線と各面のベクタデータは、各線と各面のIDと対応づけられた座標列であり、それぞれ作図ファイルの作図領域42における絶対座標に変換されている。ただし、変形例としては各部品図形ごとの相対座標のまま部品図形座標列115に格納され、表示される部品図形が切り替えられるたびに絶対座標に変換されて描画されてもよい。選択図形名116としては、各部品セットの中から選択された部品図形の部品名が格納される。たとえば、第1部品セット120から選択された部品図形として「00102」の部品名が格納され、第1部品セット120が表示されるときは第1部品セット120に含まれる「00102」の部品図形が表示される。
【0036】
属性情報118としては、部品セットを表示させるときの各種属性の値が格納される。たとえば、選択された部品図形「00102」の構成要素である線「001020001」の種類を示す値として「01」の値が格納され、線「001020001」の幅を示す値として「2.0」の値が格納され、線「001020001」の色を示す値として「08」の値が格納される。線のID「001020001」のうち上5桁は部品図形のIDであり、下4桁が実質的に線のIDを示す。第1部品セット120に含まれる他の部品図形「00101」または「00103」において線「001020001」と対応する線が含められている場合、その線のIDはそれぞれ「001010001」や「001030001」のように下4桁が共通するよう設定される。したがって、線や面の対応関係はIDの特定部分を比較することにより判定することができる。ここで、たとえば表示対象の部品図形を「00102」から「00101」に切り替えた場合、属性情報118に格納された各属性の値は、部品図形の切替後も対応する線や面に反映される。すなわち、線「001010001」や線「001030001」のような線が存在する場合にそれらの属性の値として引き継がれる。
【0037】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例はあくまで例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、変形例を挙げる。
【0038】
実施例においては、作図ファイル上でユーザが切替マークを操作することによって表示対象の部品図形が他の部品図形に切り替わる構成を説明した。変形例においては、主に文章で構成される文書ファイルにおいて部品セットが挿入された場合を想定し、表示される部品図形がその文章の内容に応じて部品セットに含まれる複数の部品図形からいずれかが選択されて切り替えられてもよい。この場合、部品図形が埋め込まれた文章ファイルの文章をユーザが編集したときに、所定の辞書に基づいて編集後の文章を形態素解析し、各単語の意味や種類を分析し、特徴的なキーワードや感情表現的なキーワードを抽出する。部品図形にはあらかじめ意味的に関連するキーワードや意味が対応付けられており、その対応関係をもとに文章内容に最も近い部品図形を部品セットから選択し、それ以外の部品図形が表示されているときはあらたに選択された部品図形に表示対象を切り替える。
【0039】
実施例においては、部品図形として様々なイラストが描かれた図形を例示したが、変形例として、これらの部品図形としてイラストの画像やいわゆるアイコン画像などのビットマップデータを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】作図処理装置の内部構成を示す機能ブロック図である。
【図2】モチーフが互いに関連性を有する複数の部品図形の組合せを模式的に示す図である。
【図3】部品図形の選択肢が一覧表示される部品パレットを模式的に示す図である。
【図4】部品図形と切替マークの表示態様を模式的に示す図である。
【図5】部品図形と切替マークの表示態様を模式的に示す図である。
【図6】作図ファイルに埋め込まれた部品セットのデータ構造を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0041】
10 作図処理装置、 22 ファイル読込部、 26 表示処理部、 32 編集処理部、 34 部品選択部、 36 部品記憶部、 38 操作指示部、 44 ウインドウ、 52 部品セット、 60 部品図形、 62 部品図形、 64 部品図形、 90 部品図形、 91 部品図形、 92 部品図形、 94 切替マーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
編集対象である図形の形状、配置、および属性の値が指定された作図ファイルを読み込むファイル読込部と、
前記読み込まれた作図ファイルに指定された形状、配置、および属性の値に基づいて形成される図形を画面上のウインドウ内に描画する表示処理部と、
モチーフが互いに関連性を有する複数の部品図形を一組とした部品セットのデータを複数保持する部品記憶部と、
ユーザの操作入力を受け付ける操作指示部と、
前記ユーザの操作入力に応じて前記部品記憶部に保持された複数の部品セットからいずれかのセットを選択する部品選択部と、
前記選択された部品セットを前記ユーザの操作入力に応じた配置にて前記作図ファイルに埋め込む編集処理部と、を備え、
前記表示処理部は、前記作図ファイルに部品セットが埋め込まれている場合、その部品セットに含まれるいずれかの部品図形を切替マークとともに表示させ、前記切替マークが画面上に表示されたポインタの移動を介してユーザにより操作されたときに前記表示させた部品図形を前記埋め込まれた部品セットに含まれる他の部品図形に切り替えて表示することを特徴とする作図処理装置。
【請求項2】
前記表示処理部は、前記部品選択部が前記部品セットの選択開始に関するユーザの指示を受けた場合に、前記部品記憶部に保持された前記複数の部品セットからそれぞれ選択された複数の部品図形を一覧表示させ、
前記部品選択部は、前記一覧表示された複数の部品図形からいずれかが前記ユーザの操作入力により選択指示された場合、指示された部品図形が含まれる部品セットを選択し、
前記編集処理部は、前記部品選択部により選択された部品セットを前記作図ファイルに埋め込むことを特徴とする請求項1に記載の作図処理装置。
【請求項3】
前記編集処理部は、前記読み込まれた作図ファイルに前記部品セットが埋め込まれている場合、その埋め込まれた部品セットに含まれるいずれかの部品図形に関して属性の値を変更した後、前記部品セットに含まれる他の部品図形に表示対象を切り替えたときは、切替後の部品図形に関する属性の値にも同じ変更を反映させることを特徴とする請求項1または2に記載の作図処理装置。
【請求項4】
編集対象である図形の形状、配置、および属性の値が指定された作図ファイルを読み込むステップと、
モチーフが互いに関連性を有する複数の部品図形を一組とした部品セットが前記作図ファイルに埋め込まれている場合に、その部品セットに含まれるいずれかの部品図形をその作図ファイルに指定された配置および属性の値に基づいて画面上のウインドウ内に表示させるステップと、
前記部品図形の近傍に所定の切替マークを表示させるステップと、
画面上においてユーザの操作により前記切替マークが移動されたときに前記表示中の部品図形を前記部品セットに含まれる他の部品図形に切り替えて表示させるステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−178703(P2006−178703A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−370562(P2004−370562)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(390024350)株式会社ジャストシステム (123)
【Fターム(参考)】