説明

作図方法および装置

【課題】知的財産の分布だけでなく価値まで直観的に把握できるバブルチャートを作図する技術を提供する。
【解決手段】位置決定部12は特許DB30からバブルチャートに描くべき特許群を抽出する。属性決定部14は各バブルの属性、ここではサイズを決定する。サイズの決定に当たり、特許の件数ではなく、そのバブルに含まれる特許の価値の総計に応じたサイズとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は作図技術に関し、とくに知的財産をバブルチャートで描く技術に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の特許を解析する際、バブルチャートが利用されることがある。バブルチャートは3つのパラメータで定義される事象について、パラメータのうちふたつを縦横の軸にとり、残りのパラメータをバブルの大きさで表すことにより、二次元の図で効率的に3つのパラメータを表現する。特許の場合、縦横の軸として技術分野と特許権者をとり、特許の件数をバブルのサイズに反映することがある。このバブルチャートにより、業界におけるいずれのプレーヤがいずれの技術分野において何件ぐらい特許をもっているかを直観的に把握することができる。
特許文献1には、データ処理システムのパフォーマンスをバブルチャートで表す装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−223886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許は無体財産である。無体財産のひとつの特徴は価値の把握が困難な点にある。取得しても実際には一切事業に貢献しない特許もあれば、技術トレンドに合致しその独占性によって極めて高い価値をもつものもある。虎の子の一件が並の特許の数十件、数百件の価値に匹敵することもある。従来のバブルチャートはこうした特許の特性を考慮するものとはいいにくい。本発明の目的はより利用価値の高いバブルチャートを作図する技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の作図技術は、知的財産の分布をバブルチャートによって描く際、知的財産の価値に関する評価結果をバブルの属性に反映する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、バブルの属性によって知的財産の価値を知ることができ、無体財産の価値の直観的把握に貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例に係る作図システムの構成を示す図である。
【図2】従来一般的なバブルチャートを示す図である。
【図3】実施例の作図システムによるバブルチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、実施例に係る作図システム100の構成を示す。作図システム100は作図装置10、特許DB(データベース)30、評価装置40を備える。特許DB30は多数の特許について特許番号、特許権者、特許の技術分野、その他特許を分類ないし解析するために必要な情報を格納する。評価装置40は特許を所定の判断基準に従って評価する。判断基準の例は「審査時に引用文献が多かった特許」「現にライセンスされている特許」「後願に対してより多く引用文献とされた特許」の価値が高いとするものであり、特許の本質的な価値に関連する基準である。いずれにせよ、評価装置40は特許DB30の情報から全自動ないし半自動で特許の価値を評価すれば足り、半自動の場合は専門家が欠けている部分をレビューして補完すればよい。
【0009】
作図装置10は位置決定部12、属性決定部14、描画部16、GUI(グラフィカルユーザインタフェイス)20を備える。ユーザはGUI20を介してバブルチャート作成のための指示を入力する。バブルチャートは3つのパラメータから成り立つ。それらのうち二次元のチャートの2軸を構成するふたつのパラメータはGUI20から位置決定部12へ指示される。残るひとつのパラメータはバブルの属性に反映されるもので、ここでは属性としてバブルのサイズを採る。何をサイズに反映させるかはGUI20から属性決定部14へ指示される。位置決定部12は指示されたふたつのパラメータについて特許DB30を探索し、必要な特許群を抽出する。実施例ではふたつのパラメータは「技術分野」「特許権者」とする。
【0010】
一方、属性決定部14は位置決定部12から抽出された特許群の通知を受け、それらについて残るひとつのパラメータにしたがい各バブルのサイズを決定する。実施例では、サイズは各バブルに含まれる特許Piについてその価値Viを集計したもの、具体的にはViの総和に応じるとする。例えば、あるバブルに2件の特許P1、P2が入る場合、そのバブルのサイズはそれらの特許の価値の合計V1+V2に応じる。サイズは半径や面積など、「応じる」は比例させるほか、一様増加関数を作用させてもよい。要するに、価値の合計が大きいほどサイズが大きくなる。
【0011】
描画部16は位置決定部12と属性決定部14からそれぞれ技術分野、特許権者とバブルのサイズの通知を受け、これらをバブルチャートの形式に整形し、図示しない表示装置へ出力する。
【0012】
図2は従来一般的なバブルチャート200を示す。ここで横軸は技術分野(技術S、T、U、V、W)、縦軸が特許権者(A、B、C、D、E社)であり、各バブルの大きさは特許の件数である。同図を見るかぎり、C社がいずれの技術分野でも多くの特許を取得しており優勢である。技術Vについてはいずれの特許権者も同程度の特許件数であり、各社同列である。
【0013】
一方、図3は図2と同じ条件下で作図システム100によって出力されたバブルチャート300を示す。同図によると、従来の図2では優勢と思われたC社よりも、特許の価値まで考えた場合、D社のほうが優勢と判明する。また、各社同列と思われた技術VにおいてE社の優、A社の劣も判明する。特許は数も大事だが権利の広さなどの価値はさらに大事である。この実施例は、知的財産という観点で、業界の真の勢力分布の直観的な把握に寄与できる。
【0014】
以下、変形技術をあげる。実施例ではバブルの属性としてバブルのサイズを採った。しかし、属性はサイズに限らず、バブルの色、形状、模様、境界線の太さ、バブルを楕円にしたときの扁平率、その他視覚的に識別可能な特徴ないし性質であればよい。たとえば、描画部16は特許の価値をバブルの色にとり、バブルの色だけが異なるチャートを生成してもよい。
【0015】
描画部16は、特許の価値だけでなく、件数を併せて表示してもよい。たとえば、描画部16は図2と図3を重ねて描き、ふたつのバブルの区別がつくよう色分けや網掛け等の識別処理を施してもよい。描画部16は単一のバブルの異なるふたつの属性にそれぞれ価値と件数を反映してもよい。
【0016】
チャートの縦横の軸は技術分野、特許権者に限られない。時期(年号)、製品分野(用途)、地域など、パラメータと認識できるものであれば広く採用可能である。特許の件数というパラメータについても、発明を産み出すために必要だった研究開発費、特許取得のコスト、関与した発明者の数など、一般には数値表現可能なパラメータであればよい。
【0017】
実施例では特許DB30も含めて作図システム100としたが、もちろん、特許DB30は作図システム100の外であってもよい。同様に評価装置40が作図システム100の外であってもよい。
【0018】
作図システム100は特定の評価装置40からの出力を受けることにしたが、評価装置40としていろいろな評価手法による複数の装置を切り替えて利用できる構成としてもよい。その場合、属性決定部14の内部ないし入力段にセレクタを設ければよい。
【0019】
実施例では知的財産の例として特許を考えた。しかし、本発明は特許に限らず、著作権やノウハウなども含めた知的財産全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0020】
10 作図装置、 12 位置決定部、 14 属性決定部、 16 描画部、 20 GUI、 30 特許DB、 40 評価装置、 100 作図システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
知的財産の分布をバブルチャートによって描く際、知的財産の価値に関する評価結果をバブルの属性に反映することを特徴とする作図方法。
【請求項2】
知的財産の分布をバブルチャートによって描く装置において、
バブルチャートの縦軸および横軸に当たるパラメータによってバブルを描くべき位置を決定する位置決定部と、
知的財産の価値に関する評価結果をバブルの属性に反映する属性決定部と、
を備えることを特徴とする作図装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置において、前記属性決定部は、知的財産の価値をあるバブルの属性に反映する際、そのバブルに含まれるべき知的財産それぞれの評価結果の集計値を反映することを特徴とする作図装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−180813(P2011−180813A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43994(P2010−43994)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(510056113)株式会社フォーカルワークス (6)
【Fターム(参考)】