説明

作業ロールシフト機能を具備した圧延機

【課題】一端が先細り状に形成される作業ロールをその軸方向にシフトさせ、圧延材のエッジドロップを制御する際に、圧延材の幅方向両端部による作業ロールへの磨耗傷の発生を抑えることにより、その表面に転写傷のない高品質の圧延材を圧延することができる作業ロールシフト機能を具備した圧延機を提供する。
【解決手段】ロール先端に向かうに従ってロール径が漸次小さくなる先細り部31b,32bをロール胴部31a,32aの一端に有し、且つ、先細り部31b,32bがその軸方向において反対側に位置するように圧延材1を挟持する上下一対の作業ロール22a,22bと、作業ロール22a,22bをその軸方向にシフトさせるロールシフト装置40,50とを有するリバース圧延機11であって、作業ロール22a,22bにおけるロール胴部31a,32aの表面を、セラミックス材または超硬合金材で形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一端が先細り状に形成される作業ロールをその軸方向にシフトさせることにより、圧延材のエッジドロップを制御する作業ロールシフト機能を具備した圧延機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、圧延機の作業ロールで圧延すると、圧延材の幅方向の板厚分布においては、圧延時の塑性流動に起因して、その両端部近傍が中央部に比べて薄くなる、所謂、エッジドロップと称する現象が発生する。圧延された圧延材には、所望の板厚精度が要求されているが、特に、現在では、圧延製品の高品質化、高精度化がますます高くなっていることから、板厚精度に対する高精度化の要求は、その幅方向の板厚分布においても厳しくなる一方にある。
【0003】
そこで、従来から、圧延後における圧延材の幅方向両端部のエッジドロップを、より精度良く制御するようにした技術が提供されている。そして、このエッジドロップを制御する手段として、一端が先細り状に形成される作業ロールをその軸方向にシフトさせる作業ロールシフト法が通常採用されており、このような作業ロールシフト法は、一般的に、タンデム圧延機に適用されている。
【0004】
これを具体的に説明すると、図17に示すように、タンデム圧延機300は、第1圧延スタンド301、第2圧延スタンド302、第3圧延スタンド303、第4圧延スタンド304を備えており、各圧延スタンド301〜304は、上下一対の作業ロール310a,310bを回転可能に支持している。作業ロール310a,310bは、円柱状のロール胴部311a,312aと、このロール胴部311a,312aの一端に形成される先細り部311b,312bとから構成されており、先細り部311b,312bは、そのテーパ面の開始位置となるロール肩部311c,312cを有している。なお、作業ロール310a,310bは、先細り部311b,312bがその軸方向において反対側に配置されるように、設けられている。
【0005】
そして、このようなタンデム圧延機300を用いて圧延材1圧延する場合には、圧延材1を各圧延スタンド301〜304の作業ロール310a,310b間に通過させることにより、その板厚が減じられることになる。これにより、第1圧延スタンド301では、板厚が厚い圧延材1の幅方向両端内部まで塑性変形が及ぶため、この第1圧延スタント301におけるロール肩部311c,312cのシフト位置は、圧延材1の幅方向両端部からその内側の最も深い位置(距離δ1)となり、第2圧延スタンド212におけるそのシフト位置は、それよりも浅い位置(距離δ2)となり、第3圧延スタンド213におけるそのシフト位置は、更にそれよりも浅い位置(δ3)となり、第4圧延スタンド214におけるそのシフト位置は、また更にそれよりも浅い位置(δ4)となる。
【0006】
即ち、各圧延スタンド301〜304におけるロール肩部311c,312cのシフト位置は、前段の第1圧延スタンド301から後段の第4圧延スタンド304に向かうに従って、圧延材1の減厚に伴って塑性変形したその幅方向両端部の移行に合わせて、(δ1>δ2>δ3>δ4)となるように段階的にずれて設定されている。従って、各圧延スタンド301〜304における圧延材1の幅方向両端部の板厚は、その幅方向中央部の板厚よりも、幾何学的に増厚されるため、結果として、圧延後における圧延材1の幅方向両端部のエッジドロップは抑制されることになる。
【0007】
これに対して、上述した作業ロールシフト法を、1つの圧延スタンドからなるリバース圧延機に適用してみることにする。図18(a),(b),(c)に示すように、リバース圧延機350は、圧延材1を作業ロール310a,310b間に複数回往復通過させて複数回圧延するものである。これにより、そのロール肩部311c,312cのシフト位置は、圧延材1の幅方向両端部の内側の最も深い位置から、圧延材1の減厚に伴って塑性変形したその幅方向両端部の移行に合わせて、(δ1>δ2>δ3)となるように段階的にずらす必要がある。
【0008】
しかしながら、図18(a)に示すように、初回パス時において、ロール胴部311a,312aにおける先細り部311b,312bに対して反対側の端部と、圧延材1の幅方向両端部(エッジ部)とが接触することになる。この結果、従来から、ハイス鋼(ビッカース硬さ900HV)で形成される作業ロール310a,310bのロール胴部311a,312aの端部には、磨耗傷Rが発生してしまう。この磨耗傷Rは、特に、圧延荷重を高く設定する硬質材または中硬質材の圧延や、パス回数を重ねることによって加工硬化する軟質材においても顕著となる。
【0009】
また、図18(b),(c)に示すように、パス回数を重ねる毎にロール肩部311c,312cをシフトするに伴って、ロール胴部311a,312aの磨耗傷Rも、圧延材1の幅方向両端部からその内側に向けて段階的にシフトされてしまう。これにより、圧延材1におけるロール胴部311a,312aによって圧延される表面には、前回までのパス回数分の磨耗傷Rが転写されることになり、転写傷Sが発生することになる。
【0010】
一方、従来から、作業ロールを超硬合金材で形成することにより、ロール表面の高硬度化を図るようにした技術が提供されている。このような作業ロールは、例えば、特許文献1,2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−34690号公報
【特許文献2】特許第3444063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、引用文献1に記載された作業ロールは、酸洗処理前の冷間圧延時に使用されるものであって、その材質を超硬合金材とすることにより、圧延材表面に付着した熱延スケールをその圧下力によって破砕剥離させることを目的としている。また、引用文献2に記載された作業ロールは、タンデム圧延機に設けられるものであって、その材質を超硬合金材とすることにより、圧延時における圧延材の磨耗粉の発生を抑え、圧延材表面の清浄度を高めることを目的としている。即ち、上記従来の作業ロールは、作業ロールシフト法に適用したものではなかった。
【0013】
従って、本発明は上記課題を解決するものであって、一端が先細り状に形成される作業ロールをその軸方向にシフトさせ、圧延材のエッジドロップを制御する際に、圧延材の幅方向両端部による作業ロールへの磨耗傷の発生を抑えることにより、その表面に転写傷のない高品質の圧延材を圧延することができる作業ロールシフト機能を具備した圧延機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決する第1の発明に係る作業ロールシフト機能を具備した圧延機は、
ロール先端に向かうに従ってロール径が漸次小さくなる先細り部をロール胴部の一端に有し、且つ、前記先細り部がその軸方向において反対側に位置するように圧延材を挟持する上下一対の作業ロールと、前記作業ロールをその軸方向にシフトさせるロールシフト手段とを有する圧延スタンドを、少なくとも1スタンド以上備えた作業ロールシフト機能を具備した圧延機であって、
前記作業ロールは、少なくともロール胴部の表面が、セラミックス材または超硬合金材で形成される
ことを特徴とする。
【0015】
上記課題を解決する第2の発明に係る作業ロールシフト機能を具備した圧延機は、
ロール先端に向かうに従ってロール径が漸次小さくなる先細り部をロール胴部の一端に有し、且つ、前記先細り部がその軸方向において反対側に位置するように圧延材を挟持する上下一対の作業ロールと、前記作業ロールをその軸方向にシフトさせるロールシフト手段とを有する圧延スタンドを、少なくとも1スタンド以上備えた作業ロールシフト機能を具備した圧延機であって、
前記作業ロールは、少なくともロール胴部の表面が、ビッカース硬さで、1200HV以上で形成される
ことを特徴とする。
【0016】
上記課題を解決する第3の発明に係る作業ロールシフト機能を具備した圧延機は、
前記ロールシフト手段は、2重偏心構造のベアリングを有する
ことを特徴とする。
【0017】
上記課題を解決する第4の発明に係る作業ロールシフト機能を具備した圧延機は、
前記作業ロールは、そのロール径と圧延材の板幅との比が、0.03〜0.1となる小径ロールである
ことを特徴とする。
【0018】
上記課題を解決する第5の発明に係る作業ロールシフト機能を具備した圧延機は、
少なくとも最終圧延スタンドの出側に設けられ、圧延材の幅方向両端部の板厚を検出する検出手段を備え、
前記検出手段により検出された圧延材の板厚に応じて、前記作業ロールの先細り部のシフト位置を制御する
ことを特徴とする。
【0019】
上記課題を解決する第6の発明に係る作業ロールシフト機能を具備した圧延機は、
前記圧延スタンドは、圧延材の搬送方向を逆転させながら複数パス多重圧延を行う可逆式圧延スタンドであって、
前記ロールシフト手段は、圧延材のパス毎に前記作業ロールを段階的にシフトさせる
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
従って、本発明に係る作業ロールシフト機能を具備した圧延機によれば、作業ロールにおいて、少なくともロール胴部の表面硬度を高くすることにより、先細り部を有する作業ロールをその軸方向にシフトさせ、圧延材のエッジドロップを制御する際に、圧延材の幅方向両端部(エッジ部)によるロール胴部への磨耗傷の発生を抑えることができるので、その表面に転写傷のない高品質の圧延材を圧延することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施例に係る6段リバース圧延機の正面図である。
【図2】図1のA−A矢視断面図である。
【図3】図2のB−B矢視断面図である。
【図4】本発明の第2実施例に係る6段リバース圧延機の正面図である。
【図5】本発明の第3実施例に係る4段リバース圧延機の正面図である。
【図6】図5のC−C矢視断面図である。
【図7】本発明の第4実施例に係る20段リバース圧延機の正面図である。
【図8】図7のD−D矢視断面図である。
【図9】図8のE−E矢視断面図である。
【図10】(a)〜(c)に向かうに従って圧延材の板幅が小さくなるときにおける駆動側に配置したスラストベアリングがシフトするときの様子を示した図である。
【図11】本発明の第5実施例に係る20段リバース圧延機の正面図である。
【図12】図11のF−F矢視断面図である。
【図13】本発明の第6実施例に係る12段リバース圧延機の正面図である。
【図14】板厚計測器を備えたリバース圧延機の正面図である。
【図15】板厚計測器を備えたリバース圧延機の側面図である。
【図16】板厚計測器を備えたタンデム圧延機の正面図である。
【図17】従来のタンデム圧延機における作業ロールシフト方法の説明図である。
【図18】従来のリバース圧延機に作業ロールシフト方法を適用した場合の説明図であって、(a)〜(c)は1パス目〜3パス目における磨耗傷及び転写傷の発生の様子を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る作業ロールシフト機能を具備した圧延機について、図面を用いて詳細に説明する。
【実施例1】
【0023】
先ず、第1実施例について、図1乃至図3を用いて説明する。
【0024】
図1及び図2に示すように、6段圧延機であるリバース圧延機11は、1つの圧延スタンドから構成されており、左右(駆動側、操作側)一対のハウジング21a,21bを有している。ハウジング21a,21b内には、上下一対の作業ロール22a,22b、中間ロール23a,23b、補強ロール24a,24bが回転可能に支持されている。
【0025】
作業ロール22a,22bは、それぞれ中間ロール23a,23bに接触支持されており、この中間ロール23a,23bは、それぞれ補強ロール24a,24bに接触支持されている。また、詳細は後述するが、作業ロール22a,22b及び中間ロール23a,23bの外側には、ロールシフト装置(ロールシフト手段)40,50,60,70が設けられている。そして、リバース圧延機11では、図示しない駆動装置によって駆動回転(正転及び逆転)される作業ロール22a,22b間において、圧延材1を複数回に亘って往復通過させることにより、当該圧延材1を所定の板厚及び板幅に圧延するようになっている。
【0026】
作業ロール22a,22bは、円柱状のロール胴部31a,32aと、このロール胴部31a,32aの一端に形成されるテーパ状の先細り部31b,32bと、ロール胴部31a,32aの他端に形成されるロールネック部31d,32dと、先細り部31b,32bの先端に形成されるロールネック部31e,32eとから構成されている。また、先細り部31b,32bは、そのテーパ面の開始位置(起点)となるロール肩部31c,32cを有している。なお、作業ロール22a,22bは、先細り部31b,32bがその軸方向において反対側に位置するように配置されている。
【0027】
ここで、ロール胴部31a,32a及び先細り部31b,32bの表面は、圧延材1を圧延す際に使用されるものであるが、作業ロール22a,22bにおいては、少なくともロール胴部31a,32aの表面(表層)が、高硬度材であるセラミックス材または超硬合金材(例えば、WC−Co系)で形成されている。また、その表面硬度は、ビッカース硬さで、1200HV以上となっており、好ましくは、1600HV程度となっている。なお、先細り部31b,32bの表面も、セラミックス材または超硬合金材で形成し、その表面硬度を、ビッカース硬さで、1200HV以上としても構わない。
【0028】
即ち、作業ロール22a,22bは、その表層部分が、セラミックス材または超硬合金材で形成されると共に、その内層(軸心)部分が、ハイス鋼等で形成された複合ロールとなっている。なお、作業ロール22a,22bにおいては、セラミックス材をその表面に溶射した表面溶射ロールとしても構わない。
【0029】
ロールシフト装置40には、作業ロール22aが回転可能で、且つ、その軸方向にシフト可能に支持されている。つまり、ロールシフト装置40は、左右一対の軸受け箱41a,41bを有しており、この軸受け箱41a,41b内には、作業ロール22aのロールネック部31d,31eが回転可能に支持されている。このうち、図3に示すように、駆動側の軸受け箱41aには、着脱フック42を介して、シフトフレーム43が着脱可能に装着されている。そして、シフトフレーム43とハウジング21aとの間には、シフトシリンダ44a,44bが介在されている。
【0030】
軸受け箱41a,41bの両側部には、前後一対のシフトブロック45a,45bが設けられている。これら対向したシフトブロック45a,45bは、ステー46により連結されると共に、ハウジング21a,21bの側壁間において、作業ロール22aの軸方向に摺動可能に支持されている。そして、シフトブロック45a,45b内には、ベンディングシリンダ47a,47bが収容されており、これらベンディングシリンダ47a,47bは、軸受け箱41a,41bの下面を押圧可能となっている。これにより、作業ロール22aには、ベンディング力が付与されるようになっている。
【0031】
従って、ロールシフト装置40においては、シフトシリンダ44a,44bを駆動させることにより、作業ロール22aはその軸方向にシフト可能になっている。そして、その軸受け箱41a,41bのシフトに伴って、シフトブロック45a,45bもシフトするため、軸受け箱41a,41bがどのようなシフト位置に配置されても、ベンディングシリンダ47a,47bによってベンディング力を付与することができ、圧延材1の幅方向の板形状制御を行うことができる。
【0032】
同様に、ロールシフト装置50には、作業ロール22bが回転可能で、且つ、その軸方向にシフト可能に支持されている。つまり、ロールシフト装置50は、左右一対の軸受け箱51a,51bを有しており、この軸受け箱51a,51b内には、作業ロール22bのロールネック部32d,32eが回転可能に支持されている。
【0033】
軸受け箱51a,51bは、図3に示した軸受け箱41a,41bと同じ支持構造となっており、軸受け箱51a,51bの両側部には、前後一対のシフトブロック55a,55bが、ハウジング21a,21bの側壁間において、作業ロール22bの軸方向に摺動可能に設けられている。そして、シフトブロック55a,55b内には、ベンディングシリンダ57a,57bが収容されており、これらベンディングシリンダ57a,57bは、軸受け箱51a,51bの下面を押圧可能となっている。これにより、作業ロール22aには、ベンディング力が付与されるようになっている。従って、ロールシフト装置50も、ロールシフト装置40と同様のシフト動作、ベンディング動作、板形状制御を行うことができる。
【0034】
また、ロールシフト装置60には、作業ロール22a,22bと同じ形状をなす先細り状の中間ロール23aが支持されている。即ち、中間ロール23aは、軸受け箱61a,61b内に回転可能に支持されると共に、ハウジング21a,21bの側壁間において、その軸方向に摺動可能に支持されている。そして、中間ロール23aには、シフトブロック65a,65bのベンディングシリンダ67a,67bによって、ベンディング力が付与されるようになっている。
【0035】
同様に、ロールシフト装置70には、作業ロール22a,22bと同じ形状をなす先細り状の中間ロール23bが支持されている。即ち、中間ロール23bは、軸受け箱71a,71b内に回転可能に支持されると共に、ハウジング21a,21bの側壁間において、その軸方向に摺動可能に支持されている。そして、中間ロール23bには、シフトブロック75a,75bのベンディングシリンダ77a,77bによって、ベンディング力が付与されるようになっている。
【0036】
従って、中間ロール23a,23bのシフト動作と相まって、この中間ロール23a,23bに対してベンディング力を付与することができるので、圧延材1の幅方向の板形状制御を更に高精度に行うことができる。
【0037】
更に、補強ロール24aは、軸受け箱25a,25b内に回転可能に支持されている。この軸受け箱25a,25bは、ウォームジャッキ等により構成される左右一対のパスライン調整装置27a,27bを介して、ハウジング21a,21bに支持されている。即ち、パスライン調整装置27a,27bを駆動することにより、圧延材1のパスラインを上下方向に調整可能になっている。
【0038】
一方、補強ロール24bは、軸受け箱26a,26b内に回転可能に支持されている。この軸受け箱26a,26bは、左右一対の圧下用油圧シリンダ28a,28bを介して、ハウジング21a,21bに支持されている。即ち、圧下用油圧シリンダ28a,28bを駆動することにより、その圧下荷重を、中間ロール23a,23bから作業ロール22a,22bを介して、または、直接、作業ロール22a,22bから圧延材1に伝達するようになっている。
【0039】
従って、リバース圧延機11を用いて圧延材1を圧延する場合には、圧延材1を作業ロール22a,22b間において複数回に亘って往復通過させる。そして、この圧延時においては、作業ロール22a,22bを徐々にシフトさせることになるが、そのロール肩部31c,32cのシフト位置は、圧延材1の両端部の内側の最も深い位置から、圧延材1の減厚に伴って塑性変形したその両端部の移行に合わせて段階的に制御される。これにより、圧延材1のエッジドロップを低減することができる。
【0040】
このとき、ロール胴部31a,32aにおける先細り部31b,32bに対して反対側の端部と、圧延材1の幅方向両端部(エッジ部)とが接触することになるが、ロール胴部31a,32cの表面硬度が高いため、ロール肩部31c,32cが、パス回数を重ねる毎に、塑性変形した圧延材1の幅方向両端部の移行に合わせてシフトされても、そのロール胴部31a,32aへの磨耗傷R(図18参照)の発生を抑えることができる。これにより、その表面に転写傷S(図18参照)のない高品質の圧延材1を圧延することができる。
【0041】
ここで、作業ロール22a,22bにおいては、ビッカース硬さが900HVのハイス鋼の磨耗量に対して、その硬さが1.8倍の1600HVのセラミックス材または超硬合金材の磨耗量が、1/25となる試験結果を得ることができた。これにより、この試験結果に基づいて、ビッカース硬さが900HVのハイス鋼に対して、その硬さが1.3倍の1200HVの材質であれば、それに対する磨耗量を1/4に設定することができる。そこで、作業ロール22a,22bのロール胴部31a,32aの表面を、高硬度材であるセラミックス材または超硬合金材で形成し、その表面硬度を、ビッカース硬さで、1200HV以上としている。そして、このように、ロール胴部31a,32aの表面材質及び表面硬度を規定することにより、特に、圧延荷重を高く設定する電磁鋼板、ステンレス鋼板、超高張力鋼板等の硬質材、及び、中硬質材、更に、圧延により加工硬化する銅合金鋼板等の軟質材の圧延時においても、磨耗傷Rの発生を抑えることができる。
【実施例2】
【0042】
次に、第2実施例について、図4を用いて説明する。
【0043】
図4に示すように、リバース圧延機12には、中径の作業ロール22a,22bが回転可能に支持されている。これら作業ロール22a,22bの入側及び出側には、作業ロール22aと対向する支持ロール81a,81bと、作業ロール22bと対向する支持ロール91a,91bとが、回転可能に支持されている。
【0044】
作業ロール22aのロール胴部31a(図2参照)は、支持ロール81a,81bに支持されており、これら支持ロール81a,81bは、分割ベアリング82a,82bに回転可能に支持されている。一方、作業ロール22bのロール胴部32a(図2参照)は、支持ロール91a,91bに支持されており、これら支持ロール91a,91bは、分割ベアリング92a,92bに回転可能に支持されている。なお、支持ロール81a,81b,91a,91bは、入側または出側のどちらか一方に設けても構わない。
【0045】
そして、支持ロール81a,81b,91a,91bを設けることにより、作業ロール22a,22bの支持剛性を向上させることができるので、その水平方向(圧延材1の搬送方向)の撓みを抑えることができる。これにより、支持剛性が向上した分、作業ロール22a,22bを中径に形成することができる。ここで、中径ロールである作業ロール22a,22bとしては、そのロール径と圧延材1の板幅との比が、0.08〜0.25となっている。
【0046】
従って、作業ロール22a,22bのロール胴部31a,32aの表面硬度を高くすることにより、中径に形成した作業ロール22a,22bをその軸方向にシフトさせ、圧延材1のエッジドロップを低減する際にも、圧延材1の幅方向両端部によるロール胴部31a,32aへの磨耗傷Rを抑えることができる。これにより、その表面に転写傷Sのない高品質の圧延材1を圧延することができる。
【実施例3】
【0047】
次に、第3実施例について、図5及び図6を用いて説明する。
【0048】
図5及び図6に示すように、リバース圧延機13は、第1実施例に記載したリバース圧延機11から、中間ロール23a,23bと、これらをシフトするロールシフト装置60,70とを取り除いた4段圧延機となっている。
【0049】
従って、構成を簡素にしたリバース圧延機13においても、作業ロール22a,22bのロール胴部31a,32aの表面硬度を高くすることにより、先細り部31b,32bを有する作業ロール22a,22bをその軸方向にシフトさせ、圧延材1のエッジドロップを低減する際に、圧延材1の幅方向両端部によるロール胴部31a,32aへの磨耗傷Rを抑えることができる。これにより、その表面に転写傷Sのない高品質の圧延材1を圧延することができる。
【実施例4】
【0050】
次に、第4実施例について、図7乃至図10を用いて説明する。
【0051】
図7及び図8に示すように、20段圧延機であるリバース圧延機14は、1つの圧延スタンドから構成されており、左右(駆動側、作業側)一対のアウタハウジング111a,111bを有している。このアウタハウジング111a,111b内には、上下一対の作業ロール121a,121b、上下二対の第1中間ロール122a,122b、上下三対の第2中間ロール123a,123b、上下四対のバッキングベアリング軸124a,124bが回転可能に支持されている。
【0052】
作業ロール121a,121bは、それぞれ第1中間ロール122a,122bに接触支持されており、この第1中間ロール122a,122bは、それぞれ第2中間ロール123a,123bに接触支持されている。また、第2中間ロール123a,123bは、バッキングベアリング軸124a,124bを回転可能に支持するバッキングベアリング125a,125bに接触支持されている。更に、バッキングベアリング軸124a,124bは、それぞれ上下四対のサドル126a,126b内に回転可能に支持されており、これらサドル126a,126bは、それぞれ上下一対の上インナハウジング112a及び下インナハウジング112bに支持されている。そして、リバース圧延機14では、連れ回り回転する作業ロール121a,121b間において、圧延材1を複数回に亘って往復通過させることにより、当該圧延材1を所定の板厚及び板幅に圧延するようになっている。
【0053】
上インナハウジング112aは、ウォームジャッキ等により構成される左右二対のパスライン調整装置113a,113bを介して、アウタハウジング111a,111bに支持されている。即ち、パスライン調整装置113a,113bを駆動することにより、圧延材1のパスラインを上下方向に調整可能になっている。
【0054】
一方、下インナハウジング112bは、左右一対の圧下用油圧シリンダ114a,114bを介して、アウタハウジング111a,111bに支持されている。即ち、圧下用油圧シリンダ114a,114bを駆動することにより、その圧下荷重を、第2中間ロール123a,123b、第1中間ロール122a,122b、作業ロール121a,121bを介して、圧延材1に伝達するようになっている。
【0055】
作業ロール121a,121bは、円柱状のロール胴部131a,132aと、このロール胴部131a,132aの一端に形成されるテーパ状の先細り部131b,132bとから構成されている。また、先細り部131b,132bは、そのテーパ面の開始位置(起点)となるロール肩部131c,132cを有している。なお、作業ロール121a,121bは、先細り部131b,132bがその軸方向において反対側に位置するように配置されている。
【0056】
ここで、ロール胴部131a,132a及び先細り部131b,132bの表面は、圧延材1を圧延す際に使用されるものであるが、作業ロール121a,121bにおいては、少なくともロール胴部131a,132aの表面(表層)が、高硬度材であるセラミックス材または超硬合金材(例えば、WC−Co系)で形成されている。また、その表面硬度は、ビッカース硬さで、1200HV以上となっており、好ましくは、1600HV程度となっている。なお、先細り部131b,132bの表面も、セラミックス材または超硬合金材で形成し、その表面硬度を、ビッカース硬さで、1200HV以上としても構わない。
【0057】
即ち、作業ロール121a,121bは、その表層部分が、セラミックス材または超硬合金材で形成されると共に、その内層(軸心)部分が、ハイス鋼で形成された複合ロールとなっている。なお、作業ロール121a,121bにおいては、セラミックス材をその表面に溶射した表面溶射ロールとしても構わない。
【0058】
また、作業ロール121a,121bの外側には、ロールシフト装置(ロールシフト手段)140が設けられている。このロールシフト装置140は、2重偏心構造のスラストベアリング141a,141b,141c,141d、シフト駆動部142a,142b,142c,142d、ブラケット143a,143bから構成されている。
【0059】
スラストベアリング141a,141bは、作業ロール121aのロール胴部131a及び先細り部131bの端面に接触しており、鉛直軸周りに回転可能で、且つ、作業ロール121aの軸方向にシフト可能にブラケット143a,143bに支持されている。そして、ブラケット143a,143bの上面には、シフト駆動部142a,142bが設けられており、詳細は後述するが、このシフト駆動部142a,142bは、スラストベアリング141a,141bに連結されている。
【0060】
同様に、スラストベアリング141c,141dは、作業ロール121bのロール胴部132a及び先細り部132bの端面に接触しており、鉛直軸周りに回転可能で、且つ、作業ロール121bの軸方向にシフト可能にブラケット143a,143bに支持されている。そして、ブラケット143a,143bの下面には、シフト駆動部142c,142dが設けられており、詳細は後述するが、このシフト駆動部142c,142dは、スラストベアリング141c,141dに連結されている。
【0061】
なお、スラストベアリング141a〜141d及びシフト駆動部142a〜142dは同じ構成をなしているため、これらを代表して、駆動側上部に配置されるスラストベアリング141a、シフト駆動部142aについて、図9及び図10を用いて以下に説明することとする。
【0062】
図9及び図10(a),(b),(c)に示すように、スラストベアリング141aは、ブラケット143aに回転可能に支持される軸161を有している。この軸161の径方向外側には、内側偏心リング162、外側偏心リング163、ベアリング内輪164、複数のころ165、ベアリング外輪166が、順に配置されており、これらは全て回転可能に支持されている。更に、ベアリング外輪166は、内側偏心リング162及び外側偏心リング163を介して、軸161に回転可能に支持されると共に、ベアリング内輪164及びころ165を介して軸161に回転可能に支持されている。なお、軸161、内側偏心リング162、外側偏心リング163は、互いの中心軸が偏心するように、配置可能となっている。
【0063】
軸161と内側偏心リング162とは、内側キー167により結合されている。内側キー167の上部には、小径ピニオン168が設けられおり、この小径ピニオン168は、軸161の中心軸と同軸上に回転可能に支持されている。また、外側偏心リング163には、当該外側偏心リング163の径方向に延びる長孔163aが形成されており、この長孔163aには、外側キー169が摺動可能に嵌入されている。外側キー169の上部には、大径ピニオン170が設けられており、この大径ピニオン170は、軸161の中心軸と同軸上に回転可能に支持されている。
【0064】
一方、シフト駆動部142aは、前後一対のシフト用油圧シリンダ181,182から構成されている。シフト用油圧シリンダ181,182は、シリンダ部181a,182aと、このシリンダ部181a,182a内に摺動可能に支持されるロッド181b,182bと、このロッド181b,182bの先端に設けられるラック181c,182cとを有している。そして、ラック181cは、小径ピニオン168と噛み合っており、ラック182cは、大径ピニオン170と噛み合っている。
【0065】
従って、シフト用油圧シリンダ181,182を、同時に短縮または伸長することにより、内側偏心リング162と外側偏心リング163とを、互いに同じ回転角度で、且つ、逆方向に回転させることができる。この結果、スラストベアリング外輪166は、偏心することなく、作業ロール121aの軸方向のみにシフト可能になっている。
【0066】
即ち、シフト駆動部142a,142bを駆動させ、スラストベアリング141a,141bを回転させながらシフトさせることにより、その両者に挟み込まれた作業ロール121aをその軸方向にシフトさせることができる。また、シフト駆動部142c,142dを駆動させ、スラストベアリング141c,141dを回転させることにより、その両者に挟み込まれた作業ロール121bをその軸方向にシフトさせることができる。
【0067】
なお、図10(a)に示したスラストベアリング141a,141cのシフト状態は、圧延材1の板幅が比較的大きいときであり、図10(c)に示したスラストベアリング141a,141cのシフト状態は、圧延材1の板幅が比較的小さいときである。
【0068】
更に、第1中間ロール122a,122bの外側にも、図示しないロールシフト装置(ロールシフト手段)が設けられている。即ち、第1中間ロール122a,122bは、回転可能で、且つ、その軸方向にシフト可能にそのロールシフト装置に支持されている。
【0069】
従って、リバース圧延機14を用いて圧延材1を圧延する場合には、圧延材1を作業ロール121a,121b間において複数回に亘って往復通過させる。そして、この圧延時においては、作業ロール121a,121bを徐々にシフトさせることになるが、そのロール肩部131c,132cのシフト位置は、圧延材1の両端部の内側の最も深い位置から、圧延材1の減厚に伴って塑性変形したその両端部の移行に合わせて段階的に制御される。これにより、圧延材1のエッジドロップを低減することができる。
【0070】
このとき、ロール胴部131a,132aにおける先細り部131b,132bに対して反対側の端部と、圧延材1の幅方向両端部(エッジ部)とが接触することになるが、ロール胴部131a,132bの表面硬度が高いため、ロール肩部131c,132cが、パス回数を重ねる毎に、塑性変形した圧延材1の幅方向両端部の移行に合わせてシフトされても、そのロール胴部131a,132aへの磨耗傷R(図18参照)の発生を抑えることができる。これにより、その表面に転写傷S(図18参照)のない高品質の圧延材1を圧延することができる。
【0071】
ここで、作業ロール121a,121bにおいては、ビッカース硬さが900HVのハイス鋼の磨耗量に対して、その硬さが1.8倍の1600HVのセラミックス材または超硬合金材の磨耗量が、1/25となる試験結果を得ることができた。これにより、この試験結果に基づいて、ビッカース硬さが900HVのハイス鋼に対して、その硬さが1.3倍の1200HVの材質であれば、それに対する磨耗量を1/4に設定することができる。そこで、作業ロール121a,121bのロール胴部131a,132aの表面を、高硬度材であるセラミックス材または超硬合金材で形成し、その表面硬度を、ビッカース硬さで、1200HV以上としている。そして、このように、ロール胴部131a,132aの表面材質及び表面硬度を規定することにより、特に、圧延荷重を高く設定する電磁鋼板、ステンレス鋼板等の硬質材の圧延時において、磨耗傷Rの発生を抑えることができる。
【0072】
また、リバース圧延機14では、各ロール121a,121b,122a,122b,123a,123b及びバッキングベアリング軸124a,124bを、20段のクラスター配置としたことにより、作業ロール121a,121bの支持剛性が向上した分、作業ロール121a,121を小径に形成することができる。そして、作業ロール121a,121bが小径になることで、ロールネック部を形成させることができなくとも、2重偏心構造のスラストベアリング141a〜141dを設けることにより、作業ロール121a,121bを、簡素な構成で、且つ、省スペースでその軸方向にシフトさせることができる。ここで、小径ロールである作業ロール121a,121bとしては、そのロール径と圧延材1の板幅との比が、0.03〜0.10となっている。
【0073】
更に、インナハウジング112a,112bを、上下方向に分割配置した上下分割構造とすることにより、作業ロール121a,121b間の隙間を大きくすることができるので、圧延材1の板切れ時におけるコブル処理の作業性を向上させることができる。
【実施例5】
【0074】
次に、第5実施例について、図11及び図12を用いて説明する。
【0075】
図11及び図12に示すように、20段圧延機であるリバース圧延機15は、上下一体構造のモノブロックハウジング191を有している。上側のバッキングベアリング125aのうち、両側に配置されるバッキングベアリング125aは、パスライン調整用のサドル192aを介して、モノブロックハウジング191に支持されており、中央に配置されるバッキングベアリング125aは、圧下用のサドル192bを介して、モノブロックハウジング191に支持されている。このように、モノブロックハウジング191を上下一体構造とすることにより、リバース圧延機15の簡素化及び小型化を図ることができる。
【0076】
従って、簡素化及び小型化を図ったリバース圧延機15においても、作業ロール121a,121bのロール胴部131a,132aの表面硬度を高くすることにより、先細り部131b,132bを有する作業ロール121a,121bをその軸方向にシフトさせ、圧延材1のエッジドロップを低減する際に、圧延材1の幅方向両端部によるロール胴部131a,132aへの磨耗傷Rを抑えることができる。これにより、その表面に転写傷Sのない高品質の圧延材1を圧延することができる。
【実施例6】
【0077】
次に、第6実施例について、図13を用いて説明する。
【0078】
図13に示すように、リバース圧延機16は、第4,5実施例に記載したリバース圧延機14,15から、第2中間ロール123a,123bを取り除いた12段圧延機となっている。なお、バッキングベアリング軸124a,124b及びバッキングベアリング125a,125bは、上下3対となっている。このように、各ロール121a,121b,122a,122b及びバッキングベアリング軸124a,124bを、12段のクラスター配置としたことにより、リバース圧延機16の簡素化及び小型化を図ることができる。
【0079】
従って、簡素化及び小型化を図ったリバース圧延機16においても、作業ロール121a,121bのロール胴部131a,132aの表面硬度を高くすることにより、先細り部131b,132bを有する作業ロール121a,121bをその軸方向にシフトさせ、圧延材1のエッジドロップを低減する際に、圧延材1の幅方向両端部によるロール胴部131a,132aへの磨耗傷Rを抑えることができる。これにより、その表面に転写傷Sのない高品質の圧延材1を圧延することができる。
【0080】
ここで、図14に示すように、上述した第1〜第6実施例におけるリバース圧延機11〜16の作業ロール22a,22b及び121a,121b(各圧延スタンド)の出側には、板厚計測器(検出手段)200が配置されている。この板厚計測器200は、圧延材1の幅方向両端部(エッジ部)における各1点または各複数点での板厚を計測するものである。
【0081】
次いで、エッジドロップ低減方法について、作業ロール22a,22bを用いた場合を代表して、図15を用いて説明する。なお、図15に示すように、作業ロール22a,22bのロール肩部31c,32cと圧延材1の幅方向両端部との間の距離を、駆動側でδd,操作側でδwとする。
【0082】
そして、板厚計測器200によって計測された圧延材1の操作側端部の板厚が、所定の板厚よりも薄い場合には、そのロール肩部31cが圧延材1の幅方向中心側に移動するように、作業ロール22aをその軸方向にシフトさせる。即ち、距離δwが大きくなるように、作業ロール22aをシフトさせる。このとき、作業ロール22aに対向したスラストベアリング141aは、図10(c)に示したシフト状態となっている。
【0083】
一方、板厚計測器200によって計測された圧延材1の操作側端部の板厚が、所定の板厚よりも厚い場合には、そのロール肩部31cが圧延材1の幅方向外側に移動するように、作業ロール22aをその軸方向にシフトさせる。即ち、距離δwが小さくなるように、作業ロール22aをシフトさせる。このとき、作業ロール22aに対向したスラストベアリング141aは、図10(a)に示したシフト状態となっている。
【0084】
また、板厚計測器200によって計測された圧延材1の駆動側端部の板厚が、所定の板厚よりも薄い場合には、そのロール肩部32cが圧延材1の幅方向中心側に移動するように、作業ロール22bをその軸方向にシフトさせる。即ち、距離δdが大きくなるように、作業ロール22bをシフトさせる。このとき、作業ロール22bに対向したスラストベアリング141cは、図10(c)に示したシフト状態となっている。
【0085】
一方、板厚計測器200によって計測された圧延材1の駆動側端部の板厚が、所定の板厚よりも厚い場合には、そのロール肩部32cが圧延材1の幅方向外側に移動するように、作業ロール22bをその軸方向にシフトさせる。即ち、距離δdが小さくなるように、作業ロール22aをシフトさせる。このとき、作業ロール22aに対向したスラストベアリング141aは、図10(a)に示したシフト状態となっている。
【0086】
更に、図16に示すように、タンデム圧延機210の第1〜第5圧延スタンド211,212,213,214,215に、上述した作業ロール22a,22b、中間ロール23a,23b、補強ロール24a,24bを適用しても構わない。このとき、最終の第5圧延スタンド215の出側には、板厚計測器200が設けられている。これにより、圧延時において、作業ロール22a,22bにおけるロール胴部31a,32bの表面への磨耗傷Rの発生を抑えることができるため、圧延する圧延材1の板幅の制限を受けることなく、圧延を行うことができる。
【0087】
即ち、従来のように、ハイス鋼等で形成された作業ロールを用いて圧延を行う場合には、そのロール胴部の表面に磨耗傷Rが発生してしまうため、板幅が大きい圧延材から、それよりも板幅が小さい圧延材と順に圧延を行う必要があった。これに対して、作業ロール22a,22bのロール胴部31a,32aの表面硬度を高くすることにより、圧延材1の幅方向両端部によるロール胴部31a,32bへの磨耗傷Rを抑えることができるため、圧延材1の板幅の制約を受けることなく、圧延を行うことができる。これにより、圧延操業の自由度を大きくすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、圧延材の幅方向の板形状制御を行うために、作業ロールをその軸方向にシフトさせる作業ロールシフト機能を具備した圧延機に適用可能である。
【符号の説明】
【0089】
11〜16 リバース圧延機
22a,22b,121a,121b 作業ロール
31a,32a,131a,132a ロール胴部
31b,32b,131b,132b 先細り部
31c,32c,131c,132c ロール肩部
31d,31e,32d,32e ロールネック部
40,50,140 ロールシフト装置
41a,41b,51a,51b 軸受け箱
42 着脱フック
43 シフトフレーム
44a,44b シフトシリンダ
45a,45b,55a,55b シフトブロック
46 ステー
47a,47b,57a,57b ベンディングシリンダ
141a〜141d スラストベアリング
142a〜142d シフト駆動部
143a,143b ブラケット
161 軸
162 内側偏心リング
163 外側偏心リング
164 ベアリング内輪
165 ころ
166 ベアリング外輪
167 内側キー
168 小径ピニオン
169 外側キー
170 大径ピニオン
181,182 シフト用油圧シリンダ
200 板厚計測器
210 タンデム圧延機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール先端に向かうに従ってロール径が漸次小さくなる先細り部をロール胴部の一端に有し、且つ、前記先細り部がその軸方向において反対側に位置するように圧延材を挟持する上下一対の作業ロールと、前記作業ロールをその軸方向にシフトさせるロールシフト手段とを有する圧延スタンドを、少なくとも1スタンド以上備えた作業ロールシフト機能を具備した圧延機であって、
前記作業ロールは、少なくともロール胴部の表面が、セラミックス材または超硬合金材で形成される
ことを特徴とする作業ロールシフト機能を具備した圧延機。
【請求項2】
ロール先端に向かうに従ってロール径が漸次小さくなる先細り部をロール胴部の一端に有し、且つ、前記先細り部がその軸方向において反対側に位置するように圧延材を挟持する上下一対の作業ロールと、前記作業ロールをその軸方向にシフトさせるロールシフト手段とを有する圧延スタンドを、少なくとも1スタンド以上備えた作業ロールシフト機能を具備した圧延機であって、
前記作業ロールは、少なくともロール胴部の表面が、ビッカース硬さで、1200HV以上で形成される
ことを特徴とする作業ロールシフト機能を具備した圧延機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の作業ロールシフト機能を具備した圧延機において、
前記ロールシフト手段は、2重偏心構造のベアリングを有する
ことを特徴とする作業ロールシフト機能を具備した圧延機。
【請求項4】
請求項3に記載の作業ロールシフト機能を具備した圧延機において、
前記作業ロールは、そのロール径と圧延材の板幅との比が、0.03〜0.1となる小径ロールである
ことを特徴とする作業ロールシフト機能を具備した圧延機。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の作業ロールシフト機能を具備した圧延機において、
少なくとも最終圧延スタンドの出側に設けられ、圧延材の幅方向両端部の板厚を検出する検出手段を備え、
前記検出手段により検出された圧延材の板厚に応じて、前記作業ロールの先細り部のシフト位置を制御する
ことを特徴とする作業ロールシフト機能を具備した圧延機。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の作業ロールシフト機能を具備した圧延機において、
前記圧延スタンドは、圧延材の搬送方向を逆転させながら複数パス多重圧延を行う可逆式圧延スタンドであって、
前記ロールシフト手段は、圧延材のパス毎に前記作業ロールを段階的にシフトさせる
ことを特徴とする作業ロールシフト機能を具備した圧延機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2011−25299(P2011−25299A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176038(P2009−176038)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(502251784)三菱日立製鉄機械株式会社 (130)
【Fターム(参考)】