説明

作業工程間搬送装置および作業工程管理システム

【課題】 搬送対象物の作業工程に積極的に寄与し、生産性(作業効率)を向上させる搬送装置の提供、すなわち、従来は、あくまでも作業工程において従属的装置であった搬送装置を生産性(作業効率)向上のために主導的装置とすることにある。
【解決手段】 作業工程間搬送装置10は、市販のアルミフレームを使用した構造躯体20に細幅の搬送ベルト30を備えたものである。搬送ベルト30は、スピードコントロール機能を備えた駆動ローラー(駆動モーター)40により回転駆動を得て、この搬送ベルト30上に載置された搬送対象物50を縦置きにて搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
各作業と作業の間に設置されて、搬送対象物(作業対象物)を次の作業工程に搬送するための搬送装置および作業工程間搬送装置を使用した作業工程管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送装置には、以下のようなものがある。
(1)特許文献1及び特許文献2には、大型化した板材(液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等)を縦向きの状態で搬送する搬送装置が開示されている。
(2)特許文献3には、感光材料処理装置において、感光材料を露光部に搬送し、露光後に印画形成のための処理部に搬送するための感光材料搬送装置が開示されている。
(3)特許文献4には、布やシート等のウエブを搬送するピンテンタやウエブの熱処理装置等の搬出側において、ウエブの引出し操作を自動的に行えるようにしたウエブの搬送装置が開示されている。
(4)特許文献5には、選別装置を回動させて支持する物品を所定の位置で落下させて物品を傷めることなく高速かつ確実に選別する自動ピッキング装置における搬送装置(図11等)が開示されている。
(5)特許文献6には、アセタール樹脂、ABS樹脂等のプラスチックで製造したコンベアベルトが開示されており、従来、細幅のコンベアベルト(搬送ベルト)にはこのようなプラスチック製ベルトが多かった。
【0003】
【特許文献1】特開2007−246287号公報
【特許文献2】特開2006−148144号公報
【特許文献3】特開2004−061524号公報
【特許文献4】特開平6−211393号公報
【特許文献5】特開2000−318808号公報
【特許文献6】特開平9−315536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
確かに、上記特許文献のような搬送装置は、搬送対象物を搬送する装置としては極めて優れたものである。
しかしながら、あくまでも搬送対象物の品質を損なうことなく速く・確実に搬送することを目的とするものであり、搬送対象物の作業工程に積極的に寄与するものではない。
本願発明は、搬送対象物の作業工程に積極的に寄与し、生産性(作業効率)を向上させる搬送装置の提供を目的とする。すなわち、従来は、あくまでも作業工程において従属的装置であった搬送装置を生産性(作業効率)向上のために主導的装置とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、第1の発明は、スピードコントロール機能を備えた駆動モーターにより回転駆動を得た細幅の搬送ベルトを、高さ・長さ・傾斜角および搬送ベルトの交換または調整作業を、簡易かつ短時間でできることを可能とした、軽量・小型の作業工程間搬送装置である。
第2の発明は、搬送対象物の大きさ・形状ごとに搬送ベルトを平行または段違いで、2本以上の搬送ベルト設置構造を、簡易かつ短時間で増設できることを可能とした同作業工程間搬送装置である。
第3の発明は、搬送ベルトは、高負荷性で片寄り防止と導電性を持つ丸歯形歯付きまたは台形歯形歯付ベルトを搬送側または駆動伝達側に設置した同作業工程間搬送装置である。
第4の発明は、搬送対象物の作業間滞留数を多く確保するために、搬送対象物を搬送ベルト上に立てるまたは立てた状態で引っ掛けて、作業工程間の移動機能と滞留とストック機能を備えた同作業工程間搬送装置である。
第5の発明は、搬送ベルト駆動時に、音と光と印で作業者に作業標準スピードを耳と目から知らせる機能を備えた同作業工程間搬送装置である。
第6の発明は、第1〜第5の発明に係る作業工程間搬送装置を備えた作業工程管理システムであって、作業工程間に設置された各作業工程間搬送装置の搬送速度を制御する制御装置(ホストコンピュータ)を有し、その制御装置(ホストコンピュータ)は、各作業工程における1作業に要する作業時間(秒数)を設定する設定手段と、設定手段によって設定された作業時間の間隔で次の作業工程に搬送対象物を搬送する搬送速度(スピード)を各作業工程間搬送装置ごとに算出する算出手段と、算出手段によって算出された搬送速度(スピード)での搬送を各作業工程間搬送装置の駆動モーターに指示する指示手段とを備えたことを特徴とする作業工程管理システムで、簡易的な手法としては、検出した搬送ベルトの速度を電子回路により検出し、青色または緑色・黄色・赤色の3色で搬送ベルトの駆動速度を管理者が遠方からでも認識できる、同作業工程間搬送装置である。
【発明の効果】
【0006】
第1の発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)各作業工程間は、一様ではないので、「搬送ベルトの交換または調整作業を、簡易かつ短時間でできる」ことで、様々な作業工程に対応できる。
(2)すなわち、各作業工程における作業者は、背の高さが異なり、手の届く距離も異な(3)る。搬送ベルトの始点部分と終点部分の高さ(傾斜角を含む)を調整できることで、作業者が作業をし易くなる。また、作業場所・装置の高さが異なる場合もあるので、これにも対応できる。搬送ベルトの高さ(傾斜角を含む)の調整機構には、スクリューネジやアングルアジャスト機能を用いることで実施可能である。なお、傾斜角を伴う高さ調整には、搬送ベルトの長さ調整も必要になるが、これは次の長さ調整機構を用いることで実施可能である。
(4)また、各作業工程間の距離は作業現場のレイアウトや装置等によってそれぞれ異なる。この場合であっても、搬送ベルトの長さを調整することで対応できる。搬送ベルトの長さ調整には、搬送ベルトを取り替える方法と、ローラーとローラーの間に第3の滑車を備えて長さ調整する方法がある。
(5)さらに、搬送対象物によって使用される搬送ベルトは異なってくる。このため、搬送ベルトの交換が自在となれば、この作業工程間搬送装置の利用範囲は極めて広がる。搬送ベルトに一般的なコンベアベルトではなく、伝導ベルト(平ベルト,歯付きベルト等)を利用することで、種々の幅・長さのベルトを利用することができる(コンベアベルトは500mm単位でしかないのに対し、動力ベルトは50mm単位である)。
(6)搬送ベルトの回転駆動動力に「駆動モーター」を使用し、この「駆動モーター」がスピードコントロール機能を備えることで、搬送対象物の搬送速度を制御できる。すなわち、各作業工程における作業時間の差をこの作業工程間搬送装置によって埋めることができ、結果的に搬送対象物が各作業工程間を均等に流れ、生産効率を向上させる。なお、搬送ベルトに常に一定のテンションを与えるためにテンションコントロール機能を有する。
(7)一方、作業者にとっては、搬送ベルトから搬送対象物を取り出し、加工作業を施して、再び搬送ベルトへ載置する一連の作業工程に集中できて精神的な負担が少ない(台車を使った搬送等に神経を使う必要がない)。また、搬送対象物を取り出したり載置する場合に、いちいち腰を屈めたりする必要が無く、体への負担も少ない。従って、作業者が長時間・長期間の勤務を無理なく行えるようになる。すなわち、熟練者(時間当たりの加工数量が多い者)および未熟練者に身体的な故障・負担を与えないで、継続勤務させるためには、最大限の良好な作業環境を作り、提供することが熟練者の確保・未熟練者の育成につながる。本願発明に係る搬送装置によれば、この熟練者および未熟練者が身体的・精神的に健康的に作業ができ、生産数量を増加できることを特徴とする。
(8)構造躯体に「市販のアルミフレーム」を使用することで、製造コストを下げることができる。
【0007】
第2の発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)搬送対象物の大きさ・形状によっては、細幅の搬送ベルトでは搬送不可又は不安定な状態となってしまうおそれがある。この場合の解決手段として、搬送ベルトを平行または段違いで2本以上設置することで、搬送対象物と搬送ベルトの接点が増え、搬送可能又は安定した状態にできる。
(2)増設する搬送ベルトの動力は、別途新たな動力(駆動モーター)を設置しても、既存の動力から分岐ローラーによって動力を取り出してもよい。
(3)この「搬送ベルト設置構造」を簡易かつ短時間で増設するためには、増設部品をユニット化したユニット構造とすればよい。
【0008】
第3の発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)搬送ベルトに「高負荷性」のものを使用することで、搬送ベルトの接合部の伸びに配慮することなく重量のある搬送対象物にも対応できる。また、個々には軽量であっても多数近接状態で搬送することで重量が増加する場合にも対応できる。
(2)また、搬送ベルトに「片寄り防止」のものを使用することで、ベルトに搬送対象物が載っても安定した状態で搬送できる。
(3)さらに、搬送ベルトに「導電性」のものを使用することで、搬送対象物が載っても帯電による静電気の発生がなく、搬送対象物へのゴミの付着を防止できる。すなわち、搬送ベルトはその回転によって静電気の発生要因となる。これに対して、搬送ベルトが導電性であれば摩擦および非導電物質の接触または剥離において静電気が発生しても、帯電せずに静電気も発生しない。
(4)搬送ベルトに伝導ベルトである「歯付きベルト」を使用すること、さらには該歯付きベルトの歯側を外周部に使うことは従来にない発想である。搬送用のベルトには、コンベアベルトがあるからである。しかしながら、市販されている伝動ベルトは、コンベアベルトにはないサイズのものが多々あり、搬送ベルトに種々のサイズが要求される本願発明の搬送装置にはまさに打って付けの搬送部材である。なお、該歯付きベルトで太くして使う方法としては、ローラーに細い搬送ベルトを複数並べて使用する方法もある。この場合に、ローラーに搬送ベルト用の溝を形成するとベルトの動作が安定するとともに「歯付きベルト」を内側で使うと駆動ローラーと隣り合う搬送ベルトの速度が一定速度で駆動し、「両面歯付きベルト」を使うこともできる。
(5)特に、歯付きベルトの歯を搬送側(反駆動伝達側)に設置することで、搬送ベルトの表面に凹凸が形成されて、搬送対象物の載置に都合がよい。例えば、搬送対象物どうしが重なり合うことがなく(接触防止)、搬送先の作業者が搬送対象物を取り上げやすい。また、搬送ベルトに傾斜角を設けた場合、傾斜による搬送対象物の移動を防止できる。
(6)ベルトは、汎用品なので磨耗しても特別注文することなく入手でき、コストにおいても低価格で入手・交換できる。
【0009】
第4の発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)搬送対象物を搬送ベルト上に立てるまたは立てた状態で引っ掛けることで(縦置き)、作業工程間の移動機能を備えながら、搬送対象物の滞留とストック機能を兼ね備えることができる。すなわち、平置きの場合に比較して、搬送対象物を搬送ベルト上に極めて多く載せられる。その結果、搬送装置が単なる搬送機能だけでなく、搬送対象物の滞留・ストック機能を備えることになり、各作業工程における作業時間の差をこの作業工程間搬送装置によって埋めることができる。
(2)また、その他に縦置きの有効性としては、一定間隔で搬送対象物を送り出すことができ、搬送先の作業者が搬送対象物に傷を付けることなく取り上げやすいという点がある。
(3)チェック工程や搬送対象物の異物付着除去する際の表裏の取り次ごうが、作業者の作業しやすい搬送対象物の表または裏の面を搬送進行方向面にして搬送することができ、作業者の作業速度を向上させることができる。すなわち、各作業者の間に搬送装置を介在させることで、各作業工程において搬送対象物の表裏を交互にできる効果がある。
(4)搬送対象物を搬送ベルト上に立てた状態で搬送する装置としては、先の特許文献1及び2がある。しかし、これらは、立てられた状態の板材の下端を支持して搬送する「搬送駆動装置」と、該立てられた状態の板材の面の全体に流体圧を作用させて該板材を構造物と非接触の状態で支持する「流体ガイド」で板材(搬送対象物)を支持している。従って、かなり大がかりな構造となっている。これに対して、本願発明の搬送装置では、搬送バンドに搬送対象物を縦方向に自立した状態で支持する構造であり、先の特許文献1及び2とは全く異なる構造となっている。
【0010】
第5の発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)「音」は、作業者に対し作業リズムを与えるための音を提供する。作業工程の管理者が作業スピードをコントロールする場合には、管理者が「音」を調整することで作業リズムを変えるようにするとよい。
(2)「光」は、作業者に対し作業リズムを与えるための光を提供する(例:1工程ごとに光を点滅させるようにする)。作業工程の管理者が作業スピードをコントロールする場合には、管理者が「光」を調整することで作業リズムを変えるようにするとよい。
(3)「印」は、作業者に対し作業リズムを与えるための印を提供する(例:搬送ベルトに搬送対象物を載置する場所として印を付けておく)。作業工程の管理者が作業スピードをコントロールする場合には、管理者が「印」または「色による印」を調整することで作業リズムを変えるようにするとよい。
(4)「音」「光」「印」はそれぞれ単独の使用でも効果を有するが、いづれかの組み合わせで使うこともできる。
【0011】
第6の発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)各作業者の作業時間に合わせて各作業工程間搬送装置の搬送速度をコントロールして、各作業工程における作業時間の差をこの作業工程間搬送装置によって埋めることができ、結果的に搬送対象物が各作業工程間を均等に流れ、生産効率を向上させることを目的とするシステムである。
(2)作業工程の管理者が作業工程間搬送装置の搬送速度をコントロールして、作業工程間搬送装置主導で、各作業工程に要する時間を強制的にコントロールし、生産効率を向上させることも可能である。
(3)また、搬送ベルトの駆動速度は設定するモーターの回転速度から読み込む電子回路で検出し、ベルト搬送速度を青色または緑色の設定速度での運転・黄色の設定速度より遅い状態での運転・赤色の搬送コンベアーの停止状態が色分けして表示され、生産管理者が遠方から搬送速度の遅延が確認できるのと同時に、作業者が故意にベルト搬送速度を遅くして作業することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本願発明に係る「作業工程間搬送装置」の全体斜視図である。
図1に示す作業工程間搬送装置10は、市販のアルミフレームを使用した構造躯体20に細幅の搬送ベルト30を備えたものである。搬送ベルト30は、スピードコントロール機能を備えた駆動ローラー(駆動モーター)40により回転駆動を得て、この搬送ベルト30上に載置された搬送対象物50を搬送する。図示した搬送対象物50は、略V字形をした自動車部品であるが、これを「縦置き」にできるように搬送ベルト30を細幅にしている。搬送対象物50を「縦置き」にすることで、搬送ベルト30が搬送対象物50の滞留(留めること)とストック(貯蔵)機能を備えることになる。なお、この場合、作業工程間搬送装置10に公知の赤外線反射センサーによるストップ機能を備えて、このストップ機能を組み合わせることで、滞留自動停止機能を備えた・搬送対象物ストック機能を確実に実行できるようになる。すなわち、図1に示す作業工程間搬送装置10は、搬送対象物50を単に前の作業工程から次の作業工程に搬送するだけのものではない。この滞留・ストック機能を備えることで、各作業工程における作業時間の差をこの作業工程間搬送装置によって埋めることができ、結果的に搬送対象物が各作業工程間を均等に流れ、生産効率を向上させることにつながるのである。
【0013】
また、作業工程間搬送装置10は、その構造躯体20に市販のアルミフレームを使用している。従って、製造コストを下げることが可能になる。さらには、搬送ベルト30に一般的なコンベアベルトを使用せずに、市販の伝動ベルト(動力ベルト)を使用している。市販の伝導ベルトを使用することで搬送ベルトに要するコストを下げることができる。また、伝導ベルトはコンベアベルトに比べて長さ・幅の種類が多く、様々なサイズの作業工程間搬送装置10に合わせられる。さらには、この伝動ベルト裏側の歯付き部分を表側にして、凹凸31を備えた搬送ベルト30を形成することが簡単にできる。この凹凸31は、搬送対象物50を均等に載置したり、搬送ベルト30に傾斜角が発生した場合でも搬送対象物50のすべりを防止できる効果がある。
【0014】
図2は、「作業工程間搬送装置」の高さ調整機能を示す説明図である。
図2の高さ調整機能は、構造躯体20の脚部21の底面に設けられた「ねじ式」のアジャスター構造22によるものである。このねじ式アジャスター構造22を調整することで、作業工程間搬送装置10の高さを簡単に作業者X及びYに合わせることが可能になる。作業者X及びYにとっては、作業工程間搬送装置10の高さが自己の作業の高さに合うことで、作業負担が軽減される。作業負担の軽減は、その他の作業への集中が増すとともに、身体への負担が軽減されて、1作業者あたりの作業効率の向上・作業就労の長期安定につながる。
【0015】
図3は、「作業工程間搬送装置」の長さ及び高さ調整機能を示す説明図である。
図3の長さ・高さ調整機能は、構造躯体20を構成するアルミフレームどうしを連結する「スライド式」のアジャスター構造23によるものである。図2のねじ式アジャスター構造22では、高さ調整機能のみであったが、図3のスライド式アジャスター構造23によれば、作業工程間搬送装置10の高さのみではなく、長さも調整できる。各作業工程間の距離は、設置されている機器や作業場レイアウトにより様々であり、長さ調整機能があることで、このような各作業工程間の距離に柔軟に対応できる。
【0016】
図4は、従来作業工程間の搬送用に使用されていた「台車60」である。
台車60はフレーム構造であり、このフレームの水平部分61に搬送対象物50を引っ掛けて、搬送対象物50が一杯になると台車60を次の作業工程に搬送していく作業を行っていた。
この台車60だと高さが一定であり、搬送対象物50をフレームの水平部分61へ置く位置も1つ1つ異なる。従って、作業者によっては、腰を屈めて搬送対象物50を取り出し・置く作業が必要となり、また、取り出し・置く位置も1回1回変えなければならないので作業者の負担が非常に大きいものであった。また、台車60に搬送対象物50が溜まると、次の作業工程に搬送しなければならず、作業リズムを崩す、搬送のタイミングを気にする等の精神的負担、集中力の低下も大きかった。
これに対して、図1〜図3に示す作業工程間搬送装置10は、台車60の抱えていた課題を無理なく解消できる。この作業工程間搬送装置10の導入は、導入企業・作業担当者にとって極めて有効なものとなる。
【0017】
図5は、「搬送ベルト」の長さ調整機能を示す説明図である。
図5の長さ調整機能は、駆動ローラー40,40間に第3のローラー(滑車)45を備えたものである。この第3のローラー(補助ローラー)45の位置を調整することで、搬送ベルト30の長さとテンションを自由に調整できる。
図5(a)は、駆動ローラー40の真下に位置する構造躯体20のフレーム25に補助ローラー45を備えたものである。
図5(b)は、この補助ローラー45を使い、搬送ベルト30の搬送距離を短くしたものである。このように、フレーム25における補助ローラー45の固定位置を調整することで搬送ベルト30の搬送距離を自在に変えることができる。この方法であれば、搬送距離を変更する度に搬送ベルト30を取り替える必要はなく、極めて合理的・効果的である。
また、搬送対象物が概搬送ベルトに引っかかるもので、更に搬送ベルトの凹凸があり滑りにくいものであるなら、テンション調整用の補助ローラーを上側(搬送対象物引っ掛け側)ベルトに設け、ベルトの流れを山形にすることで、補助ローラーはベルト長さ調整以外に滞留距離とストック機能数を増やすための補助ローラーとすることもでき、下側ベルト側に設置する補助ローラーと上側ベルト側の補助ローラーを一定間隔で保ち、その間をモーターに接続するスクリュー機構を備える平衡移動構造物により、上下することで、平時はフラット・滞留時は山形と足踏みを含むスイッチにより、搬送ベルトのベルトラインを立体的に変化させることもできる。
【0018】
図6は、構造躯体20のフレームを示した部分拡大図である。
図6に示す構造躯体20は、構造躯体を構成するアルミフレームにネジを使い取り付け・補強が可能な構造躯体に取り付けられている。このようなアルミフレームを構造躯体20に使用することで、構造体と接合部品との結合が構造体長手方向の範囲で自由に行えるのと同時に、構造躯体の組立・取り外しが極めて容易になり、作業工程間搬送装置10の製造・調整作業を簡易かつ短時間で行えることとなる。
【0019】
図7は、駆動ローラー40のローラー部41を示した説明図である。
ローラー部41は、図7(a)に示すように1本の搬送ベルト30が取り付けられているようにしてもよいが、図7(b)に示すようにローラー部41に搬送ベルト30用の溝部42を複数形成して数本の搬送ベルト30を取り付けられるようにしてもよい。
搬送ベルトは、図7(b)に図示するようにローラー部41に並列して設けるほかに、別の駆動ローラー40を設けて取り付けるようにしてもよい。この時、搬送ベルト30どうしが段差を形成するようにしてもよい。
【実施例】
【0020】
本願発明に係る「作業工程間搬送装置10」を使用した場合の実施例を説明する。
<生産性の向上>
設定条件:自動車のリアピラーのプレス工程(10工程)
比較例1 仕掛り台車 220本/H
比較例2 平置き(想定) 240本/H
実施例 縦置き 250本/H
[結果] 時間当たり、従来の仕掛り台車とは30本差、平置きとは10本差の生産性(作業効率)の向上が見られた。
【0021】
<生産コストの削減>
上記生産性の向上を生産コストに換算すると(平置きとの比較)、以下のようになる。
設定条件:34,000本/月
比較例2 34,000本÷240H×11名 = 1,558.8H … A
実施例 34,000本÷250H×11名 = 1,496.0H … B
(A−B)×12カ月= 62.8×12カ月 = 753.6H … 年間の合理化ができる
@1,600(派遣費用)×753.6H = 1,205,760円/年
[結果]年間100万円以上の生産コストの削減を実現できた。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本願発明に係る作業工程間搬送装置およびは作業工程管理システムは、複数の作業工程を要する生産技術に広く利用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本願発明に係る「作業工程間搬送装置」を示した全体斜視図。
【図2】「作業工程間搬送装置」の高さ調整機能を示す説明図。
【図3】「作業工程間搬送装置」の長さ及び高さ調整機能を示す説明図。
【図4】従来作業工程間の搬送用に使用されていた「台車」を示す全体斜視図。
【図5】「搬送ベルト」の長さ調整機能を示す説明図。
【図6】「構造躯体フレーム」を示した部分拡大図。
【図7】「駆動ローラーのローラー部」を示した説明図。
【符号の説明】
【0024】
10 作業工程間搬送装置
20 構造躯体
30 搬送ベルト
40 駆動ローラー(駆動モーター)
50 搬送対象物
60 台車
X 作業者
Y 作業者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピードコントロール機能を備えた駆動モーターにより回転駆動を得た細幅の搬送ベルトを、高さ・長さ・傾斜角および搬送ベルトの交換または調整作業を、簡易かつ短時間でできることを可能とした、軽量・小型の作業工程間搬送装置。
【請求項2】
搬送対象物の大きさ・形状ごとに搬送ベルトを平行または段違いで、2本以上の搬送ベルト設置構造を、簡易かつ短時間で増設できることを可能とした請求項1記載の作業工程間搬送装置。
【請求項3】
搬送ベルトは、高負荷性で片寄り防止と導電性を持つ丸歯形歯付きまたは台形歯形歯付ベルトを搬送側または駆動伝達側に設置した請求項1・2記載の作業工程間搬送装置。
【請求項4】
搬送対象物の作業間滞留数を多く確保するために、搬送対象物を搬送ベルト上に立てるまたは立てた状態で引っ掛けて、作業工程間の移動機能と滞留とストック機能を備えた請求項1・2・3記載の作業工程間搬送装置。
【請求項5】
搬送ベルト駆動時に、音と光と印で作業者に作業標準スピードを耳と目から知らせる機能を備えた、請求項1・2・3・4記載の作業工程間搬送装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の作業工程間搬送装置を備えた作業工程管理システムであって、
作業工程間に設置された各作業工程間搬送装置の搬送速度を制御する制御装置(ホストコンピュータ)を有し、
その制御装置(ホストコンピュータ)は、
各作業工程における1作業に要する作業時間(秒数)を設定する設定手段と、
設定手段によって設定された作業時間の間隔で次の作業工程に搬送対象物を搬送する搬送速度(スピード)を各作業工程間搬送装置ごとに算出する算出手段と、
算出手段によって算出された搬送速度(スピード)での搬送を各作業工程間搬送装置の駆動モーターに指示する指示手段とを備えたことを特徴とする作業工程管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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