説明

作業機のキャビン構造

【課題】 作業機のキャビン構造において、機体側に貼付けられる内装材の端部処理に改良を加えることで、変わらぬ見栄えを長期間維持することができるようにする。
【解決手段】 走行機体側にシート状の内装材10を貼付け装着し、キャビン内面に対向する内装材10の端縁にステッチ11を装着してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタやコンバインなどの作業機に利用するキャビン構造に関する。
【背景技術】
【0002】
キャビン付きのトラクタにおいては、運転座席の横側に配備された後輪フェンダにレバーガイドが備えられている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−291677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
キャビン付きのトラクタにおいては、キャビン内の見栄えを良くするために、後輪フェンダの表面に各種素材のシートからなる内装材を貼付けることがあり、この場合、内装材の端縁とキャビンの側壁内面との突合せ部を美麗に見せるために、内装材の端縁にゴム製のモール材を貼付け装着してモールをキャビンの側壁内面に接触させる手段が採られることがある。
【0004】
しかし、内装材の端縁に沿ってモール材を貼付けるのに手数を要するとともに、長期間経過するとゴム製のモール材が劣化してひび割れて見栄えが低下してしまうことがある。また、ゴム製のモール材はキャビンの側壁内面に溶着してしまうことがあり、内装材を張り替える場合に、溶融したモール材の一部がキャビンの側壁内面に付着残留して、これの除去に手数を要することになる。
【0005】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、内装材の端縁処理に改良を加えることで、変わらぬ見栄えを長期間維持することができるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、走行機体側にシート状の内装材を貼付け装着し、キャビンの内面に対向する内装材の端縁にステッチを装着してあることを特徴とする。
【0007】
上記構成によると、糸材を編み上げたステッチはキャビン内面に無理なく馴染んで接触し、キャビン内面と内装材の端縁との突合せ部を美麗に仕上げることができる。また、ステッチは長時間経過しても劣化あるいは硬化することがほとんどなく、初期と同様の見栄えを維持する。また、編み上げたステッチはキャビン内面に溶着することがないので、貼り付けた内装材を剥がしてもキャビン内面に接触跡が残ることはない。
【0008】
従って、第1の発明によると、キャビン内面と内装材端部との隙間を見栄え良く埋めることができるとともに、その見栄えを長期間良好に維持することができ。また、内装材の張り替えを容易に行うことができる利点もある。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、
前記内装材を、レバーガイド部を備えた後輪フェンダの表面に貼付け装着してあるものである。
【0010】
上記構成によると、表面を内装材で覆った後輪フェンダは単なる塗装面に比べて異なった外観をもたらすことになり、例えば、内装材に人口皮革シートを用いると、高級感の高い、かつ、肌触りの良いものに構成することができる。
【0011】
第3の発明は、上記第1または2の発明において、
前記ステッチを前記内装材の端縁表面にステッチ糸より細い縫着糸で縫着してあるものである。
【0012】
上記構成によると、内装材の端縁における裏面に縫着糸が露出するが、縫着糸自体が内装材の裏面から大きく飛び出ることはなく、内装材の端縁における裏面は略平坦なものとなる。従って、両面テープなどを用いて内装材の端縁を浮き上がりなく機体側の貼付け面に貼付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1に、本発明を適用した作業機の一例であるキャビン付きのトラクタの側面が、また、図2にその運転部における正面がそれぞれ示されている。
【0014】
このトラクタは、4輪駆動型に構成されたトラクタ本機1の後部にキャビン2が防振搭載された構造となっており、左右の後輪フェンダ3がキャビン2の一部を構成するとともに、左右の後輪フェンダ3の間に設けられたセンターカバー部4の上に運転座席5が配備されている。
【0015】
前記後輪フェンダ3にはレバー挿通用の開口6が形成されてレバーガイド部7が取付けられるようになっており、機体右側のレバーガイド部7には機体後部に備えられたリフトアーム8を操作するレバー類、機体左側のレバーガイド部7には走行変速用のレバー類がそれぞれ挿通装備される。
【0016】
後輪フェンダ3の表面には内装材10が貼付けられている。この内装材10は、発泡樹脂材からなる基材シート10aの表面に合成樹脂製の表面シート材10bを貼り合わせてなる合成皮革シートを後輪フェンダ3の形状に合わせて立体裁断して形成されたものであり、その機体外向きの端縁、つまり、キャビン2における左右の側壁2aの内面に対向する端縁に沿ってステッチ11が装着されている。
【0017】
図5に示すように、前記ステッチ11は太いステッチ糸11aを編み上げて形成されて、ステッチ糸11aより細い縫着糸11bで内装材10の表面側に縫着されており、内装材10における外周端縁の裏面が両面接着テープ12で後輪フェンダ3の表面に貼付けられている。この場合、内装材10の外向き端縁における裏面に縫着糸11bが露出するが、縫着糸11b自体が内装材10の裏面から大きく飛び出ることはなく、内装材10の端部における裏面は平坦なものとなっているので、このステッチ縫着部位を両面接着テープ12を用いて後輪フェンダ3に貼り付けることで内装材10の端部を浮き上がりなく貼付け固定することができる。
【0018】
〔他の実施例〕
【0019】
(1)内装材10を後輪フェンダ3に貼付ける手段としては、上記のように両面接着テープ12を用いる他に、単に接着剤を塗布して貼付けることもできる。
【0020】
(2)内装材10の素材は任意設定することができ、例えば、布状の表面に形成されたシート材を用いて肌触りのやさしい内装とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】トラクタの全体側面図
【図2】運転座席周りの正面図
【図3】レバー操作部の縦断正面図
【図4】レバー案内部の分解斜視図
【図5】内装材の一部を表面側から見た斜視図(イ)と裏面側から見た斜視図(ロ)
【符号の説明】
【0022】
2 キャビン
3 後輪フェンダ
7 レバーガイド部
10 内装材
11 ステッチ
11a ステッチ糸
11b 縫着糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体側にシート状の内装材を貼付け装着し、キャビンの内面に対向する内装材の端縁にステッチを装着してあることを特徴とする作業機のキャビン構造。
【請求項2】
前記内装材を、レバーガイド部を備えた後輪フェンダの表面に貼付け装着してある請求項1記載の作業機のキャビン構造。
【請求項3】
前記ステッチを前記内装材の端縁表面にステッチ糸より細い縫着糸で縫着してある請求項1または2記載の作業機のキャビン構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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