作業機の故障診断用データベースの作成方法及び作業機の故障診断用データベースの作成システム
【課題】実態にあった質問(チェック項目)から故障を簡単に素早く診断することができるようにする。
【解決手段】作業機1を修理したときの修理内容を取得すると共に、当該修理を行ったときの作業機1の各部位の状況を取得しておき、修理内容と各部位の状況とに基づいて故障診断に用いるチェック項目Cを有する故障診断用データベース64を作成する。修理を行ったときの各部位の状況を集計し、同一修理における発生頻度が所定値以上となっている部位をチェック項目Cとして決定する。
【解決手段】作業機1を修理したときの修理内容を取得すると共に、当該修理を行ったときの作業機1の各部位の状況を取得しておき、修理内容と各部位の状況とに基づいて故障診断に用いるチェック項目Cを有する故障診断用データベース64を作成する。修理を行ったときの各部位の状況を集計し、同一修理における発生頻度が所定値以上となっている部位をチェック項目Cとして決定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックホー等の作業機の故障診断用データベースの作成方法及び作業機の故障診断用データベースの作成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、バックホー等の作業機は、様々な建設現場等にて使用されており、故障した際は、迅速な対応が求められている。建設現場にて作業機1の故障の原因を突き止め、修理することも可能あるが、近年の作業機は構造が複雑化しているのが実情であり、直ちに故障原因を突き止めるのは容易ではない。
このようなことに鑑み、作業機の故障を診断するシステムとして様々なものが開発されてきている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1は、建設機械と情報管理センタにそれぞれ設けられた通信装置により相互に信号を送受信して、故障診断を行う建設機械の故障診断方法であって、建設機械の故障に関する第1の信号を建設機械で生成し、通信装置を介して建設機械から情報管理センタへ第1の信号を送信する第1の工程と、第1の信号が送信されると、この第1の信号に基づいて情報管理センタで故障箇所を特定するための第2の信号を生成し、通信装置を介して情報管理センタから建設機械へ第2の信号を送信する第2の工程と、第1の信号および第2の信号に関する故障情報をオペレータに報知する第3の工程とを含むシステムである。
【0004】
特許文献1の故障診断方法においては、作業機の表示装置に故障を診断するための多くの質問を表示し、この質問に対して作業機を操作するオペレータが回答するものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−332664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の故障診断方法において、故障を診断するための多くの質問などは、作業機を設計する段階において予め質問内容の回答と故障内容とを予め用意して、これらの関連づけを行っておかなければ、質問内容から正しい故障内容を割り出すことができないのが実情である。しかも、故障を診断する際に用いられる質問は、作業機を設計する段階から様々なことを想定して設定しなければならないため膨大な質問量となると共に、実際に作業機を使用した場合においてほとんど起こりえない質問までもが用意されるという事態となっているのが実情である。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑み、実態にあった質問(チェック項目)から故障を簡単に素早く診断することができる作業機の故障診断用データベースの作成方法及び作業機の故障診断用データベースの作成システムを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この技術的課題を解決するための本発明の技術的手段は、作業機を修理したときの修理内容を取得すると共に、当該修理を行ったときの作業機の各部位の状況を取得しておき、前記修理内容と各部位の状況とに基づいて故障診断に用いるチェック項目を有する故障診断用データベースを作成する点にある。
修理を行ったときの各部位の状況を集計し、同一修理における発生頻度が所定値以上となっている部位をチェック項目として決定することが好ましい。また、少なくとも一部の前記チェック項目に対して故障診断するための重みを付けることが好ましい。
【0009】
本発明の他の技術的手段は、作業機の修理をしたときの修理内容を保存すると共に、前記修理を行ったときの作業機の各部位の状況を保存する修理一覧データベースと、前記修理一覧データベースに保存された修理内容と各部位の状況とに基づいて作業機の各部位をチェックするためのチェック項目を有する故障診断用データベースを作成する診断用データベース作成手段とを備えている点にある。
【0010】
診断用データベース作成手段は、修理を行ったときの各部位の状況を集計する状況集計部と、発生頻度が所定値以上である部位を前記チェック項目として決定するチェック項目決定部とを備えていることが好ましい。また、診断用データベース作成手段は、少なくとも一部の前記チェック項目に対して故障診断するための重みを付ける重み付け部とを備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、実態にあった質問(チェック項目)から故障を簡単に素早く診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態における作業機の故障診断用データベースの作成システムの構成図である。
【図2】チェックシートを示す図である。
【図3】故障実績をまとめる流れを示したもので、a)故障一覧データベースに保存された故障実績を示し、b)故障実績を故障内容毎にまとめたものを示し、c)故障内容毎に各部位の症状を集計したものを示している。
【図4】故障診断用データベースに保存されたチェック項目と症状との関係を示したものである。
【図5】故障診断支援システムの構成図である。
【図6】故障推定部を起動したときの画面を示したものである。
【図7】動作情報から故障を推定するまでの流れを示したものである。
【図8】第2実施形態におけるチェック項目の一覧表を示したものである。
【図9】第2実施形態における作業機の故障診断用データベースの作成システムの構成図である。
【図10】重み付け部によりチェク項目に重みを付ける画面を示したものである。
【図11】作業機の全体側面図を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
本発明の作業機の故障診断用データベースの作成方法及び作業機の故障診断用データベースの作成システムは、例えば、バックホーの作業機における故障を診断するために用いられるものである。まず、故障診断用データベースの作成システムを作業機の構成と合わせて説明する。
【0014】
図11は、作業機の一例を示したものである。
図11に示すように、作業機(バックホー)1は、下部の走行装置2と、上部の旋回体3とを備えている。
走行装置2は、ゴム製覆帯を有する左右一対の走行体4を備え、両走行体4を走行モータMで駆動するようにしたクローラ式走行装置が採用されている。また、該走行装置2の前部にはドーザ5が設けられている。
【0015】
旋回体3は、走行装置2上に旋回ベアリング11を介して上下方向の旋回軸回りに左右旋回自在に支持された旋回台12と、該旋回台12の前部に備えられた作業装置13(掘削装置)とを有している。旋回台12上には、エンジン,ラジエータ,運転席9,燃料タンク,作動油タンク等が設けられている。運転席9の周囲には、作業機1に関する様々な情報を表示する表示装置25が設けられている。運転席9は、旋回台12上に設けられたキャビン14により囲まれている。
【0016】
作業装置13は、旋回台12の前部に左右方向の中央部よりやや右寄りにオフセットして設けられた支持ブラケット16に上下方向の軸心回りに左右揺動自在に支持されたスイングブラケット17と、該スイングブラケット17に基部側を左右方向の軸心廻りに回動自在に枢着されて上下揺動自在に支持されたブーム18と、該ブーム18の先端側に左右方向の軸心廻りに回動自在に枢着されて前後揺動自在に支持されたアーム19と、該アーム19の先端側にスクイ・ダンプ動作可能に設けられたバケット20とを備えている。
【0017】
スイングブラケット17は、旋回台12内に備えられたスイングシリンダの伸縮によって揺動され、ブーム18は、該ブーム18とスイングブラケット17との間に介装されたブームシリンダ22の伸縮によって揺動され、アーム19は、該アーム19とブーム18との間に介装されたアームシリンダ23の伸縮によって揺動され、バケット20は、該バケット20とアーム19との間に介装されたバケットシリンダ21の伸縮によってスクイ・ダンプ動作される。
【0018】
図1に示すように、故障診断用データベースの作成システム60においては、まず、修理工場等で作業機1を修理したときの修理実績を、作業機1を製造する製造会社や作業機1をレンタルするレンタル会社等にネットワークを介して送り、この修理実績を製造会社やレンタル会社に配置されたコンピュータ61にて分析することにより、故障診断用データベースを作成するものである。
【0019】
図2は、チェックシートを示したものである。このチェックシートSは、修理実績を記入するものであり、具体的には、修理内容と、修理を行った際での各部位の状況(症状)をチェックするためのものである。このチェックシートSには、作業機1の部位の状況(症状)をチェックするための19項目のチェック項目Cが用意されているが、このチェック項目Cは、過去の修理実績をまとめることにより決定されたものである。
【0020】
以下、チェック項目を決定する方法について説明する。
修理工場においては、作業機1の修理を行う毎に、修理内容(実績修理内容)と、その修理を行ったときの症状をシート又は当該修理工場に配置したコンピュータ62に入力し、このような修理実績を蓄積していくと共に、ネットワークを介して製造会社やレンタル会社に配置した修理一覧データベース63に修理実績をアップロードしていく。即ち、まず、作業機1を修理したときの修理内容(実績修理内容)を取得すると共に、当該修理を行ったときの作業機1の各部位の状況を取得しておく。
【0021】
例えば、図3(a)に示すように、例えば、修理番号1では、修理内容が「A」であり、このときの修理では、1項目、4項目、11項目の症状が有り(「○」)という具合に、修理工場のコンピュータ61や修理一覧データベース63に修理内容(実績修理内容)と症状との修理実績を残していく。なお、図3(a)において、「−」とは症状が見受けられなかった、又は、症状をチェックしなかったことを示す。
【0022】
そして、同図に示すように、作業機1の修理回数が増加していき、修理一覧データベース63に修理実績が十分に蓄積されると、図3(b)、図3(c)に示すように、コンピュータ61を用いて修理内容毎に各部位の症状がどうであったかをまとめる。つまり、コンピュータ61によって修理一覧データベース63内の修理実績を呼び出し、修理内容毎に修理を行ったときの各部位の状況を集計する。
【0023】
次に、同一の修理内容において、比較的同じ症状が出ている部位(項目)をコンピュータ61によりピックアップし、当該項目をチェック項目Cとして決定する。図3(c)に示すように、例えば、修理内容「A」となる修理を6回行っているが、このうち、1項目と4項目と11項目の症状が発生した回数が半数以上(○数が3つ以上)であるため、1項目、4項目、11項目をチェック項目Cとして決定する。また、修理内容「B」となる修理について見てみると、2項目と4項目と10項目と12項目の症状が発生した回数が半数以上(○数が3つ以上)であるため、2項目と4項目と10項目と12項目をチェック項目Cとして決定する。同様に、修理内容「C」となる修理について見てみると、2項目と3項目と5項目の症状が発生した回数が半数以上(○数が3つ以上)であるため、2項目と3項目と5項目をチェック項目Cとして決定する。
【0024】
このように決定した各部位の症状と修理内容とを関連させたデータは、故障診断用データベース64に蓄積される。即ち、図4に示すように、故障診断用データベース内には、過去の修理実績から求められた各部位の症状(チェック項目C)と修理内容との組み合わせが格納される。つまり、故障診断用データベース64には、1項目と4項目と11項目の症状が発生した場合(○)には修理内容「A」を行い、2項目と4項目と10項目と12項目の症状が発生した場合には修理内容「B」を行い、2項目と3項目と5項目の症状が発生した場合には修理内容「C」を行うことが分かるような情報が蓄えられることになる。
【0025】
作業機1の故障診断用データベースの作成システム60について詳しく説明する。
図1に示すように、故障診断用データベースの作成システム60は、診断用データベース作成手段61と、修理一覧データベース63とを備えている。診断用データベース作成手段61は、修理一覧データベース63に保存された情報に基づいて故障診断用データベース64を作成するものである。
【0026】
修理一覧データベース63は、作業機1を修理したときの修理実績が格納されたものであって、図3(a)に示すように、作業機1の修理をしたときの修理内容が保存されていると共に、修理を行ったときの作業機1の各部位の状況が保存されたものである。この実施形態では、修理一覧データベース63は、製造会社又はレンタル会社に配置されたコンピュータ61内に設けられている。なお、修理一覧データベース63は、作業機1の機種毎(種別毎)に作成することが好ましく、例えば、作業機1の機種が3つ有る場合は、3つの機種に毎に修理一覧データベース63を用意することになる。
【0027】
故障診断用データベース64は、作業機1の故障を診断するために用いられるものであって、上述したように、各部位の症状(チェック項目C)と修理内容とが関連づけられて保存されている。この実施形態では、故障診断用データベース64は、修理一覧データベース63と同様に、製造会社又はレンタル会社に配置されたコンピュータ61内に設けられている。なお、故障診断用データベース64は、作業機1の機種毎(種別毎)に作成することが好ましく、例えば、作業機1の機種が3つ有る場合は、3つの機種に毎に故障診断用データベース64を用意することになる。
【0028】
診断用データベース作成手段61は、修理一覧データベース63に保存された修理内容と状況(症状)とに基づいて作業機1の各部位をチェックするチェック項目を有する故障診断用データベース64を作成するものであって、製造会社又はレンタル会社に配置されたコンピュータ61により構成されている。
診断用データベース作成手段(コンピュータ61)は、状況集計部65と、チェック項目決定部66とを備えている。これら状況集計部65、チェック項目決定部66は、コンピュータ61に格納されたプログラム等により構成されている。
【0029】
状況集計部65は、修理一覧データベース63に保存された修理実績を用いて、修理内容毎に修理を行ったときの各部位の状況を集計するものである。詳しくは、状況集計部65は、図3(a)に示したように、修理一覧データベース63内に所定量の修理実績が蓄積されると、図3(b)に示すように、修理内容毎に各部位の症状を並べ、修理内容毎に全修理回数と各部位において症状が発生した全発生回数とを求める。
【0030】
チェック項目決定部66は、修理内容毎での全修理回数と各部位の症状の全発生回数とから発生頻度を求め、その値が所定値以上であるときに、該当する部位をチェック項目Cとして決定するものである。例えば、チェック項目決定部66は、全発生回数が全修理回数の半分以上(50%以上)となっている各部位をチェック項目Cとして決定する。
このように、チェック項目決定部66によって、所定の部位をチェックするというチェック項目Cが決定すると、図4に示すように、修理内容とチェック項目Cの回答(○:はい、×:いいえ)との関係が故障診断用データベース64に保存される。即ち、チェック項目Cによって作業機1の各部位の症状をチェックすることができ、このように決定されたチェック項目がチェックシートSにおける各部位の症状するという項目となる。
【0031】
図5は、故障診断用データベース64を用いて作業機1の故障診断を行う故障診断支援システムの一例を示している。
故障診断支援システム50は、状況送信手段51と、故障診断手段52と、故障診断用データベース64とを備えている。
状況送信手段51は、故障診断をするために作業機1の各部位における動作状況を送信するためのもので、作業機1の動作状況を画像に変換して表示する表示装置25と、この表示装置25に表示された画像を読み取ってネットワークを介して画像内の動作状況を送信する通信機器45とを備えている。
【0032】
表示装置25は、エンジンの回転数、バッテリーの電圧、スタータのON/OFF状況、水温センサの動作電圧、燃料センサの電圧、エンジンオイル圧力スイッチの電圧、アクセルセンサの電圧、AIモータの電流など、様々な動作部の動作状況を画像データ(例えば、QRコード)に変換して表示することができるものである。なお、作業機1には、様々な機器等が搭載されているが、動作する機器のことを動作部という。
【0033】
通信機器45は、カメラ付き携帯電話等であって、カメラにて表示装置25に表示されたQRコードを読み込むことにより、QRコード内の動作情報を取り込むことができるものである。また、通信機器45は、通信機能を用いて動作情報を、例えば、電子メール等により送信することができるものである。なお、動作情報を有する電子メールは、電子メールサーバ57に保存されるようになっている。
【0034】
故障診断手段52は、動作状況を受信して当該動作状況から作業機1の故障を診断するものであって、コンピュータ(パーソナルコンピュータ)から構成されている。このコンピュータ52は、製造会社又はレンタル会社に配置されている。なお、故障診断を診断する当該コンピュータ52は、故障診断用データベースの作成システム60に用いられるコンピュータと同一のものであってもよい。
【0035】
コンピュータ52(故障診断手段)は、状況取込部55と、故障推定部56とを備えている。これら状況取込部55、故障推定部56は、コンピュータ52に格納されたプログラム等から構成されている。
状況取込部55は、作業機1の各部位における動作状況を取り込むものであって、電子メールサーバ57にアクセスして電子メールサーバ57から動作状況(動作情報)を取り込むようになっている。
【0036】
故障推定部56は、状況取込部55に取り込まれた動作状況と故障診断用データベース64に格納された修理実績とに基づいて故障を自動的に推定するものである。具体的には、故障推定部56は、状況(症状)から故障を推定するためのアプリケーションソフトから構成されていて、当該アプリケーションソフトを起動すると、故障診断用データベース64にアクセスして、作業機1に対応した故障診断用データベース64内のチェック項目Cを呼び出すことにより、図6に示すようなチェック項目Cと回答欄とを有する画面(チェック画面)をコンピュータ61の表示部に表示させるようになっている。即ち、故障推定部56は、図2に示したチェックシートSに相当するチェック項目Cと回答欄とを有する画面を作業機1の機種に応じて表示する。
【0037】
チェック画面(チェックシートS)では、各部位の状況(症状)を入力するための複数の項目(チェック項目C)と、各部位の症状に対する回答欄があり、故障推定部56によって、状況取込部55に取り込まれた動作状況により回答が自動的になされるようになっている。例えば、送られてきた動作状況からブーム電磁弁の抵抗値を読み取り、その抵抗値が6〜15Ωの間であれば自動的に回答は「はい」となる。なお、動作状況に基づいて全てのチェック項目Cについて自動的に回答がなされるようにしてもよいし、一部のチェック項目Cについて自動的に回答がなされるようにしてもよい。
【0038】
そして、故障推定部56は、チェック画面(チェックシートS)における各部位の症状(チェック項目C)の回答と、故障診断用データベース64に格納された修理実績における各部位の動作状況を照合することにより故障を推定する。例えば、故障推定部56は、図7に示すように、チェック画面において、1番目、4番目、11番目の症状が「○」であり、それ以外が「×」となるパターンである場合、故障診断用データベース64において症状がチェック画面と同じとなるパターンを検索し、このパターンに対応する修理内容「A」を抽出する。そして、故障推定部56は、修理内容「A」に相当する故障内容を表示する。即ち、故障推定部56は、チェック画面における症状の回答から修理内容を決定しているが、故障内容と修理内容は表裏の関係であるため、修理内容が分かれば、当然に故障内容を見つけ出すことができる。例えば、修理内容が「コントローラ交換」であると、いうまでもなくコントローラが故障していることが分かるため、故障推定部56は、その内容(修理内容)から故障(推定原因)は「コントローラが故障」と決定し、その内容を画面に表示する。
【0039】
作業機1の故障診断支援システム50においては、例えば、ユーザが作業機1の動作情報をQRコードとして表示装置25に表示し、この表示装置25に表示したQRコードをカメラ付き携帯電話にて読み込み、読み込まれたQRコード内のデータを電子メールにて電子メールサーバ57に送信し、製造会社又はレンタル会社は、会社のコンピュータ52から電子メールサーバ57にアクセスを行い、動作情報の電子メールを受信することにより、作業機1の動作情報を取得することができる。そして、製造会社又はレンタル会社は、コンピュータ52の故障推定部56によって動作情報及び故障診断用データベース64から自動的に故障を推定して、故障と思われる部分を素早くユーザ等に伝えることができる。
【0040】
なお、図5では故障診断用データベースを用いて作業機1の故障診断を自動的に行う故障診断支援システムの一例を示したが、故障診断用データベースを用いた故障診断は、図5のものに限定されない。例えば、故障診断用データベース64内のチェック項目を抽出することによりチェック項目が一覧となったチェックシートSを作成し、作業機1が故障時した現場にて作業機1の各部位の症状をチェックシートSに記入し、チェックシートSの内容をコンピュータ52(故障診断手段)に手作業にて入力することにより作業機1の故障診断を行ってもよい。
【0041】
以上、第1実施形態における故障診断用データベース64の作成システムにおいては、作業機1の修理をしたときの修理内容を保存すると共に、修理を行ったときの作業機1の各部位の状況を保存する修理一覧データベース63と、修理一覧データベース63に保存された修理内容と状況とに基づいて作業機1の各部位をチェックするためのチェック項目を有する故障診断用データベース64を作成する診断用データベース作成手段61とを備えている。
【0042】
これによれば、従来のように、作業機1を設計する段階(設計段階)にて様々なことを想定したチェック項目Cを数多く作成していなくても、作業機1の修理を行う毎に故障(修理内容)にあった新しいチェック項目Cを決定することができる。しかも、チェック項目は、修理実績(修理内容、各部位の症状)に基づいて決められるため、実態にあったものとなり、このチェック項目を使用することにより故障を簡単に素早く診断することが可能となる。
【0043】
診断用データベース作成手段61は、修理を行ったときの各部位の状況を集計する状況集計部65と、発生頻度が所定値以上である部位をチェック項目として決定するチェック項目決定部66とを備えている。
これによれば、診断用データベース作成手段61を用いて自動的に素早くチェック項目を作成することができる。
[第2実施形態]
図8〜10は、第2実施形態における故障診断用データベースの作成方法及び故障診断用データベースの作成システムを示したものである。上述した第1実施形態では、チェック項目Cが決定した場合でも各チェック項目自体には故障を判定する際の重要度などは付加されていなかったが、この第2実施形態においては、チェック項目Cに故障を判定するための重要度(重み)を付加している。
【0044】
図8に示すように、故障診断用データベース64の作成方法では、例えば、1項目〜19項目までの複数のチェック項目Cのうち、11項目〜19項目のチェック項目Cについては、他の1項目〜10項目のチェック項目Cよりも故障判定する際での重要度が高い事を示す重みを付けている。重みを付ける方法としては、チェック項目Cの一覧表の中から、例えば、発生頻度が非常に高いチェック項目Cを重みを付けたり、故障の発生頻度が少ない場合であっても致命的な故障となる症状に対応するチェック項目Cに重みを付けたり、内部検査をしないと故障として認識できない部位の症状に対応するチェック項目Cに重みを付けることが好ましい。例えば、「フロントハーネスに錆がある白い錆」という17項目、「フロントハーネスに錆がある黒、緑い錆」という18項目などのチェック項目Cは、修理の際に外観のみではわかりにくく、ハーネスの内部まで検査して初めて分かるものであるため、このような部位の症状をチェックするためのチェック項目Cには、重みを付けるとよい。
【0045】
図9は、診断用データベース作成手段61(コンピュータ)に重み付け部69を具備させた故障診断用データベースの作成システムである。他の部分は図1に示した故障診断用データベース64の作成システムと同様であるため同一符号を付して説明を省略する。
重み付け部69は、上述したものと同様に、少なくとも一部のチェック項目Cに対して故障診断するための重みを付けるものである。この重み付け部69は、コンピュータ61に格納されたプログラム等により構成されている。
【0046】
図10に示すように、コンピュータの重み付け部69を起動すると、故障診断用データベース64内に格納されている全てのチェック項目Cの一覧表が当該コンピュータ61の表示部(モニタ)に表示されるようになっている。チェック項目Cの一覧表においては、重み付け部69により、各チェック項目Cに重みを付けるか否かを設定する設定部70が示され、コンピュータ61の入力装置(キーボード、マウス)により設定部70にチェックマーク「レ」が入れられるようになっている。重み付け部69によりチェックマークを入れられたチェック項目Cに重みが付加されるようになっている。
【0047】
このようにすれば、例えば、チェック項目Cを有するチェックシートSにて作業機1の各部位の症状をチェックしたとき、重みが付けられたチェック項目に対する部位に症状がある(回答が、はい)場合には、修理の際に当該チェック項目に対応する部位について重点的にその状態を確認することにより、故障をいち早く見つけることができるようになる。つまり、チェック項目に重み付けることにより、見つけにくい故障をいち早く発見する手助けとなる。
【0048】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。上記実施形態の故障診断支援システム50では、電子メール(電子メールサーバ57)を用いて作業機1の動作情報を送信して、その後、電子メール内の動作情報を修理一覧データベース63に保存するようにしているが、電子メール(電子メールサーバ57)を用いなくても、携帯電話45等にて作業機1の動作情報を修理一覧データベース63にアップロードしてもよい。作業機1は、バックホーに限らず、トラクタやコンバインなどであってもよい。 診断用データベース作成手段61(コンピュータ)内に故障診断用データベース64が設けられているが、この故障診断用データベース64は診断用データベース作成手段61とは別に配備されていてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 作業機
61 診断用データベース作成手段
62 コンピュータ
63 修理一覧データベース
64 故障診断用データベース
65 状況集計部
66 チェック項目決定部
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックホー等の作業機の故障診断用データベースの作成方法及び作業機の故障診断用データベースの作成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、バックホー等の作業機は、様々な建設現場等にて使用されており、故障した際は、迅速な対応が求められている。建設現場にて作業機1の故障の原因を突き止め、修理することも可能あるが、近年の作業機は構造が複雑化しているのが実情であり、直ちに故障原因を突き止めるのは容易ではない。
このようなことに鑑み、作業機の故障を診断するシステムとして様々なものが開発されてきている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1は、建設機械と情報管理センタにそれぞれ設けられた通信装置により相互に信号を送受信して、故障診断を行う建設機械の故障診断方法であって、建設機械の故障に関する第1の信号を建設機械で生成し、通信装置を介して建設機械から情報管理センタへ第1の信号を送信する第1の工程と、第1の信号が送信されると、この第1の信号に基づいて情報管理センタで故障箇所を特定するための第2の信号を生成し、通信装置を介して情報管理センタから建設機械へ第2の信号を送信する第2の工程と、第1の信号および第2の信号に関する故障情報をオペレータに報知する第3の工程とを含むシステムである。
【0004】
特許文献1の故障診断方法においては、作業機の表示装置に故障を診断するための多くの質問を表示し、この質問に対して作業機を操作するオペレータが回答するものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−332664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の故障診断方法において、故障を診断するための多くの質問などは、作業機を設計する段階において予め質問内容の回答と故障内容とを予め用意して、これらの関連づけを行っておかなければ、質問内容から正しい故障内容を割り出すことができないのが実情である。しかも、故障を診断する際に用いられる質問は、作業機を設計する段階から様々なことを想定して設定しなければならないため膨大な質問量となると共に、実際に作業機を使用した場合においてほとんど起こりえない質問までもが用意されるという事態となっているのが実情である。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑み、実態にあった質問(チェック項目)から故障を簡単に素早く診断することができる作業機の故障診断用データベースの作成方法及び作業機の故障診断用データベースの作成システムを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この技術的課題を解決するための本発明の技術的手段は、作業機を修理したときの修理内容を取得すると共に、当該修理を行ったときの作業機の各部位の状況を取得しておき、前記修理内容と各部位の状況とに基づいて故障診断に用いるチェック項目を有する故障診断用データベースを作成する点にある。
修理を行ったときの各部位の状況を集計し、同一修理における発生頻度が所定値以上となっている部位をチェック項目として決定することが好ましい。また、少なくとも一部の前記チェック項目に対して故障診断するための重みを付けることが好ましい。
【0009】
本発明の他の技術的手段は、作業機の修理をしたときの修理内容を保存すると共に、前記修理を行ったときの作業機の各部位の状況を保存する修理一覧データベースと、前記修理一覧データベースに保存された修理内容と各部位の状況とに基づいて作業機の各部位をチェックするためのチェック項目を有する故障診断用データベースを作成する診断用データベース作成手段とを備えている点にある。
【0010】
診断用データベース作成手段は、修理を行ったときの各部位の状況を集計する状況集計部と、発生頻度が所定値以上である部位を前記チェック項目として決定するチェック項目決定部とを備えていることが好ましい。また、診断用データベース作成手段は、少なくとも一部の前記チェック項目に対して故障診断するための重みを付ける重み付け部とを備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、実態にあった質問(チェック項目)から故障を簡単に素早く診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態における作業機の故障診断用データベースの作成システムの構成図である。
【図2】チェックシートを示す図である。
【図3】故障実績をまとめる流れを示したもので、a)故障一覧データベースに保存された故障実績を示し、b)故障実績を故障内容毎にまとめたものを示し、c)故障内容毎に各部位の症状を集計したものを示している。
【図4】故障診断用データベースに保存されたチェック項目と症状との関係を示したものである。
【図5】故障診断支援システムの構成図である。
【図6】故障推定部を起動したときの画面を示したものである。
【図7】動作情報から故障を推定するまでの流れを示したものである。
【図8】第2実施形態におけるチェック項目の一覧表を示したものである。
【図9】第2実施形態における作業機の故障診断用データベースの作成システムの構成図である。
【図10】重み付け部によりチェク項目に重みを付ける画面を示したものである。
【図11】作業機の全体側面図を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
本発明の作業機の故障診断用データベースの作成方法及び作業機の故障診断用データベースの作成システムは、例えば、バックホーの作業機における故障を診断するために用いられるものである。まず、故障診断用データベースの作成システムを作業機の構成と合わせて説明する。
【0014】
図11は、作業機の一例を示したものである。
図11に示すように、作業機(バックホー)1は、下部の走行装置2と、上部の旋回体3とを備えている。
走行装置2は、ゴム製覆帯を有する左右一対の走行体4を備え、両走行体4を走行モータMで駆動するようにしたクローラ式走行装置が採用されている。また、該走行装置2の前部にはドーザ5が設けられている。
【0015】
旋回体3は、走行装置2上に旋回ベアリング11を介して上下方向の旋回軸回りに左右旋回自在に支持された旋回台12と、該旋回台12の前部に備えられた作業装置13(掘削装置)とを有している。旋回台12上には、エンジン,ラジエータ,運転席9,燃料タンク,作動油タンク等が設けられている。運転席9の周囲には、作業機1に関する様々な情報を表示する表示装置25が設けられている。運転席9は、旋回台12上に設けられたキャビン14により囲まれている。
【0016】
作業装置13は、旋回台12の前部に左右方向の中央部よりやや右寄りにオフセットして設けられた支持ブラケット16に上下方向の軸心回りに左右揺動自在に支持されたスイングブラケット17と、該スイングブラケット17に基部側を左右方向の軸心廻りに回動自在に枢着されて上下揺動自在に支持されたブーム18と、該ブーム18の先端側に左右方向の軸心廻りに回動自在に枢着されて前後揺動自在に支持されたアーム19と、該アーム19の先端側にスクイ・ダンプ動作可能に設けられたバケット20とを備えている。
【0017】
スイングブラケット17は、旋回台12内に備えられたスイングシリンダの伸縮によって揺動され、ブーム18は、該ブーム18とスイングブラケット17との間に介装されたブームシリンダ22の伸縮によって揺動され、アーム19は、該アーム19とブーム18との間に介装されたアームシリンダ23の伸縮によって揺動され、バケット20は、該バケット20とアーム19との間に介装されたバケットシリンダ21の伸縮によってスクイ・ダンプ動作される。
【0018】
図1に示すように、故障診断用データベースの作成システム60においては、まず、修理工場等で作業機1を修理したときの修理実績を、作業機1を製造する製造会社や作業機1をレンタルするレンタル会社等にネットワークを介して送り、この修理実績を製造会社やレンタル会社に配置されたコンピュータ61にて分析することにより、故障診断用データベースを作成するものである。
【0019】
図2は、チェックシートを示したものである。このチェックシートSは、修理実績を記入するものであり、具体的には、修理内容と、修理を行った際での各部位の状況(症状)をチェックするためのものである。このチェックシートSには、作業機1の部位の状況(症状)をチェックするための19項目のチェック項目Cが用意されているが、このチェック項目Cは、過去の修理実績をまとめることにより決定されたものである。
【0020】
以下、チェック項目を決定する方法について説明する。
修理工場においては、作業機1の修理を行う毎に、修理内容(実績修理内容)と、その修理を行ったときの症状をシート又は当該修理工場に配置したコンピュータ62に入力し、このような修理実績を蓄積していくと共に、ネットワークを介して製造会社やレンタル会社に配置した修理一覧データベース63に修理実績をアップロードしていく。即ち、まず、作業機1を修理したときの修理内容(実績修理内容)を取得すると共に、当該修理を行ったときの作業機1の各部位の状況を取得しておく。
【0021】
例えば、図3(a)に示すように、例えば、修理番号1では、修理内容が「A」であり、このときの修理では、1項目、4項目、11項目の症状が有り(「○」)という具合に、修理工場のコンピュータ61や修理一覧データベース63に修理内容(実績修理内容)と症状との修理実績を残していく。なお、図3(a)において、「−」とは症状が見受けられなかった、又は、症状をチェックしなかったことを示す。
【0022】
そして、同図に示すように、作業機1の修理回数が増加していき、修理一覧データベース63に修理実績が十分に蓄積されると、図3(b)、図3(c)に示すように、コンピュータ61を用いて修理内容毎に各部位の症状がどうであったかをまとめる。つまり、コンピュータ61によって修理一覧データベース63内の修理実績を呼び出し、修理内容毎に修理を行ったときの各部位の状況を集計する。
【0023】
次に、同一の修理内容において、比較的同じ症状が出ている部位(項目)をコンピュータ61によりピックアップし、当該項目をチェック項目Cとして決定する。図3(c)に示すように、例えば、修理内容「A」となる修理を6回行っているが、このうち、1項目と4項目と11項目の症状が発生した回数が半数以上(○数が3つ以上)であるため、1項目、4項目、11項目をチェック項目Cとして決定する。また、修理内容「B」となる修理について見てみると、2項目と4項目と10項目と12項目の症状が発生した回数が半数以上(○数が3つ以上)であるため、2項目と4項目と10項目と12項目をチェック項目Cとして決定する。同様に、修理内容「C」となる修理について見てみると、2項目と3項目と5項目の症状が発生した回数が半数以上(○数が3つ以上)であるため、2項目と3項目と5項目をチェック項目Cとして決定する。
【0024】
このように決定した各部位の症状と修理内容とを関連させたデータは、故障診断用データベース64に蓄積される。即ち、図4に示すように、故障診断用データベース内には、過去の修理実績から求められた各部位の症状(チェック項目C)と修理内容との組み合わせが格納される。つまり、故障診断用データベース64には、1項目と4項目と11項目の症状が発生した場合(○)には修理内容「A」を行い、2項目と4項目と10項目と12項目の症状が発生した場合には修理内容「B」を行い、2項目と3項目と5項目の症状が発生した場合には修理内容「C」を行うことが分かるような情報が蓄えられることになる。
【0025】
作業機1の故障診断用データベースの作成システム60について詳しく説明する。
図1に示すように、故障診断用データベースの作成システム60は、診断用データベース作成手段61と、修理一覧データベース63とを備えている。診断用データベース作成手段61は、修理一覧データベース63に保存された情報に基づいて故障診断用データベース64を作成するものである。
【0026】
修理一覧データベース63は、作業機1を修理したときの修理実績が格納されたものであって、図3(a)に示すように、作業機1の修理をしたときの修理内容が保存されていると共に、修理を行ったときの作業機1の各部位の状況が保存されたものである。この実施形態では、修理一覧データベース63は、製造会社又はレンタル会社に配置されたコンピュータ61内に設けられている。なお、修理一覧データベース63は、作業機1の機種毎(種別毎)に作成することが好ましく、例えば、作業機1の機種が3つ有る場合は、3つの機種に毎に修理一覧データベース63を用意することになる。
【0027】
故障診断用データベース64は、作業機1の故障を診断するために用いられるものであって、上述したように、各部位の症状(チェック項目C)と修理内容とが関連づけられて保存されている。この実施形態では、故障診断用データベース64は、修理一覧データベース63と同様に、製造会社又はレンタル会社に配置されたコンピュータ61内に設けられている。なお、故障診断用データベース64は、作業機1の機種毎(種別毎)に作成することが好ましく、例えば、作業機1の機種が3つ有る場合は、3つの機種に毎に故障診断用データベース64を用意することになる。
【0028】
診断用データベース作成手段61は、修理一覧データベース63に保存された修理内容と状況(症状)とに基づいて作業機1の各部位をチェックするチェック項目を有する故障診断用データベース64を作成するものであって、製造会社又はレンタル会社に配置されたコンピュータ61により構成されている。
診断用データベース作成手段(コンピュータ61)は、状況集計部65と、チェック項目決定部66とを備えている。これら状況集計部65、チェック項目決定部66は、コンピュータ61に格納されたプログラム等により構成されている。
【0029】
状況集計部65は、修理一覧データベース63に保存された修理実績を用いて、修理内容毎に修理を行ったときの各部位の状況を集計するものである。詳しくは、状況集計部65は、図3(a)に示したように、修理一覧データベース63内に所定量の修理実績が蓄積されると、図3(b)に示すように、修理内容毎に各部位の症状を並べ、修理内容毎に全修理回数と各部位において症状が発生した全発生回数とを求める。
【0030】
チェック項目決定部66は、修理内容毎での全修理回数と各部位の症状の全発生回数とから発生頻度を求め、その値が所定値以上であるときに、該当する部位をチェック項目Cとして決定するものである。例えば、チェック項目決定部66は、全発生回数が全修理回数の半分以上(50%以上)となっている各部位をチェック項目Cとして決定する。
このように、チェック項目決定部66によって、所定の部位をチェックするというチェック項目Cが決定すると、図4に示すように、修理内容とチェック項目Cの回答(○:はい、×:いいえ)との関係が故障診断用データベース64に保存される。即ち、チェック項目Cによって作業機1の各部位の症状をチェックすることができ、このように決定されたチェック項目がチェックシートSにおける各部位の症状するという項目となる。
【0031】
図5は、故障診断用データベース64を用いて作業機1の故障診断を行う故障診断支援システムの一例を示している。
故障診断支援システム50は、状況送信手段51と、故障診断手段52と、故障診断用データベース64とを備えている。
状況送信手段51は、故障診断をするために作業機1の各部位における動作状況を送信するためのもので、作業機1の動作状況を画像に変換して表示する表示装置25と、この表示装置25に表示された画像を読み取ってネットワークを介して画像内の動作状況を送信する通信機器45とを備えている。
【0032】
表示装置25は、エンジンの回転数、バッテリーの電圧、スタータのON/OFF状況、水温センサの動作電圧、燃料センサの電圧、エンジンオイル圧力スイッチの電圧、アクセルセンサの電圧、AIモータの電流など、様々な動作部の動作状況を画像データ(例えば、QRコード)に変換して表示することができるものである。なお、作業機1には、様々な機器等が搭載されているが、動作する機器のことを動作部という。
【0033】
通信機器45は、カメラ付き携帯電話等であって、カメラにて表示装置25に表示されたQRコードを読み込むことにより、QRコード内の動作情報を取り込むことができるものである。また、通信機器45は、通信機能を用いて動作情報を、例えば、電子メール等により送信することができるものである。なお、動作情報を有する電子メールは、電子メールサーバ57に保存されるようになっている。
【0034】
故障診断手段52は、動作状況を受信して当該動作状況から作業機1の故障を診断するものであって、コンピュータ(パーソナルコンピュータ)から構成されている。このコンピュータ52は、製造会社又はレンタル会社に配置されている。なお、故障診断を診断する当該コンピュータ52は、故障診断用データベースの作成システム60に用いられるコンピュータと同一のものであってもよい。
【0035】
コンピュータ52(故障診断手段)は、状況取込部55と、故障推定部56とを備えている。これら状況取込部55、故障推定部56は、コンピュータ52に格納されたプログラム等から構成されている。
状況取込部55は、作業機1の各部位における動作状況を取り込むものであって、電子メールサーバ57にアクセスして電子メールサーバ57から動作状況(動作情報)を取り込むようになっている。
【0036】
故障推定部56は、状況取込部55に取り込まれた動作状況と故障診断用データベース64に格納された修理実績とに基づいて故障を自動的に推定するものである。具体的には、故障推定部56は、状況(症状)から故障を推定するためのアプリケーションソフトから構成されていて、当該アプリケーションソフトを起動すると、故障診断用データベース64にアクセスして、作業機1に対応した故障診断用データベース64内のチェック項目Cを呼び出すことにより、図6に示すようなチェック項目Cと回答欄とを有する画面(チェック画面)をコンピュータ61の表示部に表示させるようになっている。即ち、故障推定部56は、図2に示したチェックシートSに相当するチェック項目Cと回答欄とを有する画面を作業機1の機種に応じて表示する。
【0037】
チェック画面(チェックシートS)では、各部位の状況(症状)を入力するための複数の項目(チェック項目C)と、各部位の症状に対する回答欄があり、故障推定部56によって、状況取込部55に取り込まれた動作状況により回答が自動的になされるようになっている。例えば、送られてきた動作状況からブーム電磁弁の抵抗値を読み取り、その抵抗値が6〜15Ωの間であれば自動的に回答は「はい」となる。なお、動作状況に基づいて全てのチェック項目Cについて自動的に回答がなされるようにしてもよいし、一部のチェック項目Cについて自動的に回答がなされるようにしてもよい。
【0038】
そして、故障推定部56は、チェック画面(チェックシートS)における各部位の症状(チェック項目C)の回答と、故障診断用データベース64に格納された修理実績における各部位の動作状況を照合することにより故障を推定する。例えば、故障推定部56は、図7に示すように、チェック画面において、1番目、4番目、11番目の症状が「○」であり、それ以外が「×」となるパターンである場合、故障診断用データベース64において症状がチェック画面と同じとなるパターンを検索し、このパターンに対応する修理内容「A」を抽出する。そして、故障推定部56は、修理内容「A」に相当する故障内容を表示する。即ち、故障推定部56は、チェック画面における症状の回答から修理内容を決定しているが、故障内容と修理内容は表裏の関係であるため、修理内容が分かれば、当然に故障内容を見つけ出すことができる。例えば、修理内容が「コントローラ交換」であると、いうまでもなくコントローラが故障していることが分かるため、故障推定部56は、その内容(修理内容)から故障(推定原因)は「コントローラが故障」と決定し、その内容を画面に表示する。
【0039】
作業機1の故障診断支援システム50においては、例えば、ユーザが作業機1の動作情報をQRコードとして表示装置25に表示し、この表示装置25に表示したQRコードをカメラ付き携帯電話にて読み込み、読み込まれたQRコード内のデータを電子メールにて電子メールサーバ57に送信し、製造会社又はレンタル会社は、会社のコンピュータ52から電子メールサーバ57にアクセスを行い、動作情報の電子メールを受信することにより、作業機1の動作情報を取得することができる。そして、製造会社又はレンタル会社は、コンピュータ52の故障推定部56によって動作情報及び故障診断用データベース64から自動的に故障を推定して、故障と思われる部分を素早くユーザ等に伝えることができる。
【0040】
なお、図5では故障診断用データベースを用いて作業機1の故障診断を自動的に行う故障診断支援システムの一例を示したが、故障診断用データベースを用いた故障診断は、図5のものに限定されない。例えば、故障診断用データベース64内のチェック項目を抽出することによりチェック項目が一覧となったチェックシートSを作成し、作業機1が故障時した現場にて作業機1の各部位の症状をチェックシートSに記入し、チェックシートSの内容をコンピュータ52(故障診断手段)に手作業にて入力することにより作業機1の故障診断を行ってもよい。
【0041】
以上、第1実施形態における故障診断用データベース64の作成システムにおいては、作業機1の修理をしたときの修理内容を保存すると共に、修理を行ったときの作業機1の各部位の状況を保存する修理一覧データベース63と、修理一覧データベース63に保存された修理内容と状況とに基づいて作業機1の各部位をチェックするためのチェック項目を有する故障診断用データベース64を作成する診断用データベース作成手段61とを備えている。
【0042】
これによれば、従来のように、作業機1を設計する段階(設計段階)にて様々なことを想定したチェック項目Cを数多く作成していなくても、作業機1の修理を行う毎に故障(修理内容)にあった新しいチェック項目Cを決定することができる。しかも、チェック項目は、修理実績(修理内容、各部位の症状)に基づいて決められるため、実態にあったものとなり、このチェック項目を使用することにより故障を簡単に素早く診断することが可能となる。
【0043】
診断用データベース作成手段61は、修理を行ったときの各部位の状況を集計する状況集計部65と、発生頻度が所定値以上である部位をチェック項目として決定するチェック項目決定部66とを備えている。
これによれば、診断用データベース作成手段61を用いて自動的に素早くチェック項目を作成することができる。
[第2実施形態]
図8〜10は、第2実施形態における故障診断用データベースの作成方法及び故障診断用データベースの作成システムを示したものである。上述した第1実施形態では、チェック項目Cが決定した場合でも各チェック項目自体には故障を判定する際の重要度などは付加されていなかったが、この第2実施形態においては、チェック項目Cに故障を判定するための重要度(重み)を付加している。
【0044】
図8に示すように、故障診断用データベース64の作成方法では、例えば、1項目〜19項目までの複数のチェック項目Cのうち、11項目〜19項目のチェック項目Cについては、他の1項目〜10項目のチェック項目Cよりも故障判定する際での重要度が高い事を示す重みを付けている。重みを付ける方法としては、チェック項目Cの一覧表の中から、例えば、発生頻度が非常に高いチェック項目Cを重みを付けたり、故障の発生頻度が少ない場合であっても致命的な故障となる症状に対応するチェック項目Cに重みを付けたり、内部検査をしないと故障として認識できない部位の症状に対応するチェック項目Cに重みを付けることが好ましい。例えば、「フロントハーネスに錆がある白い錆」という17項目、「フロントハーネスに錆がある黒、緑い錆」という18項目などのチェック項目Cは、修理の際に外観のみではわかりにくく、ハーネスの内部まで検査して初めて分かるものであるため、このような部位の症状をチェックするためのチェック項目Cには、重みを付けるとよい。
【0045】
図9は、診断用データベース作成手段61(コンピュータ)に重み付け部69を具備させた故障診断用データベースの作成システムである。他の部分は図1に示した故障診断用データベース64の作成システムと同様であるため同一符号を付して説明を省略する。
重み付け部69は、上述したものと同様に、少なくとも一部のチェック項目Cに対して故障診断するための重みを付けるものである。この重み付け部69は、コンピュータ61に格納されたプログラム等により構成されている。
【0046】
図10に示すように、コンピュータの重み付け部69を起動すると、故障診断用データベース64内に格納されている全てのチェック項目Cの一覧表が当該コンピュータ61の表示部(モニタ)に表示されるようになっている。チェック項目Cの一覧表においては、重み付け部69により、各チェック項目Cに重みを付けるか否かを設定する設定部70が示され、コンピュータ61の入力装置(キーボード、マウス)により設定部70にチェックマーク「レ」が入れられるようになっている。重み付け部69によりチェックマークを入れられたチェック項目Cに重みが付加されるようになっている。
【0047】
このようにすれば、例えば、チェック項目Cを有するチェックシートSにて作業機1の各部位の症状をチェックしたとき、重みが付けられたチェック項目に対する部位に症状がある(回答が、はい)場合には、修理の際に当該チェック項目に対応する部位について重点的にその状態を確認することにより、故障をいち早く見つけることができるようになる。つまり、チェック項目に重み付けることにより、見つけにくい故障をいち早く発見する手助けとなる。
【0048】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。上記実施形態の故障診断支援システム50では、電子メール(電子メールサーバ57)を用いて作業機1の動作情報を送信して、その後、電子メール内の動作情報を修理一覧データベース63に保存するようにしているが、電子メール(電子メールサーバ57)を用いなくても、携帯電話45等にて作業機1の動作情報を修理一覧データベース63にアップロードしてもよい。作業機1は、バックホーに限らず、トラクタやコンバインなどであってもよい。 診断用データベース作成手段61(コンピュータ)内に故障診断用データベース64が設けられているが、この故障診断用データベース64は診断用データベース作成手段61とは別に配備されていてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 作業機
61 診断用データベース作成手段
62 コンピュータ
63 修理一覧データベース
64 故障診断用データベース
65 状況集計部
66 チェック項目決定部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機を修理したときの修理内容を取得すると共に、当該修理を行ったときの作業機の各部位の状況を取得しておき、前記修理内容と各部位の状況とに基づいて故障診断に用いるチェック項目を有する故障診断用データベースを作成することを特徴とする作業機の故障診断用データベースの作成方法。
【請求項2】
修理を行ったときの各部位の状況を集計し、同一修理における発生頻度が所定値以上となっている部位をチェック項目として決定することを特徴とする請求項1に記載の作業機の故障診断用データベースの作成方法。
【請求項3】
少なくとも一部の前記チェック項目に対して故障診断するための重みを付けることを特徴とする請求項2に記載の作業機の故障診断用データベースの作成方法。
【請求項4】
作業機の修理をしたときの修理内容を保存すると共に、前記修理を行ったときの作業機の各部位の状況を保存する修理一覧データベースと、前記修理一覧データベースに保存された修理内容と各部位の状況とに基づいて作業機の各部位をチェックするためのチェック項目を有する故障診断用データベースを作成する診断用データベース作成手段とを備えていることを特徴とする作業機の故障診断用データベースの作成システム。
【請求項5】
診断用データベース作成手段は、修理を行ったときの各部位の状況を集計する状況集計部と、発生頻度が所定値以上である部位を前記チェック項目として決定するチェック項目決定部とを備えていることを特徴とする請求項4に記載の作業機の故障診断用データベースの作成システム。
【請求項6】
診断用データベース作成手段は、少なくとも一部の前記チェック項目に対して故障診断するための重みを付ける重み付け部とを備えていることを特徴とする請求項4又は5に記載の作業機の故障診断用データベースの作成システム。
【請求項1】
作業機を修理したときの修理内容を取得すると共に、当該修理を行ったときの作業機の各部位の状況を取得しておき、前記修理内容と各部位の状況とに基づいて故障診断に用いるチェック項目を有する故障診断用データベースを作成することを特徴とする作業機の故障診断用データベースの作成方法。
【請求項2】
修理を行ったときの各部位の状況を集計し、同一修理における発生頻度が所定値以上となっている部位をチェック項目として決定することを特徴とする請求項1に記載の作業機の故障診断用データベースの作成方法。
【請求項3】
少なくとも一部の前記チェック項目に対して故障診断するための重みを付けることを特徴とする請求項2に記載の作業機の故障診断用データベースの作成方法。
【請求項4】
作業機の修理をしたときの修理内容を保存すると共に、前記修理を行ったときの作業機の各部位の状況を保存する修理一覧データベースと、前記修理一覧データベースに保存された修理内容と各部位の状況とに基づいて作業機の各部位をチェックするためのチェック項目を有する故障診断用データベースを作成する診断用データベース作成手段とを備えていることを特徴とする作業機の故障診断用データベースの作成システム。
【請求項5】
診断用データベース作成手段は、修理を行ったときの各部位の状況を集計する状況集計部と、発生頻度が所定値以上である部位を前記チェック項目として決定するチェック項目決定部とを備えていることを特徴とする請求項4に記載の作業機の故障診断用データベースの作成システム。
【請求項6】
診断用データベース作成手段は、少なくとも一部の前記チェック項目に対して故障診断するための重みを付ける重み付け部とを備えていることを特徴とする請求項4又は5に記載の作業機の故障診断用データベースの作成システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−76312(P2011−76312A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226187(P2009−226187)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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