説明

作業機械における制御システム

【課題】油圧ショベル等の作業機械において、エンジンにかかる負荷の平準化するにあたり、コストの抑制及び汎用化を図る。
【解決手段】エンジン動力によりポンプ作用する一方、モータ作用してエンジン動力を補助する油圧ポンプ・モータ7と、ポンプ作用時の油圧ポンプ・モータ7の吐出油を蓄圧する一方、モータ作用時の油圧ポンプ・モータ7に圧油供給するアキュムレータ8と、作業負荷に応じて前記油圧ポンプ・モータ7をポンプ作用或いはモータ作用させてエンジン1にかかる負荷を平準化させるエンジン負荷平準化制御を行なう制御装置10とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の油圧アクチュエータを備えた作業機械において、エンジンにかかる負荷を平準化することができる作業機械における制御システムの技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベル等の作業機械は、走行や作業を行なうための各種油圧アクチュエータを備えていると共に、これら油圧アクチュエータの圧油供給源になる油圧ポンプや、該油圧ポンプの動力源になるエンジンを備えて構成されている。ところで、油圧ショベルのような作業機械は作業負荷の変動が大きく、このため、エンジンにかかる負荷が大きく変動して、燃費低減や排ガス低減の妨げになるという問題があるうえ、エンジン回転数の変動に伴う騒音の問題もある。
一方、近年、油圧ショベルのような作業機械においても、油圧システムと電気システムとを組み合わせたハイブリッドシステムの採用が試みられているが、この様なハイブリッドシステムの作業機械において、従来、エンジンにかかる負荷を平準化するために、エンジンにより駆動する電動機と、該電動機による発電電力を充電するバッテリとを設け、油圧ポンプの吸収トルクがエンジントルクより小さい場合には、余剰トルクにより前記電動機の発電作動の制御を行ない、油圧ポンプの吸収トルクがエンジントルクより大きい場合には、不足分のトルクを発生するように電動機のモータ作動を行なうようにした技術が提唱されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−275945号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかるに、前記特許文献1のように、電動機とバッテリとを用いてエンジンにかかる負荷を平準化する場合、電動機や大容量のバッテリ、インバータやコンバータ等が必要であって、コストが高くなるうえ、従来の油圧システムが採用されている作業機械に、この様な電動機を用いたシステムを組込むことは事実上不可能であるという問題があり、ここに本発明が解決しようとする課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、エンジンと、該エンジンにより駆動されるメインポンプと、該メインポンプを油圧供給源にする各種油圧アクチュエータとを備えてなる作業機械において、前記エンジンに動力伝達機構を介して連結され、エンジン動力によりポンプ作用する一方、モータ作用してエンジン動力を補助する油圧ポンプ・モータと、該油圧ポンプ・モータのポンプ作用時に油圧ポンプ・モータの吐出油を蓄圧する一方、モータ作用時の油圧ポンプ・モータに圧油供給するアキュムレータと、前記油圧アクチュエータの行なう作業負荷を検出する作業負荷検出手段と、該作業負荷検出手段より検出される作業負荷に応じて油圧ポンプ・モータをポンプ作用或いはモータ作用させてエンジンにかかる負荷を平準化させるエンジン負荷平準化制御を行なう制御装置とを設けたことを特徴とする作業機械における制御システムである。
請求項2の発明は、制御システムは、油圧ポンプ・モータとアキュムレータとを連結する油路に配されて油の流れを制御するバルブ手段を備えると共に、制御装置は、該バルブ手段に制御指令を出力して油圧ポンプ・モータをポンプ作用或いはモータ作用させることを特徴とする請求項1に記載の作業機械における制御システムである。
請求項3の発明は、作業負荷検出手段は、メインポンプが要求するトルクを検出する要求トルク検出手段であると共に、制御装置は、エンジン負荷平準化制御を行なうにあたり、前記要求トルク検出手段により検出されたメインポンプ要求トルクの交流成分を求め、該メインポンプ要求トルクの交流成分の正負を予め設定されるエンジン出力トルク目標値を基準として判定し、交流成分が正の場合には油圧ポンプ・モータをモータ作用させる一方、交流成分が負の場合にはポンプ作用させることを特徴とする請求項1または2に記載の作業機械における制御システムである。
請求項4の発明は、油圧ポンプ・モータは、制御装置により容量が制御される容量可変型の油圧ポンプ・モータであると共に、制御装置は、メインポンプ要求トルクの交流成分とアキュムレータの圧力とに基づいて、油圧ポンプ・モータがメインポンプ要求トルクとエンジン出力トルク目標値との差に相当する分のトルクを供給或いは吸収するように油圧ポンプ・モータの容量を制御することを特徴とする請求項3に記載の作業機械における制御システムである。
【発明の効果】
【0005】
請求項1の発明とすることにより、油圧アクチュエータの行なう作業負荷が変動しても、エンジンに連結された油圧ポンプ・モータがポンプ作用或いはモータ作用してエンジンにかかる負荷を平準化することになり、もって、エンジンのトルク変動を可及的に抑制できて、燃費低減や排ガス低減、および騒音の低減に大きく貢献できる。しかもこのものは、電動機や大容量のバッテリ、インバータやコンバータ等の高価な機器を必要とせず、コストの抑制に大きく貢献できると共に、従来の油圧システムが採用されている作業機械への組込みが容易であって、汎用性に優れる。
請求項2の発明とすることにより、油圧ポンプ・モータのポンプ作用、モータ作用の切換えを、油圧ポンプ・モータとアキュムレータとを連結する油路に配されるバルブ手段を用いて簡単に行うことができる。
請求項3の発明とすることにより、メインポンプが要求するトルクに応じて適切に油圧ポンプ・モータをモータ作用、ポンプ作用させることができると共に、エンジンの出力トルクを、予め設定されたエンジン出力トルク目標値を保持するように制御することができる。
請求項4の発明とすることにより、油圧ポンプ・モータによってエンジン負荷を平準化するためのトルクを過不足無く供給或いは吸収できることになり、正確且つ迅速なエンジン負荷平準化制御を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1は、作業機械の一例である油圧ショベルに設けられる制御システムを示す図であって、1はエンジン、2、3は第一、第二メインポンプ、4は油タンク、A1・・・Anは走行や作業を行なうための各種油圧アクチュエータ(例えば、走行用油圧モータ、旋回用油圧モータ、ブームシリンダ、アームシリンダ、バケットシリンダ等)である。ここで、前記第一、第二メインポンプ2、3は、ギア等の動力伝達機構5を介してエンジン1に連結されていて、該エンジン1の動力により駆動して前記油圧アクチュエータA1・・・Anの油圧供給源になる可変容量型の油圧ポンプであって、本発明のメインポンプに相当する。尚、2a、3aは第一、第二メインポンプ2、3の容量可変手段である。
【0007】
さらに、6はコントロールバルブユニットであって、該コントロールバルブユニット6には、各油圧アクチュエータ用操作具(図示しないが、操作レバー、操作ペダル等)の操作に基づいて前記各油圧アクチュエータA1・・・Anに対する油供給排出制御をそれぞれ行なうコントロールバルブ(図示せず)が組み込まれている。
【0008】
さらに、7はエンジン1に前記動力伝達機構5を介して連結される可変容量型の油圧ポンプ・モータ、8は油圧エネルギーを蓄圧するアキュムレータ、9は油圧ポンプ・モータ7とアキュムレータ8とを連結する油路に配されて油の流れを制御する電磁弁(本発明のバルブ手段に相当する)である。そして、前記油圧ポンプ・モータ7は、後述するように、制御装置10から電磁弁9に出力される制御指令に基づいて、エンジン動力によりポンプ作用して上記アキュムレータ8に圧油供給する一方、アキュムレータ8からの圧油供給によりモータ作用してエンジン動力を補助するように構成されている。
【0009】
つまり、前記電磁弁9は、第一、第二ソレノイド9a、9bおよび第一〜第四ポート9c〜9fを備えた電磁比例式の三位置切換弁であって、第一ポート9cは前記油圧ポンプ・モータ7の入口側ポート7aに、第二ポート9dは油圧ポンプ・モータ7の出口側ポート7bに、第三ポート9eは前記アキュムレータ8に、第四ポート9fは油タンク4に接続されている。また、油圧ポンプ・モータ7の入口側ポート7aは、前述したように電磁弁9の第一ポート9cに接続されると共に、入口側チェック弁11を介して油タンク4に接続されているが、該入口側チェック弁11は、油タンク4から油圧ポンプ・モータ7の入口側ポート7aへの油の流れは許容するが、油圧ポンプ・モータ7の入口側ポート7a及び電磁弁9の第一ポート9cから油タンク4への油の流れは阻止するように構成されている。さらに、油圧ポンプ・モータ7の出口側ポート7bと電磁弁9の第二ポート9dとの間には、油圧ポンプ・モータ7の出口側ポート7bから電磁弁9の第二ポート9dへの油の流れは許容するが、逆方向の流れは阻止する出口側チェック弁12が配されている。
【0010】
そして、前記電磁弁9は、第一、第二ソレノイド9a、9bが共に非励磁の状態では、油圧ポンプ・モータ7とアキュムレータ8とを遮断する中立位置Nに位置している。この状態では、油圧ポンプ・モータ7の入口側ポート7aおよび出口側ポート7bは、共に油タンク4に連通している。
【0011】
一方、制御装置10からの制御指令に基づいて第一ソレノイド9aが励磁すると、電磁弁9は、油圧ポンプ・モータ7の出口側ポート7bとアキュムレータ8とを接続する第一位置Xに切換わる。この状態では、油圧ポンプ・モータ7は、エンジン動力により駆動して、入口側ポート7aから油タンク4の油を吸込んで出口側ポート7bから吐出するポンプ作用を行なうと共に、該油圧ポンプ・モータ7の吐出油は、電磁弁9を経由してアキュムレータ8に蓄圧されるようになっている。
【0012】
これに対し、制御装置10からの制御指令に基づいて第二ソレノイド9bが励磁すると、電磁弁9は、アキュムレータ8と油圧ポンプ・モータ7の入口側ポート7aとを接続すると共に、油圧ポンプ・モータ7の出口側ポート7bと油タンク4とを接続する第二位置Yに切換わる。この状態では、アキュムレータ8の圧油が油圧ポンプ・モータ7の入口側ポート7aに流入すると共に、出口側ポート7bから流出する油が油タンク4に流れ、これにより油圧ポンプ・モータ7は、モータ作用してエンジン動力を補助するようになっている。尚、7cは油圧ポンプ・モータ7の容量可変手段であって、該容量可変手段7cは、制御装置10から出力される制御指令に基づいて制御される。
【0013】
一方、前記制御装置10は、マイクロコンピュータ等を用いて構成されるものであって、入力側に、前記第一、第二メインポンプ2、3の吐出圧をそれぞれ検出する第一、第二ポンプ圧力センサ13、14、アキュムレータ8の圧力を検出するアキュムレータ圧力検出センサ15、エンジン回転数設定具16、各油圧アクチュエータ用操作具の操作を検出する操作具操作検出手段L1・・・Ln等が接続され、また、出力側に、前記第一、第二メインポンプ2、3の容量可変手段2a、3a、油圧ポンプ・モータ7の容量可変手段7c、電磁弁9等が接続されている。尚、制御装置10から容量可変手段2a、3a、7cへの制御指令は、図示しない電油変換弁を介して出力されるが、本実施の形態では、第一、第二メインポンプ2、3および油圧ポンプ・モータ7は、何れも斜板角度によって容量が変化する斜板式アキシャルピストン形のものであって、制御装置10から容量可変手段2a、3a、7cへの制御指令は斜板角指令となる。
【0014】
また、前記エンジン回転数設定具16は、オペレータがエンジン1の無負荷時回転数を任意に設定するための操作具(アクセルダイヤル、アクセルレバー等)であって、該エンジン回転数設定具16により設定されるエンジン1の無負荷時回転数に応じて、第一、第二メインポンプ2、3の最大出力値が設定されるようになっている。つまり、エンジン回転数設定具16によって、エンジン1の無負荷時回転数が設定されると共に、該無負荷時回転数に応じた第一、第二メインポンプ2、3の最大出力値が設定されるようになっている。
【0015】
次いで、前記制御装置10の行なうエンジン負荷平準化の制御について、図2に示す制御ブロック図に基づいて説明する。該図2において、17はメインポンプ容量演算部であって、該メインポンプ容量演算部17は、前記エンジン回転数設定具16、操作具操作検出手段L1・・・Ln、第一、第二ポンプ圧力センサ13、14からの信号を入力し、これら入力信号に基づいて、メインポンプ最大出力値と操作具操作量とポンプ吐出圧とに対応したポンプ流量にするべく、第一、第二メインポンプ2、3の容量(一回転あたりの押しのけ容積)を演算する。そして、該メインポンプ容量演算部17で演算された第一、第二メインポンプ2、3の容量は、斜板角指令として第一、第二メインポンプ2、3の容量可変手段2a、3aに出力されると共に、後述する第一、第二メインポンプトルク演算部18、19に入力される。
【0016】
前記第一メインポンプトルク演算部18は、メインポンプ容量演算部17から出力される第一メインポンプ2の容量と、第一ポンプ圧力センサ13により検出される第一メインポンプ2の吐出圧とを入力し、これら入力値に基づいて、第一メインポンプ2が要求する第一メインポンプ要求トルクを演算する。該第一メインポンプ要求トルクは、第一メインポンプ2の容量と吐出圧とを乗じることにより演算される。また、第二メインポンプトルク演算部19は、前記第一メインポンプトルク演算部18と同様にして、第二メインポンプ3が要求する第二メインポンプ要求トルクを演算する。そして、これら第一、第二メインポンプトルク演算部18、19で演算された第一、第二メインポンプ2、3の要求トルクは、加算器20に出力される。尚、本実施の形態において、本発明の負荷検出手段は、油圧アクチュエータA1・・・Anの油圧供給源である第一、第二メインポンプ2、3が要求するトルクを検出する要求トルク検出手段であると共に、該要求トルク検出手段は、本実施の形態では、エンジン回転数設定具16、操作具操作検出手段L1・・・Ln、および第一、第二ポンプ圧力センサ13、14により構成されている。
【0017】
前記加算器20は、第一、第二メインポンプトルク演算部18、19から出力される第一、第二メインポンプ2、3の要求トルクを入力し、これら第一メインポンプ2の要求トルクと第二メインポンプ3の要求トルクとを合計して、該合計された要求トルクをメインポンプ要求トルクとしてフィルタ21に出力する。
【0018】
前記フィルタ21は、加算器20から入力されるメインポンプ要求トルクの交流成分Tを抽出して、電磁弁制御部22および油圧ポンプ・モータ容量演算部23に出力する。ここで、前記フィルタ21で抽出されたメインポンプ要求トルクの交流成分Tの一例を図3に示すが、該交流成分は、予め設定されるエンジン出力トルク目標値Tsを基準として「正、負」が判定される。該エンジン出力トルク目標値Tsは、エンジン1の特性に応じて適宜設定されるが、本実施の形態では、前記エンジン回転数設定具16により設定されるエンジン1の無負荷時回転数に応じて設定されている。
【0019】
前記電磁弁制御部22は、フィルタ21から入力されるメインポンプ要求トルクの交流成分Tに基づいて、前記電磁弁9に対する制御指令を演算して、電磁弁9の第一ソレノイド9a或いは第二ソレノイド9bに励磁指令を出力する。つまり、メインポンプ要求トルクの交流成分Tが「正」の場合(交流成分Tがエンジン出力トルク目標値Tsよりも大きい場合)には、電磁弁9を第二位置Yに切換えるべく、第二ソレノイド9bに対して励磁の制御指令が出力される。尚、該第二ソレノイド9bへの励磁指令は、アキュムレータ8の圧力が最低作動圧力として予め設定される第一設定圧力以下になった場合には、停止される。一方、メインポンプ要求トルクの交流成分Tが「負」の場合(交流成分Tがエンジン出力トルク目標値Tsよりも小さい場合)には、電磁弁9を第一位置Xに切換えるべく、第一ソレノイド9aに対して励磁の制御指令が出力される。尚、該第一ソレノイド9aへの励磁指令は、アキュムレータ8の圧力が最高作動圧力として予め設定される第二設定圧力以上になった場合には、停止される。また、メインポンプ要求トルクの交流成分Tとエンジン出力トルク目標値Tsとが等しい場合には、電磁弁9に対する励磁指令は出力されない。
【0020】
さらに、前記油圧ポンプ・モータ容量演算部23は、フィルタ21から入力されるメインポンプ要求トルクの交流成分Tと、アキュムレータ圧力センサ15から入力されるアキュムレータ8の圧力とに基づいて、油圧ポンプ・モータ7の容量を演算する。この場合、メインポンプ要求トルクの交流成分Tとエンジン出力トルク目標値Tsとの差ΔT(ΔT=T−Ts)を求め、該差ΔTに相当する分のトルクを油圧ポンプ・モータ7が供給(差ΔTが「+」の場合)或いは吸収(差ΔTが「−」の場合)するように、油圧ポンプ・モータ7の容量を演算する。
【0021】
つまり、メインポンプ要求トルクの交流成分Tが「正」の場合(交流成分Tがエンジン出力トルク目標値Tsよりも大きい場合)には、電磁弁制御部22から出力される制御指令により電磁弁9が第二位置Yに切換わり、これにより油圧ポンプ・モータ7は、前述したように、アキュムレータ8からの圧油供給によりモータ作用してエンジン動力を補助する。この場合、油圧ポンプ・モータ容量演算部23からの制御指令により、油圧ポンプ・モータ7の容量は、メインポンプ要求トルクの交流成分Tとエンジン出力トルク目標値Tsとの差ΔTに相当する分のトルクをエンジン1に供給するように制御される。一方、メインポンプ要求トルクの交流成分Tが「負」の場合(交流成分Tがエンジン出力トルク目標値Tsよりも小さい場合)には、電磁弁制御部22から出力される制御指令により電磁弁9が第一位置Yに切換わり、これにより油圧ポンプ・モータ7は、前述したように、ポンプ作用してアキュムレータ8に吐出油を供給する。この場合、油圧ポンプ・モータ容量演算部23からの制御指令により、油圧ポンプ・モータ7の容量は、交流成分Tとエンジン出力トルク目標値Tsとの差ΔTに相当する分のトルクをエンジン1から吸収するように制御される。而して、エンジン1には、第一、第二メインポンプ2、3が要求するトルクの変動にかかわらず、エンジン出力トルク目標値Tsを出力する分の負荷がかかることになり、この様にして、油圧ポンプ・モータ7をポンプ作用或いはモータ作用させてエンジン負荷を平準化するエンジン負荷平準化制御が実行される構成になっている。
【0022】
叙述の如く構成された本形態において、油圧ショベルには、エンジン1と、該エンジン1により駆動される第一、第二メインポンプ2、3と、該第一、第二メインポンプ2、3を油圧供給源にする各種油圧アクチュエータA1・・・Anとが設けられているが、さらに該油圧ショベルには、エンジン負荷を平準化させるための制御システムとして、エンジン1に動力伝達機構5を介して連結され、エンジン動力によりポンプ作用する一方、モータ作用してエンジン動力を補助する油圧ポンプ・モータ7と、該油圧ポンプ・モータ7のポンプ作用時に油圧ポンプ・モータ7の吐出油を蓄圧する一方、モータ作用時の油圧ポンプ・モータ7に圧油供給するアキュムレータ8と、油圧アクチュエータA1・・・Anの行なう作業負荷を検出する作業負荷検出手段(該作業負荷検出手段は、前述したように、本実施の形態では、第一、第二メインポンプ2、3が要求するトルクを検出する要求トルク検出手段であって、エンジン回転数設定具16、操作具操作検出手段L1・・・Ln、および第一、第二ポンプ圧力センサ13、14により構成される)とが設けられていると共に、該作業負荷検出手段により検出される作業負荷に応じて油圧ポンプ・モータ7をポンプ作用或いはモータ作用させることでエンジン1にかかる負荷を平準化させる制御、即ちエンジン負荷平準化制御を行なう制御装置10が設けられている。
【0023】
この結果、前記制御装置10の行なうエンジン負荷平準化制御によって、油圧アクチュエータA1・・・Anの行なう作業負荷が変動しても、エンジン1に連結された油圧ポンプ・モータ7がポンプ作用或いはモータ作用してエンジン1にかかる負荷を平準化することになり、もって、エンジン1のトルク変動を可及的に抑制できて、燃費低減や排ガス低減、および騒音の低減に大きく貢献できる。
【0024】
しかも、本発明のエンジン負荷平準化の制御システムは、油圧システムと電気システムとを組み合わせてエンジンの平準化を図るもののように、電動機や大容量のバッテリ、インバータやコンバータ等の高価な機器を必要とせず、コストの抑制に大きく貢献できると共に、従来の油圧システムが採用されている作業機械への組込みが容易であって、汎用性に優れる。また、大型の作業機械においても、油圧ポンプ・モータ7及びアキュムレータ8の容量を大型化するだけで、簡単に対応することができる。
【0025】
さらにこのものでは、油圧ポンプ・モータ7とアキュムレータ8とを連結する油路に配されて油の流れを制御する電磁弁9を、制御装置10からの制御指令によって切換えることで、油圧ポンプ・モータ7をポンプ作用或いはモータ作用させる構成になっているから、油圧ポンプ・モータ7のポンプ作用、モータ作用の切換えを、上記電磁弁9を用いて簡単に行うことができる。
【0026】
また、作業負荷を検出する作業負荷検出手段として、本実施の形態では、第一、第二メインポンプ2、3が要求するトルクを検出する要求トルク検出手段(エンジン回転数設定具16、操作具操作検出手段L1・・・Ln、および第一、第二ポンプ圧力センサ13、14)が用いられていると共に、制御装置10は、上記要求トルク検出手段により検出されたメインポンプ要求トルクの交流成分Tを求め、該メインポンプ要求トルクの交流成分Tの正負を予め設定されるエンジン出力トルク目標値Tsを基準として判定し、交流成分Tが正の場合(交流成分Tがエンジン出力トルク目標値Tsよりも大きい場合)には油圧ポンプ・モータ7をモータ作用させる一方、交流成分が負の場合(交流成分Tがエンジン出力トルク目標値Tsよりも小さい場合)にはポンプ作用させる構成になっているから、第一、第二メインポンプ2、3が要求するトルクに応じて適切に油圧ポンプ・モータ7をモータ作用、ポンプ作用させることができると共に、エンジン1の出力トルクを、エンジン1の特性に応じて予め設定されたエンジン出力トルク目標値Tsを保持するように制御することができる。
【0027】
そのうえ、前記油圧ポンプ・モータ7は、制御装置10により容量が制御される容量可変型のものであると共に、制御装置10は、メインポンプ要求トルクの交流成分Tとアキュムレータ8の圧力とに基づいて、油圧ポンプ・モータ7がメインポンプ要求トルクの交流成分Tとエンジン出力トルク目標値Tsとの差に相当する分のトルクを供給或いは吸収するように油圧ポンプ・モータ7の容量可変手段7aを制御する構成であるから、油圧ポンプ・モータ7によってエンジン負荷を平準化するためのトルクを過不足無く供給或いは吸収できることになり、正確且つ迅速なエンジン負荷平準化制御を行うことができる。
【0028】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されないことは勿論であって、例えば、油圧アクチュエータの行なう作業負荷を検出する作業負荷検出手段として、エンジン回転数を検出するエンジン回転数センサを用いることもできる。つまり、エンジン回転数は作業負荷が大きくなるにつれて低下するため、該エンジン回転数によって作業負荷を検出することができるが、この場合には、エンジン回転数に応じて油圧ポンプ・モータをポンプ作用或いはモータ作用させることになる。また、本発明は、油圧ショベルに限定されることなく、油圧アクチュエータを備えた各種作業機械に実施できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】制御システムを示す図である。
【図2】制御装置の制御を示すブロック図である。
【図3】メインポンプ要求トルクの交流成分の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
1 エンジン
2、3 第一、第二メインポンプ
5 動力伝達機構
7 油圧ポンプ・モータ
8 アキュムレータ
9 電磁弁
10 制御装置
13、14 第一、第二ポンプ圧力センサ
15 アキュムレータ圧力センサ
16 エンジン回転数設定具
A1・・・An 油圧アクチュエータ
L1・・・Ln 操作具操作検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、該エンジンにより駆動されるメインポンプと、該メインポンプを油圧供給源にする各種油圧アクチュエータとを備えてなる作業機械において、
前記エンジンに動力伝達機構を介して連結され、エンジン動力によりポンプ作用する一方、モータ作用してエンジン動力を補助する油圧ポンプ・モータと、
該油圧ポンプ・モータのポンプ作用時に油圧ポンプ・モータの吐出油を蓄圧する一方、モータ作用時の油圧ポンプ・モータに圧油供給するアキュムレータと、
前記油圧アクチュエータの行なう作業負荷を検出する作業負荷検出手段と、
該作業負荷検出手段より検出される作業負荷に応じて油圧ポンプ・モータをポンプ作用或いはモータ作用させてエンジンにかかる負荷を平準化させるエンジン負荷平準化制御を行なう制御装置とを設けたことを特徴とする作業機械における制御システム。
【請求項2】
制御システムは、油圧ポンプ・モータとアキュムレータとを連結する油路に配されて油の流れを制御するバルブ手段を備えると共に、制御装置は、該バルブ手段に制御指令を出力して油圧ポンプ・モータをポンプ作用或いはモータ作用させることを特徴とする請求項1に記載の作業機械における制御システム。
【請求項3】
作業負荷検出手段は、メインポンプが要求するトルクを検出する要求トルク検出手段であると共に、制御装置は、エンジン負荷平準化制御を行なうにあたり、前記要求トルク検出手段により検出されたメインポンプ要求トルクの交流成分を求め、該メインポンプ要求トルクの交流成分の正負を予め設定されるエンジン出力トルク目標値を基準として判定し、交流成分が正の場合には油圧ポンプ・モータをモータ作用させる一方、交流成分が負の場合にはポンプ作用させることを特徴とする請求項1または2に記載の作業機械における制御システム。
【請求項4】
油圧ポンプ・モータは、制御装置により容量が制御される容量可変型の油圧ポンプ・モータであると共に、制御装置は、メインポンプ要求トルクの交流成分とアキュムレータの圧力とに基づいて、油圧ポンプ・モータがメインポンプ要求トルクとエンジン出力トルク目標値との差に相当する分のトルクを供給或いは吸収するように油圧ポンプ・モータの容量を制御することを特徴とする請求項3に記載の作業機械における制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−121373(P2010−121373A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−296767(P2008−296767)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(000190297)キャタピラージャパン株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】