説明

作業機械

【課題】小型にして作動体の移動量を大きくし、作業範囲の拡大、あるいは深い地盤改良が行える作業機械を得る。
【解決手段】本体部5に支持アーム17を前方に突出させて設け、該支持アーム17の前端部に設けたガイド体20を起倒回動させる回動シリンダ22を設け、前記ガイド体20に中継移動体24と作動体10とを並列に配置してそれぞれ個別に前後摺動可能に設け、前記中継移動体24の前部と後部とに前部ガイド輪27と後部ガイド輪28とをそれぞれ回転可能に設け、前記ガイド体20と作動体10であってかつ前記前部ガイド輪27と後部ガイド輪28との間に位置する部位に、前進緊張体30の両端部と後進緊張体31の両端部とを連結し、前進緊張体30の中途を前記前部ガイド輪27に懸回し、後進緊張体31の中途を前記後部ガイド輪28に懸回し、前記中継移動体24をガイド体20に対して前後方向に移動させる作動シリンダ32を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型にして遠距離の対象物を移動あるいは押し倒したり、地盤を深く掘削あるいは掘削した穴に地盤改良材を投入して地盤を改良したりする作業機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として特許文献1があった。即ち、本体部に支持アームを前方に突出させて設け、該支持アームの前端部にポールを昇降させる昇降装置を回動可能に取付け、該昇降装置を上下及び前後(水平)方向に回動させるシリンダを設け、前記ポールの下端部に砕石供給用のホースを接続するとともに、該ホースから排出された採石を加圧する回転羽を取付ける。
【0003】
そして、使用時には前記ポールを上下方向に回動させて地面の掘削穴に対面させ、昇降装置を作動させて該ポールを掘削穴内に挿通し、前記ホースから掘削穴内に砕石を供給するとともに、回転羽を回転させてホースから排出された採石を掘削孔内に加圧充填する。また、不使用時には前記ポールを本体部の上方で前後方向に回動させて本体部とともに移動可能にするようにしたものがあった。
【0004】
前記従来のものは、ポールが昇降装置によって直接上下動されるため、ポールの移動ストロークを大きくしようとすると、これに対応して昇降装置を大型にする必要があった。また、ホースがポールの外側に沿って延出していたため、ホースの巻取り装置を必要とし、装置が大型になったり、ホースが損傷し易くなったりするものであった。
【特許文献1】特開2006−188916号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、小型にして作動体の移動量を大きくし、作業範囲の拡大、あるいは深い地盤改良が行える作業機械を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記目的を達成するために以下の如く構成したものである。即ち、請求項1に係る発明は、本体部のベースに支持アームを前方に突出させて設け、該支持アームの前端部に、ガイド体を左右方向の軸心を有する支点ピンを介して回動可能に設けるとともに、該ガイド体を前記支点ピンを中心として起倒回動させる回動シリンダを設け、前記ガイド体に細長い中継移動体と作動体とを並列に配置してそれぞれ個別に前後摺動可能に設け、前記中継移動体の前部と後部とに前部ガイド輪と後部ガイド輪とをそれぞれ回転可能に設け、前記ガイド体と作動体であってかつ前記前部ガイド輪と後部ガイド輪との間に位置する部位に、それぞれ前進緊張体の両端部と後進緊張体の両端部とを連結し、前進緊張体の中途を前記前部ガイド輪に懸回し、後進緊張体の中途を前記後部ガイド輪(28)に懸回し、前記中継移動体をガイド体に対して前後方向に移動させる作動シリンダを設ける構成にしたものである。
請求項2に係る発明は、前記前進緊張体の一端部及び後進緊張体の一端部をガイド体の後端部に連結し、前進緊張体の他端部及び後進緊張体の他端部を作動体の後端部に連結したものである。
請求項3に係る発明は、前記ガイド体にシャッタ付きのホッパを設け、作動体を筒状にするとともに該作動体の一側に前記ホッパの流出口に対面する材料の流入口を長手方向に所定ピッチで設けたものである。
請求項4に係る発明は、前記作動体に設けた材料の流入口を閉塞する蓋体を設けるととともに、該蓋体は前記流入口の内側に配置して該流入口の上縁部に連結したものである。
請求項5に係る発明は、前記作動体の前端部に油圧モータを設け、該油圧モータに回転アタッチメントを設けたものである。
【発明の効果】
【0007】
本願の請求項1に係る発明は、作動シリンダによって中継移動体をガイド体に対して前方に移動させると、前部ガイド輪の前進によって前進緊張体に張力が発生し、作動体が前進する。このとき、前部ガイド輪が動滑車の機能を発揮し、作動体の前進移動量は中継移動体の前進移動量の2倍となる。また、前記作動シリンダによって中継移動体をガイド体に対して後方に移動させると、後部ガイド輪の後進によって後進緊張体に張力が発生し、作動体が後進する。このとき、後部ガイド輪が動滑車の機能を発揮し、作動体の後進移動量は中継移動体の後進移動量の2倍となる。この結果、ストロークの小さい作動シリンダ及び短いガイド体によって長い作動体を大きく移動させることができる。
請求項2に係る発明は、ガイド体の長さを有効に活用して作動体を大きく往復動させることができ、装置がより小型になる。
請求項3に係る発明は、ホッパが本体部の接近する定位置となり、ホッパへの材料の投入が容易になる。また、作動体が移動すると該作動体に設けた所定の流入口が順次ホッパの流出口に対面するので、ホッパと作動体との間に特別な連結ホースを設ける必要がなくなり、構造がより簡素になる。
請求項4に係る発明は、作動体に設けた所定の流入口がホッパの流出口に対面すると、該対面した流出口の蓋体がホッパから流出する材料の圧力で開かれ、この部からホッパ内の材料が作動体内に円滑に流入することになる。また、ホッパよりも下段に位置する流入口の蓋体は該蓋体の自重、及び作動体内を流動する材料によって閉塞され、作動体内の材料が不用意に外部に漏洩しなくなる。
請求項5に係る発明は、油圧モータにオーガー、あるいは回転加圧具等の回転アタッチメントを取付けることにより、地面の掘削、あるいは掘削穴に投入した材料を加圧して高密度に充填することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下本発明の実施例を図面に基いて説明する。図1は本発明による作業機械の運搬時の姿勢を示す側面図、図2は本発明による作業機械の作動体起立状態を示す側面図、図3は図2の正面図、図4は本発明による作業機械の掘削状態を示す側面図、図5は本発明による作業機械のホッパ部を示す拡大断面図である。
【0009】
図1において、1は作業機械であり、該作業機械1は、走行用のクローラ3を有するボデイ2の上部に本体部5が上下軸心を中心として旋回可能に取付けられ、該本体部5は旋回するベース6に運転室7、作動体10、エンジン等が取付けられている。
【0010】
前記作動体10は支持装置15によって本体部5に起倒可能に、かつ本体部5に対して前後(又は上下)方向に移動可能に支持される。前記支持装置15は以下の如くなっている。まず、本体部5のベース6に支柱16を起立固定し、該支柱16に支持アーム17を前方(図1において左方)に突出させてボルト締め固定する。なお、前記支持アーム17は支柱16にシリンダによって回動可能に取付けるようにしてもよい。
【0011】
前記支持アーム17の前端部に、前後方向に延びるガイド体20を起倒(鉛直−水平))方向に回動可能に連結する。即ち、ガイド体20の長手(前後)方向中間部にブラケット21を固定し、該ブラケット21の前端部と前記支持アーム17の前端部とを、支点ピンP1を介して回動可能に連結する。また、前記支持アーム17の後部と前記ブラケット21の後部とに回動シリンダ22を、支点ピンP2、P3を介して回動可能に連結し、該回動シリンダ22を伸縮作動させることによって前記ガイド体20を、支点ピンP1を中心として鉛直方向(図2)、あるいは水平(前後)方向(図1)に回動させる。
【0012】
前記ガイド体20は本体部5の前後長に略対応する長さの筒状とし、該ガイド体20の上部に前後方向に長い中継移動体24を並列に配置し、これを中継移動体24の前部に取付けた前部スライドシュー25とガイド体20の後部に取付けた後部スライドシュー26を介して前後摺動可能に連結する。前記中継移動体24の前端部に前部ガイド輪をなす上下一対の前部ガイドスプロケット27を、該中継移動体24の後端部に後部ガイド輪をなす上下一対の後部ガイドスプロケット28をそれぞれ回転自在に取付ける。
【0013】
前記中継移動体24の上部に前後方向に長い作動体10を並列に配置し、これを作動体10の後部に取付けた前後一対のスライドシュー11を介して中継移動体24に前後摺動可能に連結する。前記ガイド体20の後部に前進緊張体をなす前進チェーン30の一端部30aと、後進緊張体をなす後進チェーン31の一端部31aとを連結し、前進チェーン30は、その中間部を前記中継移動体24に取付けた前部ガイドスプロケット27に前方側から懸回した後、その他端30bを作動体10の後部に連結し、後進チェーン31は、その中間部を前記中継移動体24に取付けた後部ガイドスプロケット28に後方から懸回した後、その他端31bを前記作動体10の後部に連結する。なお、前述した前進チェーン30及び後進チェーン31はワイヤ、あるいはロープとしてもよい。この場合は前後部のガイドスプロケット27,28をプーリーにする。
【0014】
前記ガイド体20の後部に作動シリンダ32のケースを嵌合させて連結し、該作動シリンダ32のロッド32aを後方に突出させ、その後端を中継移動体24の後端部にピン連結する。これにより、前記作動シリンダ32を短縮作動させることによって、中継移動体24をガイド体20に対して前方に移動させ、前部ガイドスプロケット27の前進により、前進チェーン30を緊張して作動体10を中継移動体24の前進移動量に対して2倍の移動量で前進させる。また、前記作動シリンダ32を伸長作動させることによって、中継移動体24をガイド体20に対して後方に移動させ、後部ガイドスプロケット28の後進により、後進チェーン31を緊張して作動体10を中継移動体24の後進移動量に対して2倍の移動量で後進させる。
【0015】
前記作動体10は筒状に形成して砕石等の材料(地盤改良材)が流通できるようにするとともに、図1に示すように、その一側にホッパ35から材料が流入する多数の流入口12を全長に亘たって所定ピッチで形成する。前記各流入口12は、図5に示すように、蓋体13によって開閉される。該蓋体13は、可撓性のシートを流入口の内側に配置し、その上端を流入口12の上縁部にビス13aにより連結して懸垂支持し、ホッパ35から作動体10への材料流入は許容し、作動体10から外部への材料流出は阻止するようになっている。図5において、14は作動体10内に取付けた案内板であり、作動体10内に流入した材料を下方に案内するものである。
【0016】
前記流入口12に材料を供給するホッパ35は、ガイド体20に取付け、その流出口35aを前記流入口12の対面側に形成し、該流出口35aをシャッタ36で開閉する。該シャッタ36はホッパ35に取付けたシャッタシリンダ37によって開閉作動させる。
【0017】
前記作動体10の前端部に油圧モータ40を取付ける。該油圧モータ40は軸心部に材料の流通孔を有するロータの外周部に環状の波形カムを形成し、該ロータを包囲する環状のケースに、多数の油圧ピストンを前記波形カムに対面させて配列し、該油圧ピストンを順次作動させることにより、前記波形カムを介してロータを回転させるようにした環状の油圧モータからなり、該油圧モータ40を前記作動体10の前端部に同軸に取付ける。そして、前記油圧モータ40に回転アタッチメント、本例では掘削用のオーガ(ドリル)41を同軸に取付ける。なお、前記オーガ41は掘削穴内に投入した材料を加圧する回転加圧具としてもよい。
【0018】
次に前述した作業機械1の使用態様について説明する。まず、作業機械をトラック等で現地に運搬する際には、図1に示すように、回動シリンダ22を短縮作動させてガイド体20を前後方向水平に倒し、また、作動シリンダ32を伸長作動させて中継移動体24及び作動体10を後方に移動させ、これらを前記ガイド体20上で並列にオーバーラップさせ、これらが本体部5から前後方向に大きく突出しないようにする。
【0019】
次に、地面Gを掘削、あるいは掘削孔Hに材料を投入する際には、図2、図3に示すように、回動シリンダ22を伸長作動させて前記ガイド体20、中継移動体24及び作動体10を地面Gに対して垂直に起立させる。そして、地面Gを掘削する際には、油圧モータ40を起動させてオーガー41を回転させ、この状態で作動シリンダ32を間欠的に伸縮作動させる。
【0020】
即ち、掘削した土がオーガー41の羽根部に充満するまで(オーガーの長さ分)前記作動シリンダ32を短縮作動させてオーガー41を前進させ、該オーガー41の羽根部に土が充満した時点で前記作動シリンダ32を伸長作動させてオーガー41を地面Gから引き上げ、前記充満した土を外部に排出し、該排出が終了した時点で前記作動シリンダ32を再度短縮作動させ、オーガー41による掘削を続行し、該オーガー41の羽根部に土が再度充満した時点で前記作動シリンダ32を伸長作動させてオーガー41を地面Gから引き上げ、前記充満した土を外部に排出する。この動作を繰り返して図4に示すように地面Gに所定深さの穴Hを形成する。
【0021】
次に、前記掘削した穴Hに材料を充填する際には、前記オーガー41を作動体10から取り外し、代わりに円筒体の下端部外周に送り羽根を有する回転加圧具(図示省略)を取付ける。そして、作動シリンダ32を短縮作動させることにより、作動体10を前記回転加圧具とともに掘削穴H内に嵌合させる。該嵌合は、回転加圧具が掘削穴Hの底部に接近する如く嵌合させる。
【0022】
次いで、ホッパ35に地盤強化用の材料、本例では砕石を投入した後、シャッタ36を開作動させてホッパ35の流出口35aを開く。さすれば、ホッパ35内の材料が前記流出口35aから流出し、該流出口35aと対面する流入口12から作動体10内に前記材料が流入する。該材料は、作動体10内、油圧モータ40の軸心部、及び回転加圧具の軸心部を流通して掘削穴H内に排出される。
【0023】
そして、前記油圧モータ40を起動させると、回転加圧具が回転して前記掘削穴H内に排出された材料を押圧して高密度に充填する。該充填を行ないつつ、作動シリンダ32を次第に伸長作動させて作動体10及び回転加圧具を掘削穴Hの上部側に移動させ、前記掘削穴Hの全域に材料を高密度に充填する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による作業機械の運搬時の姿勢を示す側面図である。
【図2】本発明による作業機械の作動体起立状態を示す側面図である。
【図3】図2の正面図である。
【図4】本発明による作業機械の掘削状態を示す側面図である。
【図5】本発明による作業機械のホッパ部を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 作業機械
2 ボディ
3 クローラ
5 本体部
6 ベース
7 運転室
10 作動体
11 スライドシュー
12 流入口
13 蓋体
13a ビス
14 案内板
15 支持装置
16 支柱
17 支持アーム
20 ガイド体
21 ブラケット
22 回動シリンダ
24 中継移動体
25 前部スライドシュー
26 後部スライドシュー
27 前部ガイドスプロケット(前部ガイド輪)
28 後部ガイドスプロケット(後部ガイド輪)
30 前進チェーン(前進緊張体)
30a 一端部
30b 他端部
31 後進チェーン(後進緊張体)
31a 一端部
31b 他端部
32 作動シリンダ
35 ホッパ
35a 流出口
36 シャッタ
37 シャッタモータ
40 油圧モータ
41 オーガー(回転アタッチメント)
P1〜P3 支点ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部(5)のベース(6)に支持アーム(17)を前方に突出させて設け、該支持アーム(17)の前端部に、ガイド体(20)を左右方向の軸心を有する支点ピン(P1)を介して回動可能に設けるとともに、該ガイド体(20)を前記支点ピン(P1)を中心として起倒回動させる回動シリンダ(22)を設け、前記ガイド体(20)に細長い中継移動体(24)と作動体(10)とを並列に配置してそれぞれ個別に前後摺動可能に設け、前記中継移動体(24)の前部と後部とに前部ガイド輪(27)と後部ガイド輪(28)とをそれぞれ回転可能に設け、前記ガイド体(20)と作動体(10)であってかつ前記前部ガイド輪(27)と後部ガイド輪(28)との間に位置する部位に、それぞれ前進緊張体(30)の両端部と後進緊張体(31)の両端部とを連結し、前進緊張体(30)の中途を前記前部ガイド輪(27)に懸回し、後進緊張体(31)の中途を前記後部ガイド輪(28)に懸回し、前記中継移動体(24)をガイド体(20)に対して前後方向に移動させる作動シリンダ(32)を設けたことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
前進緊張体(30)の一端部(30a)及び後進緊張体(31)の一端部(31a)をガイド体(20)の後端部に連結し、前進緊張体(30)の他端部(30b)及び後進緊張体(31)の他端部(31b)を作動体(10)の後端部に連結したことを特徴とする請求項1記載の作業機械。
【請求項3】
ガイド体(20)にシャッタ(36)付きのホッパ(35)を設け、作動体(10)を筒状にするとともに該作動体(10)の一側に前記ホッパ(35)の流出口(35a)に対面する材料の流入口(12)を長手方向に所定ピッチで設けたことを特徴とする請求項1または2記載の作業機械。
【請求項4】
作動体(10)に設けた材料の流入口(12)を閉塞する蓋体(13)を設けるととともに、該蓋体(13)は前記流入口(12)の内側に配置して該流入口(12)の上縁部に連結したことを特徴とする請求項3記載の作業機械。
【請求項5】
作動体(10)の前端部に油圧モータ(40)を設け、該油圧モータ(40)に回転アタッチメント(41)を設けたことを特徴とする請求項1〜4いずれが1項に記載の作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−150170(P2009−150170A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−330328(P2007−330328)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(506374498)丸順エンジニアリング株式会社 (7)
【Fターム(参考)】