説明

作業用走行車

【課題】変速レバーの振動を抑制し、変速レバーの操作性を向上させる。
【解決手段】エンジンから供給される動力を変速する主変速機構と、該主変速機構を変速操作する主変速レバー4とを備えるトラクタにおいて、主変速レバー4を、本機側に設けられる本機側レバー部材9と、該本機側レバー部材9の先端部に着脱可能に装着される装着側レバー部材10とで構成すると共に、該装着側レバー部材10の基部に振動抑制用のウエイト10cを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速レバーを備えるトラクタなどの作業用走行車に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、作業用走行車は、エンジンから供給される動力を変速する変速機構と、該変速機構を変速操作する変速レバーとを備えている(例えば、特許文献1参照)。例えば、トラクタは、主変速機構、副変速機構、前後進切換機構などの走行系変速機構と、PTO変速機構、PTO逆転機構などの作業系変速機構とを備えると共に、これらの変速機構を変速操作するために、主変速レバー、副変速レバー、前後進切換レバー、PTO変速レバー、逆転PTOレバーなどの変速レバーを備えている。
【特許文献1】実公昭61−40984号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、この種の作業用走行車では、エンジン振動などに起因して変速レバーが振動し、変速レバーの操作性が低下するという問題がある。特に、複数のレバー部材を連結して構成される長い変速レバーでは、先端のグリップ部における振れ幅が大きくなり、振動による操作性の低下が顕著になる。また、変速レバーにおいては、長さ、形状、重さなどによる固有振動数があり、これが機体振動に一致すると、いわゆる共振現象によってレバー振動が増幅されてしまうという問題もある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、エンジンから供給される動力を変速する変速機構と、該変速機構を変速操作する変速レバーとを備える作業用走行車において、前記変速レバーを、本機側に設けられる本機側レバー部材と、該本機側レバー部材の先端部に着脱可能に装着される装着側レバー部材とで構成すると共に、該装着側レバー部材の基部に振動抑制用のウエイトを設けたことを特徴とする。
このようにすると、ウエイトにより変速レバーの振動を抑制し、変速レバーの操作性を向上させることができる。しかも、ウエイトは、装着側レバー部材の基部に設けられるので、重さの異なるウエイトが設けられた各種の装着側レバー部材を用意すると共に、各種の装着側レバー部材を適宜交換することにより、変速レバーの固有振動数を変化させて共振現象による振動の増幅を回避できるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
次に、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。図1において、1はトラクタ(作業用走行車)に搭載されるミッションケースであって、該ミッションケース1は、主クラッチ機構を介してエンジンの動力を入力すると共に、入力した動力を走行系の動力伝動経路と作業系の動力伝動経路とに分岐させる。そして、走行系の動力伝動経路には、主変速機構、副変速機構、前後進切換機構などの走行系変速機構が設けられる一方、作業系の動力伝動経路には、PTO変速機構、PTO逆転機構などの作業系変速機構が設けられ、これらの変速機構で変速した動力が車輪や作業機に出力されるが、これらの構成は従来と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0006】
図1及び図2に示すように、トラクタの操作部2には、各種の操作具が設けられている。操作部2に設けられる操作具には、機体を操向するステアリングホイール3の他、前述した主変速機構、副変速機構、前後進切換機構、PTO変速機構、PTO逆転機構などの変速機構を変速操作するための主変速レバー4、副変速レバー5、前後進切換レバー6、PTO変速レバー7、逆転PTOレバー8などの変速レバーが含まれている。
【0007】
ところで、この種のトラクタでは、エンジン振動などに起因して変速レバーが振動し、変速レバーの操作性が低下する可能性があり、特に、複数のレバー部材を連結して構成される長い変速レバーでは、先端のグリップ部における振れ幅が大きくなり、振動による操作性の低下が顕著になる。また、変速レバーにおいては、長さ、形状、重さなどによる固有振動数があり、これが機体振動に一致すると、いわゆる共振現象によってレバー振動が増幅されてしまう可能性もある。本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、以下、本発明が適用された主変速レバー4について、図3及び図4を参照して説明する。尚、本実施例では、主変速レバー4のみに本発明を適用しているが、主変速レバー4以外の変速レバー4においても本発明を適用できることは勿論である。
【0008】
図3及び図4に示すように、主変速レバー4は、本機側(ミッションケース1側)に設けられる本機側レバー部材9と、該本機側レバー部材9の先端部に着脱可能に装着される装着側レバー部材10とで構成されている。本機側レバー部材9の基部は、ホルダ11を介してミッションケース1に支持されている。ホルダ11内には、本機側レバー部材9を任意の方向に傾倒自在に支持するボールジョイント12と、本機側レバー部材9をニュートラル方向に付勢するバネ13と、本機側レバー部材9の操作方向を制限する一対のプレート14とが設けられており、本機側レバー部材9がニュートラル位置から所定の方向に傾倒することに応じて、ミッションケース1内に設けられる主変速機構の変速段が変更されるようになっている。
【0009】
装着側レバー部材10は、本機側レバー部材9の先端部に着脱可能に装着されており、その基部には、本機側レバー部材9の先端部に外嵌状に連結される連結パイプ10aが溶着される一方、先端部には、オペレータが握るグリップ部10bが螺着されている。このように、複数のレバー部材9、10を連結して構成される長い主変速レバー4では、先端のグリップ部10bにおける振れ幅が大きくなり、振動による操作性の低下が顕著になる可能性があるが、本発明の実施形態に係る主変速レバー4においては、装着側レバー部材10の基部に振動抑制用のウエイト10cを設けることにより、上記の問題点を解消している。具体的には、装着側レバー部材10の基部から後方に向けて厚板状のウエイト10cを突設し、該ウエイト10cにより変速レバー4の重心をレバー支点に近付けることにより、変速レバー4全体の振動を抑制し、変速レバー4の操作性を向上させる。尚、図中、符号の15は、本機側レバー部材9と装着側レバー部材10を連結する着脱自在な連結ピンである。
【0010】
次に、本実施形態の主変速レバー4を用いた振動抑制調節方法について説明する。まず、重さの異なるウエイト10cが設けられた装着側レバー部材10を複数種類用意する。例えば、ウエイト10cの重さが数百グラムである場合、ウエイト10cの重さを数十グラムピッチで相違させ、これらのウエイト10cを複数の装着側レバー部材10に設けておく。そして、いずれか任意の装着側レバー部材10を本機側レバー部材9に装着し、エンジンを定格回転にして装着側レバー部材10の振動幅を計測する。このときの変速レバー位置はニュートラルである。そして、計測した振動幅が所定の基準値を超える場合は、重さの異なるウエイト10cが設けられた装着側レバー部材10に交換し、再度、装着側レバー部材10の振動幅を計測する。そして、計測した振動幅が所定の基準値内に収まるまで上記の手順を繰り返す。このようにすると、主変速レバー4の固有振動数を任意に変化させることができるので、共振現象による振動の増幅を確実に回避し、主変速レバー4の振動を効果的に抑制することが可能になる。
【0011】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、エンジンから供給される動力を変速する主変速機構と、該主変速機構を変速操作する主変速レバー4とを備えるトラクタにおいて、主変速レバー4を、本機側に設けられる本機側レバー部材9と、該本機側レバー部材9の先端部に着脱可能に装着される装着側レバー部材10とで構成すると共に、該装着側レバー部材10の基部に振動抑制用のウエイト10cを設けたので、ウエイト10cにより主変速レバー4の振動を抑制し、主変速レバー4の操作性を向上させることができる。しかも、ウエイト10cは、装着側レバー部材10の基部に設けられるので、重さの異なるウエイト10cが設けられた各種の装着側レバー部材10を用意すると共に、各種の装着側レバー部材10を適宜交換することにより、主変速レバー4の固有振動数を変化させて共振現象による振動の増幅を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】トラクタのミッションケース及び変速操作系を示す側面図である。
【図2】トラクタの操作部を示す平面図である。
【図3】主変速レバーを示す側面図である。
【図4】主変速レバー(本機側レバー部材)の支持部構造を示すA−A断面図である。
【符号の説明】
【0013】
1 ミッションケース
2 操作部
4 主変速レバー
9 本機側レバー部材
10 装着側レバー部材
10a 連結パイプ
10b グリップ部
10c ウエイト
11 ホルダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンから供給される動力を変速する変速機構と、該変速機構を変速操作する変速レバーとを備える作業用走行車において、
前記変速レバーを、本機側に設けられる本機側レバー部材と、該本機側レバー部材の先端部に着脱可能に装着される装着側レバー部材とで構成すると共に、該装着側レバー部材の基部に振動抑制用のウエイトを設けたことを特徴とする作業用走行車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−56939(P2009−56939A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−225949(P2007−225949)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】