説明

作業療法用玩具及び容器連結具

【課題】視覚だけでなく、聴覚、触覚等の複数の感覚に対して刺激を与えることができ、上肢機能等を向上させることができるようにする。
【解決手段】二つの透明な容器15、及び各容器15を連結するコネクタを備えた容器ユニット12と、該容器ユニット12を、前記コネクタを介して回転自在に、かつ、着脱自在に支持する支持装置13とを有する。前記容器15内に所定の量の流動体及び多数の有色の移動体が収容される。容器ユニット12を回動させると、容器15内の流動体は、乱流を形成しながら下方の容器15内に急速に落下し、これに伴って、各色の移動体が、互いに衝突を繰り返しながら下方の容器15に移動させられる。そして、各移動体が衝突するときに、各種の音が発生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業療法用玩具及び容器連結具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、発達障害児、障害者、高齢者等の作業療法の対象者の視覚、聴覚、触覚等の感覚に対して刺激を与えることによって、身体的機能を向上させるようにしている。
【0003】
そして、作業療法として、例えば、輪郭が描かれた図案に着色することによって視覚に対して刺激を与える塗り絵が多く利用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−296566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の塗り絵においては、作業療法の対象者の視覚に対して刺激を与えることができるが、聴覚、触覚等の他の感覚に対して刺激を与えることができないので、身体的機能を十分に向上させることができない。
【0006】
また、塗り絵は着色してしまうと、作業療法において繰り返し利用することができない。
【0007】
本発明は、前記従来の塗り絵の問題点を解決して、作業療法の対象者の視覚だけでなく、聴覚、触覚等の複数の感覚に対して刺激を与えることができ、視知覚、聴知覚等を介して外界への興味を引き出すとともに、注意力、目と手との協調性、上肢機能等を向上させることができる作業療法用玩具及び容器連結具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのために、本発明の作業療法用玩具においては、首部にねじ部が形成された二つの透明な容器、及び前記ねじ部で各容器を連結するコネクタを備えた容器ユニットと、該容器ユニットを、前記コネクタを介して回転自在に、かつ、着脱自在に支持する支持装置とを有する。
【0009】
そして、前記容器内に所定の量の流動体及び多数の有色の移動体が収容される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、作業療法用玩具においては、首部にねじ部が形成された二つの透明な容器、及び前記ねじ部で各容器を連結するコネクタを備えた容器ユニットと、該容器ユニットを、前記コネクタを介して回転自在に、かつ、着脱自在に支持する支持装置とを有する。
【0011】
そして、前記容器内に所定の量の流動体及び多数の有色の移動体が収容される。
【0012】
この場合、回転自在に配設された容器ユニットの各容器内に、所定の量の流動体及び多数の有色の移動体が収容されるので、容器ユニットを回動させると、容器内の流動体は、乱流を形成しながら下方の容器内に急速に落下し、これに伴って、各色の移動体が、互いに衝突を繰り返しながら下方の容器に移動させられる。そして、各移動体が衝突するときに、各種の音が発生する。
【0013】
また、流動体が下方の容器に移動させられる際に、下方の容器内の空気が流動体の流れに逆らって、連通路を介して上方の容器内に移動させられるので、流動体内に気泡が形成されるとき、気泡が流動体の表面に到達して弾けるとき等に大小の音が発生するだけでなく、容器ユニットに振動が発生する。
【0014】
したがって、作業療法の対象者が作業療法用玩具を操作し、容器ユニットを回動させるだけで、各色の移動体を多様に挙動させ、各種の音を発生させるとともに、容器ユニットに振動を発生させることができるので、作業療法の対象者の視覚、聴覚、触覚等の感覚に対して刺激を与えることができ、視知覚、聴知覚等を介して外界への興味を引き出すとともに、注意力、目と手との協調性、上肢機能等を向上させることができる。また、作業療法において、作業療法用玩具を繰り返し利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態における作業療法用玩具の斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態における作業療法用玩具の分解斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるコネクタの斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態におけるコネクタの縦断面図である。
【図5】本発明の実施の形態におけるコネクタと容器との連結方法を説明するための図である。
【図6】本発明の実施の形態におけるコネクタと容器との連結状態を示す断面図である。
【図7】本発明の実施の形態における作業療法用玩具の使用方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1は本発明の実施の形態における作業療法用玩具の斜視図、図2は本発明の実施の形態における作業療法用玩具の分解斜視図である。
【0018】
図において、11は組立自在に形成された作業療法用玩具であり、該作業療法用玩具11は、容器ユニット12、及び該容器ユニット12を回動自在に、かつ、着脱自在に支持する支持装置13を備える。
【0019】
前記容器ユニット12は、無色で透明な樹脂製の二つの容器15、及び該各容器15を密封状態で連結する容器連結具としてのコネクタ16を備える。該コネクタ16は、連結要素として機能し、各容器15を連結するとともに、被支持要素として機能し、容器ユニット12がコネクタ16を介して支持装置13によって支持される。
【0020】
本実施の形態においては、容器15としてペットボトルが使用されるが、他のボトルを使用することができる。また、本実施の形態においては、無色で透明な容器15が使用されるが、有色で透明な容器を使用することができる。
【0021】
そして、前記支持装置13は、組立自在に形成され、机、テーブル等に作業療法用玩具11を載置するための支持部材18、及び該支持部材18に対して着脱自在に、かつ、回転自在に配設され、容器ユニット12を保持する保持部材19を備える。前記支持部材18は、所定の形状、本実施の形態においては、三角形の形状を有する立上部21、及び該立上部21の下端において、前方に向けて突出させて形成された一対の脚部22、23を備える。本実施の形態において、前記脚部22、23は、前記立上部21と一体に形成されるが、立上部21に対して着脱自在に形成することができる。そして、前記立上部21の上端には、保持部材19を回転自在に支持するための軸受部としての、かつ、支持部としての有底の穴24が形成される。
【0022】
また、前記保持部材19は、半割り構造を有する樹脂製の軸体から成り、半円形の形状を有し、両側から前記コネクタ16を狭持する第1、第2の軸部材としての挟持片25、26、及び該挟持片25、26を連結する連結部としてのリング27を備える。そして、前記挟持片25、26は、所定の長さを有する本体部31及び該本体部31の一端に形成されたフランジ部32を備え、前記本体部31の軸方向におけるほぼ中央に、半円形の形状を有する凹部33が形成される。該凹部33の内周面の複数箇所、本実施の形態においては、3箇所に、弧状の形状を有する第1の係止要素としての突起35が突出させて形成される。
【0023】
前記各フランジ部32を対向させ、各凹部33によって前記コネクタ16を挟むようにして挟持片25、26を合わせ、前記リング27を挟持片25、26の先端部に外嵌(かん)させることによって保持部材19が組み立てられると、前記各本体部31によって所定の径を有する回転軸38が形成され、前記各フランジ部32によって回転軸38より径の大きい円形の形状を有する被支持部39が形成され、前記各凹部33によって、コネクタ16を収容し、かつ、挟持するための貫通穴が形成される。
【0024】
そして、前記被支持部39を穴24内に嵌入させることによって、図1に示されるような作業療法用玩具11が組み立てられる。
【0025】
次に、前記コネクタ16について説明する。
【0026】
図3は本発明の実施の形態におけるコネクタの斜視図、図4は本発明の実施の形態におけるコネクタの縦断面図、図5は本発明の実施の形態におけるコネクタと容器との連結方法を説明するための図、図6は本発明の実施の形態におけるコネクタと容器との連結状態を示す断面図である。
【0027】
前記コネクタ16は、両端に開口m1、m2を備えた筒状体から成り、外周面の軸方向における複数箇所、本実施の形態においては、3箇所に、第2の係止要素としての環状の係止部43〜45が形成される。該各係止部43〜45は、複数の環状の凸部を形成することによって形成された溝であり、作業療法用玩具11を組み立てたときに、前記各突起35と係止させられる。したがって、保持部材19に形成された貫通穴内でコネクタ16が軸方向に移動するのを防止することができる。
【0028】
また、前記コネクタ16の内周面には、各容器15の首部46を密封状態で収容するための螺(ら)合穴48が形成される。該螺合穴48は、コネクタ16の一端から進入させた一方の容器15の首部46を収容する第1の収容部51、コネクタ16の他端から進入させた他方の容器15の首部46を収容する第2の収容部52、及び前記第1、第2の収容部51、52間、すなわち、コネクタ16の軸方向における所定の箇所、本実施の形態においては、コネクタ16の中央部に形成され、第1、第2の収容部51、52の内周面を連通させる連通部53を備える。そして、前記第1、第2の収容部51、52には、各容器15の首部46に形成されたねじ部55とそれぞれ螺合させられる螺合部56、57が形成される。また、前記連通部53には、径方向内方に向けて、所定の量だけ突出させて環状凸部58が形成される。
【0029】
該環状凸部58は、第1、第2の収容部51、52に臨ませて、かつ、開口m1、m2と対向させて形成された第1、第2の面S1、S2、及び連通部53に臨ませて、かつ、軸方向に延在させて形成された第3の面S3を備える。前記第1、第2の面S1、S2は平坦(たん)に形成され、前記第3の面S3には所定の凹凸が形成される。なお、前記第1、第2の面S1、S2によってシール面が構成される。
【0030】
前記各ねじ部55と螺合部56、57とを螺合させて、各ねじ部55で各容器15をコネクタ16によって連結すると、各首部46及び環状凸部58によって、各容器15内を連通させる連通路としての、径の小さい流路、すなわち、絞り部69が形成される。このとき、該絞り部69において、各首部46の先端の端面61が第1、第2の面S1、S2に所定の圧力で押し付けられるので、コネクタ16によって各容器15が密封状態で連結される。なお、各容器15とコネクタ16とを連結した状態で、前記環状凸部58は、各容器15の首部46の内周面S11より径方向内方に所定の量だけ突出させられる。
【0031】
次に、前記構成の作業療法用玩具11を利用した作業療法について説明する。
【0032】
図7は本発明の実施の形態における作業療法用玩具の使用方法を説明するための図である。
【0033】
図において、11は作業療法用玩具、12は容器ユニット、15は容器、16はコネクタである。前記容器15内には流動体としての液体、本実施の形態においては、無色の水65が収容され、各容器15を前記コネクタ16によって連結することにより、各容器15内を水65が移動させられる。この場合、収容される水65の量をQwとし、容器15の容積をQbとすると、
Qw<2・Qb
に、好ましくは、
Qw<Qb
にされる。
【0034】
そして、前記容器15内には、多数の移動体としての粒状体66が水65と共に収容される。前記粒状体66は、例えば、所定の比重を有する樹脂によって形成された各種の色のビーズから成り、水65より比重を大きくすると、定常状態において容器15内で下方に沈んだ状態になり、水65より比重を小さくすると、定常状態において容器15内で浮遊した状態になる。
【0035】
本実施の形態においては、流動体として水65が使用されるが、水以外の液体を使用することができる。また、前記流動体として無色の水が使用されるが、水に各種の顔料を添加することによって有色の水を使用することができる。
【0036】
そして、本実施の形態においては、移動体として粒状体66が使用されるが、移動体として偏平な小片を使用したり、所定の形状を有する成形物を使用したりすることができる。小片、成形物等は、幾何学的な形状を有するように形成したり、魚、小鳥、小動物、人形、星等のキャラクタを表すようにして形成したりすることができる。
【0037】
前記作業療法用玩具11において、容器ユニット12を回動させ、一方の容器15が上に、他方の容器15が下になるようにすると、上方の容器15内の水65及び粒状体66が絞り部69を介して下方の容器15に移動させられる。そして、すべての水65及び粒状体66が下方の容器15に移動させられた後、再び容器ユニット12を回動させて他方の容器15が上に、一方の容器15が下になるようにすると、再び上方の容器15内の水65及び粒状体66が絞り部69を介して下方の容器15に移動させられる。
【0038】
このとき、絞り部69において水65の流れが絞られるので、水65は乱流を形成しながら下方の容器15内に急速に落下し、これに伴って、各色の粒状体66が、互いに衝突を繰り返しながら下方の容器15に移動させられる。そして、各粒状体66が衝突するときに、各種の音が発生する。また、前記絞り部69における環状凸部58の部分は内径が更に小さくされるので、水65の流れが一層絞られる。したがって、各粒状体66が互いに衝突するときに多様な音を発生させることができる。なお、環状凸部58の形状を変更したり、内径を更に小さくしたり、環状凸部58の第3の面S3の凹凸の形状を変更したりすることによって、水65の流れを変更し、例えば、スパイラル流を発生させることができる。その場合、各粒状体66が衝突するときに多様な音を一層発生させることができる。
【0039】
また、水65が下方の容器15に移動させられる際に、下方の容器15内の空気が水65の流れに逆らって、絞り部69を介して上方の容器15内に移動させられるので、水65内に気泡が形成されるとき、気泡が水65の表面、すなわち、水面に到達して弾けるとき等に大小の音が発生するだけでなく、容器ユニット12に振動が発生する。
【0040】
したがって、作業療法の対象者が作業療法用玩具11を操作し、容器ユニット12を回動させるだけで、各色の粒状体66を多様に挙動させ、各種の音を発生させるとともに、容器ユニット12に振動を発生させることができるので、作業療法の対象者の視覚、聴覚、触覚等の感覚に対して刺激を与えることができ、視知覚、聴知覚等を介して外界への興味を引き出すとともに、注意力、目と手との協調性、上肢機能等を向上させることができる。また、作業療法において、作業療法用玩具11を繰り返し利用することができる。
【0041】
しかも、本実施の形態においては、容器15としてペットボトルを使用することができるので、作業療法用玩具11のコストを低くすることができる。また、作業療法用玩具11は組立自在に形成されるので、容器15内の水65及び粒状体66を容易に交換することができる。
【0042】
さらに、前記各容器15はコネクタ16によって密封状態で連結されるので、容器15から水65が漏れることはない。
【0043】
なお、水65及び粒状体66を交換する場合は、容器ユニット12及び保持部材19を支持装置13から取り外し、回転軸38からリング27を取り外すことによって、挟持片25と挟持片26とを分離させることができる。したがって、コネクタ16を容器15から取り外すことによって、開口m1、m2を開放させ、水65及び粒状体66を交換することができる。
【0044】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【符号の説明】
【0045】
11 作業療法用玩具
12 容器ユニット
13 支持装置
15 容器
16 コネクタ
46 首部
55 ねじ部
65 水
66 粒状体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)首部にねじ部が形成された二つの透明な容器、及び前記ねじ部で各容器を連結するコネクタを備えた容器ユニットと、
(b)該容器ユニットを、前記コネクタを介して回転自在に、かつ、着脱自在に支持する支持装置とを有するとともに、
(c)前記容器内に所定の量の流動体及び多数の有色の移動体が収容されることを特徴とする作業療法用玩具。
【請求項2】
(a)前記コネクタは、両端に開口を備えた筒状体から成り、
(b)前記コネクタの内周面に二つの螺合部が形成され、
(c)前記各容器の首部に形成されたねじ部と前記螺合部とを螺合させることによって、前記各容器と前記コネクタとが密封状態で連結される請求項1に記載の作業療法用玩具。
【請求項3】
前記コネクタの内周面には、軸方向における前記各螺合部間に、径方向内方に向けて突出させて環状凸部が形成される請求項2に記載の作業療法用玩具。
【請求項4】
前記各容器と前記コネクタとが連結されるときに、各容器の首部の端面が前記環状凸部に押し付けられる請求項3に記載の作業療法用玩具。
【請求項5】
前記支持装置は、支持部材、及び該支持部材に対して着脱自在に、かつ、回転自在に配設され、容器ユニットを保持する保持部材を備える請求項1〜4のいずれか1項に記載の作業療法用玩具。
【請求項6】
前記保持部材は、前記コネクタを挟持する第1、第2の軸部材を備える請求項5に記載の作業療法用玩具。
【請求項7】
(a)両端に開口を備えた筒状体から成り、
(b)内周面に二つの螺合部が形成され、
(c)前記内周面の軸方向における前記各螺合部間に、径方向内方に向けて突出させて環状凸部が形成されることを特徴とする容器連結具。
【請求項8】
前記環状凸部にシール面が形成される請求項7に記載の容器連結具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−217865(P2011−217865A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88404(P2010−88404)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(305027401)公立大学法人首都大学東京 (385)
【出願人】(504448586)松田金型工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】