説明

作業車の油圧回路

【課題】メインポンプと電動ポンプとが故障しても、非常用ホースを接続する必要のない軌陸車の油圧回路を提供する。
【解決手段】軌陸車の作業装置の複数の揺動シリンダ120a〜120dと、メインポンプ100と、非常用電動ポンプ101と、手動ポンプ102と、メインポンプ100から吐出される圧油を各揺動シリンダ120a〜120dに供給する制御弁装置300とを備えた油圧回路であって、制御弁装置300とメインポンプ100との間の主管路146に遮断コック140を設け、この遮断コック140と制御弁装置300との間と、手動ポンプ102とを副管路145で接続し、この副管路145に接続コック151を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、小容量の非常用ポンプを備えた作業車の油圧回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、非常用ポンプを備えた作業車の油圧回路が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
かかる油圧回路は、主油圧ポンプと、油圧アクチュエータと、主油圧ポンプからアクチュエータに作動油を供給しまたはアクチュエータからオイルタンクに作動油を戻すための主管路と、主管路を開閉する主開閉制御弁と、非常用ポンプと、この非常用ポンプに一端側が連通し他端側が主管路に合流する副管路とを備え、
副管路の一部を非常用ホースで構成し、この非常用ホースを着脱可能に設けたものである。
【0004】
非常用ホースは、正常時には副管路から外しており、非常時に副管路に接続して非常用ポンプを駆動させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−2795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような油圧回路にあっては、非常時に非常用ホースを副管路に接続しなければならず、非常に面倒であるという問題があった。特に、主油圧ポンプの他に非常用電動ポンプも故障した場合、手動ポンプに非常用ホースの一端を接続し、その他端をアクチュエータのジョイントに接続して手動ポンプによりアクチュエータを動作させ、この後、他のアクチュエータのジョイントに非常用ホースの他端を接続し直して他のアクチュエータを動作させなければならず、アクチュエータが多数ある場合、その非常用ホースの接続作業が非常に面倒であるとと共に誤接続が発生するという問題があった。
【0007】
この発明の目的は、メインポンプと電動ポンプとが故障しても、非常用ホースを接続する必要のない作業車の油圧回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、軌陸車の作業装置の複数のアクチュエータと、メインポンプと、電動ポンプと、手動ポンプと、前記メインポンプから吐出される圧油を前記各アクチュエータに供給する制御弁装置とを備え、非常時に前記電動ポンプから吐出される圧油を前記制御弁装置を介して各アクチュエータに圧油を供給するようになっている油圧回路であって、
前記制御弁装置とメインポンプとの間の主管路に遮断コックを設け、
この遮断コックと前記制御弁装置との間と、前記手動ポンプとを副管路で接続し、
この副管路に接続コックを設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、前記手動ポンプによって前記副管路から主管路へ供給された圧油がタンクへ戻るのを防止することを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、前記主管路の圧油をタンクへ戻すためのアンロードバルブを有し、
前記遮断コックは、前記アンロードバルブと主管路との接続地点と、前記副管路と主管路との合流地点との間に設けて、前記圧油がタンクへ戻るのを防止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、メインポンプと電動ポンプとが故障しても非常用ホースを接続する必要がない。
【0012】
請求項2の発明によれば、手動ポンプによって副管路から主管路へ供給される圧油がタンクへ戻るのが防止される。
【0013】
請求項3の発明は、手動ポンプによって副管路から主管路へ供給される圧油を制御弁装置側のみに供給し、効率よくアクチュエータを作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明に係る軌陸車を示した側面図である。
【図2】図1に示す軌陸車の油圧回路の主要部を示した説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明に係る軌陸車の非常操作装置の実施の形態である実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0016】
図1は、非常操作装置を搭載した作業車としての軌陸車1を示す。この軌陸車1は、シャーシフレーム2と、このシャーシフレーム2に設けたサブフレーム3とを有し、シャーシフレーム2の前部には運転キャビン4が設けられている。
【0017】
サブフレーム3には、水平旋回可能な旋回台11が取り付けられており、旋回台11には伸縮自在なブーム12が起伏可能に取り付けられている。ブーム12の先端部には作業台13が取り付けられている。
【0018】
シャーシフレーム2の前後左右には4つのタイヤ5と4つの鉄輪6a〜6dがそれぞれ取り付けられており、また、シャーシフレーム2には下方に伸長する転車台(図示せず)が取り付けられている。
【0019】
転車台は、下方に伸長することにより車体を持ち上げ、この状態で車体を水平方向に回転させることができるようになっている。
【0020】
また、軌陸車1は、ブーム12を起伏させる起伏シリンダ(アクチュエータ)8と、ブーム12を伸縮させる図示しない伸縮シリンダ(アクチュエータ)と、転車台を伸縮させる転車台シリンダ(アクチュエータ)130と、鉄輪6a〜6dを保持した鉄輪保持サポート7a〜7d(図1において、7b,7dは図示していない)を張り出させて鉄輪6a〜6dをレールRの上に載せる揺動シリンダ(アクチュエータ)120a〜120d(図2参照)などとを備えている。
【0021】
図2は軌陸車1の油圧回路を示す。この油圧回路は、可変容量ポンプであるメインポンプ100と、電動ポンプ(非常用ポンプ)101と、手動ポンプ(非常用ポンプ)102と、制御弁110〜113を有する制御弁装置300と、鉄輪保持サポート7a〜7dを揺動させる揺動シリンダ120a〜120dと、転車台シリンダ130等とを有している。
【0022】
メインポンプ100から吐出される圧油は、制御弁装置300を介して各揺動シリンダ120a〜120dと転車台シリンダ130へ供給されるようになっている。
【0023】
揺動シリンダ120aには非常用コック121a,122aが接続され、揺動シリンダ120bには非常用コック123b,124bが接続されている。また、揺動シリンダ120cには非常用コック125c,126cが接続され、揺動シリンダ120dには非常用コック127d,128dが接続されている。非常用コック121a,122a,123b,124b,125c,126c,127d,128dは非常時に各シリンダの作動油をタンク160へ戻すためのコックである。
【0024】
転車台シリンダ130には非常用コック131a,131bが接続されている。非常用コック131a,131bも非常時に転車台シリンダ130の作動油をタンク160へ戻すためのコックである。
【0025】
制御弁装置300とメインポンプ100との間の主管路146には非常用コックである遮断コックが設けられている。141は所定の条件下で主管路146の圧油をタンクへ戻してアクチュエータをアンロードにするアンロードバルブである。
【0026】
アンロードバルブ141は、作動可能領域内であり且つアクチュエータが駆動されるときにオンロードなり、タンク160へ戻されている圧油を遮断するものである。
【0027】
手動ポンプ102は、副管路145によって遮断コック140と制御弁装置300との間の主管路146に接続されている。副管路145には、チェックバルブ150と非常用コックである接続コック151とチェックバルブ152とが設けられている。
【0028】
電動ポンプ101は、切換弁170及びチェックバルブ171を介して主管路146のチェックバルブ172の下流側に接続されている。
【0029】
180は電動ポンプ101や手動ポンプ102から吐出される油圧を油圧取出口181に供給する切換弁である。201〜206は非常用のホースを接続するためのクイックジョイントである。
[動 作]
次に、上記のように構成される軌陸車1の油圧回路の動作を説明する。
【0030】
正常時には、メインポンプ100から吐出された圧油は、制御弁装置300の制御弁110〜112を介して各揺動シリンダ120a〜120dや転車台シリンダ130などへ供給されて、軌陸車1の所望の作動が実行されていく。この場合、遮断コック140は開成され、接続コック151,174は閉成され、アンロードバルブ141は閉成されている。
【0031】
いま、メインポンプ100と電動ポンプ101が故障した場合、遮断コック140のレバーを操作して遮断コックを閉成し、接続コック151のレバーを操作して接続コック151を開成する。
【0032】
そして、オペレータは手動ポンプ102を操作すれば、手動ポンプ102からの圧油はチェックバルブ150と接続コック151とチェックバルブ152を介して主管路146へ供給される。主管路146へ供給された圧油は制御弁装置300の各制御弁110〜112の制御により、例えば、揺動シリンダ120aに圧油を供給して鉄輪6aを保持した鉄輪保持サポート7aの張り出しや収納を行わせる。
【0033】
ところで、遮断コック140は、副管路145と主管路146との合流地点より、メインポンプ100の圧油の供給に対して上流側であり、この遮断コック140が閉成されていることにより、手動ポンプ102によって主管路146へ供給された圧油は、制御弁装置300側のみに供給され、効率よくアクチュエータを作動させることができる。
【0034】
この張り出しや収納が終了したら、制御弁装置300の各制御弁110〜112を制御して、例えば揺動シリンダ120bに圧油を供給して鉄輪6bを保持した鉄輪保持サポート7b(図示せず)の張り出しや収納を行わせる。
【0035】
同様にして、各揺動シリンダ120c,120dに圧油を供給して鉄輪保持サポート7c,7d(図示せず)の張り出しや収納を行わせたり、転車台シリンダ130に圧油を供給して転車台の伸長や縮小を行わせたりする。
【0036】
このように、遮断コック140のレバーと接続コック151のレバーを操作すれば、副管路145が主管路146に連通されるので、従来のように副管路145を主管路146に接続する作業が不要となる。また、制御弁装置300による各制御弁110〜112の制御により、各シリンダの一つづつに圧油を手動ポンプ102で供給することができるので、副管路145をクイックジョイント201〜206へ順次接続し直していく作業は不要となる。
【0037】
すなわち、メインポンプ100と電動ポンプ101が故障した場合、従来のような非常用ホースを接続する必要はなく、手動ポンプを使用する際の作業時間を大幅に短縮することができ、作業効率を向上させることができる。
【0038】
この発明は、上記実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【符号の説明】
【0039】
1 軌陸車
100 メインポンプ
101 電動ポンプ(非常用ポンプ)
102 手動ポンプ(非常用ポンプ)
130 転車台シリンダ
140 遮断コック(非常用コック)
151 接続コック(非常用コック)
300 制御弁装置
120a〜120d 揺動シリンダ(アクチュエータ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車の作業装置の複数のアクチュエータと、メインポンプと、電動ポンプと、手動ポンプと、前記メインポンプから吐出される圧油を前記各アクチュエータに供給する制御弁装置とを備え、非常時に前記電動ポンプから吐出される圧油を前記制御弁装置を介して各アクチュエータに圧油を供給するようになっている油圧回路であって、
前記制御弁装置とメインポンプとの間の主管路に遮断コックを設け、
この遮断コックと前記制御弁装置との間と、前記手動ポンプとを副管路で接続し、
この副管路に接続コックを設けたことを特徴とする作業車の油圧回路。
【請求項2】
前記手動ポンプによって前記副管路から主管路へ供給される圧油がタンクへ戻るのを防止することを特徴とする請求項1に記載の作業車の油圧回路。
【請求項3】
所定の条件下で主管路の圧油をタンクへ戻してアクチュエータをアンロードにするアンロードバルブを有し、
前記遮断コックは、前記アンロードバルブと主管路との接続地点と、前記副管路と主管路との合流地点との間に設けて、前記圧油がタンクへ戻るのを防止することを特徴とする請求項2に記載の作業車の油圧回路。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−68260(P2013−68260A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206552(P2011−206552)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000148759)株式会社タダノ (419)
【Fターム(参考)】