説明

作業車の運転部構造

【課題】視認しやすい表示パネル部分を設けるとともに、運転操縦者の膝元空間を広く採って運転姿勢を快適なものにできる。
【解決手段】運転座席の前方に運転操縦パネル部19を配置し、運転操縦パネル部19に、その運転操縦パネル部19の左右中央部に位置しメータを備えた表示パネル部分62と、表示パネル部分62の左右側方に位置し操作具類を備えた操作パネル部分65,67とを設ける。表示パネル部分62の上面19aを操作パネル部分65,67の上面19Bより上方に突出させ、表示パネル部分62の底面19cを操作パネル部分65,67の底面19d,19eより上方に凹入位置させている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転座席の前方に運転操縦パネル部を配置し、その運転操縦パネル部に、メータを備えた表示パネル部分と、前記表示パネル部分の側方に位置し操作具類を備えた操作パネル部分とを設けてある作業車の運転部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
操作パネル部分と表示パネル部分とは略面一に設定されるのが通常であるが、ここで挙げる特許文献1の図2に記載されたもののように、操作パネル部分としての液晶表示部(公報内番号:1)の表示面(公報内番号:9a)が操作パネル部分の上面(符号なし)より下方に配置したものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−114240号公報(段落番号〔0019〕、及び、図2)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、液晶表示部の表示面が操作パネル部分の上面より下方に位置することになるので、運転操作を行いながら、目を表示面に移した際に、表示面に印された表示を直ぐには視認し難いことがあり、操作情報を得にくいことがある。
【0005】
本発明の目的は、視認しやすい表示パネル部分を設けるとともに、運転操縦者の膝元空間を広く採って運転姿勢を快適なものにできる作業車の運転部構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔構成〕
請求項1に係る本願発明の特徴構成は、運転座席の前方に運転操縦パネル部を配置し、前記運転操縦パネル部に、その運転操縦パネル部の左右中央部に位置しメータを備えた表示パネル部分と、前記表示パネル部分の左右側方に位置し操作具類を備えた操作パネル部分とを設け、前記表示パネル部分の上面を前記操作パネル部分の上面より上方に突出させ、前記表示パネル部分の底面を前記操作パネル部分の底面より上方に凹入位置させている点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0007】
〔作用〕
メータを備えた表示パネル部分の上面が、左右両側方に位置する操作パネル部分の上面より上方に突出する状態に形成してあるので、表示パネル部分の上面が浮き上がった状態で視認されることとなり、運転操作中に目を表示パネル部分に戻しても、直接的に視認することができ、走行状態等の情報を確認し易い。
一方、表示パネル部分においては、上面が操作パネル部分の上面より上方に位置するだけでなく、底面も操作パネル部分の底面より上方に位置しており、それだけ表示パネル部分が上方に偏位した状態にあり、表示パネル部分及び操作パネル部分の下方に運転操縦者の膝元空間を形成する場合に、運転操縦者の膝元空間を大きくできる。
これによって、操作パネル部分に装備された操作具を操作する際に、表示パネル部分の下方の空間内に膝部分を深く入り込ませることができ、楽な姿勢で操作を行うことができる。
【0008】
〔効果〕
表示パネル部分を操作パネル部分に対して上方側に偏位して設けるだけで、視認性と操作性の良さを確保できる作業車の運転部構造を提供できるに至った。
【0009】
〔構成〕
請求項2に係る本願発明の特徴構成は、前記操作パネル部分にアームレストを立設し、前記アームレストを、前記操作パネル部分の上面より立ち上げた縦向き部分と縦向き部分より横方向に片持ち状に延出した腕置き部分とで構成し、キースイッチ及びホーンスイッチを前記操作パネル部分における前記腕置き部分の先端部下方に配置してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0010】
〔作用効果〕
アームレストの腕置き部分を片持ち状態で延出して、その延出端の下方にキースイッチ及びホーンスイッチを配置したので、キースイッチ及びホーンスイッチを、アームレストにおける操作パネル部分より立ち上げた縦向き部分をより離間させて設けることができ、キースイッチ及びホーンスイッチを操作するための空間を十分に確保することができた。
【0011】
〔構成〕
請求項3に係る本願発明の特徴構成は、前記縦向き部分を前記運転操縦パネル部の横側端位置から立設するとともに、前記腕置き部分を平面視で前記表示パネル部分に近接する横方向に片持ち状に延出してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0012】
〔作用効果〕
アームレストの縦向き部分を運転操縦パネル部の横側端位置から立設してあるので、縦向き部分を操作の邪魔になりにくい横側端位置に位置させることができ、かつ、腕置き部分を片持ち状に横方向に延出してあるので、縦向き部分と腕置き部分とで囲む大きな空間を確保でき、その空間を利用してアームレストと他のスイッチ等の配置構成を効率よく行えるようになった。
しかも、アームレストの縦向き部分を表示パネル部分からも離間させることができるので、縦向き部分が表示パネル部分と重なることがなく、目視の邪魔になりにくい。
【0013】
〔構成〕
請求項4に係る本願発明の特徴構成は、前記表示パネル部分の上面より下方に位置し前記操作パネル部分の上面より上方に位置する中段載置面を設け、前記操作パネル部分の上面を前記中段載置面より前方に配置し、前記操作パネル部分にキースイッチを、前記中段載置面にホーンスイッチを備えてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0014】
〔作用効果〕
表示パネル部分より低い位置にキースイッチやホーンスイッチを設けるについて、キースイッチやホーンスイッチを同じ高さ位置に設けるのではなく、ホーンスイッチを操作パネル部分の上面より高い位置の中段載置面に設け、しかも、前後方向でも同一位置に設けるのではなく、ホーンスイッチを運転操縦者の手元側に位置する後方に配置して設けた。
このような構成によって、キースイッチに比べて運転走行中に使用する機会が多いホーンスイッチに適した配置構成を採ることができ、ホーンスイッチの操作性を良好なものにできた。
【0015】
〔構成〕
請求項5に係る本願発明の特徴構成は、前記操作パネル部分に対して前記表示パネル部分を挟んで左右反対側に反対側操作パネル部分を設け、前記表示パネル部分の上面より下方に位置し前記反対側操作パネル部分より上方に位置する反対側中段載置面を設け、前記反対側操作パネル部分を前記反対側中段載置面より後方に配置し、前記反対側操作パネル部分に制御スイッチ群を、前記反対側中段載置面に表示切換スイッチを備えてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0016】
〔作用効果〕
表示切換スイッチ及び制御スイッチ群ともに、作業走行中の操作頻度に差はさほどないと考えられるので、反対側操作パネル部分より上方に位置する反対側中段載置面を設け、反対側中段載置面に設けた表示切換スイッチを、反対側操作パネル部分に設けた制御スイッチ群に対して前方側に位置させる構成によって、いずれのスイッチに対しても同様の操作性を確保することができた。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】コンバインの全体側面図である。
【図2】コンバインの全体平面図である。
【図3】刈取り部と運転操縦部とが横開き状態に切り換わった状態を示す全体平面図である。
【図4】前方運転操縦パネル部及び側方運転操縦パネル部を示す平面図である。
【図5】前方運転操縦パネル部及び側方運転操縦パネル部を示す斜視図である。
【図6】前方運転操縦パネル部を示す後面図である。
【図7】前方運転操縦パネル部を示す側面図である。
【図8】図4におけるVIII―VIII線断面図である。
【図9】図4におけるIX―IX線断面図である。
【図10】図4におけるX―X線断面図である。
【図11】図4におけるXI―XI線断面図である。
【図12】図4におけるXII―XII線断面図である。
【図13】側方運転操縦パネル部を示す左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
作業車としてのコンバインは、図1及び図2に示すように、クローラ走行装置1を有した機体2と、この機体2の前部に連結された刈取り部10と、機体2の後部に機体横方向に並べて搭載された脱穀装置3と穀粒タンク4を備えている。
【0019】
このコンバインは、稲,麦などの穀粒を収穫するものである。すなわち、刈取り部10は、デバイダー12で分草された植立穀稈を引き起こす引起装置13と、引起穀稈の株元部分を切断する切断装置15と、切断装置15で切断された穀稈を縦姿勢で搬送する縦搬送装置16とを装備して構成してある。
【0020】
刈取り部10は、機体2の前左端に支持フレーム11を立設し、機体2の前右端に支持フレーム(図示せず)を立設し、両支持フレーム11の上端に渡って横向きパイプフレーム18を架設し、その横向きパイプフレーム18の右支持フレーム近傍から前方下方に向けて主パイプフレーム14を延出して構成してある。主パイプフレーム14の前端に、デバイダー12、引起装置13、切断装置15、縦搬送装置16とを支持して、刈取り部10は、機体2に対して横向きパイプフレーム18の横向き軸芯周りで上下揺動自在に構成してある。
【0021】
また、刈取り部10は、デバイダー12、引起装置13、切断装置15、縦搬送装置16を主パイプフレーム14に支持して、機体2の前左端に立設した支持フレーム11の縦向き軸芯Yを中心にして、横向きパイプフレーム18と主パイプフレーム14とを一体で、図2に示すように、運転操縦部8の横側方に位置する作業姿勢と、図3に示すように、運転操縦部8とは離間するように、機体横側方の他方側に揺動開放されて、非作業姿勢に切り換わる。
【0022】
脱穀装置3は、縦搬送装置16によって横倒れ搬送される穀稈を脱穀フィードチェーン(図示せず)によって挟持して機体後方向きに搬送しながら刈取り穀稈の穂先側を扱室(図示せず)に供給し、その穂先側を脱穀処理する。
【0023】
穀粒タンク4は、脱穀装置3から穀粒送出装置22によって搬送される脱穀粒を回収して貯留する。この穀粒タンク4は、タンク内の底部に位置する排出スクリュー5と、穀粒タンク4の後部に位置する縦スクリューコンベヤ6と、この縦スクリューコンベヤ6の上端部に連結した横スクリューコンベヤ7とによってタンク内の脱穀粒を排出する。横スクリューコンベヤ7は、縦スクリューコンベヤ6に対して旋回および起伏操作できる。
以上、排出スクリュー5、縦スクリューコンベア6、横スクリューコンベア7で、穀粒タンク4に溜まった穀粒を機外に搬出する穀粒搬出装置Bを構成する。
【0024】
機体2は、クローラ走行装置1と、穀粒タンク4の前方近くに位置したエンジンボンネット21を有した原動部20と、エンジンボンネット21の上方に位置した運転座席9を有した運転操縦部8とを備えている。
【0025】
図1〜3に示すように、運転操縦部8は、運転座席9を備える他、運転座席9の前方に配置した前方運転操縦パネル部19と、運転座席9の乗降口側とは反対側の横側方に配置した側方運転操縦パネル部26とを備えている。前方運転操縦パネル部19は、機体の操向操作と刈取り部10の昇降操作とを行う昇降操向操作レバー17と、エンジン28に関する稼動時間などの情報を示す表示パネル部分62と、キースイッチ23と、ホーンスイッチ24と、表示パネル部分62での表示内容を切換える表示切換スイッチ36と、制御用のスイッチ盤64とを備えている。側方運転操縦パネル部26は、静油圧式無段変速装置(図示せず)を操作する主変速レバー40と、副変速レバー25と、刈取・脱穀クラッチレバー63と、アクセルレバー29と、制御用のスイッチ盤30と、穀粒搬出装置Bの作動を制御する着脱・リモコン式の操作具34とを備えている。
【0026】
原動部20は、エンジンボンネット21を備える他、このエンジンボンネット21の機体横外側端部の内部に配置したエンジン冷却ラジエータ27と、エンジンボンネット21の内部のエンジン冷却ラジエータ27よりも機体の横方向での内側に配置したエンジン28とを備えている。
【0027】
図2及び図3に示すように、エンジンボンネット21の左後側の外部で機体の左右中央側に配置され機体2から立設された機体上下向き姿勢の機体側支柱35を配置し、エンジンボンネット21等を含む運転操縦部8は、機体側支柱35が有する機体上下向き軸芯Xまわりで回動自在に支持されている。
【0028】
つまり、運転操縦部8は、図2及び図3に示す如く、運転座席9の左側後方に立設された機体側支柱35の機体上下向き軸芯X回りで機体横側方に向けて回動切換え自在になっている。運転操縦部8は機体上下向き軸芯Xのまわりで回動操作されることにより、図2に示すように、穀粒タンク4の前方側に位置してエンジン28を覆った作業姿勢と、図3に示すように、機体左右横側方に張出してエンジン28を開放した非作業姿勢とに切り換わる。
【0029】
次に、刈取り部10と運転操縦部8とを連係して、刈取り部10と運転操縦部8とを、作業姿勢と非作業姿勢に切換える連係機構Aを備えている。図3に示すように、連係機構Aは、伸縮自在なロッド構造を採っており、ロッドケース31とピストンロッド32と、そのロッドケース31とピストンロッド32とに渡って架設される駆動手段33とで構成される。
【0030】
前方運転操縦パネル部19の構成について詳述する。図4〜図7に示すように、横長の樹脂製本体部19Aの左右中心部に、表示パネル部分62を配置し、その表示パネル部分62の右側に右側操作パネル部分(操作パネル部分に相当)65と、表示パネル部分62を挟んで反対側に左側操作パネル部分(反対側操作パネル部分に相当)67が配置してある。表示パネル部分62は、左右中央部部分のメインメータ部分62Aと左右のサイドメータ部分62B、62Cとでなる。メインメータ部分62Aには主として作業速度計、LED製の負荷メータ、マルチビジョン部分が設けてあり、このマルチビジョン部分で、アワメータ表示、脱穀装置のシーブケースでの負荷表示、穀粒タンク4内での貯留量表示、水温計等を切換表示可能である。
【0031】
樹脂製本体部19Aは、上側ケース部分19Fと下側ケース部分19Gとをネジで着脱自在に構成してある。上側ケース部分19Fは表示パネル部分62等を備える機能部品として構成されており、下側ケース部分19Gは主としてカバーとしての機能を果たすものに構成されている。
【0032】
左サイドメータ部分62Bには、副変速装置の高低速状態を表示する下方表示部分と上方側のエンジン回転計とが備えられている。右サイドメータ部分62Cには、刈取変速装置の高低速状態を表示する下方表示部分と上方側の燃料計とが備えられている。
表示パネル部分62には、メインメータ部分62Aと左右のサイドメータ部分62B、62Cを囲む幅広の枠部分62Dが設けてある。
【0033】
図4、図6及び図7に示すように、表示パネル部分62の表示パネル自体を取り付ける上面(表示面)19aは、前方運転操縦パネル部19の左右に位置する操作パネル部分65、67の下段取付面19Bより上方に突出する状態にある。
これによって、表示パネル部分62の表示面が浮き出る状態となり、視認し易くなっている。
【0034】
しかも、図6に示すように、表示パネル部分62の底面19cも、左の操作パネル部分67の底面19e及び右の操作パネル部分65の底面19dより上方に凹入する状態にあり、底面19d、19eより上方に十分なスペースを確保すべく構成してある。
これによって、運転操縦者が十分に膝をそのスペース内に差し入れることができ、膝を曲げた窮屈な状態で操縦することがない。
【0035】
図4〜図6、図8に示すように、後記する中段載置面19C及び右側操作パネル部分65には、ホーンスイッチ24とキースイッチ23とが前後に隣接する状態で配置してあり、それらのスイッチ24、23のさらに横外側方側に昇降操向操作レバー17が配置してある。
ホーンスイッチ24はキースイッチ23より後方(手前側)に配置してあり、かつ、キースイッチ23と昇降操向操作レバー17が取付けてある下段取付面19Bより上方に位置し、表示パネル部分62の表示上面より下方に位置する中段載置面19Cに取付けてある。上記のように、作業走行中に操作する機会の多いホーンスイッチ24を運転操縦者に採って操作しやすい手前側で少し上方側に配置してある。
【0036】
右側操作パネル部分65に昇降操向操作レバー17を取り付ける装着面19Dを形成してあり、この装着面19Dは下段取付面19Bより上方で中段載置面19Cより下方に位置しており、左右中央側に向かって下向きに傾斜する状態に設けて、握り部17Bを左右中心側に位置するように構成してある。
昇降操向操作レバー17の基端部は左右中央側から離れる位置にありながら、昇降操向操作レバー17の握り部17Bを左右中央側に近接させることができ、操作が容易になる。
【0037】
右側操作パネル部分65における昇降操向操作レバー17より後方(手前)には、アームレスト37が配置してある。アームレスト37は、右側操作パネル部分65の上面としての下段取付面19Bより立ち上げた上下向き姿勢の縦向き部分37Aと縦向き部分37Aより横方向に片持ち状に延出した腕置き部分37Bとで構成してある。
腕置き部分37Bは、表示パネル部分62に向けて片持ち状に延出してあり、その腕置き部分37Bの先端下方にホーンスイッチ24が位置している。
運転操縦者は、アームレスト37に肘部分を置いて、昇降操向操作レバー17の握り部17Bを握って、操作することが可能である。
【0038】
図4〜図6、図10に示すように、左側操作パネル部分67に近接して後記する反対側中段載置面19Eを設け、その反対側中段載置面19Eに表示切換スイッチ36が配置してあり、表示切換スイッチ36の後方でさらに横側端に至る左側操作パネル部分67に、制御スイッチ群を装備する制御スイッチ盤64が配置してある。
制御スイッチ群と表示切換スイッチ36とは操作機会として同等のものであると考えられるので、制御スイッチ盤64より前方で遠い位置に配置してある表示切換スイッチ36を、制御スイッチ盤64が取付けてある下段取付面(左側操作パネル部分67の上面に相当)19Bより上方に配置し、かつ、表示パネル部分62の表示面(上面に相当)より下方に位置する反対側中段載置面19Eに取り付けてある。
【0039】
表示切換スイッチ36は、表示パネル部分62のメインメータ部分62Aにおける、マルチビジョン部分の表示態様を切換えるものである。また、制御スイッチ盤64には、オートアクセルスイッチ、左右クローラ走行装置1を独立して昇降作動させてローリング作動させるローリング作動スイッチ等が設けてある。
昇降操向操作レバー17の握り部17Bには、左右クローラ走行装置1をローリング作動、及び、ピッチング作動させる複数個のスイッチが配置してあるとともに、昇降操向操作レバー17を前後に揺動操作すると、刈取り部10の下降上昇作動を行わせ、左右に揺動操作するとコンバインを左右へ旋回させる制御を行わせることができる。
【0040】
図4〜図10に示すように、前方運転操縦パネル部19の前端部分で、表示パネル部分62の枠部分62Dより前方側に、その枠部分62Dの前端面に沿った立上げ壁部分19bが形成してあり、立上げ壁部分19bによって前方運転操縦パネル部19の補強等を図る構成を採っている。
【0041】
側方運転操縦パネル部26について説明する。図4〜図6に示すように、側方運転操縦パネル部26は、前方運転操縦パネル部19の左側操作パネル部分19Bの後方に連続する状態で配置してあり、前端部に主変速レバー40と副変速レバー25とを左右に並設して備え、主変速レバー40の後方に制御用のスイッチ盤30、副変速レバー25の後方に刈取・脱穀クラッチレバー63とアクセルレバー29とを並設して備え、刈取・脱穀クラッチレバー63とアクセルレバー29との後方に、穀粒搬出装置Bの作動を制御する着脱式でかつリモコン式の操作具34とを備えている。
尚、主変速レバー40には、刈取り部10の刈取り速度を変速するワンタッチボタン、或いは、副変速装置を変速するワンタッチボタン、及び、扱き深さ調節用のスイッチが握り部に併設されている。
【0042】
側方運転操縦パネル部26は、前後に長いパネルであり、前方運転操縦パネル部19の左端に自身の左端が面一となる状態で配置されている。側方運転操縦パネル部26は、その左端部に機体フレーム(図示せず)に取付固定されるフランジ部26Aと、フランジ部26Aに隣接して主変速レバー40と制御用のスイッチ盤30とを装備するパネル表面部26Bと、パネル表面部26Bに隣接して副変速レバー25、刈取・脱穀クラッチレバー63、アクセルレバー29を設置する挿通孔等や、リモコン式操作具34の取付用の凹入載置座26E等を装備する内側パネル部26Cとが形成してある。
【0043】
図10に示すように、パネル表面部26Bは、左右方向において運転座席9側に向けてやや下向きに緩く傾斜している一方、スイッチ盤用の取付孔部分26bを囲む周囲部分26cにおいては、前後方向において略一定の水平状態を維持している。図5、図6及び図11に示すように、パネル表面部26Bは、主変速レバー40を貫通させている孔部分26aを囲む周囲部分26dにおいて、前端側程上方に位置するように、前上がり傾斜面に構成してある。
【0044】
図5、図11及び図12に示すように、内側パネル部26Cもパネル表面部26Bと同様に運転座席9側に向けて下向きに傾斜した状態で片持ち状に延出してあり、パネル表面部26Bより傾斜度が大きくなっている。
内側パネル部26Cには、前方に副変速レバー25用の抜き孔26mと、その後方に刈取・脱穀クラッチレバー63用の挿通孔26gと、刈取・脱穀クラッチレバー63の横側方に配置されるアクセルレバー29用の挿通孔26hとが形成されている。
内側パネル部26Cにおいて、副変速レバー25用の抜き孔26mを囲む周囲部分26jの左右方向での傾斜は、アクセルレバー29用の挿通孔26hを囲む周囲部分26kの傾斜に比べって緩やかなものに設定してあり、パネル表面部26Bにおける主変速レバー40を設置する周囲部分26dとの間に大きな段差26Dが形成されている。
【0045】
穀粒搬出装置Bに対するリモコン式の操作具34の取付構造について説明する。リモコン式の操作具34は有線でコンバイン本体の制御装置(図示せず)と繋がっており、穀粒搬出装置Bの作動状態を目視しながら、操作を行うことができる。
図5に示すように、リモコン式の操作具34には、横スクリューコンベア7を縦スクリューコンベア6の縦向き軸芯Z周りで自動的に旋回作動及び上下作動をさせてコンバイン内の所定位置に収納させる自動旋回スイッチ部34Aと、各スクリューコンベア5、6、7の駆動を司るクラッチ操作用スイッチ部34Bと、前記した横スクリューコンベア7を縦スクリューコンベア6の縦向き軸芯周りで旋回作動及び上下作動させることを指令する人為操作スイッチ部34Cとが装備されている。
【0046】
図4及び図5に示すように、内側パネル部26Cにおける後端部分に操作具34を載置する凹入載置座26Eを形成してあり、凹入載置座26Eは、前後方向への長さが長く横幅の短いものではあるが、凹入載置座26Eに取付けられた状態で、横幅方向での中心を結ぶ中心線は、機体前後方向に対して後端側程運転座席9に近づく傾斜状態に設定してある。
【0047】
このように、操作具34が凹入載置座26Eに取付けられた状態で、機体前後方向に対して傾斜状態に設定してあるので、自動旋回スイッチ部34Aに設けてあるスイッチ群、クラッチ操作用スイッチ部34Bのスイッチ群、人為操作スイッチ部34Cのスイッチ群が操作具34に沿って機体前後方向に対して傾斜状態に整列され、操縦者は顔を横に向けて目にする場合に、正面から視認することができ、操作が容易である。
【0048】
また、操作具34を取り付けている内側パネル部26Cが運転座席側に下向き傾斜状態で設けてあるので、凹入載置座26Eに取付けられた操作具34が水平状態ではなく、少し操縦者側に向かって起立させられた状態となるので、操縦者は正面から目視しやすくなっている。
特に、スイッチに付されている符号等を正面から視認することができ、スイッチの機能を把握した操作が容易に行える。
【0049】
図4〜図6に示すように、凹入載置座26Eと内側パネル部26Cの運転座席側横側端との間には、凹入載置座26Eを取り囲む周囲部分より上方に高く突出した突出部26nが設けてあり、アクセルレバー29を掴みに行く手が操作具34に誤って触れないように、かつ、内側パネル部26Cの後端部に凹入載置座26Eを設けたことに対する機械的強度の低下を抑制する機能を担っている。
尚、突出部26nには、凹入載置座26Eに載置された操作具34の後端部に対応して下向きの凹入切欠き部26qが設けてあり、操作具34を凹入載置座26Eから取り出す際に、この凹入切欠き部26qから手指を差込み、操作具34を掴み易くする構成を採っている。
【0050】
操作具34は、前後方向に長い板状を呈しており、凹入載置座26Eに形成した凹入部に嵌まり込む状態で沈み込み装着されて、安定した載置状態となっている。載置された状態で操作具34は傾斜姿勢で載置されているので、運転操縦者が操作具34を凹入載置座26Eに対して着脱操作する際に、体を大きく左側に捻る必要がなく、操作が容易に行える。
【0051】
また、操作具34が凹入載置座26Eに取り付けられた状態で、スイッチ群の整列状態が左右中心の中心線Pに沿った状態となるので、運転操縦者が視認しやすくかつ操作も容易であり、穀粒搬出装置Bにおける作動状態を操作具34で確認するのが容易になる。
操作具34は、凹入載置座26Eに嵌まり込み装着された状態で、操作具34の表面が凹入載置座26Eを囲む周囲の表面と面一状態になるように、凹入載置座26Eの沈み込み深さが操作具34の厚みに合わせたものとなっている。
したがって、操作具34が突出していないので、意図しない手指で操作具34を引掛け凹入載置座26Eから外れるといった事態を回避でき、操作具34の載置状態を安定したものにできる。
【0052】
凹入載置座26Eの後端部26iは外方空間に開放する開口となっている。
操作具34の後端面には有線通信用のコネクタ34Dが設けてあり、このコネクタ34Dが凹入載置座26Eの後端部26iに位置して、前記開口を通して通信線を外部に取り出すべく構成してある。
このように通信線を取り出す際に、操作具34の載置状態が斜めに設置してあるので、後方に立設される壁パネル等との干渉を回避して、通信線の取り出しも容易である。
【0053】
図12及び図13に示すように、フランジ部26Aの下方に上下向きの縦壁部26Fが設けてあり、縦壁部26Fにおける主変速レバー40を載置する前端側部分に、内部を視認することができる覗き窓26eを設けてあり、主変速レバー40等の内部状況を把握できる。そして、この覗き窓26eには、通常作業時には埃の侵入等を防止すべく蓋体26fが設けてある。
【0054】
この覗き窓26eを使用して内部を点検するのは、図3に示すように、刈取り部10を左横側方に回動退避させて行うものであり、主変速レバー40の静油圧式無段変速装置(図示せず)との連係状態を確認する為に行うものである。刈取り部10を退避させると、側方運転操縦パネル部26の縦壁部26Fの左横側方に大きなスペースができ、運転操縦者が覗き窓26eから内部の点検を行うことができる。また、運転操縦部8を同時に退避姿勢に切換えると更に、大きなスペースを確保して、点検作業を行うことができる。
【0055】
図4及び図5に示すように、昇降操向操作レバー17には十字揺動を許容する蛇腹式カバー体17Aが装着してあり、主変速レバー40の作動を許容する孔部分26a、副変速レバー25の作動を許容する抜き孔26m、刈取・脱穀クラッチレバー63用の挿通孔26g、アクセルレバー29用の挿通孔26hとに対して、それらの作動を許容しながら塵埃等の侵入を阻止するレバーブラインダー26sが設けてある。
【0056】
〔別実施の形態〕
(1)運転操縦パネル部としては、前方運転操縦パネル部19だけでよく、側方運転操縦
パネル部26はなくてもよい。
(2)運転操縦パネル部において中段載置面19C、19Eは設けてなくてもよく、左右の操作パネル部分67、65にホーンスイッチ24等を設けてもよい。
(3)アームレスト37は設けなくともよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、コンバインだけではなく、トラクタ、芝刈り機等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0058】
9 運転座席
19 運転操縦パネル部
19B 操作パネル部分の上面
19C 中段載置面(右操作パネル側)
19E 反対側中段載置面(左操作パネル側)
19a 表示パネル部分の上面
19c 表示パネル部分の底面
19d 右操作パネル部分の底面
19e 左操作パネル部分の底面
23 キースイッチ
24 ホーンスイッチ
36 表示切換スイッチ
37 操作用のアームレスト
37A 縦向き部分
37B 腕置き部分
62 表示パネル部分
65 右側操作パネル部分(操作パネル部分)
67 左側操作パネル部分(反対側操作パネル部分)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転座席の前方に運転操縦パネル部を配置し、前記運転操縦パネル部に、その運転操縦パネル部の左右中央部に位置しメータを備えた表示パネル部分と、前記表示パネル部分の左右側方に位置し操作具類を備えた操作パネル部分とを設け、前記表示パネル部分の上面を前記操作パネル部分の上面より上方に突出させ、前記表示パネル部分の底面を前記操作パネル部分の底面より上方に凹入位置させている作業車の運転部構造。
【請求項2】
前記操作パネル部分にアームレストを立設し、前記アームレストを、前記操作パネル部分の上面より立ち上げた縦向き部分と前記縦向き部分より横方向に片持ち状に延出した腕置き部分とで構成し、キースイッチ及びホーンスイッチを前記操作パネル部分における前記腕置き部分の先端部下方に配置してある請求項1記載の作業車の運転部構造。
【請求項3】
前記縦向き部分を前記運転操縦パネル部の横側端位置から立設するとともに、前記腕置き部分を平面視で前記表示パネル部分に近接する横方向に片持ち状に延出してある請求項2記載の作業車の運転部構造。
【請求項4】
前記表示パネル部分の上面より下方に位置し前記操作パネル部分の上面より上方に位置する中段載置面を設け、前記操作パネル部分の上面を前記中段載置面より前方に配置し、前記操作パネル部分にキースイッチを、前記中段載置面にホーンスイッチを備えてある請求項1又は2記載の作業車の運転部構造。
【請求項5】
前記操作パネル部分に対して前記表示パネル部分を挟んで左右反対側に反対側操作パネル部分を設け、前記表示パネル部分の上面より下方に位置し前記反対側操作パネル部分より上方に位置する反対側中段載置面を設け、前記反対側操作パネル部分を前記反対側中段載置面より後方に配置し、前記反対側操作パネル部分に制御スイッチ群を、前記反対側中段載置面に表示切換スイッチを備えてある請求項1、2、4のうちのいずれか一つに記載の作業車の運転部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−215058(P2010−215058A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−62678(P2009−62678)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】