説明

作業車両のキャビン

【課題】 トラクタ作業機のキャビンにあっては、運転席から運転操作を行いながら常時後側の作業状態を監視することが多く、リヤガラスの開閉操作を簡単、迅速で、容易に行い得ることが必要である。
【解決手段】 キャビンルーム1の運転席2後側部の左、右リヤピラー3間に、上端部の窓ヒンジ4の周りに回動して開閉するリヤガラス5を設け、このリヤガラス5の左、右両側端部にはサイドダンパ6、7を配置し、前記キャビンルーム1の運転席2後上方一側部には、このリヤガラス5を開閉操作する開閉ハンドル8を設け、この開閉ハンドル8配置側のサイドダンパ6のダンパ反力を、これとは反対側のサイドダンパ7のダンパ反力よりも弱く設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
トラクタや、コンバイン等の作業車両に搭載するキャビンに関し、運転席からリヤガラスの開閉操作を行い易くするものである。
【背景技術】
【0002】
リヤガラスの左、右両側端部と、この外側のリヤピラーとの間に、サイドダンパを設けて、このリヤガラスの上端部の窓ヒンジの周りに開閉回動する技術(例えば、特許文献1参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009ー102004号公報(第1頁、図1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業車両のキャビンにあっては、運転席から運転操作を行いながら常時後側の作業状態を監視することが多く、又、必要に応じて運転者が運転席から直接手を後方へ伸して、リヤガラスを開、閉操作することが多い。このような場合に、リヤガラスの開閉操作を簡単、迅速で、容易に行い得ることが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、キャビンルーム1の運転席2後側部の左、右リヤピラー3間に、上端部の窓ヒンジ4の周りに回動して開閉するリヤガラス5を設け、このリヤガラス5の左、右両側端部にはサイドダンパ6、7を配置し、前記キャビンルーム1の運転席2後上方一側部には、このリヤガラス5を開閉操作する開閉ハンドル8を設け、この開閉ハンドル8配置側のサイドダンパ6のダンパ反力を、これとは反対側のサイドダンパ7のダンパ反力よりも弱く設定したことを特徴とする作業車両のキャビンの構成とする。
【0006】
運転席2に着座して運転操作する運転者が、リヤガラス5を開、閉操作するときは、前記開閉ハンドル8の在る側へ向けて手を差し伸ばしながら、この開閉ハンドル8を把握して、前後に押し引きしながら窓ヒンジ4の周りに開、閉回動する。このとき、リヤガラス5は左、右両側部のサイドダンパ6、7の反力、乃至この反力に抗して操作することができるが、この開閉ハンドル8の在る側のサイドダンパ6は、ダンパ反力が、これと反対側のサイドダンパ7に対して弱く設定されているため、この開閉ハンドル8の操作力が小さく、弱くして、容易に、円滑に開閉作動することができる。しかも、開閉ハンドル8から手を放して、リヤガラス5が開、閉状態になったときは、開閉ハンドル8側とは反対側のサイドダンパ7が強いダンパ反力でダンパ支持するものであるから、車体が振動、揺動等を起しても安定したリヤガラス5の開、閉姿勢を保持させることができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記開閉ハンドル8を、窓ヒンジ4を有してリヤガラス5に取付けるヒンジブラケット9と、サイドダンパ6の一端部をリヤガラス5に取付けるダンパブラケット10との間に渡架させて、この開閉ハンドル8の上、下端部をこれらヒンジブラケット9、及びダンパブラケット10に取付ける。
【0008】
前記開閉ハンドル8は、リヤガラス5の上端部の窓ヒンジ4部と、横端部のサイドダンパ6部との間の、リヤガラス5の隅部に位置して設置されることとなるが、この開閉ハンドル8の上端部は、リヤガラス5の上端部の窓ヒンジ4のヒンジブラケット4に取付けられ、下端部は、リヤガラス5の横端部のダンパブラケット10に取付けられているため、これらブラケット4、10の占める面積を小さく、簡単にして、運転者の運転視界を邪魔し難い。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明は、リヤガラス5を開閉するための開閉ハンドル8を、リヤガラス5の横端部に設けることによって、運転席2に着座した姿勢で手を伸ばして簡単、容易に把持操作することができ、しかも、この操作側の開閉ハンドル8位置する側のサイドダンパ6はダンパ反力を弱く設定しているため、この開閉操作力を軽減して、容易、迅速に開閉することができ、操作性を高め、運転の安全性を高めることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記開閉ハンドル8の両端部が、ヒンジブラケット9、及びダンパブラケット10の取付を共用化して取付けられるため、これらの取付構成をコンパクト化して、リヤガラス5の視界を広く維持することができ、前記この開閉ハンドル8を取付ける側のサイドダンパ6のダンパ反力を弱く設定することと相伴って円滑で、安定したリヤガラス5の開閉操作を行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】トラクタキャビンのキャビンルーム内部の斜視図。
【図2】そのリヤガラスの開きを示す斜視図。
【図3】トラクタキャビンの背面図。
【図4】その側面図。
【図5】リヤガラスの正面図と、平面図、側面図。
【図6】キャビンの正面図。
【図7】そのフロントガラスの正面図と、平面図、側面図。
【図8】ガラスドアの内側面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面に基づいて、キャビン11は、ステアリングハンドル12によって操向の前輪13と、車体14前部に搭載のエンジン15によって伝動される後輪16とを軸装して走行する四輪走行形態の車体14に搭載して、運転席2前方のステアリングハンドル12を有するダッシュボード17部から、この運転席2部にわたる運転フロア18上部を覆って、運転操作するためのキヤビンルーム1を形成する形態である。キャビン11は底部にキャビンフロア19を形成して、キャビンルーム1の底部を形成するが、このキャビンフロア19の中央後部に前記運転席2を取付支持する運転フロア18を形成し、この左右両側部に後輪上部を覆うサイドフェンダ20を形成し、この左右のサイドフェンダ20の後端部間はアンダガラス31を有するリヤカバー21で連結している。このキャビンフロア19の前端部は、ボンネット22の後端部を左右にまたぐフロントフレーム23を形成し、このフロントフレーム23の後側底部に運転フロア18の前端部を連結している。このキャビン11は、左右前後の四隅部にフロントピラー24、リヤピラー3、及びこれらの間にミットピラー25を配置して、これら各ピラー24、3、25の上端部間にわたって、フロントビーム26、リヤビーム27、及び左右のサイドビーム28等から囲桁状に形成のルーフフレーム29を取付支持し、上側部にキャビンルーフ30を取付ける。
【0013】
又、このキャビン11の左右の各フロントピラー24間にはフロントガラス32を設け、左右の各リヤピラー3間にはリヤガラス5を設け、又、フロントピラー24とリヤピラー3との間には、中間部にミッドピラー25を設けて、このミッドピラー25周りに開閉回動させるガラスドア33とサイドガラス34を設ける。このうちフロントガラス32は、左右のフロントピラー24と、上部のフロントビーム26と、下部のフロントフレーム23と等の間にわたって正面門形状の形態として構成される。リヤガラス5は、左右のリヤピラ3と、上部にリヤビーム27と、下部のリヤカバー21と等の間にわたって構成する。又、左右両側のガラスドア33は、前側のフロントピラー24と、後側のミッドピラー25と、上部ルーフフレーム29部のサイドビーム28と、下部のキャビンフロア19、及びサイドフェンダ20の前上縁部と等の間にわたるドア口を設けて、この上端をミッドピラー25に対してドアヒンジ35で開閉回動自在に設け、このガラスドア33の前部に有するドアハンドル36を把持して外側へ開回動する形態である。このドア口の下方には昇降ステップ37を設けている。又、前記サイドガラス34は、前記ミッドピラー25と、リヤピラー3と、上部のサイドビーム28と、下部のサイドフェンダ20の後上縁部と等の間にわたって形成の窓口に設け、前縁をミッドピラー25に対して窓ヒンジで外側へ回動して、広く開くことができるように構成している。
【0014】
ここにおいて、キャビンルーム1の運転席2後側部の左、右リヤピラー3間に、上端部の窓ヒンジ4の周りに回動して開閉するリヤガラス5を設け、このリヤガラス5の左、右両側端部にはサイドダンパ6、7を配置し、前記キャビンルーム1の運転席2後上方一側部には、このリヤガラス5を開閉操作する開閉ハンドル8を設け、この開閉ハンドル8配置側のサイドダンパ6のダンパ反力を、これとは反対側のサイドダンパ7のダンパ反力よりも弱く設定する。
【0015】
運転席2に着座して運転操作する運転者が、リヤガラス5を開、閉操作するときは、前記開閉ハンドル8の在る側へ向けて手を差し伸ばしながら、この開閉ハンドル8を把握して、前後に押し引きしながら窓ヒンジ4の周りに開、閉回動する。このとき、リヤガラス5は左、右両側部のサイドダンパ6、7の反力、乃至この反力に抗して操作することができるが、この開閉ハンドル8の在る側のサイドダンパ6は、ダンパ反力が、これと反対側のサイドダンパ7に対して弱く設定されているため、この開閉ハンドル8の操作力が小さく、弱くして、容易に、円滑に開閉作動することができる。しかも、開閉ハンドル8から手を放して、リヤガラス5が開、閉状態になったときは、開閉ハンドル8側とは反対側のサイドダンパ7が強いダンパ反力でダンパ支持するものであるから、車体が振動、揺動等を起しても安定したリヤガラス5の開、閉姿勢を保持させることができる。
【0016】
又、前記開閉ハンドル8を、窓ヒンジ4を有してリヤガラス5に取付けるヒンジブラケット9と、サイドダンパ6の一端部をリヤガラス5に取付けるダンパブラケット10との間に渡架させて、この開閉ハンドル8の上、下端部をこれらヒンジブラケット9、及びダンパブラケット10に取付ける。
【0017】
前記開閉ハンドル8は、リヤガラス5の上端部の窓ヒンジ4部と、横端部のサイドダンパ6部との間の、リヤガラス5の隅部に位置して設置されることとなるが、この開閉ハンドル8の上端部は、リヤガラス5の上端部の窓ヒンジ4のヒンジブラケット4に取付けられ、下端部は、リヤガラス5の横端部のダンパブラケット10に取付けられているため、これらブラケット4、10の占める面積を小さく、簡単にして、運転者の運転視界を邪魔し難い。
【0018】
前記リヤガラス5は、上端縁をリヤビーム27に対して窓ヒンジ4で上下回動自在に取付けて、後方上部へ回動して開くことができる。前記開閉ハンドル8は、キャビンルーム1の右手側後方におけるリヤガラス5の内側部に設ける。左、右のサイドダンパ6、7は、下端部をリヤピラー3の下部に連結し、下端部をリヤガラス5の横端内側面のダンパブラケット10に連結している。これらサイドダンパ6、7は、エアダンパ、又はスプリングダンパ等から構成されるが、ダンパ反力は、前記開閉ハンドル8を配置する側のサイドダンパ6のダンパ反力を、他側のサイドダンパ7のダンパ反力よりも適宜に弱く設定している。このリヤガラス5の内面に窓ヒンジ4のヒンジブラケット9や、サイドダンパ6上端部を取付けるダンパブラケット10をキャビンルーム1内側に露出させて、このヒンジブラケット9に開閉ハンドル8の上端部を取付け、ダンパブラケット10に下端部を取付ける。この開閉ハンドル8は、リヤガラス5の内面との間に適宜の間隔部を形成して、手で把持し易く構成している。前記リヤガラス1の内側面下端部には、ロックレバー38を有し、リヤカバー21に設けるロックメタル39に係合させて閉鎖状態にロックすることができる。
【0019】
前記キャビンフロア19の外周部には取付ブラケット40を配置して、車体14搭載したキャビン11を、この車体14部に取付ける。
【0020】
主として図5に基づいて、前記リヤガラス5は、平面視において中央部を外側へ湾曲R1させ、かつ側面視においても中央部を外側へ湾曲R2させている。又、このリヤガラス5の下端縁は左右直線形態L1に形成しているが、上端縁は中央部を上側へ湾曲L2させている。41はこのリヤガラス5を取付保持する窓枠である。
【0021】
主として図6、図7に基づいて、前記フロントガラス32を、前記リヤガラス5を同様に、平面視、及び側面視において湾曲R1、R2させている。又、下端縁は中央部を左右一直線形態L1に形成し、この左右両側の側端部を外側端下りに傾斜L3させる。上端縁は湾曲L2させる。このフロントガラス32の左右両側下端縁部に連接するロアガラス42を構成するが、このロアガラス42との接合部である継目43を、前記フロントガラス32の下端縁の傾斜L3部を位置させて接合させる。雨水等の流下をこの継目43の傾斜L3縁に沿わせて排水性を向上させる。
【0022】
主として図8に基づいて、前記ガラスドア33の中央部に前後水平方向にわたるドアフレーム44を設けるが、このガラスドア33の内側に沿って、前記ドアフレーム44の上側部に略々平行状のインナハンドル45を設ける。
【符号の説明】
【0023】
1 キャビンルーム
2 運転席
3 リヤピラー
4 窓ヒンジ
5 リヤガラス
6 サイドダンパ
7 サイドダンパ
8 開閉ハンドル
9 ヒンジブラケット
10 ダンパブラケット
11 キャビン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビンルーム(1)の運転席(2)後側部の左、右リヤピラー(3)間に、上端部の窓ヒンジ(4)の周りに回動して開閉するリヤガラス(5)を設け、このリヤガラス(5)の左、右両側端部にはサイドダンパ(6)、(7)を配置し、前記キャビンルーム(1)の運転席(2)後上方一側部には、このリヤガラス(5)を開閉操作する開閉ハンドル(8)を設け、この開閉ハンドル(8)配置側のサイドダンパ(6)のダンパ反力を、これとは反対側のサイドダンパ(7)のダンパ反力よりも弱く設定したことを特徴とする作業車両のキャビン。
【請求項2】
前記開閉ハンドル(8)を、窓ヒンジ(4)を有してリヤガラス(5)に取付けるヒンジブラケット(9)と、サイドダンパ(6)の一端部をリヤガラス(5)に取付けるダンパブラケット(10)との間に渡架させて、この開閉ハンドル(8)の上、下端部をこれらヒンジブラケット(9)、及びダンパブラケット(10)に取付けることを特徴とする請求項1に記載の作業車両のキャビン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−194929(P2011−194929A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61018(P2010−61018)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】