説明

作業車両

【課題】エンジンを始動させる際、車両が急発進することを防止できる作業車両を提供すること。
【解決手段】バッテリ26からの電力をON、OFFするスタートリレー32およびスターターリレー31と、ニュートラルスイッチ33と、ストップランプスイッチ35と、キースイッチ34とを備え、スタートリレー31のリレーコイル31Aの一方はニュートラルスイッチ33に接続され、他方はスターターリレー32の第1接点321Bに接続されるとともに、スタートリレー31の第1接点311Bはスターター30に接続され、第2接点312Bはバッテリ26に接続され、スターターリレー32のリレーコイル32Aの一方は接地され、他方はキースイッチ34に接続されているとともに、スターターリレー31の第2接点312Bは、ストップランプスイッチ35に接続されている構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォークリフト等の作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オペレータが車両のエンジンを始動させる場合において、キースイッチを「START位置」に操作すると、シフトレバーがニュートラル位置にある場合のみ、スターターへバッテリから電力が供給され、エンジンを始動できる構成にすることが知られている(特許文献1)。また、オペレータがシフトレバーをニュートラル位置に操作し、かつブレーキペダルを踏み込んでいる場合に、スターターにバッテリからの電力が供給され、エンジンを始動できるように構成することも知られている(特許文献2)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−247745号公報
【特許文献2】特開2001−349268号公報(段落番号0002〜0005、図5参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1において、シフトレバーが前進または後進に入った状態で傾斜した位置に車両が配置され、エンジン始動時にシフトレバーをニュートラル位置に戻しきれない場合や、エンジン始動と同時に誤ってシフトレバーを前進または後進に入れてしまった場合には、車両が急発進してしまうという問題がある。特許文献2においては、オペレータがブレーキペダルを踏み込んでから、ブレーキ装置が確実に作動する前にスターターが始動したり、シフトレバーをニュートラル位置に操作してから、トランスミッションが確実に作動する前に、スターターが始動したりする可能性がある。
【0005】
ところで、特許文献2には、上述した問題を解消するために、ブレーキペダルを踏み込んでから、またシフトレバーをニュートラル位置に操作してから所定時間が経過したことをマイコンにて検出し、スターターに制御信号を出力することで車両が急発進することを防止しているが、制御装置を備えるため製作コストがかかる。
【0006】
本発明の目的は、エンジンを始動させる際、車両が急発進することを防止でき、製作コストを抑制できる作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る作業車両は、バッテリからの電力をスターターへ供給する電気回路を備えた作業車両であって、前記電気回路は、前記バッテリからの電力をON、OFFする第1リレーおよび第2リレーと、シフトレバーの操作と連動するニュートラルスイッチと、ブレーキペダルの操作と連動し第1接点および第2接点を有するストップランプスイッチと、スターターを起動するキースイッチとを備え、前記第1リレーおよび第2リレーには、リレーコイルと、第1接点および第2接点を有するリレー接点とが設けられ、前記第1リレーのリレーコイルの一方は前記ニュートラルスイッチに接続され、他方は前記第2リレーに設けられたリレー接点の第1接点に接続されるとともに、前記第1リレーに設けられたリレー接点の第1接点は前記スターターに接続され、第2接点は前記バッテリに接続され、前記第2リレーのリレーコイルの一方は接地され、他方は前記キースイッチに接続されているとともに、前記第2リレーのリレー接点の第2接点は、前記ストップランプスイッチの第1接点に接続され、前記ストップランプスイッチの第2接点は、前記キースイッチに接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
以上において、請求項1の発明によれば、ストップランプスイッチおよびニュートラルスイッチがONになっている場合に、第1リレーおよび第2リレーの各リレー接点がONとなるため、オペレータはシフトレバーをニュートラルに操作するだけでなく、ブレーキペダルも踏み込んでおく必要がある。従って、エンジン始動後に作業車両が急発進することを防止できる。
【0009】
また、第1リレーと第2リレーと2つのリレー回路を配置したことで、ストップランプスイッチおよびニュートラルスイッチをONにした場合に接点の切り替えを2回必要とし、スターターの作動までの応答時間を遅くできる。従って、ブレーキ装置の作動、またはトランスミッションの作動に要する所定時間が経過する前に、スターターが駆動するのを防止でき、安価なリレー回路を2つ設けたのみであるため、製作コストを抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
〔フォークリフトの概略構成〕
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る作業車両としてのフォークリフト10全体を示す側面図、図2は、フォークリフト10全体の平面図である。
フォークリフト10は、車体11の前後にそれぞれ左右の前輪12および後輪13を備えた4輪型であり、車体11内に搭載された図示しないエンジンで駆動されるエンジンフォークリフトである。ただし、本発明のフォークリフトとしては、後輪13が1つだけの3輪型であってもよい。
【0011】
車体11の前側には、荷役用の作業機14が設けられている。作業機14は、鉛直に立設されたマスト15と、マスト15に沿って昇降するフォーク爪16と、フォーク爪16を昇降駆動するリフトシリンダ17と、車体11に対して作業機14全体を所定角度範囲で前後に傾斜させるチルトシリンダ18とを備えている。
【0012】
車体11には、オペレータが着座するための運転席19が設けられている。運転席19の上方は、車体11上に取り付けられたヘッドガード20で覆われている。運転席19は下方のボンネット21に一体に設けられている。ボンネット21は上下に開閉自在に設けられ、ボンネット21の下方には、エンジンおよびスターター30(図3)が収容され、エンジンはスターター30によって始動する。
【0013】
ボンネット21の前方には、やはり開閉自在なフロアプレート22が設けられ、後方にはサブボンネット23が設けられている。フロアプレート22を開けることで、エンジンで用いられるオイルフィルタの交換作業等が行え、サブボンネット23を開けることで、ラジエータへのエンジン冷却水の補給等が行えるようになっている。
【0014】
車体11の後側には、カウンターウェイト24が設けられている。カウンターウェイト24には、内部を前後に貫通する風洞25が設けられている。エンジンの冷却ファンにより車体11の下部側から吸引された冷却空気は、エンジン表面およびラジエータを冷却した後に、風洞25を通して後方側に排出される。
【0015】
〔スターターの回路構成〕
次に、図3に示す回路図を参照して、フォークリフト10のスターター30の回路構成を説明する。図3の回路図は、スターター30が作動していない状態を示し、バッテリ26からの電力が供給されていない状態を示している。
【0016】
スターター30は、スターターリレー31を介してバッテリ26に接続されている。スターターリレー31は、リレーコイル31Aと、第1接点311Bおよび第2接点312Bを有するリレー接点31Bとで構成される。リレーコイル31Aの一方は、スタートリレー32に接続され、他方はシフトレバーの操作と連動するニュートラルスイッチ33を介して接地されている。リレー接点31Bの一方である第1接点311Bは、スターター30に接続され、他方である第2接点312Bは、バッテリ26に接続されている。リレーコイル31Aの非励磁状態では、リレー接点31BはOFFとなり、リレーコイル31Aの励磁状態では、リレー接点31BはONとなる。
【0017】
スタートリレー32は、リレーコイル32Aと、第1接点321Bおよび第2接点322Bを有するリレー接点32Bとで構成される。リレーコイル32Aの一方は、キースイッチ34のSTART接点34Aに接続され、他方は接地されている。リレー接点32Bの一方である第1接点321Bは、スターターリレー31のリレーコイル31Aに接続され、他方である第2接点322Bは、ブレーキペダルの操作と連動するストップランプスイッチ35に接続されている。スターターリレー31と同様に、スタートリレー32のリレーコイル32Aの非励磁状態では、リレー接点32BはOFFとなり、リレーコイル32Aの励磁状態では、リレー接点32BはONとなる。なお、本実施形態でのスターターリレー31およびスタートリレー32には、機械式リレーが用いられている。
【0018】
ニュートラルスイッチ33は、シフトレバーの操作と連動しており、オペレータによってシフトレバーがニュートラル位置に操作されたときにONとなる。つまり、シフトレバーがニュートラルの位置にない限り、スターターリレー31のリレーコイル31Aは励磁状態とならず、リレー接点31BはOFFのままである。キースイッチ34は、バッテリ26からの電力をスタートリレー32およびストップランプスイッチ35へ供給をON、またはOFFするものである。
【0019】
ストップランプスイッチ35は、第1接点351および第2接点352を備え、一方の第1接点351は、スタートリレー32の第2接点322Bとストップランプ36とに接続され、他方の第2接点352は、キースイッチ34のACC接点34Bと接続され、ブレーキペダルの操作と連動している。
【0020】
〔スターターの作動〕
スターター30の作動について以下に説明する。
オペレータは、ブレーキペダルを踏み込んだ状態で、キースイッチ34をACC接点34Bに操作する。こうすることで、ストップランプスイッチ35がONとなり、ストップランプ36が点灯する。また、この状態でオペレータは、キースイッチ34をSTART接点34Aに操作すると、スタートリレー32のリレーコイル32Aが励磁状態となり、リレー接点32BがONとなる。そして、オペレータがシフトレバーを操作し、ニュートラルスイッチ33がONになっていれば、スターターリレー31のリレーコイル31Aが励磁状態となり、リレー接点31BはONとなる。これにより、バッテリ26からの電力がスターター30へ供給され、スターター30が作動する。
【0021】
本実施形態によれば、図3に示すように、ストップランプスイッチ35およびニュートラルスイッチ33がONになっている場合に、スタートリレー32およびスターターリレー31の各リレー接点32B,31BがONとなる。すなわち、オペレータはシフトレバーをニュートラルに操作するだけでなく、ブレーキペダルも踏み込んでおく必要があるため、エンジン始動後にフォークリフト10が急発進することを防止できる。
【0022】
また、スターターリレー31およびスタートリレー32の2つのリレー回路が設けられ、リレー接点の切り替えが2回必要であるから、バッテリ26からスターター30への電力供給の伝達時間を遅延できる。従って、ブレーキ装置、またはトランスミッションが作動する前にスターター30の作動を防止でき、フォークリフト10が急発進することを防止できる。しかも、安価なリレー回路で構成されているため、製作コストを抑制できる。
【0023】
なお、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、数量などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、数量などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0024】
例えば、前記実施形態での各リレー31,32には、機械式リレーが用いられたが、半導体リレーを用いてもよい。これによっても、前記実施形態と同様に、車両の急発進を防止でき、かつ安価で構成できる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、駆動源にバッテリを使用する車両に好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係るフォークリフト全体を示す側面図。
【図2】前記実施形態に係るフォークリフト全体を示す平面図。
【図3】前記フォークリフトのスターターの回路構成図。
【符号の説明】
【0027】
10…フォークリフト、26…バッテリ、30…スターター、31…スターターリレー(第2リレー)、31A,32A…リレーコイル、31B,32B…リレー接点、32…スタートリレー(第1リレー)、33…ニュートラルスイッチ、34…キースイッチ、35…ストップランプスイッチ、311B,321B,351…第1接点、312B,322B,352…第2接点。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリからの電力をスターターへ供給する電気回路を備えた作業車両であって、
前記電気回路は、前記バッテリからの電力をON、OFFする第1リレーおよび第2リレーと、シフトレバーの操作と連動するニュートラルスイッチと、ブレーキペダルの操作と連動し第1接点および第2接点を有するストップランプスイッチと、スターターを起動するキースイッチとを備え、
前記第1リレーおよび第2リレーには、リレーコイルと、第1接点および第2接点を有するリレー接点とが設けられ、
前記第1リレーのリレーコイルの一方は前記ニュートラルスイッチに接続され、他方は前記第2リレーに設けられたリレー接点の第1接点に接続されるとともに、
前記第1リレーに設けられたリレー接点の第1接点は前記スターターに接続され、第2接点は前記バッテリに接続され、
前記第2リレーのリレーコイルの一方は接地され、他方は前記キースイッチに接続されているとともに、
前記第2リレーのリレー接点の第2接点は、前記ストップランプスイッチの第1接点に接続され、
前記ストップランプスイッチの第2接点は、前記キースイッチに接続されている
ことを特徴とする作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−293544(P2009−293544A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−149116(P2008−149116)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【出願人】(000184643)コマツユーティリティ株式会社 (106)
【Fターム(参考)】