説明

作業車輌

【課題】ボンネットフード及び左右サイドカバーは、それぞれ別部材に係止、取付けられるので、ボンネットフードの下端と左右サイドカバーの上端との整合が面倒であった。
【解決手段】固定部材である左右のラジエータサポート枠20に1個の取付けプレート21が取付けられる。該取付けプレート21にキャッチ25が取付けられ、ボンネットフードが閉じ状態に係止される。上記取付けプレート21の左右にブラケット30が取付けられ、左右両端のサイドカバー10の前方上部がこれらブラケット30に組付けられる。ボンネットフードの下端及び左右サイドカバーの上端が同じ取付けプレート21を基準として位置決めされて整合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体前部にエンジンを配設したトラクタ等の作業車輌に係り、詳しくはエンジン等を覆うボンネットフード及びサイドカバーの取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、トラクタにあって、エンジンルームを形成するボンネット装置は、前部を覆うフロントグリル、左右の側面を覆う左右サイドカバー及び上部を覆うボンネットフードからなり、これらフロントグリル、左右サイドカバー及びボンネットフードは、それぞれ別部材に取付けられている。例えば、左右のサイドカバーは、下部がフロントフレームに取付けられたステーに係合し、前方上部がラジエータを支持する左右のサポート枠にそれぞれ係止されている。また、ボンネットは、その後方が門型フレームに回動自在に枢支されていると共に、その前方がフロントグリル又は別部材のブラケットに係止されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3676009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記ボンネット装置は、別部材にそれぞれ取付けられてフロントグリル、左右サイドカバー及びボンネットフードが位置決めされるため、特に左右サイドカバーの上端とボンネットフードの下端は互に整合してラインが整うように位置決めすることが好ましいが、該ラインが合いにくい傾向となり、組立てが面倒であると共に、不揃いの製品を現出する虞がある。
【0005】
そこで、本発明は、左右サイドカバーの上部及びボンネットフードを共通の取付けプレートを基準として位置決めし、もって前記課題を解決した作業車輌を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、走行機体(5)の前部にエンジン及び補機を配設し、かつその前部を覆うフロントグリル(9)と左右の側面を覆う左右サイドカバー(10,10)と上部を覆うボンネットフード(11)とを有するボンネット装置(7)を備え、前記エンジンにフレーム(13)が一体に固定されて固定部材(20)を構成し、かつ前記左右サイドカバー(10,10)が取外し自在であると共に、前記ボンネットフード(11)が後部を枢支軸として開閉自在である作業車輌(1)において、
前記固定部材(20)に、幅方向に延びる1個の取付けプレート(21)を固定し、該取付けプレートの幅方向中央部にキャッチ(25)を取付けると共に、該取付けプレートの左右両端にブラケット(30,30)を取付け、
前記キャッチ(25)に前記ボンネットフード(11)を係脱自在に係止し、前記左右のブラケット(30,30)にそれぞれ前記左右サイドカバー(10,10)の前方上部を取付ける、ことを特徴とする作業車輌である。
【0007】
前記左右のブラケット(30,30)は、それぞれ前記取付けプレート(21)に長孔(30a)を介して幅方向に調整自在に固定されてなる。
【0008】
前記取付けプレート(21)が固定される固定部材は、前記補機であるラジエータ(12)を前記フレーム(13)に固定するラジエータサポート枠(20)であり、
前記ラジエータサポート枠(20)に、前記取付けプレート(21)が上下方向に調整自在に固定されてなる。
【0009】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲記載の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る本発明によると、ボンネットフードが閉じた状態と、左右両サイドカバーが組付けられた状態では、共に同じ取付けプレートを基準として位置決めされるので、ボンネットフードの下端と左右両サイドカバーの上端との両ラインが整合されて、ボンネット装置はすっきりとした外観を呈する。また、ボンネットフードは、取付けプレートに取付けられたキャッチにより閉じ位置に保持されると共に、左右サイドカバーは、上記取付けプレートに取付けられたブラケットに当接して組付けられるので、ボンネット装置は、上記両ラインが整合した状態に容易に組付けることができる。
【0011】
請求項2に係る本発明によると、左右のブラケットは、長孔により幅方向に調整自在に取付けプレートに取付けられるので、左右サイドカバーに製造誤差等によるバラツキがあっても、容易に上記ラインが整合するように調整して組付けることができる。
【0012】
請求項3に係る本発明によると、取付けプレートは、固定部材であるラジエータサポート枠に対して上下方向調整に固定されるので、フロントグリルに対してもラインを整合して組付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を適用し得る作業車輌であるトラクタを示す斜視図。
【図2】そのボンネット装置を示す斜視図。
【図3】そのエンジンルームを示す斜視図。
【図4】ボンネット装置の取付けプレートを示す分解斜視図。
【図5】ボンネットフードの係止部分を示す斜視図。
【図6】サイドカバーの取付け部分を示す斜視図。
【図7】ボンネット装置の縦断面図。
【図8】取付けプレートの端部を示す拡大側面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に沿って、本発明の実施の形態について説明する。トラクタ1は、図1に示すように、前輪2及び後輪3により支持される走行機体5を有しており、走行機体5はエンジン、クラッチハウジング、トランスミッションケースを一体に結合して構成され、エンジンの前方にその補機が搭載され、かつその後部には運転席を囲うようにキャビン6が載置されている。
【0015】
前記走行機体5の前部には、図2に示すように、上記エンジン等を囲うようにボンネット装置7が配置され、該ボンネット装置7は、上記エンジン等の前部を覆うフロントグリル9と、その左右側面を覆う左右サイドカバー10,10と、その上部を覆うボンネットフード11とからなる。上記ラジエータ12等の補機は、図3に示すように、前記エンジンに固定されたフロントフレーム13に一体に固定され、固定部材を構成する。また、ボンネット装置7の後部分(運転席側)は、固定部材である後支持枠15となっており、上記ラジエータ12の後部分には熱風の移動を規制するシール枠16が固定されている。前記ラジエータ12の前部分には、門形のフロントグリル取付け枠17が前記フロントフレーム13に固定されて配置されている。
【0016】
前記ラジエータ12は、その左右両側面にサポート枠20が固定され、かつこれらサポート枠20の下端部が前記フロントフレーム13に固定されており、上述したようにサポート枠20を含めて固定部材を構成している。
【0017】
前記ボンネットフード11は、その後部分を前記後支持枠15に枢支されて開閉自在に取付けられており、左右のサイドカバー10,10は、固定部材に着脱自在に取付けられている。フロントグリル9は、上記取付け枠17に着脱自在に取付けられている。
【0018】
本発明に係る取付けプレート21は、図3及び図4に示すように、走行機体5の幅方向に延びる中央プレート部材21aと、該プレート部材の左右端に溶着された端プレート部材21bからなり、端プレート部材は、直交する2端面に切欠きa,bが形成されている。固定部材である前記サポート枠20には複数のボルト20aが植設されており、これらボルトに前記切欠きa,bが係合してナットを締付けることにより前記取付けプレート21が固定されている。この際、図8に示すように、取付けプレート21は、主に上下方向位置を所定量調整自在に取付けられる。
【0019】
前記取付けプレート21の中央プレート部材21aの中央部分にはキャッチ25が取付けられている。キャッチ25は、中央プレート部材21aに一体に固定される基台26と、該基台26に折曲形成された定側爪部26aと、該基台26に回動自在に連結された可動側爪部27とを有し、可動側爪部27は、スプリング28により係止方向に付勢されていると共に、ボーデンワイヤ29が連結されて前方操作部分に導かれ、該操作部分にて係脱操作し得る。また、前記取付けプレート21の中央プレート部材21aの左右両端部にはブラケット30,30がボルトにより固定されている。この際、左右ブラケット30には長孔30aが形成されており、幅方向位置を所定量調整自在になっている。また、固定部材である前記フロントフレーム13にはサイドカバー10の前端下部分を固定するステー34,34が固定されている。
【0020】
前記ボンネットフード11には、図5及び図7に示すように、取付けブラケット31を介してキャッチ用バー32が一体に固定されており、上記取付けブラケット31のバー32の左右にはスプリング33,33が固定されている。これらスプリング33が前記取付けプレート21に当接してボンネットフード11を閉じた際の緩衝作用を保つと共に、前記バー32がキャッチ25に係止された後のボンネットフード11のガタ付きを阻止する。
【0021】
左右のサイドカバー10には、図3及び図5に示すように、その後方上下部分にそれぞれ係合部材35,36が一体に固定されており、またその前方上下部分に取付け用ステー37,39が一体に固定されている。これらサイドカバー10は、その後方係合部材35,36を後支持枠15に形成された係合部に係合すると共に、その前方下部の取付け用ステー39を、固定ステー34に設けた係合部材(ピン)に係合させ、そしてその前方上部の取付け用ステー37を、図6及び図7に示すように、前記ブラケット30に当接して位置決めして、ノブボルト38(図3参照)を前記ブラケット30に固着されたナット30bに締付けることにより固定される。
【0022】
上記ボンネットフード11は、その閉じ位置において取付けプレート21に取付けたキャッチ25により係止され、かつ左右のサイドカバー10,10の上部分は、同じ取付けプレート21と一体のブラケット30,30に当接してそれぞれ位置決めされて組付けられる。この際、ボンネットフード11は、そのバー32がキャッチ25の固定側爪部26aの溝部に落込むことにより、左右(幅方向)位置が規制され、かつバー32が可動側爪部27のフックに係合して上下位置が規制される。従って、閉じ状態におけるボンネットフード11の下端のラインと、組付け状態にある左右サイドカバー10,10の上端のラインとは、すべて同じ取付けプレート21が基準となって位置決めされるので、両ラインが整合したすっきりとした状態となる。
【0023】
またこの際、取付けプレート21は、図8に示すように、固定部材であるサポート枠20に対して切欠きa,bの余裕により上下位置が調整され、フロントグリル9の上端面に対しても整合され、また左右のサイドカバー10,10は、上記ブラケット30,30が長孔30a,30aにより幅方向位置を調整されることにより、製造誤差等によるバラツキを調整して上述した両ラインの幅方向ラインが整合される。
【0024】
なお、上述した実施の形態は、作業車輌としてトラクタに適用したが、これに限らず、他の作業車輌のボンネット装置にも同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0025】
1 作業車輌(トラクタ)
5 走行機体
7 ボンネット装置
9 フロントグリル
10 サイドカバー
11 ボンネットフード
12 補機(ラジエータ)
13 固定部材(フロントフレーム)
20 固定部材(ラジエータサポート枠)
21 取付けプレート
25 キャッチ
30 ブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の前部にエンジン及び補機を配設し、かつその前部を覆うフロントグリルと左右の側面を覆う左右サイドカバーと上部を覆うボンネットフードとを有するボンネット装置を備え、前記エンジンにフレームが一体に固定されて固定部材を構成し、かつ前記左右サイドカバーが取外し自在であると共に、前記ボンネットフードが後部を枢支軸として開閉自在である作業車輌において、
前記固定部材に、幅方向に延びる1個の取付けプレートを固定し、該取付けプレートの幅方向中央部にキャッチを取付けると共に、該取付けプレートの左右両端にブラケットを取付け、
前記キャッチに前記ボンネットフードを係脱自在に係止し、前記左右のブラケットにそれぞれ前記左右サイドカバーの前方上部を取付ける、
ことを特徴とする作業車輌。
【請求項2】
前記左右のブラケットは、それぞれ前記取付けプレートに長孔を介して幅方向に調整自在に固定されてなる、
請求項1記載の作業車輌。
【請求項3】
前記取付けプレートが固定される固定部材は、前記補機であるラジエータを前記フレームに固定するラジエータサポート枠であり、
前記ラジエータサポート枠に、前記取付けプレートが上下方向に調整自在に固定されてなる、
請求項1又は2記載の作業車輌。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−274894(P2010−274894A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132557(P2009−132557)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】