説明

作物の葉落とし装置

【課題】サトウキビの葉落とし、更にはその他の作物の葉落としに適した回転カッタを備えた葉落とし装置を提供する。
【解決手段】作業者が手に持って取り扱う操作棹11の先端に設けたギヤボックス12に左右一対の回転カッタ2,2を装着した作物の葉落とし装置1であり、回転カッタ2,2は、ギヤボックス12から左右一対に突出する回転軸127,127それぞれに装着される回転本体21と、各回転本体21から半径方向に突出させるカッタ紐22とから構成され、突出方向から見た回転方向が異なる回転軸127,127に装着させることにより、操作棹11から見て前方に揃えて回転させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比較的葉の硬い作物から葉を落とすことのできる作物の葉落し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
作物、例えばサトウキビは、茎の下側の一定範囲で葉が落とされる「葉落とし(又は下葉落とし)」がなされる。サトウキビは、密集して栽培されることから下の葉が枯れやすいため、前記葉落としにより枯れた葉を除去し、栄養分が枯れた葉にまで分配されないようにする。このほか、葉落としは、茎の下側における風通しをよくし、病気の発生や拡大を防止してサトウキビの生育を調整する役割もある。これから、サトウキビの栽培において葉落としは重要な作業と考えることができるが、現在の葉落としは、例えば特許文献1に見られるように、葉落としに適した鎌が提案されているのみで、専ら作業者の手作業に頼っているのが現状である。
【0003】
【特許文献1】実公平03-027385号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
サトウキビの葉落としに適した鎌でも、結局作業者の手作業に頼っている限り、前記作業者の負担が重く、大変である。そこで、サトウキビの葉落としを機械化するため、従来公知の草刈機や花卉の葉落とし装置を利用することが考えられる。しかし、草刈機や花卉の葉落とし装置はそのままではサトウキビの葉落としに利用できない。まず、草刈機は、回転カッタを直立姿勢にして利用することになるが、この場合、回転カッタを装着するギヤボックスが邪魔となり、回転カッタのある側しか葉落としができない問題がある。これに対し、草刈機の操作棹を自転させて回転カッタを左右反転させることも考えられるが、ギヤボックスの左側で前方に向けて回転させる回転カッタは、操作棹を自転させるとギヤボックスの右側で後方に向けて回転し、回転カッタが切断した葉を作業者に向けて飛び散らせる問題が生ずる。
【0005】
また、花卉の葉落とし装置の回転カッタは、操作棹の先端に設けられたギヤボックスから出力軸方向に延びたカッタホルダと、前記カッタホルダの外面から出力軸直交方向に突出させた複数のカッタ紐とからなる構成であり、サトウキビの葉落としでは前記カッタホルダが邪魔になるほか、各カッタ紐が回転して形成する回転面が比較的近接して横並びになるため、カッタ紐相互や切り取った葉とカッタ紐とが絡みやすい問題が生ずる。これは、花卉の葉落とし装置が対象とする花卉の葉とサトウキビの葉との性質の違いに起因する問題である。すなわち、花卉(例えば菊)の葉は比較的小さく、また柔らかいが、サトウキビの葉は前記花卉の葉に比べて大きく、また硬いわけである。
【0006】
サトウキビの葉落としにおける作業者の負担を軽減する課題を解決するには、草刈機や花卉の葉落とし装置を参考に、サトウキビの葉落しに適した回転カッタを実現することが、最短かつ好適と考えられる。しかし、草刈機や花卉の葉落とし装置については、上述したように、回転カッタの構成がサトウキビの葉落としに不向きであり、前記回転カッタの構成を検討する必要がある。そこで、草刈機や花卉の葉落とし装置を参考にしながら、サトウキビの葉落とし、更にはその他の作物の葉落としに適した回転カッタを備えた構成を開発するため、検討した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
検討の結果開発したものが、作業者が手に持って取り扱う操作棹の先端に設けたギヤボックスに左右一対の回転カッタを装着した作物の葉落とし装置である。回転カッタは、ギヤボックスから左右一対に突出し、突出方向から見た回転方向が異なる回転軸に装着させることにより、操作棹から見て前方又は後方に揃えて回転させる。各回転カッタは、サトウキビの茎をできるだけに傷めずに葉を切断する目的から、カッタ紐を用いた構成が好ましい。これから、本発明の葉落とし装置に好ましい回転カッタは、ギヤボックスから左右一対に突出する回転軸それぞれに装着される回転本体と、各回転本体から半径方向に突出させるカッタ紐とからなる構成にするとよい。
【0008】
回転カッタは、操作棹の姿勢により、回転面が直立姿勢(垂直面内の傾斜姿勢=垂直姿勢で、傾斜が90度のもの)から傾くこともあるが、以下の説明では回転面が直立姿勢であるものとする。これから、「左右一対の回転カッタ」とは、回転面が直立姿勢にある回転カッタが左右に並んだ構成を意味する。ギヤボックスから左右一対に突出する回転軸は、共に前方(操作棹から遠ざかる方向)又は後方(操作棹に近づく方向)に回転することになり、本発明の葉落とし装置は、左右一対の回転軸それぞれに装着した回転カッタを前方又は後方の一方に揃えて回転させ、左右いずれの回転カッタでも同じように作物の葉を切断できることになる。
【0009】
本発明の葉落とし装置の全体構成は、例えば次のようになる。操作棹は、動力伝達軸を内蔵し、作業者が携行するエンジンの出力軸を動力伝達軸の後端に接続し、ギヤボックスが内蔵する駆動ベベルギヤを前記動力伝達軸の前端に接続し、駆動ベベルギヤの噛み合う従動ベベルギヤを嵌めた駆動軸をギヤボックスから突出させ、前記駆動軸の突出部位を回転軸とする構成である。この場合、ギヤボックスは、従動ベベルギヤを嵌めた駆動軸の両端部をギヤボックスの左右から突出させて、前記駆動軸の両端部をそれぞれ左右一対の回転軸とし、回転カッタは、前記各回転軸に装着し、各回転カッタの回転面を平行に回転させる。ここで、回転カッタがカッタ紐を有する構成であれば、各回転軸に回転本体を装着し、各回転本体のカッタ紐を平行に回転させる構成となる。
【0010】
また、操作棹は、動力伝達軸を内蔵し、作業者が携行するエンジンの出力軸を動力伝達軸の後端に接続し、ギヤボックスが内蔵する駆動ベベルギヤを前記動力伝達軸の前端に接続し、駆動ベベルギヤの噛み合う従動ベベルギヤを嵌めた駆動軸に、自在継手を介して接続した延長軸をギヤボックスから突出させ、前記延長軸の突出部位を回転軸とする構成にしてもよい。この場合、駆動軸の両端部に対して双方に自在継手を介して延長軸を接続する構成と、駆動軸の両端部の一方にのみ自在継手を介して延長軸を接続する構成とが考えられる。すなわち、回転面を平行に回転させる上記回転カッタの構成に対し、双方の回転カッタの回転面を傾ける構成と、一方の回転カッタの回転面を傾ける構成とが考えられる。
【0011】
駆動軸の両端部に対して双方に自在継手を介して延長軸を接続する構成の場合、ギヤボックスは、自在継手を介して駆動軸の両端にそれぞれ接続した延長軸の端部をギヤボックスの左右から前記駆動軸に対して傾けて突出させて、前記延長軸の端部をそれぞれ左右一対の回転軸とし、回転カッタは、前記各回転軸に装着し、各回転カッタの回転面を交差させて回転させる構成となる。延長軸は、自在継手を介することにより、駆動軸に対して自由な方向に傾けることができ、延長軸の端部からなる回転軸に装着した左右一対の回転カッタは、相互に自由な姿勢となる。すなわち、各回転カッタは、それぞれが直立姿勢で平行な基本構成から、垂直姿勢(垂直面内の傾斜姿勢)及び水平姿勢(水平面内の傾斜姿勢)のいずれか又は双方を傾け、回転面を交差させる。具体的には、左右一対の回転カッタの回転面が平面視楔状に交差することが好ましい。ここで、各回転カッタは回転面を交差する関係にすればよく、実際に回転カッタの回転面を交差させる必要はないが、例えば回転カッタがカッタ紐を有する構成であれば、各回転軸に回転本体を装着し、各回転本体のカッタ紐を交差させて回転させることもできる。
【0012】
また、駆動軸の両端部の一方にのみ自在継手を介して延長軸を接続する構成の場合、ギヤボックスは、自在継手を介して駆動軸の一方の端部ををギヤボックスの左右の一方から突出させ、また前記駆動軸の他方の端部に接続した延長軸の端部をギヤボックスの左右の他方から前記駆動軸に対して傾けて突出させて、前記駆動軸の一方の端部と延長軸の端部とをそれぞれ左右一対の回転軸とし、回転カッタは、前記各回転軸に装着し、各回転カッタの回転面を交差させて回転させる構成となる。この構成では、回転カッタの一方が直立姿勢を保ち、残る他方が垂直姿勢(垂直面内の傾斜姿勢)及び水平姿勢(水平面内の傾斜姿勢)のいずれか又は双方を傾け、前記直立姿勢を保つ回転カッタに対して回転面を交差させる。具体的には、左右一対の回転カッタの回転面が平面視楔状に交差することが好ましい。ここで、上述同様、実際に回転カッタの回転面を交差させる必要はないが、例えば回転カッタがカッタ紐を有する構成であれば、各回転軸に回転本体を装着し、各回転本体のカッタ紐を交差させて回転させることもできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の葉落とし装置は、左右一対の回転軸それぞれに装着した回転カッタを前方又は後方の一方に揃えて回転させ、左右いずれの回転カッタでも同じように作物の葉を切断できるようにし、サトウキビをはじめとする作物の葉落としに際して作業者の労力を低減し、効率よく葉落としができる効果をもたらす。左右一対の回転カッタが平行に回転させる構成である場合、操作棹を自転させて回転カッタを左右反転させる必要がなく、また各回転カッタをいずれも前方に向けて回転させて、切り落とした葉を作業者に向けて飛び散らせない。そして、左右一対の回転カッタは、操作棹を左右に振るだけで左右両側に並ぶサトウキビを交互に葉落としできる利点をもたらし、機械化と相俟って例えばサトウキビの葉落としの作業効率を大幅に改善する。
【0014】
左右一対の回転カッタを交差させて回転させる場合、各回転カッタにより切断できる範囲が交差して平面視楔状になるから、例えばサトウキビの茎が回転カッタの間に入り込んで、葉落としできない間隙を形成することがなくなる。実際には、回転カッタは操作棹に従って左右に振ることができるため、回転カッタの間にサトウキビの茎が入り込んで葉落としできない事態は生じにくい。しかし、左右一対の回転カッタを交差させて回転させることにより、一時的にも葉落としできない間隙を形成しないことができる。具体的には、回転カッタの回転面は自由に傾きを決定できるため、前記回転面を傾けたことにより、本来操作棹を左右に振って回転カッタの回転面を傾ける操作が小さくて済み、葉落としの作業効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。図1は本発明に基づく葉落とし装置1の一例を表す平面図、図2は本例の葉落とし装置1の側面図、図3はギヤボックス12から左右一対に突出した回転軸127,127それぞれに回転カッタ2を装着して構成される葉落とし装置1の主要部の水平断面図、図4はサトウキビ3の葉31を切って葉落とししている作業状態を表す葉落とし装置1の主要部の平面図であり、そして図5はサトウキビ3の葉31を切って葉落とししている作業状態を表す葉落とし装置1の主要部の側面図である。各図における葉落とし装置1の平面及び側面は、作業者が左右一対に張り出したハンドル112,112を水平にして操作棹11を右脇に持った状態で、上方から見た面を平面、左方から見た面を側面としている。
【0016】
本例の葉落とし装置1は、図1及び図2に見られるように、背負い式刈払機様の外観で、背負いベルト132を有する背負いフレーム131に搭載したエンジン13の出力軸(図示略)と、動力伝達軸111(図3参照)を内蔵した操作棹11の後端とをフレキシブルシャフト14により接続し、前記操作棹11の先端に設けたギヤボックス12に左右一対の回転カッタ2,2を装着した構成である。本例の操作棹11は、前後(図1及び図2中上下)にずれた左右一対のハンドル112,112を設け、後方のハンドル112を挟んで前にスロットルレバー113を、後に腕ガイド114を配置している。これから、本例の葉落とし装置1は、作業者が右腕を前記腕ガイド114に宛てがいながら後方のハンドル112を右手で持ち、残る前方のハンドル112を左手で持って、腕ガイド114を軸として操作棹11を左右に振って取り扱うことになる。
【0017】
回転カッタ2は、ギヤボックス12から左右一対に突出した回転軸127にナット締めで取り付ける円盤状の回転本体21と、前記回転本体21の周縁に設けた周方向等間隔の挿通孔に半径方向内側から挿入して端部を係合させるのカッタ紐22とから構成される。カッタ紐22は、半径方向外向きに遠心力が加えられるため、端部を回転本体21の挿通孔に圧入し、係合させているだけである。図示の便宜上、左右一対の回転カッタ2それぞれのカッタ紐22の周方向位置を一致させているが、前記カッタ紐22それぞれの周方向位置を一致させる必要はない。回転本体21は、カッタ紐22の取付基礎として十分な構造強度を有し、回転カッタ2としての慣性モーメントを小さくする目的から、カッタ紐22に対して相対的に重い金属製円盤である。カッタ紐22は、刈払機にも用いられる可撓性を有する合成樹脂製紐である。本例の回転軸127は、操作棹11から見て左側が左回転、右側が右回転することにより、装着された左右一対の回転カッタ2,2を操作棹11から見て前方に揃えて回転させる。
【0018】
ギヤボックス12は、図3に見られるように、操作棹11を接続すると、操作棹11が内蔵する動力伝達軸111が接続軸121に差し込まれてスプライン嵌合する。駆動ベベルギヤ122は、接続軸121に取り付けており、接続軸121を介して動力伝達軸111と一体に回転する。従動ベベルギヤ123は、接続軸121の回転を直交方向に転換して駆動軸124に伝達する。回転軸127,127は、ギヤボックス12の左右から突出させた駆動軸124の前記突出部位である。本例の駆動軸124は、ギヤボックス12の左(図3中左側)から右(図3中右側)に貫通させるボルト様の長尺な軸体で、貫通端にナットを締め付け、ギヤボックス12を挟んで左右一対の回転カッタ2,2の回転本体21,21を挟持し、取り付けている。このため、駆動軸124は左右方向の位置が動くので、従動ベベルギヤ123をスプライン嵌合させている。
【0019】
本例における左右一対の回転カッタ2は、左右方向に延びる同一直線上に沿ってギヤボックス12から突出する左右一対の回転軸127,127それぞれに直交して各回転本体21,21を取り付けている。これから、各回転カッタ2の回転面Sは、いずれも直立姿勢(図1の平面図に直交する姿勢又は図2の側面図に平行な姿勢)にあり、両回転面Sが平行になっている。ここで、回転面Sは、図3に見られるように、便宜上、カッタ紐22が真直ぐに伸びた状態における前記カッタ紐22の先端が描く周回軌跡を含む面としている。これから、本例の葉落とし装置1は、既述したように、回転カッタ2が共に操作棹11から見て前方に揃えて回転させることができる。
【0020】
本発明の葉落とし装置1は、例えば作業者が手に持ってサトウキビ3を植えた畑の畝間を歩き、回転カッタ2,2を回転させながら操作棹11を左右に振って、図4及び図5のように葉落としをする。回転カッタ2は、回転するカッタ紐22をサトウキビ3に接近させ、前記カッタ紐22を葉落としの対象となる葉31を下方に向けて叩き、絡ませるようにして切断する。カッタ紐22は、葉31に対して物理的な力を加えて前述のように切断できるが、サトウキビ3の茎を傷つけるほどの物理的な力を有しないため、回転カッタ2をサトウキビ3に接近させると、葉31のみを切断することができる。これにより、本発明の葉落とし装置1は、葉落としの効率を向上させる効果をもたらしている。
【0021】
本例は、回転カッタ2,2を操作棹11から見て前方に揃えて回転させる。回転カッタ2は、カッタ紐22を葉31に絡めて切断するから、仮に回転カッタ2,2を操作棹11から見て後方に揃えて回転させても、葉落としできる。しかし、回転カッタ2,2を操作棹11から見て後方に揃えて回転させた場合、切断された葉31がカッタ紐22により、作業者に近づく方向に飛び散らせることになり、葉落としの作業を阻害する。そこで、本例は、回転カッタ2,2を操作棹11から見て前方に揃えて回転させ、切断された葉31を作業者から遠ざかる方向に振り落とし、葉落としの作業を阻害させないようにしている。ギヤボックス12から突出する左右一対の回転軸127,127の回転を異ならせることは、回転カッタ2,2を操作棹11から見て前方に揃えて回転させ、葉31の排出方向を作業者から遠ざかる方向に特定して、葉落としの効率を向上させる効果をもたらしている。
【0022】
本発明の葉落とし装置1は、作業者が手に持ってサトウキビ3を植えた畑の畝間を歩き、回転カッタ2,2を回転させながら操作棹11を左右に振って、左の回転カッタ2で左の畝のサトウキビ3を、右の回転カッタ2で右の畝のサトウキビ3を葉落としする使用態様を想定している。しかし、回転カッタ2のカッタ紐22は可撓性を有するので、例えば左の畝のサトウキビ3に向けて操作棹11を振った場合、左右一対の回転カッタ2,2の間にサトウキビ3の茎が嵌まり込み、両回転カッタ2,2が葉31をうまく切断できなかったり、逆に両回転カッタ2,2に葉31が絡まって回転を止めたりする虞がある。これから、サトウキビ3の茎が嵌まり込まない程度に回転カッタ2,2の間を狭くするため、各回転カッタ2の回転面Sを交差させることが考えられる。図6はギヤボックス12から左右一対に突出した回転軸127,127それぞれに回転カッタ2,2を装着して構成される葉落とし装置1の主要部の別例(以下、別例1)を表す水平断面図であり、図7は同主要部の更に別例(以下、別例2)を表す水平断面図である。
【0023】
別例1のギヤボックス12は、図6に見られるように、操作棹11が内蔵する動力伝達軸111をスプライン嵌合する接続軸121に駆動ベベルギヤ122を取り付け、駆動ベベルギヤ122に噛み合わせた従動ベベルギヤ123により駆動軸124を回転させるまでの構成を上記例示(図3参照)と同じにしながら、左右一対の回転軸127,127を水平面(図6中紙面と平行な面)内で内向きに曲げるため、駆動軸124の両端にそれぞれ自在継手125,125を設け、各自在継手125に接続した延長軸126をギヤボックス12から突出させ、各延長軸126の突出部位を回転軸127としている。これにより、各回転軸127に取り付けた回転カッタ2は、回転面Sを水平面内で楔状に交差させ、サトウキビ3の茎が嵌まり込まない程度に左右の回転カッタ2,2の間隔を、正確には回転カッタ2,2の前方の間隔dを狭くできる。
【0024】
左右一対の回転カッタ2,2それぞれの回転面Sを交差させるだけであれば、別例2のように構成することもできる。すなわち、別例2のギヤボックス12は、図7に見られるように、駆動ベベルギヤ122に噛み合わせた従動ベベルギヤ123により駆動軸124を回転させるまでは上記例示(図3参照)と同じにしながら、駆動軸124の左端(図7中左)に自在継手125を介して傾けて延長軸126を接続し、ギヤボックス12から突出させて左の回転軸127を構成し、また駆動軸124の右端(図7中右)はそのままギヤボックス12から突出させて右の回転軸127としている。これにより、左側の回転カッタ2は操作棹11と平行に真直ぐな直立姿勢のままであるが、右側の回転カッタ2は内向きに傾くことなり、それぞれの回転面Sが水平面内で楔状に交差する結果、サトウキビ3の茎が嵌まり込まない程度に左右の回転カッタ2,2の間隔を、正確には回転カッタ2,2の前方の間隔dを狭くできる。
【0025】
ここで、別例1及び別例2から明らかなように、駆動軸124に対する延長軸126は、左右それぞれ自由な方向又は大きさで傾けることができる。しかし、左右の延長軸126を自由な方向に傾けると、各延長軸126端部の回転軸127に取り付ける回転カッタ2それぞれの回転モーメントが不均衡となり、操作棹11の取り扱いに影響を与える虞がある。また、左右の延長軸126を傾ける大きさが異なると、やはり回転モーメントが不均衡となり、同様な問題が生ずる虞がある。これから、左右の延長軸126は、あくまで同じ大きさかつ左右対称の関係で傾けることが好ましく、別例2はギヤボックス12の構成を少しでも簡略化した場合に本発明に利用される。より好ましくは、左右一対の回転カッタ2それぞれが直立姿勢で平行な基本構成から、水平姿勢(水平面内の傾斜姿勢)で傾き、回転面Sを前方で交差させる別例1のように、左右の延長軸126を同じ大きさかつ左右対称の関係で傾けるとよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に基づく葉落とし装置の一例を表す平面図である。
【図2】本例の葉落とし装置の側面図である。
【図3】本ギヤボックスから左右一対に突出した回転軸それぞれに回転カッタを装着して構成される葉落とし装置の主要部の水平断面図である。
【図4】サトウキビの葉を切って葉落とししている作業状態を表す葉落とし装置の主要部の平面図である。
【図5】サトウキビの葉を切って葉落とししている作業状態を表す葉落とし装置の主要部の側面図である。
【図6】ギヤボックスから左右一対に突出した回転軸それぞれに回転カッタを装着して構成される葉落とし装置の主要部の別例を表す水平断面図である。
【図7】ギヤボックスから左右一対に突出した回転軸それぞれに回転カッタを装着して構成される葉落とし装置の主要部の更に別例を表す水平断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 葉落とし装置
11 操作棹
12 ギヤボックス
13 エンジン
14 フレキシブルシャフト
2 回転カッタ
3 サトウキビ
31 葉
S 回転面
d 回転カッタの前方の間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者が手に持って取り扱う操作棹の先端に設けたギヤボックスに左右一対の回転カッタを装着してなる作物の葉落とし装置。
【請求項2】
回転カッタは、ギヤボックスから左右一対に突出し、突出方向から見た回転方向が異なる回転軸に装着する請求項1記載の作物の葉落とし装置。
【請求項3】
回転カッタは、ギヤボックスから左右一対に突出する回転軸それぞれに装着される回転本体と、各回転本体から半径方向に突出させるカッタ紐とからなる請求項1又は2いずれか記載の作物の葉落とし装置。
【請求項4】
操作棹は、動力伝達軸を内蔵し、作業者が携行するエンジンの出力軸を動力伝達軸の後端に接続し、ギヤボックスが内蔵する駆動ベベルギヤを前記動力伝達軸の前端に接続し、駆動ベベルギヤの噛み合う従動ベベルギヤを嵌めた駆動軸をギヤボックスから突出させ、前記駆動軸の突出部位を回転軸とする請求項1〜3いずれか記載の作物の葉落とし装置。
【請求項5】
ギヤボックスは、従動ベベルギヤを嵌めた駆動軸の両端部をギヤボックスの左右から突出させて、前記駆動軸の両端部をそれぞれ左右一対の回転軸とし、回転カッタは、前記各回転軸に装着し、各回転カッタの回転面を平行に回転させる請求項4記載の作物の葉落とし装置。
【請求項6】
操作棹は、動力伝達軸を内蔵し、作業者が携行するエンジンの出力軸を動力伝達軸の後端に接続し、ギヤボックスが内蔵する駆動ベベルギヤを前記動力伝達軸の前端に接続し、駆動ベベルギヤの噛み合う従動ベベルギヤを嵌めた駆動軸に、自在継手を介して接続した延長軸をギヤボックスから突出させ、前記延長軸の突出部位を回転軸とする請求項1〜3いずれか記載の作物の葉落とし装置。
【請求項7】
ギヤボックスは、自在継手を介して駆動軸の両端部にそれぞれ接続した延長軸の端部をギヤボックスの左右から前記駆動軸に対して傾けて突出させて、前記延長軸の端部をそれぞれ左右一対の回転軸とし、回転カッタは、前記各回転軸に装着し、各回転カッタの回転面を交差させて回転させる請求項6記載の作物の葉落とし装置。
【請求項8】
ギヤボックスは、自在継手を介して駆動軸の一方の端部ををギヤボックスの左右の一方から突出させ、また前記駆動軸の他方の端部に接続した延長軸の端部をギヤボックスの左右の他方から前記駆動軸に対して傾けて突出させて、前記駆動軸の一方の端部と延長軸の端部とをそれぞれ左右一対の回転軸とし、回転カッタは、前記各回転軸に装着し、各回転カッタの回転面を交差させて回転させる請求項6記載の作物の葉落とし装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−89639(P2009−89639A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−262269(P2007−262269)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【出願人】(000104065)カーツ株式会社 (14)
【Fターム(参考)】