説明

使い捨て吸収性物品

【課題】柔軟性を損ねずに温度変化物質の移動を防止する。
【解決手段】液透過性表面シート30と液不透過性シート11との間に吸収体56が介在されたおむつに対して、液不透過性シート11の表面側に、水分との接触により温度変化をもたらす粒子状の温度変化物質40を含有させるにあたり、温度変化物質40を、その表面側及び裏面側にそれぞれ位置する表面側部材58及び裏面側部材56間に挟むとともに、その一部を表面側部材58及び裏面側部材56に枠状に融着し、且つ残部を表面側部材及び裏面側部材に融着せずに、枠状融着部分41により囲まれる部分に移動可能な状態で封じ込めるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨てのおむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、汗取りシート等の吸収性物品に関するものであり、特に所謂トイレトレーニングに用いられる使い捨ておむつ、使い捨て吸収パッド等に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トレーニング用の使い捨ておむつとしては、着用者に排尿を知覚させるために、尿を肌に接触させ、湿潤による不快感を強調する工夫を施したものが一般的であったが、肌のフヤケからカブレに繋がるおそれがあることから、尿を肌から遠ざけるものでありながら、着用者に排尿を知覚させるための技術開発が行われている。
この代表的なものが、ソルビトール等のように尿等の水分との接触により温度変化をもたらす物質の利用である(例えば特許文献1、2参照)。特許文献1記載の技術では、ソルビトール等の温度変化物質を含む部材を、吸収要素の身体側に配置することが提案されている。また、特許文献2記載の技術では、浸透性層と不浸透性層との間にソルビトール等の温度変化物質を挟んでなる要素を、吸収性コア上に配置することが提案されている。
【特許文献1】特許3922722号公報
【特許文献2】特許3830901号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の技術では、温度変化物質が粉粒体状のまま非固定で含有されているため、製品の流通過程又は使用中に温度変化物質が所定部位から移動し、温度変化物質に対する水分の供給が不足する、温度変化が身体に対して十分に伝達しなくなる等により、温度変化が不十分となるおそれがあった。
この問題点を解決する方法として、吸収性物品内部の適宜の部材に温度変化物質を融着することが考えられたが、温度変化物質が融着した部分は硬くなり、吸収性物品の柔軟性を損ねるおそれがあった。
そこで、本発明の主たる課題は、柔軟性を損ねずに温度変化物質の移動を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
液透過性表面シートと液不透過性シートとの間に吸収体が介在されるとともに、表面側に、水分との接触により温度変化をもたらす粒子状の温度変化物質が含有された、使い捨て吸収性物品において、
前記温度変化物質は、その表面側及び裏面側にそれぞれ位置する表面側部材及び裏面側部材間に挟まれるとともに、その一部が前記表面側部材及び裏面側部材に融着し、且つ残部が前記表面側部材及び裏面側部材に融着しておらず、
前記温度変化物質の融着部分が枠状をなすとともに、その枠状融着部分により囲まれる部分に前記非融着の温度変化物質が封じ込められている、
ことを特徴とする使い捨て吸収性物品。
【0005】
(作用効果)
表面側部材及び裏面側部材に融着する枠状融着部分の内側は、表裏方向は表面側部材及び裏面側部材により囲まれ、周囲は枠状融着部分により囲まれているため、その内側に配置された温度変化物質は融着してなくても、枠状融着部分の範囲内でしか移動できない。よって、温度変化物質の移動を抑制され、所期の温度変化が発生するようになる。しかも、温度変化物質の融着部分は枠状であるため、全体を面状に融着するよりも格段に柔軟となり、温度変化物質の融着による硬質化も抑制することができる。
【0006】
なお、用語「融着」とは、温度変化物質が溶融状態で対象(吸収体)に付着した後に固化し、固化体が対象に固定された状態を意味する。また、「枠状」とは、温度変化物質の融着部分が完全に連続するものの他、温度変化物質の移動が抑えられる範囲において部分的な不連続部分を有する形態も含むものである。
【0007】
<請求項2記載の発明>
前記枠状融着部分が多数配列されて格子状パターンをなしており、且つこの格子状パターンは、前記温度変化物質の融着部及び非融着部が交互に列なる点線状の融着線からなり、各交差位置において少なくとも一方の融着線が不連続となっているパターンである、請求項1記載の使い捨て吸収性物品。
【0008】
(作用効果)
温度変化物質の融着部分をこのようなパターンで設けることにより、温度変化物質の融着部分が不連続となることにより、融着部分による硬質化がより一層軽減されるようになる。
【0009】
<請求項3記載の発明>
前記温度変化物質として、相対的に融点が高い高融点温度変化物質と、相対的に融点が低い低融点温度変化物質とを含有しており、前記枠状融着部分が前記低融点温度変化物質の融着により形成され、且つ前記枠状融着部分により囲まれる部分に前記高融点温度変換物質が前記非融着の温度変化物質として封じ込められている、請求項1又は2記載の使い捨て吸収性物品。
【0010】
(作用効果)
融点の異なる温度変化物質を用い、低融点温度変化物質により枠状融着部分を形成し、その内側に高融点温度変化物質を配置することで、製造に際して枠状融着部分の形成が容易となる。
【0011】
<請求項4記載の発明>
前記表面側部材が、前記表面シートと前記吸収体との間に配置された第1の液透過性シートであり、前記裏面側部材が前記第1の液透過性シートと前記吸収体との間に配置された第2の液透過性シートである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使い捨て吸収性物品。
【0012】
(作用効果)
温度変化物質は水分との接触により温度変化をもたらすものであるため、表面側部材及び裏面側部材が本項記載の部位に設けられていると、第1に水分との接触効率が高く、第2に温度変化した水分が肌により近い部位に保持され、第3に温度変化物質がじかに肌に触れないようになる。また、表面側部材及び裏面側部材が本項記載のように表面シートや吸収体とは別に設けられていると、表面側部材及び裏面側部材の素材選択の自由度が増すという利点がある。
【0013】
<請求項5記載の発明>
前記表面側部材が前記表面シートであり、前記裏面側部材が前記表面シートの裏面側に隣接配置された液透過性セカンドシートである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使い捨て吸収性物品。
【0014】
(作用効果)
温度変化物質は水分との接触により温度変化をもたらすものであるため、表面側部材及び裏面側部材が本項記載の部位に設けられていると、第1に水分との接触効率が高く、第2に温度変化した水分が肌により近い部位に保持され、第3に温度変化物質がじかに肌に触れないようになる。また、表面側部材及び裏面側部材が本項記載のように表面シートとその裏面側に隣接配置された液透過性セカンドシートであると、資材の増加を抑えることができるという利点がある。
【0015】
<請求項6記載の発明>
前記吸収体が包装シートにより包まれており、前記表面側部材が前記包装シートにおける前記吸収体の表面側に位置する部分であり、前記裏面側部材が前記吸収体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使い捨て吸収性物品。
【0016】
(作用効果)
温度変化物質は水分との接触により温度変化をもたらすものであるため、表面側部材及び裏面側部材が本項記載の部位に設けられていると、第1に水分との接触効率が高く、第2に温度変化した水分が肌により近い部位に保持され、第3に温度変化物質がじかに肌に触れないようになる。また、表面側部材及び裏面側部材が本項記載のように包装シート及び吸収体であると、資材の増加を抑えることができるとともに、両部材の間から温度変化物質が零れ出ても、包装シート内に止めることができるという利点がある。
【0017】
<請求項7記載の発明>
前記吸収体として、表面側吸収体とその裏面側に重なる裏面側吸収体とを有しており、前記表面側部材が前記表面側吸収体であり、前記裏面側部材が前記裏面側吸収体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使い捨て吸収性物品。
【0018】
(作用効果)
表面側部材及び裏面側部材が本項記載のように吸収体であると、資材の増加を抑えることができるとともに、吸収した液分に対して温度変化を持続的にもたらすことができるという利点がある。
【0019】
<請求項8記載の発明>
前記表面側部材が、一枚のシートを折り畳んで形成された層構造物における表面側層であり、前記裏面側部材が前記表面側層の裏面側に隣接配置された裏面側層である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使い捨て吸収性物品。
【0020】
(作用効果)
このような構造を採用することにより、層構造物の端部におけるシートの折り返し部分が温度変化物質の移動を遮断し、当該端部からの温度変化物質の零れ落ちを防止することができるとともに、資材管理が容易となる、製造設備が簡素となる等の利点ももたらされる。
【0021】
<請求項9記載の発明>
液透過性表面シートと液不透過性シートとの間に吸収体が介在されるとともに、液透過性表面シートと液不透過性シートとの間に、水分との接触により温度変化をもたらす粒子状の温度変化物質が含有された、使い捨て吸収性物品の製造方法において、
前記温度変化物質を所定の表面側部材及び裏面側部材間に挟んだ状態で、枠状のエンボスパターンで且つ前記温度変化物質が溶融する温度でヒートエンボス加工を施す工程を含む、
ことを特徴とする使い捨て吸収性物品の製造方法。
【0022】
(作用効果)
このような工程を採用することにより、前述の請求項1記載の発明と同様の特徴を有する吸収性物品を、簡単に製造することができる。また、この方法は製造ラインによる連続製造にも好適である。
【0023】
<請求項10記載の発明>
液透過性表面シートと液不透過性シートとの間に吸収体が介在されるとともに、液透過性表面シートと液不透過性シートとの間に、水分との接触により温度変化をもたらす粒子状の温度変化物質が含有された、使い捨て吸収性物品の製造方法において、
所定の表面側部材及び裏面側部材のいずれか一方における対向面上に、前記温度変化物質の溶融液を枠状に塗布するとともに、その少なくとも枠の内側に粒子状の温度変化物質を配置した後、その上に他方の部材を重ね、前記溶融液を接着剤として前記表面側部材及び裏面側部材を接着する工程を含む、
ことを特徴とする使い捨て吸収性物品の製造方法。
【0024】
(作用効果)
このような工程を採用することにより、前述の請求項1記載の発明と同様の特徴を有する吸収性物品を、簡単に製造することができる。また、この方法は製造ラインによる連続製造にも好適である。
【0025】
<請求項11記載の発明>
液透過性表面シートと液不透過性シートとの間に吸収体が介在されるとともに、液透過性表面シートと液不透過性シートとの間に、水分との接触により温度変化をもたらす粒子状の温度変化物質が含有された、使い捨て吸収性物品の製造方法において、
所定の表面側部材及び裏面側部材のいずれか一方における対向面上に、前記温度変化物質の溶融液を第1の方向に間隔を空けた複数位置において、第1の方向と交差する第2の方向に沿って線状に塗布するとともに、その少なくとも塗布線間に粒子状の温度変化物質を配置した後、その上に他方の部材を重ね、前記溶融液を接着剤として前記表面側部材及び裏面側部材を接着し、しかる後、前記温度変化物質が溶融する温度で、第2の方向に間隔を空けて第1の方向に沿う線状のヒートエンボス加工を施す工程を含む、
ことを特徴とする使い捨て吸収性物品の製造方法。
【0026】
(作用効果)
このような工程を採用することにより、前述の請求項1記載の発明と同様の特徴を有する吸収性物品を、簡単に製造することができる。また、この方法は製造ラインによる連続製造にも好適である。
【0027】
<請求項13記載の発明>
液透過性表面シートと液不透過性シートとの間に吸収体が介在されるとともに、液透過性表面シートと液不透過性シートとの間に、水分との接触により温度変化をもたらす粒子状の温度変化物質が含有された、使い捨て吸収性物品の製造方法において、
所定の表面側部材及び裏面側部材の間に、相対的に融点が低い低融点温度変化物質を枠状に配置するとともに、その枠の内側に相対的に融点が高い高融点温度変化物質を配置した状態で、前記低融点温度変化物質が溶融し且つ前記高融点温度変化物質が溶融しないように加熱する工程を含む、
ことを特徴とする使い捨て吸収性物品の製造方法。
【0028】
(作用効果)
このような工程を採用することにより、前述の請求項1記載の発明と同様の特徴を有する吸収性物品を、簡単に製造することができる。また、この方法は製造ラインによる連続製造にも好適である。
【0029】
<請求項13記載の発明>
前記表面側部材及び裏面側部材は連続帯状をなしており、これらを所定方向に搬送しながら前記工程を行った後、前記表面側部材及び裏面側部材をMD方向に所定の間隔を空けて切断するのと同時に、その切断端部にCD方向に沿う線状のヒートエンボス加工を施す、請求項9〜12のいずれか1項に記載の使い捨て吸収性物品の製造方法。
【0030】
(作用効果)
製造ラインによる連続製造を行う場合、資材は連続帯状で供給し、枠状融着部分の融着後にMD方向に所定の間隔で所定寸法に切断するのが好ましい。しかし、この場合、切断端部から温度変化物質が零れ落ちるおそれがある。よって、本項記載のように、切断と同時に切断端部にCD方向に沿う線状のヒートエンボス加工を施し、表面側部材及び裏面側部材を切断端部でシールするのが好ましい。これにより、切断端部から温度変化物質が零れ落ちる量を低減することができる。
【0031】
<請求項14記載の発明>
前記表面側部材及び裏面側部材は連続帯状をなしており、これらを所定方向に搬送しながら前記工程を行い、MD方向に間隔を空けてCD方向に沿う線状の温度変化物質の融着部分を形成した後、前記表面側部材及び裏面側部材をMD方向に所定の間隔を空けて切断する方法であって、
前記切断位置のMD方向一方側及び他方側にそれぞれ隣接する、CD方向に沿う線状の温度変化物質の融着部分間の間隔を、他のCD方向に沿う線状の温度変化物質の融着部分間の間隔よりも狭くする、
請求項9〜12のいずれか1項に記載の使い捨て吸収性物品の製造方法。
【0032】
(作用効果)
前述したように、資材は連続帯状で供給し、枠状融着部分の融着後にMD方向に所定の間隔で所定寸法に切断する場合において、MD方向に間隔を空けてCD方向に沿う線状の温度変化物質の融着部分を形成する場合は、そのCD方向融着部分のMD方向間隔を、切断位置を挟むCD方向融着部分のみ狭くすることにより、切断端部から温度変化物質が零れ落ちる量を低減することができる。
【発明の効果】
【0033】
以上のとおり、本発明によれば、柔軟性を損ねずに温度変化物質の移動を防止できるようになる、等の利点がもたらされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の一実施形態について、パンツ型使い捨ておむつ(トレーニングパンツ)の例を引いて説明するが、本発明はテープ式の使い捨ておむつやパッド型の吸収性物品等にも適用できることはいうまでもない。
<パンツ型使い捨ておむつの基本構造例>
図1〜図9は、パンツ型使い捨ておむつの一例を示している。各図において、「前後方向」とは腹側(前側)と背側(後側)を結ぶ方向を意味し、「幅方向」とは前後方向と直交する方向(左右方向)を意味し、「上下方向」とはおむつの装着状態、すなわちおむつの腹側と背側とを重ね合わせるようにおむつを股間部で2つに折った状態で胴回り方向と直交する方向、換言すればウエスト開口部WO側と股間部側とを結ぶ方向を意味する。
【0035】
このパンツ型使い捨ておむつは、着用者の胴回りのうち腹側を覆う腹側外装シート12Fと背側を覆う背側外装シート12Bとを有しており、腹側外装シート12Fの幅方向両側縁と背側外装シート12Bの幅方向両側縁とが、上下方向全体にわたりヒートシールや超音波溶着等により溶着接合されて筒状の胴回り部100が形成されるように構成されている。符号12Aは個々の溶着部を示しており、この溶着部12Aの群がサイドシール部を構成するものである。図示形態のように、背側外装シート12Bが溶着部12Aよりも下側に延出している場合には、この部分までを含む上下方向範囲に一体的にヒートシール等の加工を施し、背側延出部14に延出溶着部12Eを設けることができる。延出溶着部12Eを設けることにより、後述する背側延出部14の第2の細長状弾性伸縮部材16の引き込みを防止することができる。この場合、脇部の破りやすさを考慮して、溶着部12Aは小さな溶着部の集合からなり、溶着部12Aにおける溶着面積の比率が低い接合パターンとすることが一般的であるが、延出溶着部12Eでは破りやすさを考慮する必要が無いため、溶着パターンは溶着部12Aよりも溶着面積の比率を高くすることにより第2の細長状弾性伸縮部材16が確実に溶着固定されるようにしてもよい。また、延出溶着部12Eは臀部カバー部14Cの縁部をカーブしたラインで溶着し、臀部カバー部14Cの第2の細長状弾性伸縮部材16の引き込みを防止することもできる。
【0036】
また、胴回り部100における腹側外装シート12Fの幅方向中央部内面に内装体200の前端部がホットメルト接着剤等により連結されるとともに、背側外装シート12Bの幅方向中央部内面に内装体200の後端部がホットメルト接着剤等により連結されており、腹側外装シート12Fと背側外装シート12Bとが股間側で連続しておらず、離間されている。この離間距離は150〜250mm程度とすることができる。図示しないが、腹側外装シート12Fと背側外装シート12Bとが股間部で連続した形態、つまり腹側から背側までを一体的な外装シートにより連続的に覆う形態を採用することもできる。
【0037】
図7及び図8からも判るように、胴回り部100の上部開口は、着用者の胴を通すウエスト開口部WOとなり、内装体200の幅方向両側において胴回り部100の下縁および内装体200の側縁によりそれぞれ囲まれる部分が脚を通す脚開口部LOとなる。各溶着部12Aを剥がして展開した状態では、図1に示すように砂時計形状をなす。内装体200は、背側から股間部を通り腹側までを覆うように延在するものであり、排泄物を受け止めて液分を吸収し保持する部分であり、胴回り部100は内装体200を着用者に対して支持する部分である。
【0038】
(外装シート)
腹側外装シート12F及び背側外装シート12Bは、図4及び図5にも示すようにシート状資材12,12を2枚貼り合せてなるものであり、内側に位置する内側シート状資材12はウエスト開口部WOの縁までしか延在していないが、外側に位置する外側シート状資材12は内側シート状資材12のウエスト側の縁を回り込んでその内側に折り返されており、この折り返し部分12rは内装体200のウエスト側端部上までを被覆するように延在され、対向面にホットメルト接着剤等により固定されている。シート状資材12としては溶着により接合できるものであれば特に限定されないが、不織布であるのが好ましい。不織布は、その原料繊維が何であるかは特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。不織布を用いる場合、その坪量は10〜30g/m2程度とするのが好ましい。
【0039】
そして、腹側外装シート12F及び背側外装シート12Bには、胴回りに対するフィット性を高めるために、両シート状資材12,12間に糸ゴム等の細長状弾性伸縮部材15〜19が所定の伸張率で設けられている。細長状弾性伸縮部材15〜19としては、合成ゴムを用いても、天然ゴムを用いても良い。各外装シート12F,12Bの両シート状資材12,12の貼り合せや、その間に挟まれる細長状弾性伸縮部材15〜19の固定にはホットメルト接着またはヒートシールや超音波接着を用いることができる。外装シート12F,12B全面を強固に固定するとシートの風合いを損ねるため好ましくない。これらを組合せ、細長状弾性伸縮部材15〜19の接着は強固にし、それ以外の部分は接着しないか弱く接着するのが好ましい。
【0040】
より詳細には、背側外装シート12Bは、溶着部12A群によるサイドシール部と同じ上下方向範囲を占める背側本体部13と、この背側本体部13の下側に延出する背側延出部14とを有している。背側延出部14は、内装体200と重なる幅方向中央部14Mと、その両側に延出した臀部カバー部14Cとを有している。
【0041】
背側延出部14の形状は適宜定めることができるが、図示例では、背側延出部14の上端部は、背側本体部13と同幅で背側本体部13の下側に延出されており、その下側は股間側に近づくにつれて幅が狭められている。背側本体部13と同幅の部分は省略することもできる。このように構成されていると、臀部カバー部14Cの幅方向外側の縁14eが、股間側に近づくにつれて内装体200側に近づくような直線状または曲線状をなすようになり、臀部を覆い易い形状となる。
【0042】
背側延出部14の寸法は適宜定めることができるが、図6に示すように、臀部カバー部14Cの幅方向長さ14x(臀部カバー部14Cの幅方向外側の縁14eと内装体200の側縁との幅方向の最大離間距離)が80〜160mmであり、臀部カバー部14Cの上下方向の長さ14y(延出長さ)が30〜80mmであると、より好ましい。また、背側延出部14の幅方向に最も広い部位と上下方向に最も広い部位により定まる四角形の面積をSとすると、背側延出部14の面積はSに対して20〜80%、特に40〜60%程度であると、臀部の外観および装着感に優れるため、好ましい。
【0043】
背側本体部13は、上下方向において概念的に上端部(ウエスト部)Wと、これよりも下側の下側部分Uとに分けることができ、その範囲は製品のサイズによって異なるが、一般に、上端部Wの上下方向長さは15〜80mm、下側部分Uの上下方向長さは35〜220mmとすることができる。
【0044】
背側本体部13の上端部(ウエスト部)Wにおける内側シート状資材12の内側面と外側シート状資材の折り返し部分12rの外側面との間には、幅方向全体にわたり連続するように、複数の背側ウエスト部弾性伸縮部材17が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定されている。また、背側ウエスト部弾性伸縮部材17のうち、背側本体部13の下側部分Uに隣接する領域に配設される1本または複数本については、内装体200と重なっていてもよいし、内装体200と重なる幅方向中央部を除いてその幅方向両側にそれぞれ設けてもよい。この背側ウエスト弾性伸縮部材17としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm2、特に0.1〜1.0mm2程度)の糸ゴムを、4〜12mmの間隔で3〜22本程度、それぞれ伸張率150〜400%、特に220〜320%程度で固定するのが好ましい。また、背側ウエスト部弾性伸縮部材17は、その全てが同じ太さと伸張率にする必要はなく、例えば背側ウエスト部の上部と下部で弾性伸縮部材の太さと伸張率が異なるようにしてもよい。
【0045】
また、背側本体部13の下側部分Uにおける内側シート状資材12の外側面と外側シート状資材12の内側面との間には、内装体200と重なる幅方向中央部を除いて、その上側および幅方向両側の各部位に、幅方向全体にわたり連続するように、複数の第1の細長状弾性伸縮部材15が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定されている。
【0046】
第1の細長状弾性伸縮部材15としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm2、特に0.1〜1.0mm2程度)の糸ゴムを、1〜15mm、特に3〜8mmの間隔で5〜30本程度、それぞれ伸張率200〜350%、特に240〜300%程度で固定するのが好ましい。
【0047】
また、背側延出部14における内側シート状資材12の外側面と外側シート状資材12の内側面との間には、内装体200と重なる幅方向中央部を除いて、その幅方向両側の各部位に、幅方向全体にわたり(少なくとも臀部カバー部14C全体にわたり)連続するように、複数の第2の細長状弾性伸縮部材16が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定されている。
【0048】
第2の細長状弾性伸縮部材16としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm2、特に0.1〜1.0mm2程度)の糸ゴムを、5〜40mm、特に5〜20mmの間隔で2〜10本程度、それぞれ伸張率150〜300%、特に180〜260%で固定するのが好ましい。
【0049】
一方、腹側外装シート12Fは背側外装シート12Bの背側本体部13と基本的に同様の腹側本体部(溶着部12A群によるサイドシール部と同じ上下方向範囲を占める部分)のみからなるものであり、胴回り方向に沿って延在する矩形状をなし、背側外装シート12Bのような背側延出部14を有していないものである。
【0050】
すなわち、腹側外装シート(腹側本体部)12Fの上端部(ウエスト部)Wおよび下側部分Uのうち、上端部Wにおける内側シート状資材12の内側面と外側シート状資材12の折り返し部分12rの外側面との間には、幅方向全体にわたり連続するように、複数の腹側ウエスト部弾性伸縮部材18が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定されている。この腹側ウエスト部弾性伸縮部材18は、背側ウエスト部弾性伸縮部材17に対して、本数、太さ、伸張率、間隔、及び上下方向配置をできるだけ近づけるのが好ましいが、異ならしめることもでき、異ならしめる場合、本数の差は10本以下、好ましくは5本以下、太さの差は1880dtex以下、好ましくは470dtex以下、伸張率の差は100%以下、好ましくは40%以下、間隔の差は10mm以下、好ましくは5mm以下である。
【0051】
また、腹側外装シート12F(腹側本体部)の下側部分Uにおける内側シート状資材12の外側面と外側シート状資材12の内側面との間には、内装体200と重なる幅方向中央部を除いて、その上側および幅方向両側の各部位に、幅方向全体にわたり連続するように、複数の第3の細長状弾性伸縮部材19が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定されている。第3の細長状弾性伸縮部材19の上下方向配設範囲は、下側部分の一部としても良いが、実質的に全体(全体に伸縮力が作用する範囲)とするのが好ましい。
【0052】
第3の細長状弾性伸縮部材19としては、第1の細長状弾性伸縮部材15と、本数、太さ、伸張率、間隔、及び上下方向配置をできるだけ近づけるのが好ましいが、異ならしめることもでき、異ならしめる場合、本数の差は10本以下、好ましくは5本以下、太さの差は1880dtex以下、好ましくは470dtex以下、伸張率の差は100%以下、好ましくは40%以下、間隔の差は10mm以下、好ましくは5mm以下である。
【0053】
図示形態の腹側外装シート12Fは、溶着部12Aと同じ上下方向範囲を占める部分のみからなるものとしたが、背側と同様に、溶着部12Aと同じ上下方向範囲を占める腹側本体部と、この腹側本体部の下側に延出する腹側延出部とからなる構成とすることもできる。これにより、腹側外装シート12Fの脚周り形状を鼠蹊部に沿ってフィットする形状とすることができる。この場合、腹側延出部の面積は、背側延出部の面積の10〜80%であるのが好ましく、20〜50%であるとより好ましい。腹側延出部が過度に大きいと、かえってフィット性を損なうため好ましくない。
【0054】
他方、図示のように、第1、第2及び第3の細長状弾性伸縮部材15、16及び19が、内装体200と重なる幅方向中央部を除いてその幅方向両側にそれぞれ設けられていると、内装体200と外装シート12F,12Bが剥れにくいため好ましいが、この形態には、幅方向両側にのみ弾性伸縮部材が存在する形態の他、内装体200を横切ってその幅方向一方側から他方側まで弾性伸縮部材が存在しているが、内装体200と重なる幅方向中央部では弾性伸縮部材が切断され、伸縮力が作用しない(実質的には、弾性伸縮部材を設けないことに等しい)ように構成されている形態も含まれる。また、背側本体部13および背側延出部14の幅方向全体にわたり伸縮力が作用するように、第1、第2及び第3の細長状弾性伸縮部材15、16及び19の一部または全部を、内装体200を横切ってその幅方向一方側から他方側まで設けることもできる。
【0055】
(内装体)
内装体200は任意の形状を採ることができるが、図示の形態では長方形である。内装体200は、図3に示されるように、身体側となる表面シート30と、液不透過性シート11と、これらの間に介在された吸収要素50とを備えている。液不透過性シート11の裏面側には、内装体200の裏面全体を覆うように、あるいは腹側外装シート12Fと背側外装シート12Bとの間に露出する部分全体を覆うように、股間部外装シート12Mを固定することもできる。また、表面シート30と吸収要素50との間に、表面シート30を透過した液を速やかに吸収要素50へ移行させるセカンドシート44(図11参照)を設けることもできる。さらに、内装体200の両脇に排泄物が漏れるのを防止するために、内装体200の両側に、身体側に起立するバリヤーカフス60,61を設けることができる。なお、図示しないが、内装体200の各構成部材は、ホットメルト接着剤などのベタ、ビードまたはスパイラル塗布などにより、適宜相互に固定することができる。また、内装体200は、メカニカルファスナーや粘着材を用い、外装シート12F,12Bに対して着脱自在に取り付けることもできる。
【0056】
(表面シート)
表面シート30は、液を透過する性質を有するものであり、例えば、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシートなどを例示することができる。また、このうち不織布は、その原料繊維が何であるかは、特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、SMS法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。特に、表面側からの温度変化を感知し易くするため、スパンボンド法やSMS法により加工された不織布が薄さと強度のバランスに優れる点で好適であり、エアスルー法により加工された不織布は低坪量でも吸収が速やかでかつさらっと感に優れるため好適である。
【0057】
また、表面シート30は、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートを貼り合せて得た積層シートからなるものであってもよい。同様に、表面シート30は、平面方向に関して、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートを貼り合わせてなるものであってもよい。
【0058】
表面シート30を不織布から構成する場合、その厚みが0.1〜3mm程度、特に0.5mm以下、且つ目付けが10〜40g/m2程度、特に25g/m2以下であるように構成すると、裏面側から肌への伝熱性に優れるため好ましい。
【0059】
バリヤーカフス60,61を設ける場合、表面シート30の両側部は、液不透過性シート11とバリヤーカフス60,61との間を通して、吸収要素50の裏側まで回りこませ、液の浸透を防止するために、液不透過性シート11及びバリヤーカフス60,61に対してホットメルト接着剤等により接着するのが好ましい。これにより、内装体200の両側部の剛性が向上するという効果も得られる。
【0060】
(セカンドシート)
前述のとおり、表面シート30を透過した液を速やかに吸収体へ移行させるために、表面シート30より液の透過速度が速い、セカンドシート44(図11参照)を設けることができる。このセカンドシート44は、液を速やかに吸収体へ移行させて吸収体による吸収性能を高めるばかりでなく、吸収した液の吸収体からの「逆戻り」現象を防止し、表面シート30上を常に乾燥した状態とすることができる。セカンドシート44は省略することもできる。
【0061】
セカンドシート44としては、表面シート30と同様の素材や、スパンレース、スパンボンド、SMS、パルプ不織布、パルプとレーヨンとの混合シート、ポイントボンド又はクレープ紙を例示できる。特にエアスルー不織布が嵩高であるため好ましい。エアスルー不織布には芯鞘構造の複合繊維を用いるのが好ましく、この場合芯に用いる樹脂はポリプロピレン(PP)でも良いが剛性の高いポリエステル(PET)が好ましい。目付けは20〜80g/m2が好ましく、25〜60g/m2がより好ましい。不織布の原料繊維の太さは2.2〜10dtexであるのが好ましい。不織布を嵩高にするために、原料繊維の全部又は一部の混合繊維として、芯が中央にない偏芯の繊維や中空の繊維、偏芯且つ中空の繊維を用いるのも好ましい。
【0062】
セカンドシート44は、吸収体56の幅より短く中央に配置する他、全幅にわたって設けてもよい。セカンドシート44の長手方向長さは、吸収体56の長さと同一でもよいし、液を受け入れる領域を中心にした短い長さ範囲内であってもよい。
【0063】
(液不透過性シート)
液不透過性シート11の素材は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂や、ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布、防水フィルムを介在させて実質的に不透液性を確保した不織布(この場合は、防水フィルムと不織布とで液不透過性シートが構成される。)などを例示することができる。もちろん、このほかにも、近年、ムレ防止の観点から好まれて使用されている不透液性かつ透湿性を有する素材も例示することができる。この不透液性かつ透湿性を有する素材のシートとしては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性シートを例示することができる。さらに、マイクロデニール繊維を用いた不織布、熱や圧力をかけることで繊維の空隙を小さくすることによる防漏性強化、高吸水性樹脂または疎水性樹脂や撥水剤の塗工といった方法により、防水フィルムを用いずに液不透過性としたシートも、液不透過性シート11として用いることができる。
【0064】
液不透過性シート11は、防漏性を高めるために、吸収要素50の両側を回りこませて吸収要素50の表面シート30側面の両側部まで延在させるのが好ましい。これにより、内装体200の両側部の剛性が向上するという効果も得られる。この延在部の幅は、左右それぞれ5〜20mm程度が適当である。
【0065】
また、液不透過性シート11の内面または外面には、印刷や着色によるデザインを施しても良い。さらに液不透過性シート11の外側に、股間部外装シート12Mとは別部材の、印刷または着色を施したデザインシートを貼り付けても良い。また、液不透過性シート11の内側に、液分の吸収により色が変化する排泄インジケータ80を設けることができる。
【0066】
(バリヤーカフス)
バリヤーカフス60,61は、内装体200の両側部に沿って前後方向全体にわたり延在する帯状部材であり、表面シート30上を伝わって横方向に移動する尿や軟便を遮断し、横漏れを防止するために設けられているものである。
【0067】
本実施の形態では、図3及び図4にも示すように、内装体200の左右各側において二重にバリヤーカフス60,61が設けられている。おむつを展開した状態では、図示のように、内側バリヤーカフス61は内装体200の側部から幅方向中央側に斜めに起立するものであり、外側バリヤーカフス60は、内側バリヤーカフス61の幅方向外側において内装体200の側部から起立するように設けられ、付け根側の部分は幅方向中央側に向かって斜めに起立し、中間部より先端側の部分は幅方向外側に向かって斜めに起立するものである。
【0068】
より詳細には、内側バリヤーカフス61は、内装体200の前後方向長さに等しい長さを有する帯状のバリヤーシート62を幅方向に折り返して二つに折り重ねるとともに、折り返し部分及びその近傍のシート間に、細長状弾性伸縮部材63を長手方向に沿って伸張状態で、幅方向に間隔をあけて複数本固定してなるものである。細長状弾性伸縮部材63は、バリヤーシート62に対し、前後端部では固定されておらず、中間部においてバリヤーカフスが前後に伸縮するように固定されている。バリヤーシート62としてはスパンボンド不織布(SS、SSS等)やSMS不織布(SMS、SSMMS等)、メルトブロー不織布等の柔軟で均一性・隠蔽性に優れた不織布に、必要に応じてシリコンなどにより撥水処理を施したものを好適に用いることができ、繊維目付けは10〜30g/m2程度とするのが好ましい。細長状弾性伸縮部材63としては糸ゴム等を用いることができる。スパンデックス糸ゴムを用いる場合は、太さは420〜1120dtexが好ましく、620〜940dtexがより好ましい。固定時の伸長率は、150〜350%が好ましく、200〜300%がより好ましい。また、図示しないが、二つに折り重ねたバリヤーシートの間に防水フィルムを介在させることもできる。
【0069】
細長状弾性伸縮部材63は、内側バリヤーカフス61の先端部に1〜2本配置するのが好ましく、先端部と基端部との間の中間部にも1〜2本配置すると更に好ましい。中間部に細長状弾性伸縮部材63があると、これを支点として中間部から先端部に亘る範囲で肌に対して面で当たりやすくなる。中間部の細長状弾性伸縮部材63の配置位置は内側バリヤーカフス61の高さ(突出部の幅方向長さ)の30〜70%範囲が好ましい。乳幼児用紙おむつでは、内側バリヤーカフス61の高さは15〜35mm程度が好ましいため、細長状弾性伸縮部材63の配置範囲は先端から基端側に5〜25mmの位置が好ましく、12〜18mmの位置がより好ましい。内側バリヤーカフス61の先端部及び/または中間部にそれぞれ細長状弾性伸縮部材63を平行に設ける場合は、その配置間隔61dは2〜10mmが好ましく、2〜6mmがより好ましい。
【0070】
そして、内側バリヤーカフス61のうち幅方向において折り返し部分と反対側の端部は内装体200の側縁部の裏面に固定された取付部分(内側取付部分)65とされ、この取付部分65以外の部分は取付部分65から突出する突出部分66(折り返し部分側の部分であり、内側突出部分に相当する)とされ、この突出部分66のうち前後方向両端部が表面シート30表面にホットメルト接着剤やヒートシールによる前後固定部67により固定され、前後方向中間部が非固定の自由部分(内側自由部分)とされ、この自由部分に前後方向に沿う細長状弾性部材63が伸張状態で固定されている。
【0071】
外側バリヤーカフス60も、内側バリヤーカフス61と基本的に同様の構造を有するものであるが、その取付部分(外側取付部分)68が、内装体200の裏面側における内側バリヤーカフス61の取付部分65よりも幅方向中央側において内側バリヤーカフス61の外面に固定される点、突出部分(外側突出部分)69のうち前後方向両端部が、取付部分68から内装体200の側部を通り内側バリヤーカフス61における内側突出部分66の前後方向両端部の表面まで延在し且つ内側突出部分66の前後方向両端部の表面に固定された付け根側部分と、この付け根側部分の先端から幅方向外側に折り返され且つ付け根側部分に固定された先端側部分とからなる点、細長状弾性伸縮部材63の配置及び本数等で異なるものである。
【0072】
ただし、内側バリヤーカフス61についても、内側突出部分の先端部は幅方向外側に折り返される構造、具体的には内側バリヤーカフス61の高さ(突出部の幅方向長さ)の1/2以下、好ましくは1/3以下であれば、外側バリヤーカフス61と同様に先端側部分が幅方向外側に折り返され且つ付け根部側部分に固定される構造を採っても良い。
【0073】
外側バリヤーカフス60の自由部分(外側自由部分)に設けられる細長状弾性伸縮部材63の本数は2〜6本が好ましく、3〜5本がより好ましい。配置間隔60dは3〜10mmが適当である。このように構成すると、細長状弾性伸縮部材63を配置した範囲で肌に対して面で当たりやすくなる。先端側だけでなく付け根側にも細長状弾性伸縮部材63を配置しても良い。外側バリヤーカフス60に配置する細長状弾性伸縮部材63の太さや伸長率は、内側バリヤーカフス61に準ずるが、太さは内側バリヤーカフス61のものと同じ、またはより太く、伸長率は内側バリヤーカフス61のものと同じ、またはより低いほうが好ましい。
【0074】
また、突出部分66,69の前後固定部67の前後方向長さL6は、内側バリヤーカフス61の方が外側バリヤーカフス60と同じかまたは短く形成するのが好ましく、バリヤーカフス60,61における細長状弾性伸縮部材63の前後方向固定長さは、内側バリヤーカフス61の方が外側バリヤーカフス60と同じかまたは長く形成するのが好ましい。取付部分65と突出部分66との境界は、外側バリヤーカフス60と内側バリヤーカフス61とで同じ位置であっても良いが、外側バリヤーカフス60の境界が内側バリヤーカフス61の境界よりも幅方向中央側に離間しているのが好ましく、その離間距離は10mm以内が好ましい。
【0075】
外側バリヤーカフス60及び内側バリヤーカフス61の取付部分68,65における突出部分66,69側の縁部には、ホットメルト接着剤やヒートシールによる線状の付け根固定部を形成するのが好ましい。また、他の固定部はホットメルト接着剤等を用いて適宜のパターンで固定することができる。この線状の付け根固定部は、内装体200の表面側の側部近傍(具体的には側縁から幅方向に0〜5mm、好ましくは0〜3mmの位置)または裏面側に位置するのが好ましい。この場合、バリヤーカフスを表面側に折り返して固定しているのは実質的に前後方向両端部のみとなるため、前後固定部67による幅方向中央側への規制が十分に作用しない股間部においては、外側バリヤーカフス60及び内側バリヤーカフス61いずれもが幅方向外側に向かって起立し、内側バリヤーカフス61の形成するポケットが広くなる。表面側で側縁から幅方向に5mmを越えて線状の付け根固定部が位置すると、股間部においてもバリヤーカフスが幅方向中央側に向かって起立し、内側バリヤーカフス61の形成するポケットが狭くなるため、好ましくない。裏面側に位置する場合は、内装体200の側縁から0〜20mmの位置が適当だが、20mmを越えて位置してもよい。
【0076】
外側及び内側バリヤーカフス60,61の取付部分68,65の固定対象は、内装体200における表面シート30、液不透過性シート11、吸収要素50等適宜の部材とすることができ、またいずれか一方のバリヤーカフスを介して他方のバリヤーカフスを内装体200に対して固定することもできる。
【0077】
かくして構成された外側及び内側バリヤーカフス60,61では、細長状弾性伸縮部材63の収縮力が前後方向両端部を近づけるように作用するが、突出部分66,69のうち前後方向両端部が起立しないように固定されるのに対して、それらの間は非固定の自由部分とされているため、自由部分のみが図3に示すように身体側に当接するように起立する。特に、取付部分68,65が内装体200の裏面側に位置していると、股間部及びその近傍において外側及び内側バリヤーカフス60,61が幅方向外側に開くように起立するため、外側及び内側バリヤーカフス60,61が脚周りに面で当接するようになり、フィット性が向上するようになる。一方、股間部の前後両側(腹部及び背部)においては、前後固定部67により外側及び内側バリヤーカフス60,61が幅方向外側へ開かないように規制されるため、内側バリヤーカフス61は高く起立し、外側バリヤーカフス60の下半分も同様に起立するため、腹部及び背部における内装体200両脇からのもれが確実に防止できる。また、内側バリヤーカフス61の突出部分66における前後固定部67は折り返さずに、外側バリヤーカフス60の突出部部分68における前後固定部67は外向きに折り返されているため、外側及び内側バリヤーカフス60,61における内側及び外側自由部分間の離間状態が維持され、外側及び内側バリヤーカフス60,61が広い間隔で確実に起立し、それぞれが脚周りにフィットするようになるため、漏れ防止性に優れたものとなる。
【0078】
バリヤーカフス60,61の寸法は適宜定めることができるが、乳幼児用紙おむつの場合は、例えば図7に示すように、内側バリヤーカフス61の起立高さ(展開状態における突出部分66の幅方向長さ)W5は10〜50mm、特に15〜35mmであるのが好ましく、外側バリヤーカフス60の起立高さ(展開状態における突出部分69の幅方向長さ)W6は15〜60mm、特に20〜40mmであるのが好ましい。また、内側バリヤーカフス61を表面シート30表面に倒した状態における先端間の離間距離W4は60〜170mm、特に70〜120mmであるのが好ましい。また、外側バリヤーカフス60を表面シート30表面と平行になるように、平坦に折り畳んだ状態において最も内側に位置する折り目間の離間距離W3は60〜190mm、特に70〜140mmであるのが好ましい。
なお、図示形態と異なり、外側及び内側バリヤーカフス60,61のいずれか一方のみを設けることもできる。
【0079】
(吸収要素)
本例の吸収要素50は、吸収体56と、この吸収体56の全体を包む包装シート58とを有するものとなっているが、包装シート58は省略することもできる。
【0080】
(吸収体)
吸収体56は、繊維の集合体により形成される。この繊維集合体としては、綿状パルプや合成繊維等の短繊維を積繊したものの他、セルロースアセテート等の合成繊維のトウ(繊維束)を必要に応じて開繊して得られるフィラメント集合体も使用できる。繊維目付けとしては、綿状パルプや短繊維を積繊する場合は、例えば100〜300g/m2程度とすることができ、フィラメント集合体の場合は、例えば30〜120g/m2程度とすることができる。合成繊維の場合の繊度は、例えば、1〜16dtex、好ましくは1〜10dtex、さらに好ましくは1〜5dtexである。フィラメント集合体の場合、フィラメントは非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、1インチ当たり5〜75個、好ましくは10〜50個、さらに好ましくは15〜50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いる場合が多い。吸収体56中には高吸収性ポリマー粒子を分散保持させるのが好ましい。
【0081】
吸収体56は長方形形状でも良いが、図6にも示すように、前端部56F、後端部56B及びこれらの間に位置し、前端部56F及び後端部56Bと比べて幅が狭い括れ部56Nとを有する砂時計形状を成していると、吸収体56自体とバリヤーカフス60,61の、脚回りへのフィット性が向上するため好ましい。具体的な寸法としては、吸収体前端部56Fの前後方向長さをL1とし、吸収体56と腹側外装シート12Fとの重なり部分における前後方向長さをL2とし、吸収体後端部56Bの前後方向長さをL3とし、吸収体56と背側外装シート12Bとの重なり部分における前後方向長さをL4とし、括れ部56Nの最小幅をW1とし、吸収体前端部56Fの幅及び吸収体後端部56Bの幅をW2としたとき、下記の式(1)〜(4)を満足するように構成されていると、好ましい。
70mm ≦ W1 < W2 ≦ 190mm …(1)
0.5 ≦ W1/W2 ≦ 0.85 …(2)
0mm ≦ L1−L2 ≦ 70mm …(3)
0mm ≦ L3−L4 ≦ 50mm …(4)
【0082】
W1及びW2が狭過ぎると、バリヤーカフス60,61の起立が不安定になり、また吸収量が不十分となり、広過ぎるとフィット性の低下により装着感が悪化する。
【0083】
また、上記数値範囲にあると、股間部においてはバリヤーカフス60,61の取付部分65近傍に吸収体56が存在しないため、バリヤーカフス60,61の動きの自由度が増し、バリヤーカフス60,61が幅方向外側に開き易く、肌に対して面で当たりやすくなり、脚の動きに対するフィット面の追従性も向上する。前後両側においては内装体200側部の吸収体56が十分な範囲に存在するため、これを基点(支点)としてバリヤーカフス60,61の起立が安定する。前後両側から股間部に至る部分は、バリヤーカフス60,61が内装体200の幅方向両側縁を基準として幅方向内側に起立した姿勢から幅方向外側に開いていく変位部であり、このバリヤーカフス60,61の姿勢変化が内装体200側部まで存在する吸収体56により支えられ、バリヤーカフス60,61の全体的な起立形状が安定する。上記数値範囲を外れ、括れ部が大きくなりすぎると、股間部においてはバリヤーカフス60,61の自由度が高くなりすぎ、かえって脚周りに隙間ができ易くなるおそれがあり、また股間部の前後両側においても基点(支点)が無いためにバリヤーカフス60,61の起立が不安定になるおそれがある。逆に括れ部が小さくなりすぎると、バリヤーカフス60,61の自由度が低下するので好ましくない。
【0084】
さらに、括れ部56N全体の前後方向長さL7は好ましくは80mm以上、特に好ましくは120〜260mmとされる。括れ部56Nの前後方向長さL7が短過ぎるとバリヤーカフス60,61の自由度が低下するとともに、吸収体56の脚周りに対するフィット性が低下して脚の動きを妨げるようになり、長すぎるとバリヤーカフス60,61の起立が安定しなくなる。
【0085】
(高吸収性ポリマー粒子)
高吸収性ポリマー粒子とは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸収性ポリマー粒子の粒径は、この種の吸収性物品に使用されるものをそのまま使用でき、1000μm以下、特に150〜400μmのものが望ましい。高吸収性ポリマー粒子の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が40g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
【0086】
高吸収性ポリマーとしては、抗菌物質と一体化したものを用いることができる。特に、ゼオライト中のイオン交換可能なイオンの一部または全部を銀イオンで置換してなるゼオライト粒子(以下、これを抗菌消臭性ゼオライトという)を高吸収性ポリマー中に含有させるか、あるいは抗菌消臭性ゼオライト粒子を高吸収性ポリマー粒子の表面に静電気により付着させてなる、抗菌消臭性高吸収性ポリマー粒子が好適である。
【0087】
高吸収性ポリマー粒子としては、吸水速度が40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が40秒を超えると、吸収体56内に供給された液が吸収体56外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
【0088】
また、高吸収性ポリマー粒子としては、ゲル強度が1000Pa以上のものが好適に用いられる。これにより、嵩高な吸収体56とした場合であっても、液吸収後のべとつき感を効果的に抑制できる。
【0089】
高吸収性ポリマー粒子の目付け量は、50〜800g/m2とすることができ、特に100〜400g/m2が好ましい。ポリマーの目付け量が50g/m2未満では、吸収量を確保し難くなる。800g/m2を超えると、効果が飽和する。
【0090】
必要であれば、高吸収性ポリマー粒子は、吸収体56の平面方向で散布密度あるいは散布量を調整できる。たとえば、液の排泄部位を他の部位より散布量を多くすることができる。男女差を考慮する場合、男用は前側の散布密度(量)を高め、女用は中央部の散布密度(量)を高めることができる。また、吸収体56の平面方向において局所的(例えばスポット状)にポリマーが存在しない部分を設けることもできる。
【0091】
特に、後述する温度変化物質40により温度変化した尿を肌により近い位置で保持するために、高吸収性ポリマーとしては吸水速度が50秒以下のものが好適である。吸水速度が遅いと、温度変化した尿の多くが吸収されずに裏面側に通過してしまう。
【0092】
(包装シート)
包装シート58を用いる場合、その素材としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないような目の細かいシートであるのが望ましく、包装シート58の内側に温度変化物質40を設ける場合には表面側からの温度変化を感知し易くするため、薄く低目付けのものが適当である。厚みは0.05〜3mm程度、特に0.2mm以下、且つ目付けが5〜25g/m2程度、特に15g/m2以下であると、裏面側から肌への伝熱性に優れるため好ましい。不織布を用いる場合は、スパンボンド法やSMS法により加工された不織布、特にSMS法により加工された不織布が、薄さと強度のバランスに優れる点で好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレンなどを使用できる。
【0093】
吸収体56を一枚の包装シートで包む場合、包装シート58の内側に温度変化物質40を設ける場合には着用者に効果的に温度変化を伝達させるため、身体側の包装シート58の合わせ目の重なり幅58Wを温度変化物質の配置領域の幅40Wより狭く、かつ寸法が40mm以下、特に20mm以下にするのが好ましい。また、包装シート58の合わせ目は、排尿口に当接する幅方向の中央を含まないように、側部寄りに形成するのも好ましい形態である。特に、身体側の包装シート58の合わせ目のシートの重なり部が、後述する温度変化物質の融着部分とは重ならないようになっているのも好ましい。
【0094】
(股間部外装シート)
内装体200の裏面側には、製品外面に露出する股間部外装シート12Mが設けられている。この股間部外装シート12Mの素材としては、腹側外装シート12F及び背側外装シート12Bと同様のものを用いることができるが、より高強度の素材や消臭剤を含有するもの等、腹側外装シート12F及び背側外装シート12Bとは異なる素材を用いることもできる。具体的には、PP、PP/PE、PP/PET等の繊維からなる、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、ポイントボンド不織布、エアスルー不織布、エアーポイント不織布、スパンレース不織布、SMS不織布等の各種不織布、あるいはこれに消臭剤等を添加したもの等を用いることができる。
【0095】
股間部外装シート12Mには座位時に高い体圧がかかる。よって、摩擦堅牢度の高い(毛羽立たない)特性を有する素材が好ましい。
股間部外装シート12Mは、印刷や着色を行い、デザイン要素を備えたシートとしてもよい。前述のデザインシートと併用する場合は、それぞれのデザインが重ならないように配置することが好ましい。
股間部外装シート12Mとして伸縮不織布を用い、内装体200の長手方向に伸長して貼り付けると、股間部のフィット性が向上するため好ましい。
【0096】
股間部外装シート12Mが幅方向側部から身体側面まで回り込み、バリヤーシート62の外面にホットメルト接着剤等により接着固定されていると、内装体200の両側部の剛性が向上する。このような形態においては、股間部外装シート12Mに剛度(コシ度)の高いシートを用いることが好ましい。具体的には、クラーク法(JISL1096 C法)によって測定される剛軟度の、シートのMD方向とCD方向との和が100mm以上、好ましくは150mm以上のシートを用いるとよい。
【0097】
図示例では、腹側及び背側外装シート12F,12Bと内装体200とが重なる部分において、股間部外装シート12Mは内装体200と腹側及び背側外装シート12F,12Bとの間に挟まれているが、腹側及び背側外装シート12F,12Bの外側に貼り付けることも可能である。股間部外装シート12Mは、ホットメルト接着剤等により内装体200の裏面、並びに腹側及び背側外装シート12F,12Bの内面若しくは外面に貼り付けられる。
【0098】
(特徴的部分)
特徴的には、包装シート58における吸収体56の表面側に位置する部分(表面側部材)と、吸収体56(裏面側部材)の表面との間における、表面に沿う方向の所定範囲に、温度変化物質40が挟まれるとともに、その一部41のみが枠状に表面側部材である包装シート58及び裏面側部材である吸収体56に融着し、残部42は非融着粒子として枠状融着部分により囲まれる部分に移動可能な状態で封じ込められている。
【0099】
枠状融着部分41の内側は、表裏方向は面側部材である包装シート58及び裏面側部材である吸収体56により囲まれ、周囲は枠状融着部分41により囲まれているため、その内側に配置された非融着の粒子状温度変化物質42は、枠状融着部分41の範囲内でしか移動できない。よって、温度変化物質40の移動を抑制され、所期の温度変化が発生するようになる。しかも、温度変化物質40の融着部分41は枠状であるため、全体を面状に融着するよりも格段に柔軟となり、温度変化物質の融着による硬質化も抑制することができる。
【0100】
枠状融着部分41は、一つのみでも良いが、ある程度小さな大きさで多数設けるのが好ましい。また、後者の場合、四角形や円形の枠状融着部分を多数設けることもできるが、図示のように格子状パターンの融着部分41を設けるのが好ましい。格子状パターンとしては、前後方向に沿う融着線と幅方向に沿う融着線とからなるパターンの他、図10に示すように、前後方向及び幅方向と交差する斜め方向に沿う融着線のみからなる斜め格子パターンとすることもできる。格子状パターンは、図10(a)に示すように、各融着線が連続線状をなしていても良いが、図10(b)に示すように、温度変化物質の融着部M及び非融着部Nが交互に列なる点線状の融着線からなり、各交差位置においていずれか一方の融着線が他方の融着線の非融着部Nを隙間を空けて通るパターンや、図10(c)に示すように、温度変化物質の融着部M及び非融着部Nが交互に列なる点線状の融着線からなり、各交差位置において両方の融着線の非融着部Nが位置するパターンであると、温度変化物質の融着部分41が不連続となることにより、融着部分41による硬質化がより一層軽減されるため、好ましい。
【0101】
具体的に、おむつにおいて温度変化物質40の融着部分を有する部分の剛性は、15〜50cN/50mm、特に20〜35cN/50mmであるのが好ましい。ちなみに、温度変化物質40の融着部分を有しない部分の剛性は、1〜25cN/50mm、特に5〜15cN/50mm程度であるのが好ましく、通常の場合、温度変化物質40の融着部分を有する部分と有しない部分との剛性差は5〜20cN/50mm程度であるのが好ましい。
【0102】
なお、剛性とは、曲げ剛性(剛度)のことを意味し、JIS K 7171(プラスチック‐曲げ剛性の試験方法)に準拠し、次の方法で測定する。測定にはテンシロン試験機(圧子先端部の曲率半径R1=5.0±0.1mm、支持プレート先端部の曲率半径R2=5.0±0.2mm)を用い、内装体20の製品前後方向の曲げ剛性を測定する。試験片は、内装体20から測定に影響する弾性伸縮部材を取り除き、これをおむつ長手方向80mm、おむつ幅方向50mmの長方形に切り取ることにより作製する。曲げ剛性値の単位中の50mmは試験片の短辺の長さであり、試験時の圧子でたわませた試験片の幅である。それぞれ断面円弧状の先端部を有し、両先端部の先端(上端)間の間隔を位置を揃えて配置された一対の支持プレート上に、上記の試験片を、その長手方向を各プレートに直交する方向に向けて、掛け渡すように載置し、その試験片に僅かに接するように圧子先端部を配置する。ロードセル5kg(レンジ196cN)、速度30mm/minの条件で圧子を降下させ、荷重‐たわみ曲線を得る。得られた曲げ応力の最大値を曲げ剛性値(cN/50mm)とする。なお、測定対象となる部位が上記サンプリング寸法より小さい場合は、小スケールの試験片で測定を行い、寸法比に基づいて比例計算にて換算する。
【0103】
枠状融着部分41の寸法は適宜定めることができるが、枠線の幅41wは1〜5mm程度であるのが好ましく、枠内側の面積は100〜1000mm2程度であるのが好ましい。格子状の融着パターンを有する場合、交差位置間の長さ(中心間隔)41dは10〜40mm程度、交差角度θ(枠内側の角度)は60〜120度であるのが好ましい。さらに、前述の点線状の融着線からなる格子状パターンを採用する場合、各融着線における融着部Mの長さをLとし、隙間をdとしたとき、0.1L≦d≦0.4Lの関係を満足するのが好ましい。なお、非融着部Nの位置は、各交差位置に限るものではなく、上記関係を満たしておれば各交差位置以外の位置に非融着部Nが位置していてもよい。
【0104】
他方、本発明で用いる温度変化物質40は、尿、汗等の水分に接触して溶解熱、水和熱、又は反応熱等により熱を吸収又は放出し、温度変化をもたらす(冷却又は加熱する)ものであり、加熱により融着されるものである。水分への溶解により熱を吸収する温度変化物質の例としては、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等の含水塩、硝酸アンモニウム、硝酸カリウム、塩化アンモニウム、塩化カリウム、硝酸ナトリウム等の無水塩、尿素、キシリトール、ソルビトール等の糖アルコール等を挙げることができる。水分への溶解により熱を放出する温度変化物質の例としては、塩化アルミニウム、硫化アルミニウム、硫化アルミニウムカリウム等を挙げることができる。本発明では、これらのうち、吸熱作用を発現するソルビトール、キシリトールなどの糖アルコール又は尿素などの有機化合物を使用することが好ましい。特にソルビトールやキシリトールは、溶解性に極めて優れ、化学的安定性が良く、人体に悪影響を及ぼさないため、好適に使用できる。水分への溶解により吸熱又は放熱する物質を用いる場合、水分への溶解度が低いと、十分な温度変化を発揮できないため、温度20℃の100mlの水への溶解度が30g以上、特に50g以上であるものが好ましい。また、20cal/g以上の温度変化を生じるものが好ましく、35cal/g以上の温度変化を生じるものがより好ましい。
【0105】
水分との反応により熱を吸収又は放出する物質の例としては、オルトエステル類、又はメントンを炭素量が1ないし8のアルコール或いは炭素量が2ないし8のポリオールと反応させて得られるメントンケタルのようなケタル類、及びそれらの構造的又は光学的異性体を挙げることができる。また、水分により膨潤することにより熱を吸収又は放出する温度変化物質の例としては、軽く架橋結合し部分的に中和されたポリアクリル酸を挙げることができる。
【0106】
また、温度変化物質40は加熱により融着されるものであるため、温度変化物質40とともに加熱される部材がある場合には、温度変化物質40の融点が温度変化物質40とともに加熱される部材よりも低い物質であるのが望ましい。すなわち、使い捨ておむつは通常ポリエチレンやポリプロピレン等の熱可塑性樹脂を含むため、温度変化物質40はこれらの樹脂と同じかそれよりも低い融点を有することが望ましい。一般的な熱可塑性樹脂の中で特に融点の低いポリエチレンは、通常100〜130℃程度の融点を有するため、温度変化物質の融点は130℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましい。また、製品保管時に温度変化物質40が融解しないよう、70℃以上の融点を有することが好ましい。このような温度変化物質40としては、融点が通常約95〜110℃程度(純度によって若干異なる)であるソルビトール及びキシリトールを挙げることができる。
【0107】
また、温度変化物質40の融着対象部材が不織布や吸収体56のように繊維集合体である場合、温度変化物質40の溶融時の粘度が高過ぎると、繊維間隙に浸透し難くなり付着力が低下するおそれがあり、粘度が低過ぎると融着部分が枠状に連続し難くなる。この観点から、温度変化物質40としては、溶融時の温度(例えば70〜130℃)における粘度が5〜80ポアズのものが好ましい。
【0108】
温度変化物質40を挟む表面側部材及び裏面側部材は、図1〜図9に示す例のように、包装シート58における吸収体56の表面側に位置する部分及び吸収体56とするほか、図11(a)に示すように、表面側部材は表面シート30とし、裏面側部材は一般的な吸収性物品において表面シート30の裏面側に隣接配置されている液透過性セカンドシート44とすることができる。また、図示しないが、表面側部材は吸収体とし、裏面側部材は包装シート58における吸収体56の裏面側に位置する部分としたり、表面側部材は包装シート58における吸収体56の裏面側に位置する部分とし、裏面側部材は液不透過性シート11としたり、二層構造吸収体のように、表面側吸収体とその裏面側に重なる裏面側吸収体とを有する場合に、表面側部材は表面側吸収体とし、裏面側部材は裏面側吸収体としたりすることもできる。
【0109】
これらの形態は、通常おむつに備えられている部材を利用するものであるが、表面側部材及び裏面側部材の少なくとも一方として専用の部材を備えることもできる。図11(b)及び(c)は、この例を示しており、表面側部材及び裏面側部材としてそれぞれ専用の第1及び第2の液透過性シート45,46を設けているものである。この場合、図11(b)に示すように、第1及び第2の液透過性シート45,46を表面シート30と包装シート58との間に配置するのが好ましいが、図11(c)に示すように、包装シート58における吸収体56の表面側に位置する部分と、吸収体56の表面との間に配置しても良い。また、図12(a)に示すように、表面側部材は、一枚の液透過性シート47を折り畳んで形成された層構造物における表面側層47aとし、裏面側部材は表面側層47aの裏面側に隣接配置された裏面側層47bとすることもできる。折り畳み回数は特に限定されず、図12(a)に示すように二つ折りとするほか、図12(b)に示すように三つ折り(断面がZ字状となる折り方)とすることもできる。後者の場合、シート47の中間層47bは、その上側の温度変化物質40に対しては裏面側部材となり、その下側の温度変化物質40に対しては表面側部材となる。液透過性シート45〜47としては、前述した表面シート30やセカンドシート44と同様の素材や、包装シート58と同様の素材を用いることができる。
【0110】
温度変化物質40を設ける範囲(おむつ表面方向に沿う範囲)は、水分と接触する部分であれば特に限定されないが、トイレトレーニング用おむつの場合、吸収体56の幅方向中央部のうち、少なくとも股間部から腹側部分にわたる部分に温度変化物質40が配置されているのが好ましい。図1〜図9に示す形態ではこの部分の周囲に温度変化物質40を配置していないが、図示しないが吸収体56の前後方向全体にわたり温度変化物質40を配置したり、吸収体56の幅方向全体にわたり温度変化物質40を配置したりすることも可能である。
【0111】
特にトイレトレーニング用おむつの場合、吸収体56が少なくとも腹側部分のウエスト側端縁から股間側に0.15〜0.80L(Lは製品長さ)の範囲にわたり設けられている場合、温度変化物質40は少なくとも腹側部分のウエスト側端縁から股間側に0.25〜0.45Lの範囲40Yにわたり設けられているのが好ましい。また、男の子用の場合、温度変化物質40の融着部分は前後方向において前側に位置することが好ましい。特に、本実施形態のようなパンツ型使い捨ておむつの場合、腹側外装シート12Fの左右両側部のサイドシール部(溶着部12A)の下端部を結ぶ線と内装体200が交差する部分を含むように配置されていると、排尿口に近く、かつ弾性伸縮部材の作用によって温度変化物質40の融着部分が常に体に押し当てられた状態となるため、どのような姿勢においても着用者に温度変化を感知させることができ、好ましい。女の子用の場合は、温度変化物質40の融着部分は前後方向中央部分を含むように配置されていると、排尿口に近いため、好ましい。従って、男女兼用のパンツ型使い捨ておむつとする場合は、腹側外装シート12Fの左右両側部のサイドシール部(溶着部12A)の下端部を結ぶ線と内装体200が交差する部分及び前後方向中央部分を含むように配置するとよい。このような寸法を採用することによって、男女の排尿位置に温度変化物質40の融着部分が位置するようになる。つまり、排尿時に尿が温度変化物質40の融着部分に確実に当たるようになる。
【0112】
表面側部材及び裏面側部材は、この温度変化物質40を設ける範囲以上であれば、その寸法は特に限定されないが、温度変化物質40を設ける範囲よりも大きい(周縁部全体が温度変化物質40を有する部分の周縁から食み出す)と、温度変化物質が表面側部材及び裏面側部材間から零れ落ち難くなるため、好ましい。
【0113】
温度変化物質40の使用量は適宜定めることができるが、温度変化物質40として糖アルコールを用いる場合、物品における総含有量は4〜20g程度、特にトイレトレーニング用おむつの場合は8〜12g程度であるのが好ましい。また、温度変化物質40の融着部分における温度変化物質40の目付け(単位面積当たりの含有量)は、200〜1200g/m2程度、特にトイレトレーニング用おむつの場合は400〜600g/m2程度であるのが好ましい。
【0114】
温度変化物質40を表面側部材及び裏面側部材に枠状に融着させる方法としては、図13(a)に示すように、表面側部材48及び裏面側部材49間に粒子状(粉体状含む)の温度変化物質42を挟んだ状態の加工対象部材300を、格子状等の枠状部分を有するエンボスパターンで且つ温度変化物質42が溶融する温度でヒートエンボス加工を施す、具体的には同図に示すように、いずれか一方又は両方のロール340の表面に所定パターンの凹凸を形成しておき、枠状融着部分のみを加圧加熱するという方法(第1の手法)を提案する。これにより、融着部分41が形成されるのは、エンボスロール340の凸部パターンに対応する加圧加熱領域のみであり、これ以外の領域である枠内側部分は加圧加熱されず、温度変化物質42の融着は起こらない。この第1の方法は、適宜パターンのヒートエンボス加工のみで枠状融着部分41を形成できるためるため好ましい。
【0115】
第2の方法としては、図13(b)に示すように、吸収性物品の技術分野で用いられているホットメルト接着剤の塗布に倣って、表面側部材48及び裏面側部材49のいずれか一方における対向面上に、温度変化物質の溶融液41をノズルやロール転写等を用いて枠状に塗布するとともに、その少なくとも枠41の内側に粒子状の温度変化物質42を配置した後、その上に他方の部材を重ね、溶融液41を接着剤としてその冷却固化により表面側部材48及び裏面側部材49を接着する方法が提案される。この第2の方法も、吸収性物品の製造ラインに組み込むのは容易であり、好ましい形態である。
【0116】
また、第3の方法として、図13(c)に示すように、上述の第1の方法と第2の方法とを組み合わせることも提案される。すなわち、表面側部材48及び裏面側部材49のいずれか一方における対向面上に、温度変化物質の溶融液41を第1の方向に間隔を空けた複数位置において、第1の方向と交差する第2の方向に沿って線状に塗布するとともに、その少なくとも塗布線41間に粒子状の温度変化物質42を配置した後、その上に他方の部材を重ね、溶融液41を接着剤として表面側部48材及び裏面側部材49を接着し、しかる後、温度変化物質42が溶融する温度で、第2の方向に間隔を空けて第1の方向に沿う線状のヒートエンボス加工を施す方法である。この第3の方法を、吸収性物品の製造ラインに組み込む場合、第1の方向をラインCD方向とし、第2の方向をMD方向とするのが好ましい。
【0117】
さらに、これら第1〜第3の方法とは発想が全く異なる第4の方法として、図13(d)に示すように、表面側部材48及び裏面側部材49の間に、相対的に融点が低い粒子状の低融点温度変化物質42bを枠状に配置するとともに、その枠の内側に相対的に融点が粒子状の高い高融点温度変化物質42aを配置した状態で、低融点温度変化物質42bが溶融し且つ高融点温度変化物質42aが溶融しないように加熱する方法も提案される。この第4の手法によると、パターン加熱やパターン塗布が不要となる(パターン加熱等を行っても良い)。
【0118】
第4の手法における加熱手段は特に限定されないが、例えば図14〜図17に示す手段を採用することができる。図14に示す手段は、高温の空気の通過により加熱を図るエアスルードライヤーを利用するものである。図14に示す手段では、表面側部材及び裏面側部材間に温度変化物質40を挟んだ状態の加工対象部材300を、ベルトコンベヤー301により搬送しながら、搬送面に対して直交する方向に通される熱風302により加熱した後、同じく搬送面に対して直交する方向に通される風303により冷却する、というものである。また、図15(a)及び(b)に示す手段は、表面側部材及び裏面側部材間に温度変化物質40を挟んだ状態の加工対象部材300を、高温空気が供給される加熱室310内に設置されたサクションロール311に巻き掛けて移送しつつ、サクションロール311外側から内側に通される熱風312により加熱した後、加熱室310外に設置されたクーリングロール313に巻き掛けて移送することにより冷却する、というものである。
【0119】
また、図16に示す加熱手段は、表面側部材及び裏面側部材間に温度変化物質40を挟んだ状態の加工対象部材300を、加熱ロール320に巻き掛けて移送することにより、加熱ロール320の熱を接触により温度変化物質に対して伝達し、片面側から加熱するというものである。
【0120】
さらに、図17に示す加熱手段は、表面側部材及び裏面側部材間に温度変化物質40を挟んだ状態の加工対象部材300を、少なくとも一方が加熱ロールからなる一対のロール330,331、340,341間に通すことにより、加熱ロールの熱を接触により温度変化物質に対して伝達し、加熱するというものである。この場合、同図(a)に示すように、両ロール330,331を表面が平滑なスムースロールとし、加工対象部材300に凹凸を形成しないようにすることができる。
【0121】
第4の手法における温度変化物質40の加熱溶融は、表面側部材及び裏面側部材を他の部材に取り付ける工程のみならず、その後の製造過程の適宜段階、例えば内装体200の組立完了状態(製品状態までの組立完了前)、又は製品状態までの組立完了後に、内装体200やおむつ全体に対して行うこともできる。この場合における加熱方法としては、例えば前述した図14〜図17に示す手段を応用することができる。
【0122】
上述の第1〜第4の手法により形成された融着部分は、温度変化物質40の量や加熱時間等の条件にもよるが、表面側部材及び裏面側部材に対して溶融した複数の温度変化物質が一体化した塊状又は膜状の温度変化物質40が枠状に付着した状態となる。そして、融着された温度変化物質40は、一度融解して液状化した後固化するため、表面積が小さくなっている。従って、温度変化物質40における尿との接触面積が小さくなるため、温度変化速度が抑えられ、持続性が向上する。ここで、温度変化物質40として嵩密度が低い粒子状物を用いるのは好ましい形態である。そうすると、速効性と遅効性の効果の違いをよりはっきりさせることができる。粒子状の温度変化物質40は、同程度の粒径であれば、嵩密度が低いほど表面積が大きく、尿との接触効率が高いため、温度変化速度が速くなる。特に温度変化物質40が尿に溶解して温度変化が生じる場合にはこの傾向が顕著である。
【0123】
嵩密度の低い粒子状の温度変化物質40としては、顆粒、表面凹凸の多い形状の粒子、表面や内部に微細な孔を有する粒子等の多孔質粒子が好適である。嵩密度の程度は適宜定めれば良いが、真密度の50%以下である(見かけの体積に対して50%以上の空隙(空間)を有する)のが好ましい。例えば、ソルビトールの場合、真密度は1.50g/cm3なので、好ましい嵩密度は0.75g/cm3以下であり、0.50〜0.70g/cm3がより好ましく、0.55〜0.65g/cm3が特に好ましい。また、粒子径が大きいと、見かけの嵩密度は小さいが、表面積は大きくないため、粒子状の温度変化物質40を用いる場合、その平均粒径(JIS K 1474−2007 メジアン径)が200〜600μmであることが好ましい。融着部分の嵩密度はこれらよりも高ければ良い。
【0124】
他方、製造ラインによる連続製造を行う場合、資材は連続帯状で供給し、枠状融着部分の融着後にMD方向に所定の間隔で所定寸法に切断するのが好ましい。しかし、この場合、製品の製造工程や、販売先への輸送過程、使用者による使用過程等において、切断端部から温度変化物質が零れ落ちるおそれがある。そこで、図18(a)に示すように、それぞれ連続帯状をなす表面側部材及び裏面側部材を所定方向に搬送しながら、上述の第1〜第4の方法を行った後、温度変化物質の枠状融着部分41を形成した表面側部材48及び裏面側部材49を、MD方向に所定の間隔を空けて切断するのと同時に、その切断端部(切断位置に対して流れ方向上流側及び下流側の両方)にCD方向に沿う線状のヒートエンボス加工を施すのは好ましい。図中の符号41Eが、このエンボス加工部を示している。この場合、切断位置から、隣接するCD方向に沿う線状の温度変化物質の融着部分41までの間隔が狭くなるため、零れ落ちる粒子状温度変化物質42の量を低減することができる。特にこのヒートエンボス41Eにより上述の第1の方法と同様にCD方向に沿う線状の温度変化物質の融着部分を形成するのが好ましいが、表面側部材48と裏面側部材49とがある程度の強さで接着されるだけでも良い。
【0125】
また、上述の第1〜第4の方法を行うことにより、MD方向に間隔を空けてCD方向に沿う線状の温度変化物質の融着部分41を形成する場合には、図18(b)に示すように、切断予定位置CTのMD方向一方側及び他方側にそれぞれ隣接するCD方向に沿う線状の温度変化物質の融着部分間の間隔Dcを他の部分の間隔Doより狭くするのも好ましい。この場合も、切断位置から、隣接するCD方向に沿う線状の温度変化物質の融着部分41までの間隔が狭くなるため、零れ落ちる粒子状温度変化物質42の量を低減することができる。
【0126】
これらの方法における切断は、他の部材への取り付けに先立って予め行う他、表面側部材及び裏面側部材の種類によっては、個々の製品への切断により行うこともできる。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明は、パンツ型やテープ式、あるいはパッド型の吸収性物品等、広範な用途に適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】パンツ型使い捨ておむつの内面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【図2】パンツ型使い捨ておむつの外面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【図3】図1の6−6断面図である。
【図4】図1の7−7断面図である。
【図5】図1の8−8断面図である。
【図6】パンツ型使い捨ておむつの要部を寸法とともに示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【図7】パンツ型使い捨ておむつの要部を寸法とともに示す、断面図である。
【図8】製品状態の正面図である。
【図9】製品状態の背面図である。
【図10】他の形態の要部平面図である。
【図11】他の形態の要部断面図である。
【図12】他の形態の要部平面図である。
【図13】各種製造形態の要部平面図である。
【図14】加熱手段を示す概略図である。
【図15】加熱手段を示す概略図である。
【図16】加熱手段を示す概略図である。
【図17】加熱手段を示す概略図である。
【図18】他の製造形態の要部平面図である。
【符号の説明】
【0129】
100…胴回り部、11…液不透過性シート、12F…腹側外装シート、12B…背側外装シート、200…内装体、30…表面シート、40…温度変化物質、40…融着部分、40…非融着部分、50…吸収要素、56…吸収体、58…包装シート、60…側部バリヤーカフス、62…バリヤーシート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性表面シートと液不透過性シートとの間に吸収体が介在されるとともに、表面側に、水分との接触により温度変化をもたらす粒子状の温度変化物質が含有された、使い捨て吸収性物品において、
前記温度変化物質は、その表面側及び裏面側にそれぞれ位置する表面側部材及び裏面側部材間に挟まれるとともに、その一部が前記表面側部材及び裏面側部材に融着し、且つ残部が前記表面側部材及び裏面側部材に融着しておらず、
前記温度変化物質の融着部分が枠状をなすとともに、その枠状融着部分により囲まれる部分に前記非融着の温度変化物質が封じ込められている、
ことを特徴とする使い捨て吸収性物品。
【請求項2】
前記枠状融着部分が多数配列されて格子状パターンをなしており、且つこの格子状パターンは、前記温度変化物質の融着部及び非融着部が交互に列なる点線状の融着線からなり、各交差位置において少なくとも一方の融着線が不連続となっているパターンである、請求項1記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項3】
前記温度変化物質として、相対的に融点が高い高融点温度変化物質と、相対的に融点が低い低融点温度変化物質とを含有しており、前記枠状融着部分が前記低融点温度変化物質の融着により形成され、且つ前記枠状融着部分により囲まれる部分に前記高融点温度変換物質が前記非融着の温度変化物質として封じ込められている、請求項1又は2記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項4】
前記表面側部材が、前記表面シートと前記吸収体との間に配置された第1の液透過性シートであり、前記裏面側部材が前記第1の液透過性シートと前記吸収体との間に配置された第2の液透過性シートである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項5】
前記表面側部材が前記表面シートであり、前記裏面側部材が前記表面シートの裏面側に隣接配置された液透過性セカンドシートである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項6】
前記吸収体が包装シートにより包まれており、前記表面側部材が前記包装シートにおける前記吸収体の表面側に位置する部分であり、前記裏面側部材が前記吸収体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項7】
前記吸収体として、表面側吸収体とその裏面側に重なる裏面側吸収体とを有しており、前記表面側部材が前記表面側吸収体であり、前記裏面側部材が前記裏面側吸収体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項8】
前記表面側部材が、一枚のシートを折り畳んで形成された層構造物における表面側層であり、前記裏面側部材が前記表面側層の裏面側に隣接配置された裏面側層である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項9】
液透過性表面シートと液不透過性シートとの間に吸収体が介在されるとともに、液透過性表面シートと液不透過性シートとの間に、水分との接触により温度変化をもたらす粒子状の温度変化物質が含有された、使い捨て吸収性物品の製造方法において、
前記温度変化物質を所定の表面側部材及び裏面側部材間に挟んだ状態で、枠状のエンボスパターンで且つ前記温度変化物質が溶融する温度でヒートエンボス加工を施す工程を含む、
ことを特徴とする使い捨て吸収性物品の製造方法。
【請求項10】
液透過性表面シートと液不透過性シートとの間に吸収体が介在されるとともに、液透過性表面シートと液不透過性シートとの間に、水分との接触により温度変化をもたらす粒子状の温度変化物質が含有された、使い捨て吸収性物品の製造方法において、
所定の表面側部材及び裏面側部材のいずれか一方における対向面上に、前記温度変化物質の溶融液を枠状に塗布するとともに、その少なくとも枠の内側に粒子状の温度変化物質を配置した後、その上に他方の部材を重ね、前記溶融液を接着剤として前記表面側部材及び裏面側部材を接着する工程を含む、
ことを特徴とする使い捨て吸収性物品の製造方法。
【請求項11】
液透過性表面シートと液不透過性シートとの間に吸収体が介在されるとともに、液透過性表面シートと液不透過性シートとの間に、水分との接触により温度変化をもたらす粒子状の温度変化物質が含有された、使い捨て吸収性物品の製造方法において、
所定の表面側部材及び裏面側部材のいずれか一方における対向面上に、前記温度変化物質の溶融液を第1の方向に間隔を空けた複数位置において、第1の方向と交差する第2の方向に沿って線状に塗布するとともに、その少なくとも塗布線間に粒子状の温度変化物質を配置した後、その上に他方の部材を重ね、前記溶融液を接着剤として前記表面側部材及び裏面側部材を接着し、しかる後、前記温度変化物質が溶融する温度で、第2の方向に間隔を空けて第1の方向に沿う線状のヒートエンボス加工を施す工程を含む、
ことを特徴とする使い捨て吸収性物品の製造方法。
【請求項12】
液透過性表面シートと液不透過性シートとの間に吸収体が介在されるとともに、液透過性表面シートと液不透過性シートとの間に、水分との接触により温度変化をもたらす粒子状の温度変化物質が含有された、使い捨て吸収性物品の製造方法において、
所定の表面側部材及び裏面側部材の間に、相対的に融点が低い低融点温度変化物質を枠状に配置するとともに、その枠の内側に相対的に融点が高い高融点温度変化物質を配置した状態で、前記低融点温度変化物質が溶融し且つ前記高融点温度変化物質が溶融しないように加熱する工程を含む、
ことを特徴とする使い捨て吸収性物品の製造方法。
【請求項13】
前記表面側部材及び裏面側部材は連続帯状をなしており、これらを所定方向に搬送しながら前記工程を行った後、前記表面側部材及び裏面側部材をMD方向に所定の間隔を空けて切断するのと同時に、その切断端部にCD方向に沿う線状のヒートエンボス加工を施す、請求項9〜12のいずれか1項に記載の使い捨て吸収性物品の製造方法。
【請求項14】
前記表面側部材及び裏面側部材は連続帯状をなしており、これらを所定方向に搬送しながら前記工程を行い、MD方向に間隔を空けてCD方向に沿う線状の温度変化物質の融着部分を形成した後、前記表面側部材及び裏面側部材をMD方向に所定の間隔を空けて切断する方法であって、
前記切断位置のMD方向一方側及び他方側にそれぞれ隣接する、CD方向に沿う線状の温度変化物質の融着部分間の間隔を、他のCD方向に沿う線状の温度変化物質の融着部分間の間隔よりも狭くする、
請求項9〜12のいずれか1項に記載の使い捨て吸収性物品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−268526(P2009−268526A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−119317(P2008−119317)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】