説明

使用済ポットライナーから鉛筆の芯を調製するための簡易かつ効率的な製法

本発明は、アルミニウム産業の使用済又は廃棄用ポットライナーから鉛筆の芯を調製するための簡易かつ効率的な製法に係るものであって、上記ライナーを小さなサイズに粉砕する工程、粉砕されたライナーにクロム酸を添加する工程、反応産物を蒸留水で洗浄する工程、乾燥物に対し熱的ショック処理を施し、きめ細かくさらさらした黒鉛粉末を得る工程、粉末と結合材を混合する工程、混合物を必要な水量で湿らせ、堅い練り粉を形成する工程、練り粉を圧力下押し出し、ディスク形状の産物を得る工程、乾燥ディスクを、不活性/還元雰囲気下、400−1200℃の温度範囲の炉で1ー6時間、加熱する工程、および、鉛筆の芯を得る工程、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム産業の使用済又は廃棄用ポットライナー(pot liners)から鉛筆の芯を調製するための簡易かつ効率的な製法に係るものであって、上記ライナーを小さなサイズに粉砕する工程、粉砕されたライナーにクロム酸を添加する工程、反応産物を蒸留水で洗浄する工程、乾燥物に対し熱的ショック処理を施し、きめ細かくさらさらした黒鉛粉末を得る工程、粉末と結合材を混合する工程、混合物を必要な水量で湿らせ、堅い練り粉を形成する工程、練り粉を圧力下押し出し、ディスク形状の産物を得る工程、乾燥ディスクを、不活性/還元雰囲気下、400−1200℃の温度範囲の炉で1ー6時間、加熱する工程、および、鉛筆の芯を得る工程、を含む。
【背景技術】
【0002】
鉛筆の芯は、基本的に粘土で結合させた黒鉛を焼き固めたセラミック棒である。鉛筆産業において、黒鉛の適合性は、紙の上をなぞって残る黒い線によって判断される。合成黒鉛は、灰分含量が少なく、粒子の大きさが非常に微細であるものの、線がはっきりとせず、この点から鉛筆の製造には不向きである。通常、鉛筆の製造には、純度約90%で粗い粒子のないアモルファス黒鉛が好まれる。アモルファス黒鉛は、薄片状黒鉛よりも良好な線を残す。インド・スタンダード研究所(ISI)は、鉛筆の製造に適切な黒鉛として、大きさが−300BSメッシュで灰分含量が50%未満のアモルファス黒鉛、という基準を設定した。微粒のアモルファス黒鉛は、それゆえ、高品質の鉛筆の製造の為たいへん需要の高い原料である。
上記微粒のアモルファス黒鉛を用いて鉛筆の芯を製造する一般的な方法について説明すると、まず粘土と黒鉛を含む水スラリーをボールミル粉砕またはハンマーミル粉砕した後、上記スラリーを必要な堅さになるまで乾燥させ、ミキサーの中で堅い練り粉を形成する。その後、これをシリンダーに詰め、圧力をかけて押し出し、成型する。次に、湿ったひも状物は乾燥され、窯のエンゴロに入れられ、800−1100℃の温度範囲で焼成される。焼成された芯はその後、ワックス、および、脂肪または脂肪酸あるいはその両方をしみ込ませる。この後者の工程は、使用ポイントのグレージング(glazing)を妨げる。鉛筆の芯の品質は、使用される成分と採用される製法の良し悪しによる。硬度は、黒鉛に対する粘土の比率による。使用する粘土の割合は、20−60%の幅で変動する。No.1(最も柔らかい)の鉛筆の芯は約20%の粘土を含む一方、No.4(最も固い)の鉛筆の芯は約60%の粘土を含む。硬度は、製品の条件であるが、均一性、滑らかさ、或いは削った先端の強度といった品質要素ではない。他方、消えない芯は、黒鉛、メチルバイオレット、およびトラガカントゴムやメチルセルロースなどの結合材の混合物であり、さらにミネラルの充填剤や不溶性石けんを含む場合がある。以上の説明は、伝統的な、長年試され工業的に実証された鉛筆の芯の製造方法について例示するものであったが、近年、非常に種々の方法と原料成分の使用が報告されている(参考文献1−5)。
【本発明の目的】
【0003】
本発明の主な目的は、鉛筆の芯の調製のための簡易な製法を開発することである。
本発明の他の主な目的は、鉛筆の芯の調製のための経済的な方法を開発することである。
本発明のさらに他の主な目的は、使用済ポットライナーから鉛筆の芯を調製する効率的な方法を開発することである。
本発明のさらに他の目的は、アルミニウム産業からの使用済ポットライナーから鉛筆の芯を調製する方法を開発することである。
【本発明の要旨】
【0004】
本発明は、アルミニウム産業の使用済又は廃棄用ポットライナーから鉛筆の芯を調製するための簡易かつ効率的な製法に係るものであって、上記ライナーを小さなサイズに粉砕する工程、粉砕されたライナーにクロム酸を添加する工程、反応産物を蒸留水で洗浄する工程、乾燥物に対し熱的ショック処理を施し、きめ細かくさらさらした黒鉛粉末を得る工程、粉末と結合材を混合する工程、混合物を必要な水量で湿らせ、堅い練り粉を形成する工程、練り粉を圧力下押し出し、ディスク形状の産物を得る工程、乾燥ディスクを、不活性/還元雰囲気下、400−1200℃の温度範囲の炉で1ー6時間、加熱する工程、および、鉛筆の芯を得る工程、を含む。
【発明の詳細な説明】
【0005】
このように、本発明は、アルミニウム産業の使用済又は廃棄用ポットライナーから鉛筆の芯を調製するための簡易かつ効率的な製法に係るものであって、上記ライナーを小さなサイズに粉砕する工程、粉砕されたライナーにクロム酸を添加する工程、反応産物を蒸留水で洗浄する工程、乾燥物に対し熱的ショック処理を施し、きめ細かくさらさらした黒鉛粉末を得る工程、粉末と結合材を混合する工程、混合物を必要な水量で湿らせ、堅い練り粉を形成する工程、練り粉を圧力下押し出し、ディスク形状の産物を得る工程、乾燥ディスクを、不活性/還元雰囲気下、400−1200℃の温度範囲の炉で1ー6時間、加熱する工程、および、鉛筆の芯を得る工程、を含む。
本発明の主たる実施形態においては、アルミニウム産業の使用済又は廃棄用ポットライナーから鉛筆の芯を調製するための簡易かつ効率的な製法であって、以下の工程を含む。
・ 使用済又は廃棄用ポットライナーを収集する工程、
・ 上記ライナーを1/2インチから125ミクロンまでの範囲の様々な大きさに粉砕する工程、
・ 粉砕された上記ライナーに、20―40分間130―140℃の温度でクロム酸を加え、反応産物を得る工程、
・ ろ過された固状物が中性になるまで、反応産物を蒸留水で複数回洗浄する工程、
・ 80―120℃の温度でおよそ1時間、上記中性固状物を乾燥させる工程、
・ 予め900−980℃の温度範囲に保たれた炉で、約1−3分間、上記乾燥物に対し熱的ショック処理を施し、きめ細かくさらさらした黒鉛粉末を得る工程、
・ 上記粉末と1又は複数の結合材を混合する工程、
・ 上記混合物を必要な水量で湿らせ、堅い練り粉を形成する工程、
・ 上記練り粉を圧力下押し出し、ディスク形状の産物を得る工程、
・ 上記ディスクを10%未満の含水量まで乾燥させる工程、
・ 上記乾燥ディスクを、不活性/還元雰囲気下、400−1200℃の温度範囲の炉で1ー6時間、加熱する工程、
・ およそ20−50時間、上記加熱ディスクを室温程度に冷却する工程、および、
・ 鉛筆の芯を得る工程。
本発明のさらに他の実施形態においては、上記使用済又は廃棄用ポットライナーが陰極ブロックである。
本発明のさらに他の実施形態においては、上記結合材は、ベントナイト粘土、チャイナクレー、リン酸添加ローカルプラスチック粘土、およびカオリン粘土を含むグループから選択される。
本発明のさらに他の実施形態においては、結合材に対する黒鉛粉末の割合が4:1から2:3の範囲である。
本発明のさらに他の実施形態においては、結合材の割合が3:0.5から1:1の範囲である。
本発明のさらに他の実施形態においては、上記クロム酸が滴状に添加される。
本発明のさらに他の実施形態においては、上記クロム酸が攪拌下添加される。
本発明のさらに他の実施形態においては、上記黒鉛粉末の結晶サイズがおよそ20マイクロメートルである。
本発明のさらに他の実施形態においては、上記黒鉛粉末が約15%の灰分含量である。
本発明のさらに他の実施形態においては、上記圧力が50−200Kg/cm2の範囲である。
本発明のさらに他の実施形態においては、上記ディスクはシェードで乾燥させられる。
本発明のさらに他の実施形態においては、上記室温は24℃から30℃の範囲である。
本発明の他の主たる実施形態は、上記製法によって使用済又は廃棄用ポットライナーから得られた鉛筆の芯である。
アルミニウム産業の使用済ポットライナーから不純物を簡易に除去する方法は、同時に、使用済ポットライナーの黒鉛の価値を回復させ、鉛筆の芯のような有用な産業製品に変換させる。さらに、ベントナイト粘土、チャイナクレー、ローカルプラスチック粘土などの種々の結合材を様々な割合で使用することによって、横断破壊強度や品質が広範囲に異なる多種多様な鉛筆の芯を生産することができる。
本発明は、アルミニウム産業の使用済ポットライナーから鉛筆の芯を調製するための製法に関するものである。
こうして本発明は、アルミニウム工業の廃棄物(使用済で不純物の多いポットライナー)の安全な処分方法を提供し、微粒状の黒鉛の価値を引き出し、様々な結合材を使用して鉛筆の芯を生産する。
実際に、使用済ポットライナーとして、使用済/廃棄用陰極ブロックが、Orissa州AngulにあるNALCO社のアルミニウム抽出工場から収集され、1/2インチから125ミクロンの大きさまで種々のサイズに粉砕された。粉砕された原料は、攪拌器と温度計を備える500mlのフラスコに入れられ、小さな空調棚の中に置かれた。その排気は、水酸化ナトリウム希釈溶液のバブラーを通過する。上記粉砕試料に対し、攪拌しながら少量のクロム酸が滴状に加えられた。このとき、フラスコの周囲に冷水を通し、温度を140℃以下に保つようにした。クロム酸溶液は、必要量の濃縮(98%)商業用硫酸を重クロム酸ナトリウム粉末に加えて新たに調製された。上記粉砕試料とクロム酸との反応は活発であるので、反応温度は130−140℃の範囲に制御される必要がある。反応はおよそ20分で終了し、その後、十分量の蒸留水を試料に加えて攪拌した後、静置し沈殿させた。上澄み液は、gouche漏斗を通してろ過された。固状物は、再度蒸留水で洗浄され、ろ過された。この洗浄工程は、ろ液が中性になるまで続けられた。こうして焼結漏斗で回収された固状物は、90−110℃の炉で1時間乾燥され、得られた乾燥粉末は、予め約950℃に保たれた炉で、約2分間、熱的ショック処理が施された。
上記処理によって、きめ細かくさらさした黒鉛粉末が生成された。Malvern粒子サイズ分析器による測定の結果、当該粉末の平均結晶サイズは約20マイクロメートルであった。得られた黒鉛の結晶サイズは、出発炭素材料のサイズにかかわらず同じであった。もっとも、酸反応が完了する時間は非常に異なるものであった。得られた産物は、約15%の灰分含量を有する。
こうして得られた黒鉛粉末(灰分含量約15%)は、その後、ベントナイト粘土、カオリン粘土、ローカルプラスチック粘土(Orissa州Chandikhol、洗浄済)、リン酸添加ローカルプラスチック粘土、などの種々の結合材を20−60%の割合で混合させ、さらに必要量の水で湿らせ、50−200Kg/cm2の圧力で押し出すことによって堅い練り粉(stiff dough)を形成させた。得られたディスク形状の産物は、湿度10%以下になるまでシェード(shade)で乾燥させた。シェードでの乾燥後、上記産物は、不活性雰囲気下、1000−1200℃の温度範囲の炉で6時間焼成された。焼成後、炉の中で室温まで約24時間かけて徐冷された後、得られた産物は、鉛筆の芯の生産のため、ワックスを添着された。
上記工程によって得られた鉛筆の芯は、必要に応じて様々な形状の鉛筆の芯を製造するために使用することができる。また、ロッド形状や幅広の形状など様々な形状にすることができる。
以下、本発明の実施例について例示するが、本発明は下記実施例によってなんら制限されるものではない。
実施例1


実施例2


実施例3

【0006】
本発明の主な利点効果は、以下のとおりである。
1.工程は簡単で、最終産物を形成するのに何ら特別な装置を必要としない。基本的に2つの工程を含むだけであり、最初は、使用済ポットライナーを化学的に洗浄し、ミクロンサイズのアモルファス黒鉛粉末を作り出す工程、次いで、この黒鉛に結合材を混合し、400−1200℃の温度で焼成し、最終産物を得る工程、である。
2.産業的に重要な材料である鉛筆の芯を製造する工程であり、また、アルミニウム産業の廃棄物である不純物の多い使用済ポットライナーの安全な処理方法と利用方法を提供する。
3.黒鉛粉末と結合材の割合を変更することによって、強度や黒さが異なる多種多様な品質の鉛筆の芯を生産することができる。
【0007】
参考文献
I. Pencil lead - Pilot Precision Co., Japan, Jpn Kokksi Tokkyo, Koho, JP 57,50,829; 29 Oct.1982.
2. Manufacture of pencil lead - Shimoyama S. ibid, 61,252,278; 10 Nov.1986.
3. Pencil lead containing graphite - Shimoyama S. and Okabyashi, H. ibid, 03,139,578; 13 June, 1991.
4. Manufacture of pencil lead - Miyahara Y., ibid, 04,252,281; 8 Sept.1982.
5. Calcined colour pencil lead with smooth writability and high mechanical strength and their manufacture - Kanba N, Echida, T. and Fujiwara, Y., ibid, 11,286,643; 19 Oct.1999.


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム産業の使用済又は廃棄用ポットライナーから鉛筆の芯を調製するための簡易かつ効率的な製法であって、以下の工程を含む方法。
a.使用済又は廃棄用ポットライナーを収集する工程、
b.上記ライナーを1/2インチから125ミクロンまでの範囲の様々な大きさに粉砕する工程、
c.粉砕された上記ライナーに、20―40分間130―140℃の温度でクロム酸を加え、反応産物を得る工程、
d.ろ過された固状物が中性になるまで、反応産物を蒸留水で複数回洗浄する工程、
e.80―120℃の温度でおよそ1時間、上記中性固状物を乾燥させる工程、
f.予め900−980℃の温度範囲に保たれた炉で、約1−3分間、上記乾燥物に対し熱的ショック処理を施し、きめ細かくさらさらした黒鉛粉末を得る工程、
g.上記粉末と1又は複数の結合材を混合する工程、
h.上記混合物を必要な水量で湿らせ、堅い練り粉を形成する工程、
i.上記練り粉を圧力下押し出し、ディスク形状の産物を得る工程、
j.上記ディスクを10%未満の含水量まで乾燥させる工程、
k.上記乾燥ディスクを、不活性/還元雰囲気下、400−1200℃の温度範囲の炉で1ー6時間、加熱する工程、
l.およそ20−50時間、上記加熱ディスクを室温程度に冷却する工程、および、
m.鉛筆の芯を得る工程。
【請求項2】
上記使用済又は廃棄用ポットライナーが陰極ブロックである、請求項1記載の製法。
【請求項3】
上記結合材は、ベントナイト粘土、チャイナクレー、リン酸添加ローカルプラスチック粘土、およびカオリン粘土を含むグループから選択される、請求項1記載の製法。
【請求項4】
結合材に対する黒鉛粉末の割合が4:1から2:3の範囲である、請求項1記載の製法。
【請求項5】
結合材の割合が3:0.5から1:1の範囲である、請求項1記載の製法。
【請求項6】
上記クロム酸が滴状に添加される、請求項1記載の製法。
【請求項7】
上記クロム酸が攪拌下添加される、請求項1記載の製法。
【請求項8】
上記黒鉛粉末の結晶サイズがおよそ20マイクロメートルである、請求項1記載の製法。
【請求項9】
上記黒鉛粉末が約15%の灰分を有している、請求項1記載の製法。
【請求項10】
上記圧力が50−200Kg/cm2の範囲である、請求項1記載の方法。
【請求項11】
上記ディスクはシェードで乾燥させられる、請求項1記載の方法。
【請求項12】
上記室温は24℃から30℃の範囲である、請求項1記載の製法。
【請求項13】
上記鉛筆の芯は200から300Kg/cmの範囲の横断強度を示す、請求項1記載の製法。
【請求項14】
請求項1記載の製法によって使用済又は廃棄用ポットライナーから得られた鉛筆の芯。
【請求項15】
鉛が約15%の灰分を有している、請求項14記載の鉛筆の芯。

【公表番号】特表2007−517072(P2007−517072A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−508714(P2005−508714)
【出願日】平成15年12月3日(2003.12.3)
【国際出願番号】PCT/IB2003/005560
【国際公開番号】WO2005/023944
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(595059872)カウンシル オブ サイエンティフィク アンド インダストリアル リサーチ (81)
【Fターム(参考)】