説明

使用済食用油脂の再生処理方法及びその処理剤

【課題】使用済食用油脂に含まれる様々な不純物を同時かつ効率的に除去できる使用済食用油脂の再生処理方法及び再生処理剤を提供する。
【解決手段】50-180℃まで加熱された使用済食用油脂を、着色物質を選択的に吸着できる処理剤A(酸化ケイ素(SiO2)と酸化アルミニウム(Al2O3)との合計含有量が乾燥ベースで90wt%以上、Al/Si原子比が0-0.3である粘土をギ酸等の有機酸で処理して得られる150-600m2/gのBET比表面積、0.6mmol/g(-5.6≦Ho≦+3.3)以上の表面固体酸量を有する処理剤)と一定時間接触させ、遊離脂肪酸を選択的に吸着するか遊離脂肪酸と反応させ、遊離脂肪酸を油脂に難溶の化合物に変換する処理剤B(酸化マグネシウム等を50-600m2/gの比表面積を有する平均粒子径2-400μmの無機多孔質体微粒子に担持した処理剤)と一定時間接触させた後、処理剤A,B及びこれらの反応生成物を分離除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、すでに酸価や色度や過酸化物価などの品質値が食用油脂の品質基準を超えている使用済食用油脂を精製処理し、再び食用可能な品質レベルまで再生処理するための処理方法及びその処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭や外食産業や食品製造業などから発生する使用済食用油脂には、油脂の加水分解により生成する遊離脂肪酸、熱劣化反応により生成する過酸化物、臭気物質、重合物、着色物質など、揚げ鍋の内壁から溶出する微量金属、また料理に用いた材料から移行してくる様々な非油脂物質が含まれている。これらの劣化生成物が使用時間に伴い、蓄積していく傾向があり、一定使用時間を超えると、健康を損なう有害物になる。これらの不純物を除去すれば、使用済食用油脂を捨てることなく再利用でき、環境負荷の低減効果と経済的な効果が得られるため、再生処理が望ましい。
【0003】
バージン食用油は油脂植物種子の搾油で得た粗グリセリド油を、通常脱ガム、脱酸、脱色、脱臭等の精製工程を経て精製されている。脱ガム工程では、原油を一定の温度に調整し、その後、水を数〜十数wt%添加し、攪拌を行うことでリン脂質を水和・析出させ、その析出したガム分を遠心分離機等で分離することで、低リン脂質の油脂を得る。油脂脱色の方法としては、吸着剤による吸着法、化学的な酸化法、加熱分解による方法などがあるが、最も一般的な方法は、活性白土、酸性白土、活性炭などの吸着剤による吸着法である。活性白土による吸着脱色の場合、油脂に対して0.5〜3.0%の活性白土を添加し、減圧下60〜120℃、10〜30分行われる。減圧下で行うのは、系内の酸素をできるだけ少なくし、活性白土による酸化劣化を防ぎ、また油脂や活性白土に含まれている水分を除去し、吸着剤の脱色能を高めるなどのためである。原油の脱酸には、アルカリ脱酸法と物理的脱酸法がある。アルカリ脱酸では、油脂中に含まれる油脂脂肪酸を、アルカリ水溶液を用いて中和して、生じる石鹸を分離する方法である。一方、物理的脱酸法では、油脂を高温・高真空におき、水蒸気を吹き込みながら遊離脂肪酸を蒸留除去する方法である。脱臭工程は、油脂に含まれるアルデヒド、ケトン、炭化水素及び脱酸工程で除去し切れなかった遊離脂肪酸などの有臭成分や揮発成分を除去するための工程であり、一般に油脂を高温・高真空におき、油脂中に水蒸気を吹き込みながら、有臭成分などを留去する。
【0004】
一方、使用済食用油脂の再生方法としては、料理かすなどの固形物を単にろ布やろ紙や金網などを用いてろ過する方法が古くからよく使われている。但し、この方法では、油脂の劣化生成物を除去する効果がなく、厳密に言えば使用済食用油脂の再生法とは言えない。
【0005】
また、油脂の劣化生成物である有色物質や過酸化物や遊離脂肪酸などを除去する目的で、様々な吸着剤を用いる使用済食用油脂の再生処理法も提案されている。吸着剤を利用した使用済食用油脂の再生処理に関する特許開示文献を以下に挙げる。
(1)特許文献2では、活性アルミナ35〜70%、アタパルジャイト40〜60%、パーライト3〜20%、ベントナイト3〜15%からなる油脂吸着剤が開示されている。
(2)特許文献1では、マグネシウムを含む固体塩基性物質と酸性白土の混合物を用いた食油浄化組成物が開示されている。
(3)特許文献3では使用済油脂を再生するのに使用できる珪藻土、合成珪酸カルシウム水和物及び合成珪酸マグネシウム水和物から構成される混合物を開示している。
【特許文献1】特開昭62−285993号公報
【特許文献2】特開平2−307526号公報
【特許文献3】米国特許第4112129号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のように、粗油脂の脱ガム、脱酸、脱色、脱臭のための精製技術がすでに存在しており、工業的に利用されている。しかしながら、使用済油脂に含まれる不純物の種類が粗油脂の場合と異なり、しかも使用済油脂の発生源が分散しており、発生量が少ないため、粗油脂精製に用いられる精製方法と精製装置を使用済食用油脂の再生精製に適用することが困難である。
【0007】
使用済食用油を再び食用可能な品質にするための再生処理方法と処理装置としては、より簡単でかつ低コストのものが求められている。そのために、提案されている使用済食用油脂の吸着剤は、主に脱色を主目的とするものと脱酸を主目的とするものに大別される。
【0008】
使用済食用油の脱色剤としては、アタパルジャイト、パーライト、ベントナイトなどのスメクタイト系天然粘土鉱物、無定形シリカ、活性アルミナなどの合成吸着剤が提案されている。その中でも、スメクタイト系天然粘土鉱物、特に天然粘土鉱物を酸処理して得た活性白土は、優れた脱色性能を有することが古くから知られており、油脂の脱色精製剤として工業的に利用されている。
【0009】
従来、油脂の脱色精製に使われる活性白土は、一般に酸性白土又はこれに類似する粘土の粉末又は成形品に硫酸又は塩酸を加えて、80〜90℃で5〜20時間加熱循環させることによって製造されている。酸性白土を酸で処理すると、アルミナ、酸化鉄、マグネシア、酸化カルシウムなどの塩基性成分の一部が溶出され、酸性白土が本来持っている吸着能や触媒性能などの諸性能がさらに高められる。このように製造されている活性白土は、カロチロイド系、クロロフィル系、及びその他の天然色素類に対する選択的吸着性能が認められるが、使用済食用油の脱色に対しては十分ではない。その原因は明らかではないが、使用済食用油中の着色物質は、化学的性質がカロチロイド系やクロロフィル系などの天然色素と異なるからと推測される。つまり、使用済食用油中の着色物質は、基本的に油脂の熱酸化、熱重合、炭化脱水素生成物であり、このような分子量が高く、量が多い劣化生成物を選択的に吸着するには、より表面酸強度が強く、表面酸量が多く、比表面積が高い吸着剤が必要である。
【0010】
例えば硫酸処理活性白土の脱色性能は、酸の濃度、温度及び処理時間などの処理条件によって変化する。文献(「吸着技術ハンドブック」、株式会社NTS)に記載されているように、白土の表面酸性度、比表面積及び脱色能とともに、酸処理の程度(酸濃度、温度、処理時間など)が強くなるのにつれて、一旦増えるが、酸処理の程度がさらに強くなると、逆に落ちる。即ち、硫酸や塩酸などの鉱物酸は、酸性度が高いため、酸処理の初期段階程では酸性白土に含まれる不純物である塩基性成分の溶出には効果があるが、さらに酸処理が進んでいくと、粘土の結晶構造が崩壊されてしまい、結局吸着能に寄与する表面酸量と酸強度、比表面積、細孔容積の形成に逆効果をもたらすことになる。すなわち、従来の鉱物酸による活性白土の製造法においては、比表面積と表面酸強度及び酸量とは両立しがたいものであり、これらの両方を十分に満足するものは知られていない。従って、従来の鉱物酸処理法では、使用済食用油脂の脱色に要求される、より高い表面酸強度、多い酸量、高い比表面積を有する活性白土を得ることが不可能となる。
【0011】
一方、食用油脂の脱酸剤としては、一般に遊離脂肪酸を吸着するか遊離脂肪酸と反応して遊離脂肪酸を分離除去しやすい石鹸に変換する機能を有する塩基性物質が提案されている。例えば、マグネシウムとカルシウムの酸化物、水酸化物又は炭酸塩の単一物質又はこれらの混合物が有効であることが知られている。しかし、これらの塩基性化合物を直接油脂と接触する場合、比表面積が低く本質的な吸着・反応能が小さいだけでなく、遊離脂肪酸との反応によって生成した金属石鹸が処理後の油に溶解・移行して、油の風味を損なう恐れがある。一方、珪酸ナトリウムと硫酸マグネシウム又は硫酸カルシウムの複分解反応(共沈反応)によって合成される珪酸マグネシウムや珪酸カルシウムなども脱酸剤として効果があるが、日本の食品添加物に関る法規制では、食品等の精製の目的に使用できないのが現状である。
【0012】
本発明は、前記従来の問題を解決するため、使用済食用油脂に含まれる様々な不純物を同時かつ効率的に除去でき、各種品質規格を満たすことが可能な使用済食用油脂の再生処理方法及び再生処理剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の使用済食用油脂の再生処理方法は、使用済食用油脂から、それに含まれる遊離脂肪酸、着色物質、過酸化物、微量金属、臭気物質を含む不純物を除去し、不純物含有量を食用可能なレベルまで低減する使用済食用油脂の再生処理方法であって、50〜180℃まで加熱された使用済食用油脂を、少なくとも着色物質を選択的に吸着できる処理剤A(但し処理剤Aは、酸化ケイ素(SiO2)と酸化アルミニウム(Al23)との合計含有量が乾燥ベースで90wt%以上、Al/Si原子比が0〜0.3である天然粘土、物理化学的処理された天然粘土及び人工合成粘土から選ばれる少なくとも一つの粘土を、クエン酸、酢酸、酒石酸、ギ酸及び蓚酸からなる群から選ばれる少なくとも1種類の有機酸で処理して得られる、150〜600m2/gのBET比表面積、0.6mmol/g(−5.6≦Ho≦+3.3)以上の表面固体酸量を有する処理剤。)と一定時間接触させ、少なくとも遊離脂肪酸を選択的に吸着するか遊離脂肪酸と反応させ、遊離脂肪酸を油脂に難溶の化合物に変換する処理剤B(但し処理剤Bは、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化マグネシウム及び水酸化カルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種類の化合物を、50〜600m2/gの比表面積を有する平均粒子径2〜400μmの無機多孔質体微粒子に担持した処理剤。)と一定時間接触させた後、前記処理剤Aと処理剤B、並びに処理剤A及び/又は処理剤Bとの反応生成物を分離除去することを特徴とする。
【0014】
本発明の別の使用済食用油脂の再生処理方法は、使用済食用油脂から、それに含まれる遊離脂肪酸、着色物質、過酸化物、微量金属、臭気物質を含む不純物を除去し、不純物含有量を食用可能なレベルまで低減する使用済食用油脂の再生処理方法であって、50〜180℃まで加熱された使用済食用油脂を、少なくとも着色物質を選択的に吸着できる処理剤A(但し処理剤Aは、酸化ケイ素(SiO2)と酸化アルミニウム(Al23)との合計含有量が乾燥ベースで90wt%以上、Al/Si原子比が0〜0.3である天然粘土、物理化学的処理された天然粘土及び人工合成粘土から選ばれる少なくとも一つの粘土を、クエン酸、酢酸、酒石酸、ギ酸及び蓚酸からなる群から選ばれる少なくとも1種類の有機酸で処理して得られる、150〜600m2/gのBET比表面積、0.6mmol/g(−5.6≦Ho≦+3.3)以上の表面固体酸量を有する処理剤。)と一定時間接触させ後、前記処理剤Aを分離除去し、処理剤Aで処理された油脂を得る第1段処理と、50〜180℃まで加熱された前記処理剤Aで処理された油脂を、少なくとも遊離脂肪酸を選択的に吸着するか遊離脂肪酸と反応させ、遊離脂肪酸を油脂に難溶の化合物に変換する処理剤B(但し処理剤Bは、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化マグネシウム及び水酸化カルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種類の化合物を、50〜600m2/gの比表面積を有する平均粒子径2〜400μmの無機多孔質体微粒子に担持した処理剤。)と一定時間接触した後、前記処理剤B、並びに処理剤Bとの反応生成物を分離除去し、最終的に再生処理油を得る第2段処理を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明の使用済食用油脂の再生処理剤は、前記の使用済食用油脂の再生処理方法に使用するための前記処理剤Aであって、酸化ケイ素(SiO2)と酸化アルミニウム(Al23)との合計含有量が乾燥ベースで90wt%以上、Al/Si原子比が0〜0.3である天然粘土、物理化学的処理された天然粘土及び人工合成粘土から選ばれる少なくとも一つの粘土を、クエン酸、酢酸、酒石酸、ギ酸及び蓚酸からなる群から選ばれる少なくとも1種類の有機酸で処理して得られる、150〜600m2/gのBET比表面積、0.6mmol/g(−5.6≦Ho≦+3.3)以上の表面固体酸量を有することを特徴とする。
【0016】
本発明の使用済食用油脂の別の再生処理剤は、前記の使用済食用油脂の再生処理方法に使用するための前記処理剤Bであって、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化マグネシウム及び水酸化カルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種類の化合物を、50〜600m2/gの比表面積を有する平均粒子径2〜400μmの無機多孔質体微粒子に担持したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の使用済食用油脂の再生処理方法によれば、脱色を主目的とする処理剤Aによる処理を行った後に、脱酸を主目的とする処理剤Bを添加し、引き続き処理すると、従来脱色処理と脱酸処理を同一処理剤によって行う場合に比べて、脱色効果、脱酸効果及び他の不純物の除去効果ともに一段と向上される。また、再生処理した後の処理剤の分離除去を遠心分離することによって、分離速度と分離完成度とともに高められる。また、脱色を主目的とする処理剤Aとして有機酸で処理される粘土鉱物を用い、脱酸を主目的とする処理剤Bとして、酸化マグネシウム、酸化カルシウムなどの塩基性化合物を無機多孔質体に担持したものを用いることによって、脱色能、脱酸能などの効果が一層向上されると同時に、処理した後の分離除去も容易になる。
【0018】
本発明によれば、使用済食用油脂に含まれる様々な不純物を同時かつ効率的に除去でき、例えば油菓子の品質企画基準に関る厚生省指導要網(昭和52年11月公示)、油揚げの品質及び表示基準(ミニJAS)、弁当・惣菜の衛生規範に関る厚生省指導要網(昭和54年6月通達)、即席麺類の品質基準(JAS)などに満たすための再生食用油脂を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
まず、使用済油脂再生処理方法の第1実施形態を図面に基づき説明する。
【0020】
図1は本発明の使用済油脂再生処理工程ブロックである。この再生処理工程ブロックに従って使用済油脂を処理すれば、使用済油脂に含まれる不純物含有量を食用可能なレベルまで低減することができ、食用油として再使用することができる。
【0021】
本発明で対象となる使用済食用油脂は、家庭や外食産業や食品製造業などから発生するものであり、代表的なものとしては、天ぷら、フライに用いた後の食用油脂(以下「使用済油脂」と略す)が挙げられる。
【0022】
本発明の第1実施形態による前記使用済油脂の再生処理は、図1に示すように、50〜180℃まで加熱された使用済油脂に、少なくとも着色物質を選択的に吸着できる処理剤Aと一定時間接触し、脱色処理を行う。次に、油脂の温度を50〜180℃に維持しながら、少なくとも遊離脂肪酸を選択的に吸着するか遊離脂肪酸と反応して、遊離脂肪酸を油脂にほとんど溶けない化合物に変換できる処理剤Bと一定時間接触し、脱酸処理を行う。最後に、処理油から、前記処理剤Aと処理剤B、並びに処理剤A又は/及び処理剤Bとの反応生成物を分離除去して再生油を得る。
【0023】
脱色処理工程において、処理剤Aと使用済油脂とを接触させる方法として、処理剤Aを充填したカラムに使用済油脂を一定の空間速度で通過する固定床方式、処理剤Aを包含しているフィルターに使用済油脂を通過させる吸着ろ過方式、使用済油脂に粉末状の処理剤を直接添加し、攪拌混合する攪拌混合方式のいずれかを用いることができる。その中でも、攪拌混合方式は、吸着剤表面への不純物の拡散抵抗が大幅に低減されるため、短時間の処理でも高い処理効果が得られる。攪拌混合方式を用いる場合、使用済油脂を所定温度に加温してから処理剤Aを添加してもよいし、加温すると同時に処理剤Aを添加してもよい。脱色処理に使われる処理剤Aは、主に着色物質を選択的に除去する機能を有するものであるが、使用済油脂に含まれる臭気物質や微量金属や水分などを除去する効果も認められる。
【0024】
使用済油脂と処理剤Aとの接触温度は、50〜180℃であり、好ましくは80〜120℃である。また所定温度での接触時間は、使用済油脂の劣化程度、処理剤Aの添加量などによって異なるが、一般的に5〜40分間で十分である。接触温度が50℃以下より低い場合、十分な脱色効果が得られず、逆に接触温度が180℃を超えると、油脂の熱的劣化が進み、脱色効果が逆に落ちる場合がある。特に酸価が高く、劣化が激しい使用済油脂の場合、煙点が新油より低いため、高い温度で処理すると、熱分解に伴う煙が発生することがあるので、好ましくない。
【0025】
次の脱酸処理工程において、処理剤Bと使用済油脂との接触は、脱色処理工程と同様な方法を用いることができる。
【0026】
使用済油脂と処理剤Bとの接触温度は、50〜180℃であり、好ましくは80〜120℃である。また所定温度での接触時間は、使用済油脂の酸価、処理剤Bの添加量などによって異なるが、一般的に10〜120分間で十分である。接触温度が50℃以下より低い場合、十分な脱酸効果が得られず、逆に接触温度が180℃を超えると、油脂の加水分解が進み、脱酸効果が逆に落ちる場合がある。また、処理剤Bによる脱酸処理工程において、使用済食用油脂に処理剤Bを添加すると同時に、使用済食用油脂中の水分含有量が0.01〜0.6%、より好ましくは0.1〜0.4%になるように水を添加すると、脱酸処理が速められ、より短い時間でも高い脱酸効果が得られる。脱酸処理に使われる処理剤Bは、主に遊離脂肪酸を選択的に吸着するか遊離脂肪酸と反応する機能を有するものであるが、使用済油脂に含まれる熱重合物、着色物、料理に用いた材料から移行してくる様々な非油脂物質などを除去する効果も認められる。
【0027】
最後の固液分離工程においては、前記脱色工程と脱酸工程で添加された処理剤A、処理剤B、ならびに処理剤A又は/及び処理剤Bとの反応生成物が分離除去される。固液分離の分離は、比重差を利用した沈降分離又は遠心分離、ろ過分離のいずれかを用いることができる。
【0028】
次に、本発明の使用済油脂再生処理方法の第1実施形態に用いる処理剤について説明する。
【0029】
本発明の使用済油脂再生処理方法の第1実施形態において、脱色処理に用いる処理剤Aは、少なくとも使用済油脂中の着色物質を選択的に吸着できるものでなければならないが、脱色機能だけに限定されず、脱酸、脱臭、脱金属などの機能を併せて持つこともできる。
【0030】
使用済油脂の脱色に用いられる処理剤としては、一般的に知られているスメクタイト系、カオリン系、セピオライト系天然粘土や活性シリカゲル、活性アルミナなどの人工合成吸着剤や活性炭などのものが使えるが、使用済廃食油に対する脱色効果がいずれも十分ではない。これらの既存吸着剤は、天然油脂中に含まれるカロチロイド系、クロロフイル系、その他の色素類を選択的に吸着できることが古くから知られ、油脂植物の種子から搾油された油脂の脱色精製にも使われているが、使用済油脂の脱色には同様な効果を示さない。その原因は明らかではないが、使用済油脂に含まれる着色物質は、基本的に油脂の熱劣化生成物であり、その化学性質がカロチロイド系、クロロフイル系などの天然色素と異なるからである。
【0031】
本発明において、使用済油脂の脱色のための処理剤Aとして、既存の脱色処理剤のいずれよりも高い脱色効果が得られ、酸化ケイ素(SiO2)と酸化アルミニウム(Al23)との合計含有量が乾燥ベースで90wt%以上、かつAl/Si原子比が0〜0.3である天然粘土、物理化学的処理された天然粘土及び人工合成粘土のいずれかを、有機酸で処理して得る150〜600m2/gのBET比表面積、0.6mmol/g(−5.6≦Ho≦+3.3)以上の表面固体酸量を有するものが用いられる。
【0032】
処理剤Aの原料として、例えば、スメクタイト系、カオリン系、セピオライト系天然粘土、これらの天然粘土を選別、粉砕、脱水、造粒などの物理的方法で処理して得たもの、鉱物酸で化学処理して得たいわゆる活性白土、純度が高められた人工合成粘土、無定形シリカ・アルミナ、無定形シリカなど、酸化ケイ素(SiO2)と酸化アルミニウム(Al23)との合計含有量が乾燥ベースで90wt%以上、かつAl/Si原子比が0〜0.3の範囲の条件を満たせば、どのようなものでも使える。その中でも、スメクタイト系に属するモンモリロナイト又はすでに鉱物酸で化学処理されたモンモリロナイトがより好ましい。
【0033】
処理に用いられる有機酸として、クエン酸、酢酸、酒石酸、ギ酸、蓚酸などの単一酸又はこれらの混合酸が用いられる。その中でも、特にギ酸と蓚酸がより高い効果を示す。有機酸による前記のような天然粘土、物理化学的処理された天然粘土及び人工合成粘土の処理過程において、粘土表面の表面酸強度と酸量ともに、処理程度(酸濃度、温度、処理時間)につれて増加する。例えば、未処理のモンモリロナイトの固体酸量は0.25mmol/g(−5.6≦Ho≦+3.3)程度であるが、70wt%のギ酸で250℃、5時間処理すると、固体酸量が0.82mmol/g(−5.6≦Ho≦+3.3)まで増える。しかも、硫酸などの鉱物酸で処理する場合に見られる結晶の崩壊と比表面積の低下現象がほとんどない。つまり、有機酸で処理する場合、原料粘土の結晶構造と比表面積が維持されながら、処理程度を変えることで表面固体酸強度と酸量を自由に制御することが可能である。ギ酸などの有機酸処理による表面固体酸強度と酸量の増加機構は確かではないが、ギ酸や蓚酸などの有機酸は鉱物酸と同様に水素イオンを有するとともに、触媒が存在しなくても160℃になると、分解して水素が発生する。粘土の表面がその水素イオン又は水素によって還元処理され、水素イオンで飽和された粘土(水素粘土)に変わるからと推測される。もちろん、有機酸も鉱物酸と同様に、アルミナ、酸化鉄、マグネシア、酸化カルシウムなどの塩基性成分を溶出し、粘土の比表面積と細孔容積を増大させる効果がある。
【0034】
有機酸による処理条件は有機酸の種類によって異なる。例えば、ギ酸による処理では、ギ酸濃度が10〜97wt%、好ましくは30〜70wt%、処理温度が100〜350℃、好ましくは150〜300℃、また処理時間が基本的に長いほどよい。但し、処理時間が一定時間を超えると、表面酸強度と酸量の増加が鈍くなり、場合によって全く増加しなくなる。
【0035】
本発明の使用済油脂再生処理方法の第1実施形態において、脱酸処理に用いる処理剤Bは、少なくとも使用済油脂中の遊離脂肪酸を選択的に吸着するか遊離脂肪酸と反応するものでなければならないが、脱酸機能だけに限定されず、脱色、高粘度重合物の除去、非油脂物質の除去などの機能を併せて持つこともできる。
【0036】
使用済油脂の脱酸に用いられる処理剤としては、一般的に知られているマグネシウムとカルシウムの酸化物、水酸化物又は炭酸塩の単一物質又はこれらの混合物がそのまま使えるが、これらのものを直接油脂に添加して脱酸処理を行う場合、通常20〜30%の酸価低減効果しか得られず、処理効果が十分ではない。また、脱酸剤と遊離脂肪酸との石鹸化反応で生成した金属石鹸は、油相に残存し、通常の分離方法では、なかなか除去されにくい問題がある。
【0037】
本発明において、使用済油脂の脱酸に用いられる処理剤Bは、これまで提案されている脱酸剤のいずれよりも高い脱酸効果が得られ、しかも脱酸処理した後に油相から容易に分離除去できるものであり、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムからなる群から選ばれる1種類又は2種類以上の混合物を、50〜600m2/gの比表面積を有する平均粒子径2〜400μmの無機多孔質体微粒子に担持してなるものである。酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどの塩基性化合物は、遊離脂肪酸を吸着したり遊離脂肪酸と反応し金属石鹸を生成したりすることによって遊離脂肪酸を除去する効果があるが、比表面積が低く、遊離脂肪酸と接触する機会が少ないため、脱酸速度が遅いだけでなく、単位重量処理剤あたりの脂肪酸除去量が少ない。本発明において、これらの塩基性化合物を高比表面積を持つ無機多孔質体に担持することによって、遊離脂肪酸と処理剤との接触面積が飛躍的に向上されるため、脱酸処理速度が大幅に向上されると同時に、石鹸化反応により生成した金属石鹸が多孔質体の表面に付着しているため、油相から容易に分離除去される。
【0038】
前記の担体となる無機多孔質体として、比表面積50〜600m2/gのものが好ましいが、細孔径が十分に大きければ、基本的に比表面積が大きいほどよい。例えば、国内で食品製造用剤としてすでに認められているシリカ、活性白土、アルミナ、珪藻土などを使用することができる。
【0039】
担体への塩基性化合物の担持方法として、含浸法、沈殿担持法、水熱合成法など、一般に知られている担持金属触媒調製法のいずれかを用いることができる。
【0040】
本発明においては、前記処理剤A又は処理剤Bにより処理された使用済食用油脂に、300〜10,000Gの遠心力をかけて、使用済食用油脂に含まれる処理剤、及び処理剤との反応生成物等を強制的に沈降分離し、除去するのが好ましい。
【0041】
また、前記処理剤A又は処理剤Bにより処理された使用済食用油脂をフィルターを用いて使用済食用油脂に含まれる処理剤、及び処理剤との反応生成物等を自然濾過、吸引濾過、加圧濾過、及び遠心濾過から選ばれる少なくとも一つの濾過手段で除去することもできる。前記遠心処理とフィルター濾過処理は組み合わせて使用することもできる。
【0042】
次に、使用済油脂再生処理方法の第2実施形態を図面に基づき説明する。
【0043】
図2は本発明の使用済油脂再生処理工程ブロックである。この再生処理工程ブロックに従って使用済油脂を処理すれば、使用済油脂に含まれる不純物含有量を食用可能なレベルまで低減することができ、食用油として再使用することができる。
【0044】
本発明の第2実施形態による前記使用済油脂の再生処理は、図2に示すように、50〜180℃まで加熱された使用済食用油脂を、少なくとも着色物質を選択的に吸着できる処理剤Aと一定時間接触し、脱色処理を行った後に、前記処理剤Aを分離除去して、処理油を得る第1段処理と、50〜180℃まで加熱された前記脱色処理油を、少なくとも遊離脂肪酸を選択的に吸着するか遊離脂肪酸と反応し、遊離脂肪酸を油脂にほとんど溶けない化合物に変換できる処理剤Bと一定時間接触した後、前記処理剤B、並びに処理剤Bとの反応生成物を分離除去し、最終的に再生処理油を得る第2段処理から構成される。
【0045】
第2実施形態において、処理剤Aによる脱色処理及び処理剤Bによる脱酸処理は、前述の使用済油脂再生処理方法の第1実施形態と同様に行われる。第1実施形態と異なるのは、処理剤Aによる脱色処理を行った後に、脱色処理済油脂から処理剤Aを分離除去してから、処理剤Bと接触させることである。これによって、脱酸剤Bによる脱酸処理効果は、処理剤Aが残存している場合に比べて、一層向上される。そのメカニズムは確かではないが、処理剤Aの表面が酸性を示すものでなければならないのに対して、脱酸剤Bが塩基性のものではなければならない。酸性の脱色剤と塩基性の脱酸剤を接触させると、塩基性が中和されることになり、結局一部分の処理剤Bが脱酸剤として機能しなくなるからと推測される。
【0046】
処理剤Aによる脱色処理の後、脱色された使用済油脂からの処理剤Aの分離除去及び処理剤Bによる脱酸処理の後、脱酸された使用済油脂からの処理剤Bの分離除去は、前述の使用済油脂再生処理方法の第1実施形態と同様に行われる。処理剤と油脂との固液分離工程において、油脂中の不純物と処理剤とが反応して生成した金属石鹸などが処理剤とともに分離除去される。
【0047】
次に、本発明の使用済油脂再生処理方法の第2実施形態に用いる処理剤について説明する。
【0048】
本発明の使用済油脂再生処理方法の第2実施形態において、脱色処理に用いる処理剤A及び脱酸処理に用いる処理剤Bは、前述の使用済油脂再生処理方法の第1実施形態と同様なものが用いられる。
【実施例】
【0049】
次に、本発明の使用済食用油脂の再生処理方法及びその処理剤に関する実施例を説明する。実施例1〜4は、本発明の使用済食用油脂の再生処理に用いる処理剤Aの調製方法を説明するものであり、実施例5〜7は、本発明の使用済食用油脂の再生処理に用いる処理剤Bの調製方法を説明するものである。また、実施例8〜11及び比較例1〜4は、本発明の使用済食用油脂の再生処理方法を説明するものである。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0050】
[実施例1]
表1に示すジオクタヘドラル型スメクタイト粘土鉱物を原料として用い、粉末状原料粘土1kgに対して40wt%のギ酸水溶液2kgを加え、オートクレーブ中、250℃、12時間攪拌して処理した。その後、オートクレーブから粘土を取り出し、水洗、乾燥をして、100〜200メッシュの篩を通した脱色剤A−1を得た。調製した脱色剤A−1の性状を表1に示す。
【0051】
[実施例2]
表1に示す活性白土(商品名:ガレオナイト、水澤化学工業株式会社製)を原料として、原料粘土1kgに対して30wt%のギ酸水溶液2kgを加え、オートクレーブ中、200℃、6時間攪拌して処理した。その後、オートクレーブから粘土を取り出し、水洗、乾燥をして、100〜200メッシュの篩を通した脱色剤A−2を得た。調製した脱色剤A−2の性状を表1に示す。
【0052】
[実施例3]
表1に示す活性白土(商品名:ガレオナイト、水澤化学工業株式会社製)を原料として、原料粘土1kgに対して25wt%のギ酸と5wt%のシュウ酸を含有する混合酸水溶液2kgを加え、オートクレーブ中、200℃、6時間攪拌して処理した。その後、オートクレーブから粘土を取り出して、水洗、乾燥、100〜200メッシュの篩を通した脱色剤A−3を得た。調製した脱色剤A−3の性状を表1に示す。
【0053】
[実施例4]
表1に示す無定形シリカ・アルミナ(商品名N633L、日揮化学株式会社製)を原料として用い、原料シリカ・アルミナ0.5kgに対して、60wt%のギ酸1.5kgを加え、オートクレーブ中、300℃、6時間攪拌して処理した。その後、オートクレーブから粘土を取り出し、水洗、乾燥をして、100〜200メッシュの篩を通した脱色剤A−4を得た。調製した脱色剤A−4の性状を表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
[実施例6]
実施例5と同様に方法で、マグネシウムイオン含有水溶液100mlを得た。次に、100〜150メッシュの篩を通した粉末活性アルミナ(ユニオン昭和株式会社製、純度95%、比表面積350m2/g)を、前記のマグネシウムイオン含有水溶液100mlに含浸した後、120℃で一晩乾燥し、さらに500℃で3時間焼成することによって、約10wt%のMgOを担持した活性アルミナ脱酸剤B−2を得た。
【0056】
[実施例7]
合成無定形珪酸(水澤化学工業株式会社製、純度98%以上、平均粒径2.5〜4.0μm、比表面積250m2/g)100gを、硝酸カルシウム四水和物(純度98wt%)55gを溶解した水溶液100mlに含浸した後、120℃で一晩乾燥し、さらに500℃で3時間焼成することによって、約10wt%のCaOを担持した無定形珪酸脱酸剤B−3を得た。
【0057】
[実施例8]
脱色剤として実施例1で調整したA−1を用い、脱酸剤として実施例5で調製したB−1を用いて、表1に示す使用済天ぷら廃油の再生試験を行った。天ぷら廃油100gに2.5gの脱色剤を添加し、攪拌しながら110℃まで昇温し、同温度で20分間攪拌した後に、脱酸剤1.5gを添加し、30分間攪拌した。その後、回転数2,000rpmの遠心分離機により処理剤を分離除去して、再生油を得た。再生油の性状分析結果を表2に示す。
【0058】
[実施例9]
脱色剤として実施例1で調製したA−1を用い、脱酸剤として実施例5で調製したB−1を用いて、表1に示す使用済天ぷら廃油の再生試験を行った。天ぷら廃油100gに2.5gの脱色剤を添加し、攪拌しながら110℃まで昇温し、同温度で20分間攪拌した後、回転数2,000rpmの遠心分離機により処理剤を分離除去して、脱色処理油を得た。次に、脱色処理油に1.5gの脱酸剤を添加し、攪拌しながら110℃まで昇温し、同温度で30分間攪拌した後、2,000rpmの遠心分離機により脱酸剤を分離除去して、最終的に再生油を得た。再生油の性状分析結果を表2に示す。
【0059】
[実施例10]
脱色剤として実施例2で調整したA−2を用い、脱酸剤として実施例6で調製したB−2を用いて、表1に示す使用済天ぷら廃油の再生処理を行った。再生処理は、実施例1と同様に行った。再生油の性状分析結果を表2に示す。
【0060】
[実施例11]
脱色剤として実施例3で調整したA−3を用い、脱酸剤として実施例6で調製したB−2を用いて、表1に示す使用済天ぷら廃油の再生処理を行った。再生処理は、実施例1と同様に行った。再生油の性状分析結果を表2に示す。
【0061】
[実施例12]
脱色剤として実施例4で調整したA−4を用い、脱酸剤として実施例7で調製したB−3を用いて、表1に示す使用済天ぷら廃油の再生処理を行った。再生処理は、実施例1と同様に行った。再生油の性状分析結果を表2に示す。
【0062】
[実施例13]
脱色剤として実施例3で調整したA−3を用い、脱酸剤として実施例6で調製したB−2を用いて、表1に示す使用済天ぷら廃油の再生処理を行った。天ぷら廃油100gに2.5gの脱色剤を添加し、攪拌しながら110℃まで昇温し、同温度で20分間攪拌した後に、脱酸剤1.5gおよび0.25gの水を添加し、15分間攪拌した。その後、回転数2,000rpmの遠心分離機により処理剤を分離除去して、再生油を得た。再生油の性状分析結果を表2に示す。
【0063】
[比較例1]
脱色剤として実施例1の原料となるジオクタヘドラル型スメクタイト粘土鉱物を用い、脱酸剤として酸化マグネシウム(ナカライテスク製、純度98%)を用いて、表1に示す使用済天ぷら廃油の再生処理を行った。再生処理は、実施例1と同様に行った。再生油の性状分析結果を表2に示す。
【0064】
[比較例2]
脱色剤として実施例2の原料となる活性白土を用い、脱酸剤として酸化マグネシウム(純度98%、ナカライテスク製)を用いて、表1に示す使用済天ぷら廃油の再生処理を行った。再生処理は、実施例1と同様に行った。再生油の性状分析結果を表2に示す。
【0065】
[比較例3]
脱色剤として実施例4の原料となる無定形シリカ・アルミナを用い、脱酸剤として酸化カルシウム(ナカライテスク製、EP級)を用いて、表1に示す使用済天ぷら廃油の再生処理を行った。再生処理は、実施例1と同様に行った。再生油の性状分析結果を表2に示す。
【0066】
【表2】

【0067】
表2から明らかなとおり、本発明の実施例は、脱色を主目的とする処理剤Aによる処理を行った後に、脱酸を主目的とする処理剤Bを添加して処理することにより、従来処理と比べて、脱色効果、脱酸効果及び他の不純物の除去効果ともに一段と向上したことが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の使用済食用油脂の再生処理方法の第1実施形態を説明するための再生処理工程ブロック図である。
【図2】本発明の使用済食用油脂の再生処理方法の第2実施形態を説明するための再生処理工程ブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済食用油脂から、それに含まれる遊離脂肪酸、着色物質、過酸化物、微量金属、臭気物質を含む不純物を除去し、不純物含有量を食用可能なレベルまで低減する使用済食用油脂の再生処理方法であって、
50〜180℃まで加熱された使用済食用油脂を、少なくとも着色物質を選択的に吸着できる処理剤A(但し処理剤Aは、酸化ケイ素(SiO2)と酸化アルミニウム(Al23)との合計含有量が乾燥ベースで90wt%以上、Al/Si原子比が0〜0.3である天然粘土、物理化学的処理された天然粘土及び人工合成粘土から選ばれる少なくとも一つの粘土を、クエン酸、酢酸、酒石酸、ギ酸及び蓚酸からなる群から選ばれる少なくとも1種類の有機酸で処理して得られる、150〜600m2/gのBET比表面積、0.6mmol/g(−5.6≦Ho≦+3.3)以上の表面固体酸量を有する処理剤。)と一定時間接触させ、
少なくとも遊離脂肪酸を選択的に吸着するか遊離脂肪酸と反応させ、
遊離脂肪酸を油脂に難溶の化合物に変換する処理剤B(但し処理剤Bは、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化マグネシウム及び水酸化カルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種類の化合物を、50〜600m2/gの比表面積を有する平均粒子径2〜400μmの無機多孔質体微粒子に担持した処理剤。)と一定時間接触させた後、
前記処理剤Aと処理剤B、並びに処理剤A及び/又は処理剤Bとの反応生成物を分離除去することを特徴とする使用済食用油脂の再生処理方法。
【請求項2】
使用済食用油脂から、それに含まれる遊離脂肪酸、着色物質、過酸化物、微量金属、臭気物質を含む不純物を除去し、不純物含有量を食用可能なレベルまで低減する使用済食用油脂の再生処理方法であって、
50〜180℃まで加熱された使用済食用油脂を、少なくとも着色物質を選択的に吸着できる処理剤A(但し処理剤Aは、酸化ケイ素(SiO2)と酸化アルミニウム(Al23)との合計含有量が乾燥ベースで90wt%以上、Al/Si原子比が0〜0.3である天然粘土、物理化学的処理された天然粘土及び人工合成粘土から選ばれる少なくとも一つの粘土を、クエン酸、酢酸、酒石酸、ギ酸及び蓚酸からなる群から選ばれる少なくとも1種類の有機酸で処理して得られる、150〜600m2/gのBET比表面積、0.6mmol/g(−5.6≦Ho≦+3.3)以上の表面固体酸量を有する処理剤。)と一定時間接触させ後、前記処理剤Aを分離除去し、処理剤Aで処理された油脂を得る第1段処理と、
50〜180℃まで加熱された前記処理剤Aで処理された油脂を、少なくとも遊離脂肪酸を選択的に吸着するか遊離脂肪酸と反応させ、遊離脂肪酸を油脂に難溶の化合物に変換する処理剤B(但し処理剤Bは、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化マグネシウム及び水酸化カルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種類の化合物を、50〜600m2/gの比表面積を有する平均粒子径2〜400μmの無機多孔質体微粒子に担持した処理剤。)と一定時間接触した後、前記処理剤B、並びに処理剤Bとの反応生成物を分離除去し、最終的に再生処理油を得る第2段処理を含むことを特徴とする使用済食用油脂の再生処理方法。
【請求項3】
前記処理剤Bによる使用済食用油脂の再生処理工程において、使用済食用油脂に処理剤を添加すると同時に、使用済食用油脂中の水分含有量が0.01〜0.6%になるように水を添加する請求項1又は2に記載の使用済食用油脂の再生処理方法。
【請求項4】
前記処理剤Aは、平均粒子径2〜400μmの範囲の微粒子である請求項1〜3のいずれかに記載の使用済食用油脂の再生処理方法。
【請求項5】
前記処理剤A又は処理剤Bにより処理された使用済食用油脂に、300〜10,000Gの遠心力をかけて、使用済食用油脂に含まれる処理剤、及び処理剤との反応生成物等を強制的に沈降分離し、除去する請求項1〜4のいずれかに記載の使用済食用油脂の再生処理方法。
【請求項6】
前記処理剤A又は処理剤Bにより処理された使用済食用油脂をフィルターを用いて使用済食用油脂に含まれる処理剤、及び処理剤との反応生成物等を自然濾過、吸引濾過、加圧濾過、及び遠心濾過から選ばれる少なくとも一つの濾過手段で除去する請求項1〜5のいずれかに記載の使用済食用油脂の再生処理方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の使用済食用油脂の再生処理方法に使用するための前記処理剤Aであって、
酸化ケイ素(SiO2)と酸化アルミニウム(Al23)との合計含有量が乾燥ベースで90wt%以上、Al/Si原子比が0〜0.3である天然粘土、物理化学的処理された天然粘土及び人工合成粘土から選ばれる少なくとも一つの粘土を、クエン酸、酢酸、酒石酸、ギ酸及び蓚酸からなる群から選ばれる少なくとも1種類の有機酸で処理して得られる、150〜600m2/gのBET比表面積、0.6mmol/g(−5.6≦Ho≦+3.3)以上の表面固体酸量を有することを特徴とする使用済食用油脂の再生処理剤。
【請求項8】
前記有機酸が10〜97wt%のギ酸であり、100〜350℃の温度で処理する請求項7に記載の使用済食用油脂の再生処理剤。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれかに記載の使用済食用油脂の再生処理方法に使用するための前記処理剤Bであって、
酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化マグネシウム及び水酸化カルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種類の化合物を、50〜600m2/gの比表面積を有する平均粒子径2〜400μmの無機多孔質体微粒子に担持したことを特徴とする使用済食用油脂の再生処理剤。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−241245(P2006−241245A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−56254(P2005−56254)
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【出願人】(505404530)株式会社ダイキアクシス (9)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】