説明

侵入検出装置,ロボット、侵入検出方法および侵入検出プログラム

【課題】特定領域への侵入を確実に検出する。
【解決手段】侵入を検出する境界の両側に近接して配置された光マークの対と,前記光マークの対の一方を光らせるとき他方は光らせず,光らせる前記光マークを時刻によって異ならせる点滅制御部と,前記光マークの対の光を受光し受光量に応じた信号を出力する光センサーと,前記光センサーの前記出力に基づいて侵入を検出する検出部と,を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,侵入検出装置,ロボット、侵入検出方法および侵入検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来,危険領域への人間の侵入や私有地への不審者の侵入をカメラを利用して検出する技術が知られている。例えば特許文献1には,所定の境界線に沿って配置された光源や反射鏡からカメラまでの光路が遮断されたかどうかをカメラの出力に基づいて判定することによって,境界線を越えて人間が危険領域に侵入したことを検出する技術が開示されている。また特許文献2には,複数の光源の発光パターンのそれぞれに情報を持たせることによって,どの光源からカメラまでの光路に侵入者がいるかを特定する技術が開示されている。これらの技術では,光源が点灯するパターンと,光センサーによって検出される特定領域の輝度のパターンとが一致しない場合に,侵入があったと判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−271713号公報
【特許文献2】特開2010−15258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし,従来の技術によると光源が消灯しているタイミングにおいては当該光源からカメラまでの光路を横切る侵入を検出することができない。一方,光源を常時点灯する場合には,光路にダミー光源を設置しながら侵入することが容易になるため,光源を常時点灯することは望ましくない。
【0005】
本発明は特定領域への侵入を確実に検出することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記目的を達成するための侵入検出装置は,侵入を検出する境界の両側に近接して配置された光マークの対と,前記光マークの対の一方を光らせるとき他方は光らせず,光らせる前記光マークを時刻によって異ならせる点滅制御部と,前記光マークの対の光を受光し受光量に応じた信号を出力する光センサーと,前記光センサーの前記出力に基づいて侵入を検出する検出部と,を備える。
【0007】
本発明によると,個々の光マークは時刻によって光ったり光らなかったりする。したがって,ダミー光源を備える遮蔽物等で侵入検出装置を欺いて侵入することが困難になる。そして,境界の両側に近接して配置された光マークの対の一方が光っていない時刻であっても他方が光っているため,境界を横切る侵入があると,光マークの対のいずれか一方から光センサーまでの光路が必ず遮断される。したがって,本発明によると,境界を越えた特定領域への侵入を確実に検出することができる。なお,本明細書において光マークとは,光を放射または反射し,光源の点灯と消灯や,光路の遮断と開放や,反射板の反射率を変化させること等によって,放射又は反射する光量を制御可能な構成要素である。
【0008】
(2)上記目的を達成するための侵入検出装置において,前記検出部は、前記光センサーの出力が予め決められた規則性を持たない場合に侵入を検出しても良い。
この構成を採用する場合、点滅制御部が個々の光マークを点灯させているか消灯させているかを特定できる情報を検出部に伝送しなくとも検出部が侵入を検出できる。したがって、その情報を検出部に伝送するための構成要素が不要となり、構成が簡素化される。
【0009】
(3)上記目的を達成するための侵入検出装置において,前記検出部は,任意の時刻において前記光マークの対の両方が光っていないことを前記光センサーの出力が示している場合に侵入を検出してもよい。
この構成を採用する場合,受光パターンと発光パターンを比較すること無く,光マークの対毎に侵入を検出することができるため,簡素な構成で侵入を検出することができる。
【0010】
(4)上記目的を達成するための侵入検出装置において,前記光マークの対は前記境界に沿って複数配列され,前記点滅制御部は、任意の時刻において,前記境界に沿う方向に配列されている前記光マークに光る前記光マークと光らない前記光マークが含まれるように前記光マークを制御してもよい。
この構成を採用する場合,侵入を検出可能な境界を長くすることができる。また,境界に沿った光マークの一列が同時に光る場合に比べると,ダミー光源を備える遮蔽物等で侵入検出装置を欺いて侵入することが困難になる。
【0011】
(5)上記目的を達成するための侵入検出装置において,それぞれの前記光マークの時系列の発光パターンは情報を有し,前記検出部は前記光センサーの出力に基づいて前記情報を得てもよい。
この構成を採用する場合,光センサーの出力に基づいて侵入を検出する検出部に,光マーク毎に情報を伝達することが可能になる。ここで情報とは、発信側から、光を媒体として受信側に伝達される一定の意味を持つ実質的な内容のことである。例えば,個々の光マークを特定可能な識別情報を時系列の発光パターンとして伝送する場合,光マークと光センサーとの対応関係が固定されていなくとも,光センサーの出力に基づいて特定の光マークの受光パターンを特定することが可能になり,その結果,境界のどの位置で侵入が発生したかを特定することも可能になる。
【0012】
(6)上記目的を達成するための侵入検出装置において,任意の時刻において,前記光マークの発光パターンは情報を有し,前記検出部は前記光センサーの出力に基づいて前記情報を得てもよい。
この構成を採用する場合,光センサーの出力に基づいて侵入を検出する要素に,時刻毎に情報を伝達することが可能になる。例えば,時刻情報を空間的な発光パターンとして伝送する場合,侵入を検出する側において時計が備えられていなくとも,侵入時刻を特定することが可能になる。
【0013】
(7)上記目的を達成するためのロボットは,侵入を検出する境界の両側に近接して配置された光マークの対と,前記光マークの対の一方を光らせるとき他方は光らせず,光らせる前記光マークを時刻によって異ならせる点滅制御部と,前記光マークの対の光を受光し受光量に応じた信号を出力する光センサーと,前記光センサーの前記出力に基づいて侵入を検出する検出部と,前記侵入検出装置が侵入を検出した場合に所定の処理を起動する制御部と,を備える。
本発明によると,ロボットと協調して作業している人間に危険が及ばないように緊急停止したり,ワークの設置に合わせて加工を開始することが可能となる。
【0014】
尚,請求項に記載された動作の順序は,技術的な阻害要因がない限りにおいて記載順に限定されず,同時に実行されても良いし,記載順の逆順に実行されても良いし,連続した順序で実行されなくても良い。また,本発明は侵入検出方法としても,侵入検出プログラムとしても,そのプログラムを記録した記録媒体としても成立する。むろん,そのコンピュータープログラムの記録媒体は,磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし,今後開発されるいかなる記録媒体であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態にかかるブロック図。
【図2】本発明の実施形態にかかる模式図。
【図3】本発明の実施形態にかかる模式図。
【図4】本発明の実施形態にかかる模式図。
【図5】本発明の実施形態にかかる模式図。
【図6】本発明の実施形態にかかる模式図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下,本発明の実施の形態を添付図面を参照しながら実施例に基づいて説明する。尚,各図において対応する構成要素には同一の符号が付され,各実施例において重複する説明は省略される。
1.第一実施例
図1は本発明の第一実施例の全体構成を示している。本発明の第一実施例は,ロボット本体6と,人間9a,9bが予め決められた安全作業範囲と危険範囲の境界よりもロボット本体6側に侵入したときに侵入を検出するための侵入検出装置7とを備える産業用ロボットである。
【0017】
ロボット本体6は,ロボットコントローラー61と,ロボットコントローラー61によって制御される図示しないアクチュエーター,センサー,多関節アーム等を備える。ロボット本体6は,人間9a,9bと協調して作動するように構成されている。ロボット本体6と侵入検出装置7との制御系統は独立しており,ロボット本体6のロボットコントローラー61と侵入検出装置7の検出部5とが通信線によって接続されている。ロボットコントローラー61は,侵入検出装置7が侵入を検出した場合に,アクチュエーターを停止させる,アラーム音を発音する,警告灯を点灯する,などの所定の処理を起動する。ロボットコントローラー61の機能は,ロボット本体6の全体を制御するコンピューターと,それによって実行されるコンピュータープログラムとによって実現される。
【0018】
侵入検出装置7は,光マークとしてのLED(Light Emitting Diode)の対を複数備える光源部1と,LEDの発光を制御する点滅制御部2と,タイミングコントローラー3と,光源部1が視野内に収まるように設置されたデジタルカメラ4と,デジタルカメラ4の出力に基づいて侵入を検出する検出部5とを備えている。
【0019】
光源部1は人間9a,9bの安全作業範囲と危険範囲の境界に沿って設置されている。光源部1は,LED11a,12a,13a,14a,15a,16a,17a,18a,19a,11b,12b,13b,14b,15b,16b,17b,18b,19bと,これらのLEDを駆動する図示しない駆動回路とを備えている。この駆動回路には,点滅制御部2によって生成される駆動信号と,タイミングコントローラー3によって生成されるタイミング信号とが印加される。タイミング信号が駆動回路に印加されるタイミングにおいて駆動回路によって駆動信号が増幅されてLED11a,12a,13a,14a,15a,16a,17a,18a,19a,11b,12b,13b,14b,15b,16b,17b,18b,19bに印加される。LED11a,12a,13a,14a,15a,16a,17a,18a,19aは,図1に示すように安全作業領域と危険領域の境界に沿って1列に並ぶ群である。ここで,この1列のLED群を第一群aというものとする。そして第一群aに対して境界を挟んで向かい合うLED11b,12b,13b,14b,15b,16b,17b,18b,19bを第二群bというものとする。第一群aに属する1つのLEDと,そのLEDと境界を挟んで向かい合う第二群bに属する1つのLEDとは,点滅制御部2の制御対象として対をなしている。例えばLED11aとLED11b,LED12aとLED12bは,それぞれ対をなしている。そこでLED11aとLED11bの対を対11,LED12aとLED12bとを対12というものとする。任意の一対は、境界の両側に近接して配置され、境界の両側に配置された一対のそれぞれの中心を結ぶ線が境界に対して直交している。
【0020】
デジタルカメラ4は,光センサーとして図示しないエリアイメージセンサーを備えている。エリアイメージセンサーはCCDイメージセンサー,CMOSイメージセンサー等によって構成され,図示しないレンズによって結像される全てのLED11a,12a,13a,14a,15a,16a,17a,18a,19a,11b,12b,13b,14b,15b,16b,17b,18b,19bを撮像可能である。デジタルカメラ4における各フレームの撮像タイミングはタイミングコントローラー3が生成するタイミング信号によって制御される。具体的には,デジタルカメラ4が各フレームの画像データを生成するためにイメージセンサーの光電変換素子に電荷を蓄積する期間においてLED11a,12a,13a,14a,15a,16a,17a,18a,19a,11b,12b,13b,14b,15b,16b,17b,18b,19bの発光パターンが変化しないように,デジタルカメラ4と光源部1とが共通のタイミング信号によって制御される。
点滅制御部2と検出部5の機能は,侵入検出装置7の全体を制御するコンピューターと,それによって実行されるコンピュータープログラムとによって実現される。
【0021】
図2は,デジタルカメラ4の出力に基づいて侵入を検出する方法を説明するための模式図であって,デジタルカメラ4から出力される画像データの局所領域の像を示している。図2において白円は点灯しているLEDの像を示し,黒円(ハッチングを付した円)は消灯しているLEDの像を示している。また図2において数字とアルファベットは画素の位置を示す符号である。
【0022】
デジタルカメラ4と光源部1との位置関係が固定されている場合,LED11a,12a,13a,14a,15a,16a,17a,18a,19a,11b,12b,13b,14b,15b,16b,17b,18b,19bの像は画像データの予め決められた領域に記録される。したがって検出部5は,LED11a,12a,13a,14a,15a,16a,17a,18a,19a,11b,12b,13b,14b,15b,16b,17b,18b,19bの像に対応する各領域の輝度値を閾値と比較することによって,対応するLEDが点灯しているか消灯しているかを判定すればよい。具体的には例えば,画素1A,1B,2A,2Bに点灯しているLED11aが対応し,画素1D,1E,2D,2Eに消灯しているLED11bが対応しているとする。この場合,画素1A,1B,2A,2Bの輝度値の合計は画素1D,1E,2D,2Eの輝度値の合計よりも高くなる。したがって,画素1A,1B,2A,2Bの輝度値の合計が予め決められた閾値よりも大きい場合には,LED11aが点灯していると判定し,逆の場合にはLED11aが消灯していると判定する。
【0023】
ところで後に詳しく述べるように,LEDの各対11〜19は一方が点灯している場合には必ず他方が消灯しているように制御される。したがって,LEDの各対11〜19からデジタルカメラ4までの光路に異物が存在しない場合には,LEDの各対11〜19において点灯状態を判定すると,結果は常に,一方は真(点灯)となり,他方は偽(消灯)となる規則性がある。そこで,LEDの対11〜19における点灯状態の判定において,一方が真で他方が偽とならない結果が得られた場合に,検出部5は異常を検出する。具体的には例えば,LEDの各対11〜19からデジタルカメラ4までの光路に異物が存在し,図3に示すように異物に対応する像Sが画像データに記録されたとする。そして画素4A,4B,5A,5Bが消灯しているLED12aに対応し,画素4D,4E,5D,5Eが点灯しているLED12bに対応しているとする。この場合,画素4D,4E,5D,5Eの輝度値合計は閾値を下回ることになり,LED12bの点灯状態の判定結果は偽(消灯)となる。一方,画素4A,4B,5A,5Bに対応するLED12aは消灯しているため,LED12aの点灯状態の判定結果も偽(消灯)となる。すなわち,LEDの対12の点灯状態の判定結果は両方とも偽(消灯)となり,その結果,検出部5は侵入有りと判定する。
【0024】
ここで各LEDの点灯状態の判定結果を,真の場合は1,偽の場合は0とし,LEDの各対についてこれらの判定結果の和を求め,その和を各対についての判定結果とする。この場合,LEDの各対の判定結果は,2(両方点灯),1(一方のみ点灯),0(両方消灯)のいずれかとなる。したがって,LEDの各対の判定結果を侵入検出装置の出力とすればよい。具体的には,LEDの各対の判定結果が2の場合には光源部1の異常として扱い,LEDの各対の判定結果が0の場合には侵入有りとして扱えばよい。このようにLEDの点灯状態の判定結果を対毎に扱うことにより,光源部1の発光パターンと無関係に侵入を検出することができる。すなわち,検出部5は,任意の時刻においてLEDの対の両方が光っていないことをデジタルカメラ4の出力が示している場合に侵入を検出することにより,光源部1の発光パターンと無関係に侵入を検出することができる。したがって、侵入検出装置7の構成を簡素化することができる。また、任意の時刻において特定のLEDの対の両方が光っていないことをデジタルカメラ4の出力が示している場合には、当該特定のLEDの対からデジタルカメラ4までの光路において侵入があったことを特定可能である。すなわち本実施例においては、境界のどの位置において侵入が発生したかを特定することができる。
【0025】
図4は点滅制御部2によって制御されるLED11a,12a,13a,14a,15a,16a,17a,18a,19aの発光パターンを示す模式図である。図4において,tは時間軸を示している。また図1に示すように安全作業領域と危険領域の境界と平行に定めたx軸を図4にも示している。また図4において白円は点灯を示し,黒円は消灯を示している。点滅制御部2および光源部1の駆動回路は,LEDの各対11〜19において,対の一方を点灯させるとき,対の他方を消灯させる。LEDの対の一方が光っていない時刻であっても他方が光っているため,境界への侵入があると,LEDの対のいずれか一方からデジタルカメラ4までの光路が必ず遮断される。したがって,境界を越えた危険領域への侵入を確実に検出することができる。図4においては,第一群aのみについて発光パターンが示されているが,第二群bについては図4に示す発光パターンを逆転させたものであるため省略している。
【0026】
まず任意の時刻におけるLEDの発光パターンについて説明する。例えば時刻t1においては,LED11a,13a,16a,18aが点灯し,LED12a,14a,15a,17a,19aが消灯する。このように任意のタイミングにおいて,安全作業領域と危険領域の境界に沿うx軸方向に配列されている第一群aに,光るLED11a,13a,16a,18aと光らないLED12a,14a,15a,17a,19aの両方を含めることが好ましい。なお,第一群aの発光パターンと第二群bの発光パターンとはLEDの各対において逆転しているため,光るLEDと光らないLEDが第一群aに含まれていれば,第二群bにも光るLEDと光らないLEDが含まれることはいうまでもない。このように,安全作業領域と危険領域の境界に沿うx軸方向に配列されているLED群に光るLEDと光らないLEDが含まれていれば,任意の時刻における不感帯を小さくすることができる。例えば時刻t1においてLED12a,14a,15a,17a,19aからデジタルカメラ4までの光路にのみ異物が侵入しても,これらのLEDが消灯しているためにその異物の侵入を検出することはできないが,同じ第一群aに属しこれらの消灯しているLEDに隣接しているLED11a,13a,16a,18aが点灯しているため,その異物を検出できる可能性は高い。さらに,時刻t1において消灯しているLED12a,14a,15a,17a,19aと対をなすLED12b,14b,15b,17b,19bも点灯しているため,その異物を検出できる可能性は高い。もちろん,安全作業領域と危険領域の境界に沿うx軸方向に配列されている第一群aの全てが点灯している場合には,第一群aとデジタルカメラ4までの光路に不感帯がないことになる。しかし,第一群aの全てが点灯している場合には,第二群bからデジタルカメラ4までの光路がすべて不感帯となるため,やはり,x軸方向に配列されているLED群に光るLEDと光らないLEDを含めた方が不感帯を狭めることができるのである。
【0027】
次に任意のLEDの時系列の発光パターンについて説明する。例えばLED11aは,時刻t1,t3,t5,t8,t9,t11において点灯し,時刻t2,t4,t6,t7,t10において消灯する。このように任意のLEDを時刻によって点灯したり消灯したりすることにより,時間軸上の不感帯を短くすることができる。例えば時刻t2においてLED11aからデジタルカメラ4までの光路にのみ異物が侵入しても,LED11aが消灯しているためにその異物を検出することはできないが,時刻t2の直前と直後の時刻t1,t3においてはLED11aが点灯するため,その異物を検出できる可能性は高い。もちろん,LED11aを常時点灯させる場合には,LED11aからデジタルカメラ4までの光路に不感帯はないことになる。しかし,LED11aを常時点灯させる場合には,LED11aと対をなすLED11bからデジタルカメラ4までの光路が常時不感帯となり,やはり,任意のLEDを時刻によって点灯したり消灯したりすることにより,時間的な不感帯を短くすることができる。
【0028】
このように安全作業領域と危険領域の境界に沿うx軸方向に配列されているLED群に光るLEDと光らないLEDを混在させ,任意のLEDを時刻によって点灯したり消灯したりすることによって,不感帯を狭く短くすることができる。そしてまた,このようにLEDの発光パターンを時間的にも空間的にも変化させることによって,意図的な侵入を防止することもできる。例えば,LEDの発光パターンが時間的に変化しないとすれば,空間的な発光パターンを模した遮蔽物を光源部1とデジタルカメラ4の間に設置することによって,侵入検出装置7に検出されることなく遮蔽物と光源部1との間から危険領域に侵入することが可能になる。また例えば,LEDの発光パターンが空間的に変化しないとすれば,時間的な発光パターンを模した遮蔽物を光源部1とデジタルカメラ4の間に設置することによって,侵入検出装置7に検出されることなく遮蔽物と光源部1との間から危険領域に侵入することが可能になる。しかし,LEDの発光パターンが時間的にも空間的にも変化している場合には,LEDの発光パターンを模することが極めて困難となって,意図的な侵入は実質的に不可能になる。
【0029】
2.第二実施例
本発明の第二実施例では,光源部1の発光パターンに対応する受光パターンから検出部5が時刻や位置の情報を取得する形態を説明する。先に説明した第一実施例において個々のLED11a,12a,13a,14a,15a,16a,17a,18a,19a,11b,12b,13b,14b,15b,16b,17b,18b,19bの時系列の受光パターンは,点灯または消灯の時系列信号として検出部5によって取得される。そこで本実施例では,検出部5によって取得される点灯または消灯の時系列信号から時刻情報と個々のLEDの識別情報を得られるように,発光パターン5を生成する。
【0030】
具体的には例えば,LED11aの時系列の受光パターンから取得される点灯又は消灯の時系列信号がLED11aを他のLEDから識別可能な識別情報を構成するように発光パターンを生成する。LED11aの図4に示す時刻t1からt8までの発光パターンを点灯(1)と消灯(0)の時系列信号として表すと,10101001となる。またLED12aの図4に示す時刻t1からt8までの発光パターンを点灯(1)と消灯(0)の時系列信号として表すと,00010100となる。
【0031】
そこで10101001がLED11aを示し,00010100がLED12aを示すことを検出部5に予め記憶させておく。すると,検出部5がデジタルカメラ4から取得する画像データの任意の局所領域の輝度値から得る点灯(1)と消灯(0)の時系列信号が10101001を示す場合には,その局所領域がLED11aに対応していると特定することが可能になる。また,画像データの任意の局所領域の輝度値から得る点灯(1)と消灯(0)の時系列信号が0010100を示す場合には,その局所領域がLED11bに対応していると特定することが可能になる。このように個々のLEDの発光パターンにLEDの識別情報を持たせることによって,デジタルカメラ4から取得する画像データの局所領域と個々のLEDとの対応関係を検出部5において特定可能になる。デジタルカメラ4から取得する画像データの局所領域と個々のLEDとの対応関係を検出部5において特定可能である場合には,デジタルカメラ4と光源部1との位置関係に応じて,個々のLEDの点灯状態を検出するために輝度値を取得する局所領域を設定することが可能となる。その結果,デジタルカメラ4と光源部1との位置関係をある程度自由に設定することができる。
【0032】
また例えば,全てのLED11a,12a,13a,14a,15a,16a,17a,18a,19a,11b,12b,13b,14b,15b,16b,17b,18b,19bのある特定の時刻の空間的な発光パターンにその時刻を特定可能な時刻情報を持たせることができる。例えば,図4に示すLEDの第一群aの時刻t9における発光パターンを点灯(1)と消灯(0)の信号として左から順に表すと,101001010となる。そこで空間的な発光パターンの時刻へのデコード規則を検出部5に予め記憶しておくことにより,デジタルカメラ4から取得する画像データの任意のフレームと時刻との対応関係を検出部5において特定可能になる。これにより検出部5は,時刻とともに侵入の有無を検出可能となる。
【0033】
そこで点滅制御部2は,例えば図5に示すように,全てのLEDの発光パターンの周期を9とし,1周期毎に時刻情報としての発光パターン(時刻情報パターン)を1回挿入し,1周期毎に個々のLEDの識別情報としての発光パターン(LEDの識別情報パターン)を8回挿入しながら,LEDの駆動信号を生成する。この場合,時刻情報としての発光パターンが,識別情報としての発光パターンの始点を特定可能な同期信号としての機能も持ち得ることになる。もちろん,全てのLEDを点灯させるような特殊な発光パターン(リセットパターン)をセットアップのためのリセット信号あるいは同期信号として挿入するといったことも可能である。
【0034】
3.第三実施例
本発明の第三実施例では,LEDの対毎に両方が消灯と判定された場合に侵入を検出するのではなく,境界線に沿って配列されたLEDの群毎に受光パターンが発光パターンの規則性に合致していない場合に侵入を検出する例について説明する。すなわち本実施例では,群毎にLEDの発光パターンに規則性があり,同一群に属するLEDからの受光パターンに対応するデジタルカメラ4の出力がその規則性を持っていない場合に,侵入を検出する。
【0035】
点滅制御部2によって生成される駆動信号は,LEDを点灯または消灯する信号であるから,二値の信号である。したがって9個のLEDからなる第一群aを駆動するための駆動信号は,9ビット幅のデジタルデータである。またデジタルカメラ4が出力する画像データの局所領域の輝度値に基づいて検出部5が取得するデータは,LEDが点灯しているか消灯しているかを局所領域毎に示すデータであるから,これもまた9ビット幅のデジタルデータである。したがって,原理的にはLEDの第一群aをある瞬間に駆動するための9ビットのデジタルデータと,LEDの第一群aの画像データから検出部5が得る9ビットのデジタルデータとが一致していれば,点灯しているLEDからデジタルカメラ4までの光路に異物がないことになり,不一致であれば,そこに異物があることになる。最も単純な方法として,点滅制御部2がLEDの第一群aを駆動するために生成する9ビットのデジタルデータをそのまま検出部5に直接取得させ,検出部5において,点滅制御部2から直接取得したデジタルデータと,デジタルカメラ4が出力した画像データの局所領域の輝度値に基づいて取得する受光パターンを示すデジタルデータとを比較すればよい。
【0036】
また別の方法としては,次に説明するように,9個のLEDからなる第一群aを駆動するための9ビットのデジタルデータのうち1ビット以上を残りのビットの誤り検出符号として用いる方法がある。例えば,点滅制御部2では,8ビットの乱数と,その乱数から生成されるパリティビットとを組み合わせて9ビットの駆動信号を生成する。一方,検出部5では,9個のLEDに対応する局所領域の輝度値に基づいて局所領域毎に点灯または消灯を示す9ビットのデジタルデータを生成するとともに,生成した9ビットの奇遇性と予め決められている駆動信号の奇遇性とを比較する。これらの奇遇性が一致していなければ,侵入有りとして扱えばよい。チェックサムや巡回冗長検査(CRC)など,信頼性が高い誤り検出符号を採用しても良い。このように誤り訂正符号を用いる場合には,LEDの発光パターンを点滅制御部2から検出部5に通知する必要が無くなる。
【0037】
4.他の実施形態
以上,本発明の実施形態を実施例に基づいて説明したが,本発明の技術的範囲は上述した実施例に限定されるものではなく,上述した実施例に種々の変更や追加した形態で本発明は実施し得る。
【0038】
例えば,図6Aおよび図6Bに示すようにデジタルカメラ4の受光面と光源部1の発光面を鉛直方向に対向させてもよいし,図6Cに示すようにデジタルカメラ4の受光面と光源部1の発光面を水平方向に対向させてもよい。また例えば図6Dに示すようにロボット本体6の危険領域の境界が曲線を構成している場合には,光源部1の発光面においてLED等の光マークをその曲線に沿って配置しても良い。
【0039】
また,点滅制御部2と検出部5の同期がそれぞれのハードウェアによって担保されている場合には,タイミングコントローラー3を省略しても良い。また,タイミングコントローラー3をRTOS(Real Time Operating System)のタスク間同期通信機構で代替してもよい。
【0040】
また,タイミングコントローラー3を省略するとともに,光源部1と点滅制御部2とを一体とし,デジタルカメラ4と検出部5とを別の二体として構成しても良い。この場合,これらの独立した二体の機能要素を接続してもよいし,点滅制御部2と検出部5の同期を担保できる場合には,接続しなくとも良い。
【0041】
光マークとしては,LEDの他,蛍光管,電球,レーザー等の光源を用いても良いし,光源から光センサーまでの光路を遮蔽したり開放したりするシャッターと光源とを組み合わせたユニットを光マークとして用いても良い。
【0042】
また,光マークの状態を検出するために用いられる光センサーとしては,エリアイメージセンサーやリニアイメージセンサー等の空間分解能を有する光センサーを用いても良いし,フォトダイオードのように空間分解能を持たない光センサーを用いても良い。フォトダイオードのように空間分解能を持たない光センサーを用いる場合であっても,レーザー等の指向性のある光マークと光センサーとを一対一に組み合わせて複数組を用いれば,ある程度広い境界面において侵入を検出することができる。また,産業用ロボットの一部を構成するチャンバーのような暗室に異物やワークを検出すべき境界がある場合には,フォトダイオードのように空間分解能を持たない光センサーと指向性のない光マークとを組み合わせて用いることもできる。例えば,2個のLEDを1対の光マークとして用い,1つのフォトダイオードを光センサーとして用いる場合であっても,光センサーの出力レベルによって2つのLEDが両方点灯しているか,片方のみ点灯しているか,両方消灯しているかを特定できるため,本発明は成立する。
【符号の説明】
【0043】
1…光源部,2…点滅制御部,3…タイミングコントローラー,4…デジタルカメラ,5…検出部,6…ロボット本体,7…侵入検出装置,9,9a,9b…人間,11a,12a,13a,14a,15a,16a,17a,18a,19a,11b,12b,13b,14b,15b,16b,17b,18b,19b…LED,61…ロボットコントローラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
侵入を検出する境界の両側に近接して配置された光マークの対と,
前記光マークの対の一方を光らせるとき他方は光らせず,光らせる前記光マークを時刻によって異ならせる点滅制御部と,
前記光マークの対の光を受光し受光量に応じた信号を出力する光センサーと,
前記光センサーの前記出力に基づいて侵入を検出する検出部と,
を備える侵入検出装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記光センサーの出力が予め決められた規則性を持たない場合に侵入を検出する、
請求項1に記載の侵入検出装置。
【請求項3】
前記検出部は,任意の時刻において前記光マークの対の両方が光っていないことを前記光センサーの出力が示している場合に侵入を検出する,
請求項2に記載の侵入検出装置。
【請求項4】
前記光マークの対は前記境界に沿って複数配列され,
前記点滅制御部は、任意の時刻において,前記境界に沿う方向に配列されている前記光マークに光る前記光マークと光らない前記光マークが含まれるように前記光マークを制御する,
請求項1から3のいずれか一項に記載の侵入検出装置。
【請求項5】
それぞれの前記光マークの時系列の発光パターンは情報を有し,
前記検出部は前記光センサーの出力に基づいて前記情報を得る,
請求項4に記載の侵入検出装置。
【請求項6】
任意の時刻において,前記光マークの発光パターンは情報を有し,
前記検出部は前記光センサーの出力に基づいて前記情報を得る,
請求項4に記載の侵入検出装置。
【請求項7】
侵入を検出する境界の両側に近接して配置された光マークの対と,
前記光マークの対の一方を光らせるとき他方は光らせず,光らせる前記光マークを時刻によって異ならせる点滅制御部と,
前記光マークの対の光を受光し受光量に応じた信号を出力する光センサーと,
前記光センサーの前記出力に基づいて侵入を検出する検出部と,
前記侵入検出装置が侵入を検出した場合に所定の処理を起動する制御部と,
を備えるロボット。
【請求項8】
前記検出部は,任意の時刻において前記光マークの対の両方が光っていないことを前記光センサーの出力が示している場合に侵入を検出する,
請求項7に記載のロボット。
【請求項9】
前記光マークの対は前記境界に沿って複数配列され,
前記点滅制御部は、任意の時刻において,前記境界に沿う方向に配列されている前記光マークに光る前記光マークと光らない前記光マークが含まれるように前記光マークを制御する,
請求項7または8に記載のロボット。
【請求項10】
それぞれの前記光マークの時系列の発光パターンは情報を有し,
前記検出部は前記光センサーの出力に基づいて前記情報を得る,
請求項9に記載のロボット。
【請求項11】
任意の時刻において,前記光マークの発光パターンは情報を有し,
前記検出部は前記光センサーの出力に基づいて前記情報を得る,
請求項9に記載のロボット。
【請求項12】
前記検出部は、前記光センサーの出力と予め決められたデコード規則とに基づいて有意な情報を得られない場合に、侵入を検出する、
請求項10または11に記載の侵入検出装置。
【請求項13】
侵入を検出する境界の両側に近接して配置された光マークの対の一方を光らせるとき他方は光らせず,
光らせる前記光マークを時刻によって異ならせ,
前記光マークの対の光を受光する光センサーの出力に基づいて侵入を検出する,
ことを含む侵入検出方法。
【請求項14】
侵入を検出する境界の両側に近接して配置された光マークの対の一方を光らせるとき他方は光らせず,光らせる前記光マークを時刻によって異ならせる点滅制御部と,
前記光マークの対の光を受光し受光量に応じた信号を出力する光センサーの前記出力に基づいて侵入を検出する検出部と,
してコンピューターを機能させる侵入検出プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−73563(P2013−73563A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214094(P2011−214094)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】