説明

便座・便蓋用自動開閉装置

【課題】 便座・便蓋自動開閉装置に設けたトルクリミッタに異常が生じたときに、簡単な作業で修理を行う。
【解決手段】 制御部等の機能部が内蔵されたケーシング2に対して便座・便蓋を開閉可能にする便座・便蓋自動開閉装置において、ケーシング2に設けられて、モータの回転を出力軸10に伝達する減速伝達機構を備えた駆動装置9と、便座3又は便蓋4に設けられ、回転軸11及びその回転軸11を便座・便蓋の開放方向に付勢するねじりばね12を有する第一伝達ユニット6と、駆動装置9及び第一伝達ユニット6に対して着脱自在に設けられ、駆動装置9の出力軸10の回転を第一伝達ユニット6の回転軸11に伝達するトルクリミッタ17を備えた第二伝達ユニット8、とから駆動装置9の出力を便座・便蓋に伝達する伝達機構を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洋式便器における便座又は便蓋用の自動開閉装置に係り、トルクリミッタ機構を有する自動開閉装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の、便座や便蓋、もしくはその両方を電動にて開閉する便座・便蓋の自動開閉装置は、正逆に回転する駆動モータと回転軸とが減速歯車列により連結され、駆動モータ及び減速歯車列がユニット化された駆動装置から回転軸が突き出す構成であり、便座・便蓋を使用者が開閉することにより発生する力が回転軸を介して減速歯車に伝達される構成である。そして、手動開閉により発生する過大な力が回転軸を介して減速歯車列に伝達されないように、前記回転軸と前記減速歯車列の最終段との間に摩擦方式によるトルクリミッタ機構を設けている。このトルクリミッタ機構は、駆動装置の回転軸の回転を便座・便蓋に伝達するが、便座・便蓋を所定以上の負荷で手動で開閉しようとすると前記回転軸と減速歯車列の間ですべりを生じさせて、減速歯車列に伝わる負荷を制限するものである。
ことにより、安定したトルクで作動する自動開閉装置を構成している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−102644号公報
【特許文献2】WO03/101269号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記トルクリミッタ機構は、駆動装置内の回転軸と減速歯車列の最終段との間に摩擦方式により構成されているため、年月と共に駆動装置の回転軸と減速歯車列のスリップ面が摩耗していき、ついには便座又は便蓋が開閉しなくなる事象が見受けられる。その場合、トルクリミッタ機構が駆動装置内に存在するため、トルクリミッタ機構に異常が生じ交換したい場合、ケーシングを開けてケーシング内から駆動装置を取り出し、駆動装置自体を交換する必要があり、手間が掛かり、また専門知識を持つ者でなければ作業は困難であった。
また、トルクリミッタ機構のみが故障して、トルクリミッタのみを交換したい場合でも、駆動装置自体そのものを交換しなければならず、廃棄となる部材が増加することとなっていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、請求項1の発明においては、制御部等の機能部が内蔵されたケーシングに対して便座・便蓋を開閉可能にする便座・便蓋自動開閉装置において、
前記ケーシングに設けられてなり、モータと出力軸と前記モータの回転を前記出力軸に伝達する減速伝達機構を備えた駆動装置と、
前記便座又は便蓋に設けられてなり、前記駆動装置の出力を前記便座・便蓋に伝達する伝達機構とで自動開閉装置を構成し、
前記伝達機構は、回転軸及び前記回転軸を前記便座又は便蓋の開放方向に付勢する付勢手段を有する第一伝達ユニットと、前記駆動装置及び第一伝達ユニットに対して着脱自在であり前記駆動装置の出力軸と前記第一伝達ユニットの回転軸の間で伝達されるトルクを制限するトルクリミッタを備えた第二伝達ユニット、とを備えたので、トルクリミッタを備えた第二伝達ユニットを、駆動装置と別体にすることができ、トルクリミッタが故障した場合、第二伝達ユニットのみを交換すればよく、廃棄となる部材を可及的に減少することができる。
【0006】
請求項2の発明においては、第一伝達ユニット及び第二伝達ユニットは、前記便座又は便蓋に内蔵することにより、機能部が内蔵されたケーシングから便座及び便蓋を着脱することで、第二伝達ユニットを着脱することができる。
【0007】
請求項3の発明においては、前記第一伝達ユニット及び第二伝達ユニットに、前記便座又は便蓋の回転角度を検出する角度検出手段を設けたので、便座又は便蓋の開閉状態の絶対位置が検出でき、自動開閉装置の回転角度や回転速度等の制御が容易となる。
【0008】
請求項4の発明においては、前記便座に暖房ヒータを内蔵し、前記角度検出手段からの制御信号線を前記便座への通電用の電気コードと共に束ねて、前記ケーシング内の制御部に接続したので、角度検出手段が便座又は便蓋内にあっても、自動開閉装置の回転角度や回転速度の情報を得ることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、トルクリミッタ機構が摩耗により故障した場合でも、ケーシングを開けてケーシング内から駆動装置を取り出す必要はなく、便座又は便蓋をケーシングより取り外し、第二伝達ユニットのみを交換、あるいは修理すればよい。こうすることで、ケーシングを開けて駆動装置を取り外す手間をかけなくて済むので、修理作業を楽に行え、且つ廃棄となる部材も可及的に減少することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下図面を参照して実施例について説明する。
図1は本発明の温水洗浄便座装置の斜視図である。図1において、便器本体(図示せず)の背部側のリム上面を利用して温水洗浄便座装置1のケーシング2を固定し、このケーシング2には便座3及び便蓋4を夫々開閉自在に取付けている。
便座3の基端部には、第一伝達ユニット5、6及び第二伝達ユニット7、8を収納する挿入部3a、3bを設けている。
挿入部3aには、便座3を開放側へ付勢する座用第一伝達ユニット5、及びトルクリミッタ機構を備えた第二伝達ユニット7が挿入される。また、挿入部3bには、便蓋4を開放側へ付勢する蓋用第一伝達ユニット6、及びトルクリミッタ機構を備えた第二伝達ユニット8が挿入される。この座用第一伝達ユニット5及び第二伝達ユニット7は、便蓋4に対しては回転可能で、便座3に対して回転不能である。また、蓋用第一伝達ユニット6及び第二伝達ユニット8は、便座3に対しては回転可能で、便蓋4に対して回転不能である。
【0011】
図2は本発明の第一伝達ユニット5、6及び第二伝達ユニット7、8を搭載した温水洗浄便座装置1の便座3及び便蓋4の取付を説明するための断面図である。
なお、説明の都合上、以下には図1上、左側の便蓋4と蓋用第一伝達ユニット6及び第二伝達ユニット8、ケーシング2との連結関係について説明するが、左側の便座3と座用第一伝達ユニット5及び第二伝達ユニット7、ケーシング2との連結関係もほぼ同様の構成である。(便座の場合には、以下に説明する便蓋の構成要素と便座の構成要素とを入れ替える。)
ケーシング2内に固定された駆動装置9は、駆動装置9内のモータ(図示せず)のトルクを減速機(図示せず)を介して出力軸10に伝達している。そして、出力軸10のトルクを、蓋用第二伝達ユニット8及び第一伝達ユニット6に伝達する。
蓋用第二伝達ユニット8は、駆動装置9の出力軸10に係合する嵌合部18と、嵌合部18に嵌め込まれる出力軸16と、出力軸16の一面に取り付けられる磁性体15と、出力軸16と嵌合部18の間に挟持されるトルクリミッタ17とから成り、駆動装置9の出力軸10の回転を出力軸16に伝達する。
また、蓋用第一伝達ユニット6は、収納筒13と、収納筒13に回転可能に収められて一端が前記出力軸16に係合する回転軸11と、ねじりばね12と、収納筒13に取り付けられるホールIC14とから成り、蓋用第二伝達ユニット8の出力軸16の回転を回転軸11に伝達する。
収納筒13は、ケーシング2の出力軸10の近傍に設けられて図示せぬ突部に嵌合しケーシング2に対して回転不能となっている。ねじりばね12の一端12aは収納筒13のばね受け部13aに挿入し、もう一端12bは回転軸11のばね受け部11cに挿入し、便蓋4の開放側に回転軸11の回転量に応じたトルクを与えることにより便蓋4の自立を補助する。
回転軸11は第二伝達ユニット8の出力軸16との係合部11a、軸受部11b、ばね受け部11c、出力部11dから成り、係合部11aで受けたトルクを出力部11dにはめ込んだ便蓋4に伝達すると共に、収納筒13に収納したねじりばね12の付勢力(便蓋開放側トルク)をばね受け部11cから便蓋4に伝達する。
出力軸16に取り付けた磁性体15と、当該磁性体15と対向して収納筒13の一側面に固定したホールIC14により、便蓋4の回転角度を検出する角度検出手段を構成する。
【0012】
図3は第一伝達ユニット6及び第二伝達ユニット8に取り付けるホールIC14と磁性体15の配置の一例を示しており、回転軸11の回転に合わせて磁性体15が回転し、磁性体15に着磁したN・S極のうちどちらの極にあるかをホールIC14が検知し、便蓋4の開閉状態を検出する。
【0013】
図4は第一伝達ユニット6及び第二伝達ユニット8の取り付け構造を示しており、第二伝達ユニット8の出力軸16と嵌合部18の間にトルクリミッタ17を圧入し、さらに出力軸16の嵌合部18と反対側の側面に磁性体15を取り付ける。第一伝達ユニット6と第二伝達ユニット8は、ネジにより結合しており、便座3又は便蓋4をケーシング2から取り外しただけでは、第二伝達ユニット8は第一伝達ユニット6から外れないようになっている。また、トルクリミッタ機構の故障時は、ネジを外すことで、第二伝達ユニット8を第一伝達ユニット6から容易に分離できる。
【0014】
このように、トルクリミッタ17を備えた第二伝達ユニット8は、便座3又は便蓋4をケーシング2から外すときに便座3又は便蓋4に付いてくるので、トルクリミッタ17に異常が生じた場合であってもわざわざケーシング2を分解して駆動装置9を取り外す必要なく、修理作業が簡単に行える。また、第二伝達ユニット8を新品と交換すればトルクリミッタ17の異常は解消するので、専門知識を持つ者でなくても、一般使用者でも楽に修理作業を行うことができる。
【0015】
次に、図5により、角度検出手段により検出された便蓋4の開閉位置を出力する構成について説明する。便座3の内部に設置されたヒータへの通電用の電気コードは、駆動装置9の出力軸10の近傍からケーシング2内に配線されて制御部(図示せず)に接続されている。ホールIC14からの制御信号線も、この暖房便座への通電用の電気コードと共に束ねて、ケーシング2内の制御部に接続する構成として、便蓋4の開閉状態をケーシング2内の制御部(図示せず)へ送信する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の便座又は便蓋の自動開閉装置を搭載する温水洗浄便座装置の斜視図である。
【図2】本発明の便座又は便蓋の第一伝達ユニットと第二伝達ユニット、駆動装置の嵌合状態を説明する断面図である。
【図3】本発明の便座又は便蓋の第一伝達ユニットと第二伝達ユニットにホールICと磁性体を配置した例を説明する断面図である。
【図4】本発明の便座又は便蓋の第一伝達ユニットと第二伝達ユニットとの接続構造を説明する図である。
【図5】本発明の便座又は便蓋の第一伝達ユニットに取り付けたホールICからの制御信号線を暖房便座の電気コードと束ねてケーシング内へ接続する構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0017】
1 温水洗浄便座装置
2 ケーシング
3 便座
4 便蓋
5 座用第一伝達ユニット
6 蓋用第一伝達ユニット
7 座用第二伝達ユニット
8 蓋用第二伝達ユニット
9 駆動装置
10 出力軸
11 回転軸
12 ねじりばね(付勢手段)
13 収納筒
14 ホールIC
15 磁性体
16 出力軸
17 トルクリミッタ
18 嵌合部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部等の機能部が内蔵されたケーシングに対して便座・便蓋を開閉可能にする便座・便蓋自動開閉装置において、
前記ケーシングに設けられてなり、モータと出力軸と前記モータの回転を前記出力軸に伝達する減速伝達機構を備えた駆動装置と、
前記便座又は便蓋に設けられてなり、前記駆動装置の出力を前記便座・便蓋に伝達する伝達機構とで自動開閉装置を構成し、
前記伝達機構は、回転軸及び前記回転軸を前記便座又は便蓋の開放方向に付勢する付勢手段を有する第一伝達ユニットと、前記駆動装置及び第一伝達ユニットに対して着脱自在であり前記駆動装置の出力軸と前記第一伝達ユニットの回転軸の間で伝達されるトルクを制限するトルクリミッタを備えた第二伝達ユニット、とを備えたことを特徴とする便座・便蓋用自動開閉装置。
【請求項2】
前記第一伝達ユニット及び第二伝達ユニットは、前記便座又は便蓋に内蔵されたことを特徴とする請求項1記載の便座・便蓋用自動開閉装置。
【請求項3】
前記第一伝達ユニット及び第二伝達ユニットに、前記便座又は便蓋の回転角度を検出する角度検出手段を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の便座・便蓋用自動開閉装置。
【請求項4】
前記便座に暖房ヒータを内蔵し、前記角度検出手段からの制御信号線を前記便座への通電用の電気コードと共に束ねて、前記ケーシング内の制御部に接続したことを特徴とする請求項3記載の便座・便蓋用自動開閉装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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