説明

便座用ヒータおよびそれを使用した便座装置

【課題】浸水絶縁試験に技術基準に適合する便座用ヒータを提供することを目的とする。
【解決手段】便座400の少なくとも着座部に対応する形状の金属箔451と、金属箔451の略全面に配設した線状ヒータ460と、電気絶縁層463bの異常を検出するために金属箔451に0.3MΩ以上の抵抗体471aを介して電気的に接続した検出リード線471を備え、抵抗体471aと検出リード線471は防水性を備えた構成とすることにより、便座用ヒータ450を水中に浸漬して浸水絶縁試験に供したとき、金属箔451が水と直接接触しても、検出リード線471と水との間の抵抗値は抵抗体471aの抵抗値である0.3MΩ以上となり、電気便座用便座ヒータの浸水絶縁試験の技術基準を満足することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房機能を備えた便座の加温用ヒータとして用いられる便座用ヒータの異常検出の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の便座用ヒータとしては、便座本体の平面形状に略等しい形状の金属箔にコード状ヒータを配設した面状発熱体を粘着テープで便座の裏面に装着した構成のものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図8(a)は、特許文献1に記載された従来の便座用ヒータの平面図を示すものであり、図8(b)は断面図を示すものである。便座ヒータ1は馬蹄形状の金属箔シート2の内周縁及び外周縁に沿ってコード状ヒータ3が配設してあり、その上から便座に貼着するための両面粘着テープ4を金属箔シート2の全面に粘着してある。
【特許文献1】特開2000−70182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、便座用ヒータのコード状ヒータ460の絶縁体が破れて、コード状ヒータの発熱線と金属箔シートが接触することによりコード状ヒータの抵抗値が低下した場合、発熱量が多くなり異常発熱し樹脂製の便座が燃える可能性がある。
【0005】
その対策として、金属箔シートに電気的に接続したリード線とコード状ヒータの発熱線間の抵抗を検出して絶縁状態の異常を検知しようとする案がある。
【0006】
しかしながら上記案では、コード状ヒータの絶縁に異常がない場合でも、便座ヒータを浸水させ浸水絶縁試験を行うと、水と金属箔シートが接触するため、金属箔シートから電気的に接続したリード線と水1の間の抵抗値はゼロΩとなり、便座ヒータの浸水絶縁試験の技術規準である抵抗値0.3MΩ以上を満足しないという課題を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の便座用ヒータは、便座の少なくとも着座部に対応する形状の金属箔と、金属箔の略全面に配設した線状ヒータと、電気絶縁層の異常を検出するために金属箔に0.3MΩ以上の抵抗体を介して電気的に接続した検出リード線を備え、抵抗体と検出リード線は防水性を備えた構成となっている。
【0008】
上記構成によって、便座用ヒータを水中に浸漬して浸水絶縁試験に供したとき、金属箔が水と直接接触しても、検出リード線と水との間の抵抗値は抵抗体の抵抗値である0.3MΩ以上となり、電気便座用便座ヒータの浸水絶縁試験の技術基準を満足することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の便座用ヒータによれば、便座用ヒータの浸水絶縁試験において技術基準の絶縁抵抗値の0.3MΩ以上を満足することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
第1の発明は、便座の裏面に貼り付けて加熱する便座用ヒータであって、便座の少なくとも着座部に対応する形状に形成された金属箔と、前記金属箔の略全面に間隔を設けて配
設した電気絶縁層を有する線状ヒータと、前記電気絶縁層の異常を検出するために前記金属箔に0.3MΩ以上の抵抗体を介して電気的に接続した検出リード線を備え、前記抵抗体と検出リード線は防水性を備えたことにより、便座用ヒータを水中に浸漬して浸水絶縁試験に供したとき、金属箔が水と直接接触しても、検出リード線と水との間の抵抗値は抵抗体の抵抗値である0.3MΩ以上となり、電気便座用便座ヒータの浸水絶縁試験の技術基準を満足することができる。
【0011】
第2の発明は、特に第1の発明において、線状ヒータと、抵抗体と、前記抵抗体と検出リード線との接続部を、2枚の金属箔の間に挟持した構成とすることにより、2枚の金属箔で線状ヒータと抵抗体と検出リード線との接続部等の全ての防水構造を実施することができることとなり、便座用ヒータの部品点数の削減と便座ヒータへの抵抗体の実装がしやすくなり生産性が向上することができる。
【0012】
第3の発明は、特に第1または第2の発明の便座用ヒータを着座部の裏面に設置した便座と、前記便座を回動自在に枢支する本体を備えたことにより、便座ヒータの以上を的確に検出し便座用ヒータへの通電を制御することが可能となることとなり、安全で快適な便座装置を提供することができる。
【0013】
以下本発明を実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0014】
(実施の形態1)
図1は本発明の一実施の形態に係る電気便座用便座ヒータが組み込まれた衛生洗浄装置およびそれを備えるトイレ装置を示す外観斜視図である。トイレ装置1000はトイレットルーム内に設置される。トイレ装置1000において、便器700には衛生洗浄装置100が取り付けられる。衛生洗浄装置100は、本体部200、遠隔操作装置300、便座部400および蓋部500により構成される。蓋部500を除く衛生洗浄装置100の各構成要素が、後述の便座装置110を構成する。本体部200には、便座部400および蓋部500が開閉可能に取り付けられている。また、本体部200には、図示しない洗浄水供給機構が設けられるとともに、制御部90が内蔵される。図1では、本体部200の正面上部に設けられる着座センサ610が示されている。
【0015】
この着座センサ610は、例えば反射型の赤外線センサである。この場合、着座センサ610は、人体から反射された赤外線を検出することにより便座部400上に使用者が存在することを検知する。さらに、図1では、本体部200の正面下部に設けられる便器ノズル40が便器700の内側に突出している状態が示されている。この便器ノズル40は、上述の洗浄水供給機構に接続されている。洗浄水供給機構は、図示しない水道配管に接続されている。これにより、洗浄水供給機構は、水道配管から供給される洗浄水を便器ノズル40に供給する。それにより、便器ノズル40から便器700の内面の広い範囲に洗浄水が噴出される(便器プレ洗浄)。または、便器ノズル40から便器700の内面の背面側に洗浄水が噴出される(便器後部洗浄)。また、洗浄水供給機構は、局部洗浄ノズル部(図示せず)に接続されている。これにより、洗浄水供給機構は、水道配管から供給される洗浄水を局部洗浄ノズル部に供給する。それにより、局部洗浄ノズル部から使用者の局部に洗浄水が噴出され、局部が洗浄される。
【0016】
遠隔操作装置300には、複数のスイッチが設けられている。遠隔操作装置300は、例えば便座部400上に着座する使用者が操作可能な場所に取り付けられる。
【0017】
入室検知センサ600は、トイレットルームの入口等に取り付けられる。入室検知センサ600は、例えば反射型の赤外線センサである。この場合、入室検知センサ600は、
人体から反射された赤外線を検出した場合にトイレットルーム内に使用者が入室したことを検知する。
【0018】
本体部200の制御部90は、遠隔操作装置300、入室検知センサ600および着座センサ610から送信される信号に基づいて、衛生洗浄装置100の各部の動作を制御する。
【0019】
図2は、便座装置110の構成を示す模式図である。上述のように、便座装置110は、本体部200、遠隔操作装置300、便座部400および入室検知センサ600を備える。
【0020】
図2に示すように、本体部200は、制御部90、温度測定部401、ヒータ駆動部402、便座温調ランプRA1および着座センサ610を含む。また、便座部400は便座ヒータ450およびサーミスタ401aを備える。
【0021】
制御部90は、例えばマイクロコンピュータからなり、使用者の入室および便座部400の温度等を判定する判定部、タイマ機能を有する計時部、種々の情報を記憶する記憶部、ならびに、ヒータ駆動部402の動作を制御するための通電率切替回路等を含む。
【0022】
本体部200の温度測定部401は、便座部400のサーミスタ401aに接続されている。これにより、温度測定部401は、サーミスタ401aから出力される信号に基づいて便座部400の温度を測定する。以下、サーミスタ401aを通じて温度測定部401により測定される便座部400の温度を測定温度値と称する。
【0023】
また、本体部200のヒータ駆動部402は、便座部400の便座ヒータ450に接続されている。これにより、ヒータ駆動部402は便座ヒータ450を駆動する。
【0024】
本実施の形態において、便座装置110は次のように動作する。初期設定時では、制御部90がヒータ駆動部402を制御することにより、便座部400が例えば約18℃となるように温度調整される。このときの温度を待機温度と称する。
【0025】
ここで、使用者が遠隔操作装置300の便座温度調整スイッチ(図示せず)を操作することにより、便座設定温度が制御部90に送信される。制御部90は、遠隔操作装置300から受信した便座設定温度を記憶部に記憶する。
【0026】
使用者がトイレットルームに入室すると、入室検知センサ600が使用者の入室を検知する。それにより、使用者の入室検知信号が制御部90に送信される。
【0027】
次に、通常の使用時の動作について説明する。制御部90の判定部は、入室検知センサ600からの入室検知信号により使用者のトイレットルームへの入室を検知する。そこで、判定部は、便座部400の測定温度値、および記憶部に記憶された便座設定温度に基づいて便座ヒータ450の駆動に関する特定のヒータ制御パターンを選択する。
【0028】
通電率切替回路は、選択されたヒータ制御パターンおよび計時部により得られる時間情報に基づいてヒータ駆動部402の動作を制御する。
【0029】
それにより、ヒータ駆動部402により便座ヒータ450が駆動され、便座部400の温度が便座設定温度へと瞬時に上昇される。
【0030】
図3は、便座部400の分解斜視図である。図4(a)は、便座部400の便座ヒータ
450の平面図、図4(b)は、図4(a)の領域C72の拡大図である。
【0031】
図3に示すように、便座部400は、主としてアルミニウムにより形成された略楕円形状の上部便座ケーシング410、略馬蹄形状の便座ヒータ450および合成樹脂により形成された略楕円形状の下部便座ケーシング420を備える。
【0032】
以下、着座した使用者から見て前方側を便座部400の前部とし、着座した使用者から見て後方側を便座部400の後部とする。
【0033】
図4(a)および図5に示すように、本実施の形態の便座ヒータ450は、着座した使用者の身体が主に接触する着座部の形状に合わせて前部の一部が切り取られた馬蹄状で、少なくとも着座部をカバーできる大きさに形成される。なお、便座ヒータ450は馬蹄形状に限るものではなく、着座部をカバーできる形状であれば、例えば上部便座ケーシング410と略相似形の楕円形状を有してもよい。便座ヒータ450は、例えばアルミニウムからなる金属箔451、453および線状ヒータ460を含む。線状ヒータ460は、金属箔中央部SE3から金属箔一方端部SE1までの領域および金属箔中央部SE3から金属箔他方端部SE2までの領域において上部便座ケーシング410の着座部の形状に合わせて蛇行形状に配設される。
【0034】
具体的には、線状ヒータ460は、左右6列程度のU字状部を有するように形成される。これらのU字状部は、着座した使用者の大腿部の方向にほぼ沿って並行に配置される。各U字状部における線状ヒータ460の間隔は5mm程度である。また、図4(b)に示すように、蛇行形状の線状ヒータ460の経路中に熱応力緩衝部となる複数の折曲部CUが設けられる。
【0035】
線状ヒータ460のヒータ始端部460aおよびヒータ終端部460bは、便座部400の後部の一方側から引き出されるリード線470にそれぞれ接続される。リード線470は防水性を有する絶縁被覆を備えており、ヒータ始端部460aおよびヒータ終端部460bとの接続部は金属箔451、453で挟持された状態であり外部からの浸水を防ぐ防水構造となっている。
【0036】
また、便座ヒータ450が異常発熱した際の絶縁被覆層462溶融時に便座ヒータ450と金属箔451の間に電流が流れることを検出するために、金属箔451、453には抵抗体471aを介して検出リード線471が電気的に接続されている。検出リード線471の詳細な構成は後述する。
【0037】
図5は、上部便座ケーシング410に取り付けられる便座ヒータ450の構造の一例を示す断面図である。図5に示すように、上部便座ケーシング410は、例えば厚さ1mmのアルミニウム板413により形成される。アルミニウム板413の上面には、アルマイト層412および表面化粧層411が形成される。表面化粧層411の上面が着座面410Uとなる。また、アルミニウム板413の下面には、塗装膜414が形成される。塗装膜414は、例えば膜厚40μmおよび150℃の耐熱性を有するポリエステル粉体塗装膜である。なお、アルミニウム板413の代わりに、銅板、ステンレス板、アルミニウムめっき鋼板および亜鉛アルミニウムめっき鋼板のうちいずれかまたは複数を用いてもよい。
【0038】
塗装膜414の下面に粘着層452aを介して例えばアルミニウムからなる金属箔451が貼着される。金属箔451の膜厚は、例えば50μmである。
【0039】
線状ヒータ460は、断面円形の発熱線463a、エナメル層463bおよび絶縁被覆
層462により構成される。断面円形の発熱線463aの外周面がエナメル層463bおよび絶縁被覆層462で順に被覆される。発熱線463aおよびエナメル層463bによりエナメル線463が構成される。
【0040】
発熱線463aは、例えば0.16〜0.25mmの直径を有し、銅または銅合金からなる。本例では、発熱線463aとして、直径0.176mmの4%Ag−Cu合金からなる高抗張力型ヒータ線が用いられる。抵抗値は0.833Ω/mである。
【0041】
エナメル層463bは、例えば180〜300℃の耐熱性を有するポリエステルイミド(PEI)からなる。エナメル層463bの膜厚は、20μm以下であり、本例では12〜13μmである。
【0042】
このようなエナメル線463は、エナメル層463bの膜厚が極薄い0.01〜0.02mm程度であっても、電気用品技術基準である1000Vで1分間以上の電気絶縁耐圧性能を十分確保することができる。また、エナメル層463bの材料として、ポリイミド(PI)またはポリアミドイミド(PAI)を用いてもよい。
【0043】
絶縁被覆層462は、例えば260℃の耐熱性を有するパーフロロアルコキシ混合物(以下PFAと称する)等のフッ素樹脂からなる。絶縁被覆層462の厚みは、例えば0.1〜0.15mmである。PFAからなる絶縁被覆層462の形成は、押出し加工により行うことができる。この場合、絶縁被覆層462の厚みが0.05〜0.1mmと薄くても、雷サージにも耐える電気絶縁耐圧性能を確保することができる。
【0044】
なお、絶縁被覆層462の材料として、ポリイミド(PI)またはポリアミドイミド(PAI)を用いてもよい。
【0045】
線状ヒータ460の外径は、例えば0.46〜0.50mmである。線状ヒータ460の電力密度は、例えば0.95W/cm2である。
【0046】
線状ヒータ460は、粘着層452bおよび例えばアルミニウムからなる金属箔453で覆うように金属箔451に取り付けられる。金属箔453の膜厚は、例えば50μmである。
【0047】
このように、単一のエナメル線463上に絶縁被覆層462を形成することにより二重の絶縁構造を確保することができる。
【0048】
また、絶縁被覆層462は比較的薄くても十分な絶縁性が得られる。したがって、絶縁被覆層462の厚さを薄くすることができる。上記の例では、線状ヒータ460の樹脂層(エナメル層463bおよび絶縁被覆層462)の厚さは、0.12mm程度であり、極めて薄い。この場合、発熱線463aから金属箔451および便座ケーシング410への熱伝導を極めて俊敏に行うことができる。
【0049】
ちなみに従来の便座装置においては、線状ヒータのシリコーンゴムまたは塩化ビニール等からなる被覆チューブの厚さは、上記の例の約10倍の1mm程度ある。このような被覆チューブの熱伝導速度は桁違いに遅く、便座の昇温速度を速くすることはできなかった。
【0050】
従来の便座装置において便座の昇温速度を無理やり速くするためにヒータ線に大きい電力を供給した場合、断熱状態でヒータ線の温度を高くした場合と同様に、被覆チューブが溶融および焼損する。そのため、このような方法による便座の昇温は実用できなかった。
【0051】
一方、本例のように耐熱性能に優れたエナメル線463をヒータ線として使用した場合、十分短時間で便座を昇温でき、かつ電気絶縁性および安全性を確保できる。したがって、本例の構造は、種々の便座装置に有効に実用することができる。
【0052】
また、本例の構造では、エナメル層463bおよび絶縁被覆層462等からなる樹脂層を0.1〜0.4mm程度の薄い厚さで形成できる。それにより、発熱線463aおよび樹脂層の絶対温度が低い温度に維持された状態で、便座を急速に昇温させることができる。その結果、高価な耐熱絶縁材料でなく比較的安価な絶縁材料を用いることができる。
【0053】
また、本例においては、線状ヒータ460の熱を便座ケーシング410に効率よく伝達するために、線状ヒータ460を金属箔451,452で挟んでいる。ここで、本例の線状ヒータ460においては、エナメル層463bおよび絶縁被覆層462を薄くできるので、線状ヒータ460の外径を細く(約φ0.2〜φ0.4)できる。この場合、金属箔451と金属箔452とを貼り合わせる際に、金属箔451と金属箔452との間の空気層を小さくすることができるとともに、金属箔451,452のしわを少なくすることができる。それにより、エナメル線463の局所高熱が抑制され、エナメル線463の断線および電気絶縁層(エナメル層463bおよび絶縁被覆層462)の損傷が防止される。その結果、便座装置110の長寿命化が可能になる。
【0054】
また、エナメル線463を細くできるので、便座ヒータ450の重量を低減でき、便座開閉トルクを小さくすることができる。それにより、便座開閉用の電動開閉ユニットを小型化でき、便座装置110の小型化が可能となる。
【0055】
なお、便座部400の安全性確保のために、便座装置110には2つの安全回路が内蔵されている。1つの安全回路は、便座ヒータ450の金属箔451と電気的に接触されたリード線471と便座ヒータ絶縁破壊検知回路との間に接続され、他の1つの安全回路は、便座ヒータ450の両方のリード線470と便座ヒータ断線検出回路との間に接続されている。
【0056】
いずれの安全回路も便座ヒータ450に異常が発生したときに使用者の感電を防止するために用いるものである。
【0057】
便座ヒータ絶縁破壊検知回路は、便座ヒータ450が異常発熱した際の絶縁被覆層462溶融時に便座ヒータ450と金属箔451の間に流れる電流を検出リード線471を介して検出するものである。また、便座ヒータ断線検出回路は、便座ヒータ450両端に発生する電圧波形が便座ヒータ450断線時には発生しなくなることを検出するものである。ヒータ駆動部402は、2つの安全回路の両方が正常状態を検出しているときにのみ便座ヒータ450に通電を行う。
【0058】
特に、便座ヒータ絶縁破壊回路における金属箔451、453との接続部の詳細について以下に記述する。図6に示すように、金属箔451、453の間に挟持された0.3M以上の抵抗体471aの一端をビス472とナット473により金属箔451、453と電気的に接触し、抵抗体471aの他端は防水性を有する絶縁被覆を施した検出リード線471に電気的に接続されている。図6に示すように抵抗体471aと接続部は金属箔451、453で挟持された状態であり外部からの浸水を防ぐ防水構造となっている。
【0059】
上記構成の本実施の形態における便座ヒータ450を、図7に示すように、水中に便座部400を浸し、便座ヒータ450の2本のリード線470と抵抗体10に接続された検出リード線471を水中480より出し、絶縁抵抗計481の一端は水中480に置き、
他端で3つのリード線の各絶縁抵抗値を測定する電気便座用便座ヒータの技術基準である浸水絶縁試験を行う。
【0060】
便座ヒータ450のリード線470は防水かつ絶縁されているので水中1との抵抗値は高抵抗を示す。一方、検出リード線471は抵抗体471aを介して金属箔451に接続されており、金属箔451、453は水に触れるので、抵抗体471aの抵抗値がそのまま絶縁抵抗計481の測定値となる。いま、抵抗体471aの抵抗値は基準の0.3M以上にしているので、電気便座用便座ヒータの浸水絶縁試験の基準値0.3M以上を満足することができる。
【0061】
なお、本実施の形態においては、リード線470とヒータ始端部460aおよびヒータ終端部460bとの接続部、また抵抗体471aおよび抵抗体aと検出リード線471との接続部は、全て金属箔451、453で挟持することにより防水構造を構成しているが、この構成に限るものではなく、個々の箇所に防水被覆を施すことにより防水構造を構成してもよい。本実施の形態の構成は、部品点数を削減することが可能な構成であり、便座ヒータの小型化とコストの削減に好適な構成である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の便座ヒータは、技術基準の浸水絶縁試験を満足することが可能になるので、他の浸水絶縁試験を義務付けられている電気部品等の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施の形態1におけるトイレ装置の外観を示す斜視図
【図2】本発明の実施の形態1における便座装置の構成を示す模式図
【図3】本発明の実施の形態1における便座の分解状態を示す斜視図
【図4】(a)は本発明の実施の形態1における便座ヒータの平面図(b)は(a)のC72部の詳細を示す平面図
【図5】本発明の実施の形態1における便座ヒータの断面図
【図6】本発明の実施の形態1における抵抗体取付部の断面を示す模式図
【図7】本発明の実施の形態1における便座ヒータ浸水絶縁試験の状態を示す模式図
【図8】(a)は従来の便座用ヒータを示す平面図(b)は同断面図
【符号の説明】
【0064】
200 本体部(本体)
400 便座部(便座)
450 便座ヒータ(便座用ヒータ)
451 金属箔
453 金属箔
460 線状ヒータ
462 絶縁被覆(電気絶縁層)
463b エナメル層(電気絶縁層)
471 検出リード線
471a 抵抗体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便座の裏面に貼り付けて加熱する便座用ヒータであって、便座の少なくとも着座部に対応する形状に形成された金属箔と、前記金属箔の略全面に間隔を設けて配設した電気絶縁層を有する線状ヒータと、前記電気絶縁層の異常を検出するために前記金属箔に0.3MΩ以上の抵抗体を介して電気的に接続した検出リード線を備え、前記抵抗体と検出リード線は防水性を備えた構成であることを特徴とする便座用ヒータ。
【請求項2】
線状ヒータと、抵抗体と、前記抵抗体と検出リード線との接続部を、2枚の金属箔の間に挟持した構成の請求項1に記載の便座用ヒータ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の便座用ヒータを着座部の裏面に設置した便座と、前記便座を回動自在に枢支する本体を備えた便座装置。

【図6】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate