説明

便座装置

【課題】支持体6に対する便座2の着脱が簡単且つ確実にできる。
【解決手段】支持体6に両方の取付用腕部4,5を介して便座2を揺動自在に枢支する一方の枢支部X1及び他方の枢支部X2を備え、他方の枢支部X2は、他方の取付用腕部5から突出する他方枢軸14と、膨出部7の他方側に横向き開設した嵌挿用凹部16へ他方枢軸14を出入れできる他方軸受部15とからなり、他方軸受部15は、支持体軸芯Y1と便座軸芯Y2との交差角θを大きくした便座傾斜姿勢E1のまま他方枢軸14を受け入れでき、他方枢軸14を受け入れたまま両軸芯Y1,Y2の交差角θを小さくさせる便座傾斜姿勢E2へ移行させるのに伴い、一方の枢支部X1の一方枢軸10を一方軸受部13の開口部13bを通過させて軸装部13aへ入れることができるように、嵌挿用凹部16の奥側に比べて開口端16b側を大径に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器本体に取付ける支持体に便座を着脱ができる便座装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、便座を着脱に取り付ける便座取付構造は、便器に固定される固定部材と、固定部材に一対に設けられて対向する穴を備えた軸支持体と、便座軸を備えて軸支持体に回動自在に軸支される便座と、固定部材に装着されるカバーにて構成され、便座軸と穴との間には便座を便座軸軸線方向へ摺動することにより固定部材から着脱自在とするための隙間を設け、カバーには便座の便座軸軸線方向への摺動を規制する摺動規制手段を備えたものがある(特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−265361の公開公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、従来の便座取付構造は、固定部材に設けられた一対の軸支持体の穴と便座軸との間に着脱自在とするための隙間が設けられているので、穴に便座軸を挿着しただけでは便座が便座軸軸線方向へ摺動して脱落することがあり、便座の便座軸軸線方向への摺動を規制するカバーを固定部材に装着する必要がある。そのため、従来の便座取付構造は、カバーの規制を受ける所定位置に便座を配置しつつ固定部材にカバーを装着するのに注意を要すると共に、もしカバーの装着が不完全であると便座の脱落を招くことがある。
【0004】
本発明は、便座の着脱が簡単且つ確実にできる便座装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
便座の着脱が簡単且つ確実にできるように請求項1記載の本発明が採用した手段は、着座面を形成した本体部の後方に一方の取付用腕部と他方の取付用腕部を突設した便座と、両方の取付用腕部で挟まれる膨出部を形成した支持体と、支持体に両方の取付用腕部を介して便座を揺動自在に枢支する一方の枢支部及び他方の枢支部を備え、便座が支持体に対し着脱可能である便座装置において、一方の枢支部は、膨出部の一方側から突出する一方枢軸と、一方の取付用腕部に設けられ軸装部及び軸装部へ一方枢軸を出し入れするための一方枢軸出入用開口部を備えた一方軸受部とからなり、他方の枢支部は、他方の取付用腕部から突出する他方枢軸と、膨出部の他方側に横向き開設した嵌挿用凹部へ他方枢軸を出入れできる他方軸受部とからなり、この他方軸受部は、支持体の一方枢軸及び他方軸受部が形成する支持体軸芯と分離状態の便座の一方軸受部及び他方枢軸が形成する便座軸芯との交差角を大きくした便座傾斜姿勢のまま他方枢軸を受け入れでき、他方枢軸を受け入れたまま両軸芯の交差角を小さくさせる便座傾斜姿勢を経て両軸芯を合致させる便座接合姿勢へ移行させるのに伴い、一方枢軸を一方軸受部の開口部を通過させて軸装部へ入れることができるように、嵌挿用凹部の奥側に比べて開口端側を大径に形成したことを特徴とする便座装置である。
【0006】
装着状態の便座の便座軸芯方向に沿うガタ付きを小さくするために請求項2記載の本発明が採用した手段は、前記他方軸受部は、嵌挿用凹部の奥側突き当たりに、前記両軸芯を大きく交差させる便座傾斜姿勢のまま他方枢軸を受け入れるときに他方枢軸の一方側外隅部を侵入させる侵入用空間部と、前記両軸芯を小さく交差させる便座傾斜姿勢を経て両軸芯を合致させる便座接合姿勢へ移行させるのに伴い傾動する他方枢軸の先端面を当接させて一方側外隅部を侵入用空間部から引き出させる引出し面とを設けた請求項1記載の便座装置である。
【0007】
他方軸受部の嵌挿用凹部への異物の侵入を抑制するために請求項3記載の本発明が採用した手段は、前記他方軸受部の嵌挿用凹部における奥側に比べて大径にする開口端側の領域が、前記便座傾斜姿勢の他方枢軸を受け入れるときの便座軸芯が通過する他方枢軸受入れ側である請求項1又は2記載の便座装置である。
【0008】
見栄えよくするために請求項4記載の本発明が採用した手段は、前記他方枢軸受入れ側が前記嵌挿用凹部の下半側に形成されている請求項3記載の便座装置である。
【0009】
電気式加熱手段を設けた便座の分離をコードレスで簡単にきるようにするために請求項5記載の本発明が採用した手段は、前記支持体に設けた制御部と、前記支持体における他方軸受部より奥側に設けて制御部に接続した一次コイルと、便座に設けた電気式加熱手段と、前記他方枢軸に設けて加熱手段に接続した二次コイルとからなり、両コイル間の電磁誘導で給電を行うようにした給電装置を備えた請求項1乃至4のいずれか1項に記載の便座装置である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の本発明に係る便座装置は、分離した便座を装着するときには、支持体軸芯と便座軸芯を大きく交差させた便座傾斜姿勢のまま他方枢軸を他方軸受部の嵌挿用凹部の奥側へ挿入した後に、両軸芯を小さく交差させる便座傾斜姿勢を経て両軸芯を合致させるように移行させることで、一方枢軸を一方軸受部の開口部を通過させて軸装部へ入れて便座装着ができ、便座を分離するときには、上記操作と逆の操作を行うことで、両軸芯を大きく交差させた便座傾斜姿勢のまま他方枢軸を他方軸受部の嵌挿用凹部の奥側から抜き出して便座分離ができるため、便座の着脱が簡単且つ確実にできる。
【0011】
請求項2記載の本発明に係る便座装置は、両軸芯を小さく交差させる便座傾斜姿勢を経て両軸芯を合致させる便座接合姿勢へ移行させるのに伴い傾動する他方枢軸の一方側外隅部を侵入用空間部から引き出させて他方枢軸の先端面を引出し面に当接させることで、引き出させた分だけ便座軸芯方向に沿う移動を減少させるので、装着状態の便座の便座軸芯方向に沿うガタ付きを小さくすることができる。
【0012】
請求項3記載の本発明に係る便座装置は、他方軸受部の嵌挿用凹部における奥側に比べて大径にする開口端側の領域を、便座傾斜姿勢の他方枢軸を受け入れるときの便座軸芯が通過する他方枢軸受入れ側とすることで、異物が他方枢軸受入れ側以外の大径でない領域から嵌挿用凹部内へ侵入するのを抑制することができる。
【0013】
請求項4記載の本発明に係る便座装置は、他方軸受部の嵌挿用凹部における奥側に比べて大径にする開口端側の領域を下半側に位置させることで、大径となっている領域が便座使用者から見えに難くして見栄えよくすることができる。
【0014】
請求項5記載の本発明に係る便座装置は、支持体から便座へ両コイル間の電磁誘導による無配線方式で給電を行うことができるので、支持体と便座の間に給電用コードを備える必要がなく、電気式加熱手段を設けた便座の分離をコードレスで簡単にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に係る便座装置(以下、「本発明便座装置」と言う。)を図1乃至図18の図面に示す実施形態に基づいて説明する。図1は支持体6に便座2を装着した状態の本発明便座装置1の概略構成を示す平面図、図2は同装着状態の本発明便座装置1の左側面図、図3は図2の一点鎖線イで囲まれた箇所を拡大して示す断面図である。図4は一方の枢支部X1を示すものであって、図(A)は一方枢軸10と一方軸受部13の分離状態を示す左側面図、図(B)は同分離状態を示す正面図、図(C)は一方枢軸10と一方軸受部13の接合状態を示す左側面図、図(D)は同接合状態を示す正面図である。図5は一方の枢支部X1に設けた別態様のロック手段26を示すものであって、図(A)は一方軸10と一方軸受部13を分離した非ロック状態の左側面図、図(B)は非ロック状態の正面図、図(C)は一方枢軸10と一方軸受部13を接合してロック状態の左側面図、図(D)はロック状態の正面図である。
【0016】
図6は他方の枢支部X2を示すものであって他方軸受部15と他方枢軸14の接合状態の正面図である。図7は他方の枢支部X2の他方枢軸14を示すものであって、図(A)は部分断面した正面図、図(B)は左側面図である。図8は他方の枢支部X2の他方軸受部15を示すものであって、図(A)は便座接合作業の開始状態の他方枢軸14を二点鎖線で示す正面図、図(B)は右側面図、図9は他方の枢支部X2の他方軸受部15を示すものであって、図(A)は便座接合作業の完了状態の他方枢軸14を二点鎖線で示す正面図、図(B)は同状態の右側面図である。図10は便座を水平な姿勢にして便座接合作業ができるようにした態様の他方の枢支部X2の他方軸受部15を示すものであって、図(A)は便座接合作業の開始状態の他方枢軸14を二点鎖線で示す平面図、図(B)は右側面図である。図11は異物侵入防止具41を備えた態様の他方の枢支部X2を示すものであって他方軸受部15と他方枢軸14の接合状態の正面図である。図12は異物侵入防止具41を備えた態様の他方の枢支部X2の他方枢軸14を示すものであって、図(A)は部分断面した正面図、図(B)は左側面図である。図13は磁気シール具36を設けた態様の他方の枢支部X2を示す部分断面した正面図である。
【0017】
図14は他方の枢支部X2の別態様の他方軸受部15を示すものであって、図(A)は便座接合作業の開始状態の他方枢軸14を二点鎖線で示す正面図、図(B)は右側面図、図(C)は突起35の別態様を示す右側面図である。図15は他方の枢支部X2の別態様の他方軸受部15を示すものであって、図(A)は便座接合作業の途中状態の他方枢軸14を二点鎖線で示す正面図、図(B)は便座接合作業の完了状態の他方枢軸14を二点鎖線で示す正面図である。図16は他方の枢支部X2の更に別態様の他方軸受部15を示すものであって、図(A)は便座接合作業の完了状態の他方枢軸14を二点鎖線で示す正面図、図(B)は右側面図である。
【0018】
図17及び図18は支持体6に便座2を装着する手順を示す部分断面した正面図であって、図17(A)は支持体6と便座2を完全に分離した状態を示し、図17(B)は便座傾斜姿勢のまま他方軸受部15の嵌挿用凹部16へ他方枢軸14を挿入する装着開始状態を示し、図18(A)は一方の枢支部X1の一方枢軸10へ一方軸受部13を接近させた状態を示し、図18(B)は便座2の装着状態を示す。
【0019】
本発明便座装置1は、図1に示す如く、便器(図示省略)の後方上面に設置される支持体6と、支持体6に揺動自在に支持される便座2と、支持体6に便座2を揺動自在に枢支する一方(本例では「左」を言う。以下同様)の枢支部X1及び他方(本例では「右」を言う。以下同様)の枢支部X2を備え、支持体6に対して便座2が両方の枢支部X1,X2を介して着脱可能になっている。なお、本発明便座装置1は、図1に示す態様のものと左右対称に形成して、一方を「右」とすると共に他方を「左」とすることもある。
【0020】
前記便座2は、図1及び図2に示す如く、着座面(着座した使用者の臀部の接触が予定される部分)3aを形成した本体部3と、本体部3の後方両側に突設した一方の取付用腕部4及び他方の取付用腕部5とからなる。便座2は、本体部3の内部に、電気式加熱手段H、温度センサT及び便座側制御部C2が設けられ、便座側制御部C2で加熱手段H及び温度センサTの通電を制御するようにしてある。
【0021】
前記加熱手段Hは、図1〜図3に示す如く、本体部3の着座面3aを形成する表面材3bの裏面側に設けた鉄・銅・アルミニウム等の金属や、これらを主体とする合金又は金属化合物などの導電性材料をシート状の形態とした発熱体17と、発熱体17の下方側で底板3c上に設けた誘導コイル18と、発熱体17と誘導コイル18の間に充填した断熱層19との組み合わせからなり、誘導コイル18で発熱体17に渦電流を生じさせて発熱体17を発熱させて着座面3aを迅速に昇温するようにしてある。加熱手段Hは、誘導加熱による迅速加熱方式に限定するものではなく、面状等の電気ヒータで構成することもある。便座側制御部C2は、温度センサTが出力する温度信号を高周波信号に変換して、図1に示す一方の枢支部X1に設けた信号伝達部20の一次信号コイル21及び二次信号コイル22を介して、後述する支持体側制御部C1へ伝送する機能を有している。
【0022】
前記支持体6は、図1に示す如く、例えば箱状の形態を有し、前記便座2の両方の取付用腕部4,5で挟まれる膨出部7を前面部に形成してある。前記支持体6は、その内部に、電源Wに接続されて電力の供給を受けると共に前記信号伝達部20の二次信号コイル21を介して温度信号を受ける支持体側制御部C1が設けられている。支持体側制御部C1は、他方の枢支部X2に設けられる給電装置23と、もう一方の枢支部X1に設けられる駆動モータMとに電力を供給する。給電装置23は、他方の枢支部X2に設けて制御部C1に接続した一次コイル24(図6参照)と、他方の枢支部X2に設けて加熱手段Hに接続した二次コイル25(図6参照)とからなり、両コイル間の電磁誘導で給電を行うようにしてある。駆動モータMは、便座2を強制的に揺動させたり、便蓋(図示略)を自動開閉したりするものである。
【0023】
本発明便座装置1は、図1に示す如く、便座2の温度センサTが出力する温度信号を信号伝達部20の一次信号コイル21及び二次信号コイル21による無配線方式で支持体6の制御部C1へ伝送できると共に、支持体6の制御部C1から便座2の加熱手段Hへ給電装置23の一次コイル24及び二次コイル25による無配線方式で給電できるので、支持体6と便座2の間に電気コードを備える必要がなく、電気式加熱手段Hを設けた便座2の分離をコードレスで簡単にできるようになっている。
【0024】
前記一方(左)の枢支部X1は、図1、図4及び図5に示す如く、前記モータMの出力軸であって支持体6の膨出部7の一方側面から更に一方方向(左方向)へ向かって突出する一方枢軸10と、一方の取付用腕部4に設けられ軸装部13a及び軸装部13aへ一方枢軸10を出し入れするための一方枢軸出入用開口部13bを備えた一方軸受部13とからなり、一方枢軸10が開口部13bを通じて軸装部13aへ挿着又は離脱できるようになっている。枢支部X1は、前記信号伝達部20の一次信号コイル21を一方軸受部13に備えると共に、二次信号コイル22を一方枢軸10側となる膨出部7の一方側面近傍に備えている。
【0025】
前記一方枢軸10は、同芯二軸の便座駆動用軸11と便蓋駆動用軸12からなり、便蓋駆動用軸12が便座駆動用軸11を貫通して突出している。便座駆動用軸11は、駆動力伝達用の角柱状の継手部11aが形成され、一方軸受部13の軸装部13aに係合して、駆動モータMの出力を一方軸受部13及び一方の取付用腕部4を介して便座本体3へ伝達して、便座2を電動式で強制的に仰伏揺動させるようになっている。
【0026】
前記一方軸受部13は、軸装部13aに挿着した一方枢軸10が開口部13bから抜け出すのを阻止するロック手段26が設けられる。ロック手段26しては、図4示す如く、一方軸受部13の外周面上を回動可能な開閉具27で一方枢軸出入用開口部13bを閉止する構造や、図5に示す如く、一方軸受部13の外側面上を揺動可能な係止片28で一方枢軸10を係止する構造や、図示は省略したが、開口部13bに突設した弾性係止突起で一方枢軸10を係止する構造等が採用される。
【0027】
前記他方(右)の枢支部X2は、図6乃至図9に示す如く、他方の取付用腕部5から一方方向(左方向)へ向かって突出する短円柱状の他方枢軸14と、支持体6の膨出部7の他方側に開設した横向きの嵌挿用凹部16へ開口端16bから他方枢軸14を出し入れできる他方軸受部15とからなる。他方軸受部15は、図17に示す如く、支持体6の一方枢軸10及び他方軸受部15が形成する支持体軸芯Y1と分離状態の便座2の一方軸受部13及び他方枢軸14が形成する便座軸芯Y2との交差角θを大きくした便座傾斜姿勢E1のまま他方枢軸14を受け入れでき、更に、図18に示す如く、他方枢軸14を受け入れたまま両軸芯Y1,Y2の交差角θを小さくさせる便座傾斜姿勢E2(図18(A)参照)を経て両軸芯Y1,Y2を合致させる便座接合姿勢F(図18(B)参照)へ移行させるのに伴い、前記一方(左)の枢支部X1の一方枢軸10を、図4(A)(B)に示す如く一方軸受部13の開口部13bを通過させて軸装部13aへ挿着できるように、図8に示すように嵌挿用凹部16の奥側16aに比べて開口端16b側を大径となるように傾斜部16cを形成してある。嵌挿用凹部16は、この開口端16b側を大径にする傾斜部16cが設けられる領域を、便座傾斜姿勢E1の他方枢軸14を受け入れるときの便座軸芯Y2が通過する他方枢軸受入れ側とすることで、他方枢軸受入れ側以外の大径でない領域を設けて異物が嵌挿用凹部内へ侵入するのを抑制するようにしてある。嵌挿用凹部16は、この大径となる他方枢軸受入れ側を嵌挿用凹部16の下半側に位置させてあり、大径の他方枢軸受入れ側を便座使用者から見えに難くして見栄えよくなるようにしてある。
【0028】
前記他方軸受部15は、図8に示す如く、嵌挿用凹部16の奥側突き当たりに、前記両軸芯Y1,Y2を大きく交差させる便座傾斜姿勢E1(図17(B)参照)のまま他方枢軸14を受け入れるときに他方枢軸14の一方側外隅部14aを侵入させる侵入用空間部16dと、前記両軸芯Y1,Y2を小さく交差させる便座傾斜姿勢E2(図18(A)参照)を経て両軸芯Y1,Y2を合致させる便座接合姿勢F(図18(B)及び図9参照)へ移行させるのに伴い傾動する他方枢軸14の先端面14bを当接させて一方側外隅部14aを侵入用空間部16dから引き出させる引出し面16eとを設けてある。侵入用空間部16d及び引出し面16eは、図18(A)に示す如く、便座2が両軸芯Y1,Y2を小さく交差させる便座傾斜姿勢E2で傾動するとき、一方(左)の枢支部X1の一方軸受部13が支持体6の膨出部7の一方側の外隅部7aの外側を通過し始めた後に、引出し面16e(図8参照)に対する他方枢軸14の先端面14bの当接を開始させ、一方側の外隅部7aの外側を通過するまでは便座2を他方(右)へ移動させないようにしてある。本例の他方軸受部15は、図8に示す如く、便座2を起立させた状態で着脱操作を行うようにするために(図17及び図18参照)、侵入用空間部16dを下方に設けると共に、先端面14bを上方に設けてある。他方軸受部15は、嵌挿用凹部16の奥側突当りを、侵入用空間部16dから引出し面16eへ向かって連続的に傾斜するように形成し、侵入用空間部16dへ侵入したコイン等の異物が嵌挿用凹部16の奥側突き当たり面16gに密着して外れ難くなるのを防止するようにしてある。
【0029】
更に、前記他方軸受部15は、図8に示す如く、嵌挿用凹部16の傾斜部16cと侵入用空間部16dとの間に、軸受面16fを支持体軸芯Y1と平行に形成してある。軸受面16fは、正面側からみて半円状に形成され(図(B)参照)、他方枢軸14の下半外周面を軸支して便座2の荷重を受けるようにしてある(図6参照)。
【0030】
本発明便座装置1は、図8及び図9に示す如く、他方軸受部15に侵入用空間部16d及び引出し面16eを設けることにより、前記両軸芯Y1,Y2を小さく交差させる便座傾斜姿勢E2(図18(A)参照)を経て両軸芯Y1,Y2を合致させる便座接合姿勢F(図18(B)参照)へ移行させるのに伴い傾動する他方枢軸14の一方側外隅部14aを侵入用空間部16dから引き出させて他方枢軸14の先端面14bを引出し面16eに乗り上がるように当接させることで、引き出させた寸法分だけ便座軸芯方向Y2に沿う移動を減少させて、装着状態の便座2の便座軸芯方向Y2に沿うガタ付きを小さくすることができる。
【0031】
本発明便座装置1は、図1乃至図9に示す態様では便座2を起立させた状態で便座接合作業を行うようにしたものであるが、図10に示す如く、便座2を水平な姿勢にして便座接合作業ができるように、他方の枢支部X2の他方軸受部15を形成することも可能である。
【0032】
本発明便座装置1は、嵌挿用凹部16への異物の侵入防止を完全なものとするために、図11及び図12に示す如く、他方軸受部15と他方の取付用腕部5との間に異物侵入防止具41を設け、嵌挿用凹部16と他方枢軸14の隙間を異物侵入防止具41で覆うこともある。異物侵入防止具41は、硬質の合成樹脂やゴム素材からなる当接表面が滑り易い閉塞板41aと、軟質の合成樹脂やゴム素材又はバネ材からなる圧縮変形可能な弾性を有する環状の押圧部41bとを備え、図12に示すように他方枢軸14に押圧部41bを外嵌装着させると共に、他方枢軸14に閉塞板41aを遊嵌合させてある。異物侵入防止具41は、図17(B)に示すように支持体軸芯Y1と便座軸芯Y2を大きく交差させた便座傾斜姿勢E1のまま他方枢軸14を他方軸受部15の嵌挿用凹部16の奥側へ挿入するとき、この挿入を阻害しないように環状の押圧部41bの一部が圧縮変形し、また、図11に示すように支持体軸芯Y1と便座軸芯Y2を一致させるように便座2の装着状態を終了して便座2を揺動できる状態となったとき、嵌挿用凹部16の開口端16bの開口周縁に閉塞板41aの当接表面を押圧部41bの弾性押圧力で圧着させて、開口端16bを覆うようになる。異物侵入防止具41は、閉塞板41aの当接表面が滑り易くなっているため、便座2の揺動に伴い、嵌挿用凹部16の開口端16bの開口周縁に対して円滑に摺動して開口端16bを常に覆うことができる。
【0033】
本発明便座装置1は、図13に示す如く、他方の枢支部X2側に備えた給電装置23の外回りに、一次コイル側シール具36a及び二次コイル側シール具36bからなる磁気シール具36を設け、一次コイル24と二次コイル25の間の電磁誘導による低周波の磁界が給電装置23の外側へ漏れ出るのを抑制するようにしてある。支持体6の膨出部7は、給電装置収納用凹部7bの奥側に、一次コイル24を内蔵した一次コイル収納具37を筒状の一次コイル側シール具36aを介して挿着すると共に、凹部7bの開口側に、二次コイル25を挿着した他方軸受部15を筒状の二次コイル側シール具36bを介して挿着してある。給電装置23は、磁気シール具36が設けられることで、磁界の漏れ出しを抑制すると共に、一次コイル24と二次コイル25の間の伝送効率を上昇させることができる。
【0034】
前記他方軸受部15の侵入用空間部16d及び引出し面16eは、図14及び図15に示す別態様とすることも可能である。この別態様の他方軸受部15は、嵌挿用凹部16の奥側突き当たりに、環状段部33を嵌挿用凹部16と別体又は一体に設け、環状段部33の内側凹部の下半側を侵入用空間部16dとする共に、環状段部33の右側面の上半側を引出し面16eとしてある。侵入用空間部16dは、中間の幅寸法W(図(B)参照)を他方枢軸14の外径寸法D(図(A)参照)より若干大きくしてあり、前述の如く、一方軸受部13が支持体6の膨出部7の一方側の外隅部7a(図18(A)参照)の外側を通過し始めた後に、引出し面16eに対する他方枢軸14の先端面14bの当接を開始させるようにしてある。環状段部33は、内側に異物侵入阻止用突起35が設けられ、内側凹部に侵入したコイン等の異物が嵌挿用凹部16の奥側突き当たり面16gに密着して外れ難くなるのを防止するようにしてある。この突起35は、棒状(図14(B)参照)のものや、点状のものを点在させる(図(C)参照)等して設けてある。
【0035】
前記他方(右)の枢支部X2の他方軸受部15は、図8及び図9に示す如く、侵入用空間部16d及び引出し面16eを設け、装着状態の便座2の便座軸芯方向Y2に沿うガタ付きを小さくしてある。しかし、他方の枢支部X2の他方軸受部15は、図示は省略したが、一方(左)の枢支部X1にガタ付きを小さくする機構やガタ付きを無くする機構を設けたとき、侵入用空間部16d及び引出し面16eを設ける必要がないため、図16に示す如く、嵌挿用凹部16の奥側突き当たりを平坦に仕上げることができる。
【0036】
前記他方(右)の枢支部X2は、図6に示す如く、他方軸受部15の嵌挿用凹部16より奥側に給電装置23の一次コイル24を埋設すると共に、他方枢軸14に給電装置23二次コイル25を埋設してある。一次コイル24は、ボビン24aの内部にコイル24bを内蔵させたものであり、また、二次コイル25は、ボビン25aの内部にコイル25bを内蔵させたものである。
【0037】
本発明便座装置1は、分離した便座を装着するとき、図17(B)に示すように支持体軸芯Y1と便座軸芯Y2を大きく交差させた便座傾斜姿勢E1のまま他方枢軸14を他方軸受部15の嵌挿用凹部16の奥側へ挿入した後に、図18(A)(B)に示すように両軸芯Y1,Y2を小さく交差させる便座傾斜姿勢E2を経て両軸芯Y1,Y2を合致させる便座接合姿勢Fへ移行させることで、一方枢軸10を一方軸受部13の開口部13bを通過させて軸装部13aへ入れて便座装着ができ、便座2を分離するときには、上記操作と逆の操作を行うことで、図17(A)(B)に示すように両軸芯Y1,Y2を大きく交差させた便座傾斜姿勢E1のまま他方枢軸14を他方軸受部15の嵌挿用凹部16の奥側から抜き出して便座分離ができるため、便座2の着脱が簡単且つ確実にできる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明便座装置の実施の形態を示すものであり、支持体に便座を装着した状態の概略構成を示す平面図である。
【図2】同装着状態の本発明便座装置の左側面図である。
【図3】図2の一点鎖線イで囲まれた箇所を拡大して示す断面図である。
【図4】一方の枢支部を示すものであって、図(A)は一方枢軸と一方軸受部の分離状態を示す左側面図、図(B)は同分離状態を示す正面図、図(C)は一方枢軸と一方軸受部の接合状態を示す左側面図、図(D)は同接合状態を示す正面図である。
【図5】一方の枢支部に設けたロック手段の別態様を示すものであって、図(A)は一方軸と一方軸受部を分離した非ロック状態の左側面図、図(B)は非ロック状態の正面図、図(C)は一方枢軸と一方軸受部を接合してロック状態の左側面図、図(D)はロック状態の正面図である。
【図6】他方の枢支部を示すものであって、他方軸受部と他方枢軸の接合状態の正面図である。
【図7】他方の枢支部の他方枢軸を示すものであって、図(A)は部分断面した正面図、図(B)は左側面図である。
【図8】他方の枢支部の他方軸受部を示すものであって、図(A)は便座接合作業の開始状態の他方枢軸を二点鎖線で示す正面図、図(B)は右側面図である。
【図9】他方の枢支部の他方軸受部を示すものであって、図(A)は便座接合作業の完了状態の他方枢軸を二点鎖線で示す正面図、図(B)は同状態の右側面図である。
【図10】便座を水平な姿勢にして便座接合作業ができるようにした態様の他方の枢支部の他方軸受部を示すものであって、図(A)は便座接合作業の開始状態の他方枢軸を二点鎖線で示す平面図、図(B)は右側面図である。
【図11】異物侵入防止具を備えた態様の他方の枢支部を示すものであって他方軸受部と他方枢軸の接合状態の正面図である。
【図12】異物侵入防止具を備えた態様の他方の枢支部の他方枢軸を示すものであって、図(A)は部分断面した正面図、図(B)は左側面図である。
【図13】磁気シール具を設けた態様の他方の枢支部を示す部分断面した正面図である。
【図14】他方の枢支部の別態様の他方軸受部を示すものであって、図(A)は便座接合作業の開始状態の他方枢軸を二点鎖線で示す正面図、図(B)は右側面図、図(C)は突起の別態様を示す右側面図である。
【図15】他方の枢支部の別態様の他方軸受部を示すものであって、図(A)は便座接合作業の途中状態の他方枢軸を二点鎖線で示す正面図、図(B)は便座接合作業の完了状態の他方枢軸を二点鎖線で示す正面図である。
【図16】他方の枢支部の更に別態様の他方軸受部を示すものであって、図(A)は便座接合作業の完了状態の他方枢軸を二点鎖線で示す正面図、図(B)は右側面図である。
【図17】支持体に便座を装着する手順を示す部分断面した正面図であって、図(A)は支持体と便座を完全に分離した状態を示し、図(B)は便座傾斜姿勢のまま他方軸受部の嵌挿用凹部へ他方枢軸を挿入する装着開始状態を示す。
【図18】同手順を示す部分断面した正面図であって、図(A)は一方の枢支部の一方枢軸へ一方軸受部を接近させた状態を示し、図(B)は便座の装着状態を示す。
【符号の説明】
【0039】
1…本発明便座装置、2…便座、4…一方の取付用腕部、5…他方の取付用腕部、6…支持体、7…膨出部、10…一方枢軸、13…一方軸受部、13a…軸装部、13b…一方枢軸出入用開口部、14…他方枢軸、15…他方軸受部、16…嵌挿用凹部、16c…傾斜部、16d…侵入用空間部、16e…引出し面、23…給電装置、24…一次コイル、25…二次コイル、E…便座傾動姿勢、E1…両軸芯Y1,Y2の交差角度を大きくした便座傾斜姿勢、E2…両軸芯Y1,Y2の交差角度を小さくした便座傾斜姿勢、X1…一方の枢支部、X2…他方の枢支部、Y1…支持体軸芯、Y2…便座軸芯、θ…交差角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座面を形成した本体部の後方に一方の取付用腕部と他方の取付用腕部を突設した便座と、両方の取付用腕部で挟まれる膨出部を形成した支持体と、支持体に両方の取付用腕部を介して便座を揺動自在に枢支する一方の枢支部及び他方の枢支部を備え、便座が支持体に対し着脱可能である便座装置において、一方の枢支部は、膨出部の一方側から突出する一方枢軸と、一方の取付用腕部に設けられ軸装部及び軸装部へ一方枢軸を出し入れするための一方枢軸出入用開口部を備えた一方軸受部とからなり、他方の枢支部は、他方の取付用腕部から突出する他方枢軸と、膨出部の他方側に横向き開設した嵌挿用凹部へ他方枢軸を出入れできる他方軸受部とからなり、この他方軸受部は、支持体の一方枢軸及び他方軸受部が形成する支持体軸芯と分離状態の便座の一方軸受部及び他方枢軸が形成する便座軸芯との交差角を大きくした便座傾斜姿勢のまま他方枢軸を受け入れでき、他方枢軸を受け入れたまま両軸芯の交差角を小さくさせる便座傾斜姿勢を経て両軸芯を合致させる便座接合姿勢へ移行させるのに伴い、一方枢軸を一方軸受部の開口部を通過させて軸装部へ入れることができるように、嵌挿用凹部の奥側に比べて開口端側を大径に形成したことを特徴とする便座装置。
【請求項2】
前記他方軸受部は、嵌挿用凹部の奥側突き当たりに、前記両軸芯を大きく交差させる便座傾斜姿勢のまま他方枢軸を受け入れるときに他方枢軸の一方側外隅部を侵入させる侵入用空間部と、前記両軸芯を小さく交差させる便座傾斜姿勢を経て両軸芯を合致させる便座接合姿勢へ移行させるのに伴い傾動する他方枢軸の先端面を当接させて一方側外隅部を侵入用空間部から引き出させる引出し面とを設けた請求項1記載の便座装置。
【請求項3】
前記他方軸受部の嵌挿用凹部における奥側に比べて大径にする開口端側の領域が、前記便座傾斜姿勢の他方枢軸を受け入れるときの便座軸芯が通過する他方枢軸受入れ側である請求項1又は2記載の便座装置。
【請求項4】
前記他方枢軸受入れ側が前記嵌挿用凹部の下半側に形成されている請求項3記載の便座装置。
【請求項5】
前記支持体に設けた制御部と、前記支持体における他方軸受部より奥側に設けて制御部に接続した一次コイルと、便座に設けた電気式加熱手段と、前記他方枢軸に設けて加熱手段に接続した二次コイルとからなり、両コイル間の電磁誘導で給電を行うようにした給電装置を備えた請求項1乃至4のいずれか1項に記載の便座装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate