説明

便座

【課題】変形や破損が防止され、しかも外観の良い便座を提供する。
【解決手段】合成樹脂製の便座1を、着座者側の上面を構成する上部材7と、反対側の下面を構成する下部材8との二部材で構成する。下部材8の下面部13に下方に向けて突曲する脚部14を形成する。脚部14の壁部と下部材8の下面部とでなすコーナー部18の内面から上部材7を支持するための支持部19を突出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は上下2分割された上部材と下部材とで構成される便座に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の便座としては、例えば特許文献1に示すように、便座を、着座者側となる上面を構成する上部材と、反対側の下面を構成する下部材との二部材で構成したものがある。
【0003】
この種の便座は、着座者からの荷重を下部材における上部材との接合部である内周縁部及び外周縁部のみで受け、これを脚部を介して便器側に伝えるものである。このため便座に応力集中が生じて便座が変形したり破損したりする恐れがある。
【特許文献1】特開2006−491号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、便座の変形や破損を防止し、しかも外観の良い便座を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明に係る便座は、合成樹脂製の便座1を、着座者側の上面を構成する上部材7と、反対側の下面を構成する下部材8との二部材で構成し、下部材8の下面部13に下方に向けて突曲する脚部14を形成し、該脚部14の壁部と下部材8の下面部とでなすコーナー部18の内面から上部材7を支持するための支持部19を突出して成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明にあっては、上部材に加わる着座者の荷重を下部材の支持部で受けて、上部材から下部材に加わる荷重を分散し、便座の変形や破損を防止できる。また、支持部を脚部の底部ではなく下部材の下面部と脚部の壁部とでなすコーナー部の内面に形成しているので、便座を起立させたときに外観上目立つ脚部の下面にヒケが発生することを防止できる。また仮にヒケが生じたとしても、このヒケは目立ち難いコーナー部の外面に生じるため、外観が阻害されることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を図1乃至8に基づいて説明する。なお、以下の説明で用いる方向は通常の姿勢で便座1に着座した使用者(着座者)を基準とするものであり、つまり以下の説明における前方は着座者の前方を意味する。また、以下の説明では、特に記載する場合を除き、便座1及び便蓋26を前方に倒して便座1を便器本体2上に載置した状態につき説明する。
【0008】
本実施形態の便座1は図2に示す便器に用いられる暖房便座であって、便座1の内部には便座1の表面を加熱するためのヒータ等の加熱手段(図示せず)が内装される。
【0009】
図1に示す便座1は平面視環状の着座部4の左右両側端部から被取付部5を後側に向けて一体に突出してなる。図2に示すように、左右両側の被取付部5の間には便器本体2の後部から上方に突出した取付部27が配置される。各被取付部5を取付部27の側面部に枢支することで、便座1は取付部27に上下方向に回動自在に取り付けられる。
【0010】
また、取付部27の両側には便蓋26の後部が枢支され、これら便器本体2、便座1、便蓋26で便器が構成される。
【0011】
着座部4の中央の開口6は前後に長い略楕円形に形成されている。着座部4の後方を除く外周は平面視で開口6の周縁に概ね沿っており、着座部4は前側程徐々に左右の幅が狭くなっている。
【0012】
図7等に示すように、便座1は上面、外周面、及び内周面を構成する上部材7と、下面を構成する下部材8との二部材で構成され、上部材7及び下部材8は共に合成樹脂製である。
【0013】
便座1を上下に2分割してなる上部材7及び下部材8のうち、上部材7は、着座部4の外周面と内周面の夫々を構成する外周壁部10と内周壁部11の間には下方に開口する環状の空洞部3が形成されている。
【0014】
下部材8は便器本体2の略水平な上面と略平行な板状で平面視環状の下面部13を備えており、該下面部13により着座部4の下面を構成している。下部材8の下面部13は空洞部3の下方を閉塞して空洞部3を略密閉された空間としており、この空洞部3に前記加熱手段が収納される。
【0015】
下部材8の下面部13の外周縁及び内周縁から立ち上げた立上部12は外周壁部10及び内周壁部11に接着や溶着等により接合される。
【0016】
図4に示すように、環状の下面部13の後部両側には下面部13の厚みと略同じで且つ下方に向けて突曲した凹状の脚部14が下面部13と一体に形成されている。各脚部14は下面部13の外側端部で且つ左右対称となる位置に配置されている。
【0017】
各脚部14は下面部13の外周縁に沿って長い略楕円形状に形成されており、各脚部14の前壁部15及び後壁部16は平面視で弧状に湾曲している。また、各脚部14の前記前壁部15及び後壁部16を含む周壁部17は上側程徐々に周壁部17の外方に位置するよう湾曲している。
【0018】
上記下部材8の下面部13と該下面部13より下方に突出した各脚部14の周壁部17とで成すコーナー部18の内面からは上部材7を支持するための支持部19が突出している。
【0019】
本実施形態では、下面部13と各脚部14の前壁部15とで成す前側コーナー部18aと、下面部13と各脚部14の後壁部16とで成す後側コーナー部18bの夫々に支持部19を形成している。
【0020】
上記各脚部14の前後両側に設けた支持部19は前壁部15又は後壁部16から上方に突出するものであり、図6に示すように円柱状の柱部20と、柱部20の外周面から突出した補強用のリブ21とで構成される。
【0021】
リブ21は各支持部19の柱部20に周方向に複数形成してあり、各リブ21は柱部20の上下方向の全長又は略全長に亘っている。本実施形態では、各支持部19のリブ21は柱部20の左右両側に設けてあり、また、各脚部14の前側に設けた支持部19にあっては柱部20の後側に、各脚部14の後側に設けた支持部19にあっては柱部20の前側にリブ21を設けてある。
【0022】
各支持部19の左右のリブ21はその下端が接続された前壁部15又は後壁部16と同様に平面視で弧状に湾曲している。なお、各支持部19の柱部20及び各リブ21は脚部14の底部には直接接続されていない。
【0023】
図3に示すように上記各支持部19の上端面は着座部4の上面を構成する上部材7の上面部9の内面に当接し、これにより上部材7を支持する。
【0024】
なお、支持部19は、柱部20の上端面と全てのリブ21の上端面を上部材7の上面部9の内面に当接するのが好ましいが、柱部20の上端面と任意のリブ21の上端面だけを上面部9の内面に当接しても良く、また、柱部20の上端面だけを上部材7の上面部9の内面に当接しても良いものとする。また、各支持部19の上端を上部材7に当接せず、上面部9の下方にわずかな隙間を介して配置し、着座者の荷重により上部材7の上面部9が下方に撓んだとき各支持部19の上端で上部材7の上面部9を支持するようにしても良いものとする。
【0025】
また、図4等に示すように、下部材8の下面部13の前部両側には、使用者が便座1の着座部4上に着座したことを検出するための手段として着座検知装置22を設けている。図8に示すように、各着座検知装置22は、マイクロスイッチからなるスイッチ23と、着座時にスイッチ23を切替操作する操作部材24を備えている。
【0026】
スイッチ23及び操作部材24は共に下部材8の下面部13に取り付けられる。操作部材24は上方に開口する略凹状のゴム材からなり、操作部材24の底部中央には上方に向けてスイッチ操作部25を突出している。
【0027】
上記便座1を使用するときには、便座1を取付部27に対して回動し、便座1の下面に設けた各脚部14の底部と各操作部材24の底部28を便器本体2の上面に載置する。つまり各脚部14のみならず各操作部材24も便座1の脚として機能するものであり、便座1は後部両側の脚部14と前部両側の操作部材24の4点で支持される。
【0028】
上記便器本体2上に載置した便座1に使用者が着座すると、この着座者の荷重は上部材7から下部材8に伝わり、下部材8の各脚部14及び各操作部材24を介して便器本体2に伝わる。
【0029】
上記着座者からの荷重により各着座検知装置22の操作部材24が弾性変形して便座1の前側は若干下方に移動する。このとき、各操作部材24のスイッチ操作部25によりスイッチ23が切替えられて便座1に使用者が着座したことが検知される。この検知結果は加熱手段や、便器本体2に設けられる脱臭装置や洗浄装置等の各種装置の動作制御に用いられる。
【0030】
ここで、上記上部材7の上面部9に加わる着座者の荷重は、下部材8における上部材7との接合部である内外の周縁部と、各支持部19の上端に伝わる。このため上部材7から下部材8に加わる荷重を分散することができ、薄肉の便座1の変形や破損を防止できる。
【0031】
また、各支持部19に加わった荷重は直下に位置する便器本体2上に載置された脚部14に直接伝わり、上部材7の外周壁部10や内周壁部11、下部材8の下面部13等には大きな荷重が加わらないようになっている。従ってより一層便座1の変形や破損を防止できる。
【0032】
また、脚部14の底部から上部材7を支持するための支持部を突出することが考えられるが、このように合成樹脂製品である下部材8の脚部14に支持部を形成した場合、脚部14の薄肉の底部の外面において「ヒケ」が生じ、このヒケが便座1を起立させたときに外観上目立って見栄えを悪くする恐れがある。
【0033】
しかし、本実施形態では上記支持部19を脚部14の底部ではなく下部材8の下面部13と脚部14の壁部とでなす支持部19に対して厚肉となったコーナー部18の内面に形成してあるので、上記ヒケの発生を抑えることができる。また仮にヒケが生じたとしてもこのヒケは目立ち難い脚部14の根元部に位置するコーナー部18の外面に生じるものであり、外観が阻害されることもない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す便座の要部断面図である。
【図2】同上の便座が取り付けられる便器の分解斜視図である。
【図3】同上の便座の斜視図である。
【図4】同上の下部材を示し、(a)は底面図、(b)は側面図、(c)は側断面図である。
【図5】同上の下部材の要部側面図である。
【図6】同上の下部材の要部斜視図である。
【図7】同上の下部材の要部断面図である。
【図8】同上の着座検知装置の断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 便座
7 上部材
8 下部材
13 下面部
14 脚部
18 コーナー部
19 支持部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製の便座を、着座者側の上面を構成する上部材と、反対側の下面を構成する下部材との二部材で構成し、下部材の底部に下方に向けて突曲する脚部を形成し、該脚部の壁部と下部材の下面部とでなすコーナー部の内面から上部材を支持するための支持部を突出して成ることを特徴とする便座。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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