説明

係止片付き取付金具、取付金具用電動工具、取付金具施工ユニット

【課題】取付対象部材に形成された貫通孔に、取付対象部材の一方の側から軸部を通し、この軸部に回転自在に設けられている係止片を、取付対象部材の他方の側にて回転させて、取付対象部材に係合させて取り付ける構造の係止片付き取付金具について、床、天井に対する施工も可能にする技術の提供。
【解決手段】本発明の係止片付き取付金具10は、取付対象部材の孔に挿入される軸部11に、該軸部11を回転させるための電動工具30との係合用の工具係合部17が形成され、軸部11を回転させることで、軸部11に支軸12を中心にアンバランスとなるように軸支されている係止片13を、遠心力によって、軸部11の軸心方向と直交する張り出し姿勢とすることができる。電動工具30は、軸部11の雄ねじ部14に螺着されたナット15の回り止め用のナット係止部材34を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁や天井等の作業員が手を入れることのできない中空構造物等に各種物品(取付物)を取り付けるときに用いて好適な係止片付き取付金具、この係止片付き取付金具の施工用の取付金具用電動工具、前記係止片付き取付金具と前記取付金具用電動工具とからなる取付金具施工ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の係止片付き取付金具は、中空構造物の構成部材等の、該係止片付き取付金具を取り付ける対象の部材(取付対象部材)の厚さよりも充分に長い軸部の一端側に、その軸部の軸心方向と直交する方向に支軸を設けるとともに、その支軸に回転自在に係止片を設けて構成されている。前記係止片は、前記支軸を中心とする回転によって、その長手方向が前記軸部の軸心方向と平行する方向に向けられた軸向き姿勢と、前記長手方向がその軸部の軸心方向と直交する方向に向けられて、軸部から両側(あるいは片側)に張り出す張り出し姿勢とを切り替え可能になっている(特許文献1,2参照)。
係止片は、張り出し姿勢になったときには、軸部の径の範囲外に大きく突出した状態となる。
【0003】
上記構成からなる係止片付き取付金具の中空構造物への取り付けは、中空構造物の壁等の取り付け位置に軸部の径よりも少し大きい径の孔を開け、その孔に前記軸向き姿勢とした係止片と軸部とを挿入して、軸部の一端側に軸支されている前記係止片を前記孔を通過させ、中空構造物の内側空間内に配置する。係止片付き取付金具は、係止片が軸部に対して支軸を中心にしてアンバランスとなるように回転自在に取り付けられているので、係止片は重力により回転し、張り出し姿勢となる。これにより、中空構造物の孔に挿入された係止片付き取付金具は、壁等の孔からの抜け出しが阻止される。また、軸部に形成されている雄ねじ部に螺着しておいたナットを締め付けることで、係止片付き取付金具を、中空構造物(詳細には、中空構造物の壁等、軸部及び係止片を通すための孔を形成した部材)に固定できる。中空構造物に固定された係止片付き取付金具を介して中空構造物の表側に各種物品を取り付けることが可能となる。
【特許文献1】実公平3−14573号公報
【特許文献2】特開平11−44311号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の係止片付き取付金具は、軸向き姿勢で孔を通過させた係止片が、該係止片の自重によって回転して張り出し姿勢となる構成であるため、床等に対する施工(下向き施工)が不可能であった。
また、従来の係止片付き取付金具は、壁等の取付対象部材に固定する場合(横向き施工の場合)は、係止片を孔に通過させた後、係止片が自重によって回転して張り出し姿勢となる向きで軸部を固定した状態でナットを締め付けて取付対象部材(中空構造物の構成部材等)に固定する必要があるため、施工性に不満があった。このため、係止片付き取付金具を多数施工する場合には、施工時間が長くなってしまう、といった問題があった。
【0005】
本発明は、前記課題に鑑みて、短時間で簡単に施工でき、床等に対する下向き施工も実現できる係止片付き取付金具、取付金具用電動工具、取付金具施工ユニットの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明では以下の構成を提供する。
第1の発明は、軸部と、該軸部の一端側に前記軸部の軸心方向と直交する方向の支軸に回転自在に軸支された細長形状の係止片と、前記軸部に形成された雄ねじ部に螺着されたナットとを具備し、前記係止片は、前記支軸を中心とする回転によって、その長手方向が前記軸部の軸心方向と平行する方向に向けられた軸向き姿勢と、前記長手方向が前記軸部の軸心方向と直交する方向に向けられた張り出し姿勢とを切り替え可能になっている係止片付き取付金具であって、前記軸部の他端側に、該軸部を回転させるための工具が係合される工具係合部が形成されていることを特徴とする係止片付き取付金具を提供する。
第2の発明は、前記工具係合部が、前記軸部の他端部に突設された多角形柱状の突起であることを特徴とする第2の発明の係止片付き取付金具を提供する。
第3の発明は、前記工具係合部が、前記軸部の他端部の端面から窪むレンチ穴であることを特徴とする第1の発明の係止片付き取付金具を提供する。
第4の発明は、さらに、前記工具係合部に係合して、前記軸部と一体回転可能に装着された回転用補助部材を具備し、前記回転用補助部材は、前記軸部の他端側の端部に嵌合して一体回転可能に係合される軸部係合部が形成された補助部材本体と、この補助部材本体の前記軸部係合部とは反対の側に形成され、前記軸部を回転させるための工具が係合される補助部材工具係合部とを具備し、しかも、前記回転用補助部材は、全体又は一部が合成樹脂製の緩衝部とされ、前記補助部材工具係合部に嵌合された前記工具から前記軸部係合部に係合された前記軸部の前記工具係合部へ前記緩衝部を介して回転駆動力を伝達する伝達経路を構成することを特徴とする第1〜3のいずれかの発明の係止片付き取付金具を提供する。
第5の発明は、さらに、前記工具係合部に係合して、前記軸部と一体回転可能に装着された回転用補助部材を具備し、前記回転用補助部材は、前記軸部の他端側の端部に嵌合して一体回転可能に係合される軸部係合部が形成された補助部材本体と、この補助部材本体の前記軸部係合部とは反対の側に形成され、前記軸部を回転させるための工具が係合される補助部材工具係合部とを具備し、しかも、前記回転用補助部材は、前記補助部材工具係合部、前記軸部係合部、前記補助部材工具係合部と前記軸部係合部との間、の内の少なくとも1以上に設けられた易破壊部を介して、前記補助部材工具係合部に嵌合された前記工具から前記軸部係合部に係合された前記軸部の前記工具係合部へ回転駆動力を伝達する伝達経路を構成することを特徴とする第1〜4のいずれかの発明の係止片付き取付金具を提供する。
第6の発明は、第1〜3のいずれかの発明の係止片付き取付金具の前記軸部の前記工具係合部あるいは第4又は第5の発明の係止片付き取付金具の前記回転用補助部材の前記補助部材工具係合部、である回転力伝達用係合部に係合させて前記軸部を回転させる取付金具用電動工具であって、回転駆動軸が突出された工具本体と、前記回転駆動軸の先端に設けられ、前記係止片付き取付金具の前記回転力伝達用係合部に係脱可能に係合する回転力伝達部材と、前記工具本体に取り付けられたナット係止部材とを具備し、前記ナット係止部材は、前記工具本体に取り付けられた取付部と、この取付部に突設されて前記工具本体の前記回転駆動軸に沿って設けられ、前記係止片付き取付金具の前記軸部の前記雄ねじ部に螺着されている前記ナットに係合することで前記ナットの回転を規制するナット係止片とを具備することを特徴とする取付金具用電動工具を提供する。
第7の発明は、前記ナット係止部材の前記ナット係止片が、前記工具本体の前記回転駆動軸及び前記回転力伝達部材を収納する筒状に形成されており、前記取付部から突出する前記ナット係止片の先端に、前記係止片付き取付金具の前記ナットに係合して前記ナットの回転を規制するナット係止部が設けられていることを特徴とする第6の発明の取付金具用電動工具を提供する。
第8の発明は、前記回転力伝達部材が、前記工具本体の回転駆動軸の先端に設けられた駆動ソケットに着脱可能に嵌合して前記回転駆動軸に取り付けられており、前記回転力伝達部材は、前記駆動ソケットに嵌合する取付用嵌合部と、前記係止片付き取付金具の前記回転力伝達用係合部と係合される軸部係合部とを具備し、しかも、前記回転用補助部材は、全体又は一部が合成樹脂製の緩衝部とされ、前記取付用嵌合部に嵌合された前記駆動ソケットから前記軸部係合部に係合された前記回転力伝達用係合部へ前記緩衝部を介して回転駆動力を伝達する伝達経路を構成することを特徴とする第6又は第7の発明の取付金具用電動工具を提供する。
第9の発明は、第1〜5いずれかの発明の係止片付き取付金具と、第6〜8のいずれかの発明の取付金具用電動工具とからなることを特徴とする取付金具施工ユニットを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、係止片付き取付金具の軸部に設けられている工具係合部(あるいは、回転補助部材の補助部材工具係合部)を利用して、軸部を回転させることで、支軸によって軸部に回転自在に設けられている係止片を、遠心力によって、張り出し姿勢にすることができる。係止片付き取付金具の係止片を、係止片付き取付金具の取付対象の部材(以下、取付対象部材とも言う)に形成した孔(貫通孔)に軸向き姿勢で軸部とともに取付対象部材の一方の側(表側)から通して、取付対象部材の他方の側(裏側)に配置した後、取付対象部材の一方の側(表側)の作業によって軸部を回転させることで、係止片を張り出し姿勢に姿勢変更することができる。このため、床等の部材に対する下向き施工(取付対象部材の上側を「表側」とする施工)でも、取付対象部材に対する固定が可能である。
また、この係止片付き取付金具は、前記部材の一方の側(表側)での作業によって、係止片付き取付金具の軸部の雄ねじ部に螺着されているナットの回転を規制した状態で軸部を回転させることで、前記取付対象部材の孔に挿通状態になっている前記軸部が前記部材の一方の側への突出寸法を増大するように移動するため、これにより、係止片が取付対象部材に係合する。つまり、軸部の回転が、係止片を張り出し姿勢にする操作であるとともに、係止片を取付対象部材に係合させる操作にもなっている。このため、係止片付き取付金具を、取付対象部材に取り付ける作業を、簡単に短時間で行える。
また、本発明に係る取付金具用電動工具を使用すれば、ナット係止部材のナット係止片によって、係止片付き取付金具の軸部の雄ねじ部に螺着されているナットの回転を規制しながら、軸部を回転させることができるため、係止片付き取付金具を、取付対象部材に取り付ける作業を、効率良く行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を実施した係止片付き取付金具、取付金具用電動工具、取付金具施工ユニットについて、図面を参照して説明する。
図1は本発明に係る係止片付き取付金具10(以下、取付金具と略称する場合がある)を示す図であって、(a)は平面図、(b)は軸部11の一端側から見た構造を示す図、(c)は分解正面図、図2は取付金具10の他端側の工具係合部17付近を示す図であって、(a)は軸部11の軸心方向他端側から見た構造を示す図、(b)は正面図、図3(a)〜(c)及び図4(a)〜(c)は取付金具10の施工手順を順番に説明する図である。
【0009】
図1(a)〜(c)、図2(a)、(b)に示すように、取付金具10は、軸部11と、該軸部11の一端側に前記軸部11の軸心方向と直交する方向の支軸12に回転自在に軸支された細長形状の係止片13と、前記軸部11に形成された雄ねじ部14に螺着されたナット15と、軸部11に外挿された座金15aとを具備している。
前記座金15aは、ナット15よりも軸部11の他端側となるように設けられる。
座金15aはナット15と別体になっているが、両者が一体になっている座金付きナットの採用も可能であることは言うまでもない。
【0010】
前記支軸12は、前記軸部11の一端部(一端側の端部)を2分割する係止片収納溝16を横断するようにして、前記軸部11の軸心方向と直交する方向に設けられている。
前記係止片収納溝16は、前記軸部11の一端側の先端から他端側に向かって切り込むように形成されている。この係止片収納溝16の、前記軸部11の軸心方向において最も他端側に位置する溝底16aは、支軸12よりも前記軸部11の他端側に位置する。
【0011】
前記取付金具10の係止片13は、細長板状の部材である。
この係止片13は、その長手方向において重心位置(重心13a)が前記支軸12を中心とする回転中心からずらされている。以下、係止片13について、支軸12から重心13aが位置する側を重量側、反対側を軽量側とも言う。図示例の取付金具10の係止片13については、前記支軸12から長手方向一端側の長さが、支軸12から長手方向他端側の長さよりも長くなっており、前記支軸12からの長さが長い側が重量側、反対側が軽量側になっている。
【0012】
図示例の前記係止片13は、支軸12を中心とする回転によって、軽量側の部分を、係止片収納溝16の、支軸12から軸部11の他端側に位置する部分に収納できる。
一方、係止片13の、軽量側に比べて前記支軸12からの長さが長い重量側の部分は、支軸12からの延出長L1が、支軸12から係止片収納溝16の溝底16aまでの距離L2よりも長いため、係止片収納溝16の、支軸12から軸部11の他端側に位置する部分に収納できない。
但し、これに限定されず、係止片13の、支軸12から両側(重量側と軽量側)のいずれも、係止片収納溝16に収納可能になっている構成も採用可能である。
【0013】
前記係止片13は、軽量側の部分を、係止片収納溝16の支軸12から軸部11の他端側に位置する部分に収納することで、その長手方向が前記軸部11の軸心方向と平行する方向に向けられた軸向き姿勢とすることができる。前記係止片13は、前記支軸12を中心とする回転によって、その長手方向が前記軸部11の軸心方向と平行する方向に向けられた軸向き姿勢と、前記長手方向が前記軸部11の軸心方向と直交する方向に向けられた張り出し姿勢とを切り替えることができる。
【0014】
軸向き姿勢とした係止片13は、全体が断面円形の軸部11の径の範囲内に位置されるか、あるいは、軸部11の径の範囲から僅かに突出される。軸向き姿勢とした係止片13が、軸部11の径の範囲から僅かに突出される場合でも、係止片13の軸部11の径の範囲から突出した部分の突出寸法が、軸向き姿勢とした係止片13を軸部11とともに取付対象部材(例えば、中空構造物の構成部材)に貫設した孔(例えば、図3(a)〜(c)、図4(a)〜(c)の床21に形成した孔22)に通す作業の支障にならない程度の僅かな突出寸法とすることは言うまでも無い。
【0015】
図示例の係止片13の重量側の端部13bは、三角形状に形成されている。
係止片13の長手方向片端(あるいは両端)が三角形状に形成されている構成であれば、係止片13を軸部11とともに、中空構造物の構成部材(例えば床等)に貫設した孔に通す際に孔内面等との引っ掛かり回避に有利であり、作業を円滑に行うことができる。
一方、図示例の前記係止片13の軽量側の端部13cは、係止片13の長手方向に垂直の端面を形成しているが、軽量側の端部13cについても、三角形状に形成しても良いことは言うまでも無い。
【0016】
前記軸部11の他端部(一端側とは反対の側の端部)には、該軸部11を回転させるための工具(例えば、図6に例示した取付金具用電動工具30)が係合される工具係合部17が形成されている。
前記係止片収納溝16の前記溝底16aと前記工具係合部17とは、外観棒状の前記雄ねじ部14を介して軸部11の軸心方向に互いに離隔して位置する。
【0017】
図2(a)、(b)等に示すように、図示例の取付金具10の工具係合部17(回転力伝達用係合部)は、具体的には、軸部11の他端部に突設された角柱状の突起(小突起。以下、四角部171とも言う)である。
但し、工具係合部17としては、四角部171に限定されず、例えば六角柱状等、角柱状以外の多角形柱状(軸心方向に垂直の断面が多角形)の突起であっても良い。
また、図5(a)、(b)に示すように、軸部11の他端側端面11aから窪む四角形あるいは六角形のレンチ穴172(図5(a)、(b)では四角形のレンチ穴)等も採用可能である。
工具係合部17は、工具によって軸部11を該軸部11の軸心を中心に円滑に軸回り回転させるために、軸部11の軸心上に形成される。
【0018】
(取付金具用電動工具)
次に、取付金具用電動工具30(以下、単に、電動工具とも言う)について説明する。
図6に示すように、電動工具30は、モータ(図示略)を内蔵する工具本体31と、この工具本体31に突設(詳細には、工具本体31のモータ内蔵部311に突設)された回転駆動軸32の先端に該回転駆動軸32と一体回転可能に設けられ、前記取付金具10の前記軸部11の前記工具係合部17に係脱可能に係合される回転力伝達部材33と、前記取付金具10の前記軸部11の雄ねじ部14に螺着されているナット15の回転規制用のナット係止部材34とを具備した構成となっている。
図示例の電動工具30は、回転力伝達部材33と回転駆動軸32とが一体の1部品になっているが、回転力伝達部材33が回転駆動軸32に対して着脱可能になっている構成も採用可能である。
【0019】
前記回転力伝達部材33には、前記取付金具10の前記軸部11の前記工具係合部17に係脱可能に係合される軸部係合部33aが形成されている。前記回転力伝達部材33は、軸部係合部33aを前記軸部11の前記工具係合部17に係合させた状態で前記回転駆動軸32と一体に回転されることで、回転駆動軸32の回転駆動力を軸部11に伝達して、軸部11を回転させる機能を果たす。
例えば、図3(b)、(c)、図4(a)〜(c)に示すように、前記工具係合部17が多角形柱状の突起の場合は、回転力伝達部材33には、前記軸部係合部33aとして、前記取付金具10の前記軸部11の前記工具係合部17に係脱可能に係合される係合穴33a1が形成される。
【0020】
前記工具係合部17がレンチ穴172(図5(a)、(b))の場合は、回転力伝達部材33の軸部係合部33aは、前記レンチ穴172に挿脱可能に嵌め込むことで軸部11に係合して、軸部11に回転駆動軸32の回転駆動力を伝達可能となる突起(例えば、図13の突起33a2)とする。この突起は、レンチ穴172の形状に応じて、軸部11に回転駆動軸32の回転駆動力を伝達可能に係合する形状に形成されることは言うまでもない。例えば、四角穴、六角穴のレンチ穴172に対して、四角柱状、六角柱状の突起を採用する。
【0021】
図6に示すように、前記ナット係止部材34は、前記工具本体31に取り付けるための取付部341と、この取付部341に突設されたナット係止片342とを具備している。
図6に例示したナット係止部材34は、円筒状のナット係止片342の片端(軸方向片側の端部)に、取付部341として円筒状の雌ねじ部341aを有し、全体として1本の円筒状に形成されている。
【0022】
このナット係止部材34は、前記雌ねじ部341aを、前記回転駆動軸32を囲繞する円筒状突壁である前記工具本体31の雄ねじ円筒部31aに螺着し、前記ナット係止片342の内側に、前記工具本体31の前記回転駆動軸32及び前記回転力伝達部材33を収納(図3(c)等参照)して、工具本体31に取り付けられる。雄ねじ円筒部31aは、外観円柱状のモータ内蔵部311の軸方向片端に突設されており、工具本体31の回転駆動軸32は、前記モータ内蔵部311から前記雄ねじ円筒部31aの内側を貫通して突出されている。
【0023】
前記ナット係止片342の前記取付部341とは反対の側の端部(先端)は、前記取付金具10の雄ねじ部14に螺着されているナット15を内側に嵌め込むことができる六角穴342aが開口されたナット係止部342bとされている。ナット係止片342は、前記取付金具10の軸部11に他端側から外挿して、前記ナット係止部342aに前記ナット15を嵌め込むことで、前記ナット15の回転を規制できる。これにより、図3(c)等に示すように、前記取付金具10の軸部11の工具係合部17に係合させた回転力伝達部材33を介して、前記軸部11に前記回転駆動軸32の回転駆動力を伝達させて、前記軸部11を回転させる際に、軸部11に対するナット15の伴回りを規制できる。
【0024】
ナット係止部材34の、前記工具本体31に取り付けるための取付部341としては、工具本体31に螺着するための雌ねじ部341aに限定されず、様々な構成が採用可能である。
一例として、図7は、外観円柱状のモータ内蔵部311を包囲するようにして装着される取付部341bを具備するナット係止部材34(図中、符号34Aを付す)を例示する。このナット係止部材34Aの場合は、雄ねじ円筒部31aを具備していない工具本体31に対しても装着可能である。図7に例示したナット係止部材34Aは、モータ内蔵部311の外面を覆うようにして装着されるカバー状の取付部341bを具備するが、取付部としてはこれに限定されず、例えば、結束固定用バンドによってモータ内蔵部311に装着されるもの等も採用可能である。
また、ナット係止部材34のナット係止片についても様々な設計変更が可能である。ナット係止片は、取付金具10のナット15の回り止めの機能を果たすものであれば良く、この点、上述したような円筒状のものに限定されず、例えば、取付部から突出する棒状支持片の先端に、ナット15に係合されるナット係止部を具備する構成のもの等も採用可能である。
【0025】
図6に例示した電動工具30は、外観円柱状のモータ内蔵部311の側部(外周面)に、使用者が把持するためのハンドル部312が突設された構造になっている。
前記ハンドル部312には、モータの正転用の駆動ボタン313(以下、正転用駆動ボタン)と、逆転用の駆動ボタン314(以下、逆転用駆動ボタン)とが突設されている。工具本体31のモータは、正転用駆動ボタン313又は逆転用駆動ボタン314が、ハンドル部312に押し込まれた状態であるときのみ回転駆動される。ボタンが押し込まれた状態から、押し込み力の解除によって、ハンドル部312から突出した状態に戻ると、回転駆動が停止される。
ここで、「正転」とは、軸部11を正ねじにねじ込み方向の回転を与える回転駆動、「逆転」とは、軸部11を正ねじにねじ込み方向とは逆向きの回転を与える回転駆動を指す。
なお、前記電動工具30は、回転駆動軸32に取り付けるソケットの交換によって、ドリル等の各種ソケットの取り付けが可能となるものである。
【0026】
取付金具10の雄ねじ部14、ナット15には、正ねじのねじ山が形成されている。
電動工具30の工具本体31の雄ねじ円筒部31a、ナット係止部材34の雌ねじ部341aにも、正ねじのねじ山が形成されている。
上述の電動工具30を用いて、取付金具10を施工(壁、床、天井等に対する固定)する際には、図3(c)等に示すように、前記取付金具10の軸部11の工具係合部17に、回転駆動軸32先端に固定した回転力伝達部材33を係合させた状態で、電動工具30のモータを逆転駆動させる(後述)が、上述のように、電動工具30の工具本体31の雄ねじ円筒部31a、ナット係止部材34の雌ねじ部341aには、正ねじのねじ山が形成されているため、ナット15から伝達される回転駆動力によって、工具本体31の雄ねじ円筒部31aに対して雌ねじ部341aを締め付けて固定したナット係止部材34の固定状態が緩む心配が無い。
取付金具10と電動工具30とは、本発明に係る取付金具施工ユニットを構成する。
【0027】
(施工方法)
次に、上述の取付金具10の施工手順を説明する。
図3(a)〜(c)、図4(a)〜(c)は、前記取付金具10を取付対象部材21に施工する場合の手順を、順番に示す。
なお、図3(a)〜(c)、図4(a)〜(c)では、取付対象部材21(以下、単に、部材とも言う)として床を例示しており、前記取付金具10を用いて床21上に取付物24を固定する場合を示す。
部材21を介して両側の内、一方の側(後述の表(おもて)側。図中では、床21よりも上側)には、取付金具10の軸部11の回転操作用の作業スペースが確保されている。また、他方の側(後述の裏側。図中では、床21よりも下側)には、取付金具10の係止片13の全体を配置でき、しかも、軸部11の回転による前記係止片13の回転を可能とするに充分なスペース(係止片回転スペース。空間23)が確保されている。
【0028】
図3(a)〜(c)、図4(a)〜(c)では、部材21の表側での作業によって、取付金具10を用いて部材21(ここでは床)に取付物24を固定する場合について説明する。
図3(a)に示すように、まず、部材21に取付物24を重ね合わせ(図では、取付物24を床21上に設置)、ドリル等を用いて、取付物24と部材21とを貫通する孔22(貫通孔)を形成する。孔22は、取付金具10の軸部11の外径よりも若干大きい径(内径)で形成する。なお、取付物24としては、予め、取付金具10を通すための孔が形成されているものを採用しても良い。
次に、前記孔22に、取付金具10の係止片13と軸部11とを通し(図3(b))、次いで、取付金具10に対して電動工具30をセット(図3(c))した後、電動工具30を駆動して、取付金具10の軸部11を回転させる(図4(a)、(b))。
【0029】
図3(b)に示すように、取付金具10は、部材21の表側(一方の側。床21の上面側)からの作業によって、軸向き姿勢にした係止片13を、軸部11とともに、取付物24の側から孔22に挿入する。
取付金具10に対する電動工具30のセットは、図3(c)に示すように、前記取付金具10の軸部11の工具係合部17に、回転駆動軸32先端に取り付けた回転力伝達部材33を係合させるとともに、取付金具10のナット15に電動工具30のナット係止部材34の先端のナット係止部342bを嵌め込むようにして係合させる。
【0030】
係止片13は、電動工具30を駆動する前に、全体が部材21の裏側に配置されるようにする必要がある。また、軸部11の雄ねじ部14に螺着されているナット15を部材21に押し当てる。ナット15は、軸部11の工具係合部17に回転力伝達部材33を係合させた電動工具30のナット係止部材34のナット係止部342bとの係合を実現できるように、軸部11の軸心方向における螺着位置を調整しておく。
なお、取付金具10としては、ナット15を取付物24に押し当てたときに、係止片13全体を部材21の裏側に配置できるように、孔22の長さに鑑みて、充分な長さの軸部11を具備するものを採用する。
【0031】
電動工具30の駆動は、逆転方向の回転である。
電動工具30の回転駆動(逆転方向の回転駆動)によって取付金具10の軸部11を回転させると、軸部11が、ナット係止部材34によって回り止めされているナット15に案内されながら、部材21の表側への突出寸法を増大するように移動する(図4(a)、(b))。
【0032】
また、このとき、軸部11に与えた回転によって、取付金具10の係止片13を張り出し姿勢にする。係止片13は、軸部11の回転によって与えられる遠心力によって、張り出し姿勢となる。
部材21が床の場合、取付金具10の施工は下向き施工となる。取付金具10の係止片13は、孔22への挿入によって床21を通過させて、床21の下側(裏側)の空間23(係止片回転スペース)内に配置されたときに、自重によって軸向き姿勢となる。本発明では、電動工具30によって軸部11に与えた回転によって、取付金具10の係止片13を張り出し姿勢にすることで、下向き施工の場合でも施工が可能となる。
また、上述のように、回転された軸部11が、ナット係止部材34によって回り止めされているナット15に案内されながら、部材21の表側への突出寸法を増大するように移動することで、張り出し姿勢となった係止片13を、部材21に係合させることができる(図4(b))。これにより、取付金具10が部材21に係止されて、部材21からの引き抜きが規制される。
【0033】
つまり、本発明によれば、電動工具30によって軸部11を回転させることで、取付金具10の係止片13を張り出し姿勢にするとともに、部材21に対する係止片13の係合も実現される。
係止片13が部材21に係合すると、ナット15及び座金15aによって、取付物24が部材21に押さえ込まれ、部材21と取付物24とが、ナット15及び座金15aと係止片13との間に挟み込まれた状態になるため、取付金具10が部材21に対して固定される。部材21に対する取付金具10の固定も実現される。
これにより、部材21に対する取付物24の固定、取付金具10の固定を短時間で実現できる。
また、本発明に係る取付金具10は下向き施工が可能であるため、上述したように、床上からの作業によって床に取付金具10を固定する場合に限定されず、例えば屋根等、下向き施工が必要となる施工場所であっても施工できる。つまり、施工向きの限定が無くなる。
【0034】
係止片13が部材21に係合した後、さらに、手工具40を使ってナット15を締め付け(例えば、5N・mで締め付ける。図4(c))て、所望の固定力を得ることで施工完了となるが、但し、図4(c)に示したナット15の締め付けは、電動工具30による回転トルク調整等によって、部材21に対する取付金具10の固定力が充分に確保されている場合や、強固な固定力が要求されない場合(部材21の材質に鑑みて、弱い固定力で固定する必要がある場合など)では、省略することも可能である。
【0035】
本発明は、建物の床21への取付金具10の施工(取り付け)に限定されず、例えば、天井、壁への施工(取り付け)にも適用可能であることは言うまでも無い。
例えば、従来構造の取付金具を壁に施工する場合は、壁に形成した孔に通して壁を通過させた係止片が自重で軸向き姿勢から張り出し姿勢に姿勢変更するように、作業者の手作業で取付金具の軸部の向きを固定しておき、この状態を保ったまま、軸部の雄ねじ部に螺着しておいたナットを締め付ける必要がある。これに対して、本発明に係る取付金具10の施工は、軸部11を回転させることで、係止片13に与えた遠心力によって係止片13を張り出し姿勢にするため、孔22に挿入した軸部11の向きの調整が不要であり、軸部11の回転自体が、部材21に対して係止片13を係合させる操作ともなっているため、従来に比べて短時間で簡単に行える。
【0036】
また、本発明に係る取付金具10は、係止片13を張り出し姿勢にするための構成として、軸部11の他端部に工具係合部17を形成した構造であり、別途、係止片13を張り出し姿勢にするための手段を必要としない。
係止片13を張り出し姿勢にするための構成として、軸部11の他端部に工具係合部17を形成した構造であれば、取付金具10の内の、孔22に挿通する部分に、孔22への挿通作業の支障となるような構成を設ける必要が無い。このため、取付金具10は、軸部11及び係止片13の孔22への挿通作業を円滑に行える構造とすることができる。
【0037】
図4(a)〜(c)等に示すように、軸部11の雄ねじ部14の外周面には、ナット15の緩み防止用のゴム系樹脂塗膜である緩み防止部18が、軸部11の軸心方向に沿って延在形成されている。
ナット15は、図4(b)、(c)に示す工程において、部材21に対して締め付けた際に、軸部11の軸心方向において前記緩み防止部18の形成範囲に位置されるようにする。これにより、締め付け状態の緩みが防止される。
【0038】
なお、取付金具10は、ナット15及び座金15aと部材21との間に取付物24を介在させない状態で、部材21に固定することも可能であることは言うまでもない。
部材に対する取り付けが完了した取付金具10は、軸部11のナット15から突出(ナット15から部材21とは反対の側への突出)された部分を、別途、取付物の固定に利用できる。
【0039】
(電動工具の別態様)
図8、図9は、回転力伝達部材33を、工具本体31の回転駆動軸32の先端に一体回転に設けられた前記駆動ソケット35に着脱可能に嵌合して、前記回転駆動軸32に一体回転可能に取り付ける構成とした例を示す。
ここで例示した回転力伝達部材33(図中、符号36を付す)は、ブロック状の伝達部材本体361と、この伝達部材本体361に突設され、前記駆動ソケット35のビット嵌合穴35aに嵌合される嵌合突起362(取付用嵌合部)と、伝達部材本体361の前記嵌合突起362とは反対の側に形成された軸部係合部33aとを具備する。そして、この回転力伝達部材36は、嵌合突起362を、駆動ソケット35のビット嵌合穴35aに嵌合することで、工具本体31の回転駆動軸32に一体回転可能に取り付けられる。軸部係合部33aは、係合穴33a1、突起のいずれでも良い(図示例では、係合穴33a1)。
図示例の回転力伝達部材36の伝達部材本体361は円柱状であり、嵌合突起362及び軸部係合部33aは、伝達部材本体361の軸心上に形成されている。但し、伝達部材本体361の形状は円柱状に限定されず、例えば、角柱状等であっても良い。
【0040】
回転力伝達部材36としては、例えば、合成樹脂製の一体成形品を採用できる。この場合は、回転力伝達部材36全体が、本発明に係る緩衝部として機能する。この回転力伝達部材36の場合は、取付用嵌合部(嵌合突起362)が嵌合された前記駆動ソケット35から前記軸部係合部33aに係合された前記軸部11の前記工具係合部17への前記回転駆動軸11の回転駆動力の伝達経路の全部が、合成樹脂製の前記緩衝部によって構成されていることになる。
前記緩衝部は、電動工具30を使用して回転させた取付金具10の軸部11の移動(部材21の表側への突出寸法を増大する移動)によって、係止片13が部材21に当接したときの衝撃を緩衝する。これにより、衝撃力による部材21の損傷防止、軸部11の工具係合部17の損傷防止、といった効果が得られる。また、前記衝撃が強い場合に、電動工具30の使用者が電動工具30を落としてしまう、といった不都合も防止できる。
【0041】
回転力伝達部材33としては、該回転力伝達部材33の一部のみに緩衝部を具備する構成も採用可能である。
例えば、図10(a)に示す回転力伝達部材33(図中、符号37を付す)は、嵌合突起362を構成する金属部材371を、インサート成形によって、伝達部材本体361を構成する合成樹脂中に埋設固定した構造になっている。この回転力伝達部材37は、金属部材371の埋設固定以外は、図8、図9に例示した回転用補助部材と同様の構成であり、金属部材371以外は合成樹脂によって形成されている。この回転力伝達部材37では、合成樹脂部分が緩衝部372として機能する。
この回転力伝達部材37の場合は、取付用嵌合部(嵌合突起362)に嵌合された前記駆動ソケット35から前記軸部係合部33aに係合された前記軸部11の前記工具係合部17への前記回転駆動軸11の回転駆動力の伝達経路の一部が、合成樹脂製の前記緩衝部によって構成されている。
【0042】
図10(b)に示す回転力伝達部材33(図中、符号38を付す)は、図8、図9に示す回転力伝達部材33の伝達部材本体361の、嵌合突起362と軸部係合部33aとの間の中央部(伝達部材本体361の軸心方向の中央部)に、伝達部材本体361を局所的に細く形成した狭隘部381を具備する。
この回転力伝達部材38の場合は、狭隘部381の変形によって、高い緩衝効果が得られる。また、狭隘部381の太さの調整によって、回転に伴う軸部11の移動(部材21の表側への突出寸法を増大する移動)による部材21に対する係止片13の当接時に、過度の衝撃力が発生したときに、狭隘部381が破壊されて、電動工具30や取付金具10に作用する衝撃の影響を緩和できるように構成することも可能である。
【0043】
(回転用補助部材を具備する係止片付き取付金具)
図11(a)、(b)は、回転用補助部材を具備する取付金具10(以下、この取付金具に符号50を付して説明する)を示す。
この取付金具50は、既述の取付金具10の軸部11の他端部に、キャップ状の回転用補助部材51を嵌合して装着した構成になっている。つまり、取付金具50は、既述の取付金具10に回転用補助部材51を追加した構成になっている。
【0044】
前記回転用補助部材51は、ブロック状の補助部材本体511に、前記軸部11の工具係合部17と係合される軸部係合部512と、前記軸部11を回転させるための工具(例えば、電動工具30)が係合される補助部材工具係合部513(回転力伝達用係合部)とを形成した構成になっている。
そして、図12に示すように、軸部係合部512を前記軸部11の工具係合部17に係合させた状態で、補助部材工具係合部513に係合された工具(図12では電動工具30)によって回転されることで、軸部11と一体に回転される。
なお、回転用補助部材51の軸部係合部512及び補助部材工具係合部513は、軸部11の軸心上に位置するように形成されている。
【0045】
図11(a)、(b)、図12に例示した回転用補助部材51の前記軸部係合部512は、軸部11の、多角形柱状の突起(具体的には四角部171)である工具係合部17が嵌め込まれることで、工具係合部17と係合する係合穴512aである。この係合穴512aは、補助部材本体511に形成された凹所となっている。回転用補助部材51は、前記軸部係合部512(図11(a)、(b)、図12では係合穴512a)を軸部11の工具係合部17と嵌合することで、軸部係合部512が工具係合部17に対して工具から回転駆動力を伝達可能に係合され、軸部11と一体回転可能となる。
【0046】
回転用補助部材51の前記軸部係合部512は、軸部11の工具係合部17と嵌合することで、工具係合部17に対して工具から回転駆動力を伝達可能に係合されるものであり、軸部11の工具係合部17に応じて、適宜、設計変更することが可能である。例えば、図5(a)、(b)に例示したように、工具係合部17がレンチ穴172である場合は、補助部材本体511から突出する突起状の軸部係合部を採用する。突起状の軸部係合部は、レンチ穴172に挿入して嵌合することで、工具係合部17に対して、工具から回転駆動力を伝達可能に係合する形状に形成する。この場合は、回転用補助部材51として、突起状の軸部係合部とレンチ穴172との嵌合力のみによって軸部11に装着される構成も採用であるが、例えば、補助部材本体511に突起状の軸部係合部を囲繞するように嵌合用筒状壁を突設し、嵌合用筒状壁の内側に軸部11の他端部が嵌合されるようにした構成(キャップ状の構成)も採用可能である。
【0047】
回転用補助部材51は、軸部11の工具係合部17に対する軸部係合部512の嵌合によって、軸部11に装着される。
図示例の前記回転用補助部材51は、軸部11の工具係合部17に対する係合穴512aの嵌合によって、補助部材本体511の内側に軸部11の他端部を嵌め込んだ状態で、軸部11に装着されている。係合穴512aは、補助部材本体511に突設された嵌合用筒状壁515の内側の空間である。嵌合用筒状壁515は軸部係合部512を取り囲むように形成されている。
【0048】
前記補助部材工具係合部513は、補助部材本体511において、前記軸部係合部512とは反対の側に形成されている。
図示例の取付金具50の回転用補助部材51の補助部材工具係合部513は、具体的には、角柱状の突起513a(四角部)であるが、これに限定されず、例えば六角柱状等、角柱状以外の多角形柱状(軸心方向に垂直の断面が多角形)の突起であっても良い。また、補助部材工具係合部513としては、図13に示すように、補助部材本体511に形成された、例えば四角穴、六角穴等の凹所状のレンチ穴513bとすることもできる。
【0049】
図12、図13は、取付金具50の回転用補助部材51の補助部材工具係合部513に、電動工具30の回転力伝達部材33を係合させた状態を示す。
但し、ここで例示した電動工具30は、図6等を参照して説明したように、回転駆動軸32に直接、回転力伝達部材33(駆動ソケット35を介さずに回転駆動軸32に直接取り付けられた回転力伝達部材33)が設けられている構成のものである。
【0050】
電動工具30は、回転力伝達部材33の軸部係合部33aを、取付金具50の回転用補助部材51の補助部材工具係合部513に係合させる。また、ナット係止部材34を、取付金具50のナット15に係合させる。
取付金具50のナット15に対するナット係止部材34の係脱作業を可能とするために、回転用補助部材51は、軸部11に装着した状態で、ナット15の外周面から突出しない範囲に設けられるサイズ、形状とする。
【0051】
電動工具30の回転力伝達部材33の軸部係合部33aは、取付金具50の回転用補助部材51の補助部材工具係合部513の形状に応じて、補助部材工具係合部513に嵌合させることで回転駆動軸32の回転駆動力を伝達可能に係合できる構成のものを採用することは言うまでも無い。
図13に示すように、補助部材工具係合部513がレンチ穴513bである場合は、軸部係合部33aとして、レンチ穴513bに嵌合させることで係合できる突起33a2を採用する。
【0052】
回転用補助部材51としては、例えば、全体が合成樹脂製の一体成形品を採用できる。この場合は、回転用補助部材51全体が、本発明に係る緩衝部として機能する。この回転用補助部材51の場合は、電動工具50の回転力伝達部材33から軸部11の工具係合部17への前記回転駆動軸11の回転駆動力の伝達経路の全部が、合成樹脂製の前記緩衝部によって構成されていることになり、軸部11の回転によって係止片13が部材21に当接したときの衝撃を緩衝できる。
また、回転用補助部材51としては、例えば、図10(a)に例示した回転力伝達部材37と同様に、一部を金属部材によって形成した構成も採用可能である。但し、一部を金属部材とする場合でも、電動工具50の回転力伝達部材33から軸部11の工具係合部17への前記回転駆動軸11の回転駆動力の伝達経路の全部又は一部が合成樹脂製の緩衝部によって構成されるようにする。
【0053】
図14(a)、(b)は、回転用補助部材51に易破壊部516を設けた例を示す。
図14(a)に示す易破壊部516は、補助部材本体511の一部を局所的に細く形成した狭隘部516aである。軸部11の回転によって係止片13が部材21に当接したときの衝撃力によって、狭隘部516aが破壊されて、回転用補助部材51の補助部材工具係合部513側から軸部係合部512へ、電動工具の回転駆動力の伝達がされなくなる。
【0054】
図14(b)では、軸部係合部512として係合穴512aを採用した回転用補助部材51において、補助部材工具係合部513以外の部分を、複数(図14(b)では2本)のスリット516bによって分割した構成を例示する。補助部材工具係合部513以外の部分全体が易破壊部として機能する。
前記スリット516bは、回転用補助部材51の軸心(回転中心。軸部11の軸心に一致)に沿った方向に延在しており、該回転用補助部材51の外周方向の複数箇所に形成されている。この回転用補助部材51の場合は、軸部11の回転によって係止片13が部材21に当接したときの衝撃力が作用したときに、補助部材工具係合部513以外の部分が係合穴512aを拡大するように変形して、軸部11の工具係合部17(突起)に対する軸部係合部512の係合が解除される。また、このとき、回転用補助部材51は、軸部11から脱落するか、容易に取り外せる状態となる。
【0055】
易破壊部516は、破壊強度の調整によって、設定しておいた破壊強度を超える衝撃力や過剰な回転トルクが作用したときに破壊されるようにする。但し、取付金具50の施工のための軸部11の可能にするに充分な破壊強度を確保することは言うまでも無い。
なお、易破壊部516を設けた構成の回転用補助部材51は、必ずしも、合成樹脂製である必要は無く、例えば、全体が金属製のものも採用可能である。但し、軸部11の回転によって係止片13が部材21に当接したときの衝撃を緩衝する緩衝効果を得る点、製造容易性の点では、合成樹脂製であることが好ましい。
【0056】
軸部11の回転によって係止片13が部材21に当接したときの衝撃を緩衝する緩衝効果を得るための回転用補助部材51の構成としては、上述したものに限定されない。
例えば、軸部係合部512と軸部11の工具係合部17との間のクリアランスによって、軸部11の回転によって係止片13が部材21に当接したときの衝撃力によって、軸部11の工具係合部17に対して回転用補助部材51が滑り回転する構成等も採用可能である。
【0057】
回転用補助部材51を具備する取付金具50の軸部11を回転させるための電動工具としては、図8に例示したように、回転駆動軸32に対して、駆動ソケット35を介して回転力伝達部材33を取り付けた構成の電動工具も採用可能である。
【0058】
図15は、ナット係止部材34を具備していない電動工具301を採用した場合を例示する。
前記電動工具301は、既述の電動工具30から、ナット係止部材34及び該ナット係止部材34を取り付けるための工具本体31の雄ねじ円筒部31aを省略した構成のものである。
図15の場合も、取付金具50の回転用補助部材51の補助部材工具係合部513に、電動工具301の回転力伝達部材33を係合させることは、図12、図13と同様であるが、軸部11の回転時のナット15の回転を規制するために、レンチ等の手工具40を使用する。
【0059】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されず、主旨を変更しない範囲で適宜設計変更することが可能である。
(a)上述の実施形態では、細長板状の係止片13の重心位置(重心13a)を、係止片13の長手方向において、前記支軸12を中心とする回転中心からずらした構成として、係止片13の、前記支軸12から長手方向一端側の長さを、支軸12から長手方向他端側の長さよりも長くした構成を例示したが、これに限定されず、例えば、図16に示すように、細長板状の係止片13に該係止片13の厚みを貫通する孔13dを形成したもの(図11中、この係止片13に符号13Aを付す)を採用することも可能である。
この場合は、係止片の支軸12から両側へ延びる部分の長さを互いに同じになるように揃えることも可能であり、これにより、係止片の支軸12から両側へ延びる部分の長さが異なっている場合に比べて、軸部11の回転時の係止片の回転半径が無用に大きくことを防ぐことできる。また、係止片の軽量化を図ることも可能であり、これにより、軸部11を回転させるために要する回転力の軽減、係止片が、取付金具を固定する対象の部材に当接したときの衝撃の緩和等を実現できる。
(b)取付金具を固定する対象の部材(取付対象部材)としては、中空構造物の構成部材に限定されず、様々なものを採用できる。本発明に係る取付金具は、該取付金具を固定する対象の部材を介して一方の側に軸部の回転操作用の作業スペースを確保でき、他方の側に、前記部材に形成した孔に前記部材の一方の側から軸部とともに挿入して前記部材を通過させた係止片の全体を配置でき、しかも、軸部の回転による前記係止片の回転を可能とするに充分なスペース(係止片回転スペース)が確保できる施工場所であれば、部材に対する取り付け作業を行える。
(c)本発明に係る係止片付き取付金具の係止片は、軸部を回転(軸部の軸心を中心とする軸回りの回転)させたときに、遠心力によって、支軸を中心に回転して、張り出し姿勢となるようになっていれば良く、必ずしも、該係止片の長手方向において重心位置が前記支軸を中心とする回転中心からずらされている構成に限定されない。
本発明は、例えば、係止片に、支軸を通すための支軸挿通孔を、支軸の太さに比べて大きく形成し、支軸挿通孔内に、該支軸挿通孔を貫通する支軸に対して係止片の遊動を可能とするクリアランスを確保した構成等も含む。支軸挿通孔は、例えば、長穴等であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明に係る係止片付き取付金具を示す図であって、(a)は平面図、(b)は軸部の一端側から見た構造を示す図、(c)は正面図である。
【図2】図1の係止片付き取付金具の他端側の工具係合部付近を示す図であって、(a)は軸部の軸心方向他端側から見た構造を示す図、(b)は正面図である。
【図3】(a)〜(c)は、係止片付き取付金具を中空構造物の構成部材(床)に施工する場合の手順を、順番に示す施工手順図である。
【図4】(a)〜(c)は、係止片付き取付金具を中空構造物の構成部材(床)に施工する場合の手順を、順番に示す施工手順図である。
【図5】係止片付き取付金具の軸部の工具係合部を、軸部の他端側端面から窪むレンチ穴とした構成を示す図であって、(a)は軸部の軸心方向他端側から見た構造を示す図、(b)は正面図である。
【図6】本発明に係る取付金具用電動工具の一例を示す図である。
【図7】取付金具用電動工具のナット係止部材の別態様を示す図である。
【図8】取付金具用電動工具の回転用補助部材の別態様を示す図である。
【図9】図8の取付金具用電動工具の駆動ソケットと回転用補助部材とを示す斜視図である。
【図10】(a)、(b)は、回転用補助部材の別態様を示す図である。
【図11】回転用補助部材を具備する係止片付き取付金具の他端側の工具係合部付近を示す図であって、(a)は軸部の軸心方向他端側から見た構造を示す図、(b)は正面図である。
【図12】図11の係止片付き取付金具の回転用補助部材の補助部材工具係合部に取付金具用電動工具の回転力伝達部材を係合した状態を示す図である。
【図13】図11の係止片付き取付金具の回転用補助部材の補助部材工具係合部の別態様、及び、取付金具用電動工具の回転力伝達部材の別態様を示す図である。
【図14】易破壊部を設けた回転用補助部材の例を示す図であって、(a)は易破壊部として狭隘部を設けた例を示す正断面図、(b)はスリットを設けた回転用補助部材の例を示す斜視図である。
【図15】ナット係止部材を具備していない電動工具を使用して係止片付き取付金具を施工する場合を説明する図である。
【図16】孔を形成した係止片を具備する係止片付き取付金具を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
10…係止片付き取付金具、11…軸部、11a…他端側端面、12…支軸、13、13A…係止片、13a…重心、13b…重量側の端部、13c…軽量側の端部、13d…孔、14…雄ねじ部、15…ナット、16…係止片収納溝、16a…溝底、17…工具係合部、171…工具係合部(四角部)、172…工具係合部(レンチ穴)、18…緩み防止部、21…取付対象部材(床)、22…孔(貫通孔)、23…空間(係止片回転スペース)、24…取付物、30…取付金具用電動工具、31…工具本体、31a…雄ねじ円筒部、301…電動工具、311…モータ内蔵部、312…ハンドル部、313…正転用駆動ボタン、314…逆転用駆動ボタン、32…回転駆動軸、33…回転用補助部材、33a…軸部係合部、33a1…軸部係合部(係合穴)、34、34A…ナット係止部材、341…取付部、341a…取付部(雌ねじ部)、341b…取付部、342…ナット係止片、342a…六角穴、342b…ナット係止部、35…駆動ソケット、35a…ビット嵌合穴、36…回転用補助部材、361…補助部材本体、362…取付用嵌合部(嵌合突起)、37…回転用補助部材、371…金属部材、372…緩衝部、38…回転用補助部材、381…狭隘部、40…手工具、50…係止片付き取付金具、51…回転用補助部材、511…補助部材本体、512…軸部係合部、512a…係合穴、513…補助部材工具係合部、513a…補助部材工具係合部(突起)、513b…補助部材工具係合部(レンチ穴)、515…嵌合用筒状壁、516…易破壊部、516a…易破壊部(狭隘部)、516b…スリット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部と、該軸部の一端側に前記軸部の軸心方向と直交する方向の支軸に回転自在に軸支された細長形状の係止片と、前記軸部に形成された雄ねじ部に螺着されたナットとを具備し、前記係止片は、前記支軸を中心とする回転によって、その長手方向が前記軸部の軸心方向と平行する方向に向けられた軸向き姿勢と、前記長手方向が前記軸部の軸心方向と直交する方向に向けられた張り出し姿勢とを切り替え可能になっている係止片付き取付金具であって、
前記軸部の他端側に、該軸部を回転させるための工具が係合される工具係合部が形成されていることを特徴とする係止片付き取付金具。
【請求項2】
前記工具係合部が、前記軸部の他端部に突設された多角形柱状の突起であることを特徴とする請求項1記載の係止片付き取付金具。
【請求項3】
前記工具係合部が、前記軸部の他端部の端面から窪むレンチ穴であることを特徴とする請求項1記載の係止片付き取付金具。
【請求項4】
さらに、前記工具係合部に係合して、前記軸部と一体回転可能に装着された回転用補助部材を具備し、
前記回転用補助部材は、前記軸部の他端側の端部に嵌合して一体回転可能に係合される軸部係合部が形成された補助部材本体と、この補助部材本体の前記軸部係合部とは反対の側に形成され、前記軸部を回転させるための工具が係合される補助部材工具係合部とを具備し、
しかも、前記回転用補助部材は、全体又は一部が合成樹脂製の緩衝部とされ、前記補助部材工具係合部に嵌合された前記工具から前記軸部係合部に係合された前記軸部の前記工具係合部へ前記緩衝部を介して回転駆動力を伝達する伝達経路を構成することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の係止片付き取付金具。
【請求項5】
さらに、前記工具係合部に係合して、前記軸部と一体回転可能に装着された回転用補助部材を具備し、
前記回転用補助部材は、前記軸部の他端側の端部に嵌合して一体回転可能に係合される軸部係合部が形成された補助部材本体と、この補助部材本体の前記軸部係合部とは反対の側に形成され、前記軸部を回転させるための工具が係合される補助部材工具係合部とを具備し、
しかも、前記回転用補助部材は、前記補助部材工具係合部、前記軸部係合部、前記補助部材工具係合部と前記軸部係合部との間、の内の少なくとも1以上に設けられた易破壊部を介して、前記補助部材工具係合部に嵌合された前記工具から前記軸部係合部に係合された前記軸部の前記工具係合部へ回転駆動力を伝達する伝達経路を構成することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の係止片付き取付金具。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載の係止片付き取付金具の前記軸部の前記工具係合部あるいは請求項4又は5記載の係止片付き取付金具の前記回転用補助部材の前記補助部材工具係合部、である回転力伝達用係合部に係合させて前記軸部を回転させる取付金具用電動工具であって、
回転駆動軸が突出された工具本体と、前記回転駆動軸の先端に設けられ、前記係止片付き取付金具の前記回転力伝達用係合部に係脱可能に係合する回転力伝達部材と、前記工具本体に取り付けられたナット係止部材とを具備し、
前記ナット係止部材は、前記工具本体に取り付けられた取付部と、この取付部に突設されて前記工具本体の前記回転駆動軸に沿って設けられ、前記係止片付き取付金具の前記軸部の前記雄ねじ部に螺着されている前記ナットに係合することで前記ナットの回転を規制するナット係止片とを具備することを特徴とする取付金具用電動工具。
【請求項7】
前記ナット係止部材の前記ナット係止片が、前記工具本体の前記回転駆動軸及び前記回転力伝達部材を収納する筒状に形成されており、前記取付部から突出する前記ナット係止片の先端に、前記係止片付き取付金具の前記ナットに係合して前記ナットの回転を規制するナット係止部が設けられていることを特徴とする請求項6記載の取付金具用電動工具。
【請求項8】
前記回転力伝達部材が、前記工具本体の回転駆動軸の先端に設けられた駆動ソケットに着脱可能に嵌合して前記回転駆動軸に取り付けられており、
前記回転力伝達部材は、前記駆動ソケットに嵌合する取付用嵌合部と、前記係止片付き取付金具の前記回転力伝達用係合部と係合される軸部係合部とを具備し、
しかも、前記回転用補助部材は、全体又は一部が合成樹脂製の緩衝部とされ、前記取付用嵌合部に嵌合された前記駆動ソケットから前記軸部係合部に係合された前記回転力伝達用係合部へ前記緩衝部を介して回転駆動力を伝達する伝達経路を構成することを特徴とする請求項6又は7記載の取付金具用電動工具。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれかに記載の係止片付き取付金具と、請求項6〜8のいずれかに記載の取付金具用電動工具とからなることを特徴とする取付金具施工ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−309200(P2008−309200A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−155656(P2007−155656)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【出願人】(390022389)サンコーテクノ株式会社 (52)
【出願人】(000175973)三晃金属工業株式会社 (85)
【Fターム(参考)】