係止脚及びそれを用いたクランプ
【課題】 係止脚において、パネルの取付孔への挿入荷重を大きくすることなく、保持力が大きくなるようにすることである。
【解決手段】 ベルトクランプ1に設けられ、車両のボディパネル5の取付孔6に挿入されて保持される係止脚101において、一対の係止片12の突出方向Pにおける軸線9から、一対の係止片12の回動中心となる回動支点16を含む軸直角断面(回動支点部15)の外周面の長さL1よりも、同じく軸線9から挿入部11の外周面までの長さL2を長くする。これにより、回動支点部15は、挿入部11よりも内方に段付き状態で形成される。この結果、回動支点部15の断面積をそのままにして、挿入部11の下半部の肉厚を厚くすることができ、係止脚101の挿入荷重を大きくすることなく、保持力が大きくなる。
【解決手段】 ベルトクランプ1に設けられ、車両のボディパネル5の取付孔6に挿入されて保持される係止脚101において、一対の係止片12の突出方向Pにおける軸線9から、一対の係止片12の回動中心となる回動支点16を含む軸直角断面(回動支点部15)の外周面の長さL1よりも、同じく軸線9から挿入部11の外周面までの長さL2を長くする。これにより、回動支点部15は、挿入部11よりも内方に段付き状態で形成される。この結果、回動支点部15の断面積をそのままにして、挿入部11の下半部の肉厚を厚くすることができ、係止脚101の挿入荷重を大きくすることなく、保持力が大きくなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両のボディパネルにワイヤハーネスを固定するためのクランプに設けられる係止脚、及びそれを用いたクランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のボディパネルにワイヤハーネスやチューブを配索するために、ベルトクランプが使用される場合がある(例えば、特許文献1を参照)。このベルトクランプは樹脂材より成り、ワイヤハーネスに巻き付けられるベルト部と、ボディパネルの取付孔に挿入される係止脚とを備えている。
【0003】
図14の(a),(b)に示されるように、この係止脚100は、ボディパネル51の取付孔52よりも大きな面積を有する平板状の基板部53と、基板部53の底面部から延設される挿入部54とを備えている。挿入部54の外周面には、一対の係止片55が突設されている。一対の係止片55は、挿入部54の外周面からその回動支点56を含む軸直角断面(回動支点部57)を除いて切り抜かれていて、軸線58と交差する方向に回動(弾性変形)可能である。また、挿入部54には、弾性変形させた一対の係止片55を退避させるための各逃し穴59が設けられている。
【0004】
従来の係止脚100をボディパネル51の取付孔52に挿入させるときの挿入荷重と、取付け状態における保持力を計測したところ、挿入荷重が20〜40Nであり、保持力が150〜200Nであった。そして、従来の係止脚100に対し、それをボディパネルから抜き取る方向に保持力を超える荷重を作用させると、一対の係止片55に作用する力が挿入部54の先端部に及び、図14の(b)に示されるように、挿入部54の先端部に裂け目60を生じさせる場合がある。
【0005】
近時、この種の係止脚100に対して保持力のアップ(例えば、300N以上)が要求されている。このため、図14の(a)に二点鎖線で示すように、挿入部54の長さ54’を大きくすると回動支点部57の肉厚も厚くなってしまう。この結果、一対の係止片55が弾性変形しにくくなり、ボディパネル51の取付孔52への挿入荷重が大きくなってしまう。また、係止脚100における挿入部54の長さは、ボディパネル51内の部材との干渉を避けるため、できるだけ短くすることが望ましく、挿入部54の下半部を長くすることによって挿入部54の剛性を高めることは好ましくない。
【特許文献1】特開2006−153049号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した事情に鑑み、係止脚において、パネルの取付孔への挿入荷重を大きくすることなく、保持力が大きくなるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
上記した課題を解決するための本発明は、
平板状の基板部と、その一方の面から延設される挿入部とを備え、前記挿入部がパネルに設けられた取付孔に挿入されて保持される係止脚であって、
前記挿入部には、該挿入部に設けられた回動支点を中心にその軸線と交差する方向に往復回動可能で、先端部を前記挿入部の外周面よりも外側に突出させた一対の係止片と、前記一対の係止片が回動したときにそれらを退避させるための逃し穴とが設けられ、
前記一対の係止片は、前記挿入部が前記パネルの取付孔に挿入されるときに互いに接近する方向に回動するとともに、前記挿入部が前記パネルの取付孔に挿入されたときに互いに離隔する方向に回動するように設けられ、
前記各係止片の突出方向における前記軸線から前記挿入部の外周面までの長さを、同じく前記軸線から前記一対の係止片の回動支点を含む軸直角断面の外周面までの長さよりも長くしたことを特徴としている。
【0008】
本発明に係る係止脚は、上記したように構成されているため、一対の係止片を回動させる回動支点を含む軸直角断面(回動支点部)の長さをそのままにして、挿入部の下半部を外方に張り出させることにより、その肉厚を厚くしている。この結果、一対の係止片を回動させてパネルの取付孔に挿入するときの挿入荷重を大きくすることなく、前記取付孔に取り付けられた状態における係止脚の保持力を大きくすることができる。
【0009】
上記した係止脚は、挿入部の下半部を外方に張り出させることによって、その肉厚を厚くする形態であるが、挿入部の下半部を内方に張り出させることによって、その肉厚を厚くしてもよい。例えば、係止脚の逃し穴において、一対の係止片の回動支点を含む軸直角断面の内周面に凹部を形成することにより、各係止片の突出方向における軸線から挿入部の逃し穴の内周面までの長さを、同じく軸線から一対の係止片の回動支点を含む軸直角断面の内周面までの長さよりも短くすることができる。
【0010】
この場合、一対の係止片を退避させるための逃し穴が、基板部と挿入部の全体に亘って貫通状態で設けられていると、係止脚の製造工程において、成形型(特に、逃し穴を形成するための成形型)を離型させることが容易になる。
【0011】
この逃し穴に、その軸直角方向の断面積を二等分するリブを設けることができる。これにより、係止脚の支柱部分の剛性が高められ、パネルの取付孔に取り付けられた状態で係止脚が回転しにくくなる。
【0012】
そして、係止脚の挿入部における各係止片の回動支点を含む軸直角断面の面積と、軸直角断面におけるせん断応力との積によって求められる前記パネルの取付孔に対する係止脚の保持力を、設定値(例えば、300N)よりも大とすることができる。これにより、従来の係止脚よりも遥かに大きな力に対抗することができる。
【0013】
上記した係止脚を、クランプ(例えば、ベルトクランプ)の係止脚として用いることができる。これにより、ワイヤハーネスやチューブ類をベルトクランプを介して、例えば車両のボディパネルに強固に固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施例について説明する。図1の(a)は本発明に係るベルトクランプ1の正面図、(b)は同じく右側面図、図2は使用状態のベルトクランプ1の側面図、図3の(a)は第1実施例の係止脚101の上方からの斜視図であり、(b)は同じく下方からの斜視図、図4の(a)は係止脚101の正面図、(b)は同じく側面図、(c)は同じく底面図、図5は係止脚101の正面断面図である。本明細書においては、クランプの一例であるベルトクランプに設けられた係止脚について説明する。
【実施例1】
【0015】
図1に示されるように、ベルトクランプ1は樹脂材(例えば、ポリプロピレン)、より成り、係止脚(第1実施例の係止脚101)と、多数の歯部2aが刻設された長尺状のベルト部2と、ベルト部2を挿通させて、その歯部2aと係合する爪部3aが突出された係合部3とを備えている。このベルトクランプ1を使用するときは、図2に示されるように、ベルト部2によってワイヤハーネス4を巻き付ける。この状態で係止脚101を、車両のボディパネル5の取付孔6に挿入させる。本実施例の係止脚101は、幅が7mm、長さが12mmで、両端部が半円形状に形成された7×12の取付孔6に取り付けられる。
【0016】
第1実施例の係止脚101について説明する。図3の(a),(b)に示されるように、係止脚101は、長方形平板状の基板部7と、基板部7の長尺方向の両側面部から斜め下方に向かって突出する弾性変形可能な一対のスタビライザ8と、基板部7の底面部から、軸線9を同一にして下方に延設された挿入部11とを備えている。挿入部11の下半部(最初にパネル5の取付孔6に挿入される部分)は、取付孔6への挿入を容易にすべく斜めに切除されているとともに、挿入部11の軸直角断面は、パネル5の取付孔6よりも僅かに小さな相似形状となっている。挿入部11における短尺方向の側面部には、一対の係止片12が設けられている。一対の係止片12は、基板部7の長尺方向に沿って突出されている。以降、基板部7の長尺方向を、「一対の係止片12の突出方向P」と記載する。また、挿入部11の底面部から基板部7の底面部にかけて一対の逃し穴13が、軸線9の方向に設けられている。係止片12と逃し穴13については、後述する。なお、図3以降においては、ベルト部2及び係合部3の図示を省略している。
【0017】
図4及び図5を参照しながら、一対の係止片12について説明する。一対の係止片12は軸線9を挟んで対称に設けられているため、ここでは一方(右側)の係止片12についてのみ説明する。挿入部11の短尺方向の側面部における高さ方向のほぼ中央部の部分が、略逆U字状の切れ目14によって切り抜かれることにより、係止片12が形成されている。係止片12は、その下端部(回動支点部15)において挿入部11と連結されている。この回動支点部15は、係止片12を回動させる回動支点16を含む挿入部11の軸直角断面を意味している。そして、回動支点部15は、一対の係止片12の突出方向Pにおける挿入部11の外周面よりも内側(軸線9の側)に、円弧状にえぐられて設けられている。換言すれば、挿入部11の外周面は、回動支点部15よりも外方に張り出して設けられている。このため、係止脚101の軸線9から、一対の係止片12の突出方向Pにおける回動支点部15の外周面までの長さL1は、軸線9から同じく挿入部11の外周面までの長さL2よりも少し短くなっている。
【0018】
係止片12の回動支点部15から斜め上方に向かって傾斜面17が形成されていて、その上部に挿入部11の外周面よりも外方に突出する断面略三角形状の爪部18が設けられている。また、爪部18の上端縁から軸線9の方向に沿って、平面視において円弧形状のストッパ部19が、軸線9方向に延設されている。係止脚101の軸線9から突出方向Pにおけるストッパ部19までの長さL3は、軸線9から同じく挿入部11の外周面までの長さL2よりも少し長い。
【0019】
そして、挿入部11には、その高さ方向に2本の逃し穴13が設けられていて、それらの間にリブ21が設けられている。このリブ21により、挿入部11の剛性がより高められている。係止片12は、一方の逃し穴13と逆U字状の切れ目14とにより、回動支点部15を除く部分が挿入部11の外周面から切り抜かれていて、回動支点部15内の回動支点16を中心として、軸直角方向に回動(弾性変形)可能である。係止片12が軸線9の側に向かって回動されたとき、係止片12は対応する逃し穴13に退避される。係止片12が、軸線9の側に向かって最大に回動されたとき、爪部17の外周縁は、挿入部11の外周面よりも僅かに内側に配置される(図6の(a)参照)。
【0020】
第1実施例の係止脚101を、ボディパネル5の取付孔6に挿入するときの作用について説明する。図6の(a)に示されるように、挿入部11が、ボディパネル5の取付孔6に挿入される。挿入部11の下半部が斜めに切除されているため、挿入部11を挿入する作業が容易である。また、挿入部11の軸直角断面形状は、取付孔6の断面形状よりも僅かに小さい相似形状となっているため、挿入部11が挿入中にがたつくことはない。
【0021】
図6の(a)に示されるように、係止脚101の一対の係止片12の傾斜面17と、ボディパネル5の取付孔6の周縁部とが当接する。更に係止脚101を押し込むと、一対の係止片12が取付孔6の内周面に押圧され、回動支点16を中心に弾性変形して、軸直角方向の内側に向かって互いに接近する方向に回動される。図6の(a)において、その状態のボディパネル5と係止片12とを二点鎖線で示す。回動された一対の係止片12は、対応する逃し穴13に退避される。
【0022】
そして、図6の(b)に示されるように、ボディパネル5の取付孔6が一対の係止片12の爪部18を超えると、取付孔6による一対の係止片12の押圧状態が解除される。各係止片12は弾性復元して、軸直角方向の外側に向かって、互いに離隔する方向に回動される。そして、各係止片12の弾性復元力により、ストッパ部19がボディパネル5の取付孔6の内周面を押圧する。軸線9から一対の係止片12の突出方向Pにおけるストッパ部19までの長さL3は、軸線から同じく挿入部11の外周面までの長さL2よりも少し長い。このため、一対の係止片12の爪部18が弾性復元力を有したまま(換言すれば、一対の係止片12が完全に戻りきらずに)、取付孔6の内周面を押圧する。また、ボディパネル5により上方に向かって押圧された一対のスタビライザ8が、その弾性復元力でもってボディパネル5を下方に押圧する(図2参照)。即ち、ボディパネル5の取付孔6に挿入された係止脚101は、一対の係止片12がボディパネル5をそれらの突出方向P(水平方向)に押圧するとともに、一対のスタビライザ8がボディパネル5を軸線9方向に押圧する(図2参照)。これにより、係止脚101がボディパネル5に安定状態で取り付けられる。
【0023】
ボディパネル5に取り付けられた係止脚101の軸線9の方向に何らかの力が加わり、係止脚101がボディパネル5から引き抜かれた場合を考える。従来の係止脚101の場合、図14の(a)に示されるように、ボディパネル51の取付孔52への挿入を容易にして、案内性を確保するために、挿入部54の幅54’を小さくしていた。すると、図14の(b)に示されるように、係止脚101を引き抜く力が挿入部54の下半部に及び、挿入部54に裂け目60を生じさせてしまう。これに対して、本実施例の係止脚101の場合、図5に示されるように、挿入部11と一対の係止片12とを段付き形状で形成することにより、両者の接続部(各係止片12の回動支点16が含まれる軸直角断面、回動支点部15)の面積をそのままにして、挿入部11の下半部の肉厚を厚くしている。これにより、これにより一対の係止片12の回動(弾性変形)の容易さを阻害することなく、挿入部26の下半部の肉厚を厚くして、挿入部26の下半部の剛性が高くなる。即ち、回動支点部15の面積及び挿入部11の高さをそのままにして、係止脚101の保持力を大きくすることができる。
【0024】
第1実施例の係止脚101の保持力を算出する。第1実施例の係止脚101は、ポリプロピレンより成り、ボディパネル5に設けられた所定の大きさ(例えば、7×12)の取付孔6に挿入される。そして、挿入部11において最も肉厚の薄い部分である回動支点部15の軸直角断面積と、ポリプロピレンのせん断応力との積から、一対の係止片12の最大せん断力(係止脚101の保持力)を求めると、約350Nであった。
【0025】
ここで、係止脚101の保持力の設定値を300Nとすると、第1実施例の係止脚101では、最も肉厚の薄い部分である回動支点部15の最大せん断力が300Nを超えている。これは、第1実施例の係止脚101が、少なくとも300Nの引き抜き力に耐えられることを意味している。
【実施例2】
【0026】
次に、図7ないし図9を参照しながら、第2実施例の係止脚102について、第1実施例の係止脚101と異なる部分についてのみ説明する。上記した第1実施例の係止脚101は、挿入部11の下半部を、各係止片12の回動支点部15よりも段付き状態で外方に突出させることにより、回動支点部15の断面積を従来のものと同一にしながら、挿入部11の肉厚を厚くした場合である。これに対して、第2実施例の係止脚102は、一対の係止片12の外周部分の形状は従来のものと同様にして、一対の逃し穴22において各係止片12の回動支点23が設けられている部分(回動支点部24)に凹部25を形成した場合である。そして、一対の逃し穴22の内周面に凹部25を形成するために、各逃し穴22は、軸線9の方向に貫通状態で設けられている。この結果、図9に示されるように、一対の係止片12の突出方向Pにおける軸線9から逃し穴22の内周面までの長さL4よりも、同じく軸線9から凹部25までの長さL5の方が長くなっている。これにより、回動支点部24の面積を、従来のものと同一とし、一対の係止片12の回動(弾性変形)を容易にさせたまま、挿入部26の下半部の肉厚を従来のものよりも厚くすることができる。この結果、係止脚102の挿入荷重を大きくさせることなく、保持力を大きくすることができる。
【0027】
第2実施例の係止脚102の製造方法について、図10を参照しながら簡単に説明する。図10の(a)に示されるように、各成形型(内型27、外型28及び上型29)によって囲まれて形成されたキャビティ31に溶融樹脂32が流入される。この溶融樹脂32が固化した後、図10の(b)に示されるように、外型28と上型29とが離型される。続いて、一対の係止片12がそれらの回動支点23を中心に外方に回動(弾性変形)される。これにより、内型27の凹部形成突起27aと各係止片12の内周面との干渉が回避され、内型27を上方に引き抜くことが可能となる。なお、図10においては、各係止片12の切れ目14を形成するための成形型(スライドコア)の図示を省略している。
【0028】
第2実施例の係止脚102の場合、挿入部26の内周面に凹部25を形成することにより、一対の係止片12の回動支点部24の面積をそのままにして、挿入部26の下半部の肉厚を厚くしている。この結果、一対の係止片12を容易に回動(弾性変形)させることを阻害することなく、挿入部26の下半部の肉厚を厚くして、挿入部26の下半部の剛性が高くなる。即ち、回動支点部24の面積及び挿入部26の高さをそのままにして、係止脚102の保持力を大きくすることができる。しかも、第1実施例の係止脚101のように、回動支点部24の外周面にくびれ(段付き状態)が生ずることがないため、その外観が良好なものとなる。
【実施例3】
【0029】
上記した第2実施例の係止脚102では、内型27を上方に引き抜くため、一対の逃し穴22が貫通形状で設けられている。しかし、図11ないし図13に示される第3実施例の係止脚103のように、一対の逃し穴33が非貫通状態で設けられていてもよい。第3実施例の係止脚103の場合、内型27(図10参照)を下方に抜かざるをえないため、各逃し穴33における係止片12に近い側の内周面に、内型27の抜き溝34が軸線9方向に沿って形成されている。この抜き溝34は、一対の逃し穴33の内周面に設けられ凹部25と連続して設けられている。また、各係止片12の回動支点部24には、回動支点部24の内幅を抜き溝34の内幅と同一にして、一対の係止片12を回動(弾性変形)させ易くするために、一対の係止片12の突出方向Pと直交する方向に切り込まれていて、当該部分に各切込み部35が形成されている。各切込み部35から、凹部25を形成するためのスライドコア(図示せず)を離型させることができる。この結果、第3実施例の係止脚103は、第2実施例の係止脚102と同様な作用効果が奏されることに加えて、一対の逃し穴33が非貫通状態で形成されているため、第2実施例の係止脚102と比較して全体の剛性が高くなるという利点がある。
【0030】
上記した各実施例の係止脚101〜103の基板部7には、一対のスタビライザ8が突出されている。しかし、スタビライザ8は、これ以外の形状のもの(例えば、基板部7の全周から突出された皿形状のもの)であってもよい。
【0031】
また、本明細書では、ベルトクランプ1に設けられた係止脚101〜103について説明した。しかし、これらの係止脚101〜103が設けられるのは、ベルトクランプ1以外のものであってもよい。
【0032】
本明細書では、ボディパネル5に設けられた7×12の取付孔6に挿入される係止脚101〜103について説明した。しかし、これ以外の大きさの係止脚であってもよいのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】(a)は本発明に係るベルトクランプ1の正面図、(b)は同じく右側面図である。
【図2】使用状態のベルトクランプ1の側面図である。
【図3】(a)は第1実施例の係止脚101の上方からの斜視図であり、(b)は同じく下方からの斜視図である。
【図4】(a)は係止脚101の正面図、(b)は同じく側面図、(c)は同じく底面図である。
【図5】係止脚101の正面断面図である。
【図6】(a)は係止脚101をボディパネル5の取付孔6に挿入させる途中の状態の作用説明図であり、(b)は係止脚101をボディパネル5の取付孔6に挿入させた状態の作用説明図である。
【図7】(a)は第2実施例の係止脚102の上方からの斜視図であり、(b)は同じく下方からの斜視図である。
【図8】(a)は係止脚101の平面図、(b)は同じく正面図、(c)は同じく側面図、(d)は同じく底面図である。
【図9】係止脚103の正面断面図である。
【図10】(a),(b)は係止脚102の製造方法を示す概略図である。
【図11】(a)は第3実施例の係止脚103の上方からの斜視図であり、(b)は同じく下方からの斜視図である。
【図12】(a)は係止脚103の正面図、(b)は同じく側面図、(c)は同じく底面図である。
【図13】係止脚102の正面断面図である。
【図14】(a)は従来の係止脚100の正面断面図、(b)は挿入部54に裂け目60が入った係止脚100の側面図である。
【符号の説明】
【0034】
101〜103 係止脚
1 ベルトクランプ(クランプ)
5 ボディパネル(パネル)
6 取付孔
7 基板部
9 軸線
11,26 挿入部
12 係止片
13,22,33 逃し穴
15,24 回動支点部(軸直角断面)
16,23 回動支点
18 爪部(先端部)
21 リブ
L1,L2,L4,L5 長さ
P 突出方向
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両のボディパネルにワイヤハーネスを固定するためのクランプに設けられる係止脚、及びそれを用いたクランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のボディパネルにワイヤハーネスやチューブを配索するために、ベルトクランプが使用される場合がある(例えば、特許文献1を参照)。このベルトクランプは樹脂材より成り、ワイヤハーネスに巻き付けられるベルト部と、ボディパネルの取付孔に挿入される係止脚とを備えている。
【0003】
図14の(a),(b)に示されるように、この係止脚100は、ボディパネル51の取付孔52よりも大きな面積を有する平板状の基板部53と、基板部53の底面部から延設される挿入部54とを備えている。挿入部54の外周面には、一対の係止片55が突設されている。一対の係止片55は、挿入部54の外周面からその回動支点56を含む軸直角断面(回動支点部57)を除いて切り抜かれていて、軸線58と交差する方向に回動(弾性変形)可能である。また、挿入部54には、弾性変形させた一対の係止片55を退避させるための各逃し穴59が設けられている。
【0004】
従来の係止脚100をボディパネル51の取付孔52に挿入させるときの挿入荷重と、取付け状態における保持力を計測したところ、挿入荷重が20〜40Nであり、保持力が150〜200Nであった。そして、従来の係止脚100に対し、それをボディパネルから抜き取る方向に保持力を超える荷重を作用させると、一対の係止片55に作用する力が挿入部54の先端部に及び、図14の(b)に示されるように、挿入部54の先端部に裂け目60を生じさせる場合がある。
【0005】
近時、この種の係止脚100に対して保持力のアップ(例えば、300N以上)が要求されている。このため、図14の(a)に二点鎖線で示すように、挿入部54の長さ54’を大きくすると回動支点部57の肉厚も厚くなってしまう。この結果、一対の係止片55が弾性変形しにくくなり、ボディパネル51の取付孔52への挿入荷重が大きくなってしまう。また、係止脚100における挿入部54の長さは、ボディパネル51内の部材との干渉を避けるため、できるだけ短くすることが望ましく、挿入部54の下半部を長くすることによって挿入部54の剛性を高めることは好ましくない。
【特許文献1】特開2006−153049号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した事情に鑑み、係止脚において、パネルの取付孔への挿入荷重を大きくすることなく、保持力が大きくなるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
上記した課題を解決するための本発明は、
平板状の基板部と、その一方の面から延設される挿入部とを備え、前記挿入部がパネルに設けられた取付孔に挿入されて保持される係止脚であって、
前記挿入部には、該挿入部に設けられた回動支点を中心にその軸線と交差する方向に往復回動可能で、先端部を前記挿入部の外周面よりも外側に突出させた一対の係止片と、前記一対の係止片が回動したときにそれらを退避させるための逃し穴とが設けられ、
前記一対の係止片は、前記挿入部が前記パネルの取付孔に挿入されるときに互いに接近する方向に回動するとともに、前記挿入部が前記パネルの取付孔に挿入されたときに互いに離隔する方向に回動するように設けられ、
前記各係止片の突出方向における前記軸線から前記挿入部の外周面までの長さを、同じく前記軸線から前記一対の係止片の回動支点を含む軸直角断面の外周面までの長さよりも長くしたことを特徴としている。
【0008】
本発明に係る係止脚は、上記したように構成されているため、一対の係止片を回動させる回動支点を含む軸直角断面(回動支点部)の長さをそのままにして、挿入部の下半部を外方に張り出させることにより、その肉厚を厚くしている。この結果、一対の係止片を回動させてパネルの取付孔に挿入するときの挿入荷重を大きくすることなく、前記取付孔に取り付けられた状態における係止脚の保持力を大きくすることができる。
【0009】
上記した係止脚は、挿入部の下半部を外方に張り出させることによって、その肉厚を厚くする形態であるが、挿入部の下半部を内方に張り出させることによって、その肉厚を厚くしてもよい。例えば、係止脚の逃し穴において、一対の係止片の回動支点を含む軸直角断面の内周面に凹部を形成することにより、各係止片の突出方向における軸線から挿入部の逃し穴の内周面までの長さを、同じく軸線から一対の係止片の回動支点を含む軸直角断面の内周面までの長さよりも短くすることができる。
【0010】
この場合、一対の係止片を退避させるための逃し穴が、基板部と挿入部の全体に亘って貫通状態で設けられていると、係止脚の製造工程において、成形型(特に、逃し穴を形成するための成形型)を離型させることが容易になる。
【0011】
この逃し穴に、その軸直角方向の断面積を二等分するリブを設けることができる。これにより、係止脚の支柱部分の剛性が高められ、パネルの取付孔に取り付けられた状態で係止脚が回転しにくくなる。
【0012】
そして、係止脚の挿入部における各係止片の回動支点を含む軸直角断面の面積と、軸直角断面におけるせん断応力との積によって求められる前記パネルの取付孔に対する係止脚の保持力を、設定値(例えば、300N)よりも大とすることができる。これにより、従来の係止脚よりも遥かに大きな力に対抗することができる。
【0013】
上記した係止脚を、クランプ(例えば、ベルトクランプ)の係止脚として用いることができる。これにより、ワイヤハーネスやチューブ類をベルトクランプを介して、例えば車両のボディパネルに強固に固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施例について説明する。図1の(a)は本発明に係るベルトクランプ1の正面図、(b)は同じく右側面図、図2は使用状態のベルトクランプ1の側面図、図3の(a)は第1実施例の係止脚101の上方からの斜視図であり、(b)は同じく下方からの斜視図、図4の(a)は係止脚101の正面図、(b)は同じく側面図、(c)は同じく底面図、図5は係止脚101の正面断面図である。本明細書においては、クランプの一例であるベルトクランプに設けられた係止脚について説明する。
【実施例1】
【0015】
図1に示されるように、ベルトクランプ1は樹脂材(例えば、ポリプロピレン)、より成り、係止脚(第1実施例の係止脚101)と、多数の歯部2aが刻設された長尺状のベルト部2と、ベルト部2を挿通させて、その歯部2aと係合する爪部3aが突出された係合部3とを備えている。このベルトクランプ1を使用するときは、図2に示されるように、ベルト部2によってワイヤハーネス4を巻き付ける。この状態で係止脚101を、車両のボディパネル5の取付孔6に挿入させる。本実施例の係止脚101は、幅が7mm、長さが12mmで、両端部が半円形状に形成された7×12の取付孔6に取り付けられる。
【0016】
第1実施例の係止脚101について説明する。図3の(a),(b)に示されるように、係止脚101は、長方形平板状の基板部7と、基板部7の長尺方向の両側面部から斜め下方に向かって突出する弾性変形可能な一対のスタビライザ8と、基板部7の底面部から、軸線9を同一にして下方に延設された挿入部11とを備えている。挿入部11の下半部(最初にパネル5の取付孔6に挿入される部分)は、取付孔6への挿入を容易にすべく斜めに切除されているとともに、挿入部11の軸直角断面は、パネル5の取付孔6よりも僅かに小さな相似形状となっている。挿入部11における短尺方向の側面部には、一対の係止片12が設けられている。一対の係止片12は、基板部7の長尺方向に沿って突出されている。以降、基板部7の長尺方向を、「一対の係止片12の突出方向P」と記載する。また、挿入部11の底面部から基板部7の底面部にかけて一対の逃し穴13が、軸線9の方向に設けられている。係止片12と逃し穴13については、後述する。なお、図3以降においては、ベルト部2及び係合部3の図示を省略している。
【0017】
図4及び図5を参照しながら、一対の係止片12について説明する。一対の係止片12は軸線9を挟んで対称に設けられているため、ここでは一方(右側)の係止片12についてのみ説明する。挿入部11の短尺方向の側面部における高さ方向のほぼ中央部の部分が、略逆U字状の切れ目14によって切り抜かれることにより、係止片12が形成されている。係止片12は、その下端部(回動支点部15)において挿入部11と連結されている。この回動支点部15は、係止片12を回動させる回動支点16を含む挿入部11の軸直角断面を意味している。そして、回動支点部15は、一対の係止片12の突出方向Pにおける挿入部11の外周面よりも内側(軸線9の側)に、円弧状にえぐられて設けられている。換言すれば、挿入部11の外周面は、回動支点部15よりも外方に張り出して設けられている。このため、係止脚101の軸線9から、一対の係止片12の突出方向Pにおける回動支点部15の外周面までの長さL1は、軸線9から同じく挿入部11の外周面までの長さL2よりも少し短くなっている。
【0018】
係止片12の回動支点部15から斜め上方に向かって傾斜面17が形成されていて、その上部に挿入部11の外周面よりも外方に突出する断面略三角形状の爪部18が設けられている。また、爪部18の上端縁から軸線9の方向に沿って、平面視において円弧形状のストッパ部19が、軸線9方向に延設されている。係止脚101の軸線9から突出方向Pにおけるストッパ部19までの長さL3は、軸線9から同じく挿入部11の外周面までの長さL2よりも少し長い。
【0019】
そして、挿入部11には、その高さ方向に2本の逃し穴13が設けられていて、それらの間にリブ21が設けられている。このリブ21により、挿入部11の剛性がより高められている。係止片12は、一方の逃し穴13と逆U字状の切れ目14とにより、回動支点部15を除く部分が挿入部11の外周面から切り抜かれていて、回動支点部15内の回動支点16を中心として、軸直角方向に回動(弾性変形)可能である。係止片12が軸線9の側に向かって回動されたとき、係止片12は対応する逃し穴13に退避される。係止片12が、軸線9の側に向かって最大に回動されたとき、爪部17の外周縁は、挿入部11の外周面よりも僅かに内側に配置される(図6の(a)参照)。
【0020】
第1実施例の係止脚101を、ボディパネル5の取付孔6に挿入するときの作用について説明する。図6の(a)に示されるように、挿入部11が、ボディパネル5の取付孔6に挿入される。挿入部11の下半部が斜めに切除されているため、挿入部11を挿入する作業が容易である。また、挿入部11の軸直角断面形状は、取付孔6の断面形状よりも僅かに小さい相似形状となっているため、挿入部11が挿入中にがたつくことはない。
【0021】
図6の(a)に示されるように、係止脚101の一対の係止片12の傾斜面17と、ボディパネル5の取付孔6の周縁部とが当接する。更に係止脚101を押し込むと、一対の係止片12が取付孔6の内周面に押圧され、回動支点16を中心に弾性変形して、軸直角方向の内側に向かって互いに接近する方向に回動される。図6の(a)において、その状態のボディパネル5と係止片12とを二点鎖線で示す。回動された一対の係止片12は、対応する逃し穴13に退避される。
【0022】
そして、図6の(b)に示されるように、ボディパネル5の取付孔6が一対の係止片12の爪部18を超えると、取付孔6による一対の係止片12の押圧状態が解除される。各係止片12は弾性復元して、軸直角方向の外側に向かって、互いに離隔する方向に回動される。そして、各係止片12の弾性復元力により、ストッパ部19がボディパネル5の取付孔6の内周面を押圧する。軸線9から一対の係止片12の突出方向Pにおけるストッパ部19までの長さL3は、軸線から同じく挿入部11の外周面までの長さL2よりも少し長い。このため、一対の係止片12の爪部18が弾性復元力を有したまま(換言すれば、一対の係止片12が完全に戻りきらずに)、取付孔6の内周面を押圧する。また、ボディパネル5により上方に向かって押圧された一対のスタビライザ8が、その弾性復元力でもってボディパネル5を下方に押圧する(図2参照)。即ち、ボディパネル5の取付孔6に挿入された係止脚101は、一対の係止片12がボディパネル5をそれらの突出方向P(水平方向)に押圧するとともに、一対のスタビライザ8がボディパネル5を軸線9方向に押圧する(図2参照)。これにより、係止脚101がボディパネル5に安定状態で取り付けられる。
【0023】
ボディパネル5に取り付けられた係止脚101の軸線9の方向に何らかの力が加わり、係止脚101がボディパネル5から引き抜かれた場合を考える。従来の係止脚101の場合、図14の(a)に示されるように、ボディパネル51の取付孔52への挿入を容易にして、案内性を確保するために、挿入部54の幅54’を小さくしていた。すると、図14の(b)に示されるように、係止脚101を引き抜く力が挿入部54の下半部に及び、挿入部54に裂け目60を生じさせてしまう。これに対して、本実施例の係止脚101の場合、図5に示されるように、挿入部11と一対の係止片12とを段付き形状で形成することにより、両者の接続部(各係止片12の回動支点16が含まれる軸直角断面、回動支点部15)の面積をそのままにして、挿入部11の下半部の肉厚を厚くしている。これにより、これにより一対の係止片12の回動(弾性変形)の容易さを阻害することなく、挿入部26の下半部の肉厚を厚くして、挿入部26の下半部の剛性が高くなる。即ち、回動支点部15の面積及び挿入部11の高さをそのままにして、係止脚101の保持力を大きくすることができる。
【0024】
第1実施例の係止脚101の保持力を算出する。第1実施例の係止脚101は、ポリプロピレンより成り、ボディパネル5に設けられた所定の大きさ(例えば、7×12)の取付孔6に挿入される。そして、挿入部11において最も肉厚の薄い部分である回動支点部15の軸直角断面積と、ポリプロピレンのせん断応力との積から、一対の係止片12の最大せん断力(係止脚101の保持力)を求めると、約350Nであった。
【0025】
ここで、係止脚101の保持力の設定値を300Nとすると、第1実施例の係止脚101では、最も肉厚の薄い部分である回動支点部15の最大せん断力が300Nを超えている。これは、第1実施例の係止脚101が、少なくとも300Nの引き抜き力に耐えられることを意味している。
【実施例2】
【0026】
次に、図7ないし図9を参照しながら、第2実施例の係止脚102について、第1実施例の係止脚101と異なる部分についてのみ説明する。上記した第1実施例の係止脚101は、挿入部11の下半部を、各係止片12の回動支点部15よりも段付き状態で外方に突出させることにより、回動支点部15の断面積を従来のものと同一にしながら、挿入部11の肉厚を厚くした場合である。これに対して、第2実施例の係止脚102は、一対の係止片12の外周部分の形状は従来のものと同様にして、一対の逃し穴22において各係止片12の回動支点23が設けられている部分(回動支点部24)に凹部25を形成した場合である。そして、一対の逃し穴22の内周面に凹部25を形成するために、各逃し穴22は、軸線9の方向に貫通状態で設けられている。この結果、図9に示されるように、一対の係止片12の突出方向Pにおける軸線9から逃し穴22の内周面までの長さL4よりも、同じく軸線9から凹部25までの長さL5の方が長くなっている。これにより、回動支点部24の面積を、従来のものと同一とし、一対の係止片12の回動(弾性変形)を容易にさせたまま、挿入部26の下半部の肉厚を従来のものよりも厚くすることができる。この結果、係止脚102の挿入荷重を大きくさせることなく、保持力を大きくすることができる。
【0027】
第2実施例の係止脚102の製造方法について、図10を参照しながら簡単に説明する。図10の(a)に示されるように、各成形型(内型27、外型28及び上型29)によって囲まれて形成されたキャビティ31に溶融樹脂32が流入される。この溶融樹脂32が固化した後、図10の(b)に示されるように、外型28と上型29とが離型される。続いて、一対の係止片12がそれらの回動支点23を中心に外方に回動(弾性変形)される。これにより、内型27の凹部形成突起27aと各係止片12の内周面との干渉が回避され、内型27を上方に引き抜くことが可能となる。なお、図10においては、各係止片12の切れ目14を形成するための成形型(スライドコア)の図示を省略している。
【0028】
第2実施例の係止脚102の場合、挿入部26の内周面に凹部25を形成することにより、一対の係止片12の回動支点部24の面積をそのままにして、挿入部26の下半部の肉厚を厚くしている。この結果、一対の係止片12を容易に回動(弾性変形)させることを阻害することなく、挿入部26の下半部の肉厚を厚くして、挿入部26の下半部の剛性が高くなる。即ち、回動支点部24の面積及び挿入部26の高さをそのままにして、係止脚102の保持力を大きくすることができる。しかも、第1実施例の係止脚101のように、回動支点部24の外周面にくびれ(段付き状態)が生ずることがないため、その外観が良好なものとなる。
【実施例3】
【0029】
上記した第2実施例の係止脚102では、内型27を上方に引き抜くため、一対の逃し穴22が貫通形状で設けられている。しかし、図11ないし図13に示される第3実施例の係止脚103のように、一対の逃し穴33が非貫通状態で設けられていてもよい。第3実施例の係止脚103の場合、内型27(図10参照)を下方に抜かざるをえないため、各逃し穴33における係止片12に近い側の内周面に、内型27の抜き溝34が軸線9方向に沿って形成されている。この抜き溝34は、一対の逃し穴33の内周面に設けられ凹部25と連続して設けられている。また、各係止片12の回動支点部24には、回動支点部24の内幅を抜き溝34の内幅と同一にして、一対の係止片12を回動(弾性変形)させ易くするために、一対の係止片12の突出方向Pと直交する方向に切り込まれていて、当該部分に各切込み部35が形成されている。各切込み部35から、凹部25を形成するためのスライドコア(図示せず)を離型させることができる。この結果、第3実施例の係止脚103は、第2実施例の係止脚102と同様な作用効果が奏されることに加えて、一対の逃し穴33が非貫通状態で形成されているため、第2実施例の係止脚102と比較して全体の剛性が高くなるという利点がある。
【0030】
上記した各実施例の係止脚101〜103の基板部7には、一対のスタビライザ8が突出されている。しかし、スタビライザ8は、これ以外の形状のもの(例えば、基板部7の全周から突出された皿形状のもの)であってもよい。
【0031】
また、本明細書では、ベルトクランプ1に設けられた係止脚101〜103について説明した。しかし、これらの係止脚101〜103が設けられるのは、ベルトクランプ1以外のものであってもよい。
【0032】
本明細書では、ボディパネル5に設けられた7×12の取付孔6に挿入される係止脚101〜103について説明した。しかし、これ以外の大きさの係止脚であってもよいのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】(a)は本発明に係るベルトクランプ1の正面図、(b)は同じく右側面図である。
【図2】使用状態のベルトクランプ1の側面図である。
【図3】(a)は第1実施例の係止脚101の上方からの斜視図であり、(b)は同じく下方からの斜視図である。
【図4】(a)は係止脚101の正面図、(b)は同じく側面図、(c)は同じく底面図である。
【図5】係止脚101の正面断面図である。
【図6】(a)は係止脚101をボディパネル5の取付孔6に挿入させる途中の状態の作用説明図であり、(b)は係止脚101をボディパネル5の取付孔6に挿入させた状態の作用説明図である。
【図7】(a)は第2実施例の係止脚102の上方からの斜視図であり、(b)は同じく下方からの斜視図である。
【図8】(a)は係止脚101の平面図、(b)は同じく正面図、(c)は同じく側面図、(d)は同じく底面図である。
【図9】係止脚103の正面断面図である。
【図10】(a),(b)は係止脚102の製造方法を示す概略図である。
【図11】(a)は第3実施例の係止脚103の上方からの斜視図であり、(b)は同じく下方からの斜視図である。
【図12】(a)は係止脚103の正面図、(b)は同じく側面図、(c)は同じく底面図である。
【図13】係止脚102の正面断面図である。
【図14】(a)は従来の係止脚100の正面断面図、(b)は挿入部54に裂け目60が入った係止脚100の側面図である。
【符号の説明】
【0034】
101〜103 係止脚
1 ベルトクランプ(クランプ)
5 ボディパネル(パネル)
6 取付孔
7 基板部
9 軸線
11,26 挿入部
12 係止片
13,22,33 逃し穴
15,24 回動支点部(軸直角断面)
16,23 回動支点
18 爪部(先端部)
21 リブ
L1,L2,L4,L5 長さ
P 突出方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の基板部と、その一方の面から延設される挿入部とを備え、前記挿入部がパネルに設けられた取付孔に挿入されて保持される係止脚であって、
前記挿入部には、該挿入部に設けられた回動支点を中心にその軸線と交差する方向に往復回動可能で、先端部を前記挿入部の外周面よりも外側に突出させた一対の係止片と、前記一対の係止片が回動したときにそれらを退避させるための逃し穴とが設けられ、
前記一対の係止片は、前記挿入部が前記パネルの取付孔に挿入されるときに互いに接近する方向に回動するとともに、前記挿入部が前記パネルの取付孔に挿入されたときに互いに離隔する方向に回動するように設けられ、
前記各係止片の突出方向における前記軸線から前記挿入部の外周面までの長さを、同じく前記軸線から前記一対の係止片の回動支点を含む軸直角断面の外周面までの長さよりも長くしたことを特徴とする係止脚。
【請求項2】
平板状の基板部と、その一方の面から延設される挿入部とを備え、前記挿入部がパネルに設けられた取付孔に挿入されて保持される係止脚であって、
前記挿入部には、該挿入部に設けられた回動支点を中心にその軸線と交差する方向に往復回動可能で、先端部を前記挿入部の外周面よりも外側に突出させた一対の係止片と、前記一対の係止片が回動したときにそれらを退避させるための逃し穴とが設けられ、
前記一対の係止片は、前記挿入部が前記パネルの取付孔に挿入されるときに互いに接近する方向に回動するとともに、前記挿入部が前記パネルの取付孔に挿入されたときに互いに離隔する方向に回動するように設けられ、
前記各係止片の突出方向における前記軸線から前記挿入部の逃し穴の内周面までの長さを、同じく前記軸線から前記一対の係止片の回動支点を含む軸直角断面の内周面までの長さよりも短くしたことを特徴とする係止脚。
【請求項3】
前記逃し穴において、前記一対の係止片の回動支点を含む軸直角断面の内周面に凹部を形成したことを特徴とする請求項2に記載の係止脚。
【請求項4】
前記逃し穴は、前記軸線方向に貫通状態で設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の係止脚。
【請求項5】
前記逃し穴には、その軸直角方向の断面積を二等分するリブが設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の係止脚。
【請求項6】
前記挿入部における各係止片の回動支点を含む軸直角断面の面積と、前記軸直角断面におけるせん断応力との積によって求められる前記パネルの取付孔に対する係止脚の保持力が、設定値よりも大であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の係止脚。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の係止脚を有することを特徴とするクランプ。
【請求項1】
平板状の基板部と、その一方の面から延設される挿入部とを備え、前記挿入部がパネルに設けられた取付孔に挿入されて保持される係止脚であって、
前記挿入部には、該挿入部に設けられた回動支点を中心にその軸線と交差する方向に往復回動可能で、先端部を前記挿入部の外周面よりも外側に突出させた一対の係止片と、前記一対の係止片が回動したときにそれらを退避させるための逃し穴とが設けられ、
前記一対の係止片は、前記挿入部が前記パネルの取付孔に挿入されるときに互いに接近する方向に回動するとともに、前記挿入部が前記パネルの取付孔に挿入されたときに互いに離隔する方向に回動するように設けられ、
前記各係止片の突出方向における前記軸線から前記挿入部の外周面までの長さを、同じく前記軸線から前記一対の係止片の回動支点を含む軸直角断面の外周面までの長さよりも長くしたことを特徴とする係止脚。
【請求項2】
平板状の基板部と、その一方の面から延設される挿入部とを備え、前記挿入部がパネルに設けられた取付孔に挿入されて保持される係止脚であって、
前記挿入部には、該挿入部に設けられた回動支点を中心にその軸線と交差する方向に往復回動可能で、先端部を前記挿入部の外周面よりも外側に突出させた一対の係止片と、前記一対の係止片が回動したときにそれらを退避させるための逃し穴とが設けられ、
前記一対の係止片は、前記挿入部が前記パネルの取付孔に挿入されるときに互いに接近する方向に回動するとともに、前記挿入部が前記パネルの取付孔に挿入されたときに互いに離隔する方向に回動するように設けられ、
前記各係止片の突出方向における前記軸線から前記挿入部の逃し穴の内周面までの長さを、同じく前記軸線から前記一対の係止片の回動支点を含む軸直角断面の内周面までの長さよりも短くしたことを特徴とする係止脚。
【請求項3】
前記逃し穴において、前記一対の係止片の回動支点を含む軸直角断面の内周面に凹部を形成したことを特徴とする請求項2に記載の係止脚。
【請求項4】
前記逃し穴は、前記軸線方向に貫通状態で設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の係止脚。
【請求項5】
前記逃し穴には、その軸直角方向の断面積を二等分するリブが設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の係止脚。
【請求項6】
前記挿入部における各係止片の回動支点を含む軸直角断面の面積と、前記軸直角断面におけるせん断応力との積によって求められる前記パネルの取付孔に対する係止脚の保持力が、設定値よりも大であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の係止脚。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の係止脚を有することを特徴とするクランプ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−257551(P2009−257551A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−110320(P2008−110320)
【出願日】平成20年4月21日(2008.4.21)
【出願人】(000208293)大和化成工業株式会社 (174)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月21日(2008.4.21)
【出願人】(000208293)大和化成工業株式会社 (174)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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