説明

保存安定性の向上した錠剤

【課題】 従来技術によって製造されたブロチゾラム含有錠剤と比較して、保存安定性、溶出性、製剤均一性に優れたブロチゾラム含有経口剤を提供すること。
【解決方法】 経口剤の製造に用いることが可能な有機溶媒にブロチゾラムを溶解する工程と、前記溶解液を1種類または2種類以上の糖アルコールに噴霧または混合させて混合物を得る工程と、前記混合物を水と混合して一般に知られた造粒法によって造粒を行い、ブロチゾラムを含有する造粒物を得る工程を備える、前記各工程を備えたブロチゾラムを含有する経口剤の製造法を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含有する医薬成分の保存安定性が向上した経口剤、およびその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
経口剤中に含まれている医薬成分の中には、時間の経過と共に分解反応等によりその医薬成分の一部が失われる問題が存在している。特に経口剤中の医薬成分の含有量が微量であるほど、わずかな医薬成分が失われただけでも投与される患者に対して十分な投与効果が得られない等の問題が生じる可能性が高くなる。
【0003】
これらの問題を有している医薬成分の一つとしてブロチゾラムが挙げられる。ブロチゾラムはチエノジアゼピン系の睡眠導入剤、麻酔前投与薬の一種であり、下記の(化1)の構造式を有している。
【0004】
【化1】

【0005】
医薬成分としてブロチゾラムを含有している錠剤(以下、ブロチゾラム含有錠剤と称す)はすでに非特許文献1に開示されている。しかしながら、非特許文献1に記載のブロチゾラム含有錠剤は長期間保存を行った場合、医薬成分であるブロチゾラムが失われるといった問題を有している。
【0006】
また、特許文献1には薬理活性の高い医薬を含む製剤が開示されており、医薬の一種類としてブロチゾラムが記載されている。特許文献1にはブロチゾラムを用いた試験例の開示は無いものの、発明の効果として医薬の安定性が優れているとの記載がなされている。
しかしながら、前記の如くブロチゾラムを含有する製剤で安定性の試験を行っていないことから、ブロチゾラムを含有する製剤が特許文献1に記載の医薬の安定性が優れるとの発明の効果を奏するかは不明である。また、仮に特許文献1に記載のブロチゾラムを含有する製剤が前記発明の効果を奏するとしても、記載されている製剤は十分な医薬の安定性が得られているとは言い難く、したがってブロチゾラムの保存安定性がより優れた錠剤を提供することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−119121号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】レンドルミン(登録商標)錠 添付文書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、従来技術によって製造されたブロチゾラム含有錠剤と比較して、保存安定性、溶出性、製剤均一性に優れたブロチゾラム含有経口剤を提供することにある。
【0010】
具体的には、例えば特許文献1に記載の従来の方法で製造されたブロチゾラム含有錠剤は、温度60℃、相対湿度75%の条件下で15日間保存を行った場合、錠剤中のブロチゾラム類縁物質が約1.7〜3.2重量%に増加するが、このブロチゾラム類縁物質の増加を低コストでかつ簡易な手法によって抑制することを可能とした新たなブロチゾラム含有経口剤の製造法を生み出し、これによって、より長期間に渡ってブロチゾラムの含有量が低減しない患者にとって安全なブロチゾラム含有経口剤の提供を可能とすることなどである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の要旨は以下の通りである。
(1)経口剤の製造に用いることが可能な有機溶媒にブロチゾラムを溶解する工程と、
前記溶解液を1種類または2種類以上の糖アルコールに噴霧または混合させて混合物を得る工程と、
前記混合物を水と混合して一般に知られた造粒法によって造粒を行い、ブロチゾラムを含有する造粒物を得る工程を備える、
前記各工程を備えた経口剤の製造法によって製造された、ブロチゾラムを含有する経口剤。
(2)経口剤の製造に用いることが可能な有機溶媒にブロチゾラムを溶解する工程と、
前記溶解液を1種類または2種類以上の糖アルコールに噴霧または混合させて混合物を得る工程と、
前記混合物を水と混合して一般に知られた造粒法によって造粒を行い、ブロチゾラムを含有する造粒物を得る工程を備える、
前記各工程を備えたブロチゾラムを含有する経口剤の製造法。
(3)前記経口剤の製造に用いることが可能な有機溶媒が、アセトン、1−ブタノール、エタノール、ジクロロメタン、メタノール、イソプロピルアルコールである(1)または(2)記載のブロチゾラムを含有する経口剤。
(4)前記製造法で使用する水と経口剤の製造に用いることが可能な有機溶媒の溶媒比率が、水の割合を1とした場合、経口剤の製造に用いることが可能な有機溶媒の比率が0.4〜2.4である(1)〜(3)記載のブロチゾラムを含有する経口剤。
(5)前記糖アルコールが、マンニトール、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトールおよびソルビトールから選ばれる(1)〜(4)記載のブロチゾラムを含有する経口剤。
(6)前記経口剤中の水分量が経口剤全体の重量と比較して1%以下である(1)〜(5)記載のブロチゾラムを含有する経口剤。
(7)前記経口剤が錠剤、散剤、カプセル剤、顆粒剤である(1)〜(6)記載のブロチゾラムを含有する経口剤。
【0012】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明におけるブロチゾラムとは、前記(化1)によって表される化合物を指す。ブロチゾラムは主に催眠、鎮静、抗不安といった薬理効果を示し、睡眠導入剤や麻酔前投与薬として用いられている。
【0014】
本発明に用いられる経口剤の製造に用いることが可能な有機溶媒とは、アセトン、1−ブタノール、エタノール、ジクロロメタン、メタノール等が挙げられる。
本発明において最も好ましい有機溶媒はエタノールである。
【0015】
本発明における水と経口剤の製造に用いることが可能な有機溶媒の溶媒比率は、医薬成分であるブロチゾラムが完全に溶解する限りにおいては特に限定はされない。
好ましくは、水の割合を1とした場合、経口剤の製造に用いることが可能な有機溶媒の比率が0.4〜2.4である。
【0016】
本発明に用いられる一般に知られた造粒法とは、錠剤を製造する際に用いることが可能な造粒法である。具体的には転動造粒、流動層造粒、噴霧乾燥造粒、溶融造粒、圧縮造粒、攪拌造粒、押し出し造粒等が挙げられる。
本発明において好ましく用いられる造粒法は、流動層造粒、攪拌造粒である。
【0017】
本発明に用いられる一般に知られた造粒法では、得られた造粒物にブロチゾラムと糖アルコールが一緒に含まれていても良い。具体的には糖アルコールに水と経口剤の製造に用いることが可能な有機溶媒にブロチゾラムが溶解してなる溶解液を混合する等の造粒法によって得られる。
【0018】
本発明に用いられる糖アルコールは、具体的にはマンニトール、エリスリトール、キシリトール、マルチトールおよびソルビトール等が挙げられる。より好ましくはマンニトール、キシリトールであり、最も好ましくはマンニトールである。
【0019】
本発明により提供されるブロチゾラムを含有する経口剤はその発明の効果を奏する限り、以下に開示する添加剤をさらに添加することが可能である。
本発明に用いられる添加剤としては、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、抗酸化剤、静電防止剤、pH調整剤、流動化剤、界面活性剤、着色剤、甘味剤およびコーティング剤等が挙げられる。
【0020】
本発明に用いられる賦形剤としては、糖類、デンプンまたはその誘導体、リン酸カルシウム類、リン酸ナトリウム類などが挙げられる。
糖類としては具体的には乳糖、ショ糖、白糖、トレハロース、果糖、ブドウ糖等の水和物もしくは無水和物が挙げられる。より好ましくは乳糖、ショ糖であり、最も好ましくは乳糖である。
デンプンまたはその誘導体としては具体的にはトウモロコシデンプンやバレイショデンプンなどが挙げられる。
【0021】
本発明に用いられる結合剤としては、例えばアクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、アルギン酸ナトリウム、エチルセルロース、カラギーナン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルエチルセルロース、寒天、コポリビドン、精製セラック、デキストリン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシプロピルセルロース、ビニルピロリドン・酢酸ビニル共重合物、ヒプロメロース、部分アルファー化デンプン、プルラン、ペクチン、ポリビニルアルコールポリエチレングリコールグラフトコポリマー、ポビドン、ポリビニルアルコール、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマーLD、メタクリル酸コポリマーSおよびメチルセルロースなどが挙げられる。
本発明において好ましく用いられる結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドンが挙げられる。
【0022】
本発明に用いられる滑沢剤としては、例えばカルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、タルク、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、コムギデンプン、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリルアルコール、ステアリン酸およびその塩、セタノール、ゼラチン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール類、ポリソルベート類、マクロゴール類、モノステアリン酸グリセリンおよびラウリル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
本発明において好ましく用いられる滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウムが挙げられる。
【0023】
本発明に用いられる崩壊剤としては、例えばトウモロコシデンプン、カルメロースカルシウム、デンプン、結晶セルロース、ステアリン酸およびその塩、タルク、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドンおよびセルロースまたはその誘導体などが挙げられる。
本発明において好ましく用いられる崩壊剤としては、トウモロコシデンプンが挙げられる。
【0024】
本発明に用いられる抗酸化防止剤としては、例えばトコフェロール、アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、エリソルビン酸、塩酸システイン、乾燥亜硫酸ナトリウム、クエン酸水和物、ジブチルヒドロキシトルエン、大豆レシチン、天然ビタミンE、トコフェロール、ピロ亜硫酸ナトリウム、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピルなどが挙げられる。
本発明において好ましく用いられる抗酸化防止剤としては、トコフェロール、アスコルビン酸が挙げられる。
【0025】
本発明に用いられる帯電防止剤としては、例えば含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ素、タルクなどが挙げられる。
【0026】
本発明に用いられるpH調製剤としては、例えばクエン酸およびその塩、リン酸およびその塩、炭酸およびその塩、酒石酸およびその塩、フマル酸およびその塩、酢酸およびその塩、アミノ酸およびその塩、コハク酸およびその塩および乳酸およびその塩などが挙げられる。
【0027】
本発明に用いられる流動化剤としては、例えば軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、酸化チタン、ステアリン酸およびその塩、および重質無水ケイ酸などが挙げられる。
本発明において好ましく用いられる流動化剤としては、ステアリン酸およびその塩が挙げられる。
【0028】
本発明に用いられる界面活性剤としては、例えばリン脂質、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ショ糖脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート類、リン酸水素ナトリウム類およびリン酸水素カリウム類などが挙げられる。
本発明において好ましく用いられる界面活性剤としては、ショ糖脂肪酸エステルが挙げられる。
【0029】
本発明に用いられる着色剤としては、例えば三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、タール系色素、アルミニウムキレート、酸化チタンおよびタルクなどが挙げられる。
本発明において好ましく用いられる着色剤としては、三二酸化鉄、タール系色素が挙げられる。
【0030】
本発明に用いられる矯味剤としては、例えばサッカリン、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、クエン酸、ソーマチンおよびスクラロースなどが挙げられる。
本発明において好ましく用いられる矯味剤としては、アスパルテームが挙げられる。
【0031】
本発明に用いられるコーティング剤としては、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンアクリル酸エチル、メタクリル酸メチルコポリマー分散液、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、メタクリル酸コポリマー等が挙げられる。
本発明において好ましく用いられるコーティング剤としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられる。
【0032】
本発明により提供される錠剤の打錠方法は、その発明の効果を奏する限り特に限定されることはない。本発明における打錠方法としては、例えば乾式間接圧縮法、湿式間接圧縮法、乾式直接圧縮法などが挙げられる。
【0033】
本発明により提供されるブロチゾラムを含有する錠剤は、例えば単発錠剤機やロータリー式打錠機などが用いて成型される。打錠の際の圧力は、通常0.5〜1.5kN/cm である。本発明の固形製剤の形状は特に制限されないが、丸形、キャプレット形、ドーナツ形、オブロング形等の形状および積層錠、有核錠などであってもよく、さらにはコーティング剤によって被覆をすることもできる。また、必要に応じて識別性を有する文字、記号、マーク、さらには分割用の割線等を付すこともある。
【0034】
本発明によって低減することが可能になったブロチゾラムの類縁物質とは、(化2)で表される物質等が挙げられる。
【0035】
【化2】

【発明の効果】
【0036】
本発明により、温度60℃、相対湿度75%の条件下で開放したシャーレ内に15日間保存後のブロチゾラムの類縁物質の含有量が、0.7重量%以下であるブロチゾラムを含有する経口剤を提供することを可能にした。
【0037】
本発明により、温度60℃、相対湿度75%の条件下で開放したシャーレ内に15日間保存後のブロチゾラムの類縁物質の含有量が、0.7重量%以下であるブロチゾラムを含有する経口剤を提供することができる製造法を提供することを可能にした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下に発明を実施するための最良の形態を開示する。
【実施例】
【0039】
実施例1:
乳糖水和物704g、D−マンニトール600g、トウモロコシデンプン150g、ヒドロキシプロピルセルロース30gを混合し、予めブロチゾラム1.25gをエタノール100gに溶解させた液を加え練合し、さらに精製水50gを加え高速攪拌造粒機で練合・造粒する。得られた造粒物を流動層乾燥機で乾燥後、ステアリン酸マグネシウム15gを加え混合し、ロータリー式打錠機を用いて一錠150mgで打錠することにより錠剤を得た。
【0040】
実施例2:
乳糖水和物704g、キシリトール400g、トウモロコシデンプン330g、PVP 50gを混合し、予めブロチゾラム1.25gをエタノール120gに溶解させた液を加え連合し、さらに精製水50gを加え高速攪拌造粒機で練合・造粒する。得られた造粒物を流動層乾燥機で乾燥後、ステアリン酸マグネシウム15gを加え混合し、ロータリー式打錠機を用いて一錠150mgで打錠することにより錠剤を得た。
【0041】
実施例3:
乳糖水和物660g、エリスリトール300g、トウモロコシデンプン420g、ポビドン 60gを混合し、予めブロチゾラム1.25gをエタノール110gに溶解させた液を加えさらに精製水50gを加え万能混合機で練合・造粒する。得られた造粒物を流動層乾燥機で乾燥後、コーミルで整粒し、 ステアリン酸マグネシウム20g、タルク40gを加え混合し、ロータリー式打錠機を用いて一錠150mgで打錠することにより錠剤を得た。
【0042】
実施例4:
乳糖水和物704g、D−マンニトール150g、エリスリトール150g、トウモロコシデンプン420g、ポビドン 60gを混合し、予めブロチゾラム1.25gをエタノール110gに溶解させた液を加えさらに精製水50gを加え万能混合機で練合・造粒する。得られた造粒物を流動層乾燥機で乾燥後、コーミルで整粒し、ステアリン酸マグネシウム15gを加え混合し、ロータリー式打錠機を用いて一錠150mgで打錠することにより錠剤を得た。
【0043】
実施例5:
乳糖水和物614g、エリスリトール300g、トウモロコシデンプン420g、ポビドン 60g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース90gを混合し、予めブロチゾラム1.25gをエタノール110gに溶解させた液を加えさらに精製水50gを加え高速攪拌造粒機で練合・造粒する。 得られた造粒物を流動層乾燥機で乾燥後、ステアリン酸マグネシウム15gを加え混合し、ロータリー式打錠機を用いて一錠150mgで打錠することにより錠剤を得た。
【0044】
実施例6:
乳糖水和物614g、エリスリトール300g、トウモロコシデンプン420g、ポビドン 60g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース90gを混合し、予めブロチゾラム1.25gをエタノール80gに溶解させた液を加えさらに精製水100gを加えポニーミキサーで練合・造粒する。 得られた造粒物を流動層乾燥機で乾燥後、振動ふるいで整粒し、ステアリン酸マグネシウム15gを加え混合、ロータリー式打錠機を用いて一錠150mgで打錠することにより錠剤を得た。
【0045】
実施例7:
乳糖水和物614g、D−マンニトール300g、トウモロコシデンプン420g、ポビドン 60g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース90gを混合し、予めブロチゾラム1.25gをエタノール80gに溶解させた液を加えポニーミキサーで練合する。得られた練合物を流動層造粒乾燥機で精製水200gを用いて造粒乾燥する。乾燥品を振動ふるいで整粒し、ステアリン酸マグネシウム15gを加え混合、ロータリー式打錠機を用いて一錠150mgで打錠することにより錠剤を得た。
【0046】
比較例1:
乳糖水和物910g、結晶セルロース400g、トウモロコシデンプン150g、ヒドロキシプロピルセルロース30gを混合し、予めブロチゾラム1.25gをエタノール180gに溶解させた液を加え高速攪拌造粒機で練合・造粒する。得られた造粒物を流動層乾燥機で乾燥後、ステアリン酸マグネシウム15gを加え混合しロータリー式打錠機を用いて一錠150mgで打錠することにより錠剤を得た。
【0047】
比較例2:
乳糖水和物735g、結晶セルロース400g、トウモロコシデンプン250g、ヒドロキシプロピルセルロース30g、カルメロースカルシウム60gを混合し、予めブロチゾラム1.25gをエタノール180gに溶解させた液を加え高速攪拌造粒機で練合・造粒する。得られた造粒物を流動層乾燥機で乾燥後、タルク25gを加え混合しロータリー式打錠機を用いて一錠150mgで打錠することにより錠剤を得た。
【0048】
比較例3:
レンドルミン(登録商標)錠(製造販売:日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社)を用いた。
【0049】
試験例1:
温度60℃、相対湿度75%の条件下で保存後のブロチゾラムを含有する錠剤の類縁物質含有率測定試験
各実施例および各比較例で得られたブロチゾラムを含有する錠剤の類縁物質含有率の測定をおこなった。具体的には、各実施例および各比較例で得られたブロチゾラムを含有する錠剤を15日間、温度60℃、相対湿度75%の条件下で開放したシャーレ内に保存後、SHIMADZU製HPLCクロマトグラフ装置を用い、類縁物質を測定した。その結果を表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
この結果より、本発明の製造法によって製造されたブロチゾラムを含有する経口剤は、従来の製造法によって製造された製剤に比べて、類縁物質の含有率を低下させることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によれば、長期保存後のブロチゾラムの類縁物質の含有量を、製造直後の錠剤中に含有されているブロチゾラムの含有量と比較して、0.5重量%以下であるブロチゾラムを含有する錠剤を提供することが可能となった。これにより、製剤化後の薬効が失われることなく、かつ投与される患者にとってより安全性の高いブロチゾラムを含有する経口剤を提供することが可能となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経口剤の製造に用いることが可能な有機溶媒にブロチゾラムを溶解する工程と、
前記溶解液を1種類または2種類以上の糖アルコールに噴霧または混合させて混合物を得る工程と、
前記混合物を水と混合して一般に知られた造粒法によって造粒を行い、ブロチゾラムを含有する造粒物を得る工程を備える、
前記各工程を備えた経口剤の製造法によって製造された、ブロチゾラムを含有する経口剤。
【請求項2】
経口剤の製造に用いることが可能な有機溶媒にブロチゾラムを溶解する工程と、
前記溶解液を1種類または2種類以上の糖アルコールに噴霧または混合させて混合物を得る工程と、
前記混合物を水と混合して一般に知られた造粒法によって造粒を行い、ブロチゾラムを含有する造粒物を得る工程を備える、
前記各工程を備えたブロチゾラムを含有する経口剤の製造法。
【請求項3】
前記経口剤の製造に用いることが可能な有機溶媒が、アセトン、1−ブタノール、エタノール、ジクロロメタン、メタノール、イソプロピルアルコールである請求項1または請求項2記載のブロチゾラムを含有する経口剤。
【請求項4】
前記製造法で使用する水と経口剤の製造に用いることが可能な有機溶媒の溶媒比率が、水の割合を1とした場合、経口剤の製造に用いることが可能な有機溶媒の比率が0.4〜2.4である請求項1〜3記載のブロチゾラムを含有する経口剤。
【請求項5】
前記糖アルコールが、マンニトール、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトールおよびソルビトールから選ばれる請求項1〜4記載のブロチゾラムを含有する経口剤。
【請求項6】
前記経口剤中の水分量が経口剤全体の重量と比較して1%以下である請求項1〜5記載のブロチゾラムを含有する経口剤。
【請求項7】
前記経口剤が錠剤、散剤、カプセル剤、顆粒剤である請求項1〜6記載のブロチゾラムを含有する経口剤。

【公開番号】特開2011−63567(P2011−63567A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217749(P2009−217749)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)
【Fターム(参考)】