保持シール材および排気ガス浄化装置
【課題】排気ガス浄化装置に用いられる排気ガス処理体を金属シェル内に保持する保持シール材のシール性の向上、保持力の向上を課題とする。
【解決手段】本発明では、排気ガス浄化装置に用いられる排気ガス処理体を保持するための保持シール材が、第1の表面と第2の表面を有し、無機繊維からなるシート材で構成され、第2の表面の凹凸高さは、第1の表面の凹凸高さよりも低いことを特徴とする。このような特徴を有する保持シール材を、前記第2の表面が、前記排気ガス処理体の外周面に接触するように巻回して固定する。これにより、保持シール材の内周と外周の周長差に起因して生じる「シワ」が低減され、ガスシール性や保持性に優れた排気ガス浄化装置が得られる。
【解決手段】本発明では、排気ガス浄化装置に用いられる排気ガス処理体を保持するための保持シール材が、第1の表面と第2の表面を有し、無機繊維からなるシート材で構成され、第2の表面の凹凸高さは、第1の表面の凹凸高さよりも低いことを特徴とする。このような特徴を有する保持シール材を、前記第2の表面が、前記排気ガス処理体の外周面に接触するように巻回して固定する。これにより、保持シール材の内周と外周の周長差に起因して生じる「シワ」が低減され、ガスシール性や保持性に優れた排気ガス浄化装置が得られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に排気ガス浄化装置等に用いられる保持シール材および保持シール材を含む排気ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の台数は、今世紀に入って飛躍的に増加しており、それに比例して、自動車の内燃機関から排出される排気ガスの量も急激な増大の一途を辿っている。特にディーゼルエンジンの排気ガス中に含まれる種々の物質は、汚染を引き起こす原因となるため、現在では、世界環境にとって深刻な影響を与えつつある。
【0003】
このような事情の下、従来より各種排気ガス浄化装置が提案され、実用化されている。一般的な排気ガス浄化装置は、エンジンの排気ガスマニホールドに連結された排気管の途上にケーシング(金属シェル)を設け、その中に微細な孔を多数有する排気ガス処理体を配置した構造となっている。排気ガス処理体の一例としては、触媒担持体やディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)がある。例えばDPFの場合、上述の構造により、排気ガスが排気ガス処理体を通過する際に、その孔の周囲の壁に微粒子がトラップされ、排気ガス中から微粒子を除去することができる。排気ガス処理体の構成材料は、金属や合金の他、セラミック等である。セラミックからなる排気ガス処理体の代表例としては、コーディエライト製のハニカムフィルタが知られている。最近では、耐熱性、機械的強度、化学的安定性等の観点から、多孔質炭化珪素焼結体が排気ガス処理体の材料として用いられている。
【0004】
このような排気ガス処理体と金属シェルの間には、通常保持シール材が設置される。保持シール材は、車両走行中等における排気ガス処理体と金属シェルの当接による破損を防ぎ、さらに金属シェルと排気ガス処理体との隙間から排気ガスがリークすることを防止するために用いられる。また、保持シール材は、排気ガスの排圧により排気ガス処理体が脱落することを防止する役割を有する。さらに排気ガス処理体は、反応性を維持するため高温に保持する必要があり、保持シール材には断熱性能も要求される。これらの要件を満たす部材としては、アルミナ系ファイバー等の無機繊維からなるシート材がある。
【0005】
このシート材は、排気ガス処理体の開口面を除く外周面の少なくとも一部に巻き付けられ、テーピング等によって排気ガス処理体と一体固定化されることにより、保持シール材として機能する。その後、この一体品は、金属シェル内に圧入されて排気ガス浄化装置内に組み付けられる。
【0006】
なお無機繊維からなるシート材は嵩高であり、保持シール材としての金属シェルへの組み付け性を改善するため、各種方法が提案されている。例えば、無機繊維の積層状シートに有機バインダを含浸、塗布させることにより、シートを肉薄化する技術が提案されている(特許文献1参照)。また無機繊維からなる積層状シートに、ニードリングと呼ばれる処理等を施して、無機繊維同士をシートの厚さ方向に交絡させ、嵩高の積層状シートを圧縮させることにより、シート材を肉薄化する方法が提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開昭59−126023号公報
【特許文献2】特開平11−22013号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし従来の方法では、シート材を保持シール材として使用して、例えば円筒状の排気ガス処理体に巻き付ける際に、保持シール材の内面側(排気ガス処理体20側)と外面側(金属シェル12側)の周長差に起因する「シワ」18が、保持シール材の内面側に発生してしまう(図3A参照)。このシワ18は、保持シール材(シート材)からの排気ガスのリークによるシール性の低下をもたらすのみならず、排気ガス処理体と保持シール材とを一体化させて金属シェルに組み付けた際に、シワ部分は局部的応力集中を受け易く、保持シール材がこの位置で圧壊する可能性がある。この場合、保持シール材の前述の機能は損なわれ、排気ガス処理体の脱落や損壊が生じ得る。
【0008】
また今日では、組み付け作業者への健康面の配慮から、シート材に含まれる無機繊維の繊維径は増大する傾向にある。例えば、無機繊維の平均粒径は、現在の最大6μmから、今後は7μm以上のものに移り変わって行くと予想されている。従って、シート材の嵩高さおよびシート材の巻き付けの際に生じる保持シール材のシワの問題は、繊維径の増大によって、より顕在化するという問題を内在している。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、排気ガス処理体への組み付け性に優れ、ガスシール性および排気ガス処理体に対する保持性に優れた保持シール材を提供すること、またこのような保持シール材を有する排気ガス浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の保持シール材は、排気ガス処理体を保持するための保持シール材であって、当該保持シール材は、第1の表面と第2の表面を有し、無機繊維からなるシート材で構成され、第1の表面の凹凸高さは、第2の表面の凹凸高さよりも高いことを特徴とする保持シール材である。
【0011】
図1AおよびそのA−A断面である図2Aに示されるように、シート材の第1の表面6は、第2の表面8に比べてその凹凸高さが高い。このため図1Bに示すように、保持シール材15を排気ガス処理体20の開口面を除く外周面の少なくとも一部に巻回して、勘合凸部150を勘合凹部160にはめ込んで固定し、これを金属シェル12内に封入する場合、図2Bに示すように、保持シール材15の外周側16の伸び率が大きくなるのであるが、凹凸高さが伸び代となり、しわが発生することなく、排気ガス処理体20の外周に保持シール材を密着接触させることができる。その結果、金属シェル20内に封入した場合に、保持シール材15のガスシール性および排気ガス処理体に対する保持性が向上する。
【0012】
前記シート材は、無機繊維の積層状シートをニードリング処理して構成されてなることが望ましい。ニードリングにより、シート材の厚さ方向に繊維が編みこまれて、シート材の密度を高くして、高い面圧を確保するとともに、その厚さを一定以下に薄くすることができるからである。
【0013】
また、前記シート材は、結合材を有していることが望ましい。結合材を含有していることで、繊維同士を接着せしめ、保持シール材の切断加工時や金属シェルに封入する際に繊維が飛散することを防止できるからである。結合材としては、有機結合材もしくは無機結合材を使用することができる。有機結合材としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ゴム系樹脂、スチレン系樹脂などを使用でき、また無機結合材としては、シリカゾル、アルミナゾルなどを使用することができる。排気ガスの熱により樹脂が分解除去され、シート材の面圧が高くなり、その結果保持性を改善できるため、有機結合材を使用することが望ましい。
【0014】
また、上記保持シール材を構成するシート材において、第1の表面の凹凸高さは、第2の表面の凹凸高さの1.2〜56.7倍であることが好ましい。これにより、保持シール材としてのシール性がさらに向上する。
【0015】
また、上記シート材を構成する前記無機繊維の平均直径は、6μm以上であることが好ましい。無機繊維の平均直径が6μm未満の場合は、シート材を排気ガス処理体に巻きつけた場合に、シート材にしわが発生してしまい、抜き加重が極端に低下するという問題が発生してしまうが、本発明を採用することにより、しわの発生を防止して抜き加重の低下の問題を改善できるという顕著な効果を有しているのである。
【0016】
また、上記シート材を構成する前記無機繊維は、アルミナとシリカの混合物であることが好ましい。これにより断熱性能が向上する。
【0017】
また、前記排気ガス処理体は、触媒担持体または排気ガスフィルタであっても良い。
【0018】
さらに、本発明の排気ガス浄化装置は、排気ガス処理体と、該排気ガス処理体を収容する金属シェルと、前記排気ガス処理体の開口面を除く外周面の少なくとも一部に巻きつけて使用される保持シール材と、で構成される排気ガス浄化装置であって、前記保持シール材は、無機繊維からなる、第1の表面と第2の表面を有するシート材で構成され、該シート材の第2の表面の凹凸高さは第1の表面の凹凸高さよりも低く、前記シート材の第2の表面が、前記排気ガス処理体の外周面に接触するように巻回して固定されることを特徴とする排気ガス浄化装置である。
【0019】
本発明の排気ガス浄化装置は、先に説明したようにシール性および保持力の高い保持シール材を採用しているため、排気ガス処理体の圧力損失が高くなっても排気ガスが漏れたり、排気ガスの押圧で排気ガス処理体が金属シェルから抜けることがないため、排気ガス処理体の交換時間を長くすることができ、装置の長寿命化、高耐久性確保が可能である。
【0020】
本発明の装置は、図3Bに示す。金属シェル12の内部に、排気ガス処理体の外周に保持シール材15が密着し、金属シェル12と排気ガス処理体20との隙間をシールする。
【0021】
ここで、上記保持シール材を構成するシート材は、前述の各特徴を有するものであっても良い。また、前記排気ガス処理体は、触媒担持体または排気ガスフィルタであっても良く、この場合、ガスシール性および触媒担持体または排気ガスフィルタに対する保持性に優れた排気ガス浄化装置が提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明の保持シール材を排気ガス浄化装置に使用することにより、排気ガス処理体への保持シール材の組み付け性が改善する。また保持シール材の内面側と外面側の周長差の影響が最小限に抑制され、ガスシール性および排気ガス処理体に対する保持性に優れた排気ガス浄化装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面と共に説明する。
【0024】
本発明では、排気ガス浄化装置に用いられる排気ガス処理体を保持するための保持シール材が、第1の表面と第2の表面を有し、無機繊維からなるシート材で構成され、第1の表面の凹凸高さは、第2の表面の凹凸高さよりも高いことを特徴とする。このような特徴を有する保持シール材を、前記第2の表面が、前記排気ガス処理体の外周面に接触するように巻回して固定する。
【0025】
ここで、シート材24の表面の凹凸高さは、以下のようにして定めた。すなわちシート材24の断面の任意の場所で倍率12倍の写真を撮影して、写真の最大の山の位置と最低の谷の位置との差を凹凸高さとし、この写真を5枚撮影して同様の測定を行い、平均して凹凸高さと定義した。
【0026】
本発明の保持シール材15を構成するシート材24は、第1の表面の凹凸高さと第2の表面の凹凸高さが異なっている。従って、凹凸高さの高い表面(第1の表面6)が保持シール材の外側(金属シェル12側)16となり、凹凸高さの低い表面(第2の表面8)が保持シール材の内側(排気ガス処理体20側)14となるように、シート材24を排気ガス処理体20の外周に巻き付けることで、通常であれば外周と内周の差によって内側14に生じるシワ18の発生が抑制される(図3B参照)。シート材24の第1の表面の凹凸が、排気ガス処理体20に巻き付けた際に延び代として機能し、保持シール材15の内側14と外側16の周長差の影響を緩和するためである。これにより、排気ガス処理装置10の保持シール材15のガスシール性が向上する。さらに、シワ18を応力集中の起点として生じる保持シール材15の圧壊が抑制されるため、保持シール材15が排気ガス処理体20を保持する保持力は、長期間維持される。
【0027】
ここでシート材24において、第1の表面の凹凸高さは、第2の表面の凹凸高さの1.2〜56.7倍の範囲にあることが好ましい。このようにシート材24の両表面の凹凸高さを制御した場合、後述のように、保持シール材15の排気ガス処理体20に対する保持力がさらに向上するからである。なお、シート材24の第1の表面の凹凸高さが第2の表面の凹凸高さの56.7倍を超えると、今度は排気ガス処理体20に保持シール材15を巻き付けた際に、外表面側にシワが生じ、保持シール材15のシール性が低下する。また、上記倍率が1.2未満では、本発明の効果が十分には得られない。さらに保持シール材15の第1の表面の凹凸高さは、第2の表面の凹凸高さの1.2〜28.3であることがより好ましい。この場合、保持シール材15に生じるシワ18の数がさらに抑制され、排気ガス処理体20に対する保持力がより向上するからである。なお、両表面の凹凸高さ比の最適範囲は、被巻き付け側の径と保持シール材15の厚さの関係によっても変化し得る。しかしながら通常、被巻き付け側の排気ガス処理体20の半径が増大すると、それに比例して保持シール材の厚さも厚くなる。従って、排気ガス処理体20の直径が変化しても、上記第1の表面と第2の表面の凹凸高さ比(第1の表面の凹凸高さ/第2の表面の凹凸高さ)の最適範囲(1.2〜56.7倍)はほとんど変化しないと考えられる。
【0028】
このような保持シール材15により構成される排気ガス浄化装置10の一例を図4に示す。この図では、排気ガス処理体20は、貫通孔を有する触媒担持体として示されているが、本発明の排気ガス浄化装置10は、このような構成に限られるものではない。例えば、排気ガス処理体20を貫通孔の一部が目封じされたDPFとすることもできる。このような排気ガス浄化装置に、上述のような保持シール材を使用することにより、ガスシール性および排気ガス処理体20に対する保持性を向上させることができる。
【0029】
ここで、シート材24の両表面の凹凸高さの最大値は、シート材24の厚さの半分以下であることが好ましい。この値を超えると、後述の圧縮乾燥工程においてシート材24の表面の凹凸高さを制御する際に、繊維が損壊してしまう恐れがあるからである。
【0030】
以下、本発明の保持シール材15の製作方法の一例を説明する。
【0031】
本発明の保持シール材15はシート材24からなり、このシート材24は、以下のように製作することができる。
【0032】
まず、無機繊維からなる積層状シートを製作する。なお以下の説明では、無機繊維としてアルミナとシリカの混合物を用いるが、無機繊維材料は、これに限られるものではなく、例えばアルミナまたはシリカのみで構成されても良い。アルミニウム含有量70g/l、Al/Cl=1.8(原子比)の塩基性塩化アルミニウム水溶液に、例えばアルミナ−シリカ組成比が60〜80:40〜20となるようにシリカゾルを添加し、無機繊維の前駆体を調製する。特にアルミナ−シリカ組成比は、70〜74:30〜26程度であることがより好ましい。アルミナ組成比が60%以下では、アルミナとシリカから生成されるムライトの組成比率が低くなるため、シート材24の熱伝導度が高くなり、十分な断熱性能が得られないからである。
【0033】
次にこのアルミナ系繊維の前駆体にポリビニルアルコール等の有機重合体を加える。その後この液体を濃縮し、紡糸液を調製する。さらにこの紡糸液を使用して、ブローイング法により紡糸する。
【0034】
ブローイング法とは、エアーノズルから吹き出される空気流と紡糸液供給ノズルから押し出される紡糸液流とによって、紡糸を行う方法である。エアーノズルからのスリットあたりのガス流速は、通常40〜200m/sである。また紡糸ノズルの直径は通常0.1〜0.5mmであり、紡糸液供給ノズル1本あたりの液量は、通常1〜120ml/h程度であるが、3〜50ml/h程度であることが好ましい。このような条件では、紡糸液供給ノズルから押し出される紡糸液は、スプレー状(霧状)となることなく十分に延伸され、繊維相互で溶着しにくいので、紡糸条件を最適化することにより、繊維径分布の狭い均一なアルミナ繊維前駆体を得ることができる。
【0035】
ここで、製作されるアルミナ系繊維の平均繊維長は、250μm以上であることが好ましく、500μm以上であることがより好ましい。平均繊維長が250μm未満では、繊維同士が十分に絡み合わず、十分な強度が得られないからである。また無機繊維の平均直径は、特に限られない。ただし、本発明は、無機繊維の平均直径が7μm以上であっても効果を奏することに留意する必要がある。
【0036】
紡糸が完了した前駆体を積層して、積層状シートを製作する。さらに積層状シートに、ニードリング処理を行う。ニードリング処理とは、ニードルを積層状シートに抜き差しして、シートの肉薄化を行うことをいう。ニードリング処理には、通常ニードリング装置が用いられる。ニードリング装置は、通常、突き刺し方向に往復移動可能なニードルボードと積層状シートの両面に設置された一対の支持板とで構成される。ニードルボードには、積層状シートに突き刺すための多数のニードルが、例えば約100〜5000個/100cm2の密度で固定されている。また支持板には、ニードル用の貫通孔が設けられている。このようなニードリング装置を用いて、ニードルを積層状シートに抜き差しして、ニードリング処理を行うことにより、複雑に絡み合った繊維が積層方向に配向し、積層状シートの積層方向の強化を図ることができる。
【0037】
このようにニードリング処理の施された積層状シート(以下シート材24という)を常温から加熱し、最高温度1250℃程度で連続焼成することで、所定の目付け量のシート材24が得られる。
【0038】
ハンドリングの容易化のため、このようにして得られたシート材24は、所定の寸法に裁断される。
【0039】
次に、裁断されたシート材24には、樹脂のような有機系結合材が含浸されることが好ましい。これにより、シート材24の嵩高さを抑制することができ、シート材24を排気ガス浄化装置10の排気ガス処理体20の保持シール材15として利用する際の組み付け性が改善されるからである。またシート材24から無機繊維が脱離して、保持力が低下することを防止することができる。さらに、排気ガス浄化装置10に高温排気ガスが導入された場合、保持シール材15の有機バインダが消失するため、圧縮されていた保持シール材15が復元され、金属シェルと排気ガス処理体20の間に存在する可能性のあるわずかの隙間も塞がれることとなり、保持シート材の保持力および、シール性が向上する。
【0040】
有機系結合材の含有量は、1.0〜10.0重量%の範囲であることが好ましい。1.0重量%未満では、十分に無機繊維の離脱を防止することができないからである。また10.0重量%よりも多くなると、柔軟性が得られなくなり、シート材24を排気ガス処理体20に巻き付けることが難しくなるからである。
【0041】
なお有機系結合材としては、例えばアクリル系(ACM)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)樹脂等を用いることが好ましい。
【0042】
このような有機系結合材と水とで調製した水分散液を用いて、スプレー塗布により、シート材24に樹脂を含浸させる。なおシート材24中に含まれる余分な添着固形分および水分は、次工程で除去される。
【0043】
次に、余分な固形分の除去および乾燥処理を行う。余分な固形分の除去は、吸引法で行われる。また余分な水分の除去は、加熱圧縮乾燥法によって行われる。この方法では後述のように、余分な水分の除去と共に、各種形状の凹凸型を用いてシート材24に押圧を付加したり、シート材24を圧縮したりすることにより、有機系結合材の接着力を利用して、シート材24の両表面に所定の凹凸高さを形成させることができる。乾燥は、95〜155℃程度の温度で行われる。95℃よりも温度が低いと、乾燥時間が長くなり生産効率が低下する。また155℃を超える乾燥温度では、有機系結合材自身の分解が開始され、有機系結合材による接着性が損なわれる。
【0044】
このような凹凸形成の工程は、シート材の裁断工程よりも前に実施しても良い。
【0045】
乾燥処理の際、シート材24を狭設する上下の冶具について、上型の凹凸高さと下型の凹凸高さを所定の比率とすることで、圧縮乾燥後に、シート材24の両表面の凹凸高さを前述の範囲となるように制御することができる。最後に裁断により、所定の形状のシート材24が得られる。
【0046】
このようにしてアルミナ系繊維からなり、有機系結合材が含浸され、さらに両表面の凹凸高さが制御されたシート材24を得ることができる。シート材24の一例を図1Aに示す。この図では、シート材24は、巻回し方向と垂直な両端面に1組の嵌合凸部150と嵌合凹部160を有するように示されているが、本発明のシート材24は、このような形状に限られるものではないことは明らかであろう。また図において第1の表面6の凹凸は、一定周期の波形が全面均一に広がるように示されているが、表面の凹凸形状は、これに限られるものではなく、第1の表面と第2の表面の凹凸高さが前述の関係となっていれば、シート材24の表面はいかなる形状の凹凸であっても良い。
【0047】
このようなシート材24は、排気ガス浄化装置10の排気ガス処理体20の保持シール材15として使用される。この場合、シート材24の凹凸高さの小さい表面(第2の表面)が内側(排気ガス処理体20側)となるようにして、シート材24を排気ガス処理体20に巻き付ける(図2B)。このとき、シート材24は、巻き付け方向にある程度の張力が生じるように排気ガス処理体20に巻き付けられる。これにより、保持シール材15の内側14と外側16の周長差が解消され、内側14のシワ18の発生が抑制される。従って、保持シール材15のシール性、保持力が向上する。
【0048】
またこのような保持シール材15を使用して、排気ガス浄化装置10を構成することにより、シール性および保持力に優れた排気ガス処理装置10を得ることができる。
【0049】
以下、本発明の効果を実施例により説明する。
【実施例】
【0050】
シート材24は以下の手順により製作した。
【0051】
[シート材の製作]
アルミニウム含有量70g/l、Al/Cl=1.8(原子比)の塩基性塩化アルミニウム水溶液に、アルミナ系繊維の組成がAl2O3:SiO2=72:28となるように、シリカゾルを配合し、アルミナ系繊維の前駆体を形成した。
【0052】
次にアルミナ系繊維の前駆体に、ポリビニルアルコール等の有機重合体を添加した。さらに、この液を濃縮して紡糸液とし、この紡糸液を用いてブローイング法にて紡糸した。
【0053】
その後アルミナ系繊維の前駆体を折りたたんだものを積層して、アルミナ系繊維の積層状シートを製作した。この積層状シートに対して、500個/100cm2のニードルを有するニードルボードを用いて、ニードリング処理を行った。その後得られたシート材24を常温から最高温度1250℃で連続焼成し、目付け量1160g/cm2のアルミナ系繊維のシート材24を得た。アルミナ系繊維の平均直径は7.2μmであり、最小直径は3.2μmであった。またシート材24の厚さは9mmであった。
【0054】
なお繊維の平均直径は、以下の方法により測定した。まず、アルミナ系繊維をシリンダーに入れ、20.6MPaで加圧粉砕する。次にこの試料をふるい網に載せ、ふるいを通過した試料を電子顕微鏡観察用試験体とする。この試験体の表面に金等を蒸着させた後、倍率約1500倍程度の電子顕微鏡写真を撮影する。得られた写真から少なくとも40本の繊維の径を測定する。この操作を5試料について繰り返し、測定値の平均を繊維の平均直径とした。
【0055】
[シート材の裁断]
上記工程で作製されたシート材24を、寸法が縦1270mm、横1280mmとなるように裁断した。
【0056】
[有機系結合材含浸]
裁断されたシート材24に有機系結合材の含浸を行った。アクリル系樹脂水分散液(日本ゼオン製L×803;固形分濃度50±10%、pH5.5〜7.0)を樹脂濃度が1.0〜10.0wt%の範囲となるように調製して、含浸液を得た。次に、スプレー塗布により、シート材24にこの含浸液を含浸させた。
【0057】
[固形分の吸引]
有機系結合材を含浸させた後のシート材24には、所定量を超える固形分が付着しているため、固形物の吸引処理(3秒程度)によって、余分な固形分を除去した。この処理後に、秤量法にて確認した結果、シート材24の有機系結合材の含浸率は10wt%であった。
【0058】
[加熱圧縮乾燥工程]
吸引工程後のシート材24を用いて、乾燥温度95〜155℃で加熱圧縮乾燥処理を行う。これによりシート材24の平均厚さは、約8mmとなる。なおこの処理では、シート材24を狭設する上下の冶具の凹凸高さを変化させて、両面で凹凸高さの異なるシート材24を作製した。すなわち、上下の冶具には、いずれも波形の型のものを使用し、上部の型は凹凸高さを850μm、下部の型は凹凸高さを500μmとした。これにより圧縮乾燥後に、上面の凹凸高さが850μm、下面の凹凸高さが500μmのマット状シート(すなわち凹凸高さに対する凹凸高さH=1.7)が得られた(実施例1とする)。
【0059】
次に、加熱圧縮乾燥処理の際にシート材24を狭設する上下の冶具を変更した以外は、上述の工程と同じ処理により、実施例2、3、5〜7および比較例1〜3のシート材24を作製した。これらの実施例および比較例では、シート材24のいずれかの表面、または両表面の凹凸高さが実施例1とは異なるが、その他の製作条件は実施例1のシート材24と同じである。また実施例4は、実施例3と同じ表面の凹凸高さであるが、使用した繊維の平均直径は5.7μmである点のみが異なる。表1には、各実施例および比較例のシート材24に使用した繊維径と、第1および第2の表面の凹凸高さと、その比率を示す。
【0060】
【表1】
なお、シート材24の凹凸高さは、前述のように、光学顕微鏡によるシート材24の断面形状観察により行った。一例として実施例1のシート材24の第1の表面および第2の表面の断面形状をそれぞれ図5A、5Bに示す(両面の凹凸高さ比1.7)。
【0061】
次に得られたシート材24を以下に示す所定の形状に切断して、各種評価試験に供した。なお抜き荷重測定については、シート材の無機繊維の平均直径の影響についても評価した。以下、試験結果を説明する。
【0062】
[シワ測定結果]
上述の実施例1〜6および比較例1〜4のシート材24を、表面の凹凸が小さい面が排気ガス処理体20に接するように巻き付け、シート材24の内面側に生じるシワの数および長さを評価した。排気ガス処理体20としては、直径80mm、長さ150mmの触媒担持体を用いた。またシート材24は、巻回し方向の一端に1つの嵌合凸部、他端に1つの嵌合凹部を有する、最大長さ290mm(うち嵌合凸部の長さ約40mm)、幅80mmのものを使用し、これを触媒担持体に緩みの生じないように一様に巻き付けて、両端で嵌合接合させた。
【0063】
各実施例1〜6および比較例1〜4で得られた結果を表1に示す。この表から、平均繊維径に関わらず、シート材24の第1の表面の凹凸高さが、第2の表面の凹凸高さの1.2〜56.7倍のときに、シート材24に生じるシワの数×長さの値(mm)が小さくなることがわかった。
【0064】
[抜き荷重測定結果]
排気ガス処理体20に表面の凹凸高さの小さい面が接するように、シート材24を巻き付け、両者の一体品をSUS304鋼製の円筒状金属シェル12に圧入し、24時間以上その状態に保持後、万能試験機による抜き荷重試験を行った。排気ガス処理体20としては、直径80mm、長さ150mmの触媒担持体を使用した。保持シール材には、巻回し方向の一端に嵌合凸部、他端に嵌合凹部を有する、最大長さ290mm(うち嵌合凸部の長さ約40mm)、幅80mmのシート材を使用し、これを触媒担持体に巻回し、両端部を嵌合して接合した。また金属シェル12の内径は、84mm、長さは200mm、厚さは1.5mmである。なおこれまでの実験の結果から、抜き荷重が200Nを越えれば、保持シール材の排気ガス処理体に対する保持力は、実用上十分であると言われている。
【0065】
結果を表1および図6に示す。ここで抜き荷重とは、金属シェル12に圧入された触媒担持体を押し出す際の最大荷重を意味する。この結果から、平均繊維径に関わらず、シート材24の第1の表面の凹凸高さが、第2の表面の凹凸高さの1.2〜56.7倍のときに、保持シール材15の抜き荷重が200Nを越え、良好な保持力を示すことがわかった。またシート材24の第1の表面の凹凸高さが、第2の表面の凹凸高さの1.2〜28.3倍の場合、このシートを用いた保持シール材15は、400Nを超え、極めて良好な保持力を示すことがわかった。
【0066】
図7は、繊維の平均直径と抜き加重のグラフである。第1の表面と第2の表面が同じ凹凸高さである(凹凸高さの比=1.0)場合、平均直径が6μmを超えると急激に抜き加重が低下することがわかる。図7では、第1の表面と第2の表面の凹凸高さの比を28.3とした場合のプロットも描かれているが、平均直径に依存されることなく、高い抜き加重を実現している。このことはつまり、平均直径が6μmを超える場合に、抜き加重の改善に顕著な効果を示しているといえる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の保持シール材および排気ガス浄化装置は、車両用排ガス浄化装置等に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1A】本発明の保持シール材に用いるシート材の一例を示す図である。
【図1B】本発明による保持シール材を排気ガス処理体に巻回し固定し、金属シェルに圧入して、排気ガス処理装置を構成するときの構成図である。
【図2A】図1Aのシート材のA−A断面の形状である。
【図2B】本発明による保持シール材の効果を示す概念図である。
【図3A】従来の保持シール材を排気ガス処理体と一体化させて、金属シェルに組み付けたときの状態を示す概念図である。
【図3B】本発明による保持シール材を排気ガス処理体と一体化させて、金属シェルに組み付けたときの状態を示す概念図である。
【図4】本発明の排気ガス浄化装置の一構成例を示す図である。
【図5A】本発明による第1の実施例のシート材の第1の表面の形状を示す写真である。
【図5B】本発明による第1の実施例のシート材の第2の表面の形状を示す写真である。
【図6】第1および第2の表面の凹凸高さ比と抜き荷重の関係を示すグラフである。
【図7】繊維の平均直径と抜き荷重の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0069】
2 導入管
4 排気管
6 第1の表面
8 第2の表面
10 排気ガス浄化装置
12 金属シェル
14 保持シール材の内側
15 保持シール材
16 保持シール材の外側
18 シワ
20 排気ガス処理体
24 シート材
26 表面
150 嵌合凸部
160 嵌合凹部
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に排気ガス浄化装置等に用いられる保持シール材および保持シール材を含む排気ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の台数は、今世紀に入って飛躍的に増加しており、それに比例して、自動車の内燃機関から排出される排気ガスの量も急激な増大の一途を辿っている。特にディーゼルエンジンの排気ガス中に含まれる種々の物質は、汚染を引き起こす原因となるため、現在では、世界環境にとって深刻な影響を与えつつある。
【0003】
このような事情の下、従来より各種排気ガス浄化装置が提案され、実用化されている。一般的な排気ガス浄化装置は、エンジンの排気ガスマニホールドに連結された排気管の途上にケーシング(金属シェル)を設け、その中に微細な孔を多数有する排気ガス処理体を配置した構造となっている。排気ガス処理体の一例としては、触媒担持体やディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)がある。例えばDPFの場合、上述の構造により、排気ガスが排気ガス処理体を通過する際に、その孔の周囲の壁に微粒子がトラップされ、排気ガス中から微粒子を除去することができる。排気ガス処理体の構成材料は、金属や合金の他、セラミック等である。セラミックからなる排気ガス処理体の代表例としては、コーディエライト製のハニカムフィルタが知られている。最近では、耐熱性、機械的強度、化学的安定性等の観点から、多孔質炭化珪素焼結体が排気ガス処理体の材料として用いられている。
【0004】
このような排気ガス処理体と金属シェルの間には、通常保持シール材が設置される。保持シール材は、車両走行中等における排気ガス処理体と金属シェルの当接による破損を防ぎ、さらに金属シェルと排気ガス処理体との隙間から排気ガスがリークすることを防止するために用いられる。また、保持シール材は、排気ガスの排圧により排気ガス処理体が脱落することを防止する役割を有する。さらに排気ガス処理体は、反応性を維持するため高温に保持する必要があり、保持シール材には断熱性能も要求される。これらの要件を満たす部材としては、アルミナ系ファイバー等の無機繊維からなるシート材がある。
【0005】
このシート材は、排気ガス処理体の開口面を除く外周面の少なくとも一部に巻き付けられ、テーピング等によって排気ガス処理体と一体固定化されることにより、保持シール材として機能する。その後、この一体品は、金属シェル内に圧入されて排気ガス浄化装置内に組み付けられる。
【0006】
なお無機繊維からなるシート材は嵩高であり、保持シール材としての金属シェルへの組み付け性を改善するため、各種方法が提案されている。例えば、無機繊維の積層状シートに有機バインダを含浸、塗布させることにより、シートを肉薄化する技術が提案されている(特許文献1参照)。また無機繊維からなる積層状シートに、ニードリングと呼ばれる処理等を施して、無機繊維同士をシートの厚さ方向に交絡させ、嵩高の積層状シートを圧縮させることにより、シート材を肉薄化する方法が提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開昭59−126023号公報
【特許文献2】特開平11−22013号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし従来の方法では、シート材を保持シール材として使用して、例えば円筒状の排気ガス処理体に巻き付ける際に、保持シール材の内面側(排気ガス処理体20側)と外面側(金属シェル12側)の周長差に起因する「シワ」18が、保持シール材の内面側に発生してしまう(図3A参照)。このシワ18は、保持シール材(シート材)からの排気ガスのリークによるシール性の低下をもたらすのみならず、排気ガス処理体と保持シール材とを一体化させて金属シェルに組み付けた際に、シワ部分は局部的応力集中を受け易く、保持シール材がこの位置で圧壊する可能性がある。この場合、保持シール材の前述の機能は損なわれ、排気ガス処理体の脱落や損壊が生じ得る。
【0008】
また今日では、組み付け作業者への健康面の配慮から、シート材に含まれる無機繊維の繊維径は増大する傾向にある。例えば、無機繊維の平均粒径は、現在の最大6μmから、今後は7μm以上のものに移り変わって行くと予想されている。従って、シート材の嵩高さおよびシート材の巻き付けの際に生じる保持シール材のシワの問題は、繊維径の増大によって、より顕在化するという問題を内在している。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、排気ガス処理体への組み付け性に優れ、ガスシール性および排気ガス処理体に対する保持性に優れた保持シール材を提供すること、またこのような保持シール材を有する排気ガス浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の保持シール材は、排気ガス処理体を保持するための保持シール材であって、当該保持シール材は、第1の表面と第2の表面を有し、無機繊維からなるシート材で構成され、第1の表面の凹凸高さは、第2の表面の凹凸高さよりも高いことを特徴とする保持シール材である。
【0011】
図1AおよびそのA−A断面である図2Aに示されるように、シート材の第1の表面6は、第2の表面8に比べてその凹凸高さが高い。このため図1Bに示すように、保持シール材15を排気ガス処理体20の開口面を除く外周面の少なくとも一部に巻回して、勘合凸部150を勘合凹部160にはめ込んで固定し、これを金属シェル12内に封入する場合、図2Bに示すように、保持シール材15の外周側16の伸び率が大きくなるのであるが、凹凸高さが伸び代となり、しわが発生することなく、排気ガス処理体20の外周に保持シール材を密着接触させることができる。その結果、金属シェル20内に封入した場合に、保持シール材15のガスシール性および排気ガス処理体に対する保持性が向上する。
【0012】
前記シート材は、無機繊維の積層状シートをニードリング処理して構成されてなることが望ましい。ニードリングにより、シート材の厚さ方向に繊維が編みこまれて、シート材の密度を高くして、高い面圧を確保するとともに、その厚さを一定以下に薄くすることができるからである。
【0013】
また、前記シート材は、結合材を有していることが望ましい。結合材を含有していることで、繊維同士を接着せしめ、保持シール材の切断加工時や金属シェルに封入する際に繊維が飛散することを防止できるからである。結合材としては、有機結合材もしくは無機結合材を使用することができる。有機結合材としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ゴム系樹脂、スチレン系樹脂などを使用でき、また無機結合材としては、シリカゾル、アルミナゾルなどを使用することができる。排気ガスの熱により樹脂が分解除去され、シート材の面圧が高くなり、その結果保持性を改善できるため、有機結合材を使用することが望ましい。
【0014】
また、上記保持シール材を構成するシート材において、第1の表面の凹凸高さは、第2の表面の凹凸高さの1.2〜56.7倍であることが好ましい。これにより、保持シール材としてのシール性がさらに向上する。
【0015】
また、上記シート材を構成する前記無機繊維の平均直径は、6μm以上であることが好ましい。無機繊維の平均直径が6μm未満の場合は、シート材を排気ガス処理体に巻きつけた場合に、シート材にしわが発生してしまい、抜き加重が極端に低下するという問題が発生してしまうが、本発明を採用することにより、しわの発生を防止して抜き加重の低下の問題を改善できるという顕著な効果を有しているのである。
【0016】
また、上記シート材を構成する前記無機繊維は、アルミナとシリカの混合物であることが好ましい。これにより断熱性能が向上する。
【0017】
また、前記排気ガス処理体は、触媒担持体または排気ガスフィルタであっても良い。
【0018】
さらに、本発明の排気ガス浄化装置は、排気ガス処理体と、該排気ガス処理体を収容する金属シェルと、前記排気ガス処理体の開口面を除く外周面の少なくとも一部に巻きつけて使用される保持シール材と、で構成される排気ガス浄化装置であって、前記保持シール材は、無機繊維からなる、第1の表面と第2の表面を有するシート材で構成され、該シート材の第2の表面の凹凸高さは第1の表面の凹凸高さよりも低く、前記シート材の第2の表面が、前記排気ガス処理体の外周面に接触するように巻回して固定されることを特徴とする排気ガス浄化装置である。
【0019】
本発明の排気ガス浄化装置は、先に説明したようにシール性および保持力の高い保持シール材を採用しているため、排気ガス処理体の圧力損失が高くなっても排気ガスが漏れたり、排気ガスの押圧で排気ガス処理体が金属シェルから抜けることがないため、排気ガス処理体の交換時間を長くすることができ、装置の長寿命化、高耐久性確保が可能である。
【0020】
本発明の装置は、図3Bに示す。金属シェル12の内部に、排気ガス処理体の外周に保持シール材15が密着し、金属シェル12と排気ガス処理体20との隙間をシールする。
【0021】
ここで、上記保持シール材を構成するシート材は、前述の各特徴を有するものであっても良い。また、前記排気ガス処理体は、触媒担持体または排気ガスフィルタであっても良く、この場合、ガスシール性および触媒担持体または排気ガスフィルタに対する保持性に優れた排気ガス浄化装置が提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明の保持シール材を排気ガス浄化装置に使用することにより、排気ガス処理体への保持シール材の組み付け性が改善する。また保持シール材の内面側と外面側の周長差の影響が最小限に抑制され、ガスシール性および排気ガス処理体に対する保持性に優れた排気ガス浄化装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面と共に説明する。
【0024】
本発明では、排気ガス浄化装置に用いられる排気ガス処理体を保持するための保持シール材が、第1の表面と第2の表面を有し、無機繊維からなるシート材で構成され、第1の表面の凹凸高さは、第2の表面の凹凸高さよりも高いことを特徴とする。このような特徴を有する保持シール材を、前記第2の表面が、前記排気ガス処理体の外周面に接触するように巻回して固定する。
【0025】
ここで、シート材24の表面の凹凸高さは、以下のようにして定めた。すなわちシート材24の断面の任意の場所で倍率12倍の写真を撮影して、写真の最大の山の位置と最低の谷の位置との差を凹凸高さとし、この写真を5枚撮影して同様の測定を行い、平均して凹凸高さと定義した。
【0026】
本発明の保持シール材15を構成するシート材24は、第1の表面の凹凸高さと第2の表面の凹凸高さが異なっている。従って、凹凸高さの高い表面(第1の表面6)が保持シール材の外側(金属シェル12側)16となり、凹凸高さの低い表面(第2の表面8)が保持シール材の内側(排気ガス処理体20側)14となるように、シート材24を排気ガス処理体20の外周に巻き付けることで、通常であれば外周と内周の差によって内側14に生じるシワ18の発生が抑制される(図3B参照)。シート材24の第1の表面の凹凸が、排気ガス処理体20に巻き付けた際に延び代として機能し、保持シール材15の内側14と外側16の周長差の影響を緩和するためである。これにより、排気ガス処理装置10の保持シール材15のガスシール性が向上する。さらに、シワ18を応力集中の起点として生じる保持シール材15の圧壊が抑制されるため、保持シール材15が排気ガス処理体20を保持する保持力は、長期間維持される。
【0027】
ここでシート材24において、第1の表面の凹凸高さは、第2の表面の凹凸高さの1.2〜56.7倍の範囲にあることが好ましい。このようにシート材24の両表面の凹凸高さを制御した場合、後述のように、保持シール材15の排気ガス処理体20に対する保持力がさらに向上するからである。なお、シート材24の第1の表面の凹凸高さが第2の表面の凹凸高さの56.7倍を超えると、今度は排気ガス処理体20に保持シール材15を巻き付けた際に、外表面側にシワが生じ、保持シール材15のシール性が低下する。また、上記倍率が1.2未満では、本発明の効果が十分には得られない。さらに保持シール材15の第1の表面の凹凸高さは、第2の表面の凹凸高さの1.2〜28.3であることがより好ましい。この場合、保持シール材15に生じるシワ18の数がさらに抑制され、排気ガス処理体20に対する保持力がより向上するからである。なお、両表面の凹凸高さ比の最適範囲は、被巻き付け側の径と保持シール材15の厚さの関係によっても変化し得る。しかしながら通常、被巻き付け側の排気ガス処理体20の半径が増大すると、それに比例して保持シール材の厚さも厚くなる。従って、排気ガス処理体20の直径が変化しても、上記第1の表面と第2の表面の凹凸高さ比(第1の表面の凹凸高さ/第2の表面の凹凸高さ)の最適範囲(1.2〜56.7倍)はほとんど変化しないと考えられる。
【0028】
このような保持シール材15により構成される排気ガス浄化装置10の一例を図4に示す。この図では、排気ガス処理体20は、貫通孔を有する触媒担持体として示されているが、本発明の排気ガス浄化装置10は、このような構成に限られるものではない。例えば、排気ガス処理体20を貫通孔の一部が目封じされたDPFとすることもできる。このような排気ガス浄化装置に、上述のような保持シール材を使用することにより、ガスシール性および排気ガス処理体20に対する保持性を向上させることができる。
【0029】
ここで、シート材24の両表面の凹凸高さの最大値は、シート材24の厚さの半分以下であることが好ましい。この値を超えると、後述の圧縮乾燥工程においてシート材24の表面の凹凸高さを制御する際に、繊維が損壊してしまう恐れがあるからである。
【0030】
以下、本発明の保持シール材15の製作方法の一例を説明する。
【0031】
本発明の保持シール材15はシート材24からなり、このシート材24は、以下のように製作することができる。
【0032】
まず、無機繊維からなる積層状シートを製作する。なお以下の説明では、無機繊維としてアルミナとシリカの混合物を用いるが、無機繊維材料は、これに限られるものではなく、例えばアルミナまたはシリカのみで構成されても良い。アルミニウム含有量70g/l、Al/Cl=1.8(原子比)の塩基性塩化アルミニウム水溶液に、例えばアルミナ−シリカ組成比が60〜80:40〜20となるようにシリカゾルを添加し、無機繊維の前駆体を調製する。特にアルミナ−シリカ組成比は、70〜74:30〜26程度であることがより好ましい。アルミナ組成比が60%以下では、アルミナとシリカから生成されるムライトの組成比率が低くなるため、シート材24の熱伝導度が高くなり、十分な断熱性能が得られないからである。
【0033】
次にこのアルミナ系繊維の前駆体にポリビニルアルコール等の有機重合体を加える。その後この液体を濃縮し、紡糸液を調製する。さらにこの紡糸液を使用して、ブローイング法により紡糸する。
【0034】
ブローイング法とは、エアーノズルから吹き出される空気流と紡糸液供給ノズルから押し出される紡糸液流とによって、紡糸を行う方法である。エアーノズルからのスリットあたりのガス流速は、通常40〜200m/sである。また紡糸ノズルの直径は通常0.1〜0.5mmであり、紡糸液供給ノズル1本あたりの液量は、通常1〜120ml/h程度であるが、3〜50ml/h程度であることが好ましい。このような条件では、紡糸液供給ノズルから押し出される紡糸液は、スプレー状(霧状)となることなく十分に延伸され、繊維相互で溶着しにくいので、紡糸条件を最適化することにより、繊維径分布の狭い均一なアルミナ繊維前駆体を得ることができる。
【0035】
ここで、製作されるアルミナ系繊維の平均繊維長は、250μm以上であることが好ましく、500μm以上であることがより好ましい。平均繊維長が250μm未満では、繊維同士が十分に絡み合わず、十分な強度が得られないからである。また無機繊維の平均直径は、特に限られない。ただし、本発明は、無機繊維の平均直径が7μm以上であっても効果を奏することに留意する必要がある。
【0036】
紡糸が完了した前駆体を積層して、積層状シートを製作する。さらに積層状シートに、ニードリング処理を行う。ニードリング処理とは、ニードルを積層状シートに抜き差しして、シートの肉薄化を行うことをいう。ニードリング処理には、通常ニードリング装置が用いられる。ニードリング装置は、通常、突き刺し方向に往復移動可能なニードルボードと積層状シートの両面に設置された一対の支持板とで構成される。ニードルボードには、積層状シートに突き刺すための多数のニードルが、例えば約100〜5000個/100cm2の密度で固定されている。また支持板には、ニードル用の貫通孔が設けられている。このようなニードリング装置を用いて、ニードルを積層状シートに抜き差しして、ニードリング処理を行うことにより、複雑に絡み合った繊維が積層方向に配向し、積層状シートの積層方向の強化を図ることができる。
【0037】
このようにニードリング処理の施された積層状シート(以下シート材24という)を常温から加熱し、最高温度1250℃程度で連続焼成することで、所定の目付け量のシート材24が得られる。
【0038】
ハンドリングの容易化のため、このようにして得られたシート材24は、所定の寸法に裁断される。
【0039】
次に、裁断されたシート材24には、樹脂のような有機系結合材が含浸されることが好ましい。これにより、シート材24の嵩高さを抑制することができ、シート材24を排気ガス浄化装置10の排気ガス処理体20の保持シール材15として利用する際の組み付け性が改善されるからである。またシート材24から無機繊維が脱離して、保持力が低下することを防止することができる。さらに、排気ガス浄化装置10に高温排気ガスが導入された場合、保持シール材15の有機バインダが消失するため、圧縮されていた保持シール材15が復元され、金属シェルと排気ガス処理体20の間に存在する可能性のあるわずかの隙間も塞がれることとなり、保持シート材の保持力および、シール性が向上する。
【0040】
有機系結合材の含有量は、1.0〜10.0重量%の範囲であることが好ましい。1.0重量%未満では、十分に無機繊維の離脱を防止することができないからである。また10.0重量%よりも多くなると、柔軟性が得られなくなり、シート材24を排気ガス処理体20に巻き付けることが難しくなるからである。
【0041】
なお有機系結合材としては、例えばアクリル系(ACM)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)樹脂等を用いることが好ましい。
【0042】
このような有機系結合材と水とで調製した水分散液を用いて、スプレー塗布により、シート材24に樹脂を含浸させる。なおシート材24中に含まれる余分な添着固形分および水分は、次工程で除去される。
【0043】
次に、余分な固形分の除去および乾燥処理を行う。余分な固形分の除去は、吸引法で行われる。また余分な水分の除去は、加熱圧縮乾燥法によって行われる。この方法では後述のように、余分な水分の除去と共に、各種形状の凹凸型を用いてシート材24に押圧を付加したり、シート材24を圧縮したりすることにより、有機系結合材の接着力を利用して、シート材24の両表面に所定の凹凸高さを形成させることができる。乾燥は、95〜155℃程度の温度で行われる。95℃よりも温度が低いと、乾燥時間が長くなり生産効率が低下する。また155℃を超える乾燥温度では、有機系結合材自身の分解が開始され、有機系結合材による接着性が損なわれる。
【0044】
このような凹凸形成の工程は、シート材の裁断工程よりも前に実施しても良い。
【0045】
乾燥処理の際、シート材24を狭設する上下の冶具について、上型の凹凸高さと下型の凹凸高さを所定の比率とすることで、圧縮乾燥後に、シート材24の両表面の凹凸高さを前述の範囲となるように制御することができる。最後に裁断により、所定の形状のシート材24が得られる。
【0046】
このようにしてアルミナ系繊維からなり、有機系結合材が含浸され、さらに両表面の凹凸高さが制御されたシート材24を得ることができる。シート材24の一例を図1Aに示す。この図では、シート材24は、巻回し方向と垂直な両端面に1組の嵌合凸部150と嵌合凹部160を有するように示されているが、本発明のシート材24は、このような形状に限られるものではないことは明らかであろう。また図において第1の表面6の凹凸は、一定周期の波形が全面均一に広がるように示されているが、表面の凹凸形状は、これに限られるものではなく、第1の表面と第2の表面の凹凸高さが前述の関係となっていれば、シート材24の表面はいかなる形状の凹凸であっても良い。
【0047】
このようなシート材24は、排気ガス浄化装置10の排気ガス処理体20の保持シール材15として使用される。この場合、シート材24の凹凸高さの小さい表面(第2の表面)が内側(排気ガス処理体20側)となるようにして、シート材24を排気ガス処理体20に巻き付ける(図2B)。このとき、シート材24は、巻き付け方向にある程度の張力が生じるように排気ガス処理体20に巻き付けられる。これにより、保持シール材15の内側14と外側16の周長差が解消され、内側14のシワ18の発生が抑制される。従って、保持シール材15のシール性、保持力が向上する。
【0048】
またこのような保持シール材15を使用して、排気ガス浄化装置10を構成することにより、シール性および保持力に優れた排気ガス処理装置10を得ることができる。
【0049】
以下、本発明の効果を実施例により説明する。
【実施例】
【0050】
シート材24は以下の手順により製作した。
【0051】
[シート材の製作]
アルミニウム含有量70g/l、Al/Cl=1.8(原子比)の塩基性塩化アルミニウム水溶液に、アルミナ系繊維の組成がAl2O3:SiO2=72:28となるように、シリカゾルを配合し、アルミナ系繊維の前駆体を形成した。
【0052】
次にアルミナ系繊維の前駆体に、ポリビニルアルコール等の有機重合体を添加した。さらに、この液を濃縮して紡糸液とし、この紡糸液を用いてブローイング法にて紡糸した。
【0053】
その後アルミナ系繊維の前駆体を折りたたんだものを積層して、アルミナ系繊維の積層状シートを製作した。この積層状シートに対して、500個/100cm2のニードルを有するニードルボードを用いて、ニードリング処理を行った。その後得られたシート材24を常温から最高温度1250℃で連続焼成し、目付け量1160g/cm2のアルミナ系繊維のシート材24を得た。アルミナ系繊維の平均直径は7.2μmであり、最小直径は3.2μmであった。またシート材24の厚さは9mmであった。
【0054】
なお繊維の平均直径は、以下の方法により測定した。まず、アルミナ系繊維をシリンダーに入れ、20.6MPaで加圧粉砕する。次にこの試料をふるい網に載せ、ふるいを通過した試料を電子顕微鏡観察用試験体とする。この試験体の表面に金等を蒸着させた後、倍率約1500倍程度の電子顕微鏡写真を撮影する。得られた写真から少なくとも40本の繊維の径を測定する。この操作を5試料について繰り返し、測定値の平均を繊維の平均直径とした。
【0055】
[シート材の裁断]
上記工程で作製されたシート材24を、寸法が縦1270mm、横1280mmとなるように裁断した。
【0056】
[有機系結合材含浸]
裁断されたシート材24に有機系結合材の含浸を行った。アクリル系樹脂水分散液(日本ゼオン製L×803;固形分濃度50±10%、pH5.5〜7.0)を樹脂濃度が1.0〜10.0wt%の範囲となるように調製して、含浸液を得た。次に、スプレー塗布により、シート材24にこの含浸液を含浸させた。
【0057】
[固形分の吸引]
有機系結合材を含浸させた後のシート材24には、所定量を超える固形分が付着しているため、固形物の吸引処理(3秒程度)によって、余分な固形分を除去した。この処理後に、秤量法にて確認した結果、シート材24の有機系結合材の含浸率は10wt%であった。
【0058】
[加熱圧縮乾燥工程]
吸引工程後のシート材24を用いて、乾燥温度95〜155℃で加熱圧縮乾燥処理を行う。これによりシート材24の平均厚さは、約8mmとなる。なおこの処理では、シート材24を狭設する上下の冶具の凹凸高さを変化させて、両面で凹凸高さの異なるシート材24を作製した。すなわち、上下の冶具には、いずれも波形の型のものを使用し、上部の型は凹凸高さを850μm、下部の型は凹凸高さを500μmとした。これにより圧縮乾燥後に、上面の凹凸高さが850μm、下面の凹凸高さが500μmのマット状シート(すなわち凹凸高さに対する凹凸高さH=1.7)が得られた(実施例1とする)。
【0059】
次に、加熱圧縮乾燥処理の際にシート材24を狭設する上下の冶具を変更した以外は、上述の工程と同じ処理により、実施例2、3、5〜7および比較例1〜3のシート材24を作製した。これらの実施例および比較例では、シート材24のいずれかの表面、または両表面の凹凸高さが実施例1とは異なるが、その他の製作条件は実施例1のシート材24と同じである。また実施例4は、実施例3と同じ表面の凹凸高さであるが、使用した繊維の平均直径は5.7μmである点のみが異なる。表1には、各実施例および比較例のシート材24に使用した繊維径と、第1および第2の表面の凹凸高さと、その比率を示す。
【0060】
【表1】
なお、シート材24の凹凸高さは、前述のように、光学顕微鏡によるシート材24の断面形状観察により行った。一例として実施例1のシート材24の第1の表面および第2の表面の断面形状をそれぞれ図5A、5Bに示す(両面の凹凸高さ比1.7)。
【0061】
次に得られたシート材24を以下に示す所定の形状に切断して、各種評価試験に供した。なお抜き荷重測定については、シート材の無機繊維の平均直径の影響についても評価した。以下、試験結果を説明する。
【0062】
[シワ測定結果]
上述の実施例1〜6および比較例1〜4のシート材24を、表面の凹凸が小さい面が排気ガス処理体20に接するように巻き付け、シート材24の内面側に生じるシワの数および長さを評価した。排気ガス処理体20としては、直径80mm、長さ150mmの触媒担持体を用いた。またシート材24は、巻回し方向の一端に1つの嵌合凸部、他端に1つの嵌合凹部を有する、最大長さ290mm(うち嵌合凸部の長さ約40mm)、幅80mmのものを使用し、これを触媒担持体に緩みの生じないように一様に巻き付けて、両端で嵌合接合させた。
【0063】
各実施例1〜6および比較例1〜4で得られた結果を表1に示す。この表から、平均繊維径に関わらず、シート材24の第1の表面の凹凸高さが、第2の表面の凹凸高さの1.2〜56.7倍のときに、シート材24に生じるシワの数×長さの値(mm)が小さくなることがわかった。
【0064】
[抜き荷重測定結果]
排気ガス処理体20に表面の凹凸高さの小さい面が接するように、シート材24を巻き付け、両者の一体品をSUS304鋼製の円筒状金属シェル12に圧入し、24時間以上その状態に保持後、万能試験機による抜き荷重試験を行った。排気ガス処理体20としては、直径80mm、長さ150mmの触媒担持体を使用した。保持シール材には、巻回し方向の一端に嵌合凸部、他端に嵌合凹部を有する、最大長さ290mm(うち嵌合凸部の長さ約40mm)、幅80mmのシート材を使用し、これを触媒担持体に巻回し、両端部を嵌合して接合した。また金属シェル12の内径は、84mm、長さは200mm、厚さは1.5mmである。なおこれまでの実験の結果から、抜き荷重が200Nを越えれば、保持シール材の排気ガス処理体に対する保持力は、実用上十分であると言われている。
【0065】
結果を表1および図6に示す。ここで抜き荷重とは、金属シェル12に圧入された触媒担持体を押し出す際の最大荷重を意味する。この結果から、平均繊維径に関わらず、シート材24の第1の表面の凹凸高さが、第2の表面の凹凸高さの1.2〜56.7倍のときに、保持シール材15の抜き荷重が200Nを越え、良好な保持力を示すことがわかった。またシート材24の第1の表面の凹凸高さが、第2の表面の凹凸高さの1.2〜28.3倍の場合、このシートを用いた保持シール材15は、400Nを超え、極めて良好な保持力を示すことがわかった。
【0066】
図7は、繊維の平均直径と抜き加重のグラフである。第1の表面と第2の表面が同じ凹凸高さである(凹凸高さの比=1.0)場合、平均直径が6μmを超えると急激に抜き加重が低下することがわかる。図7では、第1の表面と第2の表面の凹凸高さの比を28.3とした場合のプロットも描かれているが、平均直径に依存されることなく、高い抜き加重を実現している。このことはつまり、平均直径が6μmを超える場合に、抜き加重の改善に顕著な効果を示しているといえる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の保持シール材および排気ガス浄化装置は、車両用排ガス浄化装置等に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1A】本発明の保持シール材に用いるシート材の一例を示す図である。
【図1B】本発明による保持シール材を排気ガス処理体に巻回し固定し、金属シェルに圧入して、排気ガス処理装置を構成するときの構成図である。
【図2A】図1Aのシート材のA−A断面の形状である。
【図2B】本発明による保持シール材の効果を示す概念図である。
【図3A】従来の保持シール材を排気ガス処理体と一体化させて、金属シェルに組み付けたときの状態を示す概念図である。
【図3B】本発明による保持シール材を排気ガス処理体と一体化させて、金属シェルに組み付けたときの状態を示す概念図である。
【図4】本発明の排気ガス浄化装置の一構成例を示す図である。
【図5A】本発明による第1の実施例のシート材の第1の表面の形状を示す写真である。
【図5B】本発明による第1の実施例のシート材の第2の表面の形状を示す写真である。
【図6】第1および第2の表面の凹凸高さ比と抜き荷重の関係を示すグラフである。
【図7】繊維の平均直径と抜き荷重の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0069】
2 導入管
4 排気管
6 第1の表面
8 第2の表面
10 排気ガス浄化装置
12 金属シェル
14 保持シール材の内側
15 保持シール材
16 保持シール材の外側
18 シワ
20 排気ガス処理体
24 シート材
26 表面
150 嵌合凸部
160 嵌合凹部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガス処理体を保持するための保持シール材であって、
当該保持シール材は、第1の表面と第2の表面を有し、無機繊維からなるシート材で構成され、第1の表面の凹凸高さは、第2の表面の凹凸高さよりも高いことを特徴とする保持シール材。
【請求項2】
前記シート材は、無機繊維の積層状シートをニードリング処理して構成されることを特徴とする請求項1に記載の保持シール材。
【請求項3】
前記シート材は、結合材を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の保持シール材。
【請求項4】
前記シート材の第1の表面の凹凸高さは、第2の表面の凹凸高さの1.2〜56.7倍であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の保持シール材。
【請求項5】
前記無機繊維の平均直径は、6μm以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の保持シール材。
【請求項6】
前記無機繊維は、アルミナとシリカの混合物であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の保持シール材。
【請求項7】
前記排気ガス処理体は、触媒担持体または排気ガスフィルタであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の保持シール材。
【請求項8】
当該保持シール材は、前記排気ガス処理体の開口面を除く外周面の少なくとも一部に巻回して固定され、前記第2の表面が、前記排気ガス処理体の外周面に接触するように固定されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の保持シール材。
【請求項9】
排気ガス処理体と、
該排気ガス処理体を収容する金属シェルと、
前記排気ガス処理体の開口面を除く外周面の少なくとも一部に巻き付けて使用される保持シール材と、
で構成される排気ガス浄化装置であって、
前記保持シール材は、無機繊維からなる、第1の表面と第2の表面を有するシート材で構成され、該シート材の第1の表面の凹凸高さは第2の表面の凹凸高さよりも高く、前記シート材の第2の表面が、前記排気ガス処理体の外周面に接触するように巻回して固定されることを特徴とする、排気ガス浄化装置。
【請求項10】
前記シート材は、無機繊維の積層状シートをニードリング処理して構成されることを特徴とする請求項9に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項11】
前記シート材は、結合材を含有することを特徴とする請求項9または10に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項12】
前記シート材の第1の表面の凹凸高さは、第2の表面の凹凸高さの1.2〜56.7倍であることを特徴とする請求項9乃至11のいずれか1項に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項13】
前記無機繊維の平均直径は、6μm以上であることを特徴とする請求項9乃至12のいずれか1項に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項14】
前記無機繊維は、アルミナとシリカの混合物であることを特徴とする請求項9乃至13のいずれか1項に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項15】
前記排気ガス処理体は、触媒担持体または排気ガスフィルタであることを特徴とする求項9乃至14のいずれか1項に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項1】
排気ガス処理体を保持するための保持シール材であって、
当該保持シール材は、第1の表面と第2の表面を有し、無機繊維からなるシート材で構成され、第1の表面の凹凸高さは、第2の表面の凹凸高さよりも高いことを特徴とする保持シール材。
【請求項2】
前記シート材は、無機繊維の積層状シートをニードリング処理して構成されることを特徴とする請求項1に記載の保持シール材。
【請求項3】
前記シート材は、結合材を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の保持シール材。
【請求項4】
前記シート材の第1の表面の凹凸高さは、第2の表面の凹凸高さの1.2〜56.7倍であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の保持シール材。
【請求項5】
前記無機繊維の平均直径は、6μm以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の保持シール材。
【請求項6】
前記無機繊維は、アルミナとシリカの混合物であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の保持シール材。
【請求項7】
前記排気ガス処理体は、触媒担持体または排気ガスフィルタであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の保持シール材。
【請求項8】
当該保持シール材は、前記排気ガス処理体の開口面を除く外周面の少なくとも一部に巻回して固定され、前記第2の表面が、前記排気ガス処理体の外周面に接触するように固定されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の保持シール材。
【請求項9】
排気ガス処理体と、
該排気ガス処理体を収容する金属シェルと、
前記排気ガス処理体の開口面を除く外周面の少なくとも一部に巻き付けて使用される保持シール材と、
で構成される排気ガス浄化装置であって、
前記保持シール材は、無機繊維からなる、第1の表面と第2の表面を有するシート材で構成され、該シート材の第1の表面の凹凸高さは第2の表面の凹凸高さよりも高く、前記シート材の第2の表面が、前記排気ガス処理体の外周面に接触するように巻回して固定されることを特徴とする、排気ガス浄化装置。
【請求項10】
前記シート材は、無機繊維の積層状シートをニードリング処理して構成されることを特徴とする請求項9に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項11】
前記シート材は、結合材を含有することを特徴とする請求項9または10に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項12】
前記シート材の第1の表面の凹凸高さは、第2の表面の凹凸高さの1.2〜56.7倍であることを特徴とする請求項9乃至11のいずれか1項に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項13】
前記無機繊維の平均直径は、6μm以上であることを特徴とする請求項9乃至12のいずれか1項に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項14】
前記無機繊維は、アルミナとシリカの混合物であることを特徴とする請求項9乃至13のいずれか1項に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項15】
前記排気ガス処理体は、触媒担持体または排気ガスフィルタであることを特徴とする求項9乃至14のいずれか1項に記載の排気ガス浄化装置。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図6】
【図7】
【図5A】
【図5B】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図6】
【図7】
【図5A】
【図5B】
【公開番号】特開2007−31886(P2007−31886A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−217927(P2005−217927)
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】
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