説明

保持リングを固定するための構成、当該構成を製造するための方法、及び、当該方法を実施するための工具

【課題】本発明の課題は、冒頭で述べたタイプの構造において、保持リングと構成部品との間の結合を、確実で高い信頼性があって、とりわけ周方向に遊びがない、というようにすることである。
【解決手段】本発明によれば、当該固定構造において、保持リングに、その周上に配置された切欠部が設けられ、当該切欠部に対して、かしめによって製造される構造部品の対応係合要素が、遊びなく係合する。対応係合要素は、構造部品上において、予め製造されることがなく、保持リングとの結合時に、径方向のかしめによって製造される。これにより、保持リングの切欠部内での構造部品の遊びのない係合、という利点が達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求の範囲の請求項1の上位概念に従う、保持リングを固定するための構成に関している。また、本発明は、特許請求の範囲の請求項11の上位概念に従う、当該構成を製造するための方法に関している。さらに、本発明は、特許請求の範囲の請求項14の上位概念に従う、当該方法を実施するための工具に関している。
【背景技術】
【0002】
特には自動車の自動変速機において、回転数を非接触に測定する際、磁石リングを用いることが知られている。当該磁石リングは、回転する構造部品上に固定され、パルス発生器として、ホールセンサのために機能する。この場合の問題は、その回転数がホールセンサによって測定されるべき構造部品に、磁石リングを確実かつ高い信頼性で固定することである。
【0003】
本件出願人によるDE19851760A1によって、回転数測定装置が知られている。当該装置は、自動車の自動変速機に配置される。インデックス付きホイール(Polrad)の形態を有する磁石リングが、例えば円筒状のディスクキャリヤのような回転する変速機構造部品上に、固定リングによって固定される。磁石リングは、円筒状の変速機構造部品の開口部内に挿入され、固定リングによって固定される。この場合、磁石リングは、固定リングによってカバーされる。この場合、固定リングは、変速機構造部品とかしめられる。
【0004】
DE19734303A1によって、好ましくはホールセンサによる、非接触の回転数測定のための、磁石リングと固定リングとからなる磁石ホイールが知られている。この磁石リングは、弾性接着材料によって、固定リングに結合されている。さらに、固定リングには、タブ(舌部)の形態の機械的な結合要素が設けられている。この結合要素は、磁石リングの対応する受容開口内に係合され、磁石リングの固定リングへの更なる位置固定のために役立つ。製造許容誤差に起因して、タブと磁石リングの受容開口との間に、周方向の遊びが生じる。これは、弾性的な接着結合によって補償される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、冒頭で述べたタイプの構造において、保持リングと構成部品との間の結合を、確実で高い信頼性があって、とりわけ周方向に遊びがない、というようにすることである。本発明の課題は、また、そのような固定構造を製造するのに好適な方法を提供することである。さらに、本発明の課題は、そのような方法を実施するために好適な工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題は、特許請求の範囲の独立請求項1、11、14及び15の特徴によって、解決される。有利な実施の形態は、下位の請求項から明らかである。
【0007】
本発明によれば、当該固定構造において、保持リングに、その周上に配置された切欠部が設けられ、当該切欠部に対して、かしめによって製造される構造部品の対応係合要素が、遊びなく係合する。対応係合要素は、構造部品上において、予め製造されることがなく、保持リングとの結合時に、径方向のかしめによって製造される。これにより、保持リングの切欠部内での構造部品の遊びのない係合、という利点が達成される。
【0008】
好適な実施の形態によれば、切欠部は、周方向を横切って延びる当接面、側面とも呼ばれる、を有している。それらの上に、径方向のかしめによって生成される対応係合要素が当接している。構造部品と保持リングとの間の周方向力は、当該当接面ないし側面に対して垂直に伝達され、このことが好適な力伝達を生じさせる。
【0009】
さらに好適な実施の形態によれば、保持リングは、ディスク状の板部材として形成される。この場合、周縁側の切欠部は、好ましくは、打ち抜き(ausstanzen)によって形成され得るか、あるいは、切り込み(ausklinken)によって形成され得る。保持リングは、これにより、低コストに製造可能である。
【0010】
さらに好適な実施の形態によれば、構造部品は、第1円筒面と第2円筒面とを有しており、それらは平坦面を介して互いに接続されており、保持リングは当該平坦面に当接している。当該平坦面によって、保持リングは構造部品上において軸方向に位置決めされる。
【0011】
さらに好適な実施の形態によれば、保持リングは、第1円筒面によって、構造部品に対する中心合わせがされている、すなわち、径方向にアライメントされている。
【0012】
とりわけ好適な実施の形態によれば、対応係合要素は、それぞれ、少なくとも一つのくさび状またはV字状のスタンプ部(凹部)を有している。この場合、当該スタンプ部は、径方向ないし前記側面に対して平行な方向に延びるピーク線を有する。このスタンプ部は、さらなる成形工程によって、対応係合要素の材料が周方向すなわち切欠部の側面上にかしめられてもよい。
【0013】
さらに好適な実施の形態によれば、対応係合要素は平坦面を有しており、その中にスタンプ部が配置されている。対応係合要素の平坦面は、ディスク形状の保持リングの平坦面と接触して係止している。すなわち、対応係合要素は、保持リングの高さにおいて、平坦化されている。保持リングの切欠部は、これにより、構成部品の材料で完全に充填される。従って、構成部品の対応係合要素と保持リングの切欠部との間の最大の接触面が、とくに側面において、生じる。
【0014】
とりわけ好適な実施の形態によれば、保持リングは、磁石リングの保持器として、且つ、非接触の回転数測定のための装置のインデックス付きホイールとして、形成され得る。磁石リングは、好適には合成材料からなり、プラスチック内に埋め込まれた強磁性粒子を含んでいる。それは、少なくとも一つの磁極の対、N極とS極、を有しており、ホールセンサのための回転数信号を供給する。磁石リングを有する保持リングは、磁化不可能な材料から構成される。特には、アルミニウム材料から構成される。
【0015】
さらに好適な実施の形態によれば、構造部品は、自動車の自動変速機の歯車セットの遊星歯車キャリヤとして構成されている。それぞれインデックス付きホイールである保持リングの遊星歯車キャリヤ上への本発明による固定法は、自動変速機の回転数測定の応用の際に、高い確実性と高い製品寿命とを保証し、例えば接合部の揺動(Ausschlagen)により引き起こされる早期の故障を防止する。遊星歯車キャリヤと保持リングとの間の本発明による結合は、例えば自動車の自動変速機において生じるような、動的な負荷にとって、特に好適である。
【0016】
本発明によれば、上述の構成を製造するための方法において、まず、構成部品が保持リングに組み付けられ、中心合わせされる。続いて、構成部品の材料、好ましくはスチールが、第一工程において、部分的に、すなわち、保持リングの切欠部の領域において、径方向にかしめられる。構成部品の材料は、これにより、径方向に、保持リングの切欠部内へと流れ込み、周方向の重複部、すなわち、噛み合い式の結合部が、成形された対応係合要素によって生じる。対応係合要素の生成のための当該方法の利点は、周方向に遊びのない結合が得られることである。なぜなら、径方向に流れ込む材料が、切欠部の側面において押圧されるからである。
【0017】
さらに好適な実施の形態によれば、構成部品の材料は、第二工程において、一方では軸方向に押圧成形されて平坦化され、他方では周方向に移動される、というように成形される。これにより、当該材料は、切欠部の境界面において、完全に(vollumfaenglich)押圧され、最適な当接重複部が製造される。これにより、結合のための高い接触領域が生じる。さらなる利点は、構成部品の材料が当該側面において押圧されて、揺動に対して高い確実性が生じることである。
【0018】
本発明によれば、上述の方法を実施するための工具において、刃先とくさび面とを有する、くさび形に形成されたスタンパー、が提供される。刃先が、最初、材料内に刻み入り、想定される平坦面に対して傾斜して延びているくさび面によって、材料は径方向に移動する。これにより、対応係合要素が、第一工程において、形成され得る。
【0019】
本発明によれば、さらに、前記製造方法の第二工程を実施するための第二の工具が提供される。この場合、当該工具は、そこから少なくとも一つのスタンプ要素、好ましくは二つのくさび状エッジ部、が突出している平坦面を有する押圧スタンパーとして形成される。スタンプ要素は、対応係合要素の上面内において、スタンプ加工を施し、材料の周方向への流れ込みを引き起こす。同時に、平坦面によって、対応係合要素の押圧、すなわち、保持リングの高さでの「平坦化」も引き起こされる。これにより、構成部品と保持リングとの間の結合が完成して提供される。すなわち、ギャップ(spalt)のない、揺動に対して安全な結合が製造される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】かしめ前の、構成部品上に配置された保持リングを示す図である。
【図2】図2(a)は、第一工程後の、構成部品と保持リングとの断面図である。図2(b)は、第一工程後の、構成部品と保持リングとの正面図である。
【図3】図3(a)は、第二工程後の、構成部品と保持リングとの断面図である。図3(b)は、第二工程後の、構成部品と保持リングとの正面図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】DE19851760A1の図面である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施の形態が、図面に示されており、以下において詳述される。これらの記述及び/または図面から、更なる特徴及び/または利点が明らかにされる。
【0022】
図1は、回転軸回りに回転する構成部品1の部分図を、軸方向断面図で示している。当該構成部品1上に、保持リング2が配置されている。保持リング2は、不図示の磁石リングと結合されて、いわゆるインデックス付きホイール(Polrad)として形成されている。これは、非接触の回転数測定のためのパルス発生器として機能する。ここで、当該インデックス付きホイールに対して、静置されたセンサ、好ましくは不図示のホールセンサが、対応するように設けられている。構成部品1は、好ましくは、自動車の自動変速機の遊星歯車セットの遊星歯車キャリヤとして形成されている。自動変速機のための同様の回転数測定装置が、本件出願人による前述の従来技術から知られている。当該従来技術であるDE19851760A1の開示内容(後述する)についても、ここでの言及によって、本明細書の開示内容に完全に取り入れられる。
【0023】
不図示の磁石リングは、好ましくは、複合材料または合成材料からなる。それは、プラスチックと、その中に埋め込まれた磁化可能な金属粒子と、を含んでいる。磁石リングは、好ましくは、18乃至24の磁極の対を有している。保持リング2は、磁化不可能な金属からなり、好適にはアルミニウム板からなり、不図示の態様で磁石リングを有して保持している。
【0024】
図1は、構成部品1と保持リング2とを機械的に組み付けた後であって、さらなる固定の前の、基本状態を示している。構成部品1は、前面1a、第1円筒面1b、第2円筒面1c、及び、平坦面1dを有している。部分的に示された保持リング2は、ディスク状に形成されていて、前方側平坦面2aと、後方側平坦面2bと、内径部2cと、を有している。内径部2cと第1円筒面1bとを介して、構成部品1と保持リング2とが互いに中心合わせされる。後方側平坦面2bが、平坦面1dに当接し、これによって、両部材が軸方向に固定される。回転軸aは、回転する構成部品1に対して短縮された距離で示されている。すなわち、保持リング2は、遊星歯車キャリヤのそれぞれの構成部品1の径方向外側に配置されている。もっとも、不図示の反対の配置も可能である。
【0025】
図2は、成形方法の第一工程を実施した後の、構成部品1と保持リング2との断面図及び正面図を示している。また、第一成形工具3も示されている。保持リング2は、特に軸方向の正面図から認識できるように、その周上に配置された切欠部4の形態の凹部を有している。当該凹部は、互いに対向し、略径方向に延びる、2つの当接面ないし側面4a、4bを有しており、当該側面4a、4bを結合する底面4cを有している。ディスク状に形成された保持リング2は、スタンプ部材として製造され得る。切欠部4は、図面では一つしか示されていないが、加工動作中において、打ち抜き(ausstanzen)によって形成され得るか、あるいは、切り込み(ausklinken)によって形成され得る。図1に示された状態から図2に示された状態への構成部品1の変形は、径方向のかしめによって行われる。ここで、くさび状に形成された工具3が、構成部品1の前面1a内に、矢印Aに対応する軸方向に押し込まれる。このために、スタンパーとして形成された工具3は、刃先3aとくさび面3bとを有する。くさび面3bは、前方側平坦面1aに対して、傾斜している。引き戻された位置において示されている工具3は、周方向において所定の幅を有しており、その幅は、切欠部4の幅、すなわち、側面4a、4b間の距離に対応している。成形過程すなわち径方向のかしめ過程の際、工具3は、切欠部4の領域内にそれぞれ適用される。その結果、当該正面図において略長方形状の対応係合要素5が成形される。図面内で右上から左下に延びるくさび面3bによって、構成部品1の材料が径方向(矢印Rによって示されている)に移動される。断面図においては、対応係合要素5は、鼻状に形成されている。正面図において略長方形状に形成された対応係合要素5は、2つの略平行に配置された接触面ないし係合面5a、5bを有している。それらは、切欠部4の側面4a、4bと当接する。対応係合要素5は、下方端5cを有しており、それは、切欠部4の底面4cとギャップ(Spalt)を形成する。すなわち、構成部品1の材料は、第一工程の後にはまだ、全体の切欠部4を底面4cまで埋める程には、径方向に移動されていない。そのような移動は、後述の第二工程において行われる。
【0026】
図3は、成形方法の第二工程を実施した後の、構成部品1と保持リング2との断面図及び正面図を示している。成形方法の第二工程は、第二工具6によって、軸方向(矢印Aによって示されている)に実施される。第二成形工具6は、いわゆる押圧プレス工具である。この第二工程によって、対応係合要素5は、保持リング2の前方側平坦面2a上において平坦化され、同時に、材料の周方向Uへの移動が行われる。その結果が、5’で示された対応係合要素である。それはもはや、側面4a、4bのみならず、切欠部4の底面4cにおいても当接している。成形方法の第二工程の実施のために、押圧プレス工具6が用いられる。押圧プレス工具6は、前方側平坦面6aと、当該平坦面6aから突出する二つのくさび形またはV字状のスタンプ要素と、を有している。この場合、スタンプ要素は、くさび状エッジ部6bである。構成部品1の材料は、押圧プレス工具6の対応係合要素5(図2に対応する)への押圧(衝突)の際、一方では軸方向Aに圧縮され、他方ではくさび状エッジ部6bによって周方向Uに移動される。くさび状エッジ部6bは、材料の上面内に入り込み、対応する凹凸反転形状を残す。すなわち、凹部、あるいは、断面V字状に形成されたスタンプ部7、8を残す。これは、側面4a、4bの近傍に位置する。スタンプ部7、8は、それぞれ、ピーク線7a、8aを有している。それらピーク線7a、8aは、側面4a、4bに平行に配置されている。ピーク線7a、8aに対して垂直なくさび作用によって、材料は、側面4a、4bに対抗して外側に移動される。その結果、構成部品1の対応係合要素5’と保持リング2との間に、遊びのない結合が生じる。
【0027】
図4は、図3のIV−IV線断面図である。図4から、対応係合要素5’と保持リング2との間の噛み合い結合が、明らかに認識できる。切欠部4は、かしめられた材料によって完全に充填されている。更に、スタンプ部7、8は、第二工程の実施の跡として、V字状の断面を有していることが明らかである。対応係合要素5の前面は、本質的に、保持リング2の前面2aと同一面にある。
【0028】
最後に、DE19851760A1(特表2002−529741に対応)の開示内容を紹介しておく。
【0029】
当該公報の図面を、図5として添付する。符号は、100を加えた。
【0030】
当該公報の特許請求の範囲は以下の通りである。
【0031】
<請求項1>
回転しないかあるいは第1の部材の回転数に依存しないある回転数で回転する第2の部材の内側に配置されている、運転中に回転する第1の部材、とりわけ、同様に回転するかあるいは固定の同心の深鍋部の内側に配置されている、自動ギヤの回転タービンと連結するシリンダ、の回転数の非接触測定のための構造であって、
両方の部材は、ケーシングによって取り囲まれており、磁場を発生させる構成と磁場検出器とを用いており、磁場を発生させる構成は、シリンダ(101)に統合された磁石環(104)であり、磁場検出器は、ホール(効果)センサ(103)であり、それは、ケーシング(106)の壁の空所に固定配置されており、深鍋部(102)は、磁化できない材料で構成されていることを特徴とする構造。
【0032】
<請求項2>
磁石環(104)は、本質的にT字の断面を有する極車輪の形態を有しており、
当該T字の横梁部が、シリンダ(101)の対応する空所に係合しており、
当該T字の縦梁部が、ケーシング(106)の方向にシリンダ(101)の表面にまで延びている
ことを特徴とする請求項1に記載の構造。
【0033】
<請求項3>
極車輪(104)は、放射状の磁化物を有するプラスチック成型(kunststoffgebundenem)の硬質フェライトで構成されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の構造。
【0034】
<請求項4>
極車輪(104)は、磁化できない材料でできた硬質リング(105)を用いて、シリンダ(101)に放射方向及び軸方向に固定されている
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の構造。
【0035】
当該公報の明細書は以下の通りである。
【0036】
本発明は、請求項1のプレアンブルに記載された、回転しないかあるいは第1の部材の回転数に依存しないある回転数で回転する第2の部材の内側に配置されている、運転中に回転する第1の部材の回転数の非接触測定のための構造に関している。
【0037】
当該構造は、とりわけ、自動ギヤの回転タービンと連結するシリンダの回転数の測定に役立つ。シリンダは、同じく回転する同心の深鍋部(Topfe )の内側に配置されている。ここで、両方の部材は、ケーシングによって取り囲まれており、当該構造は、磁場を発生させる構成と磁場検出器とを有している。
【0038】
タービンと連結するシリンダのような自動ギヤの部材は、それ故にタービン回転数で回転するが、しばしば、止まっているかあるいはタービン回転数に依存しない第2の回転数で回転する他の部材の内側にある。
【0039】
DE−A3620884から、自身が回転する部材の回転数と回転方向との把握のための装置が知られている。そこでは、自身が回転する部材は、例えば、ホイールまたはラックである。その歯は、それぞれ、強磁性材料で形成されている。フェルドプラーテン(Feldplatten:磁場により制御される光抵抗セル)−差動案内装置が、入力電圧を増幅器に供給する。バンドパスフィルタ及びコンパレータが、それの後に位置する。それと共に、歯列が使用され得る。その歯の間隔及び歯の合間は等しく、運動速度と運動方向との両方が明白に測定され得る。この公知の装置では、自身が回転するあるいは静止している第2の部材によって取り囲まれたような自身が回転する部材の回転数あるいは回転方向を測定することは不可能である。その場合、測定信号が当該第2の部材を貫通しなければならない。
【0040】
EP−B462435は、運転中に回転する部材の回転数の把握のための構成に関している。それは、周方向に少なくとも起伏部を有しており、起伏部の運動を把握する回転数センサ構造を伴っている。ここで、磁場を発生する手段と磁場検出器とが、1つの組立体に統合されており、回転数センサ構造と回転部材との間には壁が設けられている。それで、当該回転部材の回転数が、当該壁を貫いて把握される。磁場発生器は、ここでは永久磁石であり、検出器は、フェルドプラーテン原理によって作動する磁場検出器である。回転数センサは、自動車の自動ギヤのケーシングの穴の中にある。当該ギヤは、外部噛み合い(aussenverzahnte )の第1の連結つり鐘部(kupplungsglocke )と、回転数センサと第1連結つり鐘部との間に配置された第2連結つり鐘部と、を有している。磁場検出器は、第1連結つり鐘部へのその最短の距離を通って規定された方向で、とりわけ高感度である。この態様によって、自身が回転する第2の連結つり鐘部を貫いて、永久磁石により発生される磁場の第1連結つり鐘部によって引き起こされる変化を把握することが可能である。第2の連結つり鐘部の基本材料は、当該公知の構成の場合、少なくとも断片的に、磁場検出器に対して水平の領域において、周方向に消磁されているか、あるいは、調整された磁場を発生する磁化物が設けられている。ここでは、磁場発生器は、回転する内方の部材に着座している。一方、磁場検出器は、ケーシングの内側に配置されている。
【0041】
本発明の課題は、とりわけ簡単で信頼できる態様で、付加的な空間需要無しで、止まっているかあるいは第1の回転数に依存しない第2の回転数で回転する別の部材、の内側に配置されている回転部材、ここで第1及び第2の部材は互いに同心に配置されている、の回転数を測定することである。
【0042】
最初に詳しく言及された態様の構造から由来して、請求項1の特徴部分に示された特徴で、当該課題が解決される。有利な構成が、従属項で説明される。
【0043】
本発明による原理は、非接触に作動する磁場高感度センサとして、ホール効果センサ(Hallsensor)が設けられており、それによって、統合された極車輪(Polrad)を有する回転するシリンダの回転数が、それと同心に配置され磁化できない材料でできた同じく回転する深鍋部を貫いて検出される、ということに存在する。極車輪は、第1の回転する部材、すなわち、回転するシリンダ内において完全に統合されており、ホールセンサは、両方の部材を取り囲むケーシングの壁に完全に統合されているので、付加の空間需要が全く必要とされない。
【0044】
本発明による構造は、とりわけ、自動車の自動ギヤに適している。この場合、第1の部材はシリンダであり、それはタービン軸と堅固に統合されており、その回転数は、調節目標に対して測定するものである。
【0045】
次に、本発明は、図面に基づいて、より詳細に説明される。図(図5)は、本発明による構造が設けられた従来の自動ギヤの部分断面を示している。
【0046】
この種の自動ギヤは十分知られているので、発明の理解のために必要な部材のみが符号を与えられている。
【0047】
当該ギヤの場合、そのケーシングは106と符号が付けられており、タービン軸と堅固に結合する第1の部材が、シリンダ101の形態で設けられており、その回転数は、非接触で測定されるべきである。部材101は、深鍋部の形態の第2の部材102によって、同心に取り囲まれている。ここでは、当該第2の部材102は、止まっているか、あるいは、第1の部材101の回転数に依存しない第2の回転数で回転している。
【0048】
深鍋部102を貫いてのシリンダ101の回転数の測定のために、本発明によれば、磁石環104が設けられており、それはシリンダ101に完全に統合されている。ここで、磁石環は極車輪の形態を有しており、それは特に放射状の磁化物を有するプラスチック成型の環形の硬質フェライトである。18の極対(Polpaaren )を有する極車輪が、とりわけ有利であることが明らかとなっている。
【0049】
極車輪104は、本質的にT字の断面を有しており、そのT字の横梁部は、シリンダ101の対応する空所に係合しており、詳しくは、T字の縦梁部が、ケーシング106の方向にシリンダ101の表面にまで延びている。極車輪104は、磁化できない材料、例えばオーステナイト(austenitischen)材料あるいはアルミニウムでできた硬質リング105を用いて、シリンダ101の空所内への挿入の後で、保持される。
【0050】
ケーシング106の空所には、磁場検出器103がホール(効果)センサの形態で設けられている。ホールセンサは、特に、二極作動のホールセンサICであり、デジタル出力信号を出す。極車輪104が設けられたシリンダ101の外側とホールセンサ103との間には、深鍋部の形態の第2の部材が存在する。当該部材は、磁化できない材料、特に、オーステナイト材料で構成されている。これにより、回転するシリンダ101の回転数が、ホールセンサ103によって、第2の部材102を貫いて測定され得る。
【0051】
極車輪104とセンサ103との間の例えば6mmという作動間隔と、18の極対を有する極車輪104との場合、人は+/−12mTの6mm間隔の最大の磁流密度を保持する。
【0052】
本発明により構成されたこの種の構造は、−40から+150℃までの温度領域に適しており、回転する第1の部材101すなわちシリンダの回転数を高精度で測定する。18の極対を有するプラスチック成型の環形の硬質フェライト磁石の形態の極車輪は、最小の製造経費及び高い組立確実性で、角度方向及び放射方向の充填に関して、十分に正確に配置可能な磁場をもたらす。これにより、この種の極車輪は、大量生産に適している。
【0053】
T字断面を有する極車輪は、シリンダの空所内での案内及び支持の両方を可能にすると共に、それによって運転中発生する高い遠心力に抵抗する。極車輪の組立は、簡単で経過確実(prozessicher)である。それは、調節過程も測定過程(Einmessvorgang)も必要でない。
【0054】
ある構成では、磁石環は、保護環が貼付けられている。
【0055】
極車輪がそれによってシリンダ内に保持される取付具は、簡単なスナップホックが設けられ得る。それによって、保護環の最適の支持及び発生する遠心力についての軸の保護が達成される。
【0056】
さらなる構成において、零バックラッシュ(Spielfreiheit )を保証するために、保護環は、シリンダで押し当てられている(verstemmt )。これは、もし高いモータ振動が発生するなら必要である。
【符号の説明】
【0057】
1 構造部品
1a 前面
1b 第1円筒面
1c 第2円筒面
1d 平坦面
2 保持リング
2a 前方側平坦面
2b 後方側平坦面
2c 内径部
3 第1工具(パンチ)
3a 刃先
3b くさび面
4 切欠部
4a 側面/当接面
4b 側面/当接面
4c 底面
5 対応係合要素(第一工程後)
5a 接触面(対応係合面)
5b 接触面(対応係合面)
5’ 対応係合要素(第二工程後)
6 第二工具(押圧プレス工具)
6a 平坦面
6b スタンプ要素(くさび状エッジ部)
a 回転軸
A 軸方向
R 径方向
U 周方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持リング(2)を構造部品(1)上に当該構造部品(1)に対して回転しないように固定するための構造であって、
保持リング(2)は、その周上に、切欠部(4)を有しており、
構造部品(1)は、径方向のかしめによって製造可能な、遊びなく切欠部(4)に係合する対応係合要素(5、5’)を有している
ことを特徴とする構造。
【請求項2】
切欠部(4)は、周方向(U)を横切って延びる側面(4a、4b)を有しており、
それらの上に、径方向にかしめられた対応係合要素(5、5’)の材料が当接している
ことを特徴とする請求項1に記載の構造。
【請求項3】
保持リングは、板状ディスク(2)として形成されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の構造。
【請求項4】
切欠部(4)は、板状ディスク(2)から打ち抜きによって形成されている
ことを特徴とする請求項3に記載の構造。
【請求項5】
構造部品(1)は、第1円筒面(1b)と第2円筒面(1c)とを有しており、
第1円筒面(1b)は、平坦面(1d)を介して、第2円筒面(1c)に移行しており、
保持リング(2)は、平坦面(1d)に当接している
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の構造。
【請求項6】
保持リング(2)は、第1円筒面(1b)によって、構造部品(1)に対する中心合わせがされている
ことを特徴とする請求項5に記載の構造。
【請求項7】
対応係合要素(5’)は、それぞれ、少なくとも一つの、好適にはくさび状に形成された、ピーク線(7a、8a)を有するスタンプ部(7、8)を有しており、
ピーク線(7a、8a)は、本質的に、前記側面(4a、4b)に平行に延びている
ことを特徴とする請求項2乃至6のいずれかに記載の構造。
【請求項8】
対応係合要素(5’)は、保持リング(2)の前方面(2a)と接触して係止している
ことを特徴とする請求項7に記載の構造。
【請求項9】
保持リング(2)は、磁石リングを有しており、非接触の回転数測定のための装置のインデックス付きホイールとして形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の構造。
【請求項10】
構造部品(1)は、自動車の自動変速機の遊星歯車キャリヤとして構成されている
ことを特徴とする請求項9に記載の構造。
【請求項11】
最初に、構成部品(1)と保持リング(2)とが接合部(Fuegen)によって中心合わせされ、
第一成形工程において、対応係合要素(5)が、材料の径方向(R)のかしめによって形成される
ことを特徴とする、請求項1乃至10のいずれかに記載の構造、を製造するための方法。
【請求項12】
第二成形工程において、対応係合要素(5)は、平坦化されて、周方向(U)にかしめられる
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
材料は、当該材料が切欠部(4)の側面(4a、4b)及び底面(4c)に当接するまで、変形される
ことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
刃先(3a)とくさび面(3b)とを有する、くさび形に形成されたスタンパー(3)
を特徴とする、請求項11に記載の方法、を実施するための工具。
【請求項15】
そこから少なくとも一つの、好適には二つの、くさび形のスタンプ部(6b)、特には二つのくさび状エッジ部(6b)、が突出している平坦面(6a)を有する押圧スタンパー(6)
を特徴とする、請求項12または13に記載の方法、を実施するための工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−73061(P2011−73061A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222392(P2010−222392)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(592179300)ツェットエフ、フリードリッヒスハーフェン、アクチエンゲゼルシャフト (56)
【氏名又は名称原語表記】ZF FRIEDRICHSHAFEN AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】