説明

保持具及び切断工具

【課題】作業員が一人でも線状対象物を安全に切断できる保持具及び切断工具を提供する。
【解決手段】一対の切断刃111、111間に挿入された線状対象物Xを切断刃を閉じることにより切断する工具の工具本体に、各切断刃111により切断される線状対象物Xの切断部位の両側を保持する一対の保持手段22、22を有する保持具2を設ける。この各保持手段22は、線材Xを挟圧する一対の挟圧体221、222と各挟圧体の相互間の位置を調整する位置調整手段223からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の切断刃を備える工具が線状対象物を切断する際に、線状対象物を保持するための保持具に関する。また、本発明は、一対の切断刃を備える切断工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の切断刃を有する工具(従来における「切断工具」であって、本発明に係る「切断工具」と区別すべく、本願においては単に「工具」という)として、線材、電線、棒鋼、硬銅線、より線といった線状対象物を切断するボルトクリッパが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
かかるボトルクリッパにおいては、把持部を両手で開くことにより、切断刃が開き、把持部を両手で閉じることにより、切断刃が閉じる。したがって、把持部を開閉することにより、切断刃が開閉するため、開いた切断刃間に線状対象物を挿入し、その後、切断刃を閉じることにより、線状対象物を切断することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−38615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、架設される線状対象物には、張力が働いているため、作業員がボトルクリッパにて一人で当該線状対象物を切断する場合、線状対象物が切断直後に跳ね返るという危険を有する。したがって、当該危険を回避するため、線状対象物を切断する際には、一人の作業員がボトルグリッパを操作して線状対象物を切断し、もう一人の別の作業員が線状対象物を保持するという、煩雑な作業を行っていた。
【0006】
よって、本発明は、かかる事情に鑑み、作業員が一人でも線状対象物を安全に切断できる保持具及び切断工具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る保持具は、一対の切断刃を備え、開かれた切断刃間に挿入された線状対象物を、切断刃を閉じることにより切断する工具に、装着される保持具であって、切断刃が切断する線状対象物の部位における両側の部位を保持する一対の保持手段を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る保持具によれば、線状対象物を切断する工具に装着され、一対の切断刃が切断する線状対象物の部位における両側の部位を、一対の保持手段が保持する。これにより、一対の保持手段が線状対象物を保持した状態にて、工具が、切断刃を閉じることにより、開かれた切断刃間に挿入された線状対象物を切断できる。
【0009】
また、本発明に係る保持具においては、各保持手段は、線状対象物を挟圧する一対の挟圧部を備え、一対の挟圧部のうち少なくとも何れか一方は、線状対象物を収容すべく凹状に形成されると共に、収容する線状対象物を案内して位置決めすべくテーパ状に形成されてもよい。
【0010】
かかる保持具によれば、一対の挟圧部が線状対象物を挟圧するため、各保持手段が線状対象物を保持できる。そして、一対の挟圧部のうち少なくとも何れか一方は、凹状に形成されるため、線状対象物を収容できると共に、テーパ状に形成されるため、収容する線状対象物を案内して位置決めすることができる。したがって、線状対象物の軸心を一対の切断刃間の中心に一致させるのを容易にできる。
【0011】
また、本発明に係る保持具においては、各保持手段は、線状対象物を挟圧する挟圧部を有する挟圧体を一対備え、一対の挟圧体のうち少なくとも何れか一方は、線状対象物が開かれた切断刃間に挿入される際に、線状対象物と干渉するのを防止すべく、切断刃間よりも外方である待機位置と、切断刃間に挿入された線状対象物が切断刃間から抜け出すのを防止すべく、切断刃間に挿入された線状対象物を係止可能な係止位置とに切り替え可能に構成されてもよい。
【0012】
かかる保持具によれば、挟圧部を有する一対の挟圧体のうち少なくとも何れか一方は、開かれた切断刃間よりも外方である待機位置と、切断刃間に挿入された線状対象物を係止可能な係止位置とに切り替えることができる。これにより、当該挟圧部は、線状対象物が開かれた切断刃間に挿入される際に、線状対象物と干渉するのを防止することができると共に、切断刃間に挿入された線状対象物が切断刃間から抜け出すのを防止することができる。したがって、線状対象物を切断する作業の効率を向上させることができる。
【0013】
また、本発明に係る保持具においては、各保持手段は、線状対象物を挟圧する一対の挟圧部を備え、一対の挟圧部は、一対の切断刃が閉じるように互いに接近するのに伴い、互いに接近するように構成されてもよい。
【0014】
かかる保持具によれば、一対の切断刃が閉じるように互いに接近するのに伴い、各保持手段における一対の挟圧部が互いに接近する。これにより、一対の挟圧部が線状対象物を挟圧できるため、切断刃が閉じる動作に連動して、線状対象物を挟圧することができる。
【0015】
また、本発明に係る保持具においては、各保持手段は、線状対象物を挟圧する挟圧部を有する一対の挟圧体を備え、一対の挟圧体は、切断刃を有する一対の刃部材が切断刃を閉じるように変位する際に、刃部材に当接されることにより、一対の挟圧部を接近させるように変位してもよい。
【0016】
かかる保持具によれば、切断刃を有する一対の刃部材が切断刃を閉じるように変位する際に、各保持手段における一対の挟圧体が刃部材に当接される。これにより、一対の挟圧体が一対の挟圧部を接近させるように変位するため、一対の挟圧体が挟圧部にて線状対象物を挟圧することができる。したがって、切断刃を閉じる際の刃部材の動作に連動して、線状対象物を挟圧することができる。
【0017】
また、本発明に係る保持具においては、一対の挟圧体は、一対の挟圧部が離反する方向に変位するのを規制される状態と、当該規制を解除される状態とに切り替え可能に構成されてもよい。
【0018】
かかる保持具によれば、一対の挟圧体は、一対の挟圧部が離反する方向に変位するのを規制される状態と、当該規制を解除される状態とに切り替え可能に構成される。これにより、線状対象物を切断する際に、一対の挟圧部が離反する方向に変位するのを規制することで、切断刃の開閉に関わらず、一対の挟圧部にて線状対象物を挟圧し続けることができ、また、線状対象物を切断した後に、当該規制を解除するで、一対の挟圧部による線状対象物の挟圧を解除して、線状対象物を取り外すことができる。
【0019】
また、本発明に係る切断工具は、一対の切断刃を備え、開かれた切断刃間に挿入された線状対象物を、切断刃を閉じることにより切断する切断工具において、切断刃が切断する線状対象物の部位における両側の部位を保持する一対の保持手段を備えることを特徴とする。
【0020】
本発明に係る切断工具によれば、一対の切断刃が切断する線状対象物の部位における両側の部位を、一対の保持手段が保持する。これにより、一対の保持手段が線状対象物を保持した状態にて、開かれた切断刃間に挿入された線状対象物を、切断刃を閉じることにより切断できる。
【発明の効果】
【0021】
以上の如く、本発明に係る保持具及び切断工具によれば、一対の保持手段が線状対象物を保持した状態にて、一対の切断刃が線状対象物を切断できるため、作業員が一人でも線状対象物を安全に切断できるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る切断工具の工具本体の全体図であって、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図を示す。
【図2】同実施形態に係る切断工具の保持具の全体図であって、底面側からの斜視図を示す。
【図3】同実施形態に係る切断工具の保持具の全体図であって、正面図を示す。
【図4】同実施形態に係る切断工具の保持具の全体図であって、平面図を示す。
【図5】同実施形態に係る切断工具の保持具の全体図であって、側面図を示す。
【図6】同実施形態に係る切断工具の切断方法を説明する要部概要図であって、(a)及び(b)はそれぞれ正面図を示す。
【図7】同実施形態に係る切断工具の切断方法を説明する要部概要図であって、(a)及び(b)はそれぞれ正面図を示す。
【図8】本発明の他の実施形態に係る切断工具の保持具の全体図であって、(a)は切断刃が開いている状態の平面図、(b)は切断刃が閉じている状態の平面図を示す。
【図9】同実施形態に係る切断工具の保持具の全体図であって、(a)は切断刃が閉じている状態の平面図、(b)は切断刃が閉じている状態の側面図を示す。
【図10】同実施形態に係る切断工具の切断方法を説明する要部概要図であって、(a)及び(b)はそれぞれ正面図を示す。
【図11】同実施形態に係る切断工具の切断方法を説明する要部概要図であって、(a)及び(b)はそれぞれ正面図を示す。
【図12】同実施形態に係る切断工具の切断方法を説明する要部概要図であって、(a)及び(b)はそれぞれ正面図を示す。
【図13】本発明のさらに他の実施形態に係る切断工具の要部概要図であって、(a)は一方の挟圧体が待機位置に位置している状態の正面図、(b)は一方の挟圧体が係止位置に位置している状態の正面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る保持具及び切断工具における第1の実施形態について、図1〜図7を参酌して説明する。
【0024】
本実施形態に係る切断工具は、図1〜図5に示すように、一対の切断刃111,111を有する工具本体(本発明に係る保持具に装着される「工具」でもあって、本発明に係る「切断工具」の構成部品である場合には、「工具本体」という)1と、工具本体1に着脱可能に構成され、工具本体1が線状対象物(以下、単に「線材」という)Xを切断する際に、線材Xを保持する保持具2とを備える。
【0025】
工具本体1は、図1に示すように、先端部で且つ内方に切断刃111が設けられる板状の刃部材11,11を一対備える。そして、工具本体1は、切断刃111,111を操作すべく、基端部が刃部材11の基端部に枢着され、且つ、先端部に、作業者が把持するための把持部121,121を有する把持部材12,12を一対備える(なお、図1(c)においては、把持部材12,12を省略して図示している)。
【0026】
また、工具本体1は、各刃部材11の中間部を枢着し、当該部位(支軸部131)の軸心を中心として各刃部材11(各切断刃111)を回動させる支軸体13を備える。これにより、工具本体1は、把持部121,121が開かれることにより、切断刃111,111が開くと共に、把持部121,121が閉じられることにより、切断刃111,111が閉じる。したがって、工具本体1は、切断刃111,111を閉じることにより、開かれた切断刃111,111間に挿入された線材Xを切断できる。
【0027】
保持具2は、図2〜図5に示すように、工具本体1に取り付けられる保持具本体21と、工具本体1が線材Xを切断する際に線材Xを保持すべく、一対の切断刃111,111が切断する線材Xの部位の両側の部位を保持する一対の保持手段22,22とを備える。そして、保持具2は、線材Xが平板状の刃部材11,11(切断刃111,111)と直交し、且つ、線材Xが各切断刃111の基端側に位置するように、線材Xを保持する。
【0028】
保持具本体21は、工具本体1の支軸体13を収容可能な収容部211と、工具本体1に固定するための固定手段212とを備える。
【0029】
収容部211は、箱状(中空状)で且つ直方体状に形成される。そして、収容部211は、各刃部材11と干渉するのを防止すべく、各刃部材11を外方に突出するための開口部211aと、各把持部材12と干渉するのを防止すべく、各把持部材12を外方に突出するための開口部211bと、支軸体13を内方に挿入するための開口部211cとを備える。
【0030】
固定手段212は、収容部211に設けられる螺子穴と螺合する螺子部材212aを備える。そして、固定手段212は、螺子部材212aが収容部211から内方に突出する量を調整することにより、螺子部材212aと収容部内壁212bとが支軸体13を挟持するように構成される。
【0031】
一対の保持手段22,22は、保持具本体21を挟むように幅方向の両側に配置される。そして、各保持手段22は、線材Xを挟圧する一対の挟圧体221,222と、各挟圧体221,222の相互間の位置を調整する位置調整手段223とを備える。
【0032】
一方の挟圧体(以下、「第1挟圧体」ともいう)221は、他方の挟圧体(以下、「第2挟圧体」もという)222とにより、線材Xを挟圧する挟圧部(以下、「第1挟圧部」ともいう)221aを備える。また、第1挟圧体221は、保持具本体21に対して、相対変位可能に構成される。
【0033】
第1挟圧部221aは、線材Xを収容すべく凹状に形成されると共に、収容する線材Xを案内して位置決めすべく線対称のテーパ状に形成される。具体的には、第1挟圧部221aは、外方に向けて拡がる溝状に形成される。
【0034】
第2挟圧体222は、第1挟圧部221aとにより、線材Xを挟圧する挟圧部(以下、「第2挟圧部」ともいう)222aを備える。また、第2挟圧体222は、保持具本体21に固定される。
【0035】
第2挟圧部222aは、凹状の第1挟圧部221aの内幅寸法よりも、幅寸法が小さい凸状に形成される。そして、第2挟圧部222aは、先端部が切断刃111,111間であって、切断刃111の基端側に位置するように配置される。
【0036】
位置調整手段223は、一端部が第1挟圧体221に固定され且つ他端部が第2挟圧体222に設けられる挿通孔222bに挿通される支柱部材223aと、内周に設けられる(雌)螺子が支柱部材223aの外周に設けられる(雄)螺子と螺合し且つ作業員に操作される操作部材223bとを備える。
【0037】
支柱部材223aは、第2挟圧体222の挿通孔222bが一端部に向けて拡がるように形成されるため、挿通孔222bに挿通した状態にて、第2挟圧体222に対して相対変位できる。具体的には、支柱部材223aは、他端部側を中心に回動するように移動できる。
【0038】
これにより、第1挟圧体221は、開かれた切断刃111,111間に線材Xが挿入される際に、線材Xと干渉するのを防止すべく、切断刃111,111間よりも外方である待機位置と、切断刃111,111間に挿入された線材Xが切断刃111,111間から抜け出すのを防止すべく、一部位が切断刃111,111間に配置され、切断刃111,111間に挿入された線材Xを係止可能な係止位置とに切り替え可能に構成される。
【0039】
具体的には、第1挟圧体221は、線材Xの軸心方向、即ち、板状の刃部材11(切断刃111)と直交する方向において、切断刃111,111間から外れた位置である待機位置と、前記同方向において、一部位が切断刃111,111間に配置される位置で且つ当該一部位及び両切断刃111,111により線材Xを囲い得る位置である係止位置とに移動できる。
【0040】
操作部材223bは、第2挟圧体222の挿通孔222bよりも大きく形成されるため、第2挟圧体222を係止できる。そして、操作部材223bは、支柱部材223aと螺合することにより、両挟圧体221,222間、即ち、両挟圧部221a,222a間の距離を調整できる。
【0041】
本実施形態に係る切断工具の構成については以上の通りであり、次に、本実施形態に係る切断工具にて線材Xを切断する方法について説明する。
【0042】
まず、図6(a)に示すように、開かれた切断刃111,111間に、線材Xを挿入する。このとき、第1挟圧体221が重力により切断刃111,111間よりも外方(下方)である待機位置に位置しているため、切断刃111,111間の中心に沿って(図6(a)のA矢印方向に)、線材Xを挿入しても、第1挟圧体221が線材Xと干渉しない。
【0043】
そして、第1挟圧体221を平板状の刃部材11に沿って(図6(a)のB矢印方向に)回動させる。すると、図6(b)に示すように、第1挟圧体221が各切断刃111の基端側に位置する線材Xを係止可能な係止位置に位置しているため、線材Xが切断刃111,111間から抜け出すのを防止できる。
【0044】
その後、操作部材223bを(図6(b)のC矢印方向に)回転させると、第1挟圧体221が第2挟圧体222に向かって(図6(b)のD矢印方向に)移動する。これにより、線材Xを介在させた状態で離間する両挟圧体221,222間、具体的には、両挟圧部221a,222a間の距離が徐々に小さくなる。
【0045】
さらに、操作部材223bを回転させて締め続けると、凹状で且つテーパ状に形成される第1挟圧部221aが線材Xを案内する。そして、最終的には、図7(a)に示すように、第1挟圧部221aが線材Xを収容すると共に所定位置に位置決めする。このとき、第1挟圧部221aと第2挟圧部222aとが線材Xを挟圧することにより保持している。
【0046】
そして、切断刃111,111が閉じるように(図7(a)のE矢印方向に)、各刃部材11を回動させると、図7(b)に示すように、切断刃111,111間に挿入された線材Xを切断することができる。その後、操作部材223bを反対方向(図7(b)のF方向)に回転させて緩めると、両挟圧部221a,222aによる線材Xの挟圧が解除でき、線材(切断された両方の線材片)Xを保持手段2,2からそれぞれ取り外すことができる。
【0047】
以上より、本実施形態に係る切断工具は、一対の切断刃111,111が切断する線材Xの部位における両側の部位を、一対の保持手段2,2が保持する。これにより、一対の保持手段2,2が線材Xを保持した状態にて、開かれた切断刃111,111間に挿入された線材Xを、切断刃111,111を閉じることにより切断できるため、線材Xを切断する際に、把持部121,121を両手で把持しつつも、一人で線材Xを安全に切断できる。
【0048】
また、本実施形態に係る切断工具は、一対の挟圧部221a,222aが線材Xを挟圧するため、各保持手段2が線材Xを保持できる。そして、第1挟圧部221aは、凹状に形成されるため、線材Xを収容できると共に、テーパ状に形成されるため、収容する線材Xを案内して位置決めすることができる。したがって、線材Xの軸心を両切断刃111,111の中心に一致させるのを容易にできる。
【0049】
また、本実施形態に係る切断工具は、第1挟圧体221が、開かれた切断刃111,111間よりも外方である待機位置と、切断刃111,111間に挿入された線材Xを係止可能な係止位置とに切り替えることができる。
【0050】
これにより、第1挟圧体221は、開かれた切断刃111,111間に線材Xが挿入される際に、線材Xと干渉するのを防止することができると共に、切断刃111,111間に挿入された線材Xが切断刃111,111間から抜け出すのを防止することができる。したがって、線材Xを切断する作業、即ち、保持手段2、2にて線材Xを保持する作業の効率を向上させることができる。
【0051】
次に、本発明に係る切断工具における第2の実施形態について、図8〜図12を参酌して説明する。なお、図8〜図12において、図1〜図7の符号と同一の符号を付した部分は、第1実施形態と同一の構成又は要素を表す。
【0052】
本実施形態に係る切断工具は、図8及び図9に示すように、一対の切断刃111,111を有する工具本体1と、工具本体1に着脱可能に構成され、工具本体1が線材(図8及び図9において図示していない)Xを切断する際に、線材Xを保持する保持具2’とを備える。
【0053】
保持具2’は、工具本体1に装着される保持具本体21と、工具本体1が線材Xを切断する際に線材Xを保持すべく、一対の切断刃111,111が切断する線材Xの部位における両側の部位を保持する一対の保持手段22’,22’とを備える。そして、各保持手段22’は、線材Xを挟圧する挟圧部221a’を有する一対の挟圧体221’,221’を備える。
【0054】
各挟圧体221’は、工具本体1の支軸部131の軸心を中心として回動すべく、保持具本体21に枢着される軸心部221bを備える。また、各挟圧体221’は、刃部材11(切断刃111)が回動するのに伴い回動すべく、刃部材11の外側に当接されて付勢される当接部221cを備える。
【0055】
挟圧部221a’は、弾性を有する。そして、挟圧部221a’は、挟圧する線材Xとの間に比較的大きな摩擦力を発生するように形成される。例えば、挟圧部221a’は、ゴムにより形成される。また、挟圧部221a’は、線材Xを挟圧する面が切断刃111に沿うように、又は、切断刃111から内方に突出するように(開かれた切断刃111,111間に一部位が配置されるように)設けられる。
【0056】
軸心部221bは、一対の切断刃111,111が閉じるように互いに接近するのに伴い、一対の挟圧部221a’、221a’が互いに接近すべく、各挟圧体221’,221’を回動させる。また、軸心部221bは、一対の挟圧部221a’,221a’が離反する方向に、一対の挟圧体221’,221’が変位するのを規制する状態と、一対の挟圧体221’,221’が当該方向に変位できる状態(当該規制を解除する状態)とに切り替え可能に構成される。
【0057】
具体的には、軸心部221bは、挟圧体221’が一方向(一対の挟圧部221a’,221a’が互いに接近する方向)のみに回動すべく、他方向(一対の挟圧部221a’,221a’が互いに離反する方向)に回動するのを規制する規制手段(図示及び採番しない)と、当該規制を解除する解除手段(図示及び採番しない)とを備える。
【0058】
例えば、軸心部221bは、爪部(図示及び採番しなし)と、挟圧体221’に連結されるラック部(図示及び採番しない)とを備え、爪部は、ラック部を掛止可能な状態(位置)と、掛止できない状態(位置)とに切り替え可能に構成される。
【0059】
当接部221cは、挟圧体221’の基体(採番しない)から刃部材11(他方の保持手段2)に向けて突設される。具体的には、当接部221cは、各保持手段2’の同方向に配置される挟圧体221’,221’同士を連結する。そして、当接部221cは、各刃部材11が切断刃111を閉じるように変位する際に、刃部材11に当接されることにより、一対の挟圧部221a’,221a’が接近するように一対の挟圧体221’,221’を回動させる。
【0060】
なお、当接部221cは、挟圧体221’の基体に着脱可能に構成される。そして、当接部221cは、工具本体1が収容部221に収容される際には、工具本体1に干渉するのを防止すべく、挟圧体221’の基体から取り外されており、工具本体1が収容部221に一旦収容された後には、挟圧体221’の基体に取り付けられる。
【0061】
本実施形態に係る切断工具の構成については以上の通りであり、次に、本実施形態に係る切断工具にて線材Xを切断する方法について説明する。
【0062】
まず、図10(a)に示すように、開かれた切断刃111,111間に、線材Xを挿入する。そして、切断刃111,111が閉じるように(図10(a)のG矢印方向に)、各刃部材11を回動させると、各刃部材11の外方が当接部221cに当接しているため、各挟圧体221’が刃部材11と同じ軸心を中心に(図10(a)のH矢印方向に)回動する。
【0063】
したがって、図10(b)に示すように、各挟圧体221’が刃部材11と一体的になって回動することにより、一対の挟圧部221a’,221a’は、互いに接近するため、圧縮して線材Xを挟圧する。
【0064】
ここで、力を入れ直すべく、切断刃111、111を開くように(図10(b)のI矢印方向に)、各刃部材11を回動させても、図11(a)に示すように、各挟圧体221’は、軸心部221b(の規制手段)により回動するのを規制される。これにより、各切断刃111が線材Xから離反するに対して、一対の挟圧部221a’,221a’が線材Xを挟圧し続けているため、線材Xが移動するのを防止できる。
【0065】
そして、再度、切断刃111,111を閉じるように(図11(a)のJ矢印方向に)各刃部材11を回動させると、各刃部材11が当接部221cから離反している際には、各刃部材11のみが回動し、その後、各刃部材11が当接部221cに当接すると、各挟圧体221’が刃部材11と同じ軸心を中心に(図11(a)のK矢印方向に)、一体的となって回動する。これにより、図11(b)に示すように、切断刃11,11が閉じて、切断刃11,11間に挿入された線材Xを切断することができる。
【0066】
その後、切断刃11,11を開くように(図11(b)のL矢印方向に)、各刃部材11を回動させる。このとき、各挟圧体221’が軸心部221b(の規制手段)により回動するのを規制されているため、図12(a)に示すように、一対の挟圧部221a’,221a’が線材Xを挟圧し続けている。
【0067】
そして、軸心部221b(の解除手段)により、当該規制を解除すると、一対の挟圧部221a’,221a’が離反するように(図12(a)のM矢印方向に)、各挟圧体221’が回動する。これにより、図12(b)に示すように、両挟圧部221a’,221a’による線材Xの挟圧が解除でき、線材Xを保持手段2’から取り外すことができる。
【0068】
以上より、本実施形態に係る切断工具は、一対の切断刃111,111が切断する線材Xの部位における両側の部位を、一対の保持手段2’,2’が保持する。これにより、一対の保持手段2’,2’が線材Xを保持した状態にて、開かれた切断刃111,111間に挿入された線材Xを、切断刃111,111を閉じることにより切断できるため、切断する際に両手を使用していても、一人で線材Xを安全に切断できる。
【0069】
また、本実施形態に係る切断工具は、一対の刃部材11,11が切断刃111,111を閉じるように回動する際に、各挟圧体221’が刃部材11に当接される。これにより、各挟圧体221’が刃部材11と一体的に回動するため、一対の切断刃111,111が閉じるように互いに接近するのに伴い、一対の挟圧部221a’,221a’が互いに接近し、その結果、一対の挟圧部221a’,221a’にて線材Xを挟圧できる。
【0070】
したがって、各挟圧体221’が刃部材11と連動して回動することにより、一対の挟圧部221a’,221a’が線材Xを保持することができるため、例えば、一対の切断刃11,11にて線材Xを切断するに当たって、事前に保持手段2’に線材Xを保持させる必要が無く、線材Xを切断するのに伴って線材Xを保持することもできるため、切断作業の効率をさらに向上させることができる。
【0071】
また、本実施形態に係る切断工具は、線材Xを切断する際に、一対の挟圧部221a’,221a’が離反する方向に、各挟圧体221’が変位するのを規制することにより、切断刃111,111の開閉に関わらず、一対の挟圧部221a’,221a’にて線材Xを挟圧し続けることができる。そして、線材Xを切断した後に、当該規制を解除することにより、一対の挟圧部221a’,221a’による線材Xの挟圧を解除して、保持手段2’から線材Xを取り外すことができる。
【0072】
なお、本発明に係る保持具及び切断工具は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。また、上記した複数の実施形態の構成や方法等を任意に採用してもよく(1つの実施形態に係る構成や方法等を他の実施形態に係る構成や方法等に適用してもよく)、さらに、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0073】
例えば、上記実施形態に係る切断工具においては、工具本体1と、工具本体1に着脱可能な保持具2(2’)とを備える場合を説明したが、かかる場合に限られず、工具本体と保持具とが一体である場合、即ち、工具本体と一体になった保持手段を備える場合でもよい。
【0074】
また、上記実施形態に係る切断工具においては、各刃部材11が回動することにより、切断刃111,111を開閉する場合を説明したが、かかる場合に限られず、例えば、各刃部材がスライドすることにより、切断刃を開閉する場合でもよい。
【0075】
また、上記第1実施形態に係る保持具2及び切断工具においては、一方の挟圧部221aのみが凹状で且つテーパ状に形成される場合を説明したが、かかる場合に限られず、一対の挟圧部が双方共に凹状で且つテーパ状に形成される場合でもよい。
【0076】
また、上記第1実施形態に係る保持具2及び切断工具においては、第1挟圧体221が重力により切断刃111,111間よりも外方(下方)である待機位置に位置する場合を説明したが、かかる場合に限られず、第1挟圧体は、待機位置に位置すべく、第2挟圧体又は保持具本体に止着される場合でもよい。
【0077】
例えば、第1挟圧体は、磁力や吸着力等の力により、第2挟圧体や保持具本体に止着される場合でもよい。さらに、例えば、図13に示すように、第1挟圧体221”は、第2挟圧体222”に止着されて待機位置に位置すべく、第2挟圧体222”に設けられる凹状部222cに掛止される凸状部221dを備える場合でもよい。
【0078】
かかる構成によれば、第1挟圧体221”は、図13(a)に示すように、第2挟圧体222”に止着されることにより待機位置に位置し、また、図13(b)に示すように、当該止着を解除することにより係止位置に位置することができる。したがって、切断工具の向きに関係なく、第1挟圧体221”を待機位置の状態で維持することができる。
【0079】
また、上記第2実施形態に係る保持具2’及び切断工具においては、二つの挟圧体221’が共通の当接部221cを備える場合を説明したが、かかる場合に限られず、各挟圧体が個別の当接部をそれぞれ備える場合でもよい。かかる構成によれば、線材(切断された線材片)Xをそれぞれ個別に取り外すことができる。
【符号の説明】
【0080】
1…工具本体(工具)、2…保持具、11…刃部材、111…切断刃、12…把持部材、121…把持部、21…保持具本体、22…保持手段、221…挟圧体、221a…挟圧部、222…挟圧体、222a…挟圧部、X…線状対象物(線材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の切断刃を備え、開かれた切断刃間に挿入された線状対象物を、切断刃を閉じることにより切断する工具に、装着される保持具であって、
切断刃が切断する線状対象物の部位における両側の部位を保持する一対の保持手段を備えることを特徴とする保持具。
【請求項2】
各保持手段は、線状対象物を挟圧する一対の挟圧部を備え、一対の挟圧部のうち少なくとも何れか一方は、線状対象物を収容すべく凹状に形成されると共に、収容する線状対象物を案内して位置決めすべくテーパ状に形成される請求項1に記載の保持具。
【請求項3】
各保持手段は、線状対象物を挟圧する挟圧部を有する一対の挟圧体を備え、一対の挟圧体のうち少なくとも何れか一方は、線状対象物が開かれた切断刃間に挿入される際に、線状対象物と干渉するのを防止すべく、切断刃間よりも外方である待機位置と、切断刃間に挿入された線状対象物が切断刃間から抜け出すのを防止すべく、切断刃間に挿入された線状対象物を係止可能な係止位置とに切り替え可能に構成される請求項1又は2に記載の保持具。
【請求項4】
各保持手段は、線状対象物を挟圧する一対の挟圧部を備え、一対の挟圧部は、一対の切断刃が閉じるように互いに接近するのに伴い、互いに接近するように構成される請求項1に記載の保持具。
【請求項5】
各保持手段は、線状対象物を挟圧する挟圧部を有する一対の挟圧体を備え、一対の挟圧体は、切断刃を有する一対の刃部材が切断刃を閉じるように変位する際に、刃部材に当接されることにより、一対の挟圧部を接近させるように変位する請求項4に記載の保持具。
【請求項6】
一対の挟圧体は、一対の挟圧部が離反する方向に変位するのを規制される状態と、当該規制を解除される状態とに切り替え可能に構成される請求項5に記載の保持具。
【請求項7】
一対の切断刃を備え、開かれた切断刃間に挿入された線状対象物を、切断刃を閉じることにより切断する切断工具において、
切断刃が切断する線状対象物の部位における両側の部位を保持する一対の保持手段を備えることを特徴とする切断工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−194114(P2010−194114A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−42645(P2009−42645)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(503320061)株式会社エネルギア・コミュニケーションズ (92)
【出願人】(591080678)株式会社中電工 (64)
【Fターム(参考)】