説明

保持昇降装置

【課題】容器の全周を目視検査するために、その直径に関わらず容器を安定的に保持し、回転させ、昇降できる保持昇降装置を提供する。
【解決手段】保持昇降装置23は、昇降手段33が昇降部材37を下降させた状態で、開閉手段100が複数のローラ85,87の間を開き、キャリアカップ1に投入された容器7の上部を複数のローラ85,87の間に進入させ、開閉手段100が複数のローラ85,87の間を閉じることにより容器7の上部を複数のローラ85,87の間に挟着し、昇降手段33が昇降部材37を上昇させた状態で、回転駆動手段の駆動ローラの回転に従わせ容器7を回転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を搬送する過程でその視覚的検査を行うための保持昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば注射器のシリンジは、医療用の薬剤を封入される合成樹脂製の容器(物品)である。このようなシリンジを工場内で起立させた姿勢にして搬送するために、上向きの開口部を有するキャリアカップをコンベヤに載せ、このキャリアカップの開口部にシリンジを投入するようにしている。キャリアカップは、シリンジを安定させることに加え、次の理由で不可欠である。
【0003】
即ち、複数のキャリアカップをコンベヤの搬送方向に一列に並べ互いに隣接させれば、これらのキャリアカップに投入されたシリンジをコンベヤに等間隔で配置するのが容易である。また、コンベヤが摩擦係数の比較的小さなプラスチック製のベルトを有する場合、コンベヤの搬送方向を横切る停止バーにキャリアカップを突き当てるだけで、キャリアカップを停止させコンベヤによるシリンジの搬送を中断できる。この間、コンベヤのベルトはキャリアカップに滑り接触するので、停止バーに突き当てられたキャリアカップと、これに後続するキャリアカップをコンベヤのベルト上に溜めておくことができる。
【0004】
従来、シリンジの成形後の傷、変形、又は異物の付着等の不具合の有無について、全数検査を行うために、キャリアカップと共にシリンジを搬送する過程で、シリンジをキャリアカップの上方へ引き上げる試みがある。そして、オペレータが目視でシリンジを検査し、或いはモニターカメラで撮影したシリンジの画像情報に基づきコンピュータがシリンジの不具合の有無を判定する。しかしながら、シリンジの直径はその仕様により固有の大きさであるため、あらゆる仕様のシリンジを機械的に保持するのは容易でなく、またキャリアカップから引き上げられた容器に振れの生じることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−322067号公報
【特許文献2】特開平10−338343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の実情に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、容器の全周を目視検査するために、その直径に関わらず容器を安定的に保持し、回転させ、昇降できる保持昇降装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上向きの開口部を有するキャリアカップに対して、前記開口部に投入され前記開口部の上方に上部を突出させる容器を昇降させる保持昇降装置であって、前記キャリアカップを着脱自在に保持する保持手段と、前記保持手段に保持されるキャリアカップの上方で昇降部材を昇降させる昇降手段と、前記昇降部材から水平方向に延出した回動軸と、前記昇降部材に設けられ、前記回動軸に対してその軸方向に直交する水平方向に隔たる懸架部材と、前記回動軸と前記懸架部材にそれぞれ支持され、相互に対向する複数のローラと、前記ローラを回転させる回転駆動手段と、前記複数のローラのうち前記回動軸に支持されたローラが前記懸架部材に支持されたローラに進退するよう前記回動軸を回動させることにより、前記複数のローラの間を開閉する開閉手段とを備え、前記昇降手段が前記昇降部材を下降させるとき、前記開閉手段が前記複数のローラの間を開き、前記キャリアカップに投入された容器の上部を前記複数のローラの間に進入させ、前記開閉手段が前記複数のローラの間を閉じることにより前記キャリアカップに投入された容器の上部を前記複数のローラの間に挟着し、前記昇降手段が前記昇降部材を上昇させ、前記回転駆動手段によるローラの回転に従わせ容器を回転させることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、前記回動軸に支持されたローラが、前記複数のローラの間に挟着される容器に転がり接触する周縁部を有し、前記ローラの周方向を横切る向きの周縁部の断面が凸形に湾曲していることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、前記回動軸に対してその軸方向に直交する水平方向に隔たり、前記回動軸の軸方向に延びる姿勢で前記昇降部材に設けられたカムシャフトと、前記カムシャフトに接合され、前記カムシャフトから偏心する距離を相互に違える複数の側縁を有するアジャストカムと、前記カムシャフトを支点に前記アジャストカムの回動する方向に割り付けられる配置で、前記アジャストカムに設けられた複数の旋回ストッパーと、前記回動軸と前記アジャストカムとの間で前記回動軸に対して水平方向に進退自在に、前記懸架部材を前記昇降部材に係合する係合手段と、前記ローラに回転力を入力する入力軸に接合された規制アームとを備え、前記アジャストカムが、その複数の側縁のうちから選択される一つの側縁を前記懸架部材に突き当てた姿勢で、前記懸架部材を前記昇降部材に位置決めし、前記複数の旋回ストッパーのうちの一つの旋回ストッパーに、前記入力軸の回転に従い旋回する規制アームが突き当たることにより、前記複数のローラの間に挟着される容器の前記回転駆動手段による回転が停止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る保持昇降装置によれば、開閉手段が複数のローラの間を閉じることにより、キャリアカップの開口部に投入された容器の上部を保持する一方、保持手段がキャリアカップを保持する。続いて、昇降手段が昇降部材を上昇させ、回転駆動手段が挟着手段のローラを回転させる。これにより鉛直軸周りに回転する容器の全周を例えばオペレータが目視で検査し、或いはモニターカメラで撮影した容器の画像情報に基づきコンピュータが容器の不具合の有無を判定することができる。
【0011】
しかも、開閉手段が回動軸を回動させることにより、回動軸に支持されたローラと懸架部材に支持されたローラとの間を開閉するので、これら複数のローラに挟着された容器の直径が所定の寸法よりも大きい場合、回動軸は、これに支持されたローラが懸架部材に支持されたローラから離れる向きに旋回する。或いは、容器の直径が所定の寸法よりも小さい場合、回動軸は、これに支持されたローラが懸架部材に支持されたローラに接近する向きに旋回する。このため、当該保持昇降装置は、容器の固有の直径に関わらず容器を安定に保持することができる。
【0012】
本発明に係る保持昇降装置によれば、回動軸に支持されたローラの周縁部をその周方向を横切る向きの断面が凸形に湾曲する形状としているので、ローラの姿勢が回動軸を支点に傾いても、ローラの周縁部が容器に接触する面積は殆ど減少することがない。このため、挟着手段は、あらゆる直径の容器を安定に保持できるようローラと容器との摩擦力を良好な強さに保つことができる。
【0013】
本発明に係る保持昇降装置によれば、カムシャフトを支点に回動するアジャストカムが、その複数の側縁のうちから選択される一つの側縁を懸架部材に突き当てた姿勢で、懸架部材を昇降部材に位置決めできる。これにより、懸架部材に支持されたローラと回動軸に支持されるローラとの間隔を、これらのローラの間に挟着する容器の直径に照らして調整することができる。このため、当該保持昇降装置は、上記の効果に加え、複数のローラの間隔を調整できる範囲を更に広く設定することができる。
【0014】
また、アジャストカムの旋回ストッパーは、カムシャフトを支点にアジャストカムの回動する方向に割り付けられているので、アジャストカムがその何れか一つの側縁を懸架部材に突き当てた姿勢をとるとき、複数の旋回ストッパーのうちの一つの旋回ストッパーが、入力軸の回転に従い旋回する規制アームに突き当たるよう位置決めされる。このため、当該保持昇降装置によれば、アジャストカムを回動させるだけで、複数のローラの間隔の調整と、回転駆動手段が容器を回転させる角度の調整とを一度に行えるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る保持昇降装置の動作の対象となるキャリアカップ、及び容器の斜視図。
【図2】本発明の実施形態に係る保持昇降装置の動作を説明する概略図。
【図3】本発明の実施形態に係る保持昇降装置を縦列させた例を示す平面図。
【図4】本発明の実施形態に係る保持昇降装置の要部の正面図。
【図5】本発明の実施形態に係る保持昇降装置の使用例を一部破断して示した側面図。
【図6】図4のc−c線断面図。
【図7】(a)は本発明の実施形態に係る保持昇降装置に適用した挟着手段の開放動作を示す正面図、(b)はその挟着動作の一例を示す正面図。
【図8】本発明の実施形態に係る保持昇降装置に適用した挟着手段、及び回転駆動手段の要部の平面図。
【図9】図8のd−d線断面図。
【図10】本発明の実施形態に係る保持昇降装置に適用した挟着手段の挟着動作の他例を示す正面図。
【図11】本発明の実施形態に係る保持昇降装置に適用した回転角度調整手段を昇降部材に取付ける構造を示す斜視図。
【図12】図4のe−e線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に係る保持昇降装置について説明する。図1に示すように、キャリアカップ1は、開口部3を上向きに開放し、溝部5を周面に形成した合成樹脂製の円筒物である。容器7は、フランジ9を有する注射器のシリンジであり、キャリアカップ1の開口部3に投入されたとき、その上部を開口部3の上方へ突出させる。図2に示す検査用搬送装置11は、搬送コンベヤ13と搬送分離装置15と搬出コンベヤ17とを備える。これらの要素が後述の動作を行うことにより、キャリアカップ1と共に容器7を水平方向に搬送する過程で、キャリアカップ1を一定の高さに保持し、キャリアカップ1から容器7を上昇させることができる。
【0017】
搬送コンベヤ13は、プーリー19に巻掛された搬送ベルト21を、サーボモータ等の駆動源によるプーリー19の回転に従わせて走行させるベルトコンベヤである。搬出コンベヤ17は、搬出ベルト22を走行させる行程が搬送分離装置15に対してキャリアカップ1の搬送される向きの下流側である点を除き、搬送コンベヤ13と同様のベルトコンベヤである。
【0018】
図3に示すように、搬送分離装置15は、本発明の実施形態に係る複数の保持昇降装置23を互いに環状に縦列させ、これら複数の保持昇降装置23を走行手段25によって矢印Tの向きに走行させるものである。保持昇降装置23は、図4,5に示すように、支持部材27と挟着手段29と案内手段31と昇降手段33と保持手段35と、後述の回転駆動手段と回転角度調整手段とを備える。
【0019】
特に断らない限り図面は図3〜図5を参照する。図4は、支持部材27、案内手段31、及び昇降手段33の昇降部材37の正面図であり、昇降部材37が昇降する位置を実線と仮想線で表している。図5は、支持部材27、容器7を挟着した挟着手段29、案内手段31、昇降手段33、及びキャリアカップ1を保持した保持手段35の一部を破断した側面図である。また、同図は、挟着手段29、及び昇降部材37が容器7と共に昇降する位置を実線と仮想線で表している。支持部材27は、その正面の形状が略y字形の支柱39をベース滑子41の上面に接合したものである。図3は支柱39の断面を表しており、保持昇降装置23の支柱39よりも上部を省略している。
【0020】
支持部材27のベース滑子41は、矢印Tの向きに案内する走行案内レール等に係合し、走行ローラ45を側方へ突出している。また、隣合うベース滑子41の間に掛け渡された連結ロッド等を介して、ベース滑子41が互いに連結している。走行手段25は、ドラム59の周面に螺旋溝61を形成し、ベース滑子41の走行ローラ45を螺旋溝61に係合させたものである。ドラム59が電動機で回転することにより走行ローラ45が推進され、保持昇降装置23が上記のように走行する。
【0021】
案内手段31は、支持部材27の支柱39の上端に、鉛直方向に延びる一対のガイドポール63を固定し、これらのガイドポール63に2個の昇降滑子65を昇降自在に各々係合したものである。昇降手段33は、2個の昇降滑子65に昇降部材37を固定し、昇降部材37に取付けた昇降ローラ67を、昇降カムレール69に転がり接触させたものである。符号71はベアリングを指している。
【0022】
図6及び図7(a),(b)に示すように、挟着手段29は、回動軸73と懸架部材75と支軸77,79と可動ブラケット81,83と挟着ローラ85,87と開閉手段100とを備える。開閉手段100は、回動ローラ89と図5に示す回動カムレール91と挟着付勢手段111とを備える。図7(a),(b)は、図6の矢印fの向きから見た正面図として、挟着手段29が容器7を解放し、又は挟着する動作を示している。また、同図(a)は、可動ブラケット81が挟着ローラ85を支持する構造を挟着ローラ85の断面として表している。
【0023】
図8,9に示すように、回転駆動手段95は、入力従節97と入力軸99と伝達円板101,103と駆動カムレール105とを備える。図8は挟着手段29の要部の平面図であり、挟着手段29に挟着された容器7の断面を表している。図6〜図11に基づいて、挟着手段29、回転駆動手段95、及び回転角度調整手段102を以下に説明する。
【0024】
挟着手段29の回動軸73は、昇降手段33の昇降部材37に軸受けされている。回動軸73の先端に、その軸方向に直交する方向へ延出する支持板107が接合され、回動軸73の後端に回動従節109が接合されている。回動従節109は、回動ローラ89を先端に取付けている。回動軸73にトーションスプリングから成る挟着付勢手段111が設けられている。図6に示すように、支持板107の下側へ延出するストッパー113が昇降部材37に設けられている。挟着付勢手段111は、回動軸73を図7(a)の矢印gの向きに付勢し、この向きに回動軸73の回動できる限界をストッパー113が規定する。
【0025】
可動ブラケット81は、2個の挟着ローラ85を回転自在に支持し、支軸77を中心として支持板107に回動自在に取付けられている。支軸77に設けたトーションスプリング115は、可動ブラケット81を支持板107に対して図6の矢印hの向きに付勢し、支持板107の下面に設けたストッパー117に可動ブラケット81を押し付けることにより、可動ブラケット81の図6に示す姿勢を保つものである。
【0026】
挟着手段29の支軸79と回転駆動手段95の入力軸99とが、懸架部材75の先端に軸受けされている。ストッパー119と掛片121とが、懸架部材75の上面に設けられている。支軸79は、可動ブラケット83を下端に接合し、支軸79の径方向に延出する旋回爪125を上端に接合している。
【0027】
可動ブラケット83は、2個の挟着ローラ87と2個の駆動ローラ93とを回転自在に支持している。支軸79には、支軸77のトーションスプリング115と同様のものが設けられている。このトーションスプリングは、旋回爪125がストッパー119に押し付けられる向きに支軸77を付勢する。旋回爪125がストッパー119に押し付けられた状態で、可動ブラケット83は図6に示す姿勢を保たれる。また、支軸77,79のそれぞれのトーションスプリング115の弾性力に抗して、可動ブラケット81,83を人手により回動できるので、例えば挟着手段29に挟着された容器7に何らかの不具合のある場合、オペレータは容器7を挟着手段29から容易に取り外すことができる。
【0028】
入力軸99は、そのラジアル方向に延出する規制アーム127を上端に接合し、入力従節97を下端に接合している。入力従節97は、入力ローラ129を先端に取付けている。伝達円板101は入力軸99に固定され、伝達円板103は支軸79に回転自在に取付けられている。入力従節97に後述の回転力が入力されると、この回転力は入力軸99と共に回転する伝達円板101から伝達円板103を介して駆動ローラ93に伝達され、駆動ローラ93を回転させる。図9は回転力の伝達される要素にドットを付している。図示の便宜により2個の駆動ローラ93のうち片方を伝達円板103から離しているが、2個の駆動ローラ93が伝達円板103に転がり接触するのが好ましい。
【0029】
図10に示すように、挟着手段29が所定の寸法よりも直径の大きな容器70を挟着する場合、支持板107は、回動軸73を支点として、支持板107に支持されたローラ85が懸架部材75に支持されたローラ87と駆動ローラ93から離れる向きに旋回する。或いは、容器70の直径が所定の寸法よりも小さい場合、支持板107は、ローラ85がローラ87と駆動ローラ93に接近する向きに旋回する。このため、挟着手段29は、容器の固有の直径に関わらず容器を安定に保持することができる。
【0030】
ローラ85の周縁部は、その周方向を横切る向きの断面が凸形に湾曲するのが好ましく、特に曲率半径が約4mm以上の円弧状に突出する形状であることが好ましい。この場合、図7(b)に示すようにローラ85の周縁部が容器7の周面をこれに直交する向きから押し付けるときに周縁部が容器7に接触する面積に比較して、図10に示すようにローラ85の姿勢が傾いたときにローラ85の周縁部が容器70に接触する面積は略等しくなる。このため、挟着手段29は、あらゆる直径の容器を安定に保持できるようローラ85と容器との摩擦力を良好な強さに保つことができる。ローラ85の材質はシリコンゴムであることが好ましい。
【0031】
図11は、挟着手段29の回動軸73、及び懸架部材75のそれぞれの先端を省略している。回転角度調整手段102を構成する要素の形状、又は配置は寸法外で図示している。昇降部材37は、懸架部材75を挿通させる長方形の貫通孔である係合手段104が形成されており、懸架部材75は回動軸73に対して矢印m,m'で指した水平方向に進退できる。或いは、係合手段104としてスライドレール等を昇降部材37に固定し、このスライドレール等によって懸架部材75の接合されたスライダー等を矢印m,m'の向きに案内しても良い。
【0032】
回転角度調整手段102は、係合手段104と、昇降部材37に軸受けされたカムシャフト106と、カムシャフト106の両端に接合された一対のアジャストカム108,110と、懸架部材75をアジャストカムに押し付ける押圧手段112とを備える。
【0033】
アジャストカム108,110は、カムシャフト106に対して偏心した方形板であり、その四辺のうちの三辺である第1側縁114、第2側縁116、及び第3側縁118からカムシャフト106までのそれぞれ距離がこの順番で短くなる。アジャストカム108は、その外面から突出する第1旋回ストッパー120、第2旋回ストッパー122、及び第3旋回ストッパー124を設けている。押圧手段112は、昇降部材37に固定された掛止部材126と、懸架部材75の上面に設けた掛片128との間に掛け渡された引張コイルスプリングである。
【0034】
アジャストカム108,110を手動で回動させると、懸架部材75から回動軸73までの矢印m,m'方向の距離、言い換えると図6に示す可動ブラケット81,83の間隔を3段階に調整することができる。これは、アジャストカム108,110の第1側縁114、第2側縁116、又は第3側縁118の何れかが懸架部材75に突き当たり、懸架部材75が昇降部材37に位置決めされることによる。
【0035】
第1旋回ストッパー120、第2旋回ストッパー122、及び第3旋回ストッパー124は、第1側縁114、第2側縁116、及び第3側縁118の配置にそれぞれ対応するように、アジャストカム108,110の回動する方向に90°のピッチで割り付けられている。例えば、アジャストカム108,110が第1側縁114を懸架部材75に突き当てる姿勢をとるとき、第1旋回ストッパー120は懸架部材75に隣接し図8に示すストッパー119と同じ高さに位置決めされる。このため、回転駆動手段95の入力軸99の回転は、入力軸99を支点に旋回する規制アーム127がストッパー119に突き当たる位置から、図6に示すように第1旋回ストッパー120に突き当たるまでの範囲で許容される。
【0036】
或いは、アジャストカム108,110の第2側縁116が懸架部材75に突き当てられたとき、第2旋回ストッパー122が上記のように位置決めされ、規制アーム127は第2旋回ストッパー122に突き当たるまでの範囲で旋回できる。第3側縁118が懸架部材75に突き当てられたとき、第3旋回ストッパー124が上記のように位置決めされ、規制アーム127は第3旋回ストッパー124に突き当たるまでの範囲で旋回できる。以下では、第1側縁114が懸架部材75に突き当てられる例を先に述べる。
【0037】
図6に示すように、規制アーム127は掛片131を設けられている。掛片131と懸架部材75の掛片121との間には、図に表れていない引張コイルスプリングが掛け渡されている。この引張コイルスプリングは、入力軸99の不用意な回転を防止するために、規制アーム127をストッパー119、又は第1旋回ストッパー120の片方に押付ける力を発生する。
【0038】
図12に示すように、保持手段35は、開閉ローラ133を基端に設け可動部材135を先端に設けた旋回従節137と、ベース滑子41に旋回従節137を接合する支軸139と、可動部材135に対向しベース滑子41に固定された保持部材141と、開閉カムレール143,145とを備える。旋回従節137とベース滑子41に各々設けられた掛片147,149の間に、引張コイルスプリング151が掛け渡されている。引張コイルスプリング151は、旋回従節137を矢印iの向きに旋回するよう付勢し、可動部材135と保持部材141との間にキャリアカップ1を挟む力を発生させるものである。
【0039】
キャリアカップ1の溝部5に掛止する爪153を可動部材135と保持部材141に各々設けても良い。ストッパー156は、引張コイルスプリング151が旋回従節137を旋回させる限界を規定するものである。開閉カムレール143,145は、搬送分離装置15の筐体の適所に固定されていれば良い。この点は、既述の昇降手段33の昇降カムレール69、開閉手段100の回動カムレール91、及び回転駆動手段95の駆動カムレール105についても同様である。
【0040】
次に保持昇降装置23の動作について説明する。複数の保持昇降装置23が走行手段25により走行する過程で順次に同じ動作をすることにより、検査用搬送装置11は機能するが、以下の説明は一つの保持昇降装置23に注目する。以下の文頭に付した英文字は保持昇降装置23の動作工程を区分する指標である。また、図3の左側から右向きに保持昇降装置23の走行する行程を「往動区間」と記し、右側から左向きに保持昇降装置23の走行する行程を「復動区間」と記す。同図の左側で保持昇降装置23が180度向きを転じる行程を「送り周回区間」と記し、その右側で180度向きを転じる行程を「戻り周回区間」と記す。
【0041】
A:走行手段25を起動させる。保持昇降装置23が送り周回区間を走行する過程で、保持手段35の開閉ローラ133が開閉カムレール143に転がり接触する。開閉カムレール143は、引張コイルスプリング151に抗して、旋回従節137が図12の矢印i'の向きに旋回するように開閉ローラ133を案内する。これにより可動部材135と保持部材141との間隔が広げられる。図8に示すように、規制アーム127は本工程でストッパー119に突き当たる位置にあるとする。
【0042】
B:上記Aの工程と同時に、開閉手段100の回動ローラ89が回動カムレール91に転がり接触する。回動カムレール91は、回動ローラ89を挟着付勢手段111に抗して下方へ案内する。これにより、挟着ローラ85が回動軸73を中心として、図7(a)の矢印g'の向きに回動し、可動ブラケット81,83の間隔が広げられる。
【0043】
C:保持昇降装置23は、送り周回区間から往動区間に達する手前で、搬送コンベヤ13の搬送ベルト21に載せられたキャリアカップ1に接近する。そして、保持昇降装置23が往動区間に達したところで、可動部材135と保持部材141との間にキャリアカップ1が進入し、このキャリアカップ1に投入された容器7の上部が可動ブラケット81,83の内側に進入する。
【0044】
D:保持昇降装置23が往動区間に達し、開閉カムレール143は、旋回従節137が図12の矢印iの向きに旋回するよう開閉ローラ133を案内する。これにより可動部材135が保持部材141に接近し、両者の間にキャリアカップ1が保持される。
【0045】
E:上記Dの工程と同時に、回動ローラ89が回動カムレール91から離脱し、挟着付勢手段111の弾性力で回動ローラ89が上方に復帰する。このとき回動軸73が図7(a)の矢印gの向きに回転するので、挟着ローラ85と挟着ローラ87との間、及び挟着ローラ85と駆動ローラ93との間に容器7の上部が挟まれ、挟着手段29による容器7の挟着が完了する。この後、挟着付勢手段111の弾性力で容器7の挟着が維持される。
【0046】
F:保持昇降装置23が往動区間を走行する過程で、昇降手段33の昇降カムレール69が昇降ローラ67を上方へ案内する。これにより、昇降部材37が挟着手段29に挟着された容器7と共に上昇し、保持手段35に保持されたキャリアカップ1から容器7の全体が露出したところで、昇降部材37の上昇が停止する。また、保持手段35の開閉ローラ133は、本工程で開閉カムレール143から離脱するが、引張コイルスプリング151の弾性力でキャリアカップ1の保持が維持される。
【0047】
G:保持昇降装置23が往動区間を走行する過程、或いは保持昇降装置23が戻り周回区間を通過し復動区間を走行する過程で、図9に示す回転駆動手段95の入力ローラ129が駆動カムレール105に転がり接触する。駆動カムレール105は、図8の矢印jの向きに入力軸99が回転するよう入力ローラ129を案内する。これにより入力軸99に入力される回転力に基づき駆動ローラ93が回転するので、挟着手段29に挟着された容器7が駆動ローラ93の回転に従い鉛直軸周りに回転する。
【0048】
上記Gの工程で、規制アーム127が入力軸99の回転に従い矢印jの向きに入力軸99を支点とする旋回を開始し、第1旋回ストッパー120に突き当たった時点で、入力軸99の回転が停止するのと同時に駆動ローラ93の回転が停止する。この間に容器7が鉛直軸周りに回転する角度が約180度になるように、第1旋回ストッパー120によって規制アーム127の旋回できる角度が規制される。このように回転する容器7の全周を例えばオペレータが目視で検査するようにしても良い。或いは、容器7を撮影するモニターカメラによる容器7の全周の画像情報に基づき、コンピュータが容器7の不具合の有無を判定しても良い。
【0049】
H:保持昇降装置23が復動区間を走行する過程で、昇降手段33の昇降カムレール69が昇降ローラ67を下方へ案内し、挟着手段29に挟着された容器7がキャリアカップ1の開口部3に投入されるまで、昇降部材37を下降させる。続いて、保持手段35の開閉ローラ133が開閉カムレール145に転がり接触し、可動部材135と保持部材141との間隔が広げられる。これにより、保持手段35からキャリアカップ1が解放され、搬出コンベヤ17の搬出ベルト22に受け止められる。
【0050】
I:上記Hの工程と同時に、回動ローラ89が回動カムレール91に転がり接触し、挟着ローラ85と挟着ローラ87との間隔、及び挟着ローラ85と駆動ローラ93との間隔が広げられ、挟着手段29から容器7が解放される。
【0051】
J:保持昇降装置23は、送り周回区間を走行する過程で、搬出コンベヤ17の搬出ベルト22に載せられたキャリアカップ1から離れる一方、キャリアカップ1は、これに投入された容器7と共に搬出コンベヤ17により搬出される。この後、図8の矢印j'の向きに入力軸99が回転するように、図に表していないカム等が入力ローラ129を案内する。これにより、規制アーム127がストッパー119に突き当たる位置に復帰し、保持昇降装置23は上記Aの工程を繰り返すことができる。
【0052】
次に、容器7よりも直径の比較的小さい小型容器を検査する場合の保持昇降装置23の動作について、既述の動作との相違点を述べる。即ち、走行手段25を起動させる前に、アジャストカム108,110を回動させ、その第2側縁116、又は第3側縁118の何れかを懸架部材75に突き当てる。これにより、可動ブラケット81,83の間隔が狭くなるよう懸架部材75を昇降部材37に位置決めすることができる。
【0053】
G:入力軸99と共に矢印jの向きに旋回を開始した規制アーム127が第2旋回ストッパー122、又は第3旋回ストッパー124に突き当たった時点で、小型容器が鉛直軸周りに回転する角度が約180度になる。これは、小型容器の円周長さが容器7よりも短い分、第2旋回ストッパー122、又は第3旋回ストッパー124によって規制アーム127の旋回できる角度が狭くなるよう規制されるためである。
【0054】
以上に述べた保持昇降装置23によれば、カムシャフト106を支点に回動するアジャストカムが、その第1側縁114、第2側縁116、及び第3側縁118のうちから選択される一つの側縁を懸架部材75に突き当てた姿勢で、懸架部材75を昇降部材37に位置決めできる。これにより、支持板107に支持されたローラ85と、懸架部材75に支持されたローラ87、及び駆動ローラ93との間隔を、これら複数のローラの間に挟着する容器7の寸法に照らして容易に設定することができる。
【0055】
尚、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々なる改良、修正、又は変形を加えた態様でも実施することができる。例えば、キャリアカップ1、及び容器7の断面は必ずしも円形でなくて良い。容器7,70の鉛直軸周りに回転する角度が180°に限定されることはない。既述のコイルスプリング、及びトーションスプリングに代えてゴム等の弾性体を適用しても良い。また、アジャストカム108,110の第2側縁116の反対側の側縁を懸架部材75に突き当てた状態で、規制アーム127の旋回できる角度を規制する第4ストッパーを、アジャストカム108に追加しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、容器の用途、材質、又は形状に関わらず、キャリアカップに投入された容器を手早く検査するのに有益な技術である。
【符号の説明】
【0057】
1...キャリアカップ、3...開口部、5...溝部、7,70...容器、9...フランジ、11...検査用搬送装置、13...搬送コンベヤ、15...搬送分離装置、17...搬出コンベヤ、19...プーリー、21...搬送ベルト、22...搬出ベルト、23...保持昇降装置、25...走行手段、27...支持部材、29...挟着手段、31...案内手段、33...昇降手段、35...保持手段、37...昇降部材、39...支柱、41...ベース滑子、45...走行ローラ、59...ドラム、61...螺旋溝、63...ガイドポール、65...昇降滑子、67...昇降ローラ、69...昇降カムレール、71...ベアリング、73...回動軸、75...懸架部材、77,79,139...支軸、81,83...可動ブラケット、85,87...挟着ローラ、89...回動ローラ、91...回動カムレール、93...駆動ローラ、95...回転駆動手段、97...入力従節、99...入力軸、101,103...伝達円板、105...駆動カムレール、107...支持板、109...回動従節、111...挟着付勢手段、115...トーションスプリング、113,117,119,156...ストッパー、121,131,147,149...掛片、125...旋回爪、127...規制アーム、129...入力ローラ、133...開閉ローラ、135...可動部材、137...旋回従節、141...保持部材、143,145...開閉カムレール、151...引張コイルスプリング、153...爪。
【0058】
100...開閉手段、102...回転角度調整手段、104...係合手段、106...カムシャフト、108,110...アジャストカム、112...押圧手段、114...第1側縁、116...第2側縁、118...第3側縁、120...第1旋回ストッパー、122...第2旋回ストッパー、124...第3旋回ストッパー、126...掛止部材、128...掛片。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上向きの開口部を有するキャリアカップに対して、前記開口部に投入され前記開口部の上方に上部を突出させる容器を昇降させる保持昇降装置であって、
前記キャリアカップを着脱自在に保持する保持手段と、
前記保持手段に保持されるキャリアカップの上方で昇降部材を昇降させる昇降手段と、
前記昇降部材から水平方向に延出した回動軸と、
前記昇降部材に設けられ、前記回動軸に対してその軸方向に直交する水平方向に隔たる懸架部材と、
前記回動軸と前記懸架部材にそれぞれ支持され、相互に対向する複数のローラと、
前記ローラを回転させる回転駆動手段と、
前記複数のローラのうち前記回動軸に支持されたローラが前記懸架部材に支持されたローラに進退するよう前記回動軸を回動させることにより、前記複数のローラの間を開閉する開閉手段とを備え、
前記昇降手段が前記昇降部材を下降させるとき、前記開閉手段が前記複数のローラの間を開き、前記キャリアカップに投入された容器の上部を前記複数のローラの間に進入させ、
前記開閉手段が前記複数のローラの間を閉じることにより前記キャリアカップに投入された容器の上部を前記複数のローラの間に挟着し、前記昇降手段が前記昇降部材を上昇させ、前記回転駆動手段によるローラの回転に従わせ容器を回転させることを特徴とする保持昇降装置。
【請求項2】
前記回動軸に支持されたローラが、前記複数のローラの間に挟着される容器に転がり接触する周縁部を有し、前記ローラの周方向を横切る向きの周縁部の断面が凸形に湾曲していることを特徴とする請求項1に記載の保持昇降装置。
【請求項3】
前記回動軸に対してその軸方向に直交する水平方向に隔たり、前記回動軸の軸方向に延びる姿勢で前記昇降部材に設けられたカムシャフトと、
前記カムシャフトに接合され、前記カムシャフトから偏心する距離を相互に違える複数の側縁を有するアジャストカムと、
前記カムシャフトを支点に前記アジャストカムの回動する方向に割り付けられる配置で、前記アジャストカムに設けられた複数の旋回ストッパーと、
前記回動軸と前記アジャストカムとの間で前記回動軸に対して水平方向に進退自在に、前記懸架部材を前記昇降部材に係合する係合手段と、
前記ローラに回転力を入力する入力軸に接合された規制アームとを備え、
前記アジャストカムが、その複数の側縁のうちから選択される一つの側縁を前記懸架部材に突き当てた姿勢で、前記懸架部材を前記昇降部材に位置決めし、前記複数の旋回ストッパーのうちの一つの旋回ストッパーに、前記入力軸の回転に従い旋回する規制アームが突き当たることにより、前記複数のローラの間に挟着される容器の前記回転駆動手段による回転が停止することを特徴とする請求項1に記載の保持昇降装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−236038(P2011−236038A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110504(P2010−110504)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】