説明

保水性セメント組成物及び舗装構造

【課題】夏季の直射日光による路面温度の上昇を抑制するために、舗装体の本体である多孔質硬化体の連続空隙等に充填して用いられる保水性セメント組成物であって、セメントからの六価クロムの溶出の抑制効果を有する保水性セメント組成物を提供する。
【解決手段】セメント及び保水材を含む粉末状の保水性セメント組成物であって、保水性セメント組成物中、アルミナセメントの割合が3〜25質量%、その他のセメントの割合が10〜55質量%であり、かつ、その他のセメント中の白色セメントの割合が70質量%以上である保水性セメント組成物。保水性セメント組成物は、さらに消石灰を含むことが好ましい。保水材の好ましい例は、セピオライトである。保水性セメント組成物は、舗装用ブロック3の連続空隙の充填材、及び目地部4の材料として用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車道、歩道、駐車場等の舗装構造、及び、該舗装構造の表層の形成体である多孔質硬化体の連続空隙内の保水性充填材として用いられる保水性セメント組成物に関し、特に、六価クロムの溶出抑制に優れた保水性セメント組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、セメントと、セピオライト等の保水材と、水等を混合して、未硬化の保水性セメント組成物を調製し、この未硬化の保水性セメント組成物を、連続空隙を有する舗装体の当該連続空隙の中に充填して硬化させて、保水性舗装体を作製する技術が、開発されている。
一例として、連続空隙を有する多孔質硬化体と、該連続空隙内に充填された保水性硬化材とからなる保水性硬化体であって、前記保水性硬化材が、セメント100質量部と、200%以上の保水率を有する繊維状のセピオライト20〜120質量部と、水とを含む混練物を硬化させてなる、1.2N/mm2以上の圧縮強度、及び0.6N/mm2以上の曲げ強度を有する材料であることを特徴とする保水性硬化体が、提案されている(特許文献1)。
【0003】
他の例として、水分若しくは空気のいずれか一方または両方の流通能力を備え、容積百分率で15〜35%の空隙を有する透水性セメントコンクリート等を用いた多孔質成形ブロック等の有孔表層において、保水性を有するとともに透水性を有するシルト系充填材を有孔表層中の空隙に充填したことを特徴とする、シルト系充填材を充填した路面温度の上昇抑制機能を備える舗装体の有孔表層が、提案されている(特許文献2)。この文献には、前記シルト系充填材として、特定のシルト系粉末20〜60重量%と、セメント系の固化材5〜50重量%と、水25〜50重量%とからなる混合物が、記載されている。
【特許文献1】特許第3723178号公報
【特許文献2】特許第3156151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多孔質硬化体の連続空隙内に保水性硬化材を充填してなる従来の保水性硬化体は、降雨や散水によって水を吸収した後、この水分を徐々に放出することによって、夏季の直射日光による路面温度の上昇の抑制効果を発揮することができるものである。
しかし、多孔質硬化体の連続空隙内に充填された保水性硬化材は、表面積の大きなセメント含有物質であるため、当該連続空隙内に浸入した水と接触した時に、セメント中の六価クロムが水中に溶出し、こうして微量の六価クロムを含むことになった水が、多孔質硬化体の外部に流出して、周囲の環境を汚染するという問題を有している。
そこで、本発明は、保水性舗装体の本体である多孔質硬化体の連続空隙内に充填するための保水性セメント組成物であって、六価クロムの溶出の抑制に優れた保水性セメント組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の2種のセメントを特定の割合で含むなどの成分組成を有するセメント組成物によれば、六価クロムの溶出の抑制を高めることができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[9]を提供するものである。
[1] セメント及び保水材を含む粉末状の保水性セメント組成物であって、該保水性セメント組成物中、アルミナセメントの割合が3〜25質量%、その他のセメントの割合が10〜55質量%であり、かつ、上記その他のセメント中、白色セメントの割合が70質量%以上であることを特徴とする保水性セメント組成物。
[2] 上記保水性セメント組成物は、1〜25質量%の割合で消石灰を含む前記[1]に記載の保水性セメント組成物。
[3] 上記保水性セメント組成物中、上記保水材の割合が5〜40質量%である前記[1]又は[2]に記載の保水性セメント組成物。
[4] 上記保水材が、セピオライトである前記[1]〜[3]のいずれかに記載の保水性セメント組成物。
[5] 前記[1]〜[4]のいずれかに記載の保水性セメント組成物、及び、水を含むことを特徴とする保水性セメント組成物。
[6] 多数の連続空隙を有する舗装用ブロック本体の当該連続空隙の中に、前記[5]に記載の保水性セメント組成物からなる保水性充填材を充填してなることを特徴とする舗装用ブロック。
[7] 水平方向に複数敷設された前記[6]に記載の舗装用ブロックと、該舗装用ブロックの相互間の空隙に目地材を充填してなる目地部と、上記舗装用ブロック及び上記目地部の下方に位置する砂層とを含むことを特徴とする舗装構造。
[8] 上記目地材が、上記保水性セメント組成物と同様の保水性セメント組成物を含む前記[7]に記載の舗装構造。
[9] 多数の連続空隙を有する現場打ちされた多孔質硬化体の当該連続空隙の中に、前記[5]に記載の保水性セメント組成物からなる保水性充填材を充填してなる表層を含むことを特徴とする舗装構造。
【発明の効果】
【0006】
本発明の保水性セメント組成物は、六価クロムの溶出の抑制に優れており、保水性舗装体の本体である多孔質硬化体の連続空隙内に充填するための保水性充填材として用いた場合に、有害な六価クロムの溶出を抑制しつつ、夏季の直射日光による路面温度の上昇の抑制効果を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の粉末状の保水性セメント組成物は、セメント、保水材、及び必要に応じて配合される他の材料を含むものである。
セメントとしては、アルミナセメント、白色セメント、及び必要に応じて配合される他のセメントが用いられる。
本発明においては、アルミナセメント及び白色セメントを下記の配合量で用いているので、アルミナセメントと白色セメントのいずれか一方のみを用いる場合と比べて、格段に優れた六価クロムの溶出の抑制効果を得ることができる。なお、アルミナセメントは、初期強度の発現性に優れている。白色セメントは、材齢3時間以降の強度の発現性に優れている。
粉末状の保水性セメント組成物中のアルミナセメントの割合は、3〜25質量%、好ましくは4〜20質量%、より好ましくは5〜15質量%である。該割合が3質量%未満では、六価クロムの溶出の抑制効果が低下する。該割合が25質量%を超えると、材料のコストが高くなる。
【0008】
粉末状の保水性セメント組成物中のアルミナセメント以外のセメントの割合は、10〜55質量%、好ましくは15〜50質量%、より好ましくは20〜50質量%である。該割合が10質量%未満では、粉末状の保水性セメント組成物中のセメントの全量の割合が小さくなり、保水性充填材としての使用時に、硬化後の付着性及び機械的強度が小さくなる。該割合が55質量%を超えると、保水材の量が小さくなって、十分な保水性が得られず、路面の温度上昇の抑制効果が不十分となることがある。
アルミナセメント以外のセメントの全量(100質量%)中の白色セメントの割合は、70質量%以上、好ましくは75質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。該割合が70質量%未満では、六価クロムの溶出の抑制効果が低下する。
【0009】
本発明において、アルミナセメント及び白色セメント以外に用いうるセメントとしては、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメントや、超速硬セメントや、高炉セメント、フライアッシュセメント等の混合セメント等が挙げられる。
中でも、超速硬セメントは、舗装用ブロック等の舗装体を効率良く作製することができる点で好ましく用いられる。
本発明において、粉末状の保水性セメント組成物中のセメントの全量の割合は、好ましくは20〜65質量%、より好ましくは25〜60質量%である。該割合が20質量%未満では、舗装用ブロック本体の連続空隙の内部における硬化後の保水性セメント組成物の付着性及び機械的強度が小さくなる。該割合が65質量%を超えると、保水材の量が小さくなって、十分な保水性が得られず、路面の温度上昇の抑制効果が不十分となることがある。
【0010】
保水材としては、通常、無機系保水材が用いられる。無機系保水材としては、例えば、セピオライト、ゼオライト等が挙げられる。中でも、セピオライトは、優れた吸水性および保水性を有することから、好ましく用いられる。
なお、セピオライトは、ホルマイト系粘土鉱物の一種であり、乾燥固結性(水で練って乾燥すると固まる性質)を有するとともに、内部に微細な連続空隙を有するものである。セピオライトの主成分は、含水マグネシウムシリケート(化学式:Mg4Si6O15(OH)2・6H2O)である。
【0011】
セピオライトの形態としては、次の理由により、繊維状のものが好ましい。
第一に、繊維状のセピオライトを含む保水性セメント組成物は、水と混練した状態においてチキソトロピー性(揺変性)を有するため、優れた流動性(施工作業の容易性)、材料分離抵抗性(ブリーディングの防止)、および付着性(施工後の連続空隙内での定着性)を示す。ここで、チキソトロピー性(揺変性)とは、剪断抵抗力を大きくすると粘度が小さくなり、逆に、剪断抵抗力を小さくすると粘度が大きくなる性質をいう。
第二に、繊維状のセピオライトの内部の結晶構造が、蜂の巣のようなチャンネル構造になっており、このチャンネル構造中の多数の細長い細孔が、高い吸水力および保水力を発揮するため、繊維状のセピオライトを含む保水性セメント組成物は、吸水性および保水性に優れる。
第三に、繊維状のセピオライトが吸水しても、当該セピオライトを含む保水性セメント組成物の膨張率が小さいことから、舗装用ブロック本体等の多孔質硬化体の連続空隙内で保水性セメント組成物が膨張して応力が発生したり、透水性が低下するおそれが少なく、多孔質硬化体の連続空隙内に保水性セメント組成物を充填して硬化させてなる舗装体の耐久性等を向上させることができる。
【0012】
繊維状のセピオライトを調製する方法は、次のとおりである。
まず、天然鉱物であるセピオライト原石を粗砕機で粉砕する。
次いで、粉砕したセピオライトを微粉砕機で粉砕し解繊する。ここで、微粉砕機の種類としては、例えば、レイモンドミル、竪型ローラミル、ハンマーミル、ボールミル等が挙げられる。中でも、レイモンドミル、竪型ローラミルは、セピオライトが過度に粉砕されることなく良好に解繊され、大きな保水性を容易に得られる点で好ましく用いられる。これら微粉砕機による粉砕方法に代えて、水中で長時間かけて解繊する方法を採ることもできる。水中で解繊する方法は、具体的には、攪拌羽根付き容器を用いて、比較的低濃度スラリーとして、長時間攪拌処理を施して、解繊を行なう方法である。
解繊後、必要に応じて、水簸、篩い分け、および分級の操作のいずれかを単独でまたはこれらの2つ以上の操作の組み合わせによって、繊維形状を有するものの純度を高めるような処理を行なえば、目的とする繊維状のセピオライトが得られる。
【0013】
繊維状のセピオライトの保水率は、好ましくは200質量%以上、より好ましくは250質量%以上である。
ここで、保水率とは、一定量のセピオライトを秤量し、大型濾紙上に載置した後、セピオライトがブリーディングを発生し始める時点まで水を加えて、その時点における質量の増加量を測定した場合において、この増加量(セピオライトに保持された水の質量)を、当初のセピオライトの質量で除することによって得られる値をいう。なお、水を加える際、濾紙上に挟持する形でセピオライトを支持し、ブリーディングによって発生した水は、一定の圧力を加えて、保持の不完全な水とともに濾紙に沁み込ませることによって除去する。
【0014】
繊維状のセピオライトの長さ(繊維長)は、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上である。該繊維長の上限は、好ましくは1,000μm以下、より好ましくは200μm以下である。該繊維長が1μm未満では、吸水時の粘性が低下するとともに保水性能が低下する。該繊維長が1,000μmを超えると、他の材料との混合が不均一となり、保水性セメント組成物が硬化不良を生じる恐れがある。
繊維状のセピオライトを10質量%のスラリーとし、その粘度をB型粘度計で測定すると、ロータが回転し始めて3回転目の粘度は、1,500cps(センチポイズ)以上である。このように1,500cps以上の粘度を有するスラリーは、保水性能が高いことを意味する。
【0015】
本発明の粉末状の保水性セメント組成物中の保水材(例えば、セピオライト)の割合は、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜35質量%である。該割合が5質量%未満では、十分な保水性が得られず、路面の温度上昇の抑制効果が不十分となることがある。該割合が40質量%を超えると、セメント等の他の材料の質量割合が小さくなり、舗装用ブロック本体の連続空隙の内部における硬化後の保水性セメント組成物の付着性及び機械的強度が小さくなることがある。
【0016】
本発明の粉末状の保水性セメント組成物は、さらに消石灰(Ca(OH)2)を含むことが好ましい。消石灰を含むことによって、六価クロムの溶出抑制効果をさらに向上させることができ、また、保水性セメント組成物が固化する際の初期強度の発現を促進することができる。
粉末状の保水性セメント組成物中の消石灰の割合は、好ましくは1〜25質量%、より好ましくは3〜20質量%、特に好ましくは5〜18質量%である。該割合が1質量%未満では、前記の効果を十分に得ることができない。該割合が25質量%を超えると、セメントや保水材の割合が小さくなり、それに伴う前記の欠点が生じることがある。
【0017】
本発明の粉末状の保水性セメント組成物を構成する他の配合可能な材料として、無機質微粒子、凝結遅延剤、減水剤等が挙げられる。
無機質微粒子としては、例えば、炭酸カルシウム、無水石膏、シリカフューム、シリカダスト、フライアッシュ、高炉スラグ等が挙げられる。
炭酸カルシウムは、保水材の保水性を損なわずに固体材料の体積を増量しうる点で、好ましく用いられる。無水石膏は、材齢1日における強度発現性の向上の観点から、好ましく用いられる。
粉末状の保水性セメント組成物中の無機質微粒子の割合(2種以上を併用する場合は合計量の割合)は、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。
凝結遅延剤としては、例えば、オキシカルボン酸系、リグニンスルホン酸系、芳香族スルホン酸系等の凝結遅延剤が挙げられる。凝結遅延剤の化合物名としては、例えば、クエン酸、酒石酸等が挙げられる。
粉末状の保水性セメント組成物中の硬化遅延剤の割合は、通常、0〜2.5質量%である。
減水剤(粉末状のもの)としては、例えば、リグニン系、ナフタレンスルホン酸系、メラミン系、ポリカルボン酸系等の減水剤、AE減水剤、高性能減水剤または高性能AE減水剤が挙げられる。
粉末状の保水性セメント組成物中の減水剤の割合は、減水剤の種類によっても異なるが、通常、セメント100質量部に対して、0.1〜9質量部である。
なお、減水剤の形態は、粉末状に限らず、液状でもよい。ただし、液状の減水剤は、粉末状の保水性セメント組成物の材料ではなく、保水性充填材(ペースト)の調製時に、水と共に粉末状の保水性セメント組成物と混合可能な材料として用いられる。液状の減水剤の使用量は、固形分換算で、前記の粉末状の減水剤の使用量と同じである。
【0018】
保水性充填材を調製する際の水の量は、粉末状の保水性セメント組成物100質量部に対して、好ましくは150質量部以上、より好ましくは180質量部以上である。該量が150質量部未満では、保水性充填材の流動性が小さくなり、多孔質硬化体の連続空隙内に保水性充填材を充填する作業が困難になるなどの不都合がある。
なお、該配合量を180質量部以上に定めることによって、多孔質硬化体の連続空隙内への保水性充填材の充填率(体積割合)をほぼ100%にすることができる。該量が180質量部未満の場合には、多孔質硬化体の連続空隙内への保水性充填材の充填率が低下する傾向がある。例えば、該充填率は、水の量を150質量部未満にすると、70%程度にまで低下することがある。
水の量の上限値は、粉末状の保水性セメント組成物100質量部に対して、好ましくは500質量部以下、より好ましくは400質量部以下、特に好ましくは300質量部以下である。該値が500質量部を超えると、多孔質硬化体の連続空隙の内部における硬化後の保水性セメント組成物の付着性及び機械的強度が小さくなる。
【0019】
本発明の粉末状の保水性セメント組成物は、水および必要に応じて配合される他の材料(例えば、液状の減水剤等)と共に混練されて、多孔質硬化体の連続空隙等に充填するための保水性充填材となる。
保水性充填材を調製するには、二軸練りミキサ、パンタイプミキサ、揺動型ミキサ等のミキサに、粉末状の保水性セメント組成物を構成する上述の各材料、及び、水を投入して混練すればよい。
この際、各材料の投入方法としては、セメント(アルミナセメント、白色セメント、及び、他のセメント)、保水材(例えば、セピオライト)、水、及び必要に応じて配合される他の材料を一括して投入する方法や、水以外の材料(具体的には、セメント、保水材、及び必要に応じて配合される他の固体材料)を予め混合してプレミックス材を調製した後、このプレミックス材を、水及び必要に応じて配合される他の液体材料と共にミキサに投入する方法等が挙げられる。
【0020】
多孔質硬化体の連続空隙内に、保水性充填材を充填する方法としては、例えば、圧力を加えて圧入する方法や、重力を利用して流し込む方法等が挙げられる。保水性充填材の充填、及びその後の硬化は、常温で行うことができる。
硬化前の保水性充填材の流動性は、土木学会規準「プレパックドコンクリートの注入モルタルの流動性試験方法(Pロート法)」に準拠して測定されるフロー値で、好ましくは11秒未満である。該フロー値が11秒以上では、多孔質硬化体の連続空隙内に保水性充填材を充填することが困難となる。
硬化後の保水性充填材(保水性セメント組成物)の圧縮強度は、好ましくは0.5N/mm以上である。圧縮強度が0.5N/mm未満では、水中で崩壊する恐れがある。
硬化後の保水性充填材の曲げ強度は、好ましくは0.1N/mm以上である。曲げ強度が0.1N/mm未満では、水中で崩壊する恐れがある。
硬化後の保水性充填材の吸水率は、好ましくは40体積%以上である。吸水率が40体積%未満では、十分な保水性が得られず、路面の温度上昇の抑制効果が不十分となることがある。
【0021】
次に、図面を参照しつつ、本発明の保水性セメント組成物を用いて作製した舗装構造の一例を説明する。
図1は、本発明の保水性セメント組成物を用いて作製した舗装構造を示す断面図である。
図1中、舗装構造1は、表層2(舗装用ブロック3及び目地部4)と、砂層5と、路盤6と、路床7とが積層して形成されている。
表層2は、路面を形成すべく水平方向に敷設された複数の舗装用ブロック3と、舗装用ブロック3の相互間に介在する目地部4とから構成されている。
表層2の厚さは、通常、6〜8cmである。
舗装用ブロック3は、多数の連続空隙を有する舗装用ブロック本体と、該舗装用ブロック本体の連続空隙の中に充填された保水性充填材(保水性セメント組成物を含むペースト)とから構成されている。
【0022】
舗装用ブロック本体は、多数の連続空隙を有する成形体であればよく、例えば、コンクリート、モルタル等を用いて作製することができる。
舗装用ブロック本体がモルタルからなる場合、その材料組成としては、例えば、舗装用ブロック本体の単位体積当たりの組成として、セメント400〜600kg/m3、細骨材1,200〜1,400kg/m3、水130〜150kg/m3、減水剤0.1〜2.0質量%(ただし、減水剤の配合量はセメント量に対する質量割合である。)が挙げられる。
舗装用ブロック本体がコンクリートからなる場合、その材料組成としては、例えば、舗装用ブロック本体の単位体積当たりの組成として、セメント350〜500kg/m3、粗骨材800〜1,500kg/m3、細骨材0〜600kg/m3、水85〜150kg/m3、減水剤0.1〜2.0質量%(ただし、減水剤の配合量はセメント量に対する質量割合である。)が挙げられる。
舗装用ブロック本体を作製するには、例えば、セメント、骨材、水、減水剤等の材料を混練した後、この混練物を所定の型枠内に投入し、次いで、型枠バイブレータ等によって外部から振動を与えて締め固めた後、養生し硬化させればよい。
舗装用ブロック本体中の連続空隙の体積割合は、通常、15〜30%、好ましくは17〜25%である。
【0023】
目地部4は、舗装用ブロック3の相互間の空隙(目地)内に、舗装用ブロック3の保水性充填材である保水性セメント組成物と同様の材料(ただし、本発明で規定する範囲内であれば、成分組成が異なっていてもよい。)を充填することによって形成されている。目地部4の材料として保水性セメント組成物を用いることによって、目地砂を用いる場合と比べて、路面温度の上昇の抑制効果を高め、かつその効果の持続時間を長くすることができる。
目地部4は、舗装用ブロック3相互のかみ合わせを良好にするとともに、一定の目地幅を確保して舗装用ブロック3の角欠けを防止するために設けられる。
砂層(クッション層)5を形成する砂としては、例えば、最大粒径が4.75mm以下であり、かつ75μm篩通過分が5質量%以下のものが用いられる。
砂層の厚さは、通常、2〜4cmである。
路盤6は、クラッシャラン等の砕石を主な材料として形成される。路盤6の厚さは、通常、10〜20cmである。
路床7は、既存の地盤である。
【実施例】
【0024】
[実施例1]
(1)保水性充填材の調製
アルミナセメント、白色セメント、超速硬セメント、消石灰、セピオライト等の各材料を、表1に示す配合量で混練り容器に入れ、高速ハンドミキサを用いて予め空練りし、粉末状の保水性セメント組成物(プレミックス材)を得た。次いで、プレミックス材に水を加えて、再度、高速ハンドミキサで混練し、保水性充填材を調製した。
【0025】
(2)六価クロムの溶出量の測定
環境庁告示46号に基づいて六価クロムの測定を行った。具体的には、調製した保水性充填材を用いて供試体を作製し、20℃の恒温室内で養生した後、供試体を粉砕し、2mmの目開きを有する篩を用いて、分級し、2mm以下の試料を得た。その後、pHを5.8〜6.3に調整した純水を、試料1g当たり10ミリリットルの量となるように、試料に加え、スラリーを得た後、このスラリーを6時間振とうした。その後、3,000rpmで20分間、スラリーを遠心分離した。次いで、遠心分離後の上澄み液を0.45μmのメンブランフィルターでろ過することにより、検液を得た。この検液の六価クロムを、ジフェニルカルバジド吸光光度法により定量した。
【0026】
[実施例2〜7、比較例1〜6]
粉末状の保水性セメント組成物の材料として、表1に示すものを用いた以外は、実施例1と同様にして、保水性充填材の調製および六価クロムの溶出量の測定を行なった。
以上の結果を表1に示す。
【表1】

【0027】
表1から、本発明の保水性セメント組成物からなる保水性充填材(実施例1〜7)は、六価クロムの溶出量が低く、六価クロムの溶出抑制に優れることがわかる。特に、実施例1〜3、6では、六価クロムの溶出量が検出限界値(0.05ppm)未満であった。
また、実施例3〜5から、消石灰を含むことにより、六価クロムの溶出の抑制効果がさらに向上することがわかる。
一方、白色セメントを含まない比較例1〜3、及び、アルミナセメントを含まない比較例5、6の保水性充填材は、六価クロムの溶出を十分に抑制していないことがわかる。
また、比較例4から、アルミナセメントと白色セメントを併用した場合であっても、アルミナセメント以外のセメント中の白色セメントの割合が、本発明で規定する数値範囲(70質量%以上)を下回る60質量%であると、六価クロムの溶出を十分に抑制することができないこともわかる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の保水性セメント組成物を用いて作製した舗装構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 舗装構造
2 表層
3 舗装用ブロック
4 目地部
5 砂層
6 路盤
7 路床

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント及び保水材を含む粉末状の保水性セメント組成物であって、該保水性セメント組成物中、アルミナセメントの割合が3〜25質量%、その他のセメントの割合が10〜55質量%であり、かつ、上記その他のセメント中、白色セメントの割合が70質量%以上であることを特徴とする保水性セメント組成物。
【請求項2】
上記保水性セメント組成物は、1〜25質量%の割合で消石灰を含む請求項1に記載の保水性セメント組成物。
【請求項3】
上記保水性セメント組成物中、上記保水材の割合が5〜40質量%である請求項1又は2に記載の保水性セメント組成物。
【請求項4】
上記保水材が、セピオライトである請求項1〜3のいずれか1項に記載の保水性セメント組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の保水性セメント組成物、及び、水を含むことを特徴とする保水性セメント組成物。
【請求項6】
多数の連続空隙を有する舗装用ブロック本体の当該連続空隙の中に、請求項5に記載の保水性セメント組成物からなる保水性充填材を充填してなることを特徴とする舗装用ブロック。
【請求項7】
水平方向に複数敷設された請求項6に記載の舗装用ブロックと、該舗装用ブロックの相互間の空隙に目地材を充填してなる目地部と、上記舗装用ブロック及び上記目地部の下方に位置する砂層とを含むことを特徴とする舗装構造。
【請求項8】
上記目地材が、上記保水性セメント組成物と同様の保水性セメント組成物を含む請求項7に記載の舗装構造。
【請求項9】
多数の連続空隙を有する現場打ちされた多孔質硬化体の当該連続空隙の中に、請求項5に記載の保水性セメント組成物からなる保水性充填材を充填してなる表層を含むことを特徴とする舗装構造。

【図1】
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【公開番号】特開2008−37676(P2008−37676A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−211468(P2006−211468)
【出願日】平成18年8月2日(2006.8.2)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】