説明

保管容器

【課題】 封蝋という再現性のない封印方法を用いることが可能な簡便な構造の保管容器で、第三者による開封の有無と真贋を簡単に照合出来るようにする。
【解決手段】保管容器は、封蝋を用いて封印することが可能な封印部6が容器を密閉する天面の接合する部分にあり、その接合部同士が勘合により平滑に連結し、更にその内側に、溶融された封蝋の液ダレと断熱のための鞘を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電子化された機密情報等を保管する保管容器及びその保管方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の機密情報の保管容器として、鍵の掛かる金属製の箱、紙製の封筒や箱に封緘紙や印鑑を用いて封印し、それを金庫に収納するような方法が取られて来た。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、現在において、機密情報の殆どは電子化されたものが多くなっており、簡単に開封され電子的に瞬時にスキミングと呼ばれる方法で写し取られるケースが増加しているが、開封されたことに対する確認が出来ないことが一番の課題となっている。
【0004】
また、鍵の掛かる金属製の箱に収納していても、複製された鍵を使ったり、封緘紙や印鑑は簡単に偽造出来るものであるため、封印を容易に再現することが出来るという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、第1の発明の保管容器は、
電子情報等を保管するための容器であって、封蝋を用いて封印することが可能な封印部が容器を密閉する天面の接合する部分にあり、その接合部同士が勘合により平滑に連結し、更にその内側に、溶融された封蝋の液ダレと断熱のための鞘を備えている。
【0006】
前記容器の本体構造としては、封印作業を行うために、天面に封印部があり、収納物を出し入れするための鞘状の口が本体側面の一箇所にあり、一方の蓋が鞘と勘合部により本体と一体化され、口を覆うようなスライド式の紙製の箱で良い。
【0007】
封印部に用いられる勘合により平滑に連結させる構造において、その材質が厚さが1mm以上あるコートボール紙をジグソーパズル状に打ち抜いたもので、勘合部を連結した時に互いに噛み合って水平にスライドし難い構造、つまり勘合がはずれにくいものが好ましく、材質が厚さ1mm以上のコートボール紙を用いて、勘合部をジグソーパズル状に打ち抜いたもので良く、その勘合部の反対側の根元部分のみを蓋本体の内側に、もう一方は本体と鞘の間の根元に接着剤で接着しておけば、勘合部に自由度が出来、手で押すことにより簡単に連結と解除を行うことが可能となる。
【0008】
前記溶融された封蝋の液ダレと断熱のための鞘としては、封蝋で封印を行う場合に封蝋がシェラック樹脂、ロジン、無機系のフィラー及び顔料が添加された熱可塑性の樹脂のため、摂氏120度以上で溶融し、金属製の刻印で押印することで封印を行うものであるため、溶融されたものが液ダレして、収納物に汚れや熱による影響を与えてはならない。その為に、封印部、つまり勘合により連結された部分の内側に鞘部が存在することによりその問題が解消出来る。
【0009】
鞘部の材質としては、厚みのあるコートボール紙やダンボール紙で良く、更に内側に発泡材を用いることにより、より影響を緩和することが可能である。
【0010】
第2の発明の保管容器としては、前記第1の発明において、
封印部の外側表面に升目状もしくは線状の罫書きまたは印刷、文字、模様等の印刷または切れ込みを施すことにより、封蝋の封印位置、大きさ、形状を容易に特定することができる。
【0011】
また、封印部の近くの外から見える位置にシリアルナンバー等を付記することで、容器本体の識別が可能となる。この方法は封印を行う前に管理者がスタンプ等でナンバーリングを行っても良いし、容器を製造する過程において、紙に印刷しておいたものを貼って貼り箱としても良い。
【0012】
封蝋による封印と言うものは、その刻印が幾ら精密、緻密であってもそれを再現すること、つまりシリコンゴム等で型を取り、偽造することは可能であるが、刻印を押した時に押印の圧力により回りに広がる樹脂の枠の形状と表面にブリードして来る、溶解時に発生したススによる紋様は再現することが不可能に近く、管理者が封印時にその画像を撮影し保管することで、開封時にその画像と照合することで第三者による開封があったかどうかを容易に判別することが可能となる。
【0013】
また、画像として照合することが容易であるばかりか、管理者がそれを電子的に他の場所に保存して置くことにより、更に高度な管理が可能となる。
【0014】
第三の発明の保管容器の封印部の周囲に、封印を行うための封蝋の厚みよりも高い、封蝋を保護するための凸状の段差または枠状の封蝋保護部を取り付ける構造としては、封蝋と言うものは、その成分由来の脆さ、印影を正確に表示するための立体的な厚みが有るために、手紙のように単純に容器の表面に取り付ければ良いというものでは無く、衝撃や荷重に長期的に耐える必要が有る。
【0015】
そのためには、容器の封印部の上にさらに、容器を積み上げても封印がその荷重により破損しないような工夫が必要であるが、本発明の容器は封印部の内側に鞘、外側に容器本体と蓋がスライドする構造の為、封印部がある天面の凸部の段差または枠状の封蝋保護部の厚みを封蝋の厚み以上にすることで容易に保護することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る保管容器によれば、簡便な構造で、管理者が封印部を画像に記録することで、開封時に封蝋により封印された再現性のない、個体独自の形状や位置を容易に照合し、その真贋を識別することが可能で、第三者による開封の有無を確認することが可能になるという、優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1〜図5は本発明を具体化した第1実施形態〜第3実施形態を示している。
図1から図3に示すように、この保管容器は容器本体1と内側の鞘7との間に本体側接合部4が有り、蓋8の内側に有る蓋側接合部5を鞘7の上側にしてスライドさせ、ジグソーパズル状の接合部4及び5を勘合させることで容器が密閉され、封蝋を用いて封印することが可能な封印部6が形成される。
【0018】
本体側接合部4の表面には升目9aが印刷されており、蓋側接合部5の表面には升目9bが印刷されている。この印刷の代わりにコートボール紙の上にストライプ状の耐熱性の有る織物を貼り付け、封印部6としても良い。
【0019】
図3はこの図1のA−A′断面を表したもので、封蝋10が勘合された接合部4及び5の上に有る封印部6に溶着され、下部には封蝋の液ダレと断熱のための鞘7、上部には本体側封印保護部2と蓋側封印保護部3により封蝋による封印が破損し難い構造となっている。
【0020】
図4(a)及び図4(b)は封印する作業を表したもので、封蝋10をライターの炎を近づけて必要量溶融し、封印部6に垂らし、刻印11で溶融された封蝋の任意の場所に押印を行い、樹脂が冷却し硬化した段階で刻印11を剥がすことで封蝋による封印が完了となる。
【0021】
図5に示すように、本発明の保管容器の封印部に封蝋10による封印がされた状態を表す。封蝋10を高温で溶融すれば粘性が低いので、なだらかな形状に密着し、また低温での溶融では、粘性が高く、盛り上がるような形状で封印部6に密着する。溶融した後に素早く刻印11で任意の場所に押印するのであるが、溶かす封蝋の量、粘性、刻印する位置の違い等により、再現性が困難なものが出来るのである。
【0022】
何故、再現性が困難であるかと言えば、封蝋刻印部12に腑形される文字や紋章等は偽造がたやすいものであるが、押印時に封蝋の表面に現れるススや、周囲に形成される封蝋枠13の形状までも偽造しようとしても、封蝋に触れば表面の独特な光沢が失われたり、破損したりするので、再現することは不可能となる。
【0023】
それらを撮影し、画像で保管することにより、封印の位置、つまり升目を利用した位置、サイズ、形状を確認のための要素に取り入れることが出来、管理者本人が封印したものであるかどうかを照合することが容易に出来るのである。
【0024】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明を具体化した第1実施形態に係る保管容器の斜視図である。
【図2】同保管容器の本体と蓋を分離した状態を示す斜視図である。
【図3】同保管容器のA−A′断面の断面図である。
【図4】同保管容器に用いる封蝋による封印方法の手順を示す斜視図である。
【図5】同保管容器に用いられた封印を示す斜視図である。
【符合の説明】
【0026】
1 容器本体
2 本体側封印保護部
3 蓋側封印保護部
4 本体側接合部
5 蓋側接合部
6 封印部
7 鞘
8 蓋
9a 升目
9b 升目
10 封蝋
11 刻印
12 封蝋刻印部
13 封蝋枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子情報等を保管するための容器であって、封蝋を用いて封印することが可能な封印部が容器を密封する天面の接合する部分にあり、その接合部同士が勘合により平滑に連結し、更にその内側に、溶融された封蝋の液ダレと断熱のための鞘を備えた保管容器。
【請求項2】
前記勘合により平滑に連結する封印部の外側表面に升目状もしくは線状の罫書きまたは印刷、文字、模様等の印刷または切れ込みが施されていることを特徴とする請求項1記載の保管容器。
【請求項3】
前記保管容器の封印部の周囲に、封印を行うための封蝋の厚みよりも高い、封蝋を保護するための凸状段差または枠状の封蝋保護部が取り付けられていることを特徴とする請求項1〜2記載の保管容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−306493(P2006−306493A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−160421(P2005−160421)
【出願日】平成17年4月29日(2005.4.29)
【出願人】(594189176)有限会社高尾商事 (7)
【Fターム(参考)】