説明

保護コードを備える高データ容量記憶媒体、保護コードを取得する方法、および各データ読取装置

【課題】保護コードを備える光学記憶媒体を提供する。
【解決手段】光学記憶媒体は基板層とデータ層とを備える。データ層はマークおよびスペースとしてトラックに配置されるデータを含む。保護コードPCは第1のサイズのマーク、より小さな第2のマークのコードを含むトラックのうちの1つまたはトラックの一部で暗号化される。第2のサイズのマークは第1のサイズのマークの幅よりも小さい幅である。保護コードを得るために、第1のレーザー出力でトラックまたはトラックの一部を読み取って、第1のデータ信号D1を得るステップと、第1のレーザー出力とは異なる第2のレーザー出力で同じトラックまたは同じトラックの一部を読み取って、第2のデータ信号D2を得るステップと、第1のデータ信号と第2のデータ信号とを考慮することにより保護コードを計算するステップとを備える。保護コードは各データの読み取り装置のマイクロプロセッサにより計算される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板層と、基板層上のトラックに配置されるピット構造、またはマーク/スペース構造を有するデータ層と、を備える光学記憶媒体、およびデータを読み取る各装置に関する。光学記憶媒体は、特に、高データ密度でデータを記憶するための超解像近接場構造のデータ層およびマスク層のような、読み取り専用のデータ層を備える光学ディスクである。
【背景技術】
【0002】
光学記憶媒体は、光学的に読み取り可能な方法でデータが記憶される媒体であり、例えば、ピックアップに組み合わされるレーザーや光検出器の手段による。光検出器は、記憶媒体からデータを読み取るときに、レーザービームの反射光を検出するために用いられる。一方、多くの様々な光学記憶媒体が知られており、異なるレーザー波長で動作するものや、1ギガバイト未満から50ギガバイト(GB)までの記憶容量を提供するために異なるサイズを有するものがある。このフォーマットは、読み取り専用フォーマット、追記型光媒体、および書き換え可能なフォーマットを含む。デジタルデータは、媒体の1または2以上の層の中のトラックに沿ってこれらの媒体に記憶される。
【0003】
最高のデータ容量を備える記憶媒体は、現在、2層ディスクに50ギガバイトまで記憶できるブルーレイディスク(Blu-ray disc(登録商標):BD)である。ブルーレイディスクの読み取りおよび書き込みに関して、405ナノメートルのレーザー波長の光学ピックアップが用いられる。ブルーレイディスクでは、320ナノメートルのトラックピッチ、および2Tから8Tおよび9Tまでのマーク長が用いられる。ここで、Tはチャネルビット長であり、138から160ナノメートルの最小のマーク長と一致する。ブルーレイディスクのシステムに関するさらなる情報は、例えば、非特許文献1にてブルーレイグループから入手できる。
【0004】
超解像近接場構造(Super-RENS)を備える新しい光学記憶媒体は、ブルーレイディスクと比較して、一容量において2から4倍程度まで光学記憶媒体のデータ密度を増大する可能性がある。これは、光学記憶媒体のデータ層上に配置され、光学記憶媒体から読み取るために用いられるライトスポットの有効サイズを大いに減少するいわゆる超解像または超解像近接場構造層により可能となる。超解像近接場構造層は、マスク層とも呼ばれる。なぜならば、データ層の上に配置されて、一部の特定の材料についてのみレーザービームの高強度の中心部分がマスク層に入ることができるからである。さらに該材料はマスク層としても用いることができて、フォーカスされたレーザービームの中心部分において高い反射性を示し、例えば、InSbは非線形の光学特性を示す。超解像の効果は、一部の特定の材料の非線形の効果に特に基づいていることが想定される。それゆえに、超解像近接場構造の効果は、ディスク上のデータを読み取りまたは書き込みするための光学ピックアップの解像限界以下のサイズを有する光ディスクのマークに記憶されたデータを記録し、そして読み取ることを可能にする。
【0005】
光学回折の限界以上に小さなマークを記録し、そして読み出すための超解像近接場の技術は、例えば、超解像層としてアンチモン薄膜を用いることが非特許文献2に記述されている。
【0006】
異なる幅のマークを有する光学ディスクの原盤を製造する方法が、例えば、特許文献1に記述されており、記録ビームを備えるレーザーを用い、原盤の製造のための記録ビームの強度を変化させる変調機器を用いている。最小のマークについてより高いレーザーを出力することにより、最小のマークの幅が増して、最小の幅の視認性を広げる。
【0007】
非特許文献3には、第1の幅の丸いピット、およびより大きな幅のピットのトラックを有する各読み取り専用ディスクのトラックを有するSuper-RENS読み取り専用ディスクに関する測定が記述されている。読み出し出力の依存をもたらすCNRは、173ナノメートル長を有するピット、および170ナノメートルから415ナノメートルの範囲のピット幅を有するピットを示している。また、64ナノメートルから160ナノメートルの範囲の幅のピットを有する光学ディスクついてのシミュレーションもまた示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許EP−A−0814464号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】http://www.blu-raydisc.com.
【非特許文献2】Tominaga, Nakano and Atoda in “An approach for recording and readout beyond the diffraction limit with an Sb thin film”, Applied Physics Letters, Vol. 73, No.15, 12 October 1998
【非特許文献3】”Random Signal Characteristics of Super Resolution Near Field Structure Read-Only Memory Disc”, Kim et al., Japanese Journal of Applied Physics, Vol. 45, No.2B, 2006, pp.1374-1378
【発明の概要】
【0010】
光学記憶媒体は、基板層と、基板層上に配置されるデータ層とを備え、データ層はマークおよびスペースとしてトラックに配置されるデータを備えている。光学記憶媒体は、トラックの1つまたはトラックの一部において暗号化される保護コードを備える。保護コードは、第1のレーザー出力で読み取り可能な第1のサイズのマークと、第1のレーザー出力よりも高い第2のレーザー出力のみで読み取り可能な第2のサイズのマークとを備える。光学記憶媒体は、例えば、マークとしてプレスされたピットを備える読み取り専用の光学ディスクであり、そしてトラックは、光学ディスク上の1または複数のスパイラルに配置される。
【0011】
マークのサイズが異なるため、第1のレーザー出力で保護コードを読み取る第1のステップのときに、別のステップにおいて第2のレーザー出力で読み取られる第2のデータ信号とは異なる第1のデータ信号が取得され、そして次に第1および第2のデータ信号を考慮することにより、例えば第1のデータ信号と第2のデータ信号の和または差を計算することによって保護コードが計算される。特に第1のサイズのマークがより大きな幅を有し、そして第2のサイズのマークが、第1のレーザー出力ではなくより高い第2のレーザー出力のみで読み取り可能な小さな幅を有するときには、この種類の保護コードはコピーするのがとても難しい。
【0012】
この種類の保護コードは、超解像効果をもたらす非線形材料のマスク層、とりわけ光学記憶媒体のデータ層とカバー層との間に配置される超解像近接場構造を備える高密度の光学記憶媒体に対して有利に利用することができる。第1のレーザー出力が後に調整されて、第1のサイズのマークが明確に読み取り可能となるが、マスク層の超解像近接場効果をもたらす閾値以下のレーザー出力を用いても第2のサイズのマークを読み取りできず、第2のレーザー出力は、超解像近接場効果をもたらして、より小さい第2のサイズのマークを読み取るように調整される。
【0013】
保護コードは、例えば、光学記憶媒体のユーザーデータの先頭に関する情報を含むことができ、このユーザーデータの前の光学記憶媒体の先頭に配置される。データの開始は、通常、光学ディスクの場合には内側の部分である。ユーザーデータの開始に関する情報なしに、ユーザーは、そのときにユーザーデータを読み取ることができないこととなる。加えて、商用の記録機器は、光学記憶媒体上で異なる幅を有するマークを記録することが許容されていないので、光学記憶媒体のコピーはユーザーにはとても難しいことであろう。
【0014】
この種類の光学記憶媒体を読み取る装置は、光学記憶媒体のユーザーデータにアクセスが可能となる前に、光学記憶媒体の保護コードをそれゆえ計算しなければならない。保護コードを取得するために、該装置は、対応する光学ピックアップのレーザー出力を調整して、第1のレーザー出力でより大きなサイズのマークだけを読み取って、第1のデータ信号を取得し、そして別のステップにおいて、第2のレーザー出力で同じトラックまたはトラックの同じ一部を読み取る。第2のレーザー出力は、第1のレーザー出力よりも高く、第1の幅のマークおよびより小さな幅のマークを読み取り、第1のデータ信号とは異なる第2のデータ信号を取得する。次のステップにおいて、例えば該装置のマイクロプロセッサを用いることにより、第1のデータ信号および第2のデータ信号を考慮することにより保護コードが計算される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明の好適な実施形態は、ここでは簡単な図面を参照しつつ例示により以下にとりわけ詳細に説明される。
【図1】超解像近接場効果をもたらすマスク層を備える光学記憶媒体の断面図である。
【図2】異なる幅のマークを備える図1の光学記憶媒体のトラックの一部を示す図である。
【図3】(a)は、低いレーザー出力で図2のトラックを読み取るときに取得される第1のデータ信号である。(b)は、第1のレーザー出力よりも高い第2のレーザー出力で図2のトラックを読み取るときに取得される第2のデータ信号である。(c)は、第1のデータ信号および第2のデータ信号から計算された第3のデータ信号である。
【図4】第1のより低いレーザー出力で150ナノメートルの長さを有する連続するマークの幅ごとのシミュレーション結果である。
【図5】超解像効果をもたらす第2のレーザー出力で150ナノメートルの長さを有する連続するマークの幅ごとのシミュレーション結果である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
超解像近接場構造(Super-RENS)層4を備える光学記憶媒体1が、単純化した方法で図1の断面図に示される。光学記憶媒体1は、基板2を備え、基板2上には、プレスされたピット構造、または、代替としてマーク/スペース構造を有するデータ層3が配置される。データ層3上には、保護層として第1の誘電体層5が配置される。また、図1には示されていないが、例えばアルミニウム層等の反射金属層は、誘電体層5とデータ層3との間に配置することができる。超解像近接場構造層4はまた、マスク層とも呼ばれる。なぜならば、データ層3の上に配置され、そして一部の特定の金属についてのみレーザービームの高強度の中央部分が超解像近接場構造層4に入ることができるからである。光学記憶媒体1は、特に、DVDおよびCDと同等の大きさを有する光学ディスクである。
【0017】
光学記憶媒体1は、光学記憶媒体1を保護するカバー層7を備え、カバー層7および超解像近接場構造層4の間に配置される第2の誘電体層6をもまた有利に備える。データ層3のデータを読み取るために、レーザービームが光学記憶媒体1の上部に当てられて、まずカバー層7に入る。第1の誘電体層5および第2の誘電体層6は、例えばZnS−SiO2の材料を備える。基板2およびカバー層7は、DVDやCDから知られているようなプラスチック材料から形成することができる。他の実施形態において、反射金属層を省略することができて、超解像近接場構造層が用いられるときに、熱効果によって透過率を増加させないが、他の超解像近接場構造の効果で作用する。
【0018】
光学記憶媒体1は、データ層3のトラックに基本的に平行して配置される読み取り専用のデータを特に備える。読み取り専用データは、例えば、周知の光学ディスクから知られているユーザーデータおよび制御データを含み、内部の1または複数のスパイラルの開始、および光学記憶媒体1の外部の終端に配置される。本発明によれば、光学記憶媒体1はまた、図2に示すようにトラックのうちの1つまたはトラックの一部の中に暗号化された保護コードを備える。
【0019】
図2に、暗号化されたデジタルデータを表すランドLによって分けられるピットPを備えるトラックTの一部を示す。ピットPは、異なるサイズを有し、特に第1の幅w1、およびより小さい第2の幅w2を有する。ピットは、ブルーレイディスク標準の要求に係る波長およびレーザー出力、例えば、5m/sのスピードで0.4mWのレーザー出力を有する青色レーザーを備える光学ピックアップを有する装置で読み取ることができる。これは、超解像近接場効果をもたらすには不十分なレーザー出力である。
【0020】
ピットPの第2の幅w2はもっと小さく、上記のレーザー出力では読み取りできない。幅w2のピットを読み取るために、第1のレーザー出力よりも必然的に高く、例えば、5m/sのトラックスピードで約2.0mWであり、超解像近接場効果をもたらすのに十分な第2のレーザー出力が要求される。これは、青色レーザーダイオードを有する現在の光学ピックアップが容易に出すことができるレーザー出力である。第1のレーザー出力に関して、特に0.1から1mWの範囲内でのレーザー出力を用いることができて、そして第2のレーザー出力に関して、0.8から5mWの範囲内でのレーザー出力を用いることができる。
【0021】
それゆえ、光学記憶媒体1を読み取る装置が第1のレーザー出力でトラックTのピットPを読み取るとき、より大きな幅w1を有するピットだけが検出されて、図3aに示すようなデータ信号D1をもたらす。該装置が、超解像近接場効果をもたらすのに十分な第2のレーザー出力でトラックTの同じ部分を読み取るとき、より大きな幅w1をもつピットP、およびより小さな幅w2を有するピットPが検出され、図3bに示すデータ信号のようになる。2つの異なる大きさw1およびw2のピットを有するトラックTは、図2について説明したように、第1および第2のレーザー出力でトラックTを読み取るときに、2つの異なるデータ信号D1およびD2を与える。この効果は、第1のデータ信号D1および第2のデータ信号D2を考慮する計算により、光学記憶媒体1に関する保護コードの提供を目的として利用することができる。
【0022】
光学記憶媒体1の保護コードにアクセスするために、光学記憶媒体の読み取り装置は、それゆえ、図3aのような第1のデータ信号D1を取得して、より大きな幅w1を有するピットのみを読み取る第1のステップにおいて第1のレーザー出力を用いる。第2のステップにおいて、該装置は、より大きなw1を有するピットPおよびより小さなw2を有するピットPを読み取って、図3bのような第2のデータ信号D2を得るために、第1のレーザー出力よりも必然的に高い第2のレーザー出力で同じトラックTまたはトラックTの同じ部分を読み取る。次に、2つのデータ信号D1およびD2の組み合わせを用いて、例えば該装置のプロセッサにより保護コードが計算される。例えば、保護コードは、図3cに示す第3のデータ信号D3のように、第2のデータ信号D2と第1のデータ信号D1との差を用いることにより計算してもよい。しかし、例えば加算や乗算のように、他のいかなる計算方法もまた、保護コードを得るために用いることができる。
【0023】
保護コードは、権限のない人物がユーザーデータを読み取るのを防ぐことを目的として、光学記憶媒体の読み取り保護として有利に用いることができる。該装置はそれゆえ、光学記憶媒体の保護コードが該装置のメモリに記憶される保護コードと一致したとき、または、例えば遠隔制御を用いることによりユーザーが該装置に正しい保護コードを入力したときに、光学ディスクのユーザーデータだけを読み取らせることができる。
【0024】
保護コードは、光学記憶媒体の先頭のユーザーデータの前、例えば、光学ディスクのスパイラルの内部に配置することができて、光学ディスク上には光学ディスクの内側の先頭で始まり光学ディスクの外側で終わる1つのスパイラルのように、トラックが配置される。保護コードは、特に光学ディスクのユーザーデータの先頭位置を含むことができる。ユーザーデータの先頭の読み取りは、そのときに保護コードを知らないとできない。保護コードは、光学ディスクのユーザーデータの読み取りに必要な制御データを代わりにまたは追加的に含むことができる。
【0025】
保護コードは、図2および図3a−3cについて説明したように、より大きな幅w1をもつマークおよびより小さな幅w2をもつマークを用いるときに、読み取り専用の光学記憶媒体について十分効果的にコピー保護するものとして用いることもできる。現在の光学記録機器は、図2に示すように交互に異なる幅を有する光学ディスク上にマークを記録することができない。異なる幅のマークを記録することに関して、ディスク上の記録用レーザー光のスポットの大きさは、第1の幅w1および第2の幅w2のマークを交互に記録するためには、幅に応じて変調されなければならない。これは商用の設備では不可能である。
【0026】
それゆえに、図2に示す保護コードを含むトラックの生データをちょうど読み取るとき、図3bに示すようなデータ信号D2を得るためのより高い第2のレーザー出力を用いる1つのステップにおいて、全てのデータを読み取ることができる。それゆえ、例えば、より高いレーザー出力で光学ディスク全体を読み取ることにより、光学記憶媒体の生データを得ることがやはり可能である。しかし、生データが記録可能な光学ディスク上にコピーされるとき、記録可能な光学ディスクのコピーされたデータ信号D2は、常に同じ幅のマークを有するトラックをもたらし、そしてそれゆえに、第1のデータ信号D1に関する情報が失われているので、コピーされたディスクからはもはや保護コードを得ることはできない。
【0027】
したがって、元の光学記憶媒体の正しい保護コードが知られたときでさえ、この保護コードは、記録された光学ディスクのコピーされたデータの読み取りに用いることができない。なぜならば、保護コードを提供するように設計されたトラックの保護コードを得るための方法を用いたときに、光学ディスクを読み取る装置は、第1のステップにおける低い読み取り出力および第2のステップにおける高い読み取り出力でトラックTを読み取って2つの異なるデータ信号D1およびD2を得ないからであり、それは、コピーされたトラックが、元のディスクに含まれているような異なる幅のマークを含まないからである。
【0028】
将来の標準的な光学記憶媒体として用いられるかもしれない超解像近接場効果を利用する高データ容量光学ディスクを設計するとき、または仕様を定めるとき、図2について説明したように、トラックまたはトラックの一部において異なる幅のマークを含むときに、十分効果的なコピー保護を含めることができる。
【0029】
そのような超解像近接場構造の光学ディスクの読み取り装置は、例えば、現在のブルーレイディスクのピックアップに用いられているような青色レーザーダイオードおよび開口数NA=0.85を有するピックアップを含むことができる。次に、保護コードのマークに関して、150ナノメートルの長さと150ナノメートルの幅とを有し、例えば図2に示すような丸いサイズのプレスされたピットを用いることができる。サイズがw1のピットPは、上述の通り、例えば0.4mWの赤色レーザーの低出力で可視的である。次に、サイズがw1のピットPは、図3aに示すように、第1のデータ信号D1を与える。第2の幅w2に関して、青色レーザーダイオードを用いる光学ピックアップの光学解像の限界以下である120ナノメートルまたはそれ以下の幅を用いることができる。次に、幅w2のピットは、超解像近接場構造の超解像効果を与えるより高いレーザー出力、例えば2.0mW、のみで読み取ることができ、これは、第2のデータ信号D2をもたらす。保護コード(PC)の計算に関して、装置は、装置内で既に利用可能なマイクロプロセッサを利用することができる。
【0030】
ブルーレイディスク標準と一致する光学ピックアップは、このピックアップの光学解像の限界λ/2×NAとおおよそ一致する240ナノメートルのスポットサイズをディスク上で与える。4.92m/sの速さで対応するカットオフ周波数は20.6MHzであり、240ナノメートルの「スペース−マーク」の仕組みに関連する。検出可能な最小のピットサイズは、120ナノメートルの長さを有するピットについて達成した。これは、実験で確認できる。同じ方法において、120ナノメートルまたはそれ以下の幅をともに有する150ナノメートルまたはそれ以下の長さを有するピットは、超解像効果のような手段なしに検出できない。
【0031】
さらなる証拠を提供するために、超解像効果をもたらすには不十分な第1のレーザー出力について、150ナノメートルの長さと150ナノメートルおよびそれ以下の異なる幅を有するピットの検出に関するシミュレーションが実施された。これらのシミュレーションの結果を図4に示す。図4の結果は、150ナノメートルおよびわずかに小さい幅を有するピットは、このピットに関する読み取り信号の変調を引き起こし、理論および実験に従ってこれらのピットの検出を可能にすることを示す。しかし、120ナノメートルまたはそれ以下の幅を有する150ナノメートルのピットについて、そのようなレーザー出力ではマークを検出するのを妨げられて、データ信号の十分な変調が得られないこととなるであろう。
【0032】
さらに、同じピットに関するシミュレーションが実施されたが、ここでは、超解像効果をもたらすのに十分なより高いレーザー出力を用いている。これらのシミュレーションの結果を図5に示す。図に示すように、75ナノメートル以下の幅を有するピットに関してさえ、データ信号の明確な変調を得た。
【0033】
保護コードを表す図2に示すマークPは、全て同じ長さを有する。代わりに、異なる長さは、第1の幅を有するマーク、第2の幅を有するマーク、またはその両方の種類のマークについて用いることができる。
【0034】
2つの異なる幅w1、w2のピットPを有する読み取り専用光学ディスクは、光学ディスクの原盤の製造についてエレクトロンビームマスタリングを用いることにより、容易に製造することができる。エレクトロンビームマスタリングは、トラックの方向に関して横方向にエレクトロンビームを揺動(wobble)することを可能にして、トラックのピッチの決められた幅を与える。エレクトロンビームについてのウォッブルアンプリチュード(wobble amplitude)は、図2に示すように2つの異なる幅を有する一連のピットに関して、容易に変調することができる。この種類の原盤は、次に各読み取り専用の光学ディスクのデータ層のプレスのために用いることができる。
【0035】
それゆえ、本発明の保護コードは、図1に関して説明したように、超解像近接場構造を有するマスク層を含む超解像近接場構造の光学ディスクについて、有利に用いることができるが、本発明はまた、例えばホログラフィック記憶媒体のような他の光学記憶媒体または他の光学ディスクに用いられてもよい。本発明はまた、読み取り専用(ROM)の光学記憶媒体についてだけではなく、例えばユーザーに光学記憶媒体の記録可能な部分にユーザー仕様データを記録させるように記録可能な光学記憶媒体について用いられてもよい。この種類の光学記憶媒体を読み取る装置は、青色波長を出力するレーザーダイオードだけではなく、他のいかなる波長のレーザーダイオードを利用することができる。本発明は、それゆえ、後に添付の特許請求の範囲に属する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板層と、
前記基板層の上に配置されて、マークおよびスペースとしてトラックに配置されるデータを備えるデータ層と、を備える光学記憶媒体において、
保護コードが、前記トラックの1つまたはトラックの一部において暗号化されており、前記保護コードは、
第1のレーザー出力で読み取り可能な第1のサイズのマークと、
前記第1のレーザー出力よりも高い第2のレーザー出力でのみ読み取り可能な第2のサイズのより小さいマークと、
を備えることを特徴とする光学記憶媒体。
【請求項2】
前記第2のサイズの前記マークは、前記第1のサイズの前記マークの前記幅よりも小さな幅を有することを特徴とする請求項1に記載の光学記憶媒体。
【請求項3】
前記光学記憶媒体の前記保護コードは、前記第1のレーザー出力で読み取られる第1のデータ信号と、前記第2のレーザー出力で読み取られる第2のデータ信号と、を用いることによって計算され、前記第1のデータ信号は、前記第1のサイズの前記マークと対応し、前記第2のデータ信号は、前記第2のサイズの前記マークと対応する
ことを特徴とする請求項1または2記載の光学記憶媒体。
【請求項4】
カバー層と、
特に超解像近接場構造を備えて前記カバー層および前記データ層の間に配置されて、超解像効果をもたらす非線形材料のマスク層と
を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光学記憶媒体。
【請求項5】
前記第2のサイズの前記マークは、前記光学解像の限界よりも小さなサイズを有し、前記第1のサイズの前記マークは、前記光学記憶媒体の前記データを読み取るように設計された光学ピックアップの前記光学解像の前記限界よりも大きなサイズを有し、前記第1のレーザー出力は、前記マスク層の超解像近接場の効果をもたらす閾値よりも小さいレーザー出力であり、前記第2のレーザー出力は、前記マスク層の超解像近接場の効果をもたらす閾値以上のレーザー出力である
ことを特徴とする請求項4に記載の光学記憶媒体。
【請求項6】
前記第1のサイズおよび前記第2のサイズの前記マークは、同じ長さを有することを特徴とする請求項1乃至5いずれか1項に記載の光学記憶媒体。
【請求項7】
前記マークとしてプレスされたピットを備える読み取り専用の光学ディスクであり、
前記保護コードは、コピー保護または前記光学ディスクの読み取り保護のために利用できる
ことを特徴とする請求項1乃至6いずれか1項に記載の光学記憶媒体。
【請求項8】
本質的に並行するトラックに配置されるデータを含む光記憶媒体からデータを読み取る方法であって、
第1のデータ信号を得るために第1のレーザー出力でトラックまたはトラックの一部を読み取るステップと、
前記第1のデータ信号とは異なる第2のデータ信号を得るために、前記第1のレーザー出力とは異なる第2のレーザー出力で同じ前記トラックまたは同じ前記トラックの一部を読み取る別のステップと、
前記第1のデータ信号および前記第2のデータ信号を考慮することにより、前記光学記憶媒体の保護コードを計算するステップと
を備えることを特徴とする方法。
【請求項9】
2つの読み取るステップについて、同じ波長を提供する光学ピックアップを用いる前記ステップを備え、前記光学記憶媒体の光学的性質は、異なる第1のデータ信号および第2のデータ信号を提供するように、前記第1のレーザー出力および前記第2のレーザー出力が選択される
ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のレーザー出力は、前記光学記憶媒体の超解像近接場の効果を利用するための閾値よりも小さいレーザー出力であり、前記第2のレーザー出力は、前記光学記憶媒体の超解像近接場の効果を利用するための閾値以上のレーザー出力である
ことを特徴とする請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のデータ信号と前記第2のデータ信号との差または和を考慮して前記保護コードを計算するステップを備えることを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記光学記憶媒体のコピー保護または前記光学記憶媒体の読み取り保護のために前記保護コードを用いるステップを備えることを特徴とする請求項8乃至11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記光学記憶媒体は、請求項1乃至7のうちのいずれか1項に係る記憶媒体であることを特徴とする請求項8乃至12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
請求項8乃至13のうちのいずれか1項に係る方法を利用することによって、光学記憶媒体のデータを読み取る光学ピックアップを備える装置。
【請求項15】
保護コードの計算のためのプロセッサをさらに備え、前記光学ピックアップは、400から420ナノメートルの範囲の波長を有するレーザーダイオードを備える
ことを特徴とする請求項14に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−3400(P2010−3400A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−143499(P2009−143499)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【出願人】(501263810)トムソン ライセンシング (2,848)
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing 
【住所又は居所原語表記】46 Quai A. Le Gallo, F−92100 Boulogne−Billancourt, France
【Fターム(参考)】