説明

保護シート

【課題】たとえば濡れと火の気を嫌う煙火(花火)打ち揚げセットや精密機械など、様々な物品に被覆して使用する保護シートにおいて、一般的な紙のように簡易に使用できるような保護シートの提供。
【解決手段】煙火の打ち揚げに際して煙火に被覆して使用される煙火保護シート21であって、自己消火型の不燃紙からなる基材シート12と、該基材シート12の片面に被覆された樹脂フィルム13からなる防水層とを有する煙火保護シート21。樹脂フィルム13が基材シート11や被覆された物品を火や水から保護するとともに、万が一樹脂フィルム13や基材シート11が燃えたとしても、基材シート11の機能により、消火を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、各種の物品に被覆されたり積層されたりして使用される保護シートに関し、より詳しくは、物品を火や水から守るのに好適で簡易に使用できるような保護シートに関する。
【背景技術】
【0002】
物品を火や水から守る方法の一つとして、物品に対してシートを被せることが行われている。そのようなシートとしては、フッ素樹脂を用いて製造された防火シートのように防火性や防水性を備えたものがある。このほか、下記特許文献1に開示されているように、強度を有する特定構造の積層フィルムを不燃シートの少なくとも片面に積層したものもある。
【0003】
しかし、防火性と防水性を兼ね備えたシートで、紙のように簡単で手軽に使用できる比較的安価なものは存在しなかった。
【0004】
たとえば、煙火(花火)の打ち揚げに際しては、不測の降雨で煙火玉が濡れたり、打ち揚げ時に未着火の煙火玉に火が移ったりすることを防止し、煙火玉を保護する必要があり、煙火が仕込まれ
たセットを特殊な防火シートで覆って、打ち揚げ前の煙火玉を保護していた。
【0005】
ところが、防火シートで覆った場合には、打ち揚げ直前に防火シートを取り外す必要があり、手間がかかる上に、コンピュータ制御による連続打ちなどの様々な打ち揚げ方に対応できない場合がある。
【0006】
このため、煙火玉を覆ったままでも打ち揚げができるように、打ち揚げられた煙火玉で破れる薄いビニルシートを被せることが行われることがあるが、落下物の落下の衝撃でビニルシートに穴が開いたり、煙火の火の粉が落下することでビニルシートが溶けて穴があいたりすることがあった。不測に穴があいてしまった場合には、煙火玉に着火してしまうおそれがある。
【0007】
このようなことがあるので、クラフト紙にアルミニウム箔を貼合したシートが提案されている。このシートは、アルミニウム箔を有する面を上にして使用し、覆った煙火玉を上からかかる火や水から保護する。しかし、煙火の打ち揚げに際して煙火玉はシートを下から破って揚がるので、煙火玉が打ち揚げられたときにクラフト紙に火が移る可能性がある。また、アルミニウム箔はその性質上、破れやすく、使用時にアルミニウム箔が部分的に剥がれていたりすることがあり、このようなときにはアルミニウム箔はその機能を果たさない。
【0008】
そのうえ、煙火の打ち揚げによって破られたシートは、空中に舞い上がり周辺に散らばることになり、その飛散したシートの破片が周囲の環境を害する。このため打ち揚げ後にシートの破片を回収する必要があるが、その手間がかかる上に、シートがアルミニウム箔を備えているので、飛散したゴミは見た目に目立ち、たとえばゴルフ場などに飛散した場合には、ゴルフ場の機能を大きく損なうことになる。
【特許文献1】特許第2681976号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、この発明は、防火性および防水性を兼ね備えた簡易に使用できる保護シートの提供を主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そのための手段は、自己消火型の不燃紙からなる基材シートの片面に、樹脂フィルムからなる防水層が形成された保護シートである。
【0011】
不燃性の基材シートの片面に防水層が形成されているので、基材シートにおける防水層がある面では防水が図れ、防水層がない面では防火が図れる。また、防水層は基材シートや、当該保護シートで覆った部分が濡れるのを防ぐとともに、基材シートを補強して、落下物による穴あきを防ぐ。そのうえ防水層は樹脂フィルムからなるので、アルミニウム箔で構成した場合に比して、剥げたりし難く、本来の機能が不測に損なわれることはなく、基材シートの片面において所望の機能を果たす。一方、基材シートは、基材シート自体が燃えるのを防ぐほか、自己消火型であるので、防水層に着火した場合でもその火を消すことができる。その上、防水層を構成する樹脂フィルムを補強する。
【0012】
このように、不燃性の基材シートと可燃性の樹脂フィルムとの組合せで、それぞれの特性を減殺することなく、逆にそれらの特性を活かした保護シートを得られる。
【0013】
なお、上記防水層には、生分解性樹脂からなる樹脂フィルムを使用すると、使用後の処理が容易であるという利点を得られる。
【0014】
また、製造にあたっては、防水層を構成する樹脂フィルムを基材シートに対して接着剤を用いて貼合するとよい。既存のシートやフィルムを用いることができるので、安価に製造できる。
【0015】
別の手段は、煙火の打ち揚げに際して煙火に被覆して使用される煙火保護シートであって、不燃紙からなる基材シートと、該基材シートの片面に被覆された樹脂フィルムからなる防水層とを有する煙火保護シートである。
【0016】
この煙火保護シートは、防水層がある面を上にして、煙火玉を仕込んだセットの上に被せて使用される。すると、防水層が基材シートや被覆されたセットを水から守るとともに、基材シートの強度を補い、落下物による穴あきを防止する。同時に、基材シートは、煙火玉が打ち揚げられた時に火が着いても燃焼を防ぎ、同様にして、煙火の火の粉が降りかかって防水層を燃やした場合でも、その燃焼を防ぐ。また、防水層の強度を補う。
【0017】
この煙火保護シートでも、上記防水層は生分解性樹脂からなるものであるとよい。
【0018】
また、上記樹脂フィルムの厚さは、基材シートの厚さの5分の1以下に設定されるとよい。不燃性の基材シートと可燃性の樹脂フィルムとのそれぞれの特性を減殺することはなく、煙火保護シートとして一層ふさわしい保護シートを得られる。すなわち、樹脂の使用量を低減できるので、環境にかかる負担を軽減できるとともに、防水層が燃えやすい性質であっても、基材シートの厚さが防水シートに比して厚いので、充分に防水層の消火ができる。また、不燃紙の特性を減殺しないで、防水や補強の機能を得ることができ、いわば、基材シートと防水層の各部の能力を最大限に引き出せる。
【0019】
さらに、上記生分解性樹脂からなる基材シートと防水層は、基材シートに対して、米の粉からなるみじんこを用いた接着剤で貼合されるとよい。防水層が生分解性で環境に負担をかけるものでないうえに、接着剤も環境に負担をかけるもではないので、煙火を打ち揚げた後の飛散した保護シートの処理が容易である。しかも、保護シートはアルミニウム箔を使用した場合に比して、見た目にも邪魔になることはない。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、この発明によれば、普通の紙のように簡易に使用できる保護シートを得られる。特に、煙火の打ち揚げに使用するのに好適な保護シートを得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
図1は、防火性と防水性を備えた保護シート11の斜視図であり、この図に示すように、保護シート11は、適宜大の薄いシート状をなし、一般的な紙のようにロール状に巻かれており、必要な大きさや必要な形状に裁断され、また適宜に加工されて使用されるものである。
【0022】
上述のように保護シート11は、防火性と防水性を兼ね備えるもので、様々な用途に簡易に使用できるように、図2に示した如く、自己消火型の不燃紙からなる基材シート12と、該基材シート12の片面に形成された樹脂フィルム13からなる防水層とで構成されている。
【0023】
基材シート12を構成する不燃紙には、たとえば水酸化アルミニウムを含有した水酸化アルミニウム混抄紙が使用できる。好ましくは、水酸化アルミニウムが75〜80%ほど含有されたものであるとよい。
【0024】
防水層、すなわち樹脂フィルム13は、適宜の合成樹脂フィルムで構成されるが、使用後の廃棄処理のことを考慮すると、たとえばポリ乳酸等の成分からなる生分解性の樹脂フィルムであるのが好ましい。また、樹脂フィルム13は、柔軟な性状を有する透明なものであるとよい。
【0025】
これら基材シート12と樹脂フィルム13が、周知の貼り合わせ装置により、接着剤を用いて重ね合わされて一体化することで、保護シート11が得られる。
【0026】
このとき、後述するような用途に使用される保護シートの場合には、その厚みは0.1〜0.2mm程度でよく、基材シート12の厚さt1と樹脂フィルム13の厚さt2との関係は、図2に示したように、樹脂フィルム13の厚さt2を基材シート12の厚さt1の5分の1以下に設定するとよい。
【0027】
具体的には、保護シート11の厚さが0.14mm程度である場合、基材シート12の厚さt1を0.12mm程度に、樹脂フィルム13の厚さt2を0.02mm程度に設定するとよい。
【0028】
なお、上記接着剤には、米の粉からなるみじんこを用いたものを使用するとよい。生分解性の樹脂フィルム13かなる防水層のとともに、環境に負担をかけないようにすることができる。
【0029】
このように構成された保護シート11は、たとえば次のように使用される。
【0030】
(使用例1)
図3、図4は、保護シート11を煙火の打ち揚げに際して使用され、煙火を火や水から守る煙火保護シート21を示す。
【0031】
図中22は、煙火セットであり、外ケース23の中には煙火玉24を入れた打ち揚げ筒25が複数本収納されている。外ケース23は、上面が開口した形態であり、煙火玉24は、着火により、打ち揚げ筒25から打ち揚げられる。
【0032】
この煙火セット22を打ち揚げ作業に伴って発生する火花や、突然の降雨などから保護するために、煙火保護シート21として、上記保護シート11が使用される。
【0033】
この煙火保護シート21は、煙火セット22を被覆するのに必要な大きさに予め裁断されている。なお、基材シート12には白色のものを使用し、樹脂フィルム13には透明のものが使用されている。
【0034】
使用に際しては、図3に示したように、防水層としての樹脂フィルム13を上にして煙火セット22の外ケース23に上から被せる。被せた状態は、粘着テープ26などの適宜の手段により固定する。
【0035】
この状態のまま打ち揚げの時を待ち、そのままの状態で煙火玉24の打ち揚げを行う。
【0036】
打ち揚げ前にあっては、表面の防水層が、その裏側の基材シート11と、被覆された煙火セット22を濡れから保護する。
【0037】
そして、煙火玉24が打ち揚げられると、打ち揚げ筒25内を上昇するとともに、煙火保護シート21を破って、さらに上昇する。
【0038】
このとき、煙火玉24が最初に当たる部分は、煙火保護シート21のうちの基材シート11であって、この基材シート11は自己消火型の不燃紙からなるので、たとえ火が接触しても燃え広がることはない。このため、複数本の打ち揚げ筒25から煙火玉24を、所望通りに順次打ち揚げることができる。
【0039】
また、上述のように、防水層が基材シート11や被覆された煙火セット22を水から守るとともに、防水層は基材シート11の強度を補い、不測の落下物による穴あきを防止する。
【0040】
一方、基材シート12は、上述のように煙火玉24が打ち揚げられた時に火が着いても燃焼を防ぐとともに、煙火の火の粉が降りかかって防水層を燃やした場合でも、その燃焼を防ぐ。また、防水層の強度を補う。
【0041】
煙火玉24が打ち揚げられると、破れた煙火保護シート21が飛散することになるが、基材シート12は環境に無害な不燃紙からなるとともに、防水層も生分解性樹脂からなるので、たとえそのまま放置されたとしても、環境を害するものにはならない。
【0042】
しかも、不燃紙は白色であり、防水層を構成する樹脂フィルム13は透明であるので、破れた煙火保護シート21が飛散しても、その状態は目立ちにくく、たとえばゴルフ場に飛散した場合でも、プレーを妨げるほどの障害を生じさせない。
【0043】
また、そもそも、不燃紙と樹脂フィルム13とを貼合してなるものであり、それぞれの性状を選定することで、保護シート自体11の伸びや引張荷重等の機能を適宜設定できるので、煙火の打ち揚げによって煙火保護シート21が破れた時の状態を、たとえば細かな破片にならないようにしたり、あるいは逆に細かな破片になるようにしたり調節して、ゴミとしての破片の飛散を少なくすることもできる。
【0044】
さらに、樹脂フィルム13の厚さt2は、基材シート12の厚さt1の5分の1以下に設定されているので、樹脂の使用量を低減できて環境にかかる負担を軽減できるとともに、防水層が燃えやすい性質であっても、基材シート12の厚さt1が防水シート13の厚さt2に比して厚いので、充分に防水層の消火ができる。また、不燃紙の特性を減殺しないで、防水や補強の機能を得ることができ、いわば、基材シート12と樹脂フィルム13の各部の能力を最大限に引き出せる。このように、不燃性の基材シート12と可燃性の樹脂フィルム13とのそれぞれの特性を減殺することはなく、使用しやすく高性能の煙火保護シート21を得られる。
【0045】
なお、上記煙火保護シート21は、適宜の大きさに裁断されることによって、煙火の打ち揚げに際して使用される精密機器(図示せず)などを保護するのにも使用できる。保護は、精密機器などを被覆するだけで簡単に行える。
【0046】
(使用例2)
図5は、保護シート11を裏打ち紙として使用した壁紙31を示す。
【0047】
すなわち、裏打ち紙としての保護シート11の片面に、所望の樹脂や紙、布帛等からなる表面層32を積層して壁紙31が構成されている。表面層32が形成されるのは、保護シート11の不燃紙側の面であるも、防水層側の面であるもよい。また、表面層32の積層は、コーティングや貼着などの適宜の方法で行える。
【0048】
このように構成された壁紙31でも、防火と防水の効果が得られる。
【0049】
(使用例3)
図6は、保護シート11を、たとえば火気を取り扱う場所における物品の保護や、輸送される物品の保護に使用するのに、簡単に使用できるようにした保護袋41の例である。
【0050】
すなわち、保護シート11は、使用例1に示したようにシート状のままで、物品に被せたり包んだりして使用するもよいが、図6に示したように、適宜大、適宜形状に裁断された後、貼り付けなどをして袋状に形成することもできる。
【0051】
図6の例では、上面が開放された有底袋状に形成した保護袋41を示している。
【0052】
このように予め所定の形状に形成されると、使用に際しては物品42を入れてから口を閉じるだけ、あるいは物品42に被せるだけで使用できるので、簡単である。
【0053】
このように構成された保護袋41でも、防火と防水の効果が得られる。
【0054】
以上はこの発明を実施するための一形態であって、この発明は上述の構成のみに限定されるものではなく、その他の形態を採用することも、その他の用途に使用することもできる。
【0055】
たとえば、防水層は、樹脂フィルムの接着によらず、たとえばラミネートによって形成することもできる。
【0056】
また、用途としては、屋外に駐車する自転車等のカバーなどもあげることができ、放火による被害を防ぐためにも簡易に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】保護シートの斜視図。
【図2】保護シートの断面図。
【図3】煙火保護シートとその使用状態を示す断面図。
【図4】煙火保護シートの使用状態を示す断面図。
【図5】壁紙の構造を示す斜視図。
【図6】保護袋の斜視図。
【符号の説明】
【0058】
11…保護シート
12…基材シート
13…樹脂フィルム
21…煙火保護シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己消火型の不燃紙からなる基材シートの片面に、樹脂フィルムからなる防水層が形成された
保護シート。
【請求項2】
前記防水層が生分解性樹脂からなる
請求項1に記載の保護シート。
【請求項3】
煙火の打ち揚げに際して煙火に被覆して使用される煙火保護シートであって、
自己消火型の不燃紙からなる基材シートと、
該基材シートの片面に被覆された樹脂フィルムからなる防水層とを有する
煙火保護シート。
【請求項4】
前記防水層が生分解性樹脂からなる
請求項3に記載の煙火保護シート。
【請求項5】
前記樹脂フィルムの厚さが基材シートの厚さの5分の1以下である
請求項4に記載の煙火保護シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−307844(P2007−307844A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−140994(P2006−140994)
【出願日】平成18年5月22日(2006.5.22)
【出願人】(506173857)
【出願人】(391020757)株式会社奥田 (3)
【Fターム(参考)】