説明

保護機能を備えた電動機制御装置

【課題】簡易な構成でアラーム停止を回避できる保護機能を備えたモータ制御装置を得ること。
【解決手段】各種の機械を駆動するモータに供給する電流の制御を行うトルク制御部を含むマイナーループを有するモータ制御装置において、実効負荷率もしくは当該モータ制御装置と前記モータと前記機械との少なくともいずれか一つの温度に関する物理量を観測或いは推測し、過負荷になる可能性が高いと判断した場合に、前記実効負荷率を下げる方向に、前記トルク制御部の入力側経路に存在する制御系の制御応答性を変更する過負荷回避動作を行う構成を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種機械を駆動するモータを制御する電動機制御装置に関し、特に保護機能を備えた電動機制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
モータ制御装置としては、サーボアンプやインバータなど各種あるが、本明細書では、サーボアンプを例に挙げて説明する。サーボアンプは、上位コントローラから位置指令あるいは速度指令を受け取り、サーボモータからモータ位置あるいはモータ速度をフィードバック信号として取り込み、モータ位置あるいはモータ速度を指令に追従させるように位置制御あるいは速度制御を行ってサーボモータに電圧を印加することで、サーボモータのモータ位置あるいはモータ速度を制御するように構成される。
【0003】
ところで、各種機械を駆動するサーボモータは、サーボアンプから供給される駆動電流による発熱などにより加熱される。負荷が大きい場合などにおいてサーボモータに過度な電流が流れた場合、サーボモータは、発熱による焼損や永久磁石の減磁などにより損傷してしまうという問題がある。一方、サーボアンプについても、過度の電流を流れた場合、サーボアンプ内のスイッチング素子が損傷してしまうという問題がある。
【0004】
そこで、従来では、サーボモータやサーボアンプを損傷してしまわないように、過負荷になる可能性が高まった場合は、過負荷アラームとしてサーボアンプを非常停止することにより、過負荷を防止することが一般的に行われている。また、過負荷以外にも、過回生や過電圧・不足電圧などの非常時には、アラームを発生してサーボアンプを非常停止することが一般に行われている。
【0005】
しかし、このようなサーボアンプを非常停止する措置を講じた場合、ユーザ側では、停止・起動の繰り返しに対応する余分な手間が発生し、停止後再起動するための余分な段取り時間が発生し、アラーム停止による余分な歩留まりが発生し、アラーム停止による機械破損の可能性が発生する、などの問題が起こる。
【0006】
そのため、極力アラーム非常停止とならないように動作するサーボアンプをユーザに提供できることが望まれており、このような要請に応える種々の提案がなされている(例えば、特許文献1,2等)。
【0007】
特許文献1では、過負荷になる可能性が高まったと判断した場合、過負荷とならないような速度パターンに修正し、その速度指令にて運転を行う技術が提案されている。具体的には、モータ温度が高くなった場合に、速度指令の加減速時定数を下げて駆動電流を減らすことで、過負荷を防止するという技術である。
【0008】
また、特許文献2では、過負荷になる可能性が高まったと判断した場合、リミッタを利用し、速度変化もしくは電流リミットを下げて加速度・電流を下げた運転を行う技術が提案されている。
【0009】
なお、特許文献3では、指令フィルタの構成例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−194807号公報
【特許文献2】特開平11−122964号公報
【特許文献3】特開平6−30578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが、本発明が対象とするサーボアンプは、一般産業機械用サーボアンプのように、指令パターンを生成する上位コントローラから指令をもらって動作するタイプのサーボアンプである。これに対して、特許文献1に記載の技術は、サーボアンプ内部に速度指令パターン生成部を有する場合の技術であるので、本発明が対象とするサーボアンプでは、利用が困難である。
【0012】
すなわち、上位コントローラから指令をもらって動作するタイプのサーボアンプに、かりに、特許文献1に記載の技術を適用する場合は、上位コントローラに対し実効負荷率や電流などのデータをリアルタイムに送付し、上位コントローラにて過負荷に関する判断・対策を行う必要がある。
【0013】
そうすると、上位コントローラでは過負荷判断・対策に遅れが発生し、上位コントローラとサーボアンプとの間のデータ通信量が増加し、上位コントローラのソフトウェア負荷の増大が発生するという問題が起こる。上位コントローラのソフトウェア負荷の増大は、機械ユーザのソフトウェア開発の増大にも繋がり好ましくない。また、特に上位コントローラからパルス列指令を受け取るパルス列タイプのサーボアンプの場合には、これらのデータ送信用に特別な配線を用意する必要があり、省配線の面で望ましくない。
【0014】
この点、特許文献2に記載の技術では、電流リミットを下げると、駆動電流が減り、結果として過負荷が防止できる。本方式であれば、上位コントローラに依存せずサーボアンプ単体での過負荷回避動作も可能である。また、同様に速度リミットやトルクリミットを行えば過回生アラーム回避動作も可能である。
【0015】
しかし、リミッタで制限する動作は非線形動作であるので、特許文献2に記載の技術のように、これらをリミッタで制限するという方式を用いた場合には、振動やショックを増大させる可能性がある。また、アウターループ(位置ループなど)を組んだ場合に非線形動作によりハンチングや不安定を引き起こす可能性がある。それらの不安定を防止するた方策としては、リミッタ時の飽和量を再帰計算などで計算しなおしたり、飽和量をフィードバックしたりするなどの手法も存在するが、プログラムが増大・複雑になり、開発に大きな負荷が掛かることや、演算負荷が大きく演算時間が長くなるなど、新たな問題が発生する。
【0016】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、簡易な構成でアラーム停止を回避できる保護機能を備えた電動機制御装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述した目的を達成するために、本発明は、各種の機械を駆動するモータに供給する電流の制御を行うトルク制御部を含むマイナーループを有するモータ制御装置において、実効負荷率もしくは当該モータ制御装置と前記モータと前記機械との少なくともいずれか一つの温度に関する物理量を観測或いは推測し、過負荷になる可能性が高いと判断した場合に、前記実効負荷率を下げる方向に、前記トルク制御部の入力側経路に形成される制御系の制御応答性を変更する過負荷回避動作を行う構成を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、トルク制御部の入力側経路に形成される制御系の制御応答性を変更するという簡易な構成でアラーム停止を回避できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、この発明の実施の形態1による保護機能を備えた電動機制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、図1に示す過負荷回避回路の構成例を示すブロック図である。
【図3】図3は、通常モード時と過負荷回避モード時とでの動作内容を比較して示す動作波形の一例を示す応答波形図である。
【図4】図4は、図1に示す過負荷回避回路の他の構成例(シーケンス構成例)を説明するフローチャートである。
【図5】図5は、この発明の実施の形態2による保護機能を備えた電動機制御装置の構成を示すブロック図である。
【図6】図6は、この発明の実施の形態3による保護機能を備えた電動機制御装置の構成を示すブロック図である。
【図7】図7は、この発明の実施の形態4による保護機能を備えた電動機制御装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明にかかる保護機能を備えた電動機制御装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、これらの実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0021】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1による保護機能を備えた電動機制御装置の構成を示すブロック図である。図1において、本実施の形態1による保護機能を備えた電動機制御装置(サーボアンプ)50aは、位置偏差演算器1、位置制御部2、速度演算器3、速度偏差演算器4、速度制御部5、およびトルク制御部6を備え、図示しない上位コントローラからの位置指令aと、サーボモータ7に取り付けられている位置検出器7aからのフィードバック信号であるモータ位置bとに基づき、サーボモータ7を位置指令aの通りに駆動制御するサーボアンプにおいて、実効負荷率hを入力とする過負荷回避回路8を追加し、図1に示す例では、過負荷回避回路8が実効負荷率hに応じて位置制御部2の制御ゲイン(位置制御ゲイン)、速度制御部5の制御ゲイン(速度制御ゲイン)を変更できるようにしたものである。
【0022】
まず、前提となるサーボアンプの各部の構成と動作について説明する。位置偏差演算器1は、上位コントローラから得られる位置指令aとサーボモータ7の位置検出器7aからフィードバックされるモータ位置bとから位置偏差cを演算して出力する。位置制御部2は、位置偏差cに基づき位置制御を行い、演算した速度指令dを出力する。速度演算器3は、サーボモータ7のモータ位置bに擬似微分演算などを施し、モータ速度eを演算して出力する。
【0023】
速度偏差演算器4は、位置制御出力である速度指令dとモータ速度eとから速度偏差fを演算して出力する。速度制御部5は、速度偏差fに基づき速度制御を行い、演算したトルク指令gを出力する。トルク制御部6は、入力されるトルク指令gの通りにサーボモータ7が動くように供給電流の制御を行い、サーボモータ7に必要な駆動電圧を印加する。
【0024】
このように、上位コントローラからの位置指令aとサーボモータ7からのフィードバック信号であるモータ位置bとに基づき、サーボモータ7を位置指令aの通りに駆動制御するサーボアンプは、速度偏差演算器4〜速度制御部5〜トルク制御部6〜サーボモータ7〜速度演算器3〜速度偏差演算器4のループ経路(速度制御ループ)22にて一定ゲインの速度制御を行いつつ、この速度制御ループ22に位置偏差演算器1および位置制御部2を加えたアウターループにて一定ゲインの位置制御を行うように構成されている。
【0025】
本実施の形態1では、トルク制御部6の入力側経路に形成される制御系として、速度制御ループ22内においてトルク制御部6の前段に配置される速度制御部5と、速度制御ループ22の外に配置される位置制御部2との両方を取り上げたものである。
【0026】
さて、過負荷回避回路8に入力される実効負荷率hは、例えば、サーボアンプ50a内の電流観測値を基に逐次計算される。過負荷回避回路8は、例えば、図2や図4に示す構成によって、この実効負荷率hに基づき、過負荷アラーム停止になるような過負荷になる可能性が高い場合に、制御ゲイン変更比率iを出力する過負荷回避動作を行う。制御ゲイン変更比率iは、図1では、トルク制御部6の入力側経路に形成される制御系である位置制御部2と速度制御部5との両方に入力される。
【0027】
これによって、位置制御部2は、位置偏差cに乗算する位置制御ゲインを制御ゲイン変更比率iが指定する比例ゲインに変更して位置制御を行い、速度指令dを出力する。同様に、速度制御部5は、速度偏差fに乗算する速度制御ゲインを制御ゲイン変更比率iが指定する比例ゲインに変更して速度制御を行い、トルク指令gを出力する。
【0028】
次に、図2は、図1に示す過負荷回避回路の構成例を示すブロック図である。過負荷回避回路8は、例えば図2に示すように、実効負荷率偏差演算部9と、スイッチ部10と、実効負荷率制御部11と、制限器12とを備えている。
【0029】
実効負荷率偏差演算部9は、実効負荷率基準値jと実効負荷率hとの偏差(実効負荷率偏差)kを演算して出力する。なお、実効負荷率基準値jとしては、過負荷非常停止となる負荷レベルよりも低い負荷値が用いられ、事前に設定されている。スイッチ部10は、過負荷回避動作のオン(実行:過負荷回避モード)/オフ(非実行:通常モード)を決定する。実効負荷率制御部11は、例えば、PI制御などを行って実効負荷率偏差kに応じて制御ゲインの変更比率mを決定する。制限器12は、入力される制御ゲインの変更比率mに制限範囲を適用した制御ゲイン変更比率iを出力する。
【0030】
次に、図3をも参照して、動作について説明する。なお、図3は、通常モード時と過負荷回避モード時とでの動作内容を比較して示す動作波形の一例を示す応答波形図である。図3では、(a)過負荷アラーム停止が起こらない運転状態である通常モード時での応答波形と、(b)過負荷アラーム停止が起こる可能性が高い運転状態の場合に行われる過負荷回避モード時での応答波形とが示されている。
【0031】
実効負荷率hに目立った上昇気配がなく実効負荷率基準値j以下であり、過負荷アラーム停止が起こるような過負荷になる可能性の低い通常モード時では、過負荷回避回路8では、スイッチ部10がオフしていて後段の実効負荷率制御部11以降は動作しない。その結果、サーボアンプ50aは、通常状態でサーボ調整された位置制御ゲイン、速度制御ゲインで動作する。
【0032】
図3(a)において、通常モード時では、速度指令15に少し遅れて実速度16が追従し、速度指令払出完了18から若干時間の経過後に実速度16がほぼ零19に収束する。このように、通常モード時では、実速度16は、十分な追従性をもって速度指令15に追従している。
【0033】
一方、図示しない上位コントローラから適切でない位置指令aが入ってきた場合や、負荷が増大した場合、あるいは主回路電圧が低下した場合などにより、実効負荷率hが実効負荷率基準値jを超えて上昇し、過負荷アラーム停止が起こるような過負荷になる可能性が高まった場合は、過負荷回避回路8では、スイッチ部10がオンとなって、後段の実効負荷率制御部11が動作し、過負荷回避モードとなる。
【0034】
過負荷回避モードでは、実効負荷率制御部11にて、位置制御ゲイン、速度制御ゲインを変更させる制御ゲインの変更比率mが決定され、制限器16から上下限の制限処理された制御ゲイン変更比率iが位置制御部2と速度制御部5とに出力される。
【0035】
具体的に説明する。図2において、過負荷アラーム停止が起こるような過負荷になる可能性が高まると、実効負荷率基準値jに対し実効負荷率hが大きな値となるため、実効負荷率偏差kは負の値となる。そこで、実効負荷率制御部11は、実効負荷率hが下がるように、位置制御部2と速度制御部5とに与える制御ゲインの変更比率mを下げる方向に制御する。
【0036】
そうすると、図3(b)に示すように、制御ゲインが下がったために、通常モード時での実速度16は、実速度17のように、応答性の低い波形となる。応答性が低くなると、加減速時のトルク実効値が小さくなるため、実効負荷率hが下がる。また、図1では示してないが、上位コントローラがサーボアンプ50aの動作完了信号を受け取ってから次の動作を行うようにシーケンスが組まれている場合は、応答性が下がると、動作完了信号の払い出しが遅くなる。その結果、サイクルタイムが延びるので、実効負荷率hが下がるケースもある。また、粘性摩擦の大きな機械では、応答性を下げた結果、速度が下がると、粘性摩擦ロスが減ることによって実効負荷率hが下がる。
【0037】
このように、制御ゲインを下げると、応答性が低下して実効負荷率hは下がる。その結果、実効負荷率hが実効負荷率基準値jを下回り、今度は、実効負荷率偏差kは正の値となる。そこで、実効負荷率制御部11は、実効負荷率hが上がるように、位置制御部2と速度制御部5に与える制御ゲインの変更比率mを上げる方向に制御する。以上の動作が繰り返されて、実効負荷率hは、実効負荷率基準値jに近づくように、制御ゲインの変更比率mが増減制御される。これによって、過負荷アラーム停止となるような過負荷が起こる状況でも、過負荷アラーム停止が回避されることになる。
【0038】
そして、動作中に制御ゲインを切り替えた場合は、ショックやオーバーシュートを発生させる場合もあるので、制御ゲインを変更するタイミングは、図3(a)の期間Aに示すように、速度指令払出完了18や動作完了後の速度が零19または零19近傍になった後、次サイクルの動作が始まる速度指令払出時20までの期間内と定めてある。次サイクル以降において過負荷アラーム停止となるのを回避することができる。
【0039】
ここで、本実施の形態1による制御方法によれば、指令の応答性が下がるだけでなく、フィードバック応答性も下がるので、それによって、リプル量が減って実効負荷率が減少する。つまり、過負荷アラーム停止を回避する動作が速やかに行われる。
【0040】
次に、過負荷回避回路8の他の構成例について説明する。図2は、過負荷回避回路8が過負荷回避動作を線形制御的に行う場合の構成例であるが、例えば図4に示すように、過負荷回避回路8は、過負荷回避動作をシーケンス制御的に行う構成も可能である。なお、図4は、図1に示す過負荷回避回路の他の構成例(シーケンス構成例)を説明するフローチャートである。図4では、各処理ステップは、符号Sを付して表してある。
【0041】
図4において、最初のS1では、事前に何らかの方法で設定されている過負荷回避モード突入レベル・回避レベルを入力する。そして、電流値等から演算された実効負荷率を観測し(S2)、現在の動作状態が過負荷回避モード中か否かを判断する(S3)。S3での判断結果、過負荷回避モード中でない場合(S3:No)は、実効負荷率が回避モード突入レベルよりも大きいか否かを判断する(S4)。
【0042】
S4での判断結果、実効負荷率が回避モード突入レベルよりも小さい場合(S4:No)は、制御ゲインの変更を行わずに本手順を終了し、通常モードを継続する。一方、S4での判断結果、実効負荷率が回避モード突入レベルよりも大きい場合(S4:Yes)には、過負荷回避モードに突入し(S5)、制御ゲインを下げる変更処理を行い(S6)、本手順を終了する。ここで、S6での制御ゲインは、例えば、現行の運転パターンから下げるべき制御ゲインレベルを推測して設定したものを用いるとよい。
【0043】
また、先のS3の判断において、過負荷回避モード中である場合は(S3:Yes)、実効負荷率が回避モード離脱レベルよりも大きいか否かを判断する(S7)。その結果、実効負荷率が依然として回避モード離脱レベルを超過している場合(S7:Yes)は、過負荷回避モードでの動作を継続し、制御ゲインの変更処理を行い、本手順を終了する。
【0044】
その結果、S1〜S3を経由したS7において、実効負荷率が回避モード離脱レベルよりも小さくなった場合(S7:No)は、過負荷回避モードを離脱し(S8)、制御ゲインを元の値に戻し(S9)、本手順を終了する。このようなシーケンス制御を行えば、過負荷回避モードへの突入・離脱を繰り返すチャタリングを発生させることなしに、過負荷回避動作を行うことが可能となる。
【0045】
以上は、位置制御モードでの説明であるが、位置制御ゲインのみを下げる、もしくは、位置制御ゲインと速度制御ゲインの両者を下げることのどちらによっても、同様の過負荷回避動作を行うことが可能となる。また、速度制御モードであれば、速度制御ゲインを下げることによっても、同様の過負荷回避動作が可能である。位置制御ゲインと速度制御ゲインの両者を下げる方式であれば、位置制御と速度制御との動作を切り替える場合に、モード切替に依存せず安定な過負荷回避動作が可能となる効果が得られる。なお、位置比例・速度比例積分制御の場合は、位置制御ゲインの代わりに速度積分ゲインを下げても同様の過負荷回避動作を得ることができる。
【0046】
このように、本実施の形態1によれば、過負荷アラーム停止となるような過負荷の発生を予知した場合、トルク制御部の入力側経路に形成される制御系である位置制御部と速度制御部の一方または両方の制御ゲインを下げるように変更することで該制御系の制御応答性を下げるようしたので、実効負荷率を下げることができ、過負荷アラーム停止を回避することができる。
【0047】
このとき、サーボアンプ単体で過負荷対策ができるので、コントローラは過負荷を意識する必要がない。したがって、コントローラの負荷削減、コントローラのユーザソフトウェア作成の簡易化、構成の単純化、コントローラとサーボアンプとの間のデータ通信量削減などを実現できる。
【0048】
また、ゲインパラメータを変更するだけであるので、従来例に示すような速度制限やトルク制限等を用いた対策方法と違って線形動作を行うことになる。その結果、ショックや振動を発生させず、また、不安定・ハンチングも発生させない。これによって、構成が単純となり、演算量が少なくなり、ユーザに公開したパラメータの変更であるのでユーザに安心感を与える、などの効果もある。
【0049】
また、通常は、トルク制御系の外側に速度制御ループなどのアウターループを組んでいるので、トルク制御系の応答を下げてしまうと、アウターループと干渉して制御性能の悪化や不安定を発生させてしまうが、本発明の方式では、トルク制御系の外側のループの応答性を下げるため、そのような悪影響を発生させる心配はない。
【0050】
実施の形態2.
図5は、本発明の実施の形態2による保護機能を備えた電動機制御装置の構成を示すブロック図である。本実施の形態2では、過負荷アラーム停止を回避する他の制御態様の一例を図1(実施の形態1)に示した構成を利用して説明する。そのため、図6では、図1(実施の形態1)に示した構成要素と同一ないしは同等である構成要素には同一の符号が付されている。
【0051】
図5において、本実施の形態2による保護機能を備えた電動機制御装置(サーボアンプ)50bは、位置偏差演算器1、位置制御部2、速度演算器3、速度偏差演算器4、速度制御部5、およびトルク制御部6を備え、図示しない上位コントローラからの位置指令aとサーボモータ7に取り付けられている位置検出器7aからのフィードバック信号であるモータ位置bとに基づき、サーボモータ7を位置指令aに通りに駆動制御するサーボアンプにおいて、位置指令aが位置偏差演算器1に入力する経路に、位置指令偏差演算器13〜指令フィルタ14〜積分器(修正位置指令演算器)15〜位置指令偏差演算器13の経路からなるフィルタループ24が設けられる場合に、実施の形態1とは異なりトルク制御部6の入力側経路に形成される制御系として、速度制御ループ22の外に形成される指令フィルタ14を選択し、追加した過負荷回避回路25にて、入力される実効負荷率hに応じて指令フィルタ14の制御ゲイン(指令フィルタゲイン)を変更できるようにしたものである。
【0052】
図5に示す位置偏差演算器1、位置制御部2、速度演算器3、速度偏差演算器4、速度制御部5、およびトルク制御部6を備え、位置指令aとモータ位置bとに基づき、サーボモータ7を指令通りに駆動制御するサーボアンプについては、図1(実施の形態1)に示した構成において、過負荷回避回路8が存在しない場合として前述したので、その説明を割愛し、ここでは、本実施の形態2に関わる部分を中心に説明する。
【0053】
図5において、まず、本実施の形態2の前提となるサーボアンプの各部の構成と動作について説明する。すなわち、フィルタループ24において、位置指令偏差演算器13は、上位コントローラから得られる位置指令aと積分器15が出力するフィルタ後の位置指令pとから位置指令偏差qを出力する。指令フィルタ部14は、位置指令偏差qに所定の時定数によるフィルタリング処理を施したフィルタ後の位置指令rを出力する。積分器15は、指令フィルタ14の出力を積算してフィルタ後の位置指令pを出力する。位置偏差演算器1以降は、積分器15から出力されたフィルタ後の位置指令pを、図1に示した位置指令aとし、実施の形態1にて説明した同一の内容で動作する。
【0054】
さて、過負荷回避回路25は、実施の形態1にて説明した内容の実効負荷率hを入力とし、図2や図4に示した構成によって、過負荷アラーム停止になるような過負荷になる可能性が高い場合に、トルク制御部6の入力側経路に形成される指令フィルタ14に対して制御ゲイン変更比率iを出力する過負荷回避動作を行う。これによって、指令フィルタ14は、位置偏差gに乗算する指令フィルタゲインを制御ゲイン変更比率iが指定する比例ゲインに変更してフィルタリング処理を行い、フィルタ後の位置指令rを出力する。
【0055】
次に、動作について説明する。指令フィルタゲインを変更した場合も、実施の形態1にて説明したのと同様に、指令フィルタ14の制御ゲインを下げると、応答性が低くなり加減速時のトルク実効値が小さくなる。その結果、実効負荷率が下がることで、過負荷アラーム停止になるような過負荷になるのを回避することが可能となる。また、実施の形態1にて説明したように、上位コントローラがサーボアンプ50bの動作完了信号を受け取ってから次の動作を行うようにシーケンスが組まれている場合は、応答性が下がると、動作完了信号の払い出しが遅くなり、サイクルタイムが延びるので、実効負荷率hが下がる。また、粘性摩擦の大きな機械では、応答性を下げた結果、速度が下がると、粘性摩擦ロスが減ることによって実効負荷率hが下がる。
【0056】
そして、動作中に切替ショックやオーバーシュートを発生させないように、制御応答性の変更を動作完了後に行うようにしてあるので、次サイクル以降において過負荷アラーム停止となるのを回避することができる。
【0057】
なお、以上の説明は、指令フィルタ14が一次遅れフィルタの形態ある場合の説明であるが、指令フィルタ14のフィルタ形式はその限りではなく、高次フィルタであっても適用可能である。例えば、特許文献3における図24、図25に記載のようなフィードフォワード信号演算回路も指令フィルタの一種と考えられ、指令フィルタ14に用いることができる。その場合は、フィードフォワード信号演算回路の係数器222や係数器224のいずれか、あるいは、両方の係数を変更するような形でも同様の効果を得ることが可能である。
【0058】
また、指令フィルタ14の応答性を変更する方法であれば、フィルタゲイン(フィルタ時定数)に依らず別の要素の変更に置き換えても構わない。例えば、移動平均フィルタなどのFIR型指令フィルタに対してもフィルタ段数を変更することにより、応答性を変更できることから、やはり同様の効果を得ることが可能である。
【0059】
このように、本実施の形態2によれば、過負荷アラーム停止となるような過負荷の発生を予知した場合、トルク制御部の入力側経路に形成される制御系である指令フィルタの制御ゲインを下げるように変更して該制御系の制御応答性を下げるようしたので、実効負荷率を下げることができ、過負荷アラーム停止を回避することができる。
【0060】
このとき、サーボアンプ単体で過負荷対策ができるので、コントローラは過負荷を意識する必要がない。したがって、コントローラの負荷削減、コントローラのユーザソフトウェア作成の簡易化、構成の単純化、コントローラとサーボアンプとの間のデータ通信量削減などを実現できる。
【0061】
また、実施の形態1と同様に、ゲインパラメータを変更するだけであるので、従来例に示すような速度制限やトルク制限等を用いた対策方法と違って線形動作することになり、その結果、ショックや振動を発生させず、また、不安定・ハンチングも発生させない。構成が単純となり、演算量が少なくなり、ユーザに公開したパラメータの変更であるのでユーザに安心感を与える、などの効果もある。
【0062】
また、2自由度制御にも適用可能であり、フィードバック制御応答特性とは独立に過負荷アラーム停止を回避する運転が可能となる。フィードバック制御系が非線形制御など特殊制御の場合でも利用可能である。
【0063】
また、指令フィルタの応答性を操作するので、フィードバック制御の応答性を変更することなく過負荷回避動作が可能となる。フィードバック制御の応答性を変更すると、外乱抑圧性能が変わるので、本形態の形態2は、外乱抑圧性能を低減させたくない場合の過負荷アラーム停止の回避構成として好適である。
【0064】
実施の形態3.
図6は、本発明の実施の形態3による保護機能を備えた電動機制御装置の構成を示すブロック図である。本実施の形態3では、過回生アラーム停止を回避する制御態様の一例を図1(実施の形態1)に示した構成を利用して説明する。そのため、図6では、図1(実施の形態1)に示した構成要素と同一ないしは同等である構成要素には同一の符号が付されている。ここでは、本実施の形態3に関わる部分を中心に説明する。
【0065】
図6において、本実施の形態3による保護機能を備えた電動機制御装置(サーボアンプ)50cは、図1(実施の形態1)に示した構成において、実効負荷率hが入力される過負荷回避回路8に代えて、回生負荷率sが入力される過回生回避回路30が設けられている。
【0066】
過回生回避回路30に入力される回生負荷率sは、例えば、回生コンバータの回生電流や回生トランジスタのオン/オフの回数・デューティーなどを基に逐次計算されるものである。過回生回避回路30は、過負荷回避回路8と同様の考えで、過回生回避動作を行うものであり、図2や図4に示した構成と類似の構成を有している。
【0067】
次に、動作について説明する。過回生回避回路30は、入力される回生負荷率sに目立った上昇気配がなく基準値を下まわり、過回生アラーム停止となるような過回生になる可能性が低い場合には、位置御部2と速度制御部5の各制御ゲインの変更処理を行わない。その結果、サーボアンプ50cは、通常状態でサーボ調整された位置制御ゲイン、速度制御ゲインにて動作する。
【0068】
一方、過回生回避回路30は、入力される回生負荷率sが基準値を超えて上昇し、過回生アラーム停止となるような過回生になる可能性が高くなった場合には、位置御部2と速度制御部5の各制御ゲインを下げる過回生回避動作を行う。その結果、サーボアンプ50cは、位置制御ゲイン、速度制御ゲインを下げた状態で動作する。
【0069】
制御ゲインを下げると応答性が低くなり、運転パターンにおける減速度が下がる。その結果、単位時間当たりの回生エネルギーが小さくなることから母線電圧が上昇しにくくなり、回生トランジスタがオンする回数を減らすことが可能となる。あるいは、トップ速度が下がると、回生されるエネルギーが減少することから回生負荷率が下がる。また、図3では示してないが、上位コントローラがサーボアンプ50cの動作完了信号を受け取ってから次の動作を行うようにシーケンスが組まれている場合は、応答性が下がると、動作完了信号の払い出しが遅くなり、その結果、サイクルタイムが延びることでも、回生負荷率sが下がるので、過回生を回避する動作を行うことのできるケースがある。
【0070】
そして、動作中に切替ショックやオーバーシュートを発生させないように、制御応答性の変更を動作完了後に行うことができるので、次サイクル以降において過回生アラーム停止となるのを回避することができる。
【0071】
このように、本実施の形態3によれば、過回生アラーム停止となるような過回生の発生を予知した場合、トルク制御部の入力側経路に形成される制御系である位置制御部と速度制御部の一方または両方の制御ゲインを下げるように変更して該制御系の制御応答性を下げるようしたので、回生負荷率を下げることができ、過回生アラーム停止を回避することができる。
【0072】
このとき、サーボアンプ単体で過回生対策ができるので、コントローラは過回生を意識する必要が無い。したがって、コントローラの負荷削減、コントローラのユーザソフトウェア作成の簡易化、構成の単純化、コントローラとサーボアンプとの間のデータ通信量削減などを実現できる。
【0073】
また、ゲインパラメータを変更するだけであるので、従来例に示すような速度制限やトルク制限等を用いた対策方法と違って線形動作することになり、その結果、ショックや振動を発生させず、また、不安定・ハンチングも発生させない。構成が単純となり、演算量が少なくなり、ユーザに公開したパラメータの変更であるのでユーザに安心感を与える、などの効果もある。
【0074】
実施の形態4.
図7は、本発明の実施の形態4による保護機能を備えた電動機制御装置の構成を示すブロック図である。本実施の形態4では、過電圧と不足電圧の各電圧アラーム停止を回避する制御態様の一例を図1(実施の形態1)に示した構成を利用して説明する。そのため、図7では、図1(実施の形態1)に示した構成要素と同一ないしは同等である構成要素には同一の符号が付されている。ここでは本実施の形態4に関わる部分を中心に説明する。
【0075】
図7において、本実施の形態4による保護機能を備えた電動機制御装置(サーボアンプ)50dは、図1(実施の形態1)に示した構成において、実効負荷率hが入力される過負荷回避回路8に代えて、母線電圧などの主回路電圧uが入力される電圧アラーム回避回路40が設けられている。
【0076】
電圧アラーム回避回路40は、過負荷回避回路8と同様の考えで、過電圧・不足電圧の回避動作を行うものであり、図2や図4に示した構成と類似の構成を有している。
【0077】
次に、動作について説明する。電圧アラーム回避回路40は、入力される主回路電圧uに目立った上昇変化・下降変化の気配がなく、過電圧・不足電圧になる可能性が低い場合には、位置制御部2と速度制御部5の各制御ゲインの変更処理を行わない。その結果、サーボアンプ50dは、通常状態でサーボ調整された位置制御ゲイン、速度制御ゲインにて動作する。
【0078】
(過電圧アラーム停止の回避動作)
電圧アラーム回避回路40は、入力される主回路電圧uが基準値を超えて上昇し過電圧アラーム停止となるような過電圧になる可能性が高くなった場合には、位置制御部2と速度制御部5の各制御ゲインを下げる過電圧回避動作を行う。その結果、サーボアンプ50dは、位置制御ゲイン、速度制御ゲインを下げた状態で動作する。
【0079】
制御ゲインを下げると応答性が低くなり、運転パターンにおける減速度が下がる。その結果、単位時間当たりの回生エネルギーが小さくなり、瞬時過電圧が発生しにくくなる。あるいは、トップ速度が下がると回生されるエネルギーが減少することから主回路電圧の上昇が少なくなるので、過電圧アラーム停止となるような過電圧になりにくくなる。以上のようにして、過電圧アラーム停止を回避する動作を行うことができる。
【0080】
(不足電圧アラーム停止の回避動作)
電圧アラーム回避回路40は、入力される主回路電圧uが瞬停などで基準値以下に下降し、不足電圧アラーム停止となるような不足電圧になる可能性が高くなった場合には、位置制御部2と速度制御部5の各制御ゲインを下げる不足電圧回避動作を行う。その結果、サーボアンプ50dは、位置制御ゲイン、速度制御ゲインを下げた状態で動作することになる。
【0081】
制御ゲインを下げると応答性が低くなり、運転パターンにおける加速度が下がる。その結果、加速トルクが減少することから、主回路電圧の低下が少なくなり、不足電圧アラーム停止を回避する動作を行うことができる。
【0082】
ここで、図7では、電圧アラーム回避回路40は、主回路電圧を監視する場合を示したが、電圧値自体を検出する手段を有しない場合などにおいては、主回路電圧が過電圧の閾値レベルを超過したことを判断するフラグや、不足電圧の閾値レベルを下回ったことを判断するフラグを監視するようにしてもよい。
【0083】
このように、本実施の形態4によれば、過電圧アラーム停止となるような過電圧の発生を予知した場合は、トルク制御部の入力経路に形成される制御系である位置制御部と速度制御部の一方または両方の制御ゲインを下げるように変更して該制御系の制御応答性を下げて減速度を下げるようにしたので、主回路電圧の上昇を抑えることができ、次運転サイクルでの過電圧アラーム停止を回避することができる。
【0084】
また、本実施の形態4によれば、不足電圧アラーム停止となるような不足電圧の発生を予知した場合には、トルク制御部の入力経路に形成される制御系である位置制御部と速度制御部の一方または両方の制御ゲインを下げるように変更して該制御系の制御応答性を下げて加速度を下げるようにしたので、主回路電圧の減少を少なくすることができ、次運転サイクルでの不足電圧アラーム停止を回避することができる。
【0085】
このとき、ゲインパラメータを変更するだけであるので、リミッタを絞る従来例に示される対策方法と違って線形動作することになる。その結果、ショックや振動を発生させず、また、不安定・ハンチングも発生させない。構成が単純となり、演算量が少なくなり、ユーザに公開したパラメータの変更であるのでユーザに安心感を与える、などの効果もある。
【0086】
ここで、本発明は、以上説明した実施の形態1〜4に限定されるものではなく、以下に示す各種の態様が可能である。
【0087】
(1)実施の形態1〜4では、フィードバック信号が入力される位置・速度制御部の構成を、位置比例・速度比例の直列接続として説明しているが、それに限るものではなく、位置比例・速度比例積分制御や位置比例・積分・微分制御等でも、実施の形態1〜4にて説明した動作と同一の動作を行うことが可能である。
【0088】
(2)実施の形態1〜4では、全て位置制御モードにて説明しているが、位置制御モードに限らず、速度制御モードの場合はもちろん、圧力制御モードなど、トルク制御部の入力側経路に形成される制御系(トルク制御系の外側または前段に形成される制御系)において同様に適用可能である。この場合は、指令フィルタゲインやモデル制御ゲイン、あるいは速度制御ゲインや圧力制御ゲインなどを変更する方法を採用できる。
【0089】
(3)実施の形態1,2では、過負荷回避回路への入力は実効負荷率を用いているが、実効負荷率の2乗や推定した負荷率を用いても、同様の過負荷回避動作を行うことが可能である。また、サーボモータやエンコーダ、サーボアンプ、機械などの温度に関連する様々な観測値ないしは推定値を用いても、同様の過負荷回避動作を行うことが可能である。
【0090】
(4)実施の形態1〜4では、サーボアンプを例に挙げて説明したが、インバータなどその他のモータ制御装置でも同様に適用可能であることはいうまでもない。
【0091】
(5)実施の形態1〜4では、制御ゲイン変更比率をサーボアンプ内で決定しているが、上位コントローラにアラーム回避モードの要否を送信し、上位コントローラから制御ゲイン変更比率を指定してもらう手法も可能である。同期や補間などを行う機械では、他軸との連動が必要であることから上位コントローラで制御ゲイン変更比率を認知ないしは決定できることが望ましい。もちろん、制御ゲイン変更比率をサーボアンプ内にて決定し上位コントローラに送信するという方法も考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
以上のように、本発明にかかる保護機能を備えた電動機制御装置は、簡易な構成でアラーム停止を回避できる保護機能を備えたモータ制御装置として有用である。
【符号の説明】
【0093】
1 位置偏差演算器
2 位置制御部
3 速度演算器
4 速度偏差演算器
5 速度制御部
6 トルク制御部
7 サーボモータ
7a 位置検出器
8,25 過負荷回避回路
9 実効負荷率偏差演算部
10 スイッチ部
11 実効負荷率制御部
12 制限器
13 位置指令偏差演算器
14 指令フィルタ
15 修正位置指令演算器
22 速度制御ループ
30 過回生回避回路
40 電圧アラーム回避回路
50a,50b,50c,50d サーボアンプ(モータ制御装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各種の機械を駆動するモータに供給する電流の制御を行うトルク制御部を含むマイナーループを有するモータ制御装置において、
実効負荷率もしくは当該モータ制御装置と前記モータと前記機械との少なくともいずれか一つの温度に関する物理量を観測或いは推測し、過負荷になる可能性が高いと判断した場合に、前記実効負荷率を下げる方向に、前記トルク制御部の入力側経路に形成される制御系の制御応答性を変更する過負荷回避動作を行う構成、
を備えたことを特徴とする保護機能を備えた電動機制御装置。
【請求項2】
各種の機械を駆動するモータに供給する電流の制御を行うトルク制御部を含むマイナーループを有するモータ制御装置において、
回生負荷率もしくは回生コンバータと回生抵抗体との少なくともいずれか一方の温度に関する物理量を観測或いは推測し、過回生になる可能性が高いと判断した場合に、前記回生負荷率を下げる方向に、前記トルク制御部の入力側経路に形成される制御系の制御応答性を変更する過回生回避動作を行う構成、
を備えたことを特徴とする保護機能を備えた電動機制御装置。
【請求項3】
各種の機械を駆動するモータに供給する電流の制御を行うトルク制御部を含むマイナーループを有するモータ制御装置において、
当該モータ制御装置の主回路電圧値もしくは前記主回路電圧が閾値を超えるのを知らせるフラグを観測し、過電圧になる可能性が高いと判断した場合に、前記主回路電圧の上昇を抑制する方向に、前記トルク制御部の入力側経路に形成される制御系の制御応答性を変更する過電圧回避動作を行う構成、
を備えたことを特徴とする保護機能を備えた電動機制御装置。
【請求項4】
各種の機械を駆動するモータに供給する電流の制御を行うトルク制御部を含むマイナーループを有するモータ制御装置において、
当該モータ制御装置の主回路電圧値もしくは前記主回路電圧が閾値を超えるのを知らせるフラグを観測し、不足電圧になる可能性が高いと判断した場合に、前記主回路電圧の低下を抑制する方向に、前記トルク制御部の入力側経路に形成される制御系の制御応答性を変更する不足電圧回避動作を行う構成、
を備えたことを特徴とする保護機能を備えた電動機制御装置。
【請求項5】
前記制御応答性の変更は、位置制御ゲインと速度制御ゲインの一方または両方を変更することにより行われることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の保護機能を備えた電動機制御装置。
【請求項6】
前記制御応答性の変更は、指令フィルタゲインを変更することにより行われることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の保護機能を備えた電動機制御装置。
【請求項7】
前記制御応答性の変更は、モデルゲインを変更することにより行われることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の保護機能を備えた電動機制御装置。
【請求項8】
前記制御応答性の変更は、動作完了後または次サイクルでの運転開始前に行われることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の保護機能を備えた電動機制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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