説明

保護装置及びこれを用いた電池

【課題】 電池内への組み込み作業を向上できる保護装置及びこれを用いた電池を提供する。
【解決手段】 第1及び第2の接続端子12、13を有し、周囲温度に応じて第1及び第2の接続端子12、13間の導通/非導通を切り換える感熱素子2と、上面から下面へ連通する貫通部1bを有し、感熱素子2と係合する平板状の絶縁スペーサ1とを備え、感熱素子2の本体部を貫通部1bに位置させ、第1及び第2の接続端子12、13の一部を絶縁スペーサ1に埋設して一体的に保持すると共に、絶縁スペーサ1の上面及び下面のどちらか一方に第1の接続端子12を露出させて第1の外部接続部12bを形成し、且つ、これとは対向する他方に第2の接続端子13を露出させて第2の外部接続部13bを形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護装置及びこれを用いた電池に係り、特に、二次電池に用いられる保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の温度で動作して導通状態を切り換える温度ヒューズを内蔵した電池の構造としては、温度ヒューズの2本の接続端子を、蓋板と絶縁スペーサ、及び端子板と絶縁スペーサとで挟んで組み込む構成のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この従来の温度ヒューズを内蔵した電池の構成を図6、図7に示す。図6は従来の電池の概略構造を示す断面図、図7は従来の電池の封口体を示す分解斜視図である。
【0004】
〔封口体の作製〕図において、51は蓋板であり、中央部には円錐台形に下方に突出して中心に弁孔52を穿設した突出部53が、また、その周辺には環状の平面部54が設けられている。55はアルミニウム薄板と熱溶着性ポリエチレンフィルムとをラミネートした熱溶着性薄膜であり、この薄膜55の外径は前記蓋板51の突出部53の内径とほぼ一致している。この薄膜55を蓋板51の突出部53の内底面に配し、弁孔52を閉塞するようにホットプレスによって蓋板51に熱溶着した。この時、前記薄膜55は、前記弁孔52に対向する部分を除いた全面が蓋板51に溶着されている。因に、密閉型電池内部のガス圧が所定圧以上になると、この薄膜55が破れて、ガス抜き孔57から密閉型電池内部のガスが噴出される。
【0005】
また、56は、ガス抜き孔57を有する帽子状の端子板である。58は、端子板56と蓋板51とを電気的に絶縁するポリプロピレン製の絶縁樹脂体である。59は、2本の棒状の接続端子60、61を持つ温度ヒューズである。尚、この温度ヒューズ59は、95℃以上になると作動するものである。この温度ヒューズ59の一方の接続端子60の或る程度の部分を蓋板51の平面部54と絶縁樹脂体58との間に挟むようにして、絶縁樹脂体58を蓋板51の平面部54の上に配した。次に、温度ヒューズ59の他方の接続端子61の或る程度の部分を端子板56と絶縁樹脂体58との間に挟むようにして、端子板56を絶縁樹脂体58の上に配した。それから、蓋板51の上部をカシメて端子板56を固定し、封口体62を作製した。尚、このカシメにより、接続端子60は蓋板51の平面部54と絶縁樹脂体58との間に挟着し、接続端子61は端子板56と絶縁樹脂体58との間に挟着している。また、接続端子60は蓋板51と接触により電気接続し、接続端子61は端子板56と接触により電気接続している。
【0006】
〔集電板付負極の作製〕負極は金属リチウム板からなり、この金属リチウムの一部にニッケル薄板からなる集電板63を圧着して集電板付負極を作製した。
〔集電板付正極の作製〕所定量の二酸化マンガン(活物質)と所定量のポリテトラフルオロエチレン(結着剤)と適量の水とを混合し、適度な粘性を有する正極合剤を調製し、この合剤をステンレス製のエキスパンドメタルにコーティングし、ローラで圧延した後、所定の大きさに切断し乾燥して正極板を作製した。
【0007】
次に、この正極板の合剤層を部分的に剥離してエキスパンドメタルを露出させ、この露出部分にステンレス薄板からなる集電板64をスポット溶接し、その後、集電板64の先端を除く部分と前記露出部分とを覆うようにして絶縁テープを貼り付けて集電板付正極を作製した。
【0008】
〔巻回電極体の作製〕前記集電板付負極の両端を粘着テープを用いてセパレータに接着固定した。次に、セパレータに固定されたこの負極の上にセパレータを載せ前記集電板付正極と重ね合わせて巻回し、粘着テープを1周半ほど巻いて貼り止めて巻回電極体65を作製した。
〔電解液の作製〕プロピレンカーボネートと1,2−ジメトキシエタンの等容量混合液に1mol/lのLiCFSOを溶解して作製した。
【0009】
〔電池の組立〕前記巻回電極体65を電池ケース66に挿入し、負極集電板63を電池ケース66の底にスポット溶接し、正極集電板64の先端と蓋板51とをスポット溶接した。その後、電池ケース66に電解液を注入し、電解液を電極等に十分に浸透させた後、予め電池ケース66の上部に形成した嵌合用溝に絶縁パッキング67を当てがい電池ケース66の上部に封口体62をカシメて電池ケース66を密閉した。
【0010】
【特許文献1】特開平9−153355号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述した従来の温度ヒューズを内蔵した電池の構造においては、3部材で温度ヒューズを挟み込んで組み立てるため、作業性が悪く、取り扱いが煩雑となってしまうという問題があった。
【0012】
したがって、本発明では上述した問題点を解決し、電池内への組み込み作業を向上できる保護装置及びこれを用いた電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために本発明の保護装置は第1の解決手段として、第1及び第2の接続端子を有し、周囲温度に応じて前記第1及び第2の接続端子間の導通/非導通を切り換える感熱素子と、上面から下面へ連通する貫通部を有し、前記感熱素子と係合する平板状の絶縁スペーサとを備え、前記感熱素子の本体部を前記貫通部に位置させ、前記第1及び第2の接続端子の一部を前記絶縁スペーサに埋設して一体的に保持すると共に、前記絶縁スペーサの上面及び下面のどちらか一方に前記第1の接続端子を露出させて第1の外部接続部を形成し、且つ、これとは対向する他方に前記第2の接続端子を露出させて第2の外部接続部を形成した構成とした。
【0014】
また、第2の解決手段として、前記第1及び第2の外部接続部の表面に、突状の接触部を形成した構成とした。
また、第3の解決手段として、前記第1及び第2の外部接続部の表面を膨出変形させて凸部を形成し、この凸部に対応する前記絶縁スペーサに凹部を形成し、前記凸部を前記絶縁スペーサの厚み方向に撓み可能とした構成とした。
また、第4の解決手段として、前記突状の接触部を、片持ち状に切り起こしたばね片で形成した構成とした。
また、第5の解決手段として、前記感熱素子の本体部と前記絶縁スペーサとを接続する、前記第1及び第2の接続端子の前記第1及び第2の外部接続部の前記接触部以外の露出部を、絶縁部材で被覆した構成とした。
また、第6の解決手段として、前記感熱素子の本体部を、絶縁部材で被覆した構成とした。
【0015】
また、第7の解決手段として、前記感熱素子は、温度ヒューズからなる構成とした。
また、第8の解決手段として、前記感熱素子は、バイメタルを内蔵した熱応動スイッチからなる構成とした。
また、第9の解決手段として、第1乃至第8の解決手段の何れかに記載の保護装置と、外部電極が設けられた上蓋と、安全弁が設けられた下蓋とを備え、前記上蓋と前記第1及び第2の接続端子のどちらか一方とが接続され、前記第1及び第2の接続端子の他方と前記下蓋とが接続されると共に、前記上蓋と前記下蓋との間に前記絶縁スペーサを挟持して一体化した構成とした。
また、第10の解決手段として本発明の電池は、第9の解決手段に記載の保護装置と、開放部を有し内部に発電体が収納されたケースとを備え、前記ケースの開放部に絶縁性のガスケットを介して前記保護装置の上蓋が被着されると共に、前記発電体、前記ケース、前記ガスケット及び前記上蓋にて構成される空間内に前記絶縁スペーサ、前記感熱素子、前記安全弁が設けられた下蓋を収納した構成とした。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明の保護装置は、第1及び第2の接続端子を有し、周囲温度に応じて第1及び第2の接続端子間の導通/非導通を切り換える感熱素子と、上面から下面へ連通する貫通部を有し、感熱素子と係合する平板状の絶縁スペーサとを備え、感熱素子の本体部を貫通部に位置させ、第1及び第2の接続端子の一部を絶縁スペーサに埋設して一体的に保持すると共に、絶縁スペーサの上面及び下面のどちらか一方に第1の接続端子を露出させて第1の外部接続部を形成し、且つ、これとは対向する他方に第2の接続端子を露出させて第2の外部接続部を形成したことから、感熱素子の第1及び第2の接続端子を絶縁スペーサに埋設して一体化したので、単一部品として容易に取り扱え、電池蓋内への組み込み作業を簡単に行なえる。また、絶縁スペーサへの感熱素子の組み込みを精度良く行なえ、搬送途中の変形防止も図れる。
【0017】
また、第1及び第2の外部接続部の表面に、突状の接触部を形成したことから、電池蓋への圧接時の接触信頼性を高めることができる。
また、第1及び第2の外部接続部の表面を膨出変形させて凸部を形成し、この凸部に対応する絶縁スペーサに凹部を形成し、凸部を絶縁スペーサの厚み方向に撓み可能としたことから、凸部の裏面に凹部を設けることにより簡単な構造で凸部を撓ますことができ、圧接時の接触圧を確実に得られる。
また、突状の接触部を、片持ち状に切り起こしたばね片で形成したことから、ばね片が撓むことにより、更に圧接時の接触圧を確実に得られる。
また、感熱素子の本体部と絶縁スペーサとを接続する、第1及び第2の接続端子の第1及び第2の外部接続部の接触部以外の露出部を、絶縁部材で被覆したことから、電池の電解液やガスから第1及び第2の接続端子を保護することができる。
また、感熱素子の本体部を、絶縁部材で被覆したことから、感熱素子の本体部と接続端子との合わせ目の隙間からの電解液のしみ込みを防止できる。
【0018】
また、感熱素子は、温度ヒューズからなることから、機構部がなく安価に形成できる。
また、感熱素子は、バイメタルを内蔵した熱応動スイッチからなることから、温度が低下した後に復帰でき、自己復帰時の内部抵抗が小さいので、良好な電池特性が得られる。
また、第1乃至第8の解決手段の何れかに記載の保護装置と、外部電極が設けられた上蓋と、安全弁が設けられた下蓋とを備え、上蓋と第1及び第2の接続端子のどちらか一方とが接続され、第1及び第2の接続端子の他方と下蓋とが接続されると共に、上蓋と下蓋との間に絶縁スペーサを挟持して一体化したことから、外部電極、安全弁を含めて一部品にでき、取り扱いが容易となる。
また、本発明の電池は、第9の解決手段に記載の保護装置と、開放部を有し内部に発電体が収納されたケースとを備え、ケースの開放部に絶縁性のガスケットを介して保護装置の上蓋が被着されると共に、発電体、ケース、ガスケット及び上蓋にて構成される空間内に絶縁スペーサ、感熱素子、安全弁が設けられた下蓋を収納したことから、保護装置が一部品に一体化されているので、電池の組み立て作業性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の保護装置及びこれを用いた電池の実施形態を図1乃至図5に示す。図1は本発明の保護装置を示す平面図、図2は本発明の保護装置を示す断面図、図3は第1及び第2の外部接続部の表面に形成した突状の接触部を示す要部断面図、図4は第1及び第2の外部接続部の表面に形成した突状の接触部の変形例を示す要部断面図、図5は本発明の保護装置を組み込んだ電池を示す要部断面図である。
【0020】
図1、図2において、本発明の保護装置は、絶縁スペーサ1と、この絶縁スペーサ1に一体的に保持された感熱素子2とから構成されている。
【0021】
絶縁スペーサ1は、合成樹脂等の絶縁材からなり、円環状の基部1aと、この基部1aの中央に上下方向に貫通する大径の貫通部1bとを有している。
【0022】
感熱素子2は、図2に示すように、絶縁ケース11と、この絶縁ケース11に保持された第1及び第2の接続端子12、13と、第2の接続端子13に一端が固着されたバイメタル片14と、絶縁ケース11の上部を覆うカバー15とから主に構成されている。
【0023】
絶縁ケース11は、合成樹脂等の絶縁材で上面が開口された箱型に形成されている。この絶縁ケース11の内底には、第1の接続端子12及び第2の接続端子13の一端部が所定の間隔を隔てて対向して取り付けられている。尚、絶縁ケース11の大きさは、前記絶縁スペーサ1の貫通部1bの大きさより小さく形成されている。
【0024】
第1の接続端子12は、リン青銅などの良導電性の金属材料で形成され、その一端部には、銀酸化錫などからなる固定接点12aが設けられている。この第1の接続端子12は、固定接点12aが形成された一端部を絶縁ケース11内に配置し、他端部を絶縁ケース11外に突出した状態で絶縁ケース11に取り付けられている。
【0025】
第2の接続端子13は、同じくリン青銅などの良導電性の金属材料で形成され、その一端部には、バイメタル片14を取り付けるための突出部13aが形成されている。この第2の接続端子13は、突出部13aが形成された一端部を絶縁ケース11内に配置し、他端部を絶縁ケース11外に突出した状態で、絶縁ケース11に取り付けられている。これらの第1の接続端子12及び第2の接続端子13は、インサート成形などの方法で絶縁ケース11に一体に埋設されている。
【0026】
バイメタル片14は、熱膨張率が高い金属板と、熱膨張率が低い金属板とを張り合わせて形成されている。その一端部には、銀酸化錫などからなる可動接点14aがレーザ溶接等によって固着され、他端部側は、第2の接続端子13に形成された突出部13に固着されている。また、可動接点14aの固着部と突出部13との固着部との間の中間部には、ドーム状に湾曲した反転部14bが形成されている。このバイメタル片14は、前記突出部13にレーザ溶接等で固着されて一体化され、可動接点14aが第1の接続端子12に設けられた固定接点12aと対向して配置されている。
【0027】
バイメタル片14の作動温度は、核金属板の材質や形状を変更することにより設定することができるが、二次電池の充電装置に備えられる安全装置のバイメタル片14としては、電池内の電解液や活物質の過熱を防止して電池寿命を保護するために、昇温時には設定温度(動作温度)で固定接点12aと可動接点14aとが導通状態から非導通状態に切り換えられ、冷却時には設定温度よりも低温の設定温度(復帰温度)で固定接点12aと可動接点14aとが非導通状態から導通状態に切り換えられるように設定されるものとなっている。
【0028】
カバー15は、合成樹脂などの絶縁材で平板状に形成され、絶縁ケース11の開口部に被着される。これによって、絶縁ケース1内に収納された第1及び第2の接続端子12、13、バイメタル片14、固定接点12a及び可動接点14aへの塵埃やガスなどの影響が防止されるものとなっている。
【0029】
前記感熱素子2は、絶縁ケース11が、前記絶縁スペーサ1の貫通部1b内に配置されると共に、感熱素子2の、第1の接続端子12及び第2の接続端子13が絶縁ケース11外に突出された他端部が、前記絶縁スペーサ1の基部1aにインサート成形等の方法で一体に埋設されている。この時、第1の接続端子12は基部1aの下面側に配置され、その下面側が露出して第1の外部接続部12bが設けられている。また、この第1の外部接続部12bの表面には、下方へ突出する突状の接触部12cが設けられている。
【0030】
また、第2の接続端子13は前記貫通部1b内で1段上方に屈曲されて突出されており、前記基部1aの上面側に配置されている。そして、その上面側が露出して第2の外部接続部13bが設けられている。この、第2の外部接続部13bの表面には、上方へ突出する突状の接触部13cが設けられている。
このように、第1及び第2の外部接続部12b、13bの表面に、突状の接触部12c、13cを形成したことから、後述する電池の上蓋6及び下蓋7への圧接時の接触信頼性を高めることができる。
【0031】
尚、前記感熱素子2の絶縁ケース11及びカバー15からなる本体部と、前記絶縁スペーサ1とを接続する、前記第1及び第2の接続端子12、13の前記第1及び第2の外部接続部12b、13bの前記接触部12c、13c以外の露出部を、エポキシ樹脂等の絶縁部材で被覆するようにしても良い。この場合には、電池の電解液やガスから第1及び第2の接続端子12、13を保護することができるものとなる。
また、これに加えて、前記感熱素子2の本体部(絶縁ケース11及びカバー15)を、エポキシ樹脂等の絶縁部材で被覆するようにしても良い。この場合には、感熱素子の本体部と第1及び第2の接続端子12、13との合わせ目の隙間からの電解液のしみ込みを防止できるものとなる。
【0032】
図3に示すのは、前記第1及び第2の外部接続部12b、13bの表面を膨出変形させて、凸部を形成したもので、この凸部で前記接触部12c、13cを構成している。また、この凸部に対応する前記絶縁スペーサ1の基部1aには、凸部より一回り大きな外形を有する凹部1cが形成されており、この凹部1cを形成することにより、前記凸部が絶縁スペーサ1の厚み方向(凹部内)に撓み可能に形成されている。この場合には、凸部を絶縁スペーサ1の厚み方向に撓み可能としたことから、凸部の裏面に前記凹部1cを設けることにより簡単な構造で凸部を撓ますことができ、圧接時の接触圧を確実に得られるものとなる。
【0033】
また、図4に示すのは、前記第1及び第2の外部接続部12b、13bの表面を片持ち状に切り起こしてばね片を形成したもので、このばね片で前記接触部12c、13cを構成している。また、同じく、このばね片に対応する前記絶縁スペーサ1の基部1aには、ばね片より一回り大きな外形を有する凹部1cが形成されており、この凹部1cを形成することにより、前記ばね片が絶縁スペーサ1の厚み方向に撓み可能に形成されている。この場合には、突状の接触部13cを、片持ち状に切り起こしたばね片で形成したことから、ばね片が撓むことにより、更に圧接時の接触圧を確実に得られるものとなる。
【0034】
上記実施例では、感熱素子2は、バイメタル片14を内蔵した熱応動スイッチから構成されており、このように、感熱素子2に熱応動スイッチを使用すれば、温度が低下した後に復帰でき、自己復帰時の内部抵抗が小さいので、良好な電池特性が得られるものとなる。
また、感熱素子2としては、上記熱応動スイッチに代えて、温度ヒューズで構成しても良く、この場合には、機構部が不要となり部品点数が削減されるので、安価に形成できるものとなる。
【0035】
次に本発明の保護装置を電池に用いた例を図5に基づいて説明する。
図5に示すように、本発明の電池は、発電体3が収納されたケース4と、ケース4の開放部に絶縁性のガスケット5を介して被着された外部電極を設けた上蓋6と、前記発電体3、ケース4、ガスケット5及び上蓋6にて構成される空間S内に収納された、絶縁スペーサ1、感熱素子2、安全弁8を設けた下蓋7とから主に構成されている。
【0036】
発電体3は、負極材(例えば、金属リチウム箔)と電解液をしみ込ませたセパレータと正極材(例えば、硫化モリブデンを塗布した正極基板)とが、この順に積層された積層体を巻芯(図示せず)上に筒状に巻回して形成されている。この発電体3の上面には、シート状の絶縁板3aが配置され、前記下蓋7との絶縁が図られている。前記正極材と前記下蓋7に設けられたリード板7cとは、リード端子3bを介して電気的に接続されている。
【0037】
ケース4は、アルミニウム又はニッケルあるいはそれらの合金などの金属材料で筒状に形成されており、上端の開放部には、絶縁スペーサ1、安全弁8、下蓋7、ガスケット5及び上蓋6が固着されている。このケース4は、発電体3の負極材と電気的に接続されている。
【0038】
ガスケット5は、電池からの液漏れ並びに電池の正極と負極とのショートを防止するためのもので、合成樹脂等の絶縁材で形成されている。
上蓋6は、ステンレス板などの硬質で良導電性の金属材で円盤状に形成されており、その一部には、ガス抜き孔(図示せず)が開設されている。この上蓋6は、絶縁スペーサ1に固着された感熱素子2の第2の接続端子13の第2の外部接続部13bの表面に上方へ突出して設けられた突状の接触部13cと密着して電気的に接続され、前記感熱素子2及び安全弁8と直列に接続されて外部電極を構成している。
【0039】
安全弁8は、アルミニウム又はニッケルあるいはそれらの合金で円盤状に形成されており、外周縁よりもやや内方に環状の段部8aを有し、この段部8aより垂下した部分に下方に突出する環状の隆起部8bを有する。また、中心部には、隆起部8bよりも下方に突出する突起8cを有し、隆起部8bと突起8cとの間に形成される平坦面には放射状に延びる薄肉状の溝(図示せず)が形成されている。
下蓋7は、合成樹脂等の絶縁性のシートで中央部に突起挿通孔7aを有する円板形に形成されており、その上面には、導電膜7bが被着形成されている。
【0040】
図5に示すように、安全弁8が非動作状態にある時、下蓋7の上面に被着された導電膜7bに安全弁8に形成された環状の隆起部8bが当接され、かつ、下蓋7に開設された突起挿通孔7a内に安全弁8に形成された突起8cが挿入されて、前記導電膜7bと突起8cとが電気的に接続されている。また、安全弁8の最外周部は、前記第1の接続端子12の第1の外部接続部12bの表面に下方へ突出して設けられた突状の接触部12cと電気的に接続されている。
【0041】
さらに、下蓋7の下面と突起8cの下面との間には、リード板7cが橋渡され、それぞれ下蓋7と突起8cの下面とに溶接されている。したがって、リード板7c、導電膜7b、安全弁8、第1の接続端子12、感熱素子2、第2の接続端子13が直列に接続され、感熱素子2又は安全弁8のいずれかが非導通状態に切り換えられたときに電池への通電を停止する保護装置となっている。
【0042】
保護装置の内圧が何らかの原因によって上昇すると、その圧力を受けて安全弁8の中央部が上昇し、図5に示す、リード板7cが切断される。これによって、安全弁8は非導通状態に切り換えられ、電池への通電が停止される。また、電池の内圧がさらに高くなると、安全弁8の薄肉部が破断し、電池内に発生したガスを電池外に放出することができる。
【0043】
本発明の電池の組立方法としては、まず、ケース4内に発電体3を収納し、ケース4と発電体3中の負極材とを電気的に接続する。次に、発電体3の上面にシート状の絶縁板3aを配置し、発電体3中の正極材と安全弁8の設けられたリード板7cとをリード端子3bを介して電気的に接続する。
【0044】
次に、絶縁板3aの上方に設けられた空間S内に、下蓋7を絶縁板3a側にして、上蓋6、絶縁スペーサ1、感熱素子2、安全弁8、下蓋7からなる保護装置を収納し、安全弁8の下面と上蓋6の上面とをガスケット5を介してケース4に結合し、第1の接続端子12と安全弁8、及び第2の接続端子13と上蓋6とを密着して電気的に接続する。そして、発電体3中の正極材と上蓋6とは、リード端子3b、導電体(導電膜7b及びリード板7c)、安全弁8、第1の接続端子12、感熱素子2、及び第2の接続端子13を介して電気的に接続されるものとなる。
【0045】
したがって、本発明の電池は、電池温度が感熱素子2の動作温度以上に上昇した場合、及び、電池内圧が安全弁8の作動圧力以上に上昇した場合に、発電体3中の正極材と上蓋6とをつなぐ経路が遮断され、電池の充電が停止され、それ以上の電池温度の上昇及び電池内圧の上昇が防止されるものとなる。
【0046】
本発明の保護装置は、感熱素子2を一体に埋設した絶縁スペーサ1を、上蓋6と安全弁8を設けた下蓋7で挟持することで、予め、一体化させて保護装置を構成するようにしている。このように、外部電極を構成する上蓋6と第2の接続端子13とが接続され、安全弁8が設けられた下蓋7と第1の接続端子12とが接続されると共に、上蓋6と下蓋7との間に絶縁スペーサ1を挟持して一体化したことから、外部電極や安全弁8を含めて保護装置を一部品にできるので、取り扱いを容易に行なえるものとなっている。
【0047】
また、本発明の電池は、前記発電体3、前記ケース4、前記ガスケット5及び上蓋6にて構成される空間S内に、保護装置として一体化された、前記絶縁スペーサ1、前記感熱素子2、前記安全弁8が設けられた下蓋7とを収納するようにしたことから、予め保護装置が一部品に一体化されているので、電池の組み立て作業性を向上できるものとなっている。
【0048】
上記した本発明の実施例によれば、第1及び第2の接続端子12、13を有し、周囲温度に応じて前記第1及び第2の接続端子12、13間の導通/非導通を切り換える感熱素子2と、上面から下面へ連通する貫通部1bを有し、前記感熱素子2と係合する平板状の絶縁スペーサ1とを備え、前記感熱素子2の本体部を前記貫通部1bに位置させ、前記第1及び第2の接続端子12、13の一部を前記絶縁スペーサ1に埋設して一体的に保持すると共に、前記絶縁スペーサ1の下面に前記第1の接続端子12を露出させて第1の外部接続部12bを形成し、且つ、これとは対向する上面に前記第2の接続端子13を露出させて第2の外部接続部13bを形成したことから、前記感熱素子2の前記第1及び第2の接続端子12、13を前記絶縁スペーサ1に埋設して一体化したので、単一部品として容易に取り扱え、電池蓋内への組み込み作業を簡単に行なえるものとなっている。
また、前記感熱素子2の、前記第1及び第2の接続端子12、13の一部を、前記絶縁スペーサ1に埋設して一体的に保持する用にしたので、前記絶縁スペーサ1への前記感熱素子2の組み込みを精度良く行なえ、搬送途中の変形防止も図れるものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の保護装置を示す平面図である。
【図2】本発明の保護装置を示す断面図である。
【図3】本発明の第1及び第2の外部接続部の表面に形成した突状の接触部を示す要部断面図である。
【図4】本発明の第1及び第2の外部接続部の表面に形成した突状の接触部の変形例を示す要部断面図である。
【図5】本発明の保護装置を組み込んだ電池を示す要部断面図である。
【図6】従来の電池の概略構造を示す断面図である。
【図7】従来の電池の封口体を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0050】
1:絶縁スペーサ
1a:基部
1b:貫通部
1c:凹部
2:感熱素子
3:発電体
3a:絶縁板
3b:リード端子
4:ケース
5:ガスケット
6:上蓋
7:下蓋
7a:突起挿通孔
7b:導電膜
7c:リード板
8:安全弁
8a:段部
8b:隆起部
8c:突起
11:絶縁ケース
12:第1の接続端子
12a:固定接点
12b:第1の外部接続部
12c:接触部
13:第2の接続端子
13a:突出部
13b:第2の外部接続部
13c:接触部
14:バイメタル片
14a:可動接点
14b:反転部
15:カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の接続端子を有し、周囲温度に応じて前記第1及び第2の接続端子間の導通/非導通を切り換える感熱素子と、上面から下面へ連通する貫通部を有し、前記感熱素子と係合する平板状の絶縁スペーサとを備え、前記感熱素子の本体部を前記貫通部に位置させ、前記第1及び第2の接続端子の一部を前記絶縁スペーサに埋設して一体的に保持すると共に、前記絶縁スペーサの上面及び下面のどちらか一方に前記第1の接続端子を露出させて第1の外部接続部を形成し、且つ、これとは対向する他方に前記第2の接続端子を露出させて第2の外部接続部を形成したことを特徴とする保護装置。
【請求項2】
前記第1及び第2の外部接続部の表面に、突状の接触部を形成したことを特徴とする請求項1記載の保護装置。
【請求項3】
前記第1及び第2の外部接続部の表面を膨出変形させて凸部を形成し、この凸部に対応する前記絶縁スペーサに凹部を形成し、前記凸部を前記絶縁スペーサの厚み方向に撓み可能としたことを特徴とする請求項2記載の保護装置。
【請求項4】
前記突状の接触部を、片持ち状に切り起こしたばね片で形成したことを特徴とする請求項2記載の保護装置。
【請求項5】
前記感熱素子の本体部と前記絶縁スペーサとを接続する、前記第1及び第2の接続端子の前記第1及び第2の外部接続部の前記接触部以外の露出部を、絶縁部材で被覆したことを特徴とする請求項2乃至4の何れかに記載の保護装置。
【請求項6】
前記感熱素子の本体部を、絶縁部材で被覆したことを特徴とする請求項5記載の保護装置。
【請求項7】
前記感熱素子は、温度ヒューズからなることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の保護装置。
【請求項8】
前記感熱素子は、バイメタルを内蔵した熱応動スイッチからなることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の保護装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れかに記載の保護装置と、外部電極が設けられた上蓋と、安全弁が設けられた下蓋とを備え、前記上蓋と前記第1及び第2の接続端子のどちらか一方とが接続され、前記第1及び第2の接続端子の他方と前記下蓋とが接続されると共に、前記上蓋と前記下蓋との間に前記絶縁スペーサを挟持して一体化したことを特徴とする保護装置。
【請求項10】
請求項9記載の保護装置と、開放部を有し内部に発電体が収納されたケースとを備え、前記ケースの開放部に絶縁性のガスケットを介して前記保護装置の上蓋が被着されると共に、前記発電体、前記ケース、前記ガスケット及び前記上蓋にて構成される空間内に前記絶縁スペーサ、前記感熱素子、前記安全弁が設けられた下蓋を収納したことを特徴とする電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−66313(P2006−66313A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−249685(P2004−249685)
【出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】