説明

保護部材付電線、および、その製造方法

【課題】電線の組み立てにかかる負担を軽減可能であり、さまざまな組み立て形状に柔軟に対応可能な技術を提供する。
【解決手段】保護部材付電線1は、主面に、複数の経路を選択可能な経路網が形成された保護部材3と、経路網に対して設定された選択経路に沿う状態で配設された電線2と、を備える。保護部材3は、例えば、主面に形成された複数の突起32を備え、複数の突起32のそれぞれが、他の突起との間に電線2を這わすことができる経路を形成するとともに、当該経路の分岐部を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両等に設けられる電線に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等に搭載される電線は、予め定められた経路に沿う枝形状(敷設形状)に組み立てられた上で車両等に搭載される。電線の組み立ては、例えば、電線を、組立図板に立設された治具によって受け止められた状態になるように布線板上において布線して定められた敷設形状とし、布線された電線をテープ巻きにより結束し、さらに、定められた位置に各種部品(樹脂製のプロテクタ、電線を車体等に固定するための固定用の部品(例えばクランプ)等)を取り付けることによって行われる。
【0003】
上記に例示した態様による電線の組み立て工程は、工程数が多いため、作業者の作業負担が大きい。また、組立図板や治具等、作業に必要な部品も多いため、コスト負担も大きい。そこで、より小さな負担で電線の組み立てを行えるような技術が求められていた。
【0004】
このような要求に応じて、例えば特許文献1には、成型用金型を用いて電線を組み立てる態様が提案されている。ここでは、定められた枝形状の溝が形成された成型用金型に電線を布線し、樹脂を充填して型締めしてモールドすることによって、定められた敷設形状に維持された電線を形成している。
【0005】
特許文献1で提案されている技術を用いると、組立図板および治具を用いなくとも、電線を定められた形状に組み立てることができる。また、得られる電線はプロテクタと一体化された構成となっているので、プロテクタの取付工程を別に行う必要がない。
【0006】
また、例えば特許文献2には、車両に搭載されるインストルメントパネル、ドアパネル等に配置された補強リブに、電線の配索経路を挟んで交互に位置するように配置された複数の固定手段を設ける構成が開示されている。ここでは、固定手段は、一対の突起により構成されており、電線を挟持固定する。
【0007】
特許文献2で提案されている技術を用いた場合も、組立図板および治具を用いなくとも、電線を定められた形状に組み立てることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−6129号公報
【特許文献2】特開2006−304496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示の技術によると、電線の敷設形状に対応した成型用金型を用いなければならず、様々な敷設形状に対応した成型用金型を準備しておく必要がある。また、電線の設計変更(経路の変更、分岐位置の変更、プロテクタの形状変更、電線束の総数の変更(すなわち、電線束の径サイズの変更)等)が生じるたびに、変更後の電線に応じた成型用金型を新たに準備しなければならない。一般に、電線の敷設形状は多様であり、また、電線の設計変更も頻繁に生じうる。したがって、特許文献1に開示の技術を用いようとすると、膨大な種類の成型用金型の作成が必要となり、コスト面において大きな負担が強いられることになる。
【0010】
また、特許文献2に開示の技術において、電線の固定手段が形成されるインストルメントパネル、ドアパネル等は、電線の経路に応じて仕様が変更される汎用性の低い部品であるため、同一の部品で敷設形状の異なる電線に対応することが難しい。また、固定手段を、電線の敷設形状に対応した位置に形成する必要があるため、電線の設計変更に柔軟に対応することが難しい。
【0011】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、電線の組み立てにかかる負担を軽減可能であり、さまざまな組み立て形状に柔軟に対応可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の態様に係る保護部材付電線は、主面に、複数の経路を選択可能な経路網が形成された保護部材と、前記経路網に対して設定された選択経路に沿う状態で配設された電線と、を備える。
【0013】
第2の態様に係る保護部材付電線は、第1の態様に係る保護部材付電線であって、前記保護部材が、前記主面に形成された複数の突起、を備え、前記複数の突起のそれぞれが、他の突起との間に前記電線を這わすことができる経路を形成するとともに、当該経路の分岐部を構成する。
【0014】
第3の態様に係る保護部材付電線は、第2の態様に係る保護部材付電線であって、前記複数の突起が格子点上に複数個配列される。
【0015】
第4の態様に係る保護部材付電線は、第2または第3の態様に係る保護部材付電線であって、前記複数の突起のそれぞれが、筒形状の突起である。
【0016】
第5の態様に係る保護部材付電線は、第2または第3の態様に係る保護部材付電線であって、前記複数の突起のそれぞれが、棒形状の突起である。
【0017】
第6の態様に係る保護部材付電線は、第2から第5のいずれかの態様に係る保護部材付電線であって、前記複数の突起のそれぞれが、平面視において、角が丸められた多角形状である。
【0018】
第7の態様に係る保護部材付電線は、第2から第5のいずれかの態様に係る保護部材付電線であって、前記複数の突起のそれぞれが、平面視において円形状である。
【0019】
第8の態様に係る保護部材付電線は、第1から第7のいずれかの態様に係る保護部材付電線であって、前記電線を間に挟み込むようにして前記保護部材の主面の全体を覆うカバー部材、を備える。
【0020】
第9の態様に係る保護部材付電線は、第1の態様に係る保護部材付電線であって、前記電線を間に挟み込むようにして前記保護部材の主面の全体を覆うカバー部材、を備え、前記保護部材が、前記主面に形成された複数の筒状突起であって、それぞれが、他の筒状突起との間に前記電線を這わすことができる経路を形成するとともに、当該経路の分岐部を構成する、複数の筒状突起、を備え、前記カバー部材が、主面に形成され、前記保護部材における前記複数の筒状突起とそれぞれ対応する位置に形成された複数の筒状突起、を備え、前記カバー部材が、前記筒状突起が突出した前記主面を前記保護部材の主面に向けた状態で前記保護部材の主面の全体を覆い、前記カバー部材が前記保護部材の主面を覆った状態において、前記保護部材が備える筒状突起群と前記カバー部材が備える筒状突起群とのうちの一方の筒状突起群を構成する各筒状突起が、他方の筒状突起群を構成する各筒状突起の中に差し込まれた状態となる。
【0021】
第10の態様に係る保護部材付電線は、第1の態様に係る保護部材付電線であって、前記電線を間に挟み込むようにして前記保護部材の主面の全体を覆うカバー部材、を備え、前記保護部材が、前記主面に形成された複数の突起であって、それぞれが、他の突起との間に前記電線を這わすことができる経路を形成するとともに、当該経路の分岐部を構成する、複数の突起、を備え、前記カバー部材が、主面に形成され、前記保護部材における前記複数の突起とそれぞれ対応する位置に形成された複数の筒状突起、を備え、前記カバー部材が前記筒状突起が突出した前記主面と逆の面を前記保護部材の主面に向けた状態で前記保護部材の主面の全体を覆い、前記カバー部材が前記保護部材の主面の全体を覆った状態において、前記保護部材が備える突起群を構成する各突起が、前記カバー部材が備える筒状突起群を構成する各筒状突起の中に入れ子状に差し込まれた状態となる。
【0022】
第11の態様に係る保護部材付電線は、第1の態様に係る保護部材付電線であって、前記電線を間に挟み込むようにして前記保護部材の主面の全体を覆うカバー部材、を備え、前記保護部材が、前記主面に形成された複数の突起であって、それぞれが、他の突起との間に前記電線を這わすことができる経路を形成するとともに、当該経路の分岐部を構成する、複数の突起、を備え、前記カバー部材が、主面に形成され、前記保護部材における前記複数の突起とそれぞれ対応する位置に形成された複数の貫通孔、を備え、前記カバー部材が前記保護部材の主面の全体を覆った状態において、前記保護部材が備える突起群を構成する各突起が、前記カバー部材が備える貫通孔群を構成する各貫通孔に挿通される。
【0023】
第12の態様に係る保護部材付電線は、第1から第11のいずれかの態様に係る保護部材付電線であって、前記保護部材が、前記保護部材付電線を外部部材に固定させるための固定用部品を挿通させる貫通孔、を備える。
【0024】
第13の態様に係る保護部材付電線の製造方法は、a)主面に、複数の経路を選択可能な経路網が形成された保護部材において、前記経路網に対して選択経路を設定する工程と、b)前記経路網に対して設定された選択経路に沿う状態で電線を配設する工程と、を備える。
【0025】
第14の態様に係る保護部材付電線の製造方法は、第13の態様に係る保護部材付電線の製造方法であって、c)前記保護部材における、配設された前記電線の経路領域を含まない部分領域を切り取る工程、を備える。
【発明の効果】
【0026】
第1,13の態様によると、保護部材に、複数の経路を選択可能な経路網が形成されており、当該経路網に対して設定された選択経路に沿う状態で配設することによって、電線を定められた形状に規制することができるので、電線の組み立てにかかる負担が大幅に軽減される。また、選択する経路を変更するだけで電線を異なる形状に規制することができるので、さまざまな組み立て形状に柔軟に対応することができる。
【0027】
第2の態様によると、保護部材に複数の突起により経路網が構成されるので、簡単な構成で保護部材の主面に経路網を形成することができる。
【0028】
第3の態様によると、複数の突起が格子点上に配列されるので、保護部材の主面に格子状の経路網を形成することができる。
【0029】
第4の態様によると、複数の突起が筒形状であるので、保護部材を軽量化できる。
【0030】
第5の態様によると、複数の突起が棒形状であるので、経路幅を広く確保できる。
【0031】
第6の態様によると、複数の突起のそれぞれが、平面視において、角が丸められた多角形状であるので、突起に沿うように這わせられた電線が傷つきにくい。
【0032】
第7の態様によると、複数の突起のそれぞれが、平面視において円形状であるので、突起に沿うように這わせられた電線が傷つきにくい。
【0033】
第8の態様によると、電線を間に挟み込むようにして保護部材の主面の全体を覆うカバー部材を備えるので、電線を確実に保護できる。
【0034】
第9の態様によると、同じ部材を、カバー部材として用いることもでき、保護部材として用いることもできるので、保護部材付電線の製造にかかるコストを抑えることができる。また、カバー部材が保護部材の主面の全体を覆った状態において、保護部材が備える筒状突起群とカバー部材が備える筒状突起群とのうちの一方の筒状突起群を構成する各筒状突起が、他方の筒状突起群を構成する各筒状突起の中に差し込まれた状態となるので、保護部材付電線の全体の厚みを薄く抑えることができる。
【0035】
第10の態様によると、カバー部材が保護部材の主面の全体を覆った状態において、保護部材が備える突起群を構成する各突起が、カバー部材が備える筒状突起群を構成する各筒状突起の中に入れ子状に差し込まれた状態となるので、保護部材付電線の全体の厚みを薄く抑えることができる。
【0036】
第11の態様によると、カバー部材が保護部材の主面の全体を覆った状態において、保護部材が備える突起群を構成する各突起が、カバー部材が備える貫通孔群を構成する各貫通孔に挿通されるので、保護部材付電線の全体の厚みを薄く抑えることができる。
【0037】
第12の態様によると、保護部材付電線を外部部材に固定させるための固定用部品を挿通させる貫通孔を備えるので、保護部材付電線を外部部材に簡単に固定することができる。
【0038】
第14の態様によると、保護部材における、配設された電線の経路領域を含まない部分領域を切り取るので、保護部材付電線を、それが配置されるスペースに応じた形状とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明の第1の実施の形態に係る保護部材付電線の平面図である。
【図2】保護部材付電線の側断面図である。
【図3】保護部材付電線を製造する方法を説明するための図である。
【図4】保護部材付電線を車両等の定位置に固定する際の様子を示す図である。
【図5】この発明の第2の実施の形態に係る保護部材付電線の平面図である。
【図6】保護部材付電線の側断面図である。
【図7】保護部材付電線を製造する方法を説明するための図である。
【図8】この発明の第3の実施の形態に係る保護部材付電線の平面図である。
【図9】保護部材付電線の側断面図である。
【図10】保護部材付電線を製造する方法を説明するための図である。
【図11】この発明の第4の実施の形態に係る保護部材付電線の平面図である。
【図12】保護部材付電線の側断面図である。
【図13】保護部材付電線を製造する方法を説明するための図である。
【図14】この発明の第5の実施の形態に係る保護部材付電線の平面図である。
【図15】保護部材付電線の側断面図である。
【図16】保護部材付電線を製造する方法を説明するための図である。
【図17】変形例に係る保護部材付電線の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、添付の図面を参照しながら、この発明の実施の形態について説明する。以下の実施の形態は、この発明を具体化した一例であり、この発明の技術的範囲を限定する事例ではない。
【0041】
<第1の実施の形態>
<1.保護部材付電線の全体構成>
この発明の第1の実施の形態に係る保護部材付電線の全体構成について、図1、図2を参照しながら説明する。図1には保護部材付電線1の平面図が、図2には図1に示される保護部材付電線1を矢印Aからみた側断面図が、それぞれ示されている。
【0042】
保護部材付電線1は、電線2を備える。電線2としては、車両等において各種電気機器間を相互接続するワイヤーハーネスを構成するものが想定される。なお、保護部材付電線1が備える電線2は、1本であってもよいし、複数本であってもよい。すなわち、電線2は、複数の電線2が束ねられた電線束であってもよい。
【0043】
保護部材付電線1は、保護部材3を備える。保護部材3は、電線2を保護する保護部材として機能するとともに、電線2を定められた敷設形状に規制する形状規制部材として機能する。
【0044】
保護部材3は、平坦な矩形状のベース部31と、ベース部31の一方の主面(第1主面)の全体に立設された複数の突起32とを備える。各突起32は、筒形状の突起であり、格子点上に配置されている。なお、各突起32は、平面視において、角が丸められた(アールがつけられた)多角形状(例えば、矩形状)とすることが好ましい。また、各突起32は、先端が僅かに細くなる形状(テーパー状)とすることが好ましい。また、各突起32の底部および上部は閉じられていてもよいし、開口していてもよい。複数の突起32を筒形状とすることによって、保護部材3を軽量化できるという利点が得られる。
【0045】
突起32と突起32との間に形成される隙間は、電線2を這わすことができる経路となっている。また、各突起32は当該経路の分岐部を構成している。つまり、複数の突起32が格子点上に配列されることによって、保護部材3の第1主面に格子状の経路網が形成される。電線2は、当該経路網に対して設定された選択経路に沿う状態で配設されることによって選択経路に沿う形状に規制され、この状態で、その延在方向の定められた位置(固定位置)Pにおいて保護部材3に対して固定される。なお、複数の突起32のそれぞれを、角が丸められた多角形状としておけば、突起32に沿うように這わせられた電線20が傷つきにくいという利点が得られる。
【0046】
また、保護部材3は、ベース部31の端辺に形成された貫通孔33をさらに備える。貫通孔33は、保護部材付電線1を車両等の定位置に固定するための固定用の部品を挿通させるための孔(固定部品取付用の貫通孔)である。
【0047】
<2.保護部材付電線の製造方法>
次に、保護部材付電線1を製造する方法について、図3を参照しながら説明する。図3は、保護部材付電線1を製造する方法を説明するための図である。
【0048】
上述したとおり、保護部材3の第1主面には格子状の経路網が形成されており、そこから無数の経路を選択することができるようになっている。第1工程においては、保護部材3の第1主面に形成された経路網から電線2を配設すべき経路が選択される(図3の上段。なお、図3の上段においては、選択された経路が一点鎖線で例示されている)。
【0049】
第2工程においては、第1工程で選択された経路に沿って突起32の間を這わせるようにして電線2を保護部材3の第1主面上に配設した状態とする(図3の中段)。これによって、電線2が、保護部材3の第1主面に形成された経路網に対して設定された選択経路に沿う形状に規制された状態となる。
【0050】
第3工程においては、ベース部31の端辺と電線2との交差位置を固定位置Pとし、当該固定位置Pにおいて、電線2を保護部材3に対して固定した状態とする(図3の下段)。電線2を保護部材3に固定する態様として、例えば、以下の態様のいずれかを採用することができる。
【0051】
例えば、ベース部31に形成した貫通孔にバンドを挿通させ、当該バンドで電線2を締結することにより電線2を保護部材3に固定することができる。
【0052】
また例えば、ベース部31の周囲に立設した壁と電線2との交差位置に切り欠きを形成しておき、電線2を当該切り欠き部に挿通させるとともに、当該切り欠き部において電線2を壁部に対して固定することによって、電線2を保護部材3に固定してもよい。切り欠き部における電線2の固定には、例えばテープベラを用いることができる。すなわち、切り欠き部に舌状に延在するテープベラを形成し、このテープベラに電線2を固定(例えば、テープで巻き付けることによって固定)することができる。
【0053】
また、切り欠き部における電線2の固定は、例えば、切り欠き部と引っ掛かり合う部品を用いてもよい。すなわち、切り欠き部と引っ掛かり合う部品を電線2に予め装着しておき、当該部品を切り欠き部に引っ掛けることによって電線2を固定することができる。ここで、引っ掛かり用の部品は、例えば、電線を挿通させる貫通孔が中央付近に形成された直方体の部品であって、両側面に切り欠き部と引っ掛かり合う溝が形成された樹脂成型品により構成することができる。また、ゴムバンドにより構成することもできる。引っ掛かり用の部品としてゴムバンドを用いる場合、一対のゴムバンドを、間隔をあけて電線2に巻き付けておき、電線2を切り欠きに挿通させるとともに、壁部を一対のゴムバンドの間に挟み込むことによって、切り欠き部において電線2を壁部に対して固定することができる。
【0054】
また、切り欠き部における電線2の固定は、例えば、接着剤を用いてもよい。すなわち、切り欠き部と、ここに挿通された電線2との間に接着剤を充填することによって、電線2を固定してもよい。
【0055】
以上の工程により、保護部材付電線1を得ることができる。なお、得られた保護部材付電線1を外部部材(例えば車体パネル)に固定する際には、図4に示すように、保護部材3に形成された固定部品取付用の貫通孔33に固定用の部品(クランプ)9を差し込んで挿通させ、当該固定用の部品9を外部部材90に取り付ければよい。これによって、保護部材付電線1を車両等の定位置に簡単に固定することができる。
【0056】
車両等の定位置に固定された状態において、保護部材付電線1が備える電線2は、定められた敷設形状に規制された状態で、外部部材90と保護部材3との間に挟み込まれ、他の部分との接触が抑制されるように保護される。これによって、電線2が他の部分と接触して損傷する、また、騒音を発する、といった事態が回避される。
【0057】
<3.効果>
上記の実施の形態によると、保護部材3に、複数の経路を選択可能な経路網が形成されており、当該経路網に対して設定された選択経路に沿う状態で配設することによって、電線2を定められた形状に規制することができるので、電線2の組み立てにかかる負担が大幅に軽減される。
【0058】
また、選択する経路を変更するだけで電線2を異なる形状に規制することができるので、さまざまな組み立て形状に柔軟に対応することができる。例えば、電線2の経路の変更、分岐位置の変更等が生じた場合にも、保護部材3に形成された経路網に対して別の経路を選択するだけで当該変更に対応することができる。
【0059】
さらに、経路の選択態様により、電線2の余長を保護部材付電線1において吸収させることができる。例えば、蛇行した経路を選択することによって、電線2の余長を保護部材付電線1において吸収させることができる。
【0060】
また、単純な作業で電線2を組み立てることができるので、当該作業を自動化することも可能となる。
【0061】
さらに、従来において、電線2を定められた形状に規制する作業において必要とされていた図板や治具等が不要となるので、電線の組み立てにかかるコストも低減できる。また、従来において、電線2を定められた形状に保つために必要とされていたテープ等も不要となるので、電線の製造にかかるコストも低減できる。
【0062】
また、電線2を定められた形状に規制する工程と、電線2を保護するための部材を電線2に取り付ける工程とが同時に行われることになるので、この点においても、電線2の組み立てにかかる負担が軽減される。
【0063】
<第2の実施の形態>
この発明の第2の実施の形態に係る保護部材付電線について説明する。この実施の形態に係る保護部材付電線は、カバー部材を備える点において、第1の実施の形態に係る保護部材付電線1と相違する。その他の点においては第1の実施の形態に係る保護部材付電線1と同じ構成を備えている。以下においては、保護部材付電線1と相違しない構成についてはその説明を省略するとともに、同じ符号を付して示す。
【0064】
<1.保護部材付電線の全体構成>
この発明の第2の実施の形態に係る保護部材付電線1aの全体構成について、図5、図6を参照しながら説明する。図5には保護部材付電線1aの平面図が、図6には図5に示される保護部材付電線1aを矢印Aからみた側断面図が、それぞれ示されている。なお、カバー部材4を外すと、保護部材付電線1aは、図1、図2に示される状態となる。
【0065】
保護部材付電線1aは、電線2と、保護部材3と、カバー部材4とを備える。なお、保護部材3の構成は、第1の実施の形態と同様であるが、この実施の形態においては、保護部材3が備える各突起32の上部は、開口しているものとする。
【0066】
カバー部材4は、電線2を間に挟み込むようにして保護部材3の第1主面の全体を覆うことにより、保護部材3と対になって、電線2を保護する保護部材として機能する。
【0067】
カバー部材4は、保護部材3と同様の構成を備える。すなわち、カバー部材4は、平坦な矩形状のベース部41と、ベース部41の一方の主面(第1主面)の全体に立設された複数の突起42とを備える。つまり、カバー部材4の第1主面には、保護部材3の第1主面に形成されているものと同じサイズおよび同じ形状の筒形状の突起42が、保護部材3の第1主面における複数の突起32とそれぞれ対応する位置に形成されることになる。なお、保護部材3には固定部品取付用の貫通孔33が設けられていたが、カバー部材4にはこれを設けなくともよい。
【0068】
カバー部材4が保護部材3の主面を覆った状態において、保護部材3が備える突起群(複数の突起32)とカバー部材4が備える突起群(複数の突起42)とのうちの一方の突起群を構成する各突起(ここでは、カバー部材4が備える各突起42)が、他方の突起群を構成する各突起(ここでは、保護部材3が備える各突起32)の中に差し込まれた状態となる。
【0069】
<2.保護部材付電線の製造方法>
次に、保護部材付電線1aを製造する方法について、図7を参照しながら説明する。図7は、保護部材付電線1aを製造する方法を説明するための図である。
【0070】
はじめに、電線2が、保護部材3の第1主面に形成された経路網に対して設定された選択経路に沿う状態で配設された状態とし、さらに、配設された電線2が、その延在方向の固定位置Pにおいて保護部材3に対して固定された状態とする。この工程は、第1の実施の形態に係る第1工程〜第3工程と同様である(図3参照)。
【0071】
第4工程においては、カバー部材4を保護部材3の第1主面に被せた状態として電線2を保護部材3とカバー部材7との間に挟み込み、この状態でカバー部材4を保護部材3に対して固定した状態とする。具体的には、まず、カバー部材4の第1主面(突起42が突出した面)を保護部材3の第1主面(突起32が突出した面)に対向させた状態とし、カバー部材4の第1主面の全体で保護部材3の第1主面の全体が覆われるように、カバー部材4を保護部材3に近づけていき、電線2を保護部材3とカバー部材4との間に挟み込む(図7の上段)。上述したとおり、カバー部材4の第1主面には、保護部材3の第1主面に形成された各突起32と対応する位置に突起42が形成されている。したがって、カバー部材4の第1主面を保護部材3の第1主面に近づけていくと、保護部材3の各突起32の先端と、カバー部材4の各突起42の先端とが当接した状態となる。この状態から、カバー部材4の各突起42を、保護部材3における対応する位置に配置された各突起32の筒内部に押し込んでいき、突起32の筒内部に突起42が差し込まれた状態とする(図7の下段)。この状態において、保護部材3の端辺とカバー部材4の端辺とを例えば超音波溶接することによって、保護部材3に被せられたカバー部材5を保護部材3に対して固定する。なお、カバー部材4と保護部材3との固定は、他の態様により行われてもよい。例えば、保護部材3の各突起32の内周面と、カバー部材4の各突起42の外周面とのうちの一方に雄型を、他方にこれと嵌め合わされる雌型を形成しておき、突起32の筒内部に突起42が差し込まれると、雄型と雌型とが無理嵌めされ、これによって、カバー部材4と保護部材3とが固定される構成としてもよい。
【0072】
以上の工程により、保護部材付電線1aを得ることができる。なお、得られた保護部材付電線1aを外部部材(例えば車体パネル)に固定する態様は、第1の実施の形態と同様である。すなわち、保護部材3に形成された固定部品取付用の貫通孔33に固定用の部品を差し込み、当該固定用の部品9を車両等の定位置(例えば車体パネル)に取り付けることによって、保護部材付電線1aを車両等の定位置に固定することができる。
【0073】
車両等の定位置に固定された状態において、保護部材付電線1aが備える電線2は、定められた敷設形状に規制された状態で、カバー部材4と保護部材3との間に挟み込まれ、他の部分との接触が抑制されるように保護される。これによって、電線2が他の部分と接触して損傷する、また、騒音を発する、といった事態が回避される。つまり、この実施の形態は、保護部材付電線1aが取り付けられる外部部材に電線2を直接接触させたくない場合(例えば、外部部材が、電線2を傷つける可能性のある比較的硬い部材である場合)に特に有効である。
【0074】
<3.効果>
この実施の形態に係る保護部材付電線1aにおいては、第1の実施の形態に係る保護部材付電線1と同様の効果が得られる。特に、この実施の形態に係る保護部材付電線1aによると、同じ部材を、カバー部材4として用いることもでき、保護部材3として用いることもできるので、保護部材付電線1の製造にかかるコストを抑えることができる。また、カバー部材4が保護部材3の第1主面の全体を覆った状態において、保護部材3が備える筒状突起群とカバー部材4が備える筒状突起群とのうちの一方の筒状突起群を構成する各筒状突起が、他方の筒状突起群を構成する各筒状突起の中に差し込まれた状態となるので、保護部材付電線1aの全体の厚みを薄く抑えることができる。
【0075】
<第3の実施の形態>
この発明の第3の実施の形態に係る保護部材付電線について説明する。この実施の形態に係る保護部材付電線は、カバー部材の形状が異なる点において、第2の実施の形態に係る保護部材付電線1aと相違する。その他の点においては第2の実施の形態に係る保護部材付電線1aと同じ構成を備えている。以下においては、保護部材付電線1aと相違しない構成についてはその説明を省略するとともに、同じ符号を付して示す。
【0076】
<1.保護部材付電線の全体構成>
この発明の第3の実施の形態に係る保護部材付電線1bの全体構成について、図8、図9を参照しながら説明する。図8には保護部材付電線1bの平面図が、図9には図8に示される保護部材付電線1bを矢印Aからみた側断面図が、それぞれ示されている。なお、カバー部材5を外すと、保護部材付電線1bは、図1、図2に示される状態となる。
【0077】
保護部材付電線1bは、電線2と、保護部材3と、カバー部材5とを備える。
【0078】
カバー部材5は、電線2を間に挟み込むようにして保護部材3の第1主面の全体を覆うことにより、保護部材3と対になって、電線2を保護する保護部材として機能する。
【0079】
カバー部材5は、平坦な矩形状のベース部51と、ベース部51の一方の主面(第1主面)の全体に立設された複数の突起52とを備える。各突起52は、底部が開口した筒形状の突起であり、保護部材3が備える突起32をその内部に入れ子状に収容できるように、突起32よりも一回り大きく、突起32と相似形状に形成されている。なお、各突起32の上部は閉じられていてもよいし、開口していてもよい。また、各突起52は、保護部材3の第1主面における複数の突起32のいずれかと対応する位置に形成される。すなわち、各突起52は、格子点上に配列される。
【0080】
カバー部材5が保護部材3の主面の全体を覆った状態において、カバー部材5が備える突起群を構成する各突起52の中に、保護部材3が備える突起群を構成する各突起32が入れ子状に差し込まれた状態となる。
【0081】
<2.保護部材付電線の製造方法>
次に、保護部材付電線1bを製造する方法について、図10を参照しながら説明する。図10は、保護部材付電線1bを製造する方法を説明するための図である。
【0082】
はじめに、電線2が、保護部材3の第1主面に形成された経路網に対して設定された選択経路に沿う状態で配設された状態とし、さらに、配設された電線2が、その延在方向の固定位置Pにおいて保護部材3に対して固定された状態とする。この工程は、第1の実施の形態に係る第1工程〜第3工程と同様である(図3参照)。
【0083】
第4工程においては、カバー部材5を保護部材3の第1主面に被せた状態として電線2を保護部材3とカバー部材5との間に挟み込み、この状態でカバー部材5を保護部材3に対して固定した状態とする。具体的には、まず、カバー部材5の第1主面(突起52が突出した面)と逆側の主面(第2主面)を保護部材3の第1主面に対向させた状態とし、カバー部材5の第2主面の全体で保護部材3の第1主面の全体が覆われるように、カバー部材5を保護部材3に近づけていき、電線2を保護部材3とカバー部材5との間に挟み込む(図10の上段)。上述したとおり、カバー部材5には、保護部材3の第1主面に形成された各突起32と対応する位置に、底部が開口した筒状突起52が形成されている。したがって、カバー部材5の第2主面を保護部材3の第1主面に近づけていくと、保護部材3の各突起32が、カバー部材5の各突起52の筒内部に入れ子状に差し込まれた状態となる(図10の下段)。この状態において、保護部材3の端辺とカバー部材5の端辺とを例えば超音波溶接することによって、保護部材3に被せられたカバー部材5を保護部材3に対して固定する。
【0084】
以上の工程により、保護部材付電線1bを得ることができる。なお、得られた保護部材付電線1bを外部部材(例えば車体パネル)に固定する態様は、第1の実施の形態と同様である。
【0085】
車両等の定位置に固定された状態において、保護部材付電線1bが備える電線2は、定められた敷設形状に規制された状態で、カバー部材5と保護部材3との間に挟み込まれ、他の部分との接触が抑制されるように保護される。これによって、電線2が他の部分と接触して損傷する、また、騒音を発する、といった事態が回避される。つまり、この実施の形態は、第2の実施の形態と同様、保護部材付電線1bが取り付けられる外部部材に電線2を直接接触させたくない場合に特に有効である。
【0086】
<3.効果>
この実施の形態に係る保護部材付電線1bにおいては、第1の実施の形態に係る保護部材付電線1と同様の効果が得られる。特に、この実施の形態に係る保護部材付電線1bによると、カバー部材5が保護部材3の主面の全体を覆った状態において、保護部材3が備える突起群を構成する各突起32が、カバー部材5が備える筒状突起群を構成する各筒状突起52の中に入れ子状に差し込まれた状態となるので、保護部材付電線1bの全体の厚みを薄く抑えることができる。
【0087】
<第4の実施の形態>
この発明の第4の実施の形態に係る保護部材付電線について説明する。この実施の形態に係る保護部材付電線は、保護部材3が備える突起32の形状において、第1の実施の形態に係る保護部材付電線1と相違する。その他の点においては第1の実施の形態に係る保護部材付電線1と同じ構成を備えている。以下においては、保護部材付電線1と相違しない構成についてはその説明を省略するとともに、同じ符号を付して示す。
【0088】
<1.保護部材付電線の全体構成>
この発明の第4の実施の形態に係る保護部材付電線の全体構成について、図11、図12を参照しながら説明する。図11には保護部材付電線1cの平面図が、図12には図11に示される保護部材付電線1cを矢印Aからみた側断面図が、それぞれ示されている。
【0089】
保護部材付電線1cは、電線2と、保護部材6とを備える。
【0090】
保護部材6は、電線2を保護する保護部材として機能するとともに、電線2を定められた敷設形状に規制する形状規制部材として機能する。
【0091】
保護部材6は、平坦な矩形状のベース部61と、ベース部61の一方の主面(第1主面)の全体に立設された複数の突起62とを備える。各突起62は、断面円形の棒状の突起であり、格子点上に配置されている。
【0092】
突起62と突起62との間に形成される隙間は、電線2を這わすことができる経路となっている。また、各突起62は当該経路の分岐部を構成している。つまり、複数の突起62が格子点上に配列されることによって、保護部材6の第1主面に格子状の経路網が形成される。電線2は、当該経路網に対して設定された選択経路に沿う状態で配設されることによって選択経路に沿う形状に規制され、この状態で、その延在方向の定められた位置(固定位置)Pにおいて保護部材6に対して固定される。なお、ここでは、複数の突起62のそれぞれが、棒形状であるので、経路幅を広く確保できる。また、複数の突起62のそれぞれが、平面視において円形状であるので、突起62に沿うように這わせられた電線20が傷つきにくいという利点が得られる。
【0093】
また、保護部材6は、ベース部61の端辺に形成された貫通孔63をさらに備える。貫通孔63は、保護部材付電線1cを車両等の定位置に固定するための固定用の部品を挿通させるための孔(固定部品取付用の貫通孔)である。
【0094】
<2.保護部材付電線の製造方法>
保護部材付電線1cは、第1の実施の形態に係る保護部材付電線1と同じ方法で製造することができる。すなわち、第1工程において、保護部材6の第1主面に形成された経路網から電線2を配設すべき経路を選択し(図13の上段)、続く第2工程において、第1工程で選択された経路に沿って突起62の間を這わせるようにして電線2を保護部材6の第1主面上に配設した状態とする(図13の中段)。続く第3工程において、ベース部61の端辺と電線2との交差位置を固定位置Pとし、当該固定位置Pにおいて、電線2を保護部材6に対して固定した状態とする(図13の下段)。
【0095】
以上の工程により、保護部材付電線1cを得ることができる。なお、得られた保護部材付電線1cを外部部材(例えば車体パネル)に固定する態様も、第1の実施の形態と同様である。
【0096】
車両等の定位置に固定された状態において、保護部材付電線1cが備える電線2は、定められた敷設形状に規制された状態で、外部部材と保護部材6との間に挟み込まれ、他の部分との接触が抑制されるように保護される。これによって、電線2が他の部分と接触して損傷する、また、騒音を発する、といった事態が回避される。
【0097】
<3.効果>
この実施の形態に係る保護部材付電線1cにおいては、第1の実施の形態に係る保護部材付電線1と同様の効果が得られる。
【0098】
<第5の実施の形態>
この発明の第5の実施の形態に係る保護部材付電線について説明する。この実施の形態に係る保護部材付電線は、カバー部材を備える点において、第4の実施の形態に係る保護部材付電線1cと相違する。その他の点においては第4の実施の形態に係る保護部材付電線1cと同じ構成を備えている。以下においては、保護部材付電線1cと相違しない構成についてはその説明を省略するとともに、同じ符号を付して示す。
【0099】
<1.保護部材付電線の全体構成>
この発明の第5の実施の形態に係る保護部材付電線1dの全体構成について、図14、図15を参照しながら説明する。図14には保護部材付電線1dの平面図が、図15には図14に示される保護部材付電線1dを矢印Aからみた側断面図が、それぞれ示されている。なお、カバー部材7を外すと、保護部材付電線1dは、図11、図12に示される状態となる。
【0100】
保護部材付電線1dは、電線2と、保護部材6と、カバー部材7とを備える。
【0101】
カバー部材7は、電線2を間に挟み込むようにして保護部材6の第1主面の全体を覆うことにより、保護部材6と対になって、電線2を保護する保護部材として機能する。
【0102】
カバー部材7は、平坦な矩形状のベース部71と、ベース部71の全体に形成された複数の貫通孔72とを備える。各貫通孔72は、平面視において保護部材6が備える突起62よりも大きなサイズに形成されており、その中に突起62を挿通させることができる。また、各貫通孔72は、保護部材6の第1主面における複数の突起62のいずれかと対応する位置に形成される。すなわち、各貫通孔72は、格子点上に配列される。
【0103】
カバー部材7が保護部材6の主面の全体を覆った状態において、カバー部材7が備える貫通孔群を構成する各貫通孔72に、保護部材6が備える突起群を構成する各突起62が挿通される。
【0104】
<2.保護部材付電線の製造方法>
次に、保護部材付電線1dを製造する方法について、図16を参照しながら説明する。図16は、保護部材付電線1dを製造する方法を説明するための図である。
【0105】
はじめに、電線2が、保護部材6の第1主面に形成された経路網に対して設定された選択経路に沿う状態で配設された状態とし、さらに、配設された電線2が、その延在方向の固定位置Pにおいて保護部材6に対して固定された状態とする。この工程は、第4の実施の形態に係る第1工程〜第3工程と同様である(図13参照)。
【0106】
第4工程においては、カバー部材7を保護部材6の第1主面に被せた状態として電線2を保護部材6とカバー部材7との間に挟み込み、この状態でカバー部材7を保護部材6に対して固定した状態とする。具体的には、まず、カバー部材7の全体で保護部材6の第1主面の全体が覆われるように、カバー部材7を保護部材6に近づけていき、電線2を保護部材6とカバー部材7との間に挟み込む(図16の上段)。上述したとおり、カバー部材7には、保護部材6の第1主面に形成された各突起62と対応する位置に、各突起62が挿通可能な貫通孔72が形成されている。したがって、カバー部材7を保護部材6の第1主面に近づけていくと、保護部材6の各突起62が、カバー部材7の各貫通孔72に挿通した状態となる。この状態において、保護部材6の端辺とカバー部材7の端辺とを例えば超音波溶接することによって、保護部材6に被せられたカバー部材7を保護部材6に対して固定する。
【0107】
以上の工程により、保護部材付電線1dを得ることができる。なお、得られた保護部材付電線1dを外部部材(例えば車体パネル)に固定する態様は、第4の実施の形態と同様である。
【0108】
車両等の定位置に固定された状態において、保護部材付電線1dが備える電線2は、定められた敷設形状に規制された状態で、カバー部材7と保護部材6との間に挟み込まれ、他の部分との接触が抑制されるように保護される。これによって、電線2が他の部分と接触して損傷する、また、騒音を発する、といった事態が回避される。つまり、この実施の形態は、第2の実施の形態と同様、保護部材付電線1dが取り付けられる外部部材に電線2を直接接触させたくない場合に特に有効である。
【0109】
<3.効果>
この実施の形態に係る保護部材付電線1dにおいては、第1の実施の形態に係る保護部材付電線1と同様の効果が得られる。特に、この実施の形態に係る保護部材付電線1dによると、カバー部材7が保護部材6の主面の全体を覆った状態において、保護部材6が備える突起群を構成する各突起62が、カバー部材7が備える貫通孔群を構成する各貫通孔72に挿通されるので、保護部材付電線1dの全体の厚みを薄く抑えることができる。
【0110】
<変形例>
上記の第1の実施の形態において、保護部材付電線1を製造する工程において、保護部材3における、配設された電線2の経路領域を含まない部分領域を切り取る工程をさらに設けてもよい。図17には、当該工程を経て製造された保護部材付電線1の平面図が例示されている。ここに示されるように、保護部材3における、配設された電線2の経路領域を含まない部分領域Tを切り取ることによって、保護部材付電線1を、それが配置されるスペースに応じた形状とすることができる。
【0111】
なお、他の実施の形態においても、上記の変形例に係る工程を設けてもよい。例えば、第2の実施の形態において、保護部材付電線1aを製造する工程において、保護部材3およびカバー部材4における、配設された電線2の経路領域を含まない部分領域を切り取る工程をさらに設けてもよい。
【0112】
また、上記の実施の形態においては、複数の突起32,62が形成されることにより保護部材3,6の第1主面に経路網が形成されることとしたが、経路網を形成する態様は、必ずしも突起を形成する態様に限らない。例えば、ベース部31,61上に溝(例えば、格子状の溝)を形成することにより経路網を形成してもよい。
【0113】
また、上記の実施の形態においては、複数の突起32,62が格子点上に配置されることにより保護部材3,6の第1主面に格子状の経路網が形成されることとしたが、第1主面に形成される経路網は、少なくとも2以上の経路を選択可能な経路網であればよい。つまり、第1主面に形成される経路網は、必ずしも格子状でなくともよく、また、必ずしも規則的でなくともよい。例えば、複数の突起32,62を同心の円周上に間隔をおいてベース部31,61上に配置することにより、放射状の経路と円周上の経路とが交わる経路網を形成してもよい。また例えば、複数の突起32,62を不規則に配置して不規則な経路網を形成してもよい。
【0114】
また、上記の実施の形態においては、保護部材3,6の第1主面の全体に経路網が形成されることとしたが、経路網は第1主面の一部領域に形成されてもよい。
【0115】
また、上記の実施の形態においては、3つの類型に係るカバー部材4,5,7について説明したが、カバー部材4,5,7の形状はこれに限るものではない。例えば、突起、あるいは貫通孔が形成されない平坦な板形状としてもよい。
【0116】
また、上記の実施の形態において、第1の実施の形態に係る保護部材3に、第5の実施の形態に係るカバー部材7が組み合わされてもよい。また、第4の実施の形態に係る保護部材6に、第2の実施の形態に係るカバー部材4、あるいは、第3の実施の形態に係るカバー部材5が組み合わされてもよい。
【0117】
また、上記の各実施の形態においては、保護部材3,6に対するカバー部材4,5,7の固定を超音波溶接で行う構成を例示したが、他の態様(例えば、クランプによる固定、嵌め合い構造による固定、接着剤を用いた固定等)により固定されてもよい。例えば、第2の実施の形態において、保護部材3の突起32を先端が閉じた形状として当該先端面に雄型を形成するとともに、カバー部材4の突起42も先端が閉じた形状として当該先端面に雌型を形成しておき、突起32に形成された雄型と突起42に形成された雌型とを嵌め合わせることによって、カバー部材4を保護部材3に対して固定する構成としてもよい。
【0118】
また、上記の第1の実施の形態において、保護部材3に形成される各突起32は、平面視において、角が丸められた多角形状であるとしたが、平面視において円形状であってもよい。また、上記の第4の実施の形態において、保護部材6に形成される各突起62は、平面視において、円形状であるとしたが、平面視において角が丸められた多角形状であってもよい。
【0119】
また、上記の第2の実施の形態においては、カバー部材4の各突起42が保護部材3の各突起32の筒内部に差し込まれる構成としていたが、保護部材3の各突起32がカバー部材4の各突起42の筒内部に差し込まれる構成としてもよい。
【0120】
また、上記の各実施の形態において、保護部材3、6およびカバー部材4,5,7は例えば樹脂(例えば、ポリスチレン樹脂)により形成することができる。
【0121】
また、第3の実施の形態においては、カバー部材5の第1主面に複数の突起52が立設されている。これによって、第1主面に経路網が形成されており、そこから無数の経路を選択することができる。そこで、カバー部材5が保護部材3の主面の全体を覆った状態において、カバー部材5の第1主面に形成された経路網からオプション用の電線を配設すべき経路を選択し、当該選択した経路に沿って突起52の間を這わせるようにしてオプション用の電線を当該第1主面上に配設する構成としてもよい。
【0122】
また、第6の実施の形態においては、カバー部材7が保護部材6の主面の全体を覆った状態において、保護部材6が備える各突起62が、カバー部材7が備える各貫通孔72を介してカバー部材7の主面から突出する。つまり、この状態において、当該カバー部材7の主面から突出した複数の突起62により、カバー部材7のベース部71上に格子状の経路網が形成され、そこから無数の経路を選択することができる。そこで、カバー部材7が保護部材6の主面の全体を覆った状態において、カバー部材7の主面に形成された経路網からオプション用の電線を配設すべき経路を選択し、当該選択した経路に沿って突起62の間を這わせるようにしてオプション用の電線を当該第1主面上に配設する構成としてもよい。
【0123】
上記の2つの変形例によると、2種類の電線2(例えば、標準装備の電線とオプション用の電線)のそれぞれを定められた形状に規制することができる。すなわち、2種類の電線20をそれぞれ別の形状に規制して一体に形成することができる。
【符号の説明】
【0124】
1,1a,1b,1c,1d 保護部材付電線
2 電線
3,6 保護部材
4,5,7 カバー部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面に、複数の経路を選択可能な経路網が形成された保護部材と、
前記経路網に対して設定された選択経路に沿う状態で配設された電線と、
を備える保護部材付電線。
【請求項2】
請求項1に記載の保護部材付電線であって、
前記保護部材が、
前記主面に形成された複数の突起、
を備え、
前記複数の突起のそれぞれが、他の突起との間に前記電線を這わすことができる経路を形成するとともに、当該経路の分岐部を構成する保護部材付電線。
【請求項3】
請求項2に記載の保護部材付電線であって、
前記複数の突起が格子点上に複数個配列される保護部材付電線。
【請求項4】
請求項2または3に記載の保護部材付電線であって、
前記複数の突起のそれぞれが、筒形状の突起である保護部材付電線。
【請求項5】
請求項2または3に記載の保護部材付電線であって、
前記複数の突起のそれぞれが、棒形状の突起である保護部材付電線。
【請求項6】
請求項2から5のいずれかに記載の保護部材付電線であって、
前記複数の突起のそれぞれが、平面視において、角が丸められた多角形状である保護部材付電線。
【請求項7】
請求項2から5のいずれかに記載の保護部材付電線であって、
前記複数の突起のそれぞれが、平面視において円形状である保護部材付電線。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の保護部材付電線であって、
前記電線を間に挟み込むようにして前記保護部材の主面の全体を覆うカバー部材、
を備える保護部材付電線。
【請求項9】
請求項1に記載の保護部材付電線であって、
前記電線を間に挟み込むようにして前記保護部材の主面の全体を覆うカバー部材、
を備え、
前記保護部材が、
前記主面に形成された複数の筒状突起であって、それぞれが、他の筒状突起との間に前記電線を這わすことができる経路を形成するとともに、当該経路の分岐部を構成する、複数の筒状突起、
を備え、
前記カバー部材が、
主面に形成され、前記保護部材における前記複数の筒状突起とそれぞれ対応する位置に形成された複数の筒状突起、
を備え、
前記カバー部材が、前記筒状突起が突出した前記主面を前記保護部材の主面に向けた状態で前記保護部材の主面の全体を覆い、
前記カバー部材が前記保護部材の主面を覆った状態において、前記保護部材が備える筒状突起群と前記カバー部材が備える筒状突起群とのうちの一方の筒状突起群を構成する各筒状突起が、他方の筒状突起群を構成する各筒状突起の中に差し込まれた状態となる保護部材付電線。
【請求項10】
請求項1に記載の保護部材付電線であって、
前記電線を間に挟み込むようにして前記保護部材の主面の全体を覆うカバー部材、
を備え、
前記保護部材が、
前記主面に形成された複数の突起であって、それぞれが、他の突起との間に前記電線を這わすことができる経路を形成するとともに、当該経路の分岐部を構成する、複数の突起、
を備え、
前記カバー部材が、
主面に形成され、前記保護部材における前記複数の突起とそれぞれ対応する位置に形成された複数の筒状突起、
を備え、
前記カバー部材が前記筒状突起が突出した前記主面と逆の面を前記保護部材の主面に向けた状態で前記保護部材の主面の全体を覆い、
前記カバー部材が前記保護部材の主面の全体を覆った状態において、前記保護部材が備える突起群を構成する各突起が、前記カバー部材が備える筒状突起群を構成する各筒状突起の中に入れ子状に差し込まれた状態となる保護部材付電線。
【請求項11】
請求項1に記載の保護部材付電線であって、
前記電線を間に挟み込むようにして前記保護部材の主面の全体を覆うカバー部材、
を備え、
前記保護部材が、
前記主面に形成された複数の突起であって、それぞれが、他の突起との間に前記電線を這わすことができる経路を形成するとともに、当該経路の分岐部を構成する、複数の突起、
を備え、
前記カバー部材が、
主面に形成され、前記保護部材における前記複数の突起とそれぞれ対応する位置に形成された複数の貫通孔、
を備え、
前記カバー部材が前記保護部材の主面の全体を覆った状態において、前記保護部材が備える突起群を構成する各突起が、前記カバー部材が備える貫通孔群を構成する各貫通孔に挿通される保護部材付電線。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の保護部材付電線であって、
前記保護部材が、
前記保護部材付電線を外部部材に固定させるための固定用部品を挿通させる貫通孔、
を備える保護部材付電線。
【請求項13】
a)主面に、複数の経路を選択可能な経路網が形成された保護部材において、前記経路網に対して選択経路を設定する工程と、
b)前記経路網に対して設定された選択経路に沿う状態で電線を配設する工程と、
を備える保護部材付電線の製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載の保護部材付電線の製造方法であって、
c)前記保護部材における、配設された前記電線の経路領域を含まない部分領域を切り取る工程、
を備える保護部材付電線の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−157093(P2012−157093A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11731(P2011−11731)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】